説明

給紙装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プリンタ、ファクシミリ等の記録装置に接続して使用され、この記録装置に用紙を1枚ずつ分離して給紙する給紙装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、プリンタなどの記録装置に接続され、この記録装置に、給紙スタッカに複数枚搭載された用紙を1枚ずつ分離して順次供給するための給紙装置が使用されている。
【0003】図5は、プリンタに接続されたこの種の従来の給紙装置の一例を示す要部断面図であり、この給紙装置1は、プリンタ10に接続された状態において、このプリンタ10の給紙口11に用紙を1枚ずつ分離供給するようになっている。
【0004】この給紙装置1の用紙を収容する給紙スタッカ2は、その下面に配設された板ばね3により上方に付勢され、収納された最上位の用紙を給紙ローラ4に押圧するようになっている。そして、この状態において図示しない駆動源により給紙ローラ4が駆動され、この給紙ローラ4の回転によって給紙スタッカ2に積層された用紙を分離爪8の働きにより自動的に1枚ずつ分離して、プリンタ10の給紙口11に供給するようになっている。この用紙はさらにプリンタ10の紙送りローラ13と、この紙送りローラ13に圧接する小ローラ14,15の働きにより印字部12に送られ、この印字部12において印字された用紙は、排紙ローラ5の働きによりこの排紙ローラ5に圧接された排紙ガイド6との間を通って排紙トレイ7内に導かれるようになっている。
【0005】ところで、このような給紙装置1においては、給紙された方向とほぼ同一の方向にプリンタ10の紙送りローラ13を介して用紙が円弧状に湾曲された状態において搬送されることになる。
【0006】このように用紙が湾曲された状態で搬送される場合、最近のように小型化されたプリンタにおいては、紙送りローラ13の外径も小さくすることを要求されていることから、薄い紙を使用する場合は送ることができるが、はがき等の厚い紙を使用する場合には、その腰の強さのために用紙送り不良が発生したり、あるいは、まったく用紙を送ることができないという事態が生じている。そのためプリンタの紙送りローラ10の外径を小さくすることができないばかりでなく、その駆動源としても大きな力を必要とするため、プリンタを小型化することには困難があった。
【0007】このような課題を解決するために、紙トレイ、印字装置(プリンタ)および排紙装置を用紙の移動経路がほぼ直線上になるように構成し、はがき等の腰の強い用紙を使用した場合でも小さい力で容易に信頼性よく送ることができるようにした給紙装置が、特開平2−29363号公報あるいは特開平2−29364号公報によりすでに提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前述した特開平2−29363号公報あるいは特開平2−29364号公報に開示されている給紙装置は、この給紙装置に形成した締結用凹部にプリンタの一部を嵌合することにより用紙の移動経路がほぼ直線状になるように構成していた。
【0009】しかしながら、前述したように構成すると、給紙装置の給紙部と排紙部とがプリンタの印字部を境として反対側に位置してしまうため、給紙装置の小型化が難しいという不都合があった。
【0010】本発明は、前述した課題を解決するためになされたもので、用紙を湾曲状に搬送するようにして小型化を可能とし、しかも、はがきのように腰の強い用紙でも安定的に搬送しうるようにした給紙装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記した目的を達成するために、本発明の給紙装置は、複数枚の用紙を収納しこの収納された用紙を1枚ずつ分離給紙する給紙部と、印字済みの用紙を排紙・収納する排紙部と、前記給紙部と排紙部との間に形成され記録装置を装着するための開口部とを有する給紙装置において、前記開口部を上フレームと下フレームとの間に形成するとともに、前記給紙部から前記開口部にかけて用紙を湾曲状に搬送するための紙ガイドを前記下フレームの底面部に設け、この紙ガイドの用紙が摺接する表面部位に、用紙との摩擦係数を低下させるための加工を施したことを特徴としている。
【0012】
【作用】本発明によれば、紙ガイドに、用紙との摩擦係数を低下させるための加工を施したので、紙ガイドに沿って湾曲状に搬送される用紙の先端縁が紙ガイドに引掛かるおそれがなくなり、したがって、腰の強い用紙でも安定的に搬送することができる。
【0013】
【実施例】図1ないし図4は本発明に係る給紙装置の実施例を示すものであり、図1は概略構成を示す全体の分解斜視図、図2は概略構成を示す全体の斜視図、図3および図4は図2のカバーを除去した状態におけるA方向からの側面図である。
【0014】図において、給紙ユニット21には複数枚の用紙が収容されるようになっており、この収容された用紙を1枚ずつ分離搬送するようになっている。この給紙ユニット21は、左右1対のホッパ22,22と、これらのホッパ22,22の間に配置され収容された用紙を支持する支持部材23とより構成されている。
【0015】このうち、前記各ホッパ22,22は、後述する下フレーム30の支持穴38に懸架されたシャフト26、および、図示しない両サイドのフレームに懸架されたシャフト27a,27bにその幅方向に摺動自在に保持されている。これらのシャフト27a,27bには、前記支持部材23もまた、その幅方向に摺動自在に保持されている。
【0016】前記ホッパ22,22は、用紙が載置される用紙載置台24,24と、用紙2の側部をガイドするガイド部材25,25と、用紙2を分離搬送する給紙ローラ28,28と、用紙2の背面を支持するホッパワイヤ29,29とにより構成されている。
【0017】このうち、前記用紙載置台24,24は、その下面に配設されたばね(図示せず)により給紙ローラ28,28方向に付勢されている。また、前記給紙ローラ28,28は、前記シャフト26にワンウェイクラッチ(図示せず)を介して結合されており、後述するように駆動モータの正回転時のみシャフト26とともに回転するようになっている。さらに、前記給紙ユニット21は、このシャフト26を支点として所定角度回転可能となるように支持されている。さらにまた、前記ホッパワイヤ29,29は、それぞれのホッパ22,22の背部にその一端27a,28aを支点として回動自在に装着されており、使用時は、図2に示すように、斜め上方に延在するように使用され、使用しないときは折り畳まれる(図示せず)ようになっている。
【0018】前記下フレーム30の底面には、図3および図4に示すように、大きな曲率をもって紙ガイド34が配設されており、この紙ガイド34と0.4〜0.5mmの間隙を有するように前記下フレーム30に懸架されているシャフト33には、所定の間隔をもって複数個の紙送りサブローラ32が形成されている。この紙送りサブローラ32は硬度が30〜40度のゴムからなり、その表面には、用紙2との摩擦係数が大きくなるようにその幅方向に平行に多数の微細な溝が形成されている。また、前記紙ガイド34の表面には、用紙2との摩擦係数をできるだけ小さくするために、ベック平滑度で30秒以下の平滑度となるように表面処理加工がなされるか、あるいはフッ素樹脂からなるフィルムのラミネート加工等がなされている。さらに、前記下フレーム30の側面30aには、駆動モータ58および歯車群等の伝達機構が設けられている。
【0019】前記下フレーム30に対向する上フレーム40には、後述するプリンタによって記録された用紙2を収納する排紙スタッカ41、および、この排紙スタッカ41に用紙2を搬送するための排紙ローラ12が設けられている。前記上フレーム40には穴44が形成されており、この穴44には、排紙ガイド45の側部に形成された突起45aが係合して、前記排紙ガイド45が支持されている。前記排紙ガイド45には、排紙ローラ42に圧接され、この排紙ローラ42とともに用紙2を挟持して、排紙ローラ42の回転により、この用紙2を排紙スタッカ41に搬送するピンチローラ46が設けられている。
【0020】また、前記排紙スタッカ41には、排出された用紙2を保持するためにワイヤを折り曲げて形成した2本のスタッカワイヤ43,43が設けられている。これらのスタッカワイヤ43,43の下端43a,43aは上フレーム40にその下端43a,43aを支点に回動自在に装着されており、使用時は、図1に示すように、斜め上方に延在するようにして用紙2を保持することができ、使用しないときは折畳まれる(図示せず)ことにより収納スペースを小さくできるようになっている。
【0021】前記給紙装置20の紙送りサブローラ32と排紙ローラ42(下フレーム30と上フレーム40)の中間部には、開口部50が形成されており、この開口部50に後述するプリンタが装着されるようになっている。この開口部50の両側の前記下フレーム30には、前記開口部50に装着されるプリンタを位置決めするための位置決めボス51,51が突設されている。
【0022】前記開口部50に装着されるプリンタの支持・固定を行う固定用脚52,53が設けられており、それぞれの先端52a,53aにはプリンタに形成された突起を支持するための凹部が形成されている。また、前記固定用脚52,53は、それぞれの他端52b,53bを支点として下フレーム30の下部に形成された凸部31,31に回動可動となるように支持されており、非使用時には、図2の固定用脚52のように開口部50方向に回転・収納されるようになっている。さらに、これらの固定用脚52,53はシャフト54により連結されて、一体的に移動しうるようになっている。
【0023】前記下フレーム30と前記上フレーム40とが上下方向に相対移動できるようにするため、前記下フレーム30の両側には、それぞれガイド部39,39が形成され、また、前記上フレーム40の両側にはそれぞれガイド部47,47が形成されており、これらのガイド部39とガイド部47とが係合するようになっている。
【0024】すなわち、前記下フレーム30の各ガイド部39にはそれぞれガイドピン38が形成され、また、前記上フレーム40の各ガイド部47にはそれぞれ切欠き部49が形成されており、各ガイドピン48が各切欠き部49に挿入されることにより、前記下フレーム30と上フレーム40とが、前記ガイドピン38と切欠き部49とによりガイドされるようになっている。
【0025】そして、使用するプリンタ60の高さに応じて、前記下フレーム30に対し前記上フレーム40を相対的に上下動させることにより開口部50の幅を決定し、適当な位置で前記上フレーム40を図示しないねじ等によりロックしたうえで、プリンタ60を位置決めボス51および固定用脚52,52を用いて開口部50に装着することができる。この開口部50に装着されるプリンタ60は、ワイヤドット、サーマルあるいはインクジェット等の通常用いられる方式のものであり、また、シリアルプリンタでもラインプリンタでもよい。なお、これらのプリンタの構成は周知なので、詳細な説明は省略する。
【0026】図3に示すように、前記プリンタ60の底部60aには、用紙2が挿入される開口部61が形成され、また、前記プリンタ60の上部60bには、印字済みの用紙2が排出される開口部62が形成されている。そして、前記底部60aの開口部61が前記紙送りサブローラ32および紙ガイド34と対向し、前記上部60bの開口部62が前記排紙ローラ42および排紙ガイド45と対向するように装着されるようになっている。
【0027】また、前記プリンタ60の内部には、用紙2を挟持して印字部63に供給する紙送りローラ64およびピンチローラ65と、供給された用紙に印字を行う印字ヘッド63aおよびプラテン63bとが配設されており、前記紙送りサブローラ32から給送された用紙2は、このプリンタ60内にほぼ直線状に送られ、印字された用紙2は上部開口部62より排紙ローラ42に向けて排出されることになる。
【0028】また図3,4に示すように、前記給紙ローラ28,28、紙送りサブローラ32および排紙ローラ42は、1個の駆動モータ58と歯車群とによってそれぞれ連結されている。
【0029】そして、前記給紙ローラ28,28は駆動モータ58が正回転時に給紙動作を行ない逆回転時には動作しないようにワンウェイクラッチ(図示せず)を介してシャフト26に連結されている。また、前記紙送りサブローラ32は駆動モータ58の回転方向に関係なく常に用紙送り出し方向に回転するように揺動ギア(図示せず)を介して連結されている。さらに、前記排紙ローラ42は、前記駆動モータ58の正回転時には用紙送り方向と逆方向に回転し、駆動モータの逆回転時たる排紙動作時には、用紙送り出し方向に回転するように歯車群59を介して連結されている。
【0030】なお、前記上フレーム40と前記下フレーム30との高さ関係が変わっても、駆動モータ51と排紙ローラ42を連結する歯車群59はリンク機構によって支持され、下フレーム30の側面のガイド部材30bによりガイドされているため、常に連結された状態に保持されることになる。図3は開口部50の幅を狭くした状態を示し、図4は開口部50の幅を広くした状態を示している。
【0031】また、前記上フレーム40と下フレーム30の両側面は、それぞれカバー55,56によって覆われることにより、駆動モータ58、歯車群等が保護される。そして、このカバー56は上フレーム40と下フレーム30とともに相対移動するように、図1に詳示するように、第1カバー部56aと第2カバー部56bの2つとにより構成されている。
【0032】つぎに、前述した給紙装置20の開口部50にプリンタ60を装着した状態における紙送り動作を説明する。
【0033】ホッパ22,22は、使用する用紙2の幅に従って所定位置に固定されており、これらのホッパ22,22に収納された用紙2は、駆動モータ58の正回転により、給紙ローラ28,28が回転することにより1枚ずつ分離搬送される。給紙ローラ28,28により分離された用紙2は、さらに紙送りサプローラ32により紙ガイド34に沿って搬送される。
【0034】このとき、前述したように、紙送りサブローラ32と紙ガイド34との間隙が0.4〜0.5mmで、紙送りサブローラ32は硬度が30〜40度のゴムからなり、その表面は用紙との摩擦係数が大きくなるようにその幅方向に平行に多数の微細な溝を形成し、また、紙ガイドは給紙装置の底面に大きな曲率をもって配設され、その表面は、用紙との摩擦係数をできるだけ小さくするために、ベック平滑度で30秒以下の平滑度となるように表面処理加工あるいはフッ素樹脂からなるフィルムのラミネート加工がなされていることにより、紙送りサブローラ32の外径を小さくしてもはがき等の腰の強い紙であってもその先端縁が紙ガイド34に引掛かることなく安定的に搬送される。
【0035】前記紙送りサブローラ32を介してプリンタ60に送られた用紙2の先端を図示しない用紙検出用センサにより検出したら、駆動モータ58に制御信号を与えて逆方向に回転させる。これにより、前述したように給紙ローラ28の回転は停止し、排紙ローラ42は用紙送り方向に回転する。そして、プリンタ60の印字部63によって所望の印字がなされ、印字された用紙2は排紙ローラ42の働きにより排紙スタッカ41に排出される。
【0036】このとき、用紙2は排紙ガイド45の働きにより、カールされた方向と逆方向への力を受けるので、そのカールの状態を大幅に解消できる。また、前述したように用紙2が排出され終わるまでは、駆動モータ58は逆方向回転するため、給紙ローラ28は停止したままであり、新たな給紙が行なわれることはない。そして、排紙が完全に終了したら、再び駆動モータ58に制御信号を与えて正方向に回転させることにより、新規に給紙を行ない、前述した動作を繰り返し印字を行なうことができる。
【0037】本実施例によれば、使用するプリンタ60の大きさに応じて開口部50の幅を変えることにより各種大きさのプリンタ60を接続できるため、1台の装置で複数幅のプリンタ60に対応することができる。
【0038】また、給紙ユニット21はシャフト26を支点として回転可能となるように支持されており、一方、ホッパワイヤ29、スタッカワイヤ43および固定用脚52,53もそれぞれの一端を支点として回動可能に構成されているので、給紙ユニット21、ホッパワイヤ29、スタッカワイヤ43あるいは固定用脚52,53を使用しないときには折り畳むことによりコンパクトにでき、収納する場所を取らない。
【0039】さらに、前記紙ガイド34の表面には、用紙2との摩擦係数をできるだけ小さくするために、ベック平滑度で30秒以下の平滑度となるように表面処理加工、あるいはフッ素樹脂からなるフィルムのラミネート加工等がなされているので、腰の強いはがき等の用紙2でも小さい力で搬送することができる。
【0040】なお、前記実施例では記録装置として、プリンタを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、例えばファクシミリ等を使用してもよいことは勿論である。
【0041】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、用紙を湾曲状に搬送するようにして小型化を可能とし、しかも、はがきのように腰の強い用紙でも安定的に搬送することができる。すなわち、上フレームと下フレームとの間に形成した開口部に記録装置を装着し、給紙部から下フレームの底面部を介して記録装置に用紙を供給するようになっているので、全体的に小型化できるとともに、用紙も湾曲した紙ガイドでの負荷が小さくなり、安定した給紙ができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の給紙装置の実施例の概略構成を示す全体の分解斜視図
【図2】本発明の給紙装置の一実施例の概略構成を示す全体の斜視図
【図3】図2のカバーを除去した状態における右側面図であり、開口部の幅を狭くした状態を示す図
【図4】図2のカバーを除去した状態における右側面図であり、開口部の幅を広くした状態を示す図
【図5】従来の給紙装置の一例を示す要部の断面図
【符号の説明】
20 給紙装置
21 給紙ユニット
22 ホッパ
28 給紙ローラ
30 下フレーム
32 紙送りサブローラ
34 紙ガイド
39 ガイド部
40 上フレーム
41 排紙トレイ
42 排紙ローラ
45 排紙ガイド
47 ガイド部
50 開口部
58 駆動モータ
60 プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数枚の用紙を収納しこの収納された用紙を1枚ずつ分離給紙する給紙部と、印字済みの用紙を排紙・収納する排紙部と、前記給紙部と排紙部との間に形成され記録装置を装着するための開口部とを有する給紙装置において、前記開口部を上フレームと下フレームとの間に形成するとともに、前記給紙部から前記開口部にかけて用紙を湾曲状に搬送するための紙ガイドを前記下フレームの底面部に設け、この紙ガイドの用紙が摺接する表面部位に、用紙との摩擦係数を低下させるための加工を施したことを特徴とする給紙装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【特許番号】第2837774号
【登録日】平成10年(1998)10月9日
【発行日】平成10年(1998)12月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−6381
【分割の表示】特願平3−319263の分割
【出願日】平成3年(1991)12月3日
【公開番号】特開平5−155088
【公開日】平成5年(1993)6月22日
【審査請求日】平成8年(1996)12月3日
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【参考文献】
【文献】特開 平2−29364(JP,A)
【文献】特開 平4−105458(JP,A)