説明

給電装置のハーネス支持具仮止め構造

【課題】給電用のプロテクタを車両のスライドドアに縦置きに組み付ける際に、プロテクタにハーネス支持具を不意な脱落なく確実に仮止めさせる。
【解決手段】プロテクタ2と、プロテクタから導出されたワイヤハーネス5と、ワイヤハーネスに組み付けられたハーネス支持具10とを備えた給電装置1で、プロテクタ2が縦置きに配置された状態で、プロテクタに、上向きの支柱部12と、支柱部の上端側で支柱部よりも横方向に突出した頭部13とで成る突起形状部11が立設され、ハーネス支持具10に、突起形状部を挿通させる孔部15を有して、孔部の上縁16a1を頭部の下面13bに当接させる枠形状部16が設けられ、支柱部に、枠形状部の内面16a2を沿わせる傾斜部14が、頭部の下面と鋭角に交差して形成されているハーネス支持具仮止め構造を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のスライドドアに給電用のプロテクタを組み付ける際に、プロテクタから導出されたワイヤハーネス側のハーネス支持具をプロテクタに仮止めするための給電装置のハーネス支持具仮止め構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の給電装置の一形態を示すものである。
【0003】
この給電装置41は、合成樹脂製のプロテクタ2と、プロテクタ内に一部のハーネス部分を収容させ、一部のハーネス部分に続く一方のハーネス部分5bをプロテクタ2の横長の下部開口8から導出させ、一部のハーネス部分に続く他方のハーネス部分(図示せず)をプロテクタ2の例えば後部開口9から導出させたワイヤハーネス5と、ワイヤハーネス5の一方の部分5bに組み付けられたハーネス支持具10とを備えたものである。
【0004】
図4の給電装置41に類似するものとして、例えば特許文献1(図示せず)には、自動車のスライドドアにプロテクタが縦置き(垂直)に配置され、ハーネス支持具(ハーネスクランプ)が車両ボディのステップ部の後部近傍に配置され、ワイヤハーネスの一方の部分がプロテクタの下部開口からハーネス支持具に配索され、ワイヤハーネスの他方の部分がプロテクタの後部開口からスライドドア側に配索されてスライドドア内の機器等に接続された構造の給電装置が記載されている。
【0005】
プロテクタの後半の内側には、ワイヤハーネスを上向きに付勢する板ばねが配置されている。特許文献1の従来例には、プロテクタの前半の内側に板ばねを配置し、ワイヤハーネスの他方の部分をプロテクタの前部開口からスライドドア内に導出させた構造も記載されている。明細書で「前後」とは車両の前後に概ね一致させている。
【0006】
また、特許文献1には、給電装置の搬送時の荷姿の乱れを防止したり、車両への給電装置の取付作業時にワイヤハーネスが邪魔にならないようにするために、プロテクタの基板部の外面にフックと突起を設け、ハーネス支持具のブラケットに設けた孔部をプロテクタのフックに係合させると共に、ハーネス支持具のブラケットの端部をプロテクタの突起に当接させて、ハーネス支持具をプロテクタに仮止めすることが記載されている。
【0007】
また、特許文献1の従来例には、ハーネス支持具にフックを設け、プロテクタの前端に設けた枠部にハーネス支持具のフックを上から下向きに引っ掛けて、ハーネス支持具をプロテクタに仮止めすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−62868号公報(図1,図4〜図5,図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の図4の給電装置においては、プロテクタ2を車両のスライドドアに組み付ける際に、ハーネス支持具10が一方のハーネス部分5bと共に垂れ下がるために、ハーネス支持具10が矢印Bの如く前後ないし左右に振れて作業者や車両ボディやスライドドア等に干渉して破損する心配があり、干渉しないように注意しながら作業を行わなければならず、スライドドアへのプロテクタ2の組付作業性が悪いという懸念があった。
【0010】
また、上記特許文献1の給電装置のハーネス仮止め構造にあっては、プロテクタの基板部に設けたフックにハーネス支持具(ハーネスクランプ)の孔部を係合させる構造であるために、例えば作業者がプロテクタをスライドドアに組み付ける際に、プロテクタを縦にした場合に、水平なフックからハーネス支持具が外れて脱落し兼ねないという懸念があった。
【0011】
また、プロテクタの前端の枠部にハーネス支持具(ハーネスクランプ)のフックを上から下向きに引っ掛ける構造にあっては、プロテクタの下部開口から導出したワイヤハーネスが上向きに屈曲してハーネス支持具に続いているために、ワイヤハーネスの屈曲部の反力でフックが枠部から上向き(前向き)に外れ兼ねないという懸念があった。
【0012】
本発明は、上記した点に鑑み、給電用のプロテクタを車両のスライドドアに縦置きに組み付ける際に、プロテクタにハーネス支持具を不意な脱落なく確実に仮止めさせておくことのできる給電装置のハーネス支持具仮止め構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る給電装置のハーネス支持具仮止め構造は、プロテクタと、該プロテクタから導出されたワイヤハーネスと、該ワイヤハーネスに組み付けられたハーネス支持具とを備えた給電装置において、前記プロテクタが縦置きに配置された状態で、該プロテクタに、上向きの支柱部と、該支柱部の上端側で該支柱部よりも横方向に突出した頭部とで成る突起形状部が立設され、前記ハーネス支持具に、該突起形状部を挿通させる孔部を有して、該孔部の上縁を該頭部の下面に当接させる枠形状部が設けられ、該支柱部に、該枠形状部の内面を沿わせる傾斜部が、該頭部の下面と鋭角に交差して形成されていることを特徴とする。
【0014】
上記構成により、縦置きのプロテクタの上向きの突起形状部にハーネス支持具の枠形状部が上方から下向きに貫通係合され、枠形状部の孔部の内面が突起形状部の支柱部の傾斜部に接触し、枠形状部がハーネス支持具と一体に支柱部に対して傾斜部の傾斜角度で下向きに傾斜し、その状態で枠形状部の孔部の上縁が突起形状部の頭部の下面に当接する。ハーネス支持具が突起形状部を支点に下向きに傾斜することで、ハーネス支持具の自重が枠形状部を介して突起形状部の頭部の下面に負荷され、枠形状部の孔部の上縁が頭部の下面に強く押接し、それにより突起形状部に枠形状部が安定に保持され、突起形状部からの枠形状部すなわちハーネス支持具の不意な離脱が防止される。
【0015】
請求項2に係る給電装置のハーネス支持具仮止め構造は、請求項1記載の給電装置のハーネス支持具仮止め構造において、前記突起形状部の頭部に、前記下面に交差して続く第二の下面が設けられていることを特徴とする。
【0016】
上記構成により、突起形状部に枠形状部が係合した状態で、例えばハーネス支持具に上下方向の外力(振れ力)が作用した場合に、枠形状部の前記孔部の上縁に交差する上縁部分が突起形状部の頭部の第二の下面に当接し、枠形状部の各上縁が頭部の二つの下面に同時に当接することで、突起形状部からの枠形状部すなわちハーネス支持具の不意な離脱が防止される。
【0017】
請求項3に係るハーネス支持具仮止め構造は、請求項1又は2記載の給電装置のハーネス支持具仮止め構造において、前記ハーネス支持具が横置きに配置された状態で、該ハーネス支持具に前記枠形状部が横向きに突出形成されていることを特徴とする。
【0018】
上記構成により、枠形状部を突起形状部に上から下向きに係合させることで、プロテクタにハーネス支持具が横置きに仮止めされ、その状態からハーネス支持具がプロテクタから外されて(仮止めが解除されて)車両ボディ側に横置きに作業性良くスムーズに組み付けられる。
【0019】
請求項4に係る給電装置のハーネス支持具仮止め構造は、請求項1〜3の何れかに記載の給電装置のハーネス支持具仮止め構造において、前記プロテクタのハーネス導出用の下部開口に沿って延長部が突出形成され、該延長部に前記突起形状部が立設されていることを特徴とする。
【0020】
上記構成により、プロテクタの下部開口から導出されたワイヤハーネス部分がプロテクタの延長部に沿って配索され、且つハーネス支持具がプロテクタから前後方向に離間した状態で、ハーネス支持具の枠形状部が延長部の突起形状部に仮止めされる。これにより、プロテクタの下部開口から導出されたワイヤハーネス部分の垂れ下がりが小さく抑えられ、ワイヤハーネス部分やハーネス支持具がプロテクタの組付作業の邪魔にならなくなる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明によれば、給電用のプロテクタを車両のスライドドアに縦置きに組み付ける際に、プロテクタの突起形状部の傾斜部に沿ってハーネス支持具の枠形状部を下向きに傾斜させて支持させることで、プロテクタにハーネス支持具を不意な脱落なく確実に仮止めさせておくことができる。これにより、プロテクタからのワイヤハーネスの垂れ下がりを防いで、スライドドアへのプロテクタの組み付けを作業性良くスムーズに行うことができる。
【0022】
請求項2記載の発明によれば、例えばハーネス支持具に上下方向の外力等が作用した場合に、枠形状部の孔部の上縁を頭部の二つの下面に同時に当接させることで、プロテクタに対するハーネス支持具の仮止めの信頼性を高めることができる。
【0023】
請求項3記載の発明によれば、プロテクタにハーネス支持具を横置きに仮止めした状態から、ハーネス支持具を外して(仮止めを解除して)車両ボディ側に横置きに作業性良くスムーズに組み付けることができる。
【0024】
請求項4記載の発明によれば、プロテクタからハーネス支持具を遠く離間させて支持させると共に、プロテクタからのワイヤハーネスの垂れ下がりを小さく抑えて、スライドドアへのプロテクタの組付を作業性良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る給電装置のハーネス支持具の仮止め構造の一実施形態を示す全体正面図である。
【図2】同じく給電装置のハーネス支持具の仮止め構造の要部を示す分解斜視図である。
【図3】同じく給電装置のハーネス支持具の仮止め構造の要部を示す、図1の矢視Aに相当する仮止め状態の斜視図である。
【図4】従来の給電装置とそのハーネス支持具の一形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1〜図3は、本発明に係る給電装置のハーネス支持具の仮止め構造の一実施形態を示すものである。
【0027】
図1の如く、この給電装置1は、縦置き(垂直ないし略垂直)に配置される合成樹脂製のプロテクタ2と、プロテクタ2内に一部のハーネス部分5aを収容させ、一部のハーネス部分5aに続く長い一方のハーネス部分5bをプロテクタ2の横長の下部開口8から導出させ、一部のハーネス部分5aに続く短い他方のハーネス部分5cをプロテクタ2の小径な後部開口から導出させたワイヤハーネス5と、ワイヤハーネス5の一方の部分5bの先端側に横置き(略水平)に装着されたハーネス支持具10とを備えている。
【0028】
さらに、プロテクタ2は下部開口8から後方に延びたハーネスガイド用の延長部6を有し、図2,図3の如く、延長部6の先端側に突起形状部11が立設され、突起形状部11は、上向きの支柱部12と、支柱部12の上端側に形成されたリブ状の頭部13とで成り、頭部13は支柱部12よりも背面側(取付側であるスライドドア側)に向けて横方向に突出している。
【0029】
さらに、頭部13の突出部分13aの下面13bの下側において、図3の如く支柱部12の上端から下端(付根)にかけて支柱部12の横幅Wを漸次拡幅させるように傾斜部14が形成され、傾斜部14は頭部13の下面13bに鋭角的に交差している(鋭角的な交差角をθで示す)。また、ハーネス支持具10の側端に、突起形状部11に上から下向きに係合する孔部15を有する枠形状部16が背面側(取付側であるスライドドア側)に向けて横向きに突出して設けられている。
【0030】
図1は、突起形状部11に枠形状部16が係合した状態、図2は、突起形状部11に枠形状部16が係合する前において、図1のプロテクタ2とハーネス支持具10の各要部を斜め上方から見た状態、図3は、図1,図2を矢視A方向から見た状態(突起形状部11に枠形状部16が係合した状態)をそれぞれ示している。
【0031】
図1において、プロテクタ2は背面側のプロテクタベース3と正面側のプロテクタカバー4とで成り、プロテクタベース3とプロテクタカバー4とは外周側の係止手段(爪部と枠片)7で相互に固定されている。
【0032】
プロテクタベース3は、背面側の垂直な基板部3aと、基板部3aの前後及び上側の周囲に直交して一体に設けられた周壁3bと、基板部3aの下端側において基板部3a及び後側の周壁3b1と一体に後方に横長に突出延長された延長壁部18とを備えている。プロテクタカバー4は、正面側の垂直な基板部4aと、基板部4aの前後及び上側の周囲に直交して一体に設けられた周壁4bと、基板部4aの下端側において下部開口8に沿って基板部4aと一体に後方に突出延長された延長壁部19とを備えている。
【0033】
プロテクタベース3の周壁3bの外側にプロテクタカバー4の周壁4bが重なって位置し、これら周壁3b,4bに前記係止手段7が設けられている。プロテクタベース3の基板部3aはプロテクタカバー4の基板部4aよりも下方に少し長く延長され、プロテクタカバー4の基板部4aの下端部分4cは外向きに湾曲状に屈曲(突出)してハーネスガイド湾曲面を成している。ハーネスガイド湾曲面4cとプロテクタベース3の基板部3aの下端部分との間に長形の下部開口8が形成されている。
【0034】
プロテクタベース3の延長部18は、プロテクタカバー4の延長部19よりも後方に長く延長され、背面側の垂直な壁部18aと上側の水平な壁部18bとで縦断面略逆L字状に形成されている。プロテクタカバー4の延長部19は、ハーネスガイド湾曲面4cを後方に一体に延長したもので、正面側の縦断面湾曲状の壁部19aと幅狭の上側の水平な壁部19bとで成り、上側の壁部19bはプロテクタベース3の延長部18の上側の壁部18bの外側(上側)に重なっている。
【0035】
プロテクタカバー4の前側(図1で右側)から上側にかけての周壁4bと、プロテクタベース3の延長部18の上側の壁部18bとにスライドドアへの固定用の各ブラケット20が設けられ、プロテクタカバー4の基板部4aからプロテクタベース3の基板部3aを貫通してスライドドアへの固定用の孔部21が設けられている。
【0036】
プロテクタ2内には後半側において金属製の板ばね22が設けられ、ワイヤハーネス5が板ばね22で上向きに付勢されつつプロテクタ2の後部開口9から下部開口8を経てプロテクタ外のハーネス支持具10まで配索されている。ワイヤハーネス5は後部開口9において結束バンド等の固定手段で固定されている(後部開口9はハーネス固定部となっている)。
【0037】
図2,図3の如く、プロテクタベース3の延長部18の背面側の垂直な壁部18aの先端(後端)下部に、矩形状の突出壁23が一体に設けられ、突出壁23の下面は背面側の垂直な壁部18aの下面と同一水平面に位置し、突出壁23の正面23aは背面側の垂直な壁部18aの正面と同一垂直面に位置している。
【0038】
突出壁23の水平な上面23bに突起形状部11が上向きに立設されている。突起形状部11は上側の頭部13と、頭部13に一体に続く下側の支柱部12とで成り、支柱部12の背面側に傾斜部14(図3)が形成されている。図2の如く、突出壁23と延長壁部18との交差部分には背面側において補強用のリブ24が設けられ、リブ24は上半後部に傾斜面24aを有している。リブ24に枠形状部16が当たっても、傾斜面24aに沿って突起形状部11にスムーズに導かれる。
【0039】
突起形状部11の正面は突出壁23の正面23aと同一垂直面に位置し、突起形状部11の背面すなわち傾斜部14(図3)は突出壁23の上面23bに交差して続き、突起形状部11の背面すなわち傾斜部14の付根部14aと突出壁23の背面23c(図3)との間に突出壁23の上面23bが露出している。突起形状部11の上側の頭部13の後端13cは突出壁23の後端面23dとほぼ同一垂直面に位置し、突起形状部11の垂直な前端面11a(図2)は突出壁23の上面23bに直交して続き、突起形状部11の前端面23bの付根部と延長壁部18の後端面18c(図2)との間に突出壁23の上面23bが露出している。
【0040】
図2の如く、突起形状部11の頭部13の後端部分13cは上側の湾曲面13c1と下側の水平な下面(第二の下面)13dとを有し、後端部分の水平な下面13dは下側の支柱部12の垂直な後端面12aに直交して続き、支柱部12の後端面12aは突出壁23の上面23bに直交して続いている。頭部13の後端部分13cの下面13dと支柱部12の垂直な後端面12aと突出壁23の上面23bとで略コの字状の後端の溝部25を成し、図3の如く後端の溝部25にハーネス支持具10の枠形状部16の後端の壁部16dが係合可能となっている。
【0041】
図1の如く、ハーネス支持具10は、合成樹脂製の略矩形筒状のアウタクランプ27と、アウタクランプ27内に周方向回動自在に収容された略球状の不図示のインナクランプとで成り、アウタクランプ27の一側部(従来例の図4の垂れ下がり状態で前側に位置する端部であり、図1の実施形態では正面側の端部)に車両ボディへの固定用のブラケット28が設けられ、アウタクランプ27の他側部(従来例の図4の垂れ下がり状態で後側に位置する端部であり、図1の実施形態では背面側の端部)に図2の枠形状部16が設けられている。
【0042】
不図示のインナクランプは分割式に形成され、ワイヤハーネス5の外周の合成樹脂製のコルゲートチューブ(符号5で代用)の周方向の凹溝(図示せず)に係合するリブを内面側に有して、合体時にコルゲートチューブを把持固定する。図1のアウタクランプ27から後方に導出されたハーネス部分5dは、ハーネス支持具10を車両ボディ側に組み付けた際に車両ボディ側のワイヤハーネス(図示せず)とコネクタ接続される。
【0043】
図2の如く、ハーネス支持具10の略垂直な外側面27aから枠形状部16が一体に水平に突出形成されている。枠形状部16は横長矩形状に形成され、長辺側の左右(背面側と正面側)の壁部16a,16bと短辺側の前後の壁部16c,16dと、各壁部16a〜16dで囲まれた中央の横長(長円形)の孔部15とで構成されている。
【0044】
枠形状部16の付根部分16eはハーネス支持具10の外側面27aの上側の湾曲面27bに続き、上側の湾曲面27bの前側において枠形状部16の前側の壁部16cの付根部分にかけて湾曲状のリブ壁27cが立設され、上側の湾曲面27bの後側に形成された段差部27dが枠形状部16の後側の壁部16dの付根側に続いている。
【0045】
図3の如く、プロテクタ2側の突起形状部11の頭部13は背面側において幅広の(図2の後端側の下面13dに較べて幅広の)下面13bを有し、頭部13の背面側の下面13bが支柱部12の背面側の傾斜部14の上端14bに交差して幅広の段部を成している。支柱部12の背面側の傾斜部14は前後一対の傾斜状のリブで構成されている。各リブ14は板状に且つ平行に形成されて支柱部12の前後の垂直な壁部を成し、支柱部12は横断面略コの字状になっている。
【0046】
各リブ14の下端14aは突出壁23の上面23bに鈍角的に交差し、各リブ14の上端14bは頭部13の下面13bに鋭角的に交差している(交差角を符号θで示す)。本例における各リブすなわち傾斜部14の傾斜角度は、突出壁23の上面23bに対して垂直を0°とした場合に概ね15°程度と小さなものである(交差角θは概ね75°程度となる)。
【0047】
図1の如く作業者が(例えば右手で)略垂直に縦置きに起立させたプロテクタ2に対してハーネス支持具10を仮固定するには、図2の如く作業者がハーネス支持具10を手(例えば左手)で持って、ハーネス支持具10の枠形状部16の孔部15をプロテクタ2の突起形状部11に上方から下向きに貫通係合させ、その状態でハーネス支持具10から手を離すことで、図3の如くハーネス支持具10がプロテクタ2の突起形状部11の傾斜部14に沿って傾斜した(水平から下向きに概ね15°程度の角度で傾斜した)状態で、ハーネス支持具10の枠形状部16の突出先端側の壁部16aの上面(孔部15の上縁)16a1が突起形状部11の頭部13の背面側の下面(下側の段部)13bに当接して、ハーネス支持具10が脱落なく突起形状部11に安定して保持される。
【0048】
すなわち、突起形状部11の頭部13の背面側の下面13bに枠形状部16の突出先端側の壁部16aの上面(孔部15の上縁)16a1が当接して引っ掛かることで、突起形状部11からの枠形状部16の上向きの離脱が阻止される。
【0049】
さらに、突起形状部11の支柱部12の傾斜部14に枠形状部16の突出先端側の壁部16aの内面16a2が当接して、枠形状部16がハーネス支持具10と一体に傾斜部14の角度と同等の角度(概ね15°程度の角度)で斜め下向きに傾斜することで、突起形状部11の頭部13の下面13bと枠形状部16の突出先端側の壁部16aの上面16a1との間にハーネス支持具10の自重による大きな当接力(摩擦力)が作用し、その大きな当接力によって突起形状部11からの枠形状部16の離脱が確実に防止される。
【0050】
図3の如く、本例においては、枠形状部16が突起形状部11に係合した状態で、枠形状部16の孔部15の付根側の内面16b2の下端は突起形状部11の支柱部12の正面12bに当接しておらず、両面16b2,12bは少しの隙間を存して位置している。枠形状部16の突出先端側の壁部16aが突起形状部11の頭部13の下面13bと傾斜部14とに当接した状態(二点支持の状態)で、枠形状部16の孔部15の付根側の内面16b2の下端が突起形状部11の支柱部12の正面12bに当接して三点支持となってもよい。両面16b2,12bが少しの隙間を存して位置する場合は、支柱部12の正面12bを背面側の傾斜部14と同様に傾斜させることも可能である。
【0051】
また、ハーネス支持具10が突起形状部11を支点に上下に振れた場合でも、突起形状部11の頭部13の背面側の下面13bと後端側の下面13dとの二面で枠形状部16の背面側(突出先端側)の壁部16aと後端側の壁部16dとの上面を当接させるから、係止力と係止精度が高まって、突起形状部11からの枠形状部16の抜け出しが確実に防止される。
【0052】
図1の如くハーネス支持具10をプロテクタ2の延長部6に仮止めした状態で、プロテクタ2の各ブラケット20と孔部21が不図示の自動車のスライドドア(スライド構造体)の略垂直なインナパネルにねじ締めや係止クリップ等で固定される。次いで作業者がプロテクタ2の延長部6からハーネス支持具10を外して(仮止めを解除して)、不図示の車両ボディ(固定構造体)のステップ部の近傍にねじ締めで水平に固定する。
【0053】
図1においてハーネス支持具10はプロテクタ2に略水平に(正確には水平よりも少し下向きに傾斜して)仮止めされているので、略水平なハーネス支持具10を手に取ってそのまま水平に車両ボディに固定すればよく、ハーネス支持具10を上下方向に反転等させる必要がないので、車両ボディへのハーネス支持具10の取付作業性が高まる。
【0054】
車両ボディへのハーネス支持具10の配置は水平であるが、図4の従来例のハーネス支持具を正面視ではなく平面視として見たように、プロテクタ2に対して略垂直ないしそれに近い角度で交差するようにハーネス支持具10が図1の状態から仮想水平面上で略90°前方に反転して車両ボディに配置される。
【0055】
そして、スライドドア(本例では車両左側のスライドドア)を車両前方(図1で右側)にスライドさせて閉じると同時に、図1のプロテクタ2内のハーネス部分5aが縮径して板ばね22を下向きに撓ませつつ、プロテクタ2の下部開口8から延長部6に沿ってハーネス部分5bが後方に引っ張られてハーネス支持具10まで導出される。
【0056】
スライドドアを車両後方(図1で左側)にスライドさせて開くに伴って、スライドドアの半開状態でワイヤハーネス5がプロテクタ2の下部開口8から垂れ下がろうとするが、板ばね22の力で上向きに付勢されて弛みが吸収され、スライドドアの全開時に板ばね22がハーネス部分5aで下向きに押されて撓みつつ、プロテクタ2の下部開口8からハーネス部分5bが前方のハーネス支持具10にかけて引っ張られて導出される。
【0057】
なお、上記実施形態においては、プロテクタ2の延長部6に突出壁23と突起形状部11を形成したが、延長部23に代えて例えばプロテクタ2のプロテクタカバー4の垂直な基板部4aに突出壁(23)と突起形状部(11)を形成する(垂直な基板部4aに突出壁(23)を水平に設け、突出壁(23)の上面に突起形状部(11)を立設する)ことも、不図示のスライドドアのドアトリムと突出壁(23)や突起形状部(11)との干渉を生じない範囲で可能である。また、突出壁23を設けることなく、プロテクタ2の周壁4bの上部(頂部)外面に突起形状部11を直接立設することも可能である。
【0058】
但し、図1の如く、プロテクタ2の延長部6に突起形状部11を配設することが、プロテクタ本体部分(略半円状のハーネス収容部分)2からハーネス支持具6を前後方向に遠く離間させ、プロテクタ2の下部開口8から導出されたワイヤハーネス部分5bの略U字ないし円弧形状の垂れ下がりを抑止するために好適である。
【0059】
また、上記実施形態においては、プロテクタ2の後半に板ばね22を配設してプロテクタ2の後部開口9からワイヤハーネス5をスライドドア側に導出させたが、プロテクタ2の前半に板ばね(22)を図1とは前後対称に配設してプロテクタ2の不図示の前部開口からワイヤハーネス5をスライドドア側に導出させるものにおいても、上記給電装置のハーネス支持具の仮止め構造を適用可能である。
【0060】
また、上記実施形態においては、ハーネス支持具10をインナクランプとアウタクランプ27とで構成した例で説明したが、例えばアウタクランプ(27)のみで構成され、アウタクランプ内にワイヤハーネス5を固定ないし保持させる形態のハーネス支持具(10)においても、上記給電装置のハーネス支持具の仮止め構造を適用可能である。
【0061】
また、上記実施形態においては、自動車のスライドドアにプロテクタ2を取り付ける例で説明したが、例えば、自動車以外の車両のスライドドアにプロテクタ2を取り付けたり、車両以外の機械や装置等のスライドドアにプロテクタ2を取り付ける場合においても、上記給電装置のハーネス支持具の仮止め構造を適用可能である。これらの場合、スライドドアはスライド構造体と総称し、車両ボディや機械本体や装置本体は固定構造体と総称する。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る給電装置のハーネス支持具の仮止め構造は、給電用のプロテクタを車両のスライドドアに縦置きに組み付ける際に、プロテクタにハーネス支持具を脱落することなく確実に仮止めさせて、スライドドアへのプロテクタの組み付けを作業性良くスムーズに行うために利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 給電装置
2 プロテクタ
5 ワイヤハーネス
6 延長部
8 下部開口
10 ハーネス支持具
11 突起形状部
12 支柱部
13 頭部
13b 下面
13d 第二の下面
14 傾斜部
15 孔部
16 枠形状部
16a1 上縁
16a2 内面
θ 交差角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテクタと、該プロテクタから導出されたワイヤハーネスと、該ワイヤハーネスに組み付けられたハーネス支持具とを備えた給電装置において、
前記プロテクタが縦置きに配置された状態で、該プロテクタに、上向きの支柱部と、該支柱部の上端側で該支柱部よりも横方向に突出した頭部とで成る突起形状部が立設され、前記ハーネス支持具に、該突起形状部を挿通させる孔部を有して、該孔部の上縁を該頭部の下面に当接させる枠形状部が設けられ、該支柱部に、該枠形状部の内面を沿わせる傾斜部が、該頭部の下面と鋭角に交差して形成されていることを特徴とする給電装置のハーネス支持具仮止め構造。
【請求項2】
前記突起形状部の頭部に、前記下面に交差して続く第二の下面が設けられていることを特徴とする請求項1記載の給電装置のハーネス支持具仮止め構造。
【請求項3】
前記ハーネス支持具が横置きに配置された状態で、該ハーネス支持具に前記枠形状部が横向きに突出形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の給電装置のハーネス支持具仮止め構造。
【請求項4】
前記プロテクタのハーネス導出用の下部開口に沿って延長部が突出形成され、該延長部に前記突起形状部が立設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の給電装置のハーネス支持具仮止め構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−115943(P2013−115943A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260880(P2011−260880)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】