説明

給紙カセット、画像形成装置および給紙カセットの開閉方法

【課題】給紙蓋を容易に開くことが可能な、給紙カセット、画像形成装置および給紙カセットの開閉方法を提供する。
【解決手段】ロール紙Pを収納するために開閉される給紙蓋20と、一端が回動可能に支持され、他端がロール紙の軸を支持可能であり、ロール紙を給紙ローラ2に押圧するように付勢された押圧アーム30と、一端が押圧アームに連結され、他端が第1の位置と、第1の位置よりも大きな付勢力を生じさせる第2の位置との間で移動可能に支持された捩りバネ40と、給紙蓋を閉じた時に捩りバネの他端を第2の位置に移動させ、給紙蓋を開いた時に捩りバネの他端を第1の位置に移動させる補助アーム50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙カセット、画像形成装置および給紙カセットの開閉方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺の記録紙を巻芯に巻付けたロール紙を使用するプリンタが知られている。プリンタは、給紙ローラによりロール紙から記録紙を巻出し、巻出された記録紙に印画を行う。このため、印画時には、ロール紙が給紙ローラに押圧され、ロール紙交換時には、交換作業を容易にするためにロール紙の押圧が解除される。
【0003】
下記特許文献1には、ロール紙を給紙ローラに押圧する支持部材を有する給紙カセットが開示されている。支持部材は、バネ力によりロール紙を給紙ローラに付勢するとともに、給紙蓋の開閉に応じて回動する。給紙蓋を開く時に、支持部材は、ロール紙を付勢する力に抗して、ロール紙の押圧を解除する方向に回動する。これにより、給紙蓋を開いた時にロール紙の押圧が解除されており、ロール紙の交換作業が容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−161456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、印画サイズの大型化や連続印画数の増加により、ロール紙の幅および巻径が増加し、ロール紙が重量化する傾向にある。ここで、上記給紙カセットでは、ロール紙の重量とバネ力とをバランスさせることで、給紙ローラに対するロール紙の圧接が巻径に拘らずに略一定となる。しかし、ロール紙が重量化するほど、バネ力を増加させなければならなくなる。すると、給紙蓋を開く時には、ロール紙の押圧を解除する方向に支持部材を回動するために大きな力が必要となり、給紙蓋を開く操作が困難となってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、給紙蓋を容易に開くことが可能な、給紙カセット、画像形成装置および給紙カセットの開閉方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある観点によれば、ロール紙を収納するために開閉される給紙蓋と、一端が回動可能に支持され、他端がロール紙の軸を支持可能であり、ロール紙を給紙ローラに押圧するように付勢された押圧アームと、一端が押圧アームに連結され、他端が第1の位置と、第1の位置よりも大きな付勢力を生じさせる第2の位置との間で移動可能に支持された付勢部材と、給紙蓋を閉じた時に付勢部材の他端を第2の位置に移動させ、給紙蓋を開いた時に付勢部材の他端を第1の位置に移動させる補助アームとを備える給紙カセットが提供される。
【0008】
押圧アームは、付勢部材の他端を第2の位置に移動させた状態で付勢部材に生じた付勢力により、ロール紙を給紙ローラに押圧してもよい。
【0009】
付勢部材は、第1の位置と第2の位置の間の移動量が、給紙蓋を閉じた状態から完全に開いた状態にする場合に生じる移動量よりも小さくなるように設定されてもよい。
【0010】
補助アームは、給紙蓋により押圧されて付勢部材の他端を第2の位置に移動させ、給紙蓋による押圧を解除されて付勢部材の他端を第1の位置に移動させてもよい。
【0011】
押圧アームは、給紙蓋を閉じた状態では、ロール紙を給紙ローラに押圧するようにロール紙の軸を支持し、給紙蓋を開いた状態では、ロール紙の軸の支持を解除してロール紙を交換可能な位置に移動させてもよい。
【0012】
付勢部材は、押圧アームの回転支点軸を捩り中心軸とする捩りバネでもよい。
【0013】
また、本発明の別の観点によれば、給紙ローラと、給紙カセットとを備える画像形成装置であって、給紙カセットは、ロール紙を収納するために開閉される給紙蓋と、一端が回動可能に支持され、他端がロール紙の軸を支持可能であり、ロール紙を給紙ローラに押圧するように付勢された押圧アームと、一端が押圧アームに連結され、他端が第1の位置と、第1の位置よりも大きな付勢力を生じさせる第2の位置との間で移動可能に支持された付勢部材と、給紙蓋を閉じた時に付勢部材の他端を第2の位置に移動させ、給紙蓋を開いた時に付勢部材の他端を第1の位置に移動させる補助アームとを有し、付勢部材の他端を移動可能に支持する可動支持部をさらに備える画像形成装置が提供される。
【0014】
また、本発明の別の観点によれば、ロール紙を収納するために開閉される給紙蓋と、一端が回動可能に支持され、他端がロール紙の軸を支持可能であり、ロール紙を給紙ローラに押圧するように付勢された押圧アームと、一端が押圧アームに連結され、他端が第1の位置と、第1の位置よりも大きな付勢力を生じさせる第2の位置との間で移動可能に支持された付勢部材と、付勢部材の他端を移動させる補助アームとを有する給紙カセットを開閉する方法であって、給紙蓋を閉じた時に補助アームを介して付勢部材の他端を第2の位置に移動させ、給紙蓋を開いた時に補助アームを介して付勢部材の他端を第1の位置に移動させることを含む給紙カセットの開閉方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、給紙蓋を容易に開くことが可能な、給紙カセット、画像形成装置および給紙カセットの開閉方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用可能な給紙カセットの背面側の外観を示す斜視図である。
【図2】給紙カセットの正面側の外観(給紙蓋を閉じた状態)を示す斜視図である。
【図3】給紙カセットの正面側の外観(給紙蓋を開いた状態)を示す斜視図である。
【図4】給紙カセットを装着したプリンタの内部状態を示す概略図である。
【図5】補助アームを伴わない給紙カセット(給紙蓋を開いた状態)を示す側断面図である。
【図6】補助アームを伴わない給紙カセット(給紙蓋を閉じた状態)を示す側断面図である(ロール紙の使用開始時の状態)。
【図7】補助アームを伴わない給紙カセット(給紙蓋を閉じた状態)を示す側断面図である(ロール紙の使用開始後の状態)。
【図8】捩りバネに作用する力を示す図である。
【図9】補助アームを伴う給紙カセット(給紙蓋を開いた状態)を示す側断面図である。
【図10】補助アームを伴う給紙カセット(給紙蓋を閉じた状態)を示す側断面図である。
【図11】補助アームを伴わない場合における給紙蓋の開閉時に捩りバネに作用する力を示す図である。
【図12】補助アームを伴う場合における給紙蓋の開閉時に捩りバネに作用する力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
[1.給紙カセット1の周辺構成]
まず、図1から図3を参照して給紙カセット1の周辺構成について説明する。
【0019】
図1には、本発明を適用可能な給紙カセット1の背面側の外観が示されている。給紙カセット1は、カセット本体10と、カセット本体10の前面に取付けられた給紙蓋20とを有する。カセット本体10には、給紙カセット1に収容されたロール紙Pを給紙ローラ2に圧接するための開口11が形成されている。つまり、ロール紙Pを収納した給紙カセット1をプリンタ本体(不図示)に装着すると、プリンタ本体に設けられた給紙ローラ2は、開口11を通じてロール紙Pの外周面に圧接する。また、開口11の下方には、ロール紙Pを給紙カセット1の外部に巻出すための給紙口12が形成されている。
【0020】
図2と図3には、給紙蓋20を閉じた状態と給紙蓋20を開いた状態の給紙カセット1が示されている。給紙蓋20は、連結アーム60により支持軸61を中心として回動可能に構成され、給紙蓋20を上方に回動させると、給紙蓋20が閉じられる。つまり、給紙カセット1は、給紙蓋20を開いてカセット本体10(本体シャーシ10´)にロール紙Pを収納した後に、給紙蓋20を閉じることで、プリンタ本体に装着可能となる。なお、給紙蓋20の内側には、給紙蓋20を閉じた状態で、給紙蓋20の内面がロール紙Pの外周面に接触しないように、回転ローラ13が取付けられている。
【0021】
図4には、給紙カセット1を装着したプリンタの内部状態が示されている。ロール紙Pは、プリンタに装着された給紙カセット1に収納されており、給紙ローラ2の回転駆動により給紙口12から巻出される。給紙口12を通過したロール紙Pは、サーマルヘッド3とプラテンローラ4の間に配置され、グリップローラ5とピンチローラ6により搬送される。
【0022】
また、インクリボンRは、プリンタ本体に回動自在に設けられた巻取りスプール用係合部7と供給スプール用係合部8に係合し、サーマルヘッド3とプラテンローラ4の間を通過するように配置される。そして、インクリボンRは、印画対象となる画像データに応じて回動する巻取りスプール用係合部7により供給スプールから引出され、サーマルヘッド3とプラテンローラ4の間を通過し、巻取りスプール用係合部7に係合した巻取りスプールに巻取られる。
【0023】
サーマルヘッド3には、複数の発熱素子(不図示)がライン状にロール紙Pの幅方向に配列されている。そして、サーマルヘッド3は、非印画時には、プラテンローラ4から少し離れて位置しているが、印画開始時には、プラテンローラ4を押圧し、発熱素子の配列部分とプラテンローラ4の間にインクリボンRとロール紙Pを挟みこむ。つまり、サーマルヘッド3の発熱素子は、プラテンローラ4上でインクリボンRを介してロール紙Pを押圧する。
【0024】
そして、画像データが入力されると、グリップローラ5の回転駆動によりロール紙Pが順次搬送される。また、巻取りスプール用係合部7の回転駆動によりロール紙Pと同じ速度でインクリボンRが順次巻取られる。同時に、サーマルヘッド3上の発熱素子が駆動制御信号により選択的に通電駆動され、発熱素子からインクリボンRに熱エネルギーが供給される。すると、発熱素子の発熱量に応じて、インクリボンRに塗布されたインクがロール紙Pに転写されて印画が行われる。そして、印画後のロール紙Pは、カッター(不図示)により印画部分が切断され、排紙口(不図示)から排出される。
【0025】
[2.補助アーム50を伴わない給紙カセット1]
つぎに、図5から図8を参照して、補助アーム50を伴わない給紙カセット1の構成および動作について説明する。なお、図5から図8は、カセット本体10からカバー部材が取外された状態を示している。
【0026】
図5には、給紙蓋20を開いた状態の給紙カセット1が示されている。図6と図7には、給紙蓋20を閉じた状態の給紙カセット1が示されている。ロール紙Pは、図6では使用開始時の状態(未消費の状態)にあり、図7では使用開始後の状態(消費された状態)にある。
【0027】
給紙カセット1は、カセット本体10の本体シャーシ10´と、給紙蓋20とを有し、給紙カセット1内には、押圧アーム30と、捩りバネ40(付勢部材)と、連結アーム60と、第1および第2のロック機構70、75とが設けられている。
【0028】
ロール紙Pは、長尺の記録紙を巻芯(不図示)に巻付けて構成され、巻芯にはペーパーホルダ81が挿入されている。ペーパーホルダ81には、本体シャーシ10´のV字溝14に挿入されるペーパー軸82が設けられている。
【0029】
給紙蓋20は、一端が本体シャーシ10´の支点軸15に回動可能に支持されている。給紙蓋20の他端には、第2のロック機構75の係合溝76に係合する係合突起21が設けられている。また、給紙蓋20の中央部には、給紙蓋20が閉じられた状態で、後述する補助アーム50の押圧面51により押圧される面22が設けられている。
【0030】
押圧アーム30は、一端が本体シャーシ10´の回転支点軸16に回動可能に支持されている。押圧アーム30の他端の上面には、ペーパー軸82をV字溝14に沿って移動させる押圧面31が形成されている。押圧アーム30の他端の側面には、連結アーム60の案内溝62内を移動する案内突起32が設けられている。
【0031】
捩りバネ40は、中央部が押圧アーム30とともに回転支点軸16により支持され、一端が押圧アーム30に連結されている。ここで、補助アーム50を伴わない給紙カセット1では、捩りバネ40の他端41は、プリンタ本体に固定された固定支持部材91に支持されている。捩りバネ40には、押圧アーム30を上向きに回動するように復元力Frが作用する。
【0032】
連結アーム60は、一端が給紙蓋20の支点軸61に回動可能に支持されている。連結アーム60には、押圧アーム30の案内突起32と係合する案内溝62が長手方向に設けられている。
【0033】
第1のロック機構70は、給紙蓋20が開いた状態で、捩りバネ40の復元力Frにより給紙蓋20が上向きに回動しないように、押圧アーム30の回動を規制する。第1のロック機構70は、給紙蓋20が完全に開いた状態で、押圧アーム30を本体シャーシ10´に固定し、給紙蓋20が閉じかけた状態(給紙蓋20を僅かに持上げる力が作用した状態)で、押圧アーム30の固定を解除する。第1のロック機構70には、押圧アーム30の固定を維持するためにバネ71が設けられている。
【0034】
第2のロック機構75は、給紙蓋20が閉じた状態で、給紙蓋20が下向きに回動しないように、給紙蓋20の回動を規制する。第2のロック機構75には、給紙蓋20の係合突起21に係合する係合溝76が設けられている。第2のロック機構75には、給紙蓋20が閉じられた状態で、移動中や印画中に給紙蓋20と本体シャーシ10´との間に生じるガタツキを防止するために、給紙蓋20を下向きに付勢して係合突起21と係合溝76の係合を強固にするバネ(不図示)が設けられている。
【0035】
図5に示す状態から給紙蓋20を閉じる場合、ユーザが支点軸15を中心として給紙蓋20を僅かに持ち上げる。すると、第1のロック機構70による押圧アーム30の固定が解除され、捩りバネ40の復元力Frにより押圧アーム30が上向きに回動する。押圧アーム30が回動すると、押圧アーム30の押圧面31によりペーパー軸82がV字溝14に沿って押上げられ、給紙ローラ2にロール紙Pが押圧される。そして、ユーザが支点軸15を中心として給紙蓋20をさらに持上げると、連結アーム60の回動を伴いながら、給紙蓋20が上向きに回動して閉じられる。給紙蓋20を完全に閉じると、係合突起21と係合溝76の係合を通して、第2のロック機構75により給紙蓋20の下向きの回動が規制される。
【0036】
図8には、捩りバネ40に作用する力が示されている。図8に示すように、給紙蓋20を閉じた状態では、ロール紙Pには、ロール紙Pの自重Wとともに捩りバネ40の復元力Frが作用している。そして、ロール紙Pは、ロール紙Pの自重Wと捩りバネ40の復元力Frの差分に相当する力Fpで給紙ローラ2に押圧されている。ここで、捩りバネ40の復元力Frは、バネ40の自由角度に対して捩れ角θを生じさせることで発生している。
【0037】
ここで、捩りバネ40には、ロール紙Pの重量が大きいほど大きな復元力Frが作用し、ロール紙Pの重量が小さくなるほど小さな復元力Frが作用する。そして、押圧アーム30は、ロール紙Pの消費に応じてロール紙Pを給紙ローラ2側に移動させる。よって、給紙ローラ2とロール紙Pの間の圧接力は、ロール紙Pの自重Wと捩りバネ40の復元力Frとのバランスにより、常に一定となり、給紙ローラ2のトルクを安定させることができる。
【0038】
一方、図6または図7に示す状態から給紙蓋20を開く場合、ユーザが本体シャーシ10´側に給紙蓋20を押付ける。すると、第2のロック機構75では、バネ力に抗して係合突起21と係合溝76(図5参照)の係合が解かれ、給紙蓋20の固定が解除される。そして、ユーザが支点軸15を中心として給紙蓋20を下げると、連結アーム60が回動し、給紙蓋20が下向きに回動してある程度開かれる。ここで、連結アーム60の回動に応じて、連結アーム60の案内溝62が押圧アーム30の案内突起32に係止されるまで移動する。
【0039】
そして、ユーザが給紙蓋20をさらに下げると、案内突起32と案内溝62の係止を通じて、押圧アーム30が捩りバネ40の復元力Frに抗して回転支点軸16を中心として下向きに回動する。さらに、押圧アーム30の回動によりロール紙Pの押圧が解除され、ペーパー軸82がV字溝14に沿って屈曲部(V字の頂点)まで自重Wにより降下する。給紙蓋20を完全に開くと、第1のロック機構70により給紙蓋20の上向きの回動が規制される。これにより、ロール紙Pを給紙カセット1から容易に取出すことができる。
【0040】
給紙蓋20を完全に開く場合、ユーザは、捩りバネ40の復元力Frに抗して押圧アーム30を下向きに回動させる必要がある。ここで、給紙蓋20を閉じた状態から完全に開いた状態にするまでに、捩りバネ40に捩れ角Δθをさらに生じさせる場合を想定する。この場合、ユーザは、給紙蓋20を完全に開くために、最大Fo=k(θ+Δθ)の力を捩りバネ40に作用させる必要がある。そして、ロール紙Pが重量化すると、捩れ角θが大きくなり、ユーザは、捩りバネ40に大きな力を作用させる必要がある。
【0041】
[3.補助アーム50を伴う給紙カセット1]
つぎに、図9と図10を参照して、補助アーム50を伴う給紙カセット1の構成および動作について説明する。
【0042】
図9と図10には、本発明の実施形態に係る補助アーム50を伴う給紙カセット1が示されている。図9と図10には、給紙蓋20を開いた状態と閉じた状態の給紙カセット1が各々に示されている。なお、図9と図10も、カセット本体10からカバー部材が取外された状態を示している。
【0043】
給紙カセット1内には、押圧アーム30、捩りバネ40、連結アーム60、第1および第2のロック機構70、75の他に、補助アーム50が設けられている。また、プリンタ本体には、補助アーム50の水平移動を案内するガイド93が設けられている。給紙カセット1内には、幅や巻き径の増加により重量化されたロール紙Pが収納されている。
【0044】
ここで、図9と図10に示す給紙カセット1では、捩りバネ40の他端41は、プリンタ本体に移動可能に支持された可動支持部材92に支持されている。捩りバネ40の他端41は、可動支持部材92がガイド93の案内溝94に係合して移動することで、回転支点軸16を中心として移動する。
【0045】
補助アーム50は、本体シャーシ10´に対して水平移動可能な略L字状の部材である。補助アーム50は、補助アーム50の水平移動を案内する案内溝53を介して本体シャーシ10´に支持されている。補助アーム50には、給紙蓋20を押圧する押圧面51が一端に形成され、可動支持部材92を押圧する押圧面52(図10参照)が他端に形成されている。
【0046】
図9に示す状態から給紙蓋20を閉じる場合、ユーザが支点軸15を中心として給紙蓋20を僅かに持ち上げる。すると、第1のロック機構70による押圧アーム30の固定が解除され、捩りバネ40の復元力Frにより押圧アーム30が上向きに回動する。そして、ユーザは、給紙蓋20の面22が補助アーム50の押圧面51に当接するまで給紙蓋20を上向きに回動させる。
【0047】
ユーザは、補助アーム50に当接した給紙蓋20を上向きにさらに回動させる。すると、給紙蓋20の回動により、補助アーム50は、給紙カセット1の背面側(図9では右側)に移動し、押圧面52を通じて可動支持部材92を背面側に押圧する。可動支持部材92の押圧により、可動支持部材92により支持された捩りバネ40の他端41が背面側に移動し、捩りバネ40には、他端41の移動量に応じた捩れ角Δθが生じることになる。ここで、押圧アーム30には、捩れ角Δθの発生により上向きの回動力が作用することになる。
【0048】
一方、ロール紙Pは、押圧アーム30の押圧面31によりペーパー軸82がV字溝14に沿って押上げられることで、給紙ローラ2に押圧される。給紙蓋20を完全に閉じると、係合突起21と係合溝76の係合を通して、第2のロック機構75により給紙蓋20の下向きの回動が規制される。これにより、捩りバネ40に生じた捩れ角Δθにより、押圧アーム30による押圧力を増強することができる。
【0049】
ここで、給紙蓋20を完全に閉じた状態では、捩れ角Δθに相当する力により給紙蓋20を本体シャーシ10´に押し付ける力が作用している。よって、第2のロック機構75では、バネを設けずとも、係合突起21と係合溝76の係合を強固にすることができる。
【0050】
給紙蓋20を閉じた状態では、ロール紙Pには、ロール紙Pの自重Wとともに捩りバネ40の復元力Frが作用している。そして、ロール紙Pは、ロール紙Pの自重Wと捩りバネ40の復元力Frの差分に相当する力Fpで給紙ローラ2に押圧されている。ここで、捩りバネ40の復元力Frは、バネ40の自由角度に対して捩れ角θとΔθを生じさせることで発生している。
【0051】
捩れ角の成分Δθは、補助アーム50の作用による捩りバネ40の他端41の移動により生じている。そして、捩れ角θとΔθに相当する復元力Frにより、ロール紙Pの自重Wと捩りバネ40の復元力Frがバランスしている。この場合、ユーザは、給紙蓋20を完全に閉じるために、最大Fc´=k(θ+Δθ)の力を捩りバネ40に作用させる必要がある。
【0052】
一方、図10に示す状態から給紙蓋20を開く場合、ユーザが本体シャーシ10´側に給紙蓋20を押付ける。すると、第2のロック機構75では、バネ力に抗して係合突起21と係合溝76(図9参照)の係合が解かれ、給紙蓋20の固定が解除される。そして、捩りバネ40の復元力Frにより補助アーム50が給紙カセット1の正面側(図10では左側)に移動し、補助アーム50の押圧により給紙蓋20が下向きに回動する。これにより、捩りバネ40では、復元力Frのうち捩れ角Δθに相当する部分が解放される。
【0053】
そして、ユーザが給紙蓋20をさらに下向きに回動させると、連結アーム60が回動し、給紙蓋20が下向きに回動してさらに開かれる。ここで、連結アーム60の回動に応じて、連結アーム60の案内溝62が押圧アーム30の案内突起32に係止するまで移動する。そして、ユーザが給紙蓋20をさらに下げると、案内突起32と案内溝62の係止を通じて、押圧アーム30が捩りバネ40の復元力Frに抗して回転支点軸16を中心として下向きに回動する。
【0054】
さらに、押圧アーム30の回動によりロール紙Pの押圧が解除され、ペーパー軸82がV字溝14に沿って屈曲部まで自重Wで降下する。給紙蓋20を完全に開くと、第1のロック機構70により給紙蓋20の上向きの回動が規制される。これにより、ロール紙Pを給紙カセット1から容易に取出すことができる。
【0055】
給紙蓋20を完全に開く場合、ユーザは、捩りバネ40の復元力Frに抗して押圧アーム30を下向きに回動させる必要がある。ここで、給紙蓋20を閉じた状態から完全に開いた状態にするまでに、捩りバネ40に捩れ角Δθをさらに生じさせる場合を想定する。この場合、補助アーム50の移動時に捩れ角Δθに相当する付勢力が解除されているので、ユーザは、給紙蓋20を完全に開くために、最大Fo´=k(θ+Δθ)の力を捩りバネ40に作用させる必要がある。
【0056】
[4.捩りバネ40に作用する力]
図11には、補助アーム50を伴わない場合における給紙蓋20の開閉時に捩りバネ40に作用する力が示されている。図11に示すように、補助アーム50を取付けない場合、捩りバネ40の他端41が固定支持部材91に支持されている。
【0057】
給紙蓋20を閉じた状態では、図8に示したように、捩りバネ40には、バネの自然角度に対して捩れ角θが生じている。捩りバネ40は、捩れ角θに相当する復元力Frでロール紙Pを給紙ローラ2に適切に圧接させる。
【0058】
給紙蓋20を閉じる場合(図11の状態1)、捩りバネ40は、捩れ角θ+Δθの状態から捩れ角θの状態に遷移する。ここで、捩りバネ40では、復元力Frにより捩れ角θ+Δθの状態から捩れ角θの状態への遷移が生じる。よって、ユーザは、給紙蓋20を閉じるために力を要しない(Fc=0)。
【0059】
また、給紙蓋20を開く場合(図11の状態2)、捩りバネ40は、捩れ角θの状態から捩れ角θ+Δθの状態に遷移する。よって、ユーザは、給紙蓋20を開くために、最大Fo=k(θ+Δθ)の力を要することになる。
【0060】
図12には、補助アーム50を伴う場合における給紙蓋20の開閉時に捩りバネ40に作用する力が示されている。図12に示すように、補助アーム50を取付けた場合、捩りバネ40の他端41が可動支持部材92に支持されている。
【0061】
給紙蓋20を閉じた状態では、捩りバネ40には、バネの自然角度に対して捩れ角θ+Δθが生じている。捩れ角の成分Δθは、捩りバネ40の復元力Frを増加させるために、補助アーム50の作用により、捩りバネ40の他端41を移動させることで生じる。捩りバネ40は、捩れ角θ+Δθに相当する復元力Frで重量化したロール紙Pを給紙ローラ2に適切に圧接させる。
【0062】
給紙蓋20を閉じる場合(図12の状態1)、捩りバネ40は、捩れ角θ+Δθの状態から捩れ角θ+Δθの状態に遷移する。ここで、捩りバネ40は、復元力Frにより捩れ角θ+Δθの状態から捩れ角θの状態へ遷移した後、補助アーム50の作用により捩れ角θ+Δθの状態に遷移する。この状態で、捩りバネ40の他端41は、第2の位置に移動されている。よって、ユーザは、給紙蓋20を閉じるために、最大Fc´=k(θ+Δθ)の力を要することになる。
【0063】
また、給紙蓋20を開く場合(図12の状態2)、捩りバネ40は、捩れ角θ+Δθの状態から捩れ角θ+Δθの状態に遷移する。ここで、捩りバネ40は、復元力Frにより捩れ角θ+Δθの状態から捩れ角θの状態へ遷移する。この状態で、捩りバネ40の他端41は、第1の位置に移動されている。さらに、捩りバネ40は、捩れ角θ+Δθの状態に遷移する。よって、ユーザは、給紙蓋20を開くために、最大Fo´=k(θ+Δθ)の力を要することになる。
【0064】
つまり、ロール紙Pが重量化すると、補助アーム50を取付けない場合、ユーザは、給紙蓋20を開く時にロール紙Pの重量増分に見合う力を余計に作用させる必要がある。しかし、補助アーム50を取付けた場合、補助アーム50の作用により、給紙蓋20を開く時に作用させていた力を、給紙蓋20を開く時と閉じる時に分散して作用させることができる。よって、ユーザは、分散して力を作用させることで、給紙蓋20を開く時に余計に作用させる力を低減することができる。
【0065】
さらに、ユーザは、補助アーム50を取付けるとともにバネ定数を適切に設定することで、ロール紙Pの重量化にも拘らず、補助アーム50を取付けない場合よりも、給紙蓋20の開閉に要する力を低減することができる。このために、バネ定数は、捩れ角の成分ΔθがΔθ未満となるように設定される。すると、補助アーム50を用いて給紙蓋20を閉じるための最大力Fc´は、補助アーム50を用いずに給紙蓋20を開くための最大力Foまたは補助アーム50を用いて給紙蓋20を開くための最大力Fo´よりも小さくなる。よって、ロール紙Pの重量化にも拘らず、給紙蓋20の開閉に要する力が低減される。
【0066】
[5.まとめ]
以上説明したように、本発明の実施形態に係る給紙カセット1によれば、ロール紙Pを給紙ローラ2に押圧する付勢力を、給紙蓋20を閉じる力で増強し、給紙蓋20を開く時に解除することで、給紙蓋20を容易に開くことができる。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0068】
例えば上記説明では、付勢部材として捩りバネ40を用いる場合について説明した。しかし、付勢部材としては、コイルバネ、板バネ等のバネ部材、または他の弾性部材が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 給紙カセット
2 給紙ローラ
10 カセット本体
10´ 本体シャーシ
20 給紙蓋
30 押圧アーム
40 捩りバネ(付勢部材)
50 補助アーム
60 連結アーム
70 第1のロック機構
75 第2のロック機構
P ロール紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙を収納するために開閉される給紙蓋と、
一端が回動可能に支持され、他端が前記ロール紙の軸を支持可能であり、前記ロール紙を給紙ローラに押圧するように付勢された押圧アームと、
一端が前記押圧アームに連結され、他端が第1の位置と、前記第1の位置よりも大きな付勢力を生じさせる第2の位置との間で移動可能に支持された付勢部材と、
前記給紙蓋を閉じた時に前記付勢部材の他端を前記第2の位置に移動させ、前記給紙蓋を開いた時に前記付勢部材の他端を前記第1の位置に移動させる補助アームと
を備える給紙カセット。
【請求項2】
前記押圧アームは、前記付勢部材の他端を前記第2の位置に移動させた状態で前記付勢部材に生じた付勢力により、前記ロール紙を前記給紙ローラに押圧する、請求項1に記載の給紙カセット。
【請求項3】
前記付勢部材は、前記第1の位置と前記第2の位置の間の移動量が、前記給紙蓋を閉じた状態から完全に開いた状態にする場合に生じる移動量よりも小さくなるように設定される、請求項1に記載の給紙カセット。
【請求項4】
前記補助アームは、前記給紙蓋により押圧されて前記付勢部材の他端を前記第2の位置に移動させ、前記給紙蓋による押圧を解除されて前記付勢部材の他端を前記第1の位置に移動させる、請求項1に記載の給紙カセット。
【請求項5】
前記押圧アームは、前記給紙蓋を閉じた状態では、前記ロール紙を前記給紙ローラに押圧するように前記ロール紙の軸を支持し、前記給紙蓋を開いた状態では、前記ロール紙の軸の支持を解除して前記ロール紙を交換可能な位置に移動させる、請求項1に記載の給紙カセット。
【請求項6】
前記付勢部材は、前記押圧アームの回転支点軸を捩り中心軸とする捩りバネである、請求項1に記載の給紙カセット。
【請求項7】
給紙ローラと、給紙カセットとを備える画像形成装置であって、
前記給紙カセットは、
ロール紙を収納するために開閉される給紙蓋と、
一端が回動可能に支持され、他端が前記ロール紙の軸を支持可能であり、前記ロール紙を前記給紙ローラに押圧するように付勢された押圧アームと、
一端が前記押圧アームに連結され、他端が第1の位置と、前記第1の位置よりも大きな付勢力を生じさせる第2の位置との間で移動可能に支持された付勢部材と、
前記給紙蓋を閉じた時に前記付勢部材の他端を前記第2の位置に移動させ、前記給紙蓋を開いた時に前記付勢部材の他端を前記第1の位置に移動させる補助アームとを有し、
前記付勢部材の他端を移動可能に支持する可動支持部をさらに備える画像形成装置。
【請求項8】
ロール紙を収納するために開閉される給紙蓋と、一端が回動可能に支持され、他端が前記ロール紙の軸を支持可能であり、前記ロール紙を給紙ローラに押圧するように付勢された押圧アームと、一端が前記押圧アームに連結され、他端が第1の位置と、前記第1の位置よりも大きな付勢力を生じさせる第2の位置との間で移動可能に支持された付勢部材と、前記付勢部材の他端を移動させる補助アームとを有する給紙カセットを開閉する方法であって、
前記給紙蓋を閉じた時に前記補助アームを介して前記付勢部材の他端を前記第2の位置に移動させ、
前記給紙蓋を開いた時に前記補助アームを介して前記付勢部材の他端を前記第1の位置に移動させること
を含む給紙カセットの開閉方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−62188(P2012−62188A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209834(P2010−209834)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】