説明

給電用コネクター装置

【課題】着脱容易であり、充電後に受電用コネクターから取り外す作業が安全且つ簡単に行いうる給電用コネクター装置を提供する。
【解決手段】ハンドル25とトリガー251を同方向に引くことにより接続状態にある受電用コネクターとの接続を解放するようにした給電用コネクター装置であって、ハンドルに設けられているトリガーを引くことによりトリガーの動きを伝達する手段を介して前進するロック部材230、受電用コネクターと接続するときは付勢力により外側に移動して受電用コネクターの係合部と係止して給電用コネクターの自由な解放を阻止し、トリガーを引いてロック部材が前進することによりロック部材との係合が解除され、内側に移動して受電用コネクターとの係止状態を解除する係止爪221を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電用コネクター装置に関する。更に詳しくは、充電後に車体側の受電用コネクターから取り外す際に安全且つ簡単に取り外すことができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の排出削減が義務化され、モーターを主動力又は補助動力とする電気自動車(いわゆるハイブリッド自動車、電池自動車を含む意味で使用しており、以下単に「電気自動車」という。)の生産又は生産計画が各所で進行している。
【0003】
このような電気自動車のうちモーターの動力源として二次電池を搭載するものについては、出先で蓄電量が低下して充電の必要が生じる場合がある。
蓄電量が低下した場合は急速充電器を備えた設備において充電することになるが、当該設備で使用する電気自動車用充電器の接触式コネクター(以下、接触式コネクターのうち、充電器側のコネクターを「給電用コネクター装置」と、電気自動車側のコネクターを「受電用コネクター」という。)は、その重要な部品の一つである。
【0004】
給電用コネクター装置としては、例えば、下記特許文献1の図1に記載された給電用コネクター装置が提案されている。前記給電用コネクター装置は、電気自動車側に設けられた受電用コネクターと組み合わせて使用するものであり、機械的な接続を行う爪と、電気的な接続を行うピンコンタクトと、電気的な接続を行うための接続用レバーと、電気的接続と機械的接続を解除する解除用レバーを備えている。
【0005】
特許文献1の給電用コネクター装置は、充電するにあたり、電気自動車側に設けられた受電用コネクターへ給電用コネクター装置を挿入すると、前記爪により機械的な接続が行われ、ピンコンタクトにより電気的な接続が行われる。充電終了後、給電用コネクター装置を外して一連の作業は完了する。給電用コネクター装置は電気自動車を急速充電するためには高出力を要するので、前記給電用コネクター装置は安全性確保の観点から二重のロック機構を有しており、給電用コネクター装置の取り外しは接続用レバーと解除用レバーのそれぞれを解除して行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2752032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の給電用コネクター装置は、取り外しの際に、接続用レバーと解除用レバーを個別に解除する必要があるが、比較的新しい分野の機材でもあるため一般に操作手順の周知がなされておらず、1つの工程が終わった時点で取り外し作業が完了したと誤解し、接続が完全に解除されていないにも関わらず給電用コネクター装置を強く引っ張って給電用コネクター装置又は受電用コネクターを壊してしまうといった事故の可能性があるという課題があった。
【0008】
そこで、本願発明者は、前記課題を解消すべく更に鋭意研究を行い、本発明に係る給電用コネクター装置の構造を想到するに至った。
【0009】
(発明の目的)
そこで、本発明の目的は、着脱が容易であって、特に充電後に車体側の受電用コネクターから取り外す作業が安全且つ簡単に行いうる給電用コネクター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。
本発明は、ハンドルとトリガーを同じ方向に引くことにより、接続状態にある受電用コネクターとの接続を解放するようにした給電用コネクター装置であって、 ハンドルに設けられているトリガーと、前記トリガーを引くことにより、トリガーの動きを伝達する手段を介して前進するロック部材と、受電用コネクターと接続するときは、付勢力により外側に移動して受電用コネクターの係合部と係止して給電用コネクターの自由な解放を阻止し、前記トリガーを引いて前記ロック部材が前進することによりロック部材との係合が解除され、内側に移動して受電用コネクターとの係止状態を解除する係止爪と、を備えた、給電用コネクター装置である。
【0011】
本発明は、ハンドルとトリガーを同じ方向に引くことにより、接続状態にある受電用コネクターとの接続を解放するようにした給電用コネクター装置であって、該給電用コネクター装置は、ケーシングと、ケーシング先端に設けられたプラグ部と、給電用コネクター装置と電源を繋ぐケーブルと、ケーシングの周方向に形成され、プラグ部の延長線方向と交わる方向へ突出するように設けられたハンドルと、プラグ部近傍に設けられ、受電用コネクターと機械的に接続する第1接続手段と、プラグ部に設けられ、受電用コネクターと電気的な接続を行う第2接続手段と、ハンドル近傍に設けられた第1接続手段の解除手段であるトリガーと、を備えており、第1接続手段は、作動時に周方向へ突出又は拡張することによって受電用コネクター側と嵌合又は噛合する凸部又は係止爪と、作動時以外は該凸部又は係止爪を中心軸方向に引き込むか又は収納するよう付勢する付勢手段と、プラグ部近傍に設けられており、作動時以外はプラグ部の正面方向へ付勢され、プラグ部の正面方向から奥手へ押し込むことで該凸部又は係止爪を周方向へ突出又は拡張させるロック部材と、を備え、給電用コネクター及び受電用コネクターを一時的に結合するように設けられており、第2接続手段は、プラグ部を介して、給電用コネクター及び受電用コネクターを通電可能に接続できるように設けられており、トリガーは、プラグ部が設けられた方向の反対側へ力を加えることで第1接合手段が解除する構造に設けられており、そのままプラグ部が設けられた方向の反対側へ力を加え続けることで各ロック手段の解除と給電用コネクターの引き抜きが同時に達成可能に構成されている、給電用コネクター装置である。
【0012】
前記給電用コネクター装置は、受電用コネクターと接続していない状態では、前方側に付勢されて係止爪を覆って係止爪の拡開を阻止しており、受電用コネクターと接続するときは、受電用コネクターの先端と当接し、給電用コネクターの接続方向への移動に伴い後退して係止爪を解放するスライドカバーを備えており、前記係止爪は、前記スライドカバーの後退に伴って露出するものであってもよい。
【0013】
前記給電用コネクター装置は、トリガーが一又は複数の指で引いて操作するもの又はハンドルと共に把握するものであって、常時プラグ部の方向へ付勢してあり、給電用コネクターの取り外し時にハンドル方向へ引くか又はハンドルと共に握り込むことで、第1ロック手段及び第2ロック手段の両方を同時に解除するように構成されたものであってもよい。
【0014】
前記給電用コネクター装置は、誤作動防止のために、解除手段或いはトリガーの周辺空間部を囲むように形成されたガード部材を備えているものであってもよい。
【0015】
ケーシングを形成する素材としては、例えば、ポリエチレン混合物等の合成樹脂、繊維等を混入して強化したFRP、天然又は合成ゴム、等が挙げられる。また、ケーシングは、単一の素材により形成されたもののみならず、複数の素材を組み合わせたものにより形成してもよい。
なお、ハンドル、トリガー、トリガーのガード部材についても、ケーシングと同じ素材で形成してもよいし、カバー内部との絶縁が確保できる場合は金属等の導電性素材により形成してもよい。
【0016】
ハンドルは、ケーシングの周方向に形成され、プラグ部の延長線方向と交わる方向へ突出するように設けられていればよく、例えば、ハンドルは使用時においてケーシングの下方へ突出した形状が挙げられるが、その位置、形状は特に限定しない。
【0017】
(作 用)
本発明に係る給電用コネクター装置の作用を説明する。なお、受電側コネクターは、日本電動車両協会規格JEVS G 105-1993の電気自動車用エコ・ステーション急速充電システムのコネクターに準拠したものが用いられる。
【0018】
〔給電前〕
接続前の給電用コネクター装置は、以下の状態である。
(1)第1接続手段は、ロック部材はプラグ部の正面方向へ付勢されており、付勢手段により凸部又は爪が中心軸方向に引き込むか又は収納されている。なお、解除手段であるトリガーはセットされていない状態となる。
【0019】
〔給電時〕
(2)作業者は、トリガーを握らずに給電用コネクター装置のプラグ部と受電用コネクターのプラグの向きを合わせて挿入(結合)する。
【0020】
(3)このとき、プラグ部近傍に設けられた凸部又は爪とロック部材が作動し、ロック部材が凸部又は爪をプラグ部の周方向へ突出又は拡張させ、該突出又は拡張した凸部又は爪が受電用コネクター側と嵌合又は噛合し、給電用コネクター装置及び受電用コネクターが機械的に接続され、一時的に結合する。同時に、第2接続手段も結合し、プラグ部を介して給電用コネクター装置及び受電用コネクターに通電するように接続され、給電が開始される。
【0021】
〔充電後〕
(4)給電用コネクター装置を受電用コネクターから取り外すにあたっては、まずハンドルごと握り締めるようにしてトリガーを引く。
トリガーの作動により、第1接続手段が解除されて、凸部又は爪が中心軸方向に引き込むか又は収納され、給電用コネクター装置及び受電用コネクターの結合が解かれる。
【0022】
(5)ハンドルごと握り締めトリガーを引いたまま、そのまま給電用コネクター装置を後方へ引いて受電用コネクターから取り外す。取り外し後の給電用コネクター装置は、凸部又は爪が納まり、他の部材も前記した〔給電前〕の状態に戻る。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、充電後に車体側の受電用コネクターから取り外す際に、安全且つ簡単に取り外すことができる給電用コネクター装置を提供できる。
【0024】
特に、本発明に係る給電用コネクター装置は、前記のようにワンアクションで給電用コネクター装置を受電用コネクターから脱落しないようにロックすることができ、また、ワンアクションで給電用コネクター装置を受電用コネクターから取り外す操作を行うことができる(解除手段又はトリガーを引く動作を行うと同時に、給電用コネクター装置を受電用コネクターから引き抜く動作が同じ方向(引く方向)に行われる)。このため、機械に対する知識の乏しい者であっても容易に取り合う使うことができ、また、人間工学に基づく自然な操作であるので取り外し手順を含む操作を誤りにくく、力が弱い者でも操作がしやすい。
【0025】
スライドカバーを備えた給電用コネクター装置にあっては、受電用コネクターと接続していない状態では係止爪を覆っているので、係止爪の拡開が阻止され、また、係止爪へのゴミの詰まり又は汚れの付着がしにくく、該ゴミ等を原因とした動作不良が起きにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る給電用コネクター装置の右側面図。
【図2】図1の給電用コネクター装置を正面側から縦方向に断面した説明図。
【図3】図1の給電用コネクター装置の正面図。
【図4】図1の給電用コネクター装置が受電用コネクターと接続した状態における内部構造を破線で示した説明図。
【図5】図1の給電用コネクター装置を受電用コネクターから引き抜く工程における内部構造を破線で示した説明図。
【図6】図1の給電用コネクター装置を受電用コネクターから引き抜いた状態における内部構造を破線で示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態を図面に基づき更に詳細に説明する。
図1を参照する。給電用コネクター装置1は、ハンドル25とトリガーガード26を備えたケーシング2と、ケーシング先端に設けられたプラグ装置21と、給電用コネクター装置と電源を繋ぐ電気ケーブル(図示省略。以下同じ。)と、ハンドルに設けられた解除手段であるトリガー251と、を備えている。
【0028】
図2を参照する。ケーシング2は、機構を内部に収容すべく内部が本質的に空洞であって、正面方向中央から縦方向に2分割可能に形成されており、該分割されたケーシングを組み合わせることで、ケーシング先端はプラグ装置21を取着可能な開口部(符号書略)と、ハンドル25と、トリガーガード26を構成する。
【0029】
更に詳しくは、図2の平面視において、給電用コネクター装置1のケーシング2先部側(図1及び図2においてケーシング2の左側上方)にはプラグ装置21及びその作動に係る機構が配置されており、給電用コネクター装置1のケーシング2基部側(図1及び図2においてケーシング2の右側下方)にはハンドル25とトリガーガード26が設けられている。
【0030】
ハンドル25は、給電用コネクター装置1の基部側へ向けて突き出した棒状体に形成されている。
【0031】
トリガーガード26は、ハンドル25の前方及び前方下側(図1及び図2においてハンドル25の左と下)に形成されており、ハンドル25とトリガーガード26の間は、親指を除く四指が十分に入るほどの間隔が空けられている。
【0032】
電気ケーブルは、トリガーガード26の下部に設けられた孔からケーシング2内へ導入されており、ケーシング2内を通って、その先端が後記するプラグ210に係る雄端子214へ通電可能に接続されている(図示省略)。なお、電気ケーブルを通す孔にはケーブルを孔の縁との摩擦等から保護するための筒状のケーブルガード271が取着してあり、該ケーブルガード271を通して電気ケーブルはケーシング2内に導入されている。また、電気ケーブルの他端は給電用コネクター装置1に電力を供給する急速充電器(電源)へ繋がっている(図示省略)。
【0033】
図2及び図3を参照して、プラグ装置21について説明する。
プラグ装置21は、円筒状の電極ユニットカバー211と、電極ユニットカバー211の外周に設けられたスライドカバー212と、電極ユニットカバー211内に設けられた第1接続手段である係止爪221を含んだ二本のロックアーム220と、電極ユニットカバー210内に設けられた係止爪221を拡張させるためのロック部材230と、電極ユニットカバー210の先端に設けられた第2接続手段であるプラグ210と、を備えている。プラグ210は、その先端には雄端子214を備えている。
【0034】
電極ユニットカバー211は、ケーシング2本体と同じ素材からなる円筒状の部材であって、ケーシング2本体の先端側内部に設けられた空洞部に取着されている。電極ユニットカバー211は、先部に受電用コネクター3と接続するプラグ210が設けられており、電極ユニットカバー211の開口した後部から電気ケーブル及びロック部材230が導入されている。
【0035】
スライドカバー212は、後端に鍔状の縁を有する短筒状の部材であって、その内径が電極ユニットカバー211の外径よりもやや径大であって、電極ユニットカバー211の外側に配置されている。
受電用コネクター3に接続していないときのスライドカバー212は、ケーシング2本体の先端側内部に設けられたバネ213によってその後端側が押される形になり、前側へ向かって常時付勢されている。
なお、本実施形態では、バネとして圧縮コイルバネを使用しているが、これに限定するものではなく、例えば、反発する作用を奏するものであれば、他の種類の公知の弾性体を使用してもよい。
【0036】
スライドカバー212は、電極ユニットカバー211に沿って前後(図2においては左右方向)にスライド可能に形成されており、スライドカバー212が前側(図2において左側)に位置しているときは、その内側に係止爪221が納まるように(その内面が係止爪212に当接して抑え、係止爪が外に露出して受電用コネクター3と係合しないように)設けられている。
一方、受電用コネクター3に接続したときは、スライドカバー212が後ろ側に押し下げられ、その内側に納まった係止爪221が外側へ露出し、受電用コネクター3と係合するように設けられている(図4参照)。
【0037】
各ロックアーム220は、所要長さの板体が長さ方向中央よりやや先端側(プラグ側)においてプラグ装置21の外方へ直角に折り曲げられ、所要幅を設けて更にプラグ210側へ折り曲げてクランク状に形成されている。ロックアーム220の先端側(プラグ側)は、プラグ装置21の外方へ折り曲げられ、該部分が係止爪221を構成する。また、ロックアーム220の基端側(ハンドル側)には、幅方向に貫通した取着孔222が形成されている。
ロックアーム220は、取着孔222に取付ピン224を挿通させてケーシング2へ取着しており、該取付ピン224を支点として、プラグ装置21の中心軸方向及び周方向へ上下動可能に設けられている。
【0038】
各ロックアーム220には、付勢手段としてバネ223がロックアーム220の上又は下に配置されている(図2参照)。各バネ223は、一端がロックアーム220の取着孔222近傍に取着され、他端がケーシング2に取着されており、各ロックアーム220をプラグ装置21の中心軸方向に押圧するようにしてある。
なお、本実施形態では、バネとして圧縮コイルバネを使用しているが、これに限定するものではなく、例えば、反発する作用を奏するものであれば、ねじりバネ(ねじりコイルバネ)等の公知の弾性体を使用してもよい。
【0039】
ロック部材230は、短筒状の部材であるロックリング231と、該ロックリング231から延設された二本のロッド235と、各ロッド235の先端を横断方向に繋ぐ横架桿236と、横架桿236の中央からロックリング231と反対方向に突設された取着部232と、を備えている(図2参照)。
前記ロック部材230は、その外径が電極ユニットカバー211の内径よりもやや径小であって、電極ユニットカバー211内に納まり、電極ユニットカバー211内を前後にスライド可能に形成されている。
前記取着部232は、ロックリング231と反対方向の端部が、後記する連結パーツ24と当接できるように設けられ、側面の中央の横断方向に支持軸234を通す孔233が形成されている。
【0040】
前記のプラグ210の形状は、必要応じて任意に設計しうるが、日本電動車両協会の推進する標準規格による形状であることが互換性確保のためにも好ましい。
【0041】
ロック部材230とトリガー251の間には、トリガーの動きを伝達する手段である連結パーツ24及び梃子255が設けられている。
【0042】
連結パーツ24は、ロック部材230の取着部232と梃子255の間の間隔よりもやや短い長さの部材であって、梃子255側に長さ方向に形成された長孔241と、ロック部材230の取着部232側に取着部232とピン留め可能に形成された孔(符号及び図示省略)と、連結パーツ24の長さ方向略中央下方にバネ取着用のピン留め孔242がそれぞれ設けられている。
【0043】
ロック部材230と連結パーツ24は、ロック部材230のピン留め孔233と連結パーツ24のロック部材側に形成された孔(符号及び図示省略)とを重ね、連結ピン234により連結されている。
【0044】
長孔241には、ケーシング2に設けられた2本の係止ピン243,244が配置されており、連結パーツ24は、長孔241及び各係止ピン243,244によって該各係止ピン243,244の間の幅方向へ前後にスライド可能に構成されている。
【0045】
また、前記係止ピン243,244のうち、前方側に位置する取付ピン243と連結ピン234との間には引っ張りバネ245が取着されており、該引っ張りバネ245によってロック部材230は常時給電用コネクター装置1の後方側へ引っ張られる力が加えられている。
【0046】
前記ピン留め孔242には取付ピン246が取着され、該取付ピン246とケーシング2内であって連結パーツ24下方に設けられた取付ピン248との間には引っ張りバネ247が取着されており、該引っ張りバネ247によって連結パーツ24はロック部材230側へ押しつけられる力が加えられている。
【0047】
トリガー251は、トリガー251を先部側へ(図2右側へ)付勢するバネ253と、トリガー251の動きに連動してロック部材230を操作する梃子255と、を備えている。
なお、本実施形態では、バネとして圧縮コイルバネを使用しているが、これに限定するものではなく、例えば、反発する作用を奏するものであれば、ねじりバネ(ねじりコイルバネ)等の公知の弾性体を使用してもよい。
【0048】
トリガー251は、ハンドル25とほぼ同じ長さであって親指以外の四指(即ち、人差し指、中指、薬指、小指)で握り込むタイプであり、その下端はハンドル25の下側に枢着してあり、前記枢着部分を支点にして前後へ軸動するように設けられている。
【0049】
また、トリガー251は、その上端部分に設けられた取付ピン254が、後記する梃子255の長孔257に沿ってスライド可能に取着されており、トリガー251の動きと連動して梃子255が回動し、梃子255によってロック部材230を前後方向へ移動させるように構成されている。
【0050】
バネ253は、その一端がトリガーの高さ方向中央よりやや高い位置に設けられた取付ピン252へ取着され、他端がハンドル内に取着されており、力を加えていない状態においては常時トリガー251の前方側(即ち、プラグ210方向)に向かってトリガー251へ付勢する。
【0051】
梃子255は、ケーシング2内部に配置されており、給電用コネクター装置1の基部側上部(ハンドル25の上側)に枢着してある。
前記梃子255は、平面視で長手方向の略中央に回動軸256が設けられており、一端側(先端側)に押接部258が設けられ、他端側(後端側)には長孔257が設けられている(図2参照)。押接部258は、連結パーツ24後端に当接して前方側へ押し出せる形状に形成されている。
【0052】
梃子255は、トリガー251を引くと梃子255は先部側(図5では反時計回り)に回動し、トリガー251を離すと梃子255は基部側(図5では時計回り)に回動する。
【0053】
なお、本実施形態においては、解除手段のトリガーは、ハンドルとほぼ同じ長さであって親指以外の四指で握り込むタイプであるが、これに限定するものではなく、例えば、銃のトリガーのような形状であって、一又は複数の指で引いて操作するものであってもよい。また、「四指で握り込む」と記載しているが、これは一般的な場合であって、指の欠損がある場合又は握力が強いために四指のうちの一以上三以下の指で握り込むことができる場合を除外するものではない。
【0054】
(作 用)
図1乃至図6を参照して、本実施の形態に係る給電用コネクター装置1の作用を説明する。なお、受電側コネクター3に関しては、図4乃至図6に示す日本電動車両協会規格JEVS G 105-1993の電気自動車用エコ・ステーション急速充電システムのコネクターに準拠したものを用いて説明する。
【0055】
〔受電用コネクター3〕
図6を参照して、受電用コネクター3について説明する。
受電用コネクター3は、給電用コネクター装置1の先端部を受け入れ可能な開口部を有する有底円筒状に形成されており、開口部内は給電用コネクター装置1のプラグ210を収納可能な空間部300となっている。空間部300は、その奥部に雌端子310が設けられており、雌端子310はコード320に繋がっている。
【0056】
空間部300の内部形状は、奥部分に対して、その開口部の縁部(以下、当該箇所を「開口部縁部303」という。)とその近傍が窄まった形状或いは径小となっており(以下、当該箇所を「開口部内周302」という。)、空間部300の奥部分と開口部内周302の中間箇所が鋭角乃至鈍角(直角を含む)に立ち上がるように段部が形成され、該段部が係止爪221と噛み合う爪係止部301となる。
【0057】
開口部内周302の内径は、プラグ210の外径とほぼ等しく形成されている(少なくとも開口部縁部303の内径はスライドカバー212の外周よりも径小に形成される。)。
【0058】
なお、前記空間部300内には、供給される電力受電するための雌端子310のほか、電気通信回線を通じた情報(例えば、時間単位当たりの給電量又は充電完了迄の電力量或いは時間、電気料金等の各種情報)を送受信する端子の接続部を設けても良い。
【0059】
〔給電前〕
図2を参照する。接続前の給電用コネクター装置1は、以下の状態である。
(1)スライドカバー212は、その後端がバネ213によって押され、前側へ向かって常時付勢されているので、スライドカバー212が前側(図2の左側)に位置している。
この状態においては、スライドカバー212の内側に係止爪221が納まっており、各ロックアーム220が圧縮バネ223によりプラグ装置21の中心軸方向に押圧されている。
【0060】
(2)ロック部材230には、引っ張りバネ245によって常時給電用コネクター装置1の後方側へ引っ張られる力が加えられているため、そのロックリング231後部側と当接した各ロックアーム220の係止爪221部分に対して常に押し広げようとする力が加わっている。しかしながら、図2に示すようにスライドカバー212の内側に係止爪221が納まっているので、各係止爪221間の幅がロックリング231の径より狭くなり、ロック部材230の後退が係止爪221によって阻まれ、ロック部材230は後退することができずに係止爪221先端部分で止まる。
【0061】
(3)前記の状態において、連結パーツ24はスライドして前方側に位置している。梃子255は、前方側に回動して傾倒し、連結パーツ24の後端へ押接部258の一部しか接せずに押し出すような状態となっている(図2参照)。
【0062】
〔給電時〕
図4を参照する。給電時の給電用コネクター装置1は、以下の状態である。
(4)作業者は、トリガー251を握らずに受電用コネクター3へプラグ210と受電用コネクター3の向きを合わせ、受電用コネクター3の空間部300の奥までプラグ210を挿入する。
このとき、プラグ210の外周と空間部300の開口部内周302はその径がほぼ等しく且つスライドカバー212は開口部縁部303よりも径大であるため、スライドカバー212はその先端が開口部縁部303に当接した後、給電用コネクター装置1の後方側へ押し下げられて後退する。
【0063】
(5)プラグ210の挿入にあわせてスライドカバー212が後退すると、スライドカバー212により抑えられていた係止爪221が露出して給電用コネクター装置1中心軸と反対方向に(拡がる方向に)突出する。突出した係止爪221は、空間部300内の爪係止部301と係合し、給電用コネクター装置1を受電用コネクター3から脱落しないようにロックする。
【0064】
ロック部材230は引っ張りバネ245により給電用コネクター装置1後方側に引っ張られているのでロック部材230は後退し、前記係止爪221の張り出し(突出)によりプラグ210周面との間に生じた隙間へ、ロック部材230のロックリング231後端側が入り込んで係止爪221を押し上げる。この結果、係止爪221はより強い力でロックされる。
【0065】
このとき、連結パーツ24はスライドして後退し、連結パーツ24の後端が梃子255を押して回動させ、連結パーツ24の後端と梃子255の押接部258がぴったりと当接し、梃子255の動きと連動してトリガー251が(トリガーを引けば機械的接続が解除される状態に)セットされる。
同時に、雄端子214と雌端子310も結合し、各端子を介して給電用コネクター装置及び受電用コネクターに通電するように接続され、給電が開始される。
【0066】
〔充電後〕
(6)図5を参照する。給電用コネクター装置1を受電用コネクター3から取り外すにあたっては、まずハンドル25ごと握り締めるようにしてトリガー251を引く。
【0067】
引いたトリガー251は、梃子255を前方側に回動させて連結パーツ24の後端を前方へ押し、連結パーツ24は前方へスライドする。このとき、連結パーツ24連結されたロック部材230も前方へスライドし、係止爪221の張り出し(突出)によりプラグ210周面との間に生じた隙間へ入り込んでいたロックリング231も前に移動して該隙間から外れ、ロックリング231が押し上げていた係止爪221は圧縮バネ223によって給電用コネクター装置1中心軸方向へ押し込まれる。
【0068】
この結果、空間部300内の爪係止部301と契合していた係止爪221が引っ込み、受電用コネクター3へのロックが解除される。
【0069】
(7)図6を参照する。ハンドル25ごと握り締めトリガー251を引いたまま、そのまま後方へ引いて、給電用コネクター装置1を受電用コネクター3から取り外す。取り外し後の給電用コネクター装置1は、スライドカバー212がバネ213によって前側へスライドしてスライドカバー212内側に係止爪221が納まり、他のパーツ(ロック部材230、各ロックアーム220、連結パーツ24、梃子255)も前記した〔給電前〕の状態に戻る。
【0070】
以上で説明したように、給電用コネクター装置1は、前記のようにワンアクションで給電用コネクター装置1を受電用コネクター3から脱落しないようにロックすることができ、また、ワンアクションで給電用コネクター装置1を受電用コネクター3から取り外す操作を行うことができる(機械的接続の解除であるトリガーを引く動作を行うと同時に、給電用コネクター装置を受電用コネクターから引き抜く動作が同じ方向(引く方向)に行われる)。このため、機械に対する知識の乏しい者であっても容易に取り合う使うことができ、また、人間工学に基づく自然な操作であるので取り外し手順を含む操作を誤りにくく、力が弱い者でも操作がしやすい。
【0071】
また、給電用コネクター装置1は、二次電池を備えた乗物への給電設備において好適に使用される。二次電池を備えた乗物としては、例えば、電気自動車、電池自動車、ハイブリッド自動車、電動バイク、電動スクーター、電動アシスト自転車、電動平行二輪車、遊具などの電動乗物、電動船外機を載せた船、その他のモーターを主動力又は補助動力とする乗物等が挙げられる。
【0072】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
1 給電用コネクター装置
2 ケーシング
21 プラグ装置
210 プラグ
211 電極ユニットカバー
212 スライドカバー
213 バネ
214 雄端子
220 ロックアーム
221 係止爪
222 取着孔
223 バネ
224 取付ピン
230 ロック部材
231 ロックリング
232 取着部
233 ピン留め孔
234 連結ピン
235 ロッド
236 横架桿
24 連結パーツ
241 長孔
242 ピン留め孔
243,244 係止ピン
245 引っ張りバネ
246 取付ピン
247 引っ張りバネ
248 取付ピン
25 ハンドル
251 トリガー
252 取付ピン
253 バネ
254 取付ピン
255 梃子
256 回動軸
257 長孔
258 押接部
26 トリガーガード
271 ケーブルガード
3 受電用コネクター
300 空間部
301 爪係止部
302 開口部内周
303 開口部縁部
310 雌端子
320 コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルとトリガーを同じ方向に引くことにより、接続状態にある受電用コネクターとの接続を解放するようにした給電用コネクター装置であって、
ハンドルに設けられているトリガーと、
前記トリガーを引くことにより、トリガーの動きを伝達する手段を介して前進するロック部材と、
受電用コネクターと接続するときは、付勢力により外側に移動して受電用コネクターの係合部と係止して給電用コネクターの自由な解放を阻止し、前記トリガーを引いて前記ロック部材が前進することによりロック部材との係合が解除され、内側に移動して受電用コネクターとの係止状態を解除する係止爪と、
を備えた、
給電用コネクター装置。
【請求項2】
ハンドルとトリガーを同じ方向に引くことにより、接続状態にある受電用コネクターとの接続を解放するようにした給電用コネクター装置であって、
該給電用コネクター装置は、
ケーシングと、
ケーシング先端に設けられたプラグ部と、
給電用コネクター装置と電源を繋ぐケーブルと、
ケーシングの周方向に形成され、プラグ部の延長線方向と交わる方向へ突出するように設けられたハンドルと、
プラグ部近傍に設けられ、受電用コネクターと機械的に接続する第1接続手段と、
プラグ部に設けられ、受電用コネクターと電気的な接続を行う第2接続手段と、
ハンドル近傍に設けられた第1接続手段の解除手段であるトリガーと、
を備えており、
第1接続手段は、
作動時に周方向へ突出又は拡張することによって受電用コネクター側と嵌合又は噛合する凸部又は係止爪と、
作動時以外は該凸部又は係止爪を中心軸方向に引き込むか又は収納するよう付勢する付勢手段と、
プラグ部近傍に設けられており、作動時以外はプラグ部の正面方向へ付勢され、プラグ部の正面方向から奥手へ押し込むことで該凸部又は係止爪を周方向へ突出又は拡張させるロック部材と、
を備え、給電用コネクター及び受電用コネクターを一時的に結合するように設けられており、
第2接続手段は、プラグ部を介して、給電用コネクター及び受電用コネクターを通電可能に接続できるように設けられており、
トリガーは、プラグ部が設けられた方向の反対側へ力を加えることで第1接合手段が解除する構造に設けられており、そのままプラグ部が設けられた方向の反対側へ力を加え続けることで各ロック手段の解除と給電用コネクターの引き抜きが同時に達成可能に構成されている、
給電用コネクター装置。
【請求項3】
受電用コネクターと接続していない状態では、前方側に付勢されて係止爪を覆って係止爪の拡開を阻止しており、
受電用コネクターと接続するときは、受電用コネクターの先端と当接し、給電用コネクターの接続方向への移動に伴い後退して係止爪を解放するスライドカバーを備えており、
前記係止爪は、前記スライドカバーの後退に伴って露出する、
請求項1又は2記載の給電用コネクター装置。
【請求項4】
トリガーは、一又は複数の指で引いて操作するもの又はハンドルと共に把握するものであって、
常時プラグ部の方向へ付勢してあり、給電用コネクターの取り外し時にハンドル方向へ引くか又はハンドルと共に握り込むことで、第1ロック手段及び第2ロック手段の両方を同時に解除するように構成された、
請求項2記載の給電用コネクター装置。
【請求項5】
誤作動防止のために、解除手段或いはトリガーの周辺空間部を囲むように形成されたガード部材を備えている、
請求項1乃至4記載の給電用コネクター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−128972(P2012−128972A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277196(P2010−277196)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000207089)大電株式会社 (67)
【Fターム(参考)】