説明

給電コネクタ

【課題】 大きな力を必要とせず、接続作業性に優れた電気自動車用の給電コネクタを提供する。
【解決手段】 ケース9は筒状部材であり、ケース9の前端部には、コネクタ本体11が収容される。コネクタ本体11は、ケース9に対して前後に摺動可能である。ケース9の内部には、スライダ25が設けられる。スライダ25の一方の端部は、ケース9の前方に突出する。スライダ25は、軸方向に摺動可能である。スライダ25の後方であって、連結バー16の先端部近傍には、係止部材27が設けられる。係止部材27は、スライダ25と接触し、スライダ25の動作に応じて移動可能である。係止部材27は、ケース9と把持部材3とを係止する。すなわち、係止部材27は、ケース9が把持部材3に対して移動することを係止するケースロック機構として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車等に用いられ、急速充電用の給電コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題の観点から、化石燃料を用いない電気自動車が注目されている。電気自動車は、駆動用のバッテリーを搭載し、バッテリーに充電された電気によって走行することができる。
【0003】
電気自動車に対して充電を行うためには、通常の家庭用電源から行う方法と、特殊な充電装置を用いて急速充電する方法とがある。家庭用電源から行う方法は、特殊なコネクタは不要であるが、充電に長時間を要するため、夜間等自動車を使用しない時間を用いて充電が行われる。一方、長距離の連続運転を行うためには、従来のガソリンスタンドでの給油と同様に、各所に設けられた給電場で急速充電を行う必要がある。
【0004】
このような電気自動車用の給電コネクタとしては、たとえば、ケースと、このケースに摺動可能に装着されて複数の端子を収容したコネクタ本体と、コネクタ本体と同軸方向に摺動可能に装着するパイプ状のハンドルと、レバーとを備え、レバーの回動によりハンドルが前進してコネクタ本体を前記受電側コネクタのコネクタ本体と嵌合する給電コネクタがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−188044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、急速充電用のコネクタ接続には、比較的大きな端子を挿入する必要があることから、コネクタ挿入抵抗が大きい。これに対し、特許文献1のコネクタは、給電コネクタと受電コネクタとの接合抵抗を、レバーによって補助するものである。しかし、使用者が、当該レバーをどのタイミングで動作させればよいのか、感覚がつかみにくく、コネクタ同士の間隔および向きが所定の状態にない状態でレバーを操作しても、コネクタ同士が接続されず、接続作業性が必ずしも良くなかった。また、コネクタの移動とレバーの動作とが作業者にとって直感的に分かりにくいという問題があった。
【0007】
図10は、従来の給電コネクタ100を示す概略図である。給電コネクタ100は、先端にコネクタ本体101が設けられて、図示を省略した受電コネクタと接続される。作業者は取手103を手に持った状態でコネクタ接続作業を行う。この際、受電コネクタとの接続抵抗(複数の端子の挿入摩擦など)F1を受けるため、作業者はそれと同等の力F2で押し込む必要がある。
【0008】
また、給電コネクタ100は、コネクタ本体の中心軸上に取手103が形成されていないため、力F1によって、取手103には、モーメントM1が発生する。このため、作業者はこれに対してモーメントM2の力を発生させる必要がある。すなわち、作業者にとって、コネクタ接続に要する力のバランスを把握するのが難しく、コネクタ接続作業が感覚的に難しいものとなっている。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、大きな力を必要とせず、接続作業性に優れた電気自動車用の給電コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達するために本発明は、自動車用の給電コネクタであって、コネクタ本体と、前記コネクタ本体を収容するケースと、前記ケースに取り付けられる把持部材と、前記把持部材に対して前記ケースの移動を制限するケースロック機構と、を具備し、前記ケースロック機構を解除すると、前記ケースに対して、前記コネクタ本体および前記把持部材が、略同一軸方向に摺動可能となり、前記ケースロック機構が解除された状態において、前記ケースに対して前記把持部材を前方に移動させると、前記把持部材の移動に伴って、前記コネクタ本体が前記ケースに対して前方へ移動可能であることを特徴とする給電コネクタである。
【0011】
前記挿入検知手段は、前記ケースの受電コネクタへの挿入部に形成され、前記ケースの挿抜方向に摺動可能なピンと、前記ピンを前記ケースの挿入方向に付勢する弾性部材と、前記ピンが前記弾性部材に対抗して押し込まれたことを検知するスイッチと、を具備し、前記ケースロック機構は、前記ケースと前記把持部材とを係止し、電磁ソレノイドで動作する係止部材であり、前記スイッチは、前記ピンが受電コネクタと接触して前記ケース内方に押しこまれたことを検知すると、前記電磁ソレノイドを作動させて、前記係止部材を移動させ、前記ケースロック機構が解除されることが望ましい。
【0012】
前記ケースが受電コネクタに挿入されたことを検知する挿入検知手段をさらに有し、前記挿入検知手段は、前記ケースが受電コネクタに挿入されたと検知すると、前記ケースロック機構を解除することが望ましい。
【0013】
前記挿入検知手段は、前記ケースの受電コネクタへの挿入部に形成され、前記ケースの挿抜方向に摺動可能なスライダと、前記スライダを前記ケースの挿入方向に付勢する弾性部材と、を具備し、前記ケースロック機構は、前記ケースと前記把持部材とを係止する係止部材であり、前記スライダが受電コネクタと接触して前記ケース内方に押しこまれることで、前記係止部材を移動させ、前記ケースロック機構が解除されてもよい。この場合、前記スライダは、前記コネクタ本体の中心軸を対象軸として、互いに対象に複数配置されてもよい。
【0014】
前記把持部材には、減速機構が設けられ、前記ケースに対する前記把持部材および前記コネクタ本体の移動は、前記減速機構を介して行われ、前記ケースに対して前記把持部材を移動させた際に、前記ケースに対する前記把持部材の移動距離よりも、前記ケースに対する前記コネクタ本体の移動距離が小さくなることが望ましい。
【0015】
前記ケースには孔が設けられ、前記孔から前記ケース内部の前記スライダの位置を視認可能であってもよい。
【0016】
本発明によれば、ケースに対して把持部材を押し込むと、同一方向にコネクタ本体が移動する。したがって、作業者が、コネクタ本体の動きを把握しやすく、作業において感覚をつかみやすい。したがって、給電コネクタを受電コネクタに接続するためのコネクタ接続作業性に優れる。
【0017】
また、給電コネクタ内部に減速機構が設けられ、把持部材の移動距離に対して、コネクタ本体の移動距離を小さくすることで、コネクタ本体が受電コネクタとの接合時に受ける抵抗よりも小さな力で把持部材を動かすことができる。したがって、より小さな力でコネクタ接続作業を行うことができる。
【0018】
また、ケースが受電コネクタに挿入されたことを検知する挿入検知手段がさらに設けられ、挿入検知手段によって、ケースが受電コネクタに挿入されたと検知されると、ケースロック機構が解除されることで、ケースが完全に受電コネクタに挿入されていない場合に、コネクタ本体が移動することを防止することができる。例えば、ケースの一部が受電コネクタの周縁に当たっているような場合に、コネクタ本体が移動してしまうことがない。
【0019】
したがって、前述の減速機構と組み合わせた際にも、ケースが受電コネクタに完全に挿入される前に、減速機構が働いてしまうことで、この効果が得られなくなることがない。
【0020】
この挿入検知手段としては、ケースの挿抜方向に摺動可能なスライダがケースの挿入方向に弾性部材で付勢され、スライダが受電コネクタと接触してケースの内方に押しこまれることで、ケースと把持部材とを係止する係止部材が移動し、ケースロック機構が解除されれば、簡易な構造で、確実にケースの充電コネクタへの挿入を検知することができる。
【0021】
この場合、スライダは、コネクタ本体の中心軸を中心として、互いに対称に複数配置されることで、スライダが挿入軸に対して対称の位置で押し戻されるため、反力がケースの中心軸に対して均等に付与される。したがって、より正確にケースを受電コネクタに挿入することができる。
【0022】
また、ケースに孔が形成され、孔からケース内部のスライダが視認可能であれば、スライダが確実に押し込まれたかどうかを確実に把握することができる。したがって、ケースが受電コネクタに正しく挿入されていることをより確実に判別することができる。
【0023】
また、挿入検知手段としては、スイッチと電磁ソレノイドを用いることもできる。このようにすることで、前述したような、スライダを係止部材に押し付けることで係止部材を移動させる機構が必要なく、より小さな力で挿入検知およびケースロック解除を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、大きな力を必要とせず、接続作業性に優れた電気自動車用の給電コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】給電コネクタ1を示す図であり、(a)は側面図、(b)は側面断面図。
【図2】給電コネクタ1を動作させた状態示す図であり、(a)は側面図、(b)は側面断面図。
【図3】給電コネクタ1を受電コネクタ33と接続する状態を示す図であり、(a)は側面断面図、(b)はスライダ25等の動作を示す底面透視図。
【図4】給電コネクタ1を受電コネクタ33と接続する状態を示す図であり、(a)は側面断面図、(b)はスライダ25等の動作を示す底面透視図。
【図5】給電コネクタ1が受電コネクタ33と接続された状態を示す図であり、(a)は側面断面図、(b)はスライダ25等の動作を示す底面透視図。
【図6】スライダ25を複数設けた状態を示す正面図。
【図7】給電コネクタ40を受電コネクタ33と接続する状態を示す図であり、(a)は側面断面図、(b)はスイッチ41等の動作を示す底面透視図。
【図8】給電コネクタ40を受電コネクタ33と接続する状態を示す図であり、(a)は側面断面図、(b)はスイッチ41等の動作を示す底面透視図。
【図9】給電コネクタ40が受電コネクタ33と接続された状態を示す図であり、(a)は側面断面図、(b)はスイッチ41等の動作を示す底面透視図。
【図10】従来の給電コネクタ100を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、給電コネクタ1を示す概略図であり、図1(a)は側面図、図1(b)は側面断面図である。なお、本発明では、図1に示す状態を通常状態と称する。また、以下の図においては、ケーブル等の図示を省略する。給電コネクタ1は、主に把持部材3、ケース9、コネクタ本体11を備える。
【0027】
図1(a)、図1(b)に示すように、把持部材3は、一方の端部(後方)に取手5を有する。取手5は、作業者が給電コネクタ1を扱う際に手に持つ部分である。ここで、取手5は、コネクタ本体11の中心軸の延長線(図1(b)のT線であって、後述するコネクタ本体の移動方向の中心軸)上に少なくとも取手5の一部が配置されるように形成される。このため、把持部材3を押し込んだ際に、コネクタ同士の接続抵抗による反力に伴うモーメントの発生を抑制することができる。このため、給電コネクタの取り扱い性に優れる。
【0028】
把持部材3の内部は各種構造が収容可能である。把持部材3の他方の端部(前方)にはケース9が設けられる。把持部材3の前端部近傍は筒状であり、ケース9の一部(後部)は、把持部材3の内部に収容される。把持部材3は、ケース9に対して前後に摺動可能である。
【0029】
ケース9は筒状部材であり、ケース9の前端部には、コネクタ本体11が収容される。コネクタ本体11は、ケース9に対して前後に摺動可能である。なお、ケース9に対する、把持部材3、コネクタ本体11のそれぞれの摺動部には、図示を省略したガイド機構や、摺動範囲を規制するストッパを設けてもよい。
【0030】
ケース9の内部には、アーム13が設けられる。アーム13は、一方の端部近傍がピン23aによってケース9に回動可能に取り付けられる。アーム13の他方の端部近傍は、把持部材3と接合された連結バー16と連結部15aで連結される。連結部15aでは、アーム13に形成された長穴と連結バー16に形成されたピン等によって、回動可能に両者を連結する。
【0031】
アーム13の略中央部(ピン23aと連結部15aとの間)は、コネクタ本体11と連結部15bで連結される。連結部15bは連結部15aと同様の構成である。すなわち、アーム13が回転することで、アーム13の回動に伴い、コネクタ本体11および把持部材3がケース9に対して直線上に移動可能である。
【0032】
ケース9の内部には、ロック部材17が設けられる。ロック部材17はピン23bによってケース9に回動可能に取り付けられる。ロック部材17の前方側の端部には、ロックピン17aが上方に向けて形成される。ロックピン17aは、ケース9に形成された孔の位置に配置される。
【0033】
ロック部材17の後方側の端部には、下方に向けて嵌合部17bが設けられる。嵌合部17bは嵌合部21と嵌合可能な凸形状である。嵌合部21は、把持部材3側に固定される。通常状態では、嵌合部17b、21は、互いに嵌合せず、嵌合部17bの突起が嵌合部21の突起上に乗った状態となる。また、この状態では、嵌合部17bが嵌合部21によって上方に押し上げられているため、ピン23bを介して、ロックピン17aがケース9(ケース9に設けられた孔)から突出せず、ケース9内に保持される。
【0034】
把持部材3内部には、操作部7が設けられる。操作部7はピン23cによって把持部材3に回動可能に取り付けられる。操作部7の後方側の端部は把持部材3より外部に突出し、外部から作業者が操作部7を操作することができる。操作部7の前方には、ロックピン7aが下方に向けて設けられる。ロックピン7aは、ケース9の一部と接触して、通常は押し上げられた状態となる。ケース9は、通常状態でロックピン7aと接触する部位の前方側に、ロックピン7aが嵌ることが可能な凹部19が設けられる。
【0035】
ケース9の内部には、スライダ25が設けられる。スライダ25の一方の端部は、ケース9の前方に突出する。すなわち、ケース9の前方には、段差が形成され、当該段差からスライダ25が露出する。スライダ25は、軸方向(ケース9の移動方向であって、コネクタの挿抜方向)に摺動可能である。
【0036】
ケース9の一部には、孔24が設けられる。孔24は、ケース9内部におけるスライダ25の位置を視認することができる。なお、スライダ25および孔24の配置は、図示した例に限られず、適宜設定される。例えば、より視認しやすいように、孔24はケース9の上面や側面に配置され、スライダ25が給電コネクタの上部や側面に配置されてもよい。
【0037】
スライダ25の後方であって、連結バー16の先端部近傍には、係止部材27が設けられる。係止部材27は、スライダ25と接触し、スライダ25の動作に応じて移動可能である。係止部材27は、ケース9と把持部材3とを係止する。すなわち、係止部材27は、ケース9が把持部材3に対して移動することを係止するケースロック機構として機能する。なお、挿入検知手段であるスライダ25およびケースロック機構である係止部材27の機構および動作の詳細については後述する。
【0038】
次に、給電コネクタ1を動作させた状態を説明する。図2は把持部材を移動させた状態の給電コネクタ1を示す図で、図2(a)は側面図、図2(b)は側面断面図である。
【0039】
前述の通り、通常状態では、把持部材3はケース9と係止部材27によって係止されている。この状態から、スライダ25が押し込まれると(図中矢印A方向)、スライダ25によって係止部材27が押されて、係止部材27が移動する。この際、係止部材27の移動によって、把持部材3とケース9とのロックが解除される。
【0040】
ケース9と把持部材3との係止が解除された状態で、把持部材3をケース9に対して前方に移動させると(図中矢印C方向)、把持部材3(連結バー16)と接合された連結部15aが前方に押し込まれる。アーム13は、連結部15aが前方に移動するため、ピン23aを回転軸として回動する(図中矢印D方向)。アーム13が回動することで、アーム13に連結部15bで連結されたコネクタ本体11は把持部材3と同一方向に移動する(図中矢印E方向)。
【0041】
なお、アーム13に対する連結位置が把持部材3とコネクタ本体11とで異なるため、ケース9に対する把持部材3の移動距離とコネクタ本体11の移動距離とは異なる。具体的には、ピン23aからの連結部15a、15bそれぞれの距離の比が2:1であれば、把持部材3のケース9に対する移動距離を2とすると、コネクタ本体11が1の距離だけ移動する。すなわち、アーム13等の機構が減速機構として機能する。
【0042】
また、把持部材3がケース9に対して前方に移動することで、嵌合部17bと嵌合部21とが互いに噛み合い嵌合する。このため、ロック部材17がピン23bを回転軸として回転する。すなわち、嵌合部17b側が下方に押し下げられることで、ロック部材17が回動し、他方の端部のロックピン17aが上方に押し上げられる。このため、ロックピン17aが孔によってケース9の外方に突出する(図中矢印G方向)。なお、ロック部材17は、常に図2に示す状態(嵌合部17bが押し下げられる状態)に戻ろうとするようにばね等を形成してもよい。
【0043】
また、把持部材3がケース9に対して前方に移動することで、操作部7のロックピン7aが凹部19方向に移動して、ロックピン7aが凹部19に嵌り込む。このため、操作部7がピン23cを回転軸として回動する。すなわち、ロックピン7aが下方に押し下げられることで、操作部7が回動し、他方の端部が上方に押し上げられる(図中矢印F方向)。なお、操作部7は、常に図2に示す状態(ロックピン7aが押し下げられる状態)に戻ろうとするようにばね等を形成してもよい。
【0044】
ロックピン7aが凹部19に嵌り込むことで、把持部材3は、ケース9に対する移動がロックされる。すなわち、操作部7は把持部材3(およびコネクタ本体11)がケース9に対して移動することをロックするロック手段としての機能を奏し、また、操作部7を操作する(操作部7の外部の端部を押し下げる)ことで、当該ロックを解除する解除機構として機能するものである。したがって、コネクタの接続状態を確実に保持し、また、容易に解除することができる。
【0045】
なお、取手5の上部には、操作部7の位置を示す表示部を設けてもよい。例えば、操作部7は図1に示す通常状態において、ロックピン7a側が押し上げられた状態である。したがって、操作部7は、ピン23cを軸として図中右方向に回転した状態となる。一方、操作部7は図2に示す状態において、ロックピン7a側が押し下げられた状態となる。したがって、操作部7は、ピン23cを軸として図中左方向に回転した状態となる。
【0046】
すなわち、把持部材3の一部に孔を設けて表示部とし、表示部から操作部7の状態を確認可能とすることで、給電コネクタ1がロック状態(図2の状態)となっているか、ロックが解除された状態(通常状態)であるかを容易に視認することができる。なお、操作部7の状態を視認する方法や表示部の配置等はいずれの方法でもよい。
【0047】
また、把持部材3(またはコネクタ本体11)とケース9との摺動部には、平行リンクを用いてもよい。平行リンクを用いることで、把持部材3(またはコネクタ本体11)とケース9との摺動時にガタつきが生じにくく、移動範囲も規制可能である。
【0048】
次に、給電コネクタ1の使用方法について説明する。図3〜図5は、給電コネクタ1を受電コネクタ33と接続する工程を示す図であり、図3(a)〜図5(a)は側面断面図、図3(b)〜図5(b)はスライダ25等の動作を示す底面透視図である。
【0049】
まず、図3(a)に示すように、通常状態の給電コネクタ1を対象となる受電コネクタ33に対向させる。具体的には、ケース9の先端を受電コネクタ側の凹部に挿入する。なお、受電コネクタ33内部にはコネクタ本体37が収容されている。この状態では、コネクタ本体11、37の互いの雄雌端子がまだ接続状態とはならないようにわずかにギャップを有した配置となる。
【0050】
したがって、図3(b)に示すように、スライダ25の先端は受電コネクタ33と接触せず、ケース9の前方の突出する。なお、スライダ25は、ケース9の内部に設けられた弾性部材29によって常に前方に付勢されている(図中矢印H方向)。すなわち、スライダ25は、通常時には常にケース9の前方に突出する。
【0051】
ケース9の内部であって、スライダ25の後端部には、係止部材27が設けられる。係止部材27は、弾性部材31によって、連結バー16方向(すなわち、スライダ25の摺動方向と垂直な方向)に押し付けられる(図中矢印I方向)。係止部材27の側面は、図示したように、例えば連結バー16のピン32と接触する。したがって、連結バー16は、係止部材27によって、それ以上前方に移動することができない。このため、連結バー16が固定される把持部材3がケース9に対して移動することが規制されて係止される。
【0052】
スライダ25および係止部材27によって、例えば、ケース9が受電コネクタ33に斜めに挿入された場合や、ケース9が受電コネクタ33の周縁部に接触した場合に、ケース9に対して把持部材3が前方に移動してしまうことがない。すなわち、ケースロック機構である係止部材27がロック状態においては、把持部材3を前方に押し込んだ際に、ケース9が把持部材3の内方に押し込まれることがない。
【0053】
なお、孔24からはスライダ25の一部を視認することができる。したがって、スライダ25が前方に突出した状態において、孔24に対応する部位に、マークや色などを付しておくことで、孔24から、スライダ25が前方に突出した状態であることを視認することができる。
【0054】
また、ケース9を受電コネクタ33側に配置した状態で、ロックピン17aに対応する位置には受電コネクタ33側の内面には凹部35が形成される。ロックピン17aと凹部35の位置や、前述した雄雌端子の位置を合わせるために、ケース9の外面に、受電コネクタ側との位置決めを行うガイド等を形成してもよい。
【0055】
次に、図4に示すように、給電コネクタ1の把持部材を受電コネクタ33側に押し込む(図中矢印C方向)と、ケース9の段差が受電コネクタ33の周縁部に当たる。ケース9の段差部には、スライダ25が突出しているため、スライダ25は受電コネクタ33の周縁部に接触する。
【0056】
したがって、図4(b)に示すように、スライダ25は、弾性部材29による前方への押し付け力に対抗して後方(ケース9内部)に押し込まれる(図中矢印A方向)。スライダ25の後端は、係止部材27と接触する。係止部材27のスライダ25との接触面には、テーパ部27aが形成されている。
【0057】
したがって、スライダ25が後方に移動すると(図中矢印A方向)、スライダ25の後端とテーパ部27aとが摺動し、係止部材27の移動方向が変換される。すなわち、係止部材27は、スライダ25の摺動方向と略垂直な方向に、弾性部材31による押し付け力に対抗して移動する(図中矢印B方向)。したがって、係止部材27は、ピン32から離れる方向に移動する。このため、係止部材27とピン32(連結バー16)との係止状態が解除される。
【0058】
なお、ケース9が受電コネクタ33に挿入されたかどうかを検知する挿入検知手段としては、図示したようなスライダ25に限られず、ケース9が挿入された際に動作する機構であればいずれの方法でも良い。また、挿入検知手段により検知された際に、ケースロック機構を解除する機構としては、図示したような係止部材27である必要はなく、挿入検知手段に応じて、係止状態を解除可能であれば、いずれの方法でも良い。
【0059】
このように、ケース9が完全に受電コネクタ33に挿入されることで、ケース9と把持部材3との係止状態が解除され、互いに移動することが可能となる。なお、孔24からはスライダ25の一部を視認することができる。したがって、スライダ25が後方に押し込まれた状態において、孔24に対応する部位に、マークや色などを付しておくことで、孔24から、スライダ25が後方に押し込まれた状態であることを視認することができる。すなわち、ケース9が確実に受電コネクタ33に挿入されたことを視認することができる。
【0060】
次に、図5に示すように、さらに、給電コネクタ1の把持部材3を受電コネクタ33側に押し込む(図中矢印C方向)。前述の通り、ケース9は受電コネクタ33と接触するため、それ以上押し込むことができない。一方、ケース9に対して、把持部材3の係止状態は解除されている。すなわち、図5(b)に示すように、ピン32は係止部材27と接触することがない。したがって、連結バー16は係止部材27と接触することがなく、前方に移動する(図中矢印C方向)。
【0061】
このため、把持部材3をケース9に対して前方に移動させることができる。この際、把持部材3の移動に伴い、コネクタ本体11がケース9に対して前方に移動する(図中矢印E方向)。したがって、コネクタ本体11がケース9前方より突出し、受電コネクタ側のコネクタ本体37と接続される。
【0062】
ここで、ケース9に対する把持部材3とコネクタ本体11の移動距離の比が2:1の場合、コネクタ本体11とコネクタ本体37とが接続される接続代に対して2倍の移動距離で把持部材を押し込むことで、コネクタ本体11をコネクタ同士が接続可能な距離だけ移動させることができる。すなわち、コネクタ同士の接続に要する力(すなわち接続抵抗)の半分の力で把持部材3を押し込めば、コネクタ同士を接続させることができる。なお、減速機構の減速比は、接続抵抗や作業性を考慮して適宜設定される。
【0063】
また、図5(a)に示す状態では、前述の通り、ロックピン17aが凹部35に嵌り込む。このため、受電コネクタ33と給電コネクタ1とが接続された状態でロックされる。また、操作部7の端部のロックピン7aが凹部19に嵌り込む。このため、把持部材3がケース9に対して移動することがロックされる。したがって、図示を省略したケーブル等が引っ張られたとしても、給電コネクタ1が容易に受電コネクタ33から外れることがない。
【0064】
なお、給電コネクタ1を外す場合には、操作部7の端部を押し下げることでロックピン7aを押し上げ、この状態で把持部材3を引き戻すことで、嵌合部17bが嵌合部21上に移動し、これによりロックピン17aによるロックが解除される。このため、容易に給電コネクタ1を取り外すことができる。
【0065】
また、前述の例では、スライダ25および係止部材27が一組配置される例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、図6に示すように、複数対のスライダ25(およびこれに対応する係止部材27等)を配置してもよい。
【0066】
複数のスライダ25を配置する場合には、コネクタ本体11の正面視において、コネクタ本体11(ケース9)の中心であるコネクタ中心39を中心として、点対称な位置に配置されることが望ましい。このようにすることで、ケース9を受電コネクタ33に挿入した際に、スライダ25の押し込み力が、コネクタ中心39に対して均等に働くため、ケース9をより正確に受電コネクタ33に挿入することができる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態の給電コネクタ1によれば、大きな力を要せず、容易に受電コネクタと接続することができる。特に、給電コネクタ1は、作業者が行う把持部材の押し込み動作が、コネクタ本体11の接続方向と一致するため、感覚的に作業者が接続作業を容易に把握することができる。
【0068】
また、ケース9と把持部材3とを係止するケースロック機構を設けることで、通常状態においては、ケース9に対して把持部材3が移動することがない。したがって、ケース9が完全に受電コネクタ33に挿入されない状態で、把持部材3がケース9に移動してしまうことがない。
【0069】
また、ケース9に対する把持部材3およびコネクタ本体11の移動に対して、減速機構を設けることで、コネクタ同士の接続に要する力を低減することができる。さらに、前述のケースロック機構と併用することで、ケース9が受電コネクタ33に挿入される前に減速機構が働くことがなく、ケース9が完全に受電コネクタに挿入された後に、当該減速機構を利用して、コネクタ本体同士を接続することができる。
【0070】
また、挿入検知手段としてスライダ25を用いることで、簡易な構造で確実に受電コネクタ33へのケース9の挿入を検知することができる。また、スライダ25の位置を、ケース9に形成された孔24から視認可能とすることで、確実にスライダ25が押し込まれたかどうかを視認することができる。すなわち、ケース9が受電コネクタ33に完全に挿入されたか否かを視認することができる。
【0071】
次に、他の実施の形態について説明する。図7〜図9は、他の実施の形態にかかる給電コネクタ40を受電コネクタ33と接続する工程を示す図であり、図7(a)〜図9(a)は側面断面図、図7(b)〜図9(b)はスイッチ等の動作を示す底面透視図である。なお、以下の実施の形態において、給電コネクタ1と同一の機能を奏する構成については、図1〜図5と同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0072】
給電コネクタ40は、給電コネクタ1と略同様の構成であるが、挿入検知手段およびケースロック機構が異なる。給電コネクタ40は、スライダ25、係止部材27等に代えて、スイッチ41、係止部材45等を有する。
【0073】
図7(b)に示すように、ケース9の段差部には、挿入検知部としてスイッチ41が設けられる。スイッチ41には、軸方向(ケース9の移動方向であって、コネクタの挿抜方向)に摺動可能なピン43が設けられる。ピン43の先端はケース9前方に突出し、前方に押し出されている(図中矢印J方向)。なお、スイッチ41は、リミットスイッチや近接スイッチ等の公知のスイッチであり、ピン43がスイッチ41本体に押し込まれたことを検知できればいずれのスイッチでも良い。
【0074】
連結バー16には、孔49が設けられる。ケース9の内部であって、通常状態における孔49の位置には、軸方向(ケース9の移動方向であって、コネクタの挿抜方向)と略垂直な方向に向けて係止部材45が配置される。係止部材45は、例えば電磁ソレノイド等によってピン47を動作することができる。すなわち、係止部材45を動作させることで、ピン47を孔49に対して抜き差しすることができる。
【0075】
通常状態において、スイッチ41のピン43が前方に押し出されている状態では、係止部材45のピン47は、孔49に差し込まれた状態で保持される(図中矢印K方向)。この状態では、ピン47が孔49に差し込まれているため、連結バー16は、係止部材45によって係止される。すなわち、把持部材3はケース9に対して移動することができない。
【0076】
次に、図8に示すように、給電コネクタ40の把持部材3を受電コネクタ33側に押し込む(図中矢印C方向)と、ケース9の段差が受電コネクタ33の周縁部に当たる。ケース9の段差部には、ピン43が突出しているため、ピン43は受電コネクタ33の周縁部に接触する。
【0077】
したがって、図8(b)に示すように、ピン43は、後方(スイッチ41本体内部)に押し込まれる(図中矢印L方向)。ピン43が押し込まれると、スイッチ41は、係止部材45を動作させる。すなわち、ピン47が孔49から抜き取られる(図中矢印M方向)。このため、係止部材45と連結バー16との係止状態が解除される。
【0078】
次に、図9に示すように、さらに、給電コネクタ40の把持部材3を受電コネクタ33側に押し込む(図中矢印C方向)。前述の通り、ケース9は受電コネクタ33と接触するため、それ以上押し込むことができない。一方、ケース9に対して、把持部材3の係止状態は解除されている。すなわち、図9(b)に示すように、連結バー16は係止部材45(ピン47)と接触することがない。したがって、連結バー16は前方に移動する(図中矢印C方向)。
【0079】
このため、把持部材3をケース9に対して前方に移動させることができる。この際、把持部材3の移動に伴い、コネクタ本体11がケース9に対して前方に移動する(図中矢印E方向)。したがって、コネクタ本体11がケース9前方より突出し、受電コネクタ側のコネクタ本体37と接続される。
【0080】
第2の実施の形態にかかる、給電コネクタ40によれば、給電コネクタ1と同様の効果を得ることができる。また、挿入検知手段として、スイッチを用いて、電気的な信号によって係止部材45を動作させるため、挿入時の力が小さくて済む。
【0081】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0082】
たとえば、把持部3の形状、ケース9内部の部材の各構成の配置や形状は図示した例に限られない。
【符号の説明】
【0083】
1、40………給電コネクタ
3………把持部材
5………取手
7………操作部
9………ケース
11………コネクタ本体
13………アーム
15a、15b………連結部
16………連結バー
17………ロック部材
17a………ロックピン
17b………嵌合部
19………凹部
21………嵌合部
23a、23b、23c………ピン
24………孔
25………スライダ
27、45………係止部材
27a………テーパ部
29………弾性部材
31………弾性部材
32………ピン
33………受電コネクタ
35………凹部
37………コネクタ本体
39………コネクタ中心
41………スイッチ
43………ピン
47………ピン
49………孔
100………給電コネクタ
101………コネクタ本体
103………取手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の給電コネクタであって、
コネクタ本体と、
前記コネクタ本体を収容するケースと、
前記ケースに取り付けられる把持部材と、
前記把持部材に対して前記ケースの移動を制限するケースロック機構と、
を具備し、
前記ケースロック機構を解除すると、前記ケースに対して、前記コネクタ本体および前記把持部材が、略同一軸方向に摺動可能となり、
前記ケースロック機構が解除された状態において、前記ケースに対して前記把持部材を前方に移動させると、前記把持部材の移動に伴って、前記コネクタ本体が前記ケースに対して前方へ移動可能であることを特徴とする給電コネクタ。
【請求項2】
前記把持部材には、減速機構が設けられ、前記ケースに対する前記把持部材および前記コネクタ本体の移動は、前記減速機構を介して行われ、
前記ケースに対して前記把持部材を移動させた際に、前記ケースに対する前記把持部材の移動距離よりも、前記ケースに対する前記コネクタ本体の移動距離が小さくなることを特徴とする請求項1記載の給電コネクタ。
【請求項3】
前記ケースが受電コネクタに挿入されたことを検知する挿入検知手段をさらに有し、
前記挿入検知手段は、前記ケースが受電コネクタに挿入されたと検知すると、前記ケースロック機構を解除することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の給電コネクタ。
【請求項4】
前記挿入検知手段は、
前記ケースの受電コネクタへの挿入部に形成され、前記ケースの挿抜方向に摺動可能なスライダと、
前記スライダを前記ケースの挿入方向に付勢する弾性部材と、
を具備し、
前記ケースロック機構は、前記ケースと前記把持部材とを係止する係止部材であり、
前記スライダが受電コネクタと接触して前記ケースの内方に押しこまれることで、前記係止部材を移動させ、前記ケースロック機構が解除されることを特徴とする請求項3記載の給電コネクタ。
【請求項5】
前記スライダは、前記コネクタ本体の中心軸を対象軸として、互いに対象に複数配置されることを特徴とする請求項4記載の給電コネクタ。
【請求項6】
前記ケースには孔が設けられ、前記孔から前記ケースの内部の前記スライダの位置を視認可能であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の給電コネクタ。
【請求項7】
前記挿入検知手段は、
前記ケースの受電コネクタへの挿入部に形成され、前記ケースの挿抜方向に摺動可能なピンと、
前記ピンを前記ケースの挿入方向に付勢する弾性部材と、
前記ピンが前記弾性部材に対抗して押し込まれたことを検知するスイッチと、
を具備し、
前記ケースロック機構は、前記ケースと前記把持部材とを係止し、電磁ソレノイドで動作する係止部材であり、
前記スイッチは、前記ピンが受電コネクタと接触して前記ケースの内方に押しこまれたことを検知すると、前記電磁ソレノイドを作動させて、前記係止部材を移動させ、前記ケースロック機構が解除されることを特徴とする請求項3記載の給電コネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−93149(P2013−93149A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233563(P2011−233563)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】