説明

給電マトリックス回路およびそれを用いたフェイズドアレーアンテナ

【課題】小形給電マトリックス回路及びそれを備えるフェイズドアレーアンテナの提供。
【解決手段】第1ラットレース回路、第2ラットレース回路及び給電点を切り替える第1スイッチ切替機構を有する位相差決定回路RAT45aと、第3ラットレース回路、第4ラットレース回路及び給電点を切り替える第2スイッチ切替機構を有する位相差決定回路RAT45bと、位相差決定回路RAT45aに接続される端子INa、位相差決定回路RAT45bに接続される端子INb、第1入力端子IN2及び第2入力端子IN3を有するハイブリッドカプラHB3と、入力信号を分配する分配部と、分配部とグランドとの接続をON/OFFするスイッチSWaと、を備え、第1及び第2スイッチ切替機構並びにスイッチSWaの設定によりアンテナ間の位相差を0°,+45°,−45°に切り替える給電マトリックス回路及びそれを備えるフェイズドアレーアンテナ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電ポートの位置によってビーム方向が決定される給電マトリックス回路およびそれを備えるフェイズドアレーアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロ波やミリ波用の複数のアンテナ素子の配列を有するとともに、各アンテナ素子からの受信信号や各アンテナ素子への給電信号の位相を電気的に制御することで、各アンテナ素子自体を動かさずに全体としてのビーム方向を変更できるフェイズドアレーアンテナ装置が知られている。このフェイズドアレーアンテナは、大変高価でサイズも大きいため、主として軍事用途やプロフェッショナル用途で用いられている。
【0003】
給電ポートの位置によってビーム方向が決定されるマトリクス回路を用いたフェイズドアレーアンテナは、給電を行うマトリックス回路のポート(給電点)の位置に対応してビーム方向が変化することから給電点切換走査型のフェイズドアレーアンテナとも呼ばれる。
小形で安価にビームを切り替えるマトリックス回路として、ハイブリッド回路を4つ用いてビーム方向を4方向に切り替えるバトラーマトリックス給電回路が良く知られている。この給電回路に入力された信号はマトリックス回路の中で分配され、ポート毎に異なる位相差をもって出力される。信号を入力するポート位置によって、出力側で生じる位相の傾きが異なるため、給電回路のポート位置に応じてビーム方向が変化する。
【0004】
しかし、バトラーマトリックス回路はハイブリッド回路を4つ用いているため、民生の製品で用いるにはまだ十分な小形化がされているとはいえず、民生の製品にバトラーマトリックス回路が用いられることはまれである。また、バトラーマトリックス回路はビームをボアサイト方向に向けることができない欠点を持っているところ、アンテナを用いたシステムでは、ボアサイト方向のビームを重要とされることが多いため問題となっていた。
【0005】
そこで、発明者は、アンテナのビームを、ボアサイトを含む3方向に切り替えを行うためのHTBM(Hybrid Three Direction Beam Matrix)と称する給電回路を提案した(非特許文献1)。HTBMは、λ/4の伝送線路と2つのハイブリッドカプラと3つのスイッチで構成される給電回路であって、1入力、4出力で、アンテナ間の位相差を±90°と0°に切り替えることができるものである。
【0006】
また、発明者は、さらに小形の給電マトリックス回路としてQTBM(Quarter Wavelength Three Direction Beam Matrix)と称する給電回路を提案した。これは、λ/4の伝送線路のみで構成され、HTBMと同等の性能を持つ給電回路である(特許文献1、非特許文献2)。ただし、QTBMはスイッチを5つ用いる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-44495号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】辻正敏、他4名、「ハイブリッドマトリックスを用いたボアサイトを含む3ビーム方向制御小形アレーアンテナ」、電気情報通信学会論文誌B, Vol. J90-B, No.3, Mar. 2007
【非特許文献2】辻正敏、「λ/4線路を用いたボアサイトを含む3ビーム方向制御小形給電マトリックス回路」、電気学会論文誌C, Vol.128, No.6, Jun. 2008
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
小形フェイズドアレーアンテナの用途としては、例えば、防犯システムが挙げられる。すなわち、マイクロ波を検知エリアに向けて送信し、検知エリア内に人体(侵入者)が存在する場合には、その人体からの反射波(ドップラー効果によって変調したマイクロ波)を受信して人体を検知する防犯センサで異常を検知して、カメラで現場を撮影し、監視センターに送る防犯システムでの利用である。
【0010】
しかし、防犯センサには誤報の問題があることが知られている。例えば、防犯センサが昆虫や雨その他の誤報要因により反応してしまうため、検知信号が侵入者によるものか否かを調べるのに多くの時間が取られるという問題である。他の問題としては、カメラで広範囲を監視すると遠方の侵入者の顔が小さくなり、せっかく侵入者を撮影しても、人物の特定が難しいことが挙げられる。そこで、マイクロ波センサによって侵入者の位置を特定し、カメラを侵入者の方向に向けて拡大映像を撮像することのニーズがある。
【0011】
これらの問題を解決する手法の一つとして、マイクロ波センサのアンテナから出るビームを左右に振るビーム切り替えアンテナと測距のできるマイクロ波センサ(2周波CW方式)を組み合わせて、ターゲット位置を検出する手法がある。ビームを左右に振ることでターゲットの横方向の位置を、2周波CW方式によりセンサからの距離を検出してターゲットの2次元の位置情報を得る手法である。また、ビームを振ることで、その物体が近くの虫であるか、遠方の人であるか、雨であるかを、検出レベルにより判定することが可能である。
【0012】
しかし、これまでのビームを切り替える手法を用いると、センサの構造が複雑になり、サイズが大きく、コストが高くなるため、民生用の機器に用いることが難しかった。特にマイクロ波やミリ波などで使用するスイッチは高価であり、多数のスイッチが必要とされるフェイズドアレーアンテナ装置は高額な商品となっていた。また、多くのスイッチ回路が必要となるため、サイズも大きくなっていた。
【0013】
そこで、本発明は、簡易な構造で製造コストを抑えることができ、サイズを小形化できる給電マトリックス回路およびそれを備えるフェイズドアレーアンテナを提供することを目的とする。また、本発明は、不感知エリアの問題が生じないフェイズドアレーアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、1入力8出力のフェイズドアレーアンテナの給電マトリックス回路であって、
2個のアンテナ端子に接続される第1のラットレース回路、2個のアンテナ端子に接続される第2のラットレース回路および給電点を切り替える第1のスイッチ切替機構を有するアンテナ位相差決定回路aと、
2個のアンテナ端子に接続される第3のラットレース回路、2個のアンテナ端子に接続される第4のラットレース回路および給電点を切り替える第2のスイッチ切替機構を有するアンテナ位相差決定回路bと、
アンテナ位相差決定回路aに接続される端子INa、アンテナ位相差決定回路bに接続される端子INb、第1の入力端子および第2の入力端子を有するハイブリッドカプラと、
第1および第2の入力端子に入力信号を分配する分配部と、
分配部とグランドとの接続をON/OFFするスイッチSWaと、を備え、
第1および第2のスイッチ切替機構並びにスイッチSWaの設定によりアンテナ間の位相差を0°,+45°,−45°に切り替えることにより8エレメントのアレーアンテナのビーム方向を、ボアサイト方向を含む3方向に切り替え可能である給電マトリックス回路を要旨とし、好ましくはスイッチ切替機構を3方向切替スイッチを含んで構成する。
【0015】
また、本発明は、当該給電マトリックス回路を備えるフェイズドアレーアンテナを要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡易な構造で従来と同様の特性を得ることができ、サイズを小形化できる低コストの給電マトリックス回路およびそれを備えるフェイズドアレーアンテナを提供することが可能となる。また、本発明によれば、細いビーム幅に対してビーム切り替え角度を適切に設定できるので、不感知エリアの問題が生じないフェイズドアレーアンテナを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例に係るアンテナ位相差決定回路の表面側の回路図
【図2】実施例に係るアンテナ位相差決定回路の裏面側の回路図
【図3】実施例に係る8出力RTBMの回路図
【図4】RAT45回路の入出力の位相
【図5】ポーラチャートにプロットされた実施例に係る給電回路(8出力RTBM)のSパラメータ
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、RTBM(Rat-race Tree Beam Matrix)と称する1入力8出力のフェイズドアレーアンテナの小形給電マトリックス回路に関する。この給電回路は、アンテナ間の位相差を、スイッチの設定により0°,+45°,−45°に切り替えることができるため、8エレメントのアレーアンテナのビーム方向を、ボアサイト方向を含む3方向に切り替え可能である。この給電回路で使われるアンテナ位相差決定回路の主要部品は、ラットレース回路2つと、3方向切り替えスイッチ1つであり、その構造はシンプルである。アンテナ位相差決定回路1個のサイズは、誘電率3.3の3層基板を用いた場合、例えば実施例に示す如く46×55mmであり、従来の給電回路より小形にすることができる。
【0019】
この給電マトリックス回路の特性は、スイッチの設定によりアンテナ間位相差を0°,+45°,−45°レベルを全て均一にすることができることにある。本発明の給電回路はRF回路シミュレータで計算され、その結果は理論値とほぼ一致し、正しく動作することを確認することができている。本発明の給電回路は、等間隔に配置された素子アンテナを複数備えるフェイズドアレーアンテナの小形化に寄与するものである。
【0020】
ところで、レーダーやマイクロ波センサにおいて、物体の位置を検出する際の分解能や、アンテナゲインを高めるために、ビームを細くする必要があり、その際より多くのアンテナ素子数が必要となる。8出力でアンテナ間位相差を−157°〜+157°の範囲で、8段階に切り替えることのできる給電マトリックス回路として8出力のバトラーマトリックス給電回路が提案されているが、12個の3dBハイブリッド回路が必要となるため、装置サイズが大きくなるという問題がある。
【0021】
発明者は、アンテナ位相差決定回路を2つ組み合わせることにより1入力8出力のフェイズドアレーアンテナの小形給電マトリックス回路を構成することを検討した。ここで、アンテナ間位相差を90°のまま用いると、細いビーム幅に対してビーム切り替え角度が大きすぎるためビーム間に隙間ができてしまい、これをレーダーで用いると、ターゲットを検出することができない不感知エリアができてしまうという問題がある。そこで、発明者は、4つのラットレース回路と1個の3dBハイブリッドカプラを用いてアンテナ間位相差を、スイッチの設定により0°,+45°,−45°に切り替えることができるようにすることで、かかる課題を解決した。なお、本発明の8出力給電回路は、HTBM(非特許文献1)で用いた高価な移相器は不要であるので、安価かつ小型である。
【0022】
以下では、本発明の詳細を実施例により説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
《構成》
図1は実施例に係るアンテナ位相差決定回路の表面側の回路図であり、図2は裏面側の回路図である(以下、この回路をRAT45と称する)。RAT45のサイズは、スイッチ回路を20×20mmとすると、46×55mmと見積もられる。基板は、3層で構成されており、表面と裏面には、マイクロストリップラインによる回路が配置されている。中央の層は、グランドプレーンである。各図中で反対面のパターンは、薄いグレーで書かれている。黒点はビアで、表面と裏面をつなげる。表面と裏面に配置されているHB1,HB2は、1.5λ型3dBラットレース回路で、特性インピーダンス70.7Ωの線路で設計される。ラットレース回路からアンテナ端子ANT1〜4端子につながる4本の線路は、特性インピーダンス50Ωで線路長は全て同じである。線路Ta、Tb,Tcの線路長は、それぞれλ/16, λ/4、”指定なし”であり、特性インピーダンスは、50Ω,35.3Ω,25Ωである。Taは表と裏の線路を合わせてλ/4の電気長を得るために用いる。Tbは25Ωから50Ωのインピーダンス変換のために用いる。SWは3方向切り替えスイッチで、ラットレース回路のポートA1とA2のすぐそばに配置され、スイッチとラットレース回路をつなぐ線路の長さは無視できるものとする。
【0024】
アンテナと信号源の入出インピーダンスは50Ωである。スイッチ設定が1(SW1)の時、IN端子より入力された信号は、λ/4インピーダンス変換にて25Ωに変換された後、半分の電力が表面のラットレース回路HB1のポートC1に、残りの半分が裏面のラットレース回路HB2のポートC2に導かれる。信号は、表面ではポートB1, D1より、裏面ではポートB2, D2より出力される。各ポートB1, B2, D1, D2は、4本のアンテナANT1, ANT2, ANT3, ANT4にそれぞれ給電される。ラットレース回路の特性上、ポートA1,A2からは、信号が出ないことが知られている(岡田文明著、「マイクロ波工学 基礎と応用」、山海堂発行)。そのためここに接続される線路Taは無視することができる。ここで、線路Tcの長さとラットレース回路とアンテナ間の線路の長さを無視して考えると、4つのアンテナポートの位相とパワーレベルは全て一致し、入力信号INを基準として、位相は−180°、パワーレベルは -6dBで出力される。
【0025】
スイッチ設定が2(SW2)の時、入力信号の半分は、表面のラットレース回路のポートA1に入り、半分の信号は、表面と裏面の線路Taを通り、位相が45°遅れて裏面のラットレース回路のポートA2に入る。ラットレース回路の特性により、出力端子O1,O2,O3,O4の位相は、入力信号に対してそれぞれ180°, 135°, 0°, -45°である。
スイッチ設定が3(SW3)の時、入力信号は、裏面のポートA2よりラットレース回路HB2に入り、半分の信号は、線路Taを通り位相が45°遅れて表面のラットレース回路HB1に入る。出力端子 O1,O2,O3,O4の位相は135°, 180°, -45°,0°である。
また各出力の信号レベルは、どのスイッチ設定においても、全て同じで、入力信号 INを基準として、-6dBで出力される。
【0026】
図3は、実施例に係る8出力RTBMの回路図である。RAT45が2つ並列に並んでおり(RAT45a, RAT45b)、出力にはアンテナが、また入力には、3dBハイブリッドカプラ(HB3)の出力が接続されている。HB3の2つの入力には、特性インピーダンス70.7Ω、長さλ/4の線路T1a, T1bが接続され、その先端はスイッチSWaが接続されている。T1a, T1bは、HB3の入力インピーダンスを50Ωから100Ωに変換するλ/4インピーダンス変換回路である。IN1の入力インピーダンスは、T1a, T1bで変換された2つの100Ωの並列により50Ωとなる。
【0027】
《動作原理》
図4には、極座標上にRAT45a, RAT45bの入出力の位相が各スイッチ設定においてプロットされている。入力INa, INbの位相が□で、出力O1a〜O4a, O1b〜O4bの位相が●である。
SW1設定の時、SWaは、OFFに設定されており、信号は、IN1より給電される。給電された信号は線路T1a, T1bで2分配され、HB3の入力端子IN2, IN3に入る。HB3の2つの出力信号は、どちらも2つの入力信号(IN2, IN3)の出力信号の合成となる。よってHB3の2つの出力は同一で、入力信号に対して-225°であり、それらは、RAT45a, RAT45bの入力端子INa,INbにそれぞれ入力される。RAT45の出力は、前記のRAT45の動作説明で述べたように、INa, INbに対して180°ずれるため、-45°となる。
【0028】
SW2設定の時、SWaはONに設定されており、信号は、HB3の入力端子IN2より給電される。線路T1aの長さがλ/4であり、その先のSWaがONでグランドに接続されているため、IN2よりT1aを見た時のインピーダンスは∞であり、給電された信号は、全てHB3に入る。HB3の出力の位相は、INaで、-90°,INbで-180°であり、レベルは2分割される。ハイブリッド回路の特性によりIN3の端子には信号は出力されない。SW2設定におけるRAT45の入出力の位相関係は、前記の動作説明で述べた通りである。これらの出力端子を図3のアンテナAN1〜AN8に接続されている順(O1a, O2a, O1b, O2b, O3a, O4a, O3b, O4b)に並べると、位相は90°, 45°, 0°, -45°, -90°, -135°, -180°, 135°となり、アンテナ間は -45°の位相差となる。
【0029】
SW3設定の時、SWaはONに設定されており、信号はHB3の入力端子IN3より給電される。給電された信号は、全てHB3に入り、その出力は、INaで-180°,INbで-90°の位相となる。SW3設定において、RAT45の入出力の位相関係は、動作説明で述べた通りであり、これらの出力をAN1〜AN8に接続されているポートの順(O1a, O2a, O1b, O2b, O3a, O4a, O3b, O4b)に並べると、位相は-45°,0°,45°, 90°, 135°, 180°, -135°, -90°となり、アンテナ間は+45°の位相差となる。
【0030】
《設計とシミュレーション》
シミュレーションは、図3の回路をRF回路シミュレータSNAP(修正節点解析法, MEL)で解析する。解析は、入力ポートIN1〜IN3をポート1(P1)、アンテナポートANT1〜ANT8をポート2〜9(P2〜P9)に割り当て、伝達特性S21〜S91を求める。各ポートのインピーダンスは50Ωである。また、図3において、「ラットレース回路からアンテナまでの線路、3dBハイブリッド回路からRAT45をつなぐ線路の長さ」の部分は無視して解析を行う。また、図1および5のRAT45内の回路では「線路Tcの線路の長さ、ビア」の部分を無視する。
スイッチは、オープン/ショートの理想スイッチとする。また線路のロスは無いものとする。基板の特性は、HTBMで報告された値に合わせて誘電率3.3,板厚0.8mmとする。各線路の幅(W)と線路長(L)は、SNAPにより計算され、線路幅W=1.0mm (Z0=70.7Ω) W=1.8mm (Z0=50Ω) W=3.1mm (Z0=35.3Ω) W=4.9mm (Z0=25Ω), λ/4の線路長は、各特性インピーダンスにおいて L=19.3mm (Z0=70.7Ω), L=19.0mm (Z0=50Ω), L=18.5mm (Z0=35.3Ω), L=18.1mm (Z0=25Ω)を得た。解析周波数は2.4〜2.5GHzで行う。
【0031】
《シミュレーション結果》
図5には、シミュレータで計算された8出力RTBMのS21〜S91がポーラチャート上にプロットされている。データの中にある○印のマーカーは、2.45GHzのポイントであり、表1は、その角度と振幅値をまとめたものである。
【0032】
[表1]

【0033】
SW1では8つのデータは同じになり、位相は45°、レベルは-9dBである。SW2では、S21, S31, S41, S51, S61, S71, S81, S91の位相は90°, 44°, 0°, -46°, -90°, -136°, -180°, 134°であり、ANT1を基準とするとアンテナ間の位相は約45°遅れる。レベルは8つともほぼ同じ-9dBである。SW3では、S21〜S91の位相は、順に-47°, 0°, 42.8°, 88.9°, 134°, 180°, -137°, -90.9°であり、ANT1を基準とすると、アンテナ間の位相は約45°進む。レベルは8つともほぼ同じ-9dBである。S11は、どのスイッチ設定においても-32dB以下となり、整合が正しくとれていることが示された。
以上のようにシミュレーション結果は、理論値とよく一致し、実施例に係る給電回路(8出力RTBM)が正しく動作することを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、小形かつ簡易な構造で、製造コストも抑えることができるため、防犯システム用マイクロ波センサなどの民生製品としての利用に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1入力8出力のフェイズドアレーアンテナの給電マトリックス回路であって、
2個のアンテナ端子に接続される第1のラットレース回路、2個のアンテナ端子に接続される第2のラットレース回路および給電点を切り替える第1のスイッチ切替機構を有するアンテナ位相差決定回路aと、
2個のアンテナ端子に接続される第3のラットレース回路、2個のアンテナ端子に接続される第4のラットレース回路および給電点を切り替える第2のスイッチ切替機構を有するアンテナ位相差決定回路bと、
アンテナ位相差決定回路aに接続される端子INa、アンテナ位相差決定回路bに接続される端子INb、第1の入力端子および第2の入力端子を有するハイブリッドカプラと、
第1および第2の入力端子に入力信号を分配する分配部と、
分配部とグランドとの接続をON/OFFするスイッチSWaと、を備え、
第1および第2のスイッチ切替機構並びにスイッチSWaの設定によりアンテナ間の位相差を0°,+45°,−45°に切り替えることにより8エレメントのアレーアンテナのビーム方向を、ボアサイト方向を含む3方向に切り替え可能である給電マトリックス回路。
【請求項2】
スイッチ切替機構が、3方向切替スイッチを含んで構成される請求項1の給電マトリックス回路。
【請求項3】
請求項1または2の給電マトリックス回路を備えるフェイズドアレーアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−30870(P2013−30870A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164013(P2011−164013)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年3月1日 社団法人電子情報通信学会 通信ソサイエティ発行の「電子情報通信学会論文誌(J94−B) 第3号」に発表
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】