説明

給紙ローラーの塗装方法および塗装装置

【課題】水系塗料を用いて給紙ローラーを塗装する塗装方法を提案すること。
【解決手段】給紙ローラーの塗装方法は、水平な姿勢の給紙ローラー本体100をその中心軸線回りに回転させながら、第1ノズル41を用いて略水平方向から水系塗料を吹き付けて、当該給紙ローラー本体100の外周面に下地塗膜層を形成する。次に、水平な姿勢に保持した給紙ローラー本体100Aをその中心軸線回りに回転させながら、その下地塗膜層の表面に第2ノズル42を用いて水平方向から粉体を吹き付けて粉体層を形成する。次に、水平な姿勢に保持した給紙ローラー本体100Bをその中心軸線回りに回転させながら、粉体層の表面に第3ノズル43を用いて略水平方向から水系塗料を吹き付けて、当該粉体層の表面を覆う表面塗膜層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンターなどにおいて紙などのシート状の記録媒体を搬送するために用いる給紙ローラーの塗装方法および塗装装置に関する。さらに詳しくは、セラミック粉体などの粉体を含む水系塗料を給紙ローラーの外周面に塗布するための塗装方法および塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給紙ローラー(搬送ローラー)は、細長い円柱状の軸体の円形外周面に、耐摩耗性および摩擦係数の高い合成樹脂塗料が塗布された構成となっている。合成樹脂塗料には摩擦係数を高めるためにセラミック粉体、アルミナ粉体などの粉体が含まれている。給紙ローラー用の塗料としては一般に溶剤系合成樹脂塗料が使用されている。特許文献1には、シート搬送ローラーの表面にプライマー層を形成した後に、その上にアルミナ粒子を含む溶剤系合成樹脂塗料を塗布する方法および装置が提案されている。また、特許文献2には、溶剤系塗料をローラー本体に塗布した後にセラミック粉体を吹き付けてシート搬送ローラーを製造する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−246069号公報
【特許文献2】特開2001−158545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、環境保護等の観点からは溶剤系塗料の代わりに環境負荷の少ない水系塗料を用いることが望ましい。しかしながら、水系塗料にセラミック粉体などの粉体を混合させたものを塗布する場合には、溶剤系塗料に比べて粉体が分離して沈降しやすいので、スプレーガンのノズルが短時間で詰まってしまうという問題が発生する。また、溶剤系塗料に比べて乾燥に時間が掛かるので塗布した塗料がダレやすく、均一な塗膜を形成することが困難である。
【0005】
特許文献2において提案されているように、ローラー本体に塗料のみを塗布した後に、粉体をその上に吹き付けて塗布することが考えられるが、水系塗料の場合には粉体の定着あるいは固着強度が低く、耐摩耗性あるいは耐久性の高い塗装を得ることができないという問題点がある。また、塗装工程を複数に分けた場合には塗装装置の構成が大掛かりとなり、設置スペースを多く必要とし、製造コストも高くなるという問題点がある。
【0006】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、水系塗料を用いて耐摩耗性および摩擦係数の高い均一な塗膜を給紙ローラー表面に形成することができ、しかも、装置構成をコンパクトにすることのできる給紙ローラーの塗装方法および塗装装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、給紙ローラーの外周面にセラミックあるいは金属の粉体を含む水系塗料を塗布する給紙ローラーの塗装方法であって、
水平な姿勢に保持した軸状の給紙ローラーをその中心軸線回りに回転させながら、当該給紙ローラーの外周面に水系塗料を吹き付けて、当該給紙ローラーの外周面に下地塗膜層を形成し、
水平な姿勢に保持した給紙ローラーをその中心軸線回りに回転させながら、当該給紙ローラーの外周面に形成した下地塗膜層の表面に水平方向から粉体を吹き付けて、当該下地塗膜の表面を覆う粉体層を形成し、
水平な姿勢に保持した給紙ローラーをその中心軸線回りに回転させながら、当該給紙ローラーの外周面に形成した粉体層の表面に水系塗料を吹き付けて、当該粉体層の表面を覆う表面塗膜層を形成することを特徴としている。
【0008】
本発明の塗装方法では、給紙ローラーの外周面に水系塗料を塗布した後にセラミック粉体などの粉体を塗布し、しかる後に、その上に再度、水系塗料を塗布している。このように、粉体が水系塗料によって挟まれた三層状態の塗膜層を形成することにより、耐摩耗性および摩擦係数の高い塗膜を形成することができる。また、本発明の塗装方法では、水平な姿勢に保持した給紙ローラーをその中心軸線回りに回転させながら水系塗料を吹き付けているので、塗布された水系塗料のダレを防止でき、全体として均一な塗膜を形成することができる。さらに、水平な姿勢に保持した給紙ローラーをその中心軸線回りに回転させながら粉体を水平方向から吹き付けているので、全体として均一な粉体塗膜を形成することができる。
【0009】
ここで、3つの塗布工程からなる塗装を効率良く行うためには、
水平な姿勢に保持した給紙ローラーを、当該給紙ローラーの中心軸線に平行な軸線を中心とする円形の循環経路に沿って所定の回転角度毎に間欠的に移動させ、
当該循環経路における給紙ローラーの一時停止位置の一つを下地塗膜層の形成位置とし、
循環経路における下地塗膜層の形成位置の下流側の一時停止位置を、粉体層の形成位置とし、
循環経路における粉体層の形成位置の下流側の一時停止位置を、表面塗膜層の形成位置とし、
循環経路における表面塗膜層の形成位置の下流側で、且つ、下地塗膜層の形成位置の上流側の一時停止位置を、塗装後の給紙ローラーの代わりに塗装対象の新たな給紙ローラーを循環経路に供給する供給位置とすることが望ましい。
【0010】
また、3つの塗布工程からなる塗装をコンパクトな装置構成で行うためには、下地塗膜層形成用の水系塗料の第1吹き付けノズルと、粉体層形成用の粉体の第2吹き付けノズルと、表面塗膜層形成用の水系塗料の第3吹き付けノズルとを、同一の駆動機構を用いて、給紙ローラーの中心軸線の方向に同時に移動させながら同時に塗装を行うようにすることが望ましい。
【0011】
さらに、セラミック粉体あるいは金属粉体からなる粉体層を均一に形成するためには、第2吹き付けノズルに対して正確に定量ずつ粉体を供給する必要がある。このためには、粉体タンクの下端開口から、水平に配置したスクリューコンベアに粉体を自然落下させ、スクリューコンベアの回転数を制御することにより、第2吹き付けノズルに向けて供給される粉体の量を調整することが望ましい。
【0012】
また、粉体タンク内において粉体が固まって下端開口から落下しなくなることを防止するために、粉体タンクに振動を与えて、当該粉体タンク内に堆積した粉体を下端開口の側に落下させることが望ましい。
【0013】
次に、本発明は、上記の塗装方法を実施するための給紙ローラーの塗装装置であって、
給紙ローラーを循環させるための円形の循環経路と、
円形の循環経路に沿って一定の角度間隔で配置されている給紙ローラー供給位置、第1の水系塗料塗布位置、粉体塗布位置、および第2の水系塗料塗布位置と、
給紙ローラーを水平な姿勢に保持した状態で、循環経路に沿って一定の角度毎に間欠的に循環させる給紙ローラー間欠送り機構と、
第1の水系塗料塗布位置、粉体塗布位置および第2の水系塗料塗布位置において、給紙ローラー間欠送り機構によって水平に保持されている給紙ローラーをその中心軸線回りに回転させる給紙ローラー回転機構と、
第1の水系塗料塗布位置に一時停止した給紙ローラーに対して直交する方向から水系塗料を吹き付け可能な第1ノズルと、
粉体塗布位置に一時停止した給紙ローラーに対して直交する水平方向から粉体を吹き付け可能な第2ノズルと、
第2の水系塗料塗布位置に一時停止した給紙ローラーに対して直交する方向から水系塗料を吹き付け可能な第3ノズルと、
第1、第2および第3ノズルを、一時停止した給紙ローラーに沿った水平方向に直線往復移動させるノズル移動機構とを有していることを特徴としている。
【0014】
ここで、前記給紙ローラー間欠送り機構は、円筒面に沿って一定の角度間隔で給紙ローラーを保持する複数の給紙ローラー保持部を備えた回転籠と、この回転籠をその中心軸線回りに一定の角度間隔毎に間欠的に回転させる回転駆動機構とを備えた構成とすることができる。この場合には、前記第1、第2および第3ノズル、並びに前記ノズル移動機構を回転籠の内側に配置し、第1、第2および第3ノズルを同時にノズル移動機構によって移動させて、回転籠の内側から給紙ローラーに対して水系塗料、粉体を吹き付けるようにすれば、装置構成をコンパクトにすることができる。
【0015】
粉体の供給機構を、粉体タンクと、この粉体の下端開口から自然落下する粉体が供給されるスクリューコンベアから構成し、スクリューコンベアの回転数を制御することにより、第2ノズルにスクリューコンベアによって定量ずつ粉体を供給することが可能である。また、粉体タンクに振動を与える加振機構を有していることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用した給紙ローラーの塗装装置を前側から見た場合の全体構成図である。
【図2】図1の塗装装置を後側から見た場合の回転籠を含む部分を示す説明図である。
【図3】図1の塗装装置を左側から見た場合の回転籠を含む部分を示す説明図である。
【図4】図1の塗装装置によって塗装される給紙ローラー本体、左右一対のホルダー、および、給紙ローラーを回転籠に取り付けた状態をそれぞれ示す説明図である。
【図5】図1の塗装装置の塗装動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して本発明を適用した給紙ローラーの塗装装置の実施の形態を説明する。なお、後述の図4(a)に示すように、本実施の形態の塗装装置によって塗装される給紙ローラー本体100は、細長い円柱状の金属製あるいはセラミック製のものであり、その両側の軸端部101、102を除く外周面部分103に多層塗布膜が形成される。
【0018】
図1を参照して説明すると、本実施の形態に係る給紙ローラー塗装装置1は、金属製の枠材を組み合わせて構成した全体として矩形枠状の装置架台2を備えており、装置架台2における上下方向の中程の位置には矩形のテーブル板3が水平に取り付けられている。テーブル板3の上には、円筒状の回転籠4が装置幅方向に水平に配置されている。回転籠4の左側には、回転籠4をその中心軸線回りに回転する回転駆動機構などを含む駆動機構部5が配置されており、当該駆動機構部5の前面の上端部分には操作盤6が配置されている。回転籠4の右側にはテーブル板3の上に水系塗料供給タンク7が搭載されており、テーブル板3の下側は、圧縮空気供給用のコンプレッサー(図示せず)などの機械が収納された機械室8となっている。
【0019】
図2は給紙ローラー塗装装置1の回転籠4を含む部分を背面側から見た場合の斜視図である。図1および図2を参照して説明すると、回転籠4は、一定の間隔を開けて同軸状態に配置した左垂直リング枠11および右垂直リング枠12と、これらの間において円周方向に沿って一定の角度間隔で水平に架け渡されている複数本の水平連結バー13から構成されている。右垂直リング枠12は、テーブル板3に取り付けた前後一対の支持ローラー14a、14bによって、その中心軸線回りに回転自在の状態で支持されている。
【0020】
回転籠4の左垂直リング枠11の外側端面には同軸状態で一定幅のリング15が固定されており、このリング15を介して、駆動機構部5の回転籠回転機構16(給紙ローラー間欠送り機構)によって、回転籠4がその中心軸線回りに回転駆動される。回転籠回転機構16は、リング15を下側から支持している駆動ローラー(図示せず)と、この駆動ローラーを回転駆動する駆動モーター16aを備えている。
【0021】
回転籠4における左垂直リング枠11および右垂直リング枠12の内側端面には、それぞれ、各水平連結バー13の間に位置するように、一定の角度間隔で左給紙ローラー保持筒17a、右給紙ローラー保持筒17bがそれぞれ取り付けられている。図1に示すように、対応する左右一対の給紙ローラー保持筒17a、17b(給紙ローラー保持部)の間に、塗装対象の給紙ローラー本体100を水平に取り付け可能である。
【0022】
図3は回転籠4を右側から見た場合の説明図である。この図に示すように、回転籠4に取り付けられた塗装対象の給紙ローラー本体100は、回転籠4の回転に伴って円形の循環経路Aに沿って搬送される。すなわち、装置前側の供給・取り外し位置21(給紙ローラー供給位置)、第1の水系塗料塗布位置22、セラミック粉体塗布位置23および第2の水系塗料塗布位置24を順次に経由して再び供給・取り外し位置21に戻る円形の循環経路に沿って循環する。
【0023】
ここで、回転籠4の左側の駆動機構部5には、左右の給紙ローラー保持筒17a、17bの間に架け渡した塗装対象の給紙ローラー本体100をその中心軸線回りに回転させるための給紙ローラー回転駆動機構30が配置されている。図2から分かるように、給紙ローラー回転駆動機構30は、回転籠4の左垂直リング枠11の外側端面に一定の角度間隔で取り付けた軸受け31を介して左給紙ローラー保持筒17aから同軸状に延びている軸部17cに固着したゴムローラー32を備えている。また、左垂直リング枠11の外側において、一定間隔で同軸状態に配置された2枚の垂直固定リング枠33、34を備えており、垂直固定リング枠33、34の間には、第1の水系塗料塗布位置22、セラミック粉体塗布位置23および第2の水系塗料塗布位置24に対応する角度位置に、それぞれ、駆動側ローラー35a、35b、35cが回転自在の状態で取り付けられている。
【0024】
ゴムローラー32は、回転籠4が回転して、各位置22、23、24に至ると、駆動側ローラー35a、35b、35cに対して所定の圧力で当接可能である。駆動側ローラー35a、35bは、これらに架け渡したベルト36aを介して、駆動モーター37aによって回転駆動される。駆動側ローラー35cは、これに架け渡したベルト36bを介して、駆動モーター37bによって回転駆動される。したがって、給紙ローラー本体100は、第1の水系塗料塗布位置22、粉体塗布位置23および第2の水系塗料塗布位置24に至ると、給紙ローラー回転駆動機構30によって、その中心軸線回りに回転する。
【0025】
次に、図2、図3から分かるように、回転籠4の内側には、第1の水系塗料塗布位置22に位置している給紙ローラー本体100に対して、直交する水平方向あるいは僅かに上側から水系塗料を吹き付け可能な第1ノズル41が配置されている。また、セラミック粉体塗布位置23に位置している給紙ローラー本体100に対して直交する水平方向からセラミック粉体を吹き付け可能な第2ノズル42が配置されている。さらに、第2の水系塗料塗布位置24に位置している給紙ローラー本体100に対して、直交する水平方向あるいは僅かに上側から水系塗料を吹き付け可能な第3ノズル43が配置されている。
【0026】
これらの第1、第2および第3ノズル41〜43は、ノズルスライド機構44(ノズル移動機構)によって回転籠4の中心軸線に沿った水平方向に直線往復移動可能である。ノズルスライド機構44は、第1〜第3ノズル41〜43が搭載されている共通のスライダ45を備えており、スライダ45は、装置架台2に水平に取り付けたスライドガイド46に沿って装置幅方向にスライド可能である。
【0027】
第1ノズル41、第3ノズル43には、装置架台2に搭載されている水系塗料タンク71から水系塗料が供給されると共に、同じく装置架台2に搭載されている圧縮空気供給源(図示せず)から圧縮空気が供給され、圧縮空気によって水系塗料が第1、第3ノズル41、43から吹き出される。これに対して、第2ノズル42には、スライダ45に搭載されている粉体供給機構50からセラミック粉体が供給され、圧縮空気供給源から圧縮空気が供給され、圧縮空気によってセラミック粉体が第2ノズル42から吹き出される。
【0028】
図2、図3を参照して説明すると、粉体供給機構50は、粉体タンク51と、この粉体タンク51の下端開口52の下側に水平に配置したボールねじからなるスクリューコンベア53と、スクリューコンベア53を回転駆動するサーボモーター54とを備えている。粉体タンク51の下端開口52からスクリューコンベア53にセラミック粉体が自然落下する。スクリューコンベア53によって、セラミック粉体が定量ずつ第2ノズル42に供給される。スクリューコンベア53の回転数を制御することにより第2ノズル42に供給されるセラミック粉体の量を調整できる。すなわち、サーボモーター54の回転数を駆動制御することにより第2ノズル42から吹き出されるセラミック粉体の量を正確に調整することができる。
【0029】
ここで、粉体タンク51の外側面には、当該粉体タンク51に振動を与えるための加振機構55が取り付けられている。本例の加振機構55はプランジャからなり、これを励磁することにより粉体タンク51の側面が振動する。振動を与えることにより、内部に貯留されているセラミック粉体が固まって下端開口52から落下しなくなるという弊害を回避できる。
【0030】
また、図2から分かるように、本例の第2ノズル42の前方には、当該第2ノズル42の移動範囲に亘って、上下一対の水平板56a、56bが配置されている。これらの水平板56a、56bの間には、一定間隔の粉体吹き出し通路が形成されており、この粉体吹き出し通路の後端開口に沿って第2ノズル42がセラミック粉体を吹き出しながら左右に往復移動する。粉体吹き出し通路の前端開口は、粉体吹き付け位置23に位置している給紙ローラー本体100に対して、微小間隔で対峙可能な位置にある。したがって、第2ノズル42から吹き出されたセラミック粉体は、外部に飛散することなく給紙ローラー本体100の外周面に対して、それに直交する水平方向から吹き付けられる。
【0031】
図4(a)には、給紙ローラー本体および当該給紙ローラー本体を回転籠に取り付けるための左右一対の取付け用ホルダーを示してある。給紙ローラー本体100は円形断面の細長い金属製の軸部材である。左右の取付け用ホルダー61、62は、所定長さの円筒部61a、62aと、これらの後端から同軸状に延びている矩形断面の差し込み用の軸部61b、62bとを備えている。
【0032】
図4(b)に示すように、給紙ローラー本体100の左側の軸端部101を左側の取付け用ホルダー61の円筒部61aに差し込み、右側の軸端部102を右側の取付け用ホルダー62の円筒部62aに差し込むことにより、左右の取付け用ホルダー61、62を給紙ローラー本体100の両軸端部に取り付けることができる。
【0033】
図4(c)に示すように、給紙ローラー本体100に取り付けたホルダー61、62の軸部61b、62bを、それぞれ、回転籠4における左右の給紙ローラー保持筒17a、17bに差し込むことにより、給紙ローラー本体100を回転籠4に水平に取り付けることができる。
【0034】
また、ホルダー61、62を取り付けた状態において、これらのホルダー61、62の間に露出している給紙ローラー本体100の外周面部分103が塗装部分である。したがって、ホルダー61、62の円筒部61a、62aの長さを変えることにより塗装対象の外周面部分100aを変更することができる。塗装装置1によって多層塗布膜が塗布された外周面部分100aは耐摩耗性および摩擦係数が高く、紙などの記録媒体を滑りなく精度良く搬送することができる。
【0035】
(塗装動作)
主として図5を参照して給紙ローラー塗装装置1における塗装動作を説明する。塗装動作において、操作盤6の操作部を介して入力された各種条件に基づき、予め設定されている制御シーケンス(プログラム)にしたがって各部が駆動される。
【0036】
まず、回転籠4を回転籠回転機構16によって一定の角度間隔で間欠的に回転駆動する。これにより、左右一対の給紙ローラー保持筒17a、17bからなる各給紙ローラー保持部が円形の循環経路に沿って間欠送りされる。図5(a)に示すように、給紙ローラー保持部が供給・取り外し位置21に一時停止する毎に、当該給紙ローラー保持部に塗装対象の給紙ローラー本体100を取り付ける。
【0037】
給紙ローラー保持部に取り付けられた給紙ローラー本体100が、装置後側の第1の水系塗料吹き付け位置22に至り、ここに一時停止すると、給紙ローラー回転駆動機構30における回転状態にある駆動側ローラー35aに係合した左給紙ローラー保持筒17aが回転を開始するので、これにより、給紙ローラー本体100がその中心軸線回りに回転を始める。また、ノズルスライド機構44によって第1〜第3ノズル41〜43が装置幅方向の一方の端から他方の端に向けてスライドを開始する。図5(b)に示すように、第1ノズル41からは水系塗料が吹き出され、回転している給紙ローラー本体100の外周面部分に吹き付けられる。第1ノズル41が移動することにより、給紙ローラー本体100の両側の軸端部101、102を除き、その外周面部分103(図4(c)参照)に均一な下地塗膜層が形成される。第1ノズル41が一往復あるいは複数回往復して水系塗料の吹き付け動作が終了する。
【0038】
この後は、回転籠4が一定角度だけ回転して、下地塗膜層が形成された給紙ローラー本体100Aは次の粉体吹き付け位置23に移動し、ここに一時停止する。粉体吹き付け位置23においても駆動側ローラー35bによって給紙ローラー本体100Aはその中心軸線回りに回転を開始する。この状態で、図5(c)に示すように、粉体供給機構50によって第2ノズル42にセラミック粉体が定量ずつ供給され、第2ノズル42が横方向に移動しながら、回転している給紙ローラー本体100Aの外周面にセラミック粉体を吹き付けて粉体膜を形成する。ここで、回転籠4における粉体塗布位置22よりも手前側の第1の水系塗料塗布位置22にも給紙ローラー本体100が位置しているので、第1ノズル41によって水系塗料の塗布動作が同時に行われる。
【0039】
粉体吹き付け動作が終了した後は、回転籠4が一定角度だけ回転して、粉体膜が形成された給紙ローラー本体100Bが次の第2の水系塗料吹き付け位置24に移動し、ここに一時停止する。第2の水系塗料吹き付け位置24においても駆動側ローラー35cによって給紙ローラー本体100Bはその中心軸線回りに回転を開始する。この状態で、図5(d)に示すように、第3ノズル43は水系塗料を吹き出しながら横方向に移動して、給紙ローラー本体100Bの外周面に表面塗布層を形成する。
【0040】
ここで、手前側の粉体吹き付け位置23では、粉体供給機構50によって第2ノズル42にセラミック粉体が定量ずつ供給され、第2ノズル42が横方向に移動しながら、回転している給紙ローラー本体100Aの外周面にセラミック粉体を吹き付けて粉体膜を形成する。また、回転籠4における粉体塗布位置23よりも手前側の第1の水系塗料塗布位置22にも給紙ローラー本体100が位置しているので、第1ノズル41によって水系塗料の塗布動作が同時に行われる。
【0041】
この後も、各位置22、23、24において塗布動作が行われながら回転籠4が一定角度毎に間欠的に回転し、塗装が終了した給紙ローラー本体100Cが装置前側の供給・取り出し位置21に戻る。この位置において、図5(e)に示すように、塗装終了後の給紙ローラー本体100Cを取り外し、代わりに、これから塗装を行う給紙ローラー本体100を取り付ける。このようにして、各給紙ローラー本体に対する3工程からなる塗装動作が順次に行われる。
【0042】
ここで、セミラック粉体の塗膜厚さなどを調整するためには、サーボモーター54を制御してスクリューコンベア53の回転数を制御すればよい。また、加振機構55を例えば定期的に駆動して粉体タンク51に振動を与えることにより、粉体タンク51内でセラミック粉体が固まって下端開口52からスクリューコンベア53の側に供給されなくなるという弊害を防止できる。
【0043】
以上説明したように、給紙ローラー塗装装置1では、水系塗料を用いて給紙ローラー本体100の塗装を行っているので、溶剤系塗料を用いる場合とは異なり、環境負荷が少ない。また、水系塗料を水平な姿勢で回転している給紙ローラー本体100の外周面に対して、それに直交する略水平方向から吹き付けるようにしているので、水系塗料のダレを防止でき、均一な塗膜を形成することができる。さらに、セラミック粉体を、水平な姿勢で回転している給紙ローラー本体100Aの外周面に対して、それに直交する水平方向から吹き付けるようにしているので、均一な厚さの粉体膜を形成することができる。さらには、粉体膜の表面に水系塗料を再度吹き付けてコーティングしているので、耐摩耗性に優れた高摩擦係数の円形外周面を備えた給紙ローラーを得ることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 給紙ローラー塗装装置
2 装置架台
3 テーブル板
4 回転籠
5 駆動機構部
6 操作盤
7 水系塗料供給タンク
8 機械室
11 左垂直リング枠
12 右垂直リング枠
13 水平連結バー
14a、14b 支持ローラー
15 リング
16 回転籠回転機構(給紙ローラー間欠送り機構)
16a 駆動モーター
17a 左給紙ローラー保持筒
17b 右給紙ローラー保持筒
21 供給取り外し位置
22 第1の水系塗料塗布位置
23 セラミック粉体塗布位置
24 第2の水系塗料塗布位置
30 給紙ローラー回転駆動機構
31 軸受け
32 ゴムローラー
33、34 垂直固定リング枠
35a、35b、35c 駆動側ローラー
36a、36b ベルト
37a、37b 駆動モーター
41 第1ノズル
42 第2ノズル
43 第3ノズル
44 ノズルスライド機構
45 スライダ
46 スライドガイド
50 粉体供給機構
51 粉体タンク
52 下端開口
53 スクリューコンベア
54 サーボモーター
55 加振機構
56a、56b 水平板
61、62 ホルダー
61a、62a 円筒部
61b、62b 軸部
100 給紙ローラー本体(塗装前)
100A 給紙ローラー本体(下地塗膜層形成後)
100B 給紙ローラー本体(粉体層形成後)
100C 給紙ローラー本体(表面塗膜形成後、塗装済)
101、102 軸端部
103 外周面部分
A 円形の循環経路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙ローラーの外周面にセラミックあるいは金属の粉体を含む水系塗料を塗布する給紙ローラーの塗装方法であって、
水平な姿勢に保持した給紙ローラーをその中心軸線回りに回転させながら、当該給紙ローラーの外周面に水系塗料を吹き付けて、当該給紙ローラーの外周面に下地塗膜層を形成し、
水平な姿勢に保持した給紙ローラーをその中心軸線回りに回転させながら、当該給紙ローラーの外周面に形成した下地塗膜層の表面に水平方向から粉体を吹き付けて、当該下地塗膜層の表面を覆う粉体層を形成し、
水平な姿勢に保持した給紙ローラーをその中心軸線回りに回転させながら、当該給紙ローラーの外周面に形成した粉体層の表面に水系塗料を吹き付けて、当該粉体層の表面を覆う表面塗膜層を形成することを特徴とする給紙ローラーの塗装方法。
【請求項2】
請求項1において、
水平な姿勢に保持した給紙ローラーを、当該給紙ローラーの中心軸線に平行な軸線を中心とする円形の循環経路に沿って所定の回転角度毎に間欠的に移動させ、
当該循環経路における給紙ローラーの一時停止位置の一つを下地塗膜層の形成位置とし、
循環経路における下地塗膜層の形成位置の下流側の一時停止位置を、粉体層の形成位置とし、
循環経路における粉体層の形成位置の下流側の一時停止位置を、表面塗膜層の形成位置とし、
循環経路における表面塗膜層の形成位置の下流側で、且つ、下地塗膜層の形成位置の上流側の一時停止位置を、塗装後の給紙ローラーの代わりに塗装対象の新たな給紙ローラーを循環経路に供給する供給位置としたことを特徴とする給紙ローラーの塗装方法。
【請求項3】
請求項2において、
下地塗膜層形成用の水系塗料の吹き付けノズルと、粉体層形成用の粉体の吹き付けノズルと、表面塗膜層形成用の水系塗料の吹き付けノズルとを、同一の駆動機構を用いて、給紙ローラーの中心軸線の方向に同時に移動させながら同時に塗装を行うことを特徴とする給紙ローラーの塗装方法。
【請求項4】
請求項3において、
粉体を貯留した粉体タンクの下端開口から、水平に配置したスクリューコンベアに粉体を自然落下させ、スクリューコンベアの回転数を制御することにより、粉体の吹き付けノズルに供給される粉体の量を調整することを特徴とする給紙ローラーの塗装方法。
【請求項5】
請求項4において、
粉体タンクに振動を与えて、当該粉体タンク内に堆積した粉体を下端開口の側に落下させることを特徴とする給紙ローラーの塗装方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法により、給紙ローラーの外周面に粉体を含む水系塗料を塗布する給紙ローラーの塗装装置であって、
給紙ローラーを循環させるための円形の循環経路と、
円形の循環経路に沿って一定の角度間隔で配置されている給紙ローラー供給位置、第1の水系塗料塗布位置、粉体塗布位置、および第2の水系塗料塗布位置と、
給紙ローラーを水平な姿勢に保持した状態で、循環経路に沿って一定の角度毎に間欠的に循環させる給紙ローラー間欠送り機構と、
第1の水系塗料塗布位置、粉体塗布位置および第2の水系塗料塗布位置において、給紙ローラー間欠送り機構によって水平に保持されている給紙ローラーをその中心軸線回りに回転させる給紙ローラー回転機構と、
第1の水系塗料塗布位置に一時停止した給紙ローラーに対して直交する方向から水系塗料を吹き付け可能な第1ノズルと、
粉体塗布位置に一時停止した給紙ローラーに対して直交する水平方向から粉体を吹き付け可能な第2ノズルと、
第2の水系塗料塗布位置に一時停止した給紙ローラーに対して直交する方向から水系塗料を吹き付け可能な第3ノズルと、
第1、第2および第3ノズルを、一時停止した給紙ローラーに沿った水平方向に直線往復移動させるノズル移動機構とを有していることを特徴とする給紙ローラーの塗装装置。
【請求項7】
請求項6において、
給紙ローラー間欠送り機構は、円筒面に沿って一定の角度間隔で給紙ローラーを保持する複数の給紙ローラー保持部を備えた回転籠と、この回転籠をその中心軸線回りに一定の角度間隔毎に間欠的に回転させる回転駆動機構とを備えており、
第1、第2および第3ノズル、並びに前記ノズル移動機構は回転籠の内側に配置されており、
第1、第2および第3ノズルは同時に前記ノズル移動機構によって移動させられることを特徴とする給紙ローラーの塗装装置。
【請求項8】
請求項7において、
粉体タンクと、
この粉体タンクの下端開口から粉体が自然落下により供給される水平に配置したスクリューコンベアとを有し、
スクリューコンベアの回転数を制御することにより、前記第2ノズルにはスクリューコンベアによって定量ずつ粉体を供給可能であることを特徴とする給紙ローラーの塗装装置。
【請求項9】
請求項8において、
粉体タンクに振動を与える加振機構を有していることを特徴とする給紙ローラーの塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−139664(P2012−139664A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−934(P2011−934)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(503387396)有限会社エス・ピー・エス (1)
【Fターム(参考)】