説明

給電プラグのロック装置

【課題】無線信号の信頼性を確保することにより、動作の信頼性を確保することができる給電プラグのロック装置を提供する。
【解決手段】電子キー80と無線通信を行う車両1に搭載され、無線通信を介した認証機能を通じて、車両1のインレット31に接続される給電プラグ10の許可のない取り外しを規制する一方で、取り外しの許可を行う充電ECU75を備える給電プラグのロック装置において、車両1は、無線信号を発信するアンテナを複数個備え、そのうちのアンテナMLは、給電プラグ10の取り外しの許可に係るもの、他は、ドアの解錠の実行又は許可に係るものとし、充電ECU75は、通常、アンテナMLに係る無線信号の送信を停止した状態に維持しつつ、他のアンテナに係る無線信号を送信する一方で、給電プラグ10の取り外しにかかる無線信号を送信する際には、ドアの解錠に係る無線信号の発信を停止する給電プラグのロック装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電コネクタに接続されてバッテリに充電を行う給電プラグのロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両からの排出ガスを少なく抑えることを目的として、各車両メーカでは、モータを駆動源とする電気自動車(ハイブリッド車も含む)の開発気運が非常に高くなってきている。このような電気自動車では、車両の動力源を駆動するためのバッテリの電力残量が少なくなる度に、例えば家庭や電気スタンド等においてバッテリに充電を行う必要がある。このことから、電気自動車にはユーザにも簡単に扱える様々な充電システムが設けられることになる。このようなシステムとしては、例えば特許文献1に示されるものが知られている。このシステムでは、例えば家庭の商用電源に繋がる給電プラグを接続可能としたインレット(受電コネクタ)を車両に設け、帰宅したときなどに駐車車両のインレットに給電プラグを接続し、商用電源を車両に送り込むことによって車両のバッテリに充電を行う。給電プラグには係止爪が、インレットには係合部がそれぞれ形成されており、両者が係合することにより、給電プラグとインレットとの接続が維持される。給電プラグに設けられる操作部の操作に連動して係止爪が変位することにより、係合部との係合状態が解除される。これにより、給電プラグをインレットから取り外し可能となる。
【0003】
ところで、バッテリの充電には、ガソリン車のガソリン補給に比べて比較的長い時間を要する。このことから給電プラグをインレットに接続した状態で車両を長時間放置するケースが多くなる。このため、例えば、給電中の車両から不正に給電プラグを取り外して別の車両のインレットに装着して盗電されたり、給電プラグ自体が盗まれたりすることも想定される。そこで、バッテリの充電中における係止爪の変位を規制するために、給電プラグのロック装置が考案されている。このようなロック装置の例として、モータにより駆動されるロックバーを備えたものがある。このロックバーは、給電プラグの係止爪がインレットの係合部に係合した状態で、ロック位置に位置して係止爪の動きを固定する。このロックバーによるロック状態では、給電プラグをインレットから引き抜くことができなくなる。給電プラグをインレットから取り外すには、ロックバーをアンロック位置に位置させて給電プラグの係止爪の動きを許容する。なお、こうしたロック装置には、インレットと給電プラグとの接続を検出するセンサとアンロックスイッチが設けられている。センサが接続を検出したとき、ロックバーは、アンロック位置からロック位置へ変位する。アンロックスイッチが操作されたとき、ロックバーはロック位置からアンロック位置へ変位する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−161898号公報
【特許文献2】特開2005−194799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の車両には、例えば、特許文献2に示すように、ユーザの携帯する電子キーとの間で無線通信を行い、この無線通信が成立する場合にのみ車両ドアの施解錠やエンジンの始動を許可するスマートシステムが搭載されている。車両は、LF帯の無線信号を間欠的に送信することにより、車両の周辺に送信エリアを形成する。電子キーは、通信エリアに入ってLF帯の無線信号を受信すると、UHF帯の無線信号を送信する。車両は、受信したUHF帯の無線信号の妥当性が確認されるとき、ドアの解錠などを許可する。
【0006】
近年、防犯の観点から、このスマートシステムを利用した給電プラグのロック装置の開発が行われている。このようなロック装置では、例えば、インレットの近傍にLF帯の無線信号を発信するアンテナを設ける。そして、このアンテナからの無線信号をトリガとして車両と電子キーとの間で無線通信が成立したときに、ロック装置は、給電プラグの取り外しを許可する。このように構成することにより、給電プラグの不正取り外しをさらに抑制することができる。
【0007】
しかしながら、先の通信エリアを形成する無線信号と、インレットのアンテナからの無線信号とが重なることが懸念される。LF帯の無線信号は、重なり合う場合、互いに干渉して打ち消し合うことがわかっている。この干渉が起きた場合、電子キーは、LF帯の無線信号を受信できるエリアに侵入しても、その無線信号を受信できないおそれがある。電子キーが無線信号を受信できない場合、電子キーと車両との間の無線通信が成立しないので、給電プラグのロック装置は、給電プラグの取り外しを許可しない。
【0008】
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、無線信号の信頼性を確保することにより、動作の信頼性を確保することができる給電プラグのロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、電子キーとの間で相互に行われる無線信号の授受を通じて、ドアの解錠を実行又は許可する認証機能を備えた車両に搭載され、車両のインレットに接続される給電プラグの許可のない取り外しを規制する一方で、前記認証機能を通じて、前記給電プラグの前記インレットからの取り外しの許可を行う制御装置を備える給電プラグのロック装置において、前記車両は、前記電子キーに対して応答を要求する無線信号を発信するアンテナを複数個備え、そのうちの一つは、前記給電プラグの取り外しの許可に係る応答を要求する無線信号を発信するもの、他のアンテナは、ドアの解錠の実行又は許可に係る応答を要求する無線信号を発信するものとし、前記制御装置は、駐車中は通常、一のアンテナを通じた前記給電プラグの取り外しに係る無線信号の送信を停止した状態に維持しつつ、前記他のアンテナを通じてドアの解錠に係る無線信号を送信する一方で、前記給電プラグの取り外しにかかる無線信号を送信する際には、ドアの解錠に係る無線信号の発信を停止することを要旨とする。
【0010】
同構成によれば、給電プラグのインレットからの取り外しの許可するために発信される無線信号は、ドアの解錠を実行又は許可するために発信される他の発信機からの無線信号と同じタイミングで発信されることがない。従って、給電プラグの取り外しに係る無線信号とドアの解錠に係る無線信号とが干渉し合うこともない。このため、干渉に起因して電子キーと車両との間の無線通信が阻害されることもない。これにより、電子キーと車両との間の無線通信、ひいては給電プラグのロック装置の動作の信頼性を確保することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の給電プラグのロック装置において、前記車両は、前記給電プラグを前記インレットから取り外すときに操作されるスイッチを備え、前記制御装置は、前記スイッチが操作されたとき、ドアの解錠に係る無線信号の送信を停止するとともに、前記給電プラグの取り外しに係る無線信号を送信することを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、他の発信機からの無線信号の送信が停止されて一の発信機から無線信号が発信されるのは、スイッチが操作されたときのみである。換言すれば、スイッチが操作されない限り給電プラグの取り外しに係る無線信号が送信されることはなく、他の発信機からドアの解錠に係る無線信号が発信される。このため、ドアの解錠に係る電子キーと車両との間の無線信号の授受は好適に行われる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の給電プラグのロック装置において、前記制御装置は、前記給電プラグの前記インレットからの取り外しを許可したことを契機として前記給電プラグの取り外しに要すると想定される時間に基づき設定される一定期間だけ作動するタイマを備え、同タイマの作動中に前記給電プラグが前記インレットから取り外されなければ、再度前記給電プラグの前記インレットからの取り外しを規制することを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、給電プラグの取り外しが許可された後、一定期間にわたって給電プラグがインレットから取り外されなかった場合、制御装置は再度給電プラグの取り外しを規制する。これにより、例えば、ユーザが離れているときに給電プラグが不正に取り外されることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、無線信号の信頼性を確保することにより、動作の信頼性を確保することができる給電プラグのロック装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態における給電プラグのロック装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態における車両の平面図。
【図3】ドアの施解錠を行うときに車両が発信する無線信号と、受信する無線信号とのタイムチャート。
【図4】給電プラグの取り外しを行うときに車両が発信する無線信号のタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の給電プラグのロック装置をプラグインハイブリッド車に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
<電子キーシステム>
図1に示すように、車両1には、例えば運転者が実際に車両キーを操作しなくてもドアの施解錠を可能とする電子キーシステム70が搭載されている。電子キーシステム70は、車両1との間で相互に無線通信を行う電子キー80を備える。
【0018】
車両1には、電子キー80及び車両1のIDコードの照合を行う照合ECU(Electronic Control Unit)71が設けられている。照合ECU71は、車両1に固有のキーコードとしてIDコードが記憶されたメモリ71aを備えている。照合ECU71には、車外LF(Low Frequency)発信機72と、車内LF発信機73と、UHF(Ultra High Frequency)受信機74とが接続されている。車外LF発信機72のアンテナは、車両1の各ドア及び後述するインレット31に埋設されて車外にLF帯の信号を発信する。車内LF発信機73のアンテナは、車内床下等に埋設されて車内にLF帯の無線信号を発信する。UHF受信機74のアンテナは、車内に埋設されてUHF帯の無線信号を受信する。これら各アンテナは切り替え可能とされている。なお、車両1が発信するLF帯の無線信号にはウェイク信号Swkとチャレンジ信号Schとがある。ウェイク信号Swkは、電子キー80が車両1の近傍に存在することを確認するための信号であり、チャレンジ信号Schは、電子キー80にIDコードを要求する信号である。
【0019】
一方、電子キー80には、通信制御部81が設けられている。通信制御部81は、電子キー80に固有のIDコードが記憶されたメモリ81aを備えている。通信制御部81には、LF帯の無線信号を受信するLF受信部82と、通信制御部81の指令に従いUHF帯の無線信号を発信するUHF発信部83とが接続されている。なお、電子キー80が発信するUHF帯の無線信号にはアック信号SacとIDコード信号Sidとがある。アック信号Sacは、ウェイク信号Swkに対して応答するための信号であり、IDコード信号Sidは、チャレンジ信号Schに対して応答するための信号で自身のIDコードが含まれる。
【0020】
照合ECU71は、車外LF発信機72からLF帯のウェイク信号Swkを間欠的に発信させることにより、車両1の周辺に車外通信エリアを形成する。このとき照合ECU71は、各ドアのアンテナのみを動作させて、インレット31のアンテナは停止した状態に維持する。電子キー80は、車外通信エリアに進入すると、LF受信部82を介してウェイク信号Swkを受信する。通信制御部81は、LF受信部82を介してウェイク信号Swkを受信するとこれに対する応答として、UHF帯のアック信号Sacを、UHF発信部83を介して発信する。
【0021】
照合ECU71は、UHF受信機74を介してアック信号Sacを受信すると、車外LF発信機72からLF帯のチャレンジ信号Schを発信する。電子キー80の通信制御部81は、LF受信部82を介してチャレンジ信号Schを受信すると、自身のメモリ81aに登録されたIDコードを含ませたUHF帯のIDコード信号Sidを、UHF発信部83を介して発信する。照合ECU71は、UHF受信機74を介してIDコード信号Sidを受信すると、自身のメモリ71aに登録されたIDコードとIDコード信号Sidに含まれるIDコードとのID照合(車外照合)を行う。照合ECU71は、車外照合が成立した状態で、ドアハンドルに設けられる図示しない生体センサを介してユーザのドアハンドルへの接触を検出すると、同じく図示しないドアロック装置による車両ドアの解錠を実行する。
【0022】
照合ECU71は、車外照合が成立して車両ドアが解錠された後、ドアが開けられて運転者が乗車したことを認識すると、今度は車内LF発信機73からウェイク信号Swkを発信して車内全域に車内通信エリアを形成する。電子キー80は、車内通信エリアに進入すると、先の車外照合と同様のID照合(車内照合)を行う。照合ECU71は、車内照合が成立すると、後述するハイブリッドシステム3の始動を許可する。
【0023】
<充電システム>
図1に示すように、車両1には、駆動輪2の駆動源としてエンジンとモータとを組み合わせて使用するハイブリッドシステム3が備えられている。ハイブリッドシステム3は、エンジンの動力のみを機械的に駆動輪2に伝えて走行するモードと、エンジンの動力で発電を行ってモータの回転を駆動輪2に伝えて走行するモードと、エンジン及びモータの双方で駆動輪2を駆動するモードと、エンジンを使用せずにモータのみで走行するモードとを有している。
【0024】
ハイブリッドシステム3には、モータに電力を供給する走行用のバッテリ4が接続されている。バッテリ4は、エンジンの動力によって発電された電力が充電されるだけでなく、車両1の外部電源91からの電力が充電可能とされている。
【0025】
バッテリ4は、プラグイン式の充電システム90によって充電される。充電システム90は、住宅や電気スタンド等の外部電源91に接続ケーブル12を介して接続される給電プラグ10を備えている。給電プラグ10は、車両1に接続可能とされている。外部電源91からは交流電力が給電プラグ10を介して車両1に供給される。接続ケーブル12には、充電を開始する際に操作される充電スイッチ92が設けられている。給電プラグ10が車両1に接続された状態において、充電スイッチ92がオン操作又はオフ操作されると、その旨の信号が給電プラグ10を介して車両1に出力される。
【0026】
車両1には、給電プラグ10の接続先としてインレット31が取り付けられている。インレット31は、給電プラグ10を挿し込むコネクタ部品であって、本例では、図2に示すように、車両1の後部右側面に設けられている。インレット31は、車両1に対して開閉可能に設けられたフェンダーリッドにより外部環境から保護されている。
【0027】
インレット31に給電プラグ10が挿し込まれることにより、これらは電気的に接続される。インレット31に供給される交流電力は、コンバータ6によって直流電力に変換され、この直流電力がバッテリ4に供給される。
【0028】
車両1には、充電に関わる制御を行う充電ECU75が設けられている。充電ECU75は、図示しない車内LAN(Local Area Network)を介して照合ECU71との間で通信可能とされている。充電ECU75は、当該通信を通じて照合ECU71におけるID照合の成立結果を確認可能である。また、充電ECU75は、信号線の接続状態等に基づき給電プラグ10がインレット31に挿し込まれたことを認識可能である。
【0029】
インレット31には、ロック機構41及びモジュール51が設けられている。ロック機構41は、インレット31に接続された給電プラグ10の取り外しを規制するものである。モジュール51は、充電状態を示す充電インジケータなどの各種電装部品が一体とされたものである。本例では、ロック機構41は、車両1の内部におけるインレット31の上部に、モジュール51は、インレット31の車両外側に設けられている。なお、図1に示すように、これらロック機構41及びモジュール51は、充電ECU75に電気的に接続されている。
【0030】
ロック機構41には、給電プラグ10がインレット31に好適に挿入された状態であることを検出する挿入検出装置43が設けられている。挿入検出装置43は、充電ECU75に電気的に接続されている。充電ECU75は、挿入検出装置43を通じて、給電プラグ10とインレット31との接続状態を判断する。充電ECU75は、インレット31に給電プラグ10が接続された旨認識した場合には、ロック機構41を通じて、インレット31に接続された給電プラグ10の許可のない取り外しを規制する(ロック状態)。
【0031】
充電ECU75は、給電プラグ10とインレット31とが接続された状態において、充電スイッチ92がオン操作された旨の信号を給電プラグ10及びインレット31を介して受けるとコンバータ6の制御を通じてバッテリ4への給電を開始する。
【0032】
モジュール51には、アンロックスイッチ53が設けられている。アンロックスイッチ53が操作されると、その旨の信号が充電ECU75に出力される。充電ECU75は、アンロックスイッチ53が操作されたことを認識すると、照合ECU71及び車外LF発信機72を通じて車外ID照合を行う。このとき、照合ECU71は、各ドアのアンテナの動作を停止し、インレット31のアンテナのみ動作させる。照合ECU71には、タイマ71bが設けられている。タイマ71bのカウント終了時間は、2秒に設定されている。照合ECU71は、充電ECU75から、アンロックスイッチ53が操作された旨示す信号を受信すると、タイマ71bを作動させて、このタイマ71bが作動している間だけ、車外LF発信機72から特定のエリアに向けてウェイク信号Swkを発信する。充電ECU75は、照合ECU71を通じて、アンロックスイッチ53の操作をトリガとする車外ID照合が成立した旨認識すると、ロック機構41を通じて、インレット31に接続された給電プラグ10の取り外しを許可する(アンロック状態)。このとき、充電ECU75は、コンバータ6の制御を通じて、給電プラグ10からバッテリ4への充電を停止する。なお、充電ECU75には、タイマ75bが設けられている。タイマ71bのカウント終了時間は、30秒に設定されている。タイマ75bは、ロック機構41がアンロック状態とされたことを契機として作動する。充電ECU75は、タイマ75bの作動中にインレット31から給電プラグ10が取り外されなければ、ロック機構41を再度、ロック状態に移行させる。
【0033】
次に、車両の周辺に形成される通信エリアについて説明する。
図2に示すように、車両1には、5枚のドア8DF(Driver Front),8DR(Driver Rear),8PF(Passenger Front),8PR(Passenger Rear),8TL(Tail)が設けられている。ドア8TLは、いわゆるトランクリッドである。6つのアンテナのうち4つのアンテナDF,DR,PF,PRは、各ドア8DF,8DR,8PF,8PRのドアノブに埋設されている。アンテナTLは、ドア8TLに埋設されている。これら各アンテナDF,DR,PF,PR,TLは、図1に示すように、車外LF発信機72と接続されている。なお、通常は、1つのアンテナに対して1つの車外LF発信機を設けるが、ここでは、図面が複雑になって見にくくなることを回避するために車外LF発信機を一つにまとめている。
【0034】
図2に示すように、各アンテナDF,DR,PF,PR,TLには、車外通信エリアSdf,Sdr,Spf,Spr,Stlが設定されている。この車外通信エリアSdf,Sdr,Spf,Spr,Stlは、それぞれのアンテナDF,DR,PF,PR,TLを中心とする半径約1mとされた半球状とされている。なお、トランクリッドにも、図示しない生体センサが設けられている。生体センサは、ユーザの接触を検出してその旨示す信号を照合ECU71に送る。
【0035】
インレット31は、ドア8DRのさらに後方に設けられている。アンテナMLは、インレット31のモジュール51に埋設されている。このアンテナMLは、先の各アンテナDF,DR,PF,PR,TLと同様に車外通信エリアSmlが設定されている。この車外通信エリアSmlは、アンテナMLを中心とする半径約1mとされた半球状とされている。図2に示すように、車外通信エリアSmlの一部は、車外通信エリアSdr,Stlと重なっている。
【0036】
次に車外ID照合について説明する。このとき車両1は、駐車状態とする。また、給電プラグ10は、インレット31に接続されているものとする。
図3に示すように、照合ECU71は、アンテナDF,DR,PF,PR,TLから各車外通信エリアSdf,Sdr,Spf,Spr,Stlに向けてLF帯のウェイク信号Swkを間欠的に発信させる。また、各アンテナDF,DR,PF,PR,TLは、ウェイク信号Swkを同時に発信する。電子キー80は、この車外通信エリアSdf,Sdr,Spf,Spr,Stlのいずれかに進入して、ウェイク信号Swkを受信すると、これに対する応答としてアック信号Sacを発信する。
【0037】
照合ECU71は、アック信号Sacを受信すると、電子キー80が車外通信エリアSdf,Spf,Sdr,Spr,Stlのいずれかに進入してきた旨認識する。そして、次に照合ECU71は、アンテナDF,PF,DR,PR,TLをこの順番で駆動させて、各車外通信エリアSdf,Spf,Sdr,Spr,Stlにチャレンジ信号Schを順次発信する。これは、電子キー80が、各車外通信エリアSdf,Sdr,Spf,Spr,Stlのいずれかに存在しているかを認識するためである。例えば、電子キー80が車外通信エリアSpfに進入している場合、図3に示すように、電子キー80は、アンテナPFから発信されたチャレンジ信号Schを受信する。そして、電子キー80、これに対する応答としてIDコード信号Sidを発信する。照合ECU71は、IDコード信号Sidを受信したタイミングにより、電子キー80がどの車外通信エリアSdf,Sdr,Spf,Spr,Stlにいるか(ここでは、車外通信エリアSpfにいることを)を特定する。また、このとき、照合ECU71は、IDコード信号Sidに含まれるIDコードが自身のものと対応するか否かを判断する。これにより、照合ECU71は、車外照合が成立したか否かを判断する。
【0038】
照合ECU71は、車外照合が成立する旨判断した場合に、電子キー80が存在する車外通信エリアSdf,Sdr,Spf,Spr,Stlに対応するドアノブに設けられる生体センサへの接触を検出すると、図示しないドアロック装置による車両ドアの解錠を実行する。
【0039】
ウェイク信号Swkの間欠的な発信中において、モジュール51に設けられるアンロックスイッチ53が操作された場合には、図4に示すように、照合ECU71は、アンテナDF,DR,PF,PR,TLからのウェイク信号Swkの間欠発信を停止し、アンテナMLからのみウェイク信号Swkを発信する。このアンテナMLからのウェイク信号Swkの発信時間は、タイマ71bの作動時間である2秒間とされている。電子キー80が車外通信エリアSmlに進入している場合、照合ECU71と電子キー80との間では、先の車外通信と同様の無線通信が行われる。
【0040】
充電ECU75は、アンロックスイッチ53の操作を契機とした車外照合が成立すると、ロック機構41をアンロック状態に切り替えるとともに、タイマ75bを作動させる。これにより、給電プラグ10とインレット31とが接続されている場合、インレット31から給電プラグ10を取り外すことができる。なお、タイマ75bが作動中において、インレット31から給電プラグ10が取り外されない場合には、充電ECU75は、ロック機構41を再度ロック状態に切り替える。
【0041】
次に、スマートシステムの作用について説明する。
照合ECU71は、アンテナDF,DR,PF,PR,TLを駆動させてウェイク信号Swkを間欠的に発信させている。このとき、アンテナMLの駆動は停止されている。これに対し、照合ECU71は、アンロックスイッチ53が操作された場合に、アンテナDF,DR,PF,PR,TLからのウェイク信号Swkの発信を一時的に停止させるとともに、アンテナMLのみからウェイク信号Swkを発信させる。すなわち、アンテナMLが車外通信エリアSmlへ向けてウェイク信号Swk及びチャレンジ信号Schを発信するタイミングは、アンテナDF,DR,PF,PR,TLが車外通信エリアSdf,Spf,Sdr,Spr,Stlへ向けてLF帯のウェイク信号Swk及びチャレンジ信号Schを発信するタイミングと異なる。従って、本例の車外通信エリアSmlは、その一部が車外通信エリアSdr,Stlと重なっているものの、重なっているエリアには、片方のアンテナからのみLF帯の無線信号が発信される。すなわち、LF帯の無線信号が重ならないため、干渉が発生しない。これにより、車外通信エリアが重なっているエリアにおいて、車両1と電子キー80との間の無線信号の授受が好適に行われる。
【0042】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)アンロックスイッチ53の操作を通じて、給電プラグ10をインレット31から取り外す旨のユーザ意志が確認された場合において、アンテナMLからLF帯の無線信号を発信するとき、アンテナDF,DR,PF,PR,TLからLF帯の無線信号は発信されない。このため、アンテナMLから発信する無線信号は、アンテナDF,DR,PF,PR,TLから発信される無線信号と干渉しない。従って、アンテナMLを介して電子キー80と車両1(照合ECU71)との間の無線信号の授受は好適に行われる。これにより、給電プラグ10の取り外しにかかる無線通信の信頼性、ひいては、ロック機構41の動作の信頼性を確保することができる。
【0043】
(2)アンテナMLからの無線信号(ウェイク信号Swk)の発信は、アンロックスイッチ53が操作されたことを契機として行われる。換言すれば、アンロックスイッチ53が操作されない限りアンテナMLから無線信号が発信されることはなくアンテナDF,DR,PF,PR,TLからウェイク信号Swkが間欠発信される。このため、ドアの施解錠を実行するときの電子キー80と車両1との間の無線信号の授受は好適に行われる。従って、ドアの施解錠に係る無線通信の信頼性を確保することができる。
【0044】
(3)充電ECU75に、ロック機構41がアンロック状態とされたことを契機として始動するタイマ75bを設けた。そして、充電ECU75は、タイマ75bの起動中に給電プラグ10がインレット31から取り外されなければ、ロック機構41を再度ロック状態にするようにした。このため、ユーザが、ロック機構41をアンロック状態とした後、何らかの理由で給電プラグ10をインレット31から取り外すことなく車両を離れた場合、ロック機構41は自動的に再度ロック状態となる。これにより、ユーザが離れているときに給電プラグ10が不正に取り外されることを抑制することができる。
【0045】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、アンロックスイッチ53は省略してもよい。この場合、アンテナDF,DR,PF,PR,TLとは異なるタイミングでアンテナMLからウェイク信号Swkを間欠発信させるようにする。このように構成しても、アンテナMLから発信される無線信号は、アンテナDF,DR,PF,PR,TLから発信される無線信号と干渉することが抑制される。
【0046】
・上記実施形態において、タイマ75bは省略してもよい。このように構成しても、上記実施形態の(1),(2)の効果と同様の効果を得ることができる。
・上記実施形態では、アンテナMLは、モジュール51に設けたが、インレット31近傍に無線信号を発信すれば、その搭載位置はこれに限らない。例えば、ロック機構41やインレット31の周辺における車両1の内壁等に設けてもよい。このように構成しても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0047】
・上記実施形態において、タイマ75bの起動時間は30秒に設定されたが、この時間は任意に変更してもよい。なお、この時間は、ユーザ以外による給電プラグの不正な取り外しを防止する観点から、数十秒程度に設定することが望ましい。
【0048】
・上記実施形態において、タイマ75bの起動時間は2秒に設定されたが、この時間は任意に変更してもよい。なお、この時間は、ユーザによるドアの施解錠の利便性を確保する観点から、数秒程度に設定することが望ましい。
【0049】
・上記各実施形態において、外部電源91からバッテリ4へ充電する際の制御は、充電ECU75にて行ったが、照合ECU71が行ってもよい。この場合、充電ECU75は、不要となる。
【0050】
・上記各実施形態において、インレット31は車両1の後方右側面に設けるようにしたが、これに限らず、後方左側面や前方両側面、車両前面等に設けてもよい。
・上記各実施形態において、電子キーシステム70で使用する電波の周波数は、必ずしもLFやUHFに限定されず、これら以外の周波数が使用可能である。また、車両1から電子キー80に電波発信するときの周波数と、電子キー80から車両1に電波を返すときの周波数とは、必ずしも異なるものに限定されず、これらを同じ周波数としてもよい。
【0051】
・上記各実施形態において、プラグインハイブリッド式の車両1のインレット31に適用したが、プラグインハイブリッド式の車両に限らず、電気自動車のインレット等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
DF,DR,ML,PF,PR,TL…アンテナ、Sac…アック信号、Sch…チャレンジ信号、Swk…ウェイク信号Sid…IDコード信号、Sdf,Sdr,Sml,Spf…車外通信エリア、1…車両、2…駆動輪、3…ハイブリッドシステム、4…バッテリ、6…コンバータ、8DF,8DR,8PF,8PR,8TL…ドア、10…給電プラグ、12…接続ケーブル、31…インレット、41…ロック機構、43…挿入検出装置、51…モジュール、53…アンロックスイッチ、70…電子キーシステム、71…照合ECU、71a,81a…メモリ、71b,75b…タイマ、72…車外LF発信機、73…車内LF発信機、74…UHF受信機、75…制御装置としての充電ECU、80…電子キー、81…通信制御部、82…LF受信部、83…UHF発信部、90…充電システム、91…外部電源、92…充電スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子キーとの間で相互に行われる無線信号の授受を通じて、ドアの解錠を実行又は許可する認証機能を備えた車両に搭載され、車両のインレットに接続される給電プラグの許可のない取り外しを規制する一方で、前記認証機能を通じて、前記給電プラグの前記インレットからの取り外しの許可を行う制御装置を備える給電プラグのロック装置において、
前記車両は、前記電子キーに対して応答を要求する無線信号を発信するアンテナを複数個備え、そのうちの一つは、前記給電プラグの取り外しの許可に係る応答を要求する無線信号を発信するもの、他のアンテナは、ドアの解錠の実行又は許可に係る応答を要求する無線信号を発信するものとし、
前記制御装置は、駐車中は通常、一のアンテナを通じた前記給電プラグの取り外しに係る無線信号の送信を停止した状態に維持しつつ、前記他のアンテナを通じてドアの解錠に係る無線信号を送信する一方で、前記給電プラグの取り外しにかかる無線信号を送信する際には、ドアの解錠に係る無線信号の発信を停止する給電プラグのロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給電プラグのロック装置において、
前記車両は、前記給電プラグを前記インレットから取り外すときに操作されるスイッチを備え、
前記制御装置は、前記スイッチが操作されたとき、ドアの解錠に係る無線信号の送信を停止するとともに、前記給電プラグの取り外しに係る無線信号を送信する給電プラグのロック装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の給電プラグのロック装置において、
前記制御装置は、前記給電プラグの前記インレットからの取り外しを許可したことを契機として前記給電プラグの取り外しに要すると想定される時間に基づき設定される一定期間だけ作動するタイマを備え、同タイマの作動中に前記給電プラグが前記インレットから取り外されなければ、再度前記給電プラグの前記インレットからの取り外しを規制する給電プラグのロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−19192(P2013−19192A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154135(P2011−154135)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】