説明

給電装置

【課題】給電装置の損失を減少させる技術を提供する。
【解決方法】 給電装置10は、直列回路20と駆動回路60を備える。直列回路20は、逆導通半導体素子30a、30bが直列に接続されている。駆動回路60は、逆導通半導体素子30a、30bのIGBT素子領域42a、42bのオン状態とオフ状態とを切替える。駆動回路60は、逆導通半導体素子30aのIGBT素子領域42aをオフ状態に切替えることによって逆導通半導体素子30bのダイオード素子領域44bに還流電流が流れるときに、IGBT素子領域42bをオン状態とする第1モードと、IGBT素子領域42bをオフ状態とする第2モードを切替え可能に構成され、給電装置10の駆動状態に基づいて算出される駆動回路60の損失とダイオード素子領域44bの逆回復時の損失との和が小さくなるようにIGBT素子領域42bを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ等の電気的負荷に給電する給電装置に関する。特に、給電装置の損失を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、複数のスイッチング素子と、各々のスイッチング素子を制御する駆動回路を備える給電装置が開示されている。この給電装置では、駆動回路を用いて各々のスイッチング素子を制御することで、給電装置に接続された電気的負荷に電力を供給している。この給電装置において、スイッチング素子には、ダイオード内蔵型IGBTが用いられている。ダイオード内蔵型IGBTは、同一半導体基板にIGBT素子領域とダイオード素子領域が混在して形成されている。給電装置にダイオード内蔵型IGBTを用いることで、IGBT素子領域のオン/オフ状態を切替えて負荷に電力を供給することができるとともに、ダイオード素子領域に負荷からの還流電流を流すことができる。これによって、負荷がリアクタンス成分を有している場合に、負荷に貯められた電力が無駄に消費されてしまうことが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−72848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダイオード内蔵型IGBTでは、ダイオード素子領域のアノードとカソードの不純物濃度が高い場合、ダイオード素子領域の逆回復損失が増大する。例えば、ダイオード素子領域が高濃度のp型不純物を有するアノードと低濃度のn型不純物を有するカソードで構成されている場合、順方向電圧を印加した際に、カソードに多量のp型キャリアが蓄積される。ダイオード素子領域に逆電圧が印加されると、つまり、カソードが高電位側に接続され、アノードが低電位側に接続されると、ダイオード素子領域内のp型キャリアがアノード方向に流れることによって逆回復電流が流れる。アノードの不純物濃度が高いと、カソードに蓄積されるp型キャリアの量が増大し、大きな逆回復電流が流れる。大きな逆回復電流が流れれば、大量の熱が発生し、電力が消費される。アノード及びカソードの不純物濃度を低く設定すれば、逆回復電流を小さく抑えることができ、逆回復損失を減らすことができる。しかし、同一半導体基板にIGBT素子領域とダイオード素子領域が混在しているダイオード内蔵型IGBTでは、ダイオード素子領域のアノードとカソードが、IGBT素子領域を構成する半導体領域(例えば、ボディ領域とドリフト領域)と同一の層で構成されることが少なくない。そのため、ダイオード素子領域のアノードとカソードの不純物濃度がIGBT素子領域に求められる特性に基づいて決定されることが多く、その場合には、アノード及びカソードの不純物濃度を低く設定されず、逆回復電流を抑制することができない。
【0005】
逆回復損失を減少させるために、還流電流が流れているダイオード内蔵型IGBTのIGBT素子領域をオン状態に切替えることが考えられる。例えば、IGBT素子領域が、カソードと同一層で形成されたn型のドリフト領域と、アノードと同一層で形成されたp型のボディ領域と、ボディ領域によってドリフト領域から隔離されているn型のエミッタ領域で構成されている場合、IGBT素子領域をオン状態に切替えると、p型のボディ流域にn型の反転層が形成される。すると、n型のドリフト領域とn型のエミッタ領域がn型の反転層によって導通し、n型キャリアが流れるようになる。その結果、ドリフト領域からボディ領域に流れるn型キャリアの量を増大させることができる。これにより、ボディ領域からドリフト領域に流れるp型キャリアの量が減少し、ドリフト領域に蓄積されるp型キャリアの量を減少させることができる。これによって、逆回復電流を十分に小さく抑えることができ、逆回復損失を抑制することができる。
【0006】
一方において、還流電流が流れているダイオード内蔵型IGBTのIGBT素子領域をオン状態に切替えるためには、駆動回路によってIGBT素子領域をオン状態とする分だけ、駆動回路でドライブ損失が発生する。IGBT素子領域をオン状態に切替えることによる逆回復損失の減少量に比べて、IGBT素子領域をオン状態に切替えることによるドライブ損失の増加量が大きい場合、ダイオード内蔵型IGBTの逆回復損失を抑制することができるものの、ダイオード内蔵型IGBTと駆動回路を含めた給電装置全体の損失が増大してしまう。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて創作された。本発明は、同一半導体基板にIGBT素子領域とダイオード素子領域が混在しているダイオード内蔵型IGBTと駆動回路を用いた給電装置において、給電装置の損失を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
還流電流が流れているダイオード内蔵型IGBTのIGBT素子領域をオン状態に切替えることによる逆回復損失の減少量(低減量)は、給電装置の駆動状態によって変化する。例えば、給電装置の出力電圧と出力電流が小さく、そのスイッチング周波数が低いと、IGBT素子領域をオン状態に切替えることによる逆回復損失の減少量は小さい。一方、給電装置の出力電圧と出力電流が大きく、そのスイッチング周波数が高いと、IGBT素子領域をオン状態に切替えることによる逆回復損失の減少量は大きくなる。また、IGBT素子領域をオン状態に切替えることによるドライブ損失は、給電装置のスイッチング周波数が低いと小さく、スイッチング周波数が高いと大きくなる。このため、本願明細書が開示する給電装置は、給電装置の駆動状態に応じて、還流電流が流れているダイオード内蔵型IGBTのIGBT素子領域をオン状態とするかオフ状態とするかを切替える。
【0009】
すなわち、本明細書が開示する給電装置は、電気的負荷に給電する給電装置であり、直列回路と駆動回路を備えている。直列回路は、同一半導体基板にIGBT素子領域とダイオード素子領域が混在しているダイオード内蔵型IGBTの2つが直列に接続されている。駆動回路は、各ダイオード内蔵型IGBTのIGBT素子領域のオン状態とオフ状態とを切替える。
【0010】
直列回路の各IGBT素子領域は、エミッタ領域とボディ領域とドリフト領域とコレクタ領域が積層されており、エミッタ領域とドリフト領域を分離しているボディ領域に絶縁膜を介して対向しているゲート電極が形成されている。また、直列回路の各ダイオード素子領域は、ボディコンタクト領域とボディ領域とドリフト領域とドリフトコンタクト領域が積層されている。ボディコンタクト領域は、アノード領域またはカソード領域の一方であり、ドリフトコンタクト領域はそれらの他方である。ボディコンタクト領域がアノード領域であれば、ドリフトコンタクト領域はカソード領域であり、ボディコンタクト領域がカソード領域であれば、ドリフトコンタクト領域はアノード領域である。
IGBT素子領域のボディ領域とダイオード素子領域のボディ領域は共通であることが好ましい。同様に、IGBT素子領域のドリフト領域とダイオード素子領域のドリフト領域は共通であることが好ましい。この場合、エミッタ領域とボディコンタクト領域は反対の導電型となり、コレクタ領域とドリフトコンタクト領域も反対の導電型となる。
【0011】
駆動回路は、一方のIGBT素子領域をオフ状態に切替えることによって他方のダイオード素子領域に還流電流が流れるときに、(1)他方のIGBT素子領域をオン状態とする第1モードと、(2)他方のIGBT素子領域をオフ状態とする第2モードに切替え可能となっている。
【0012】
駆動回路は、一方のIGBT素子領域をオフ状態に切替えることによって他方のダイオード素子領域に還流電流が流れるときに、いずれのモードで制御するかを以下のように決定することを特徴とする。すなわち、
(a)給電装置の駆動状態に基づいて算出される、第1モードで制御したときの駆動回路の損失と第1モードで制御した後に行われるダイオード素子領域の逆回復時の損失との和が、第2モードで制御したときの駆動回路の損失と第2モードで制御した後に行われるダイオード素子領域の逆回復時の損失との和より小さいときは、第1モードで制御する。
(b)給電装置の駆動状態に基づいて算出される、第2モードで制御したときの駆動回路の損失と第2モードで制御した後に行われるダイオード素子領域の逆回復時の損失との和が、第1モードで制御したときの駆動回路の損失と第1モードで制御した後に行われるダイオード素子領域の逆回復時の損失との和より小さいときは、第2モードで制御する。
【0013】
この給電装置では、駆動回路が、一方のIGBT素子領域をオフ状態に切替えることによって他方のダイオード素子領域に還流電流が流れるときに、駆動状態に基づいて算出される駆動回路の損失とダイオード素子領域の逆回復時の損失の和が小さくなるモードで他方のIGBT素子領域を制御する。これによって、給電装置で発生する損失を抑制することができる。
【0014】
この給電装置では、駆動回路が第1モードで制御する場合は、一方のIGBT素子領域を再びオン状態に切替えるに先立つ第1タイミングと第2タイミングで他方のIGBT素子領域をオフ状態と切替える。ここで、第1タイミングは、他方のIGBT素子領域をオフ状態に切替えてから一方のIGBT素子領域をオン状態とするまでの時間が第1設定時間となるタイミングである。第2タイミングは、他方のIGBT素子領域をオフ状態に切替えてから一方のIGBT素子領域をオン状態とするまでの時間が第1設定時間よりも短い第2設定時間となるタイミングである。
この駆動回路は、一方のIGBT素子領域を再びオン状態に切替えるに先立って他方のIGBT素子領域をオフ状態切替えるときに、いずれのタイミングで切替えるかを以下のように決定することが好ましい。すなわち、
(c)駆動状態から一方のIGBT素子領域と他方のIGBT素子領域が共にオン状態となるとダイオード内蔵型IGBTが破壊されると判断されるときは、第1タイミングで他方のIGBT素子領域をオフ状態に切替える。
(d)駆動状態から一方のIGBT素子領域と他方のIGBT素子領域が共にオン状態となってもダイオード内蔵型IGBTが破壊されないと判断されるときは、第2タイミングで他方のIGBT素子領域をオフ状態に切替える。
【0015】
この給電装置では、駆動回路が、一方のIGBT素子領域を再びオン状態に切替えるに先立って他方のIGBT素子領域をオフ状態に切替える。逆回復時の損失を低減するためには、一方のIGBT素子領域を再びオン状態に切替える直前まで他方のIGBT素子領域をオン状態とすることが好ましい。その一方、他方のIGBT素子領域をオフ状態に切替えてから一方のIGBT素子領域を再びオン状態に切替えるまでの時間が短すぎると、一方のIGBT素子領域と他方のIGBT素子領域が短絡する可能性が生じる。一方のIGBT素子領域と他方のIGBT素子領域が短絡すると、給電装置の駆動状態によってはダイオード内蔵型IGBTが破壊されてしまう。そこで、この給電装置では、他方のIGBT素子領域をオフ状態に切替える際に、給電装置の駆動状態から一方のIGBT素子領域と他方のIGBT素子領域が共にオン状態となるとダイオード内蔵型IGBTが破壊されるか否かを判断する。ダイオード内蔵型IGBTが破壊されないと判断される場合には、他方のIGBT素子領域を第2タイミングでオフ状態とする(即ち、他方のIGBT素子領域をオフ状態に切替えてから一方のIGBT素子領域をオン状態とするまでの時間を短くする)。これによって、ダイオード内蔵型IGBTが破壊されてしまうことを未然に防止しながら、ダイオード素子領域の逆回復時の損失をより小さくすることができ、給電装置で発生する損失を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、同一半導体基板にIGBT素子領域とダイオード素子領域が混在しているダイオード内蔵型IGBTと駆動回路を用いた給電装置において、給電装置の損失を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】給電装置10を示す。
【図2】逆導通半導体素子30を示す。
【図3】IGBT素子領域42がオン状態の逆導通半導体素子30を示す。
【図4】ダイオード素子領域44に還流電流が流れている逆導通半導体素子30を示す。
【図5】逆回復損失を説明する図である。
【図6】逆回復損失を説明する図である。
【図7】第1モードを選択した場合のタイムチャートを示す。
【図8】第2モードを選択した場合のタイムチャートを示す。
【図9】第1モードを選択した場合のタイムチャートを示す。
【図10】第1モードで制御することによる損失低減量L1と駆動回路60のドライブ損失L2の関係を説明する図である。
【図11】第1モードで制御することによる損失低減量L1のマップを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に説明する実施例の主要な特徴を最初に整理する。
(特徴1)給電装置は、電力変換回路である。
(特徴2)駆動回路には、一方のIGBT素子領域をオフ状態に切替えることによって他方のダイオード素子領域に還流電流が流れるときに制御するモードが、給電装置の駆動状態に関連付けられて記憶されている。
(特徴3)駆動回路には、第1モードで制御する場合、一方のIGBT素子領域を再びオン状態に切替えるに先立って他方のIGBT素子領域をオフ状態に切替えるタイミングが、給電装置の駆動状態に関連付けられて記憶されている。
【実施例1】
【0019】
本実施例の給電装置10を図1に示す。給電装置10は、入力端子12に入力された外部電源の電圧を、出力端子14に接続されたモータ等の電気的負荷に必要とされる電圧に変換し、出力端子14から電気的負荷に給電する電力変換回路である。給電装置10は、主たる構成として直列回路20と駆動回路60を備えている。
直列回路20は、逆導通半導体素子(ダイオード内蔵型IGBTの一例)30a、30bが直列に接続されて構成されている。逆導通半導体素子30aのコレクタ電極34aは、出力端子14aに接続されている。逆導通半導体素子30bのエミッタ電極32bは、入力端子12bと出力端子14bに接続されている。逆導通半導体素子30aのエミッタ電極32aと逆導通半導体素子30bのコレクタ電極34bは、中間電位点22に接続されている。逆導通半導体素子30a、30bのトレンチゲート電極36a、36bは、駆動回路60に接続されている。駆動回路60は、各々の逆導通半導体素子30のトレンチゲート電極36の電圧を独立に制御する。
直列回路20の中間電位点22は、コイル16の一端に接続されている。コイル16の他端は、入力端子12aに接続されている。コイル16はインダクタンス成分を持っている電気的負荷である。入力端子12の間には、入力用コンデンサ18が設けられている。出力端子14間には、出力用コンデンサ19が取り付けられている。
【0020】
逆導通半導体素子30は、同一の半導体基板内に絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor(以下ではIGBTという))素子領域42と、ダイオード素子領域44が形成されている。図2は、IGBT素子領域42とダイオード素子領域44の境界近傍の断面図を示している。
逆導通半導体素子30は、1枚のn型不純物を低濃度に含む半導体基板から形成されている。半導体基板が未加工状態で残っている部分によって、ドリフト領域48が形成されている。ドリフト領域48の表面側に、p型不純物を含むボディ領域46が積層されている。ドリフト領域48とボディ領域46は、IGBT素子領域42とダイオード素子領域44に関係なく、一様に伸びている。ボディ領域46のIGBT素子領域42とダイオード素子領域44の境界部分には、ボディ領域46を貫通してドリフト領域48に達するp型不純物領域43が形成されている。
【0021】
IGBT素子領域42内では、ボディ領域46の表面に臨む位置に、n型不純物を高濃度に含んでいるエミッタ領域40が形成されている。エミッタ領域40は、ボディ領域46によって、ドリフト領域48から隔てられている。IGBT素子領域42では、エミッタ領域40の表面からエミッタ領域40とボディ領域46を貫通してドリフト領域48に達するトレンチ47が形成されている。トレンチ47の壁面及び底面は、ゲート絶縁膜38bで被覆されており、トレンチ47のゲート絶縁膜38bの内側にトレンチゲート電極36が充填されている。トレンチゲート電極36の表面には、ゲート絶縁膜38aが形成されている。
ダイオード素子領域44内では、ボディ領域46の表面に臨む範囲に、p型不純物を高濃度に含んでいるボディコンタクト領域45が形成されている。各々のボディコンタクト領域45は、ボディ領域46によって、ドリフト領域48から隔てられている。
【0022】
逆導通半導体素子30の表面には、エミッタ電極32が形成されている。エミッタ電極32は、IGBT素子領域42では、エミッタ領域40に導通し、ダイオード素子領域44では、ボディコンタクト領域45に導通している。トレンチゲート電極36は図示しない断面で、逆導通半導体素子30の表面に露出し、駆動回路60に接続されている。
IGBT素子領域42では、ドリフト領域48の裏面側に、p型不純物を含むコレクタ領域54が形成されている。ダイオード素子領域44では、ドリフト領域48の裏面側に、n型不純物を含むドリフトコンタクト領域50が形成されている。逆導通半導体素子30の裏面には、コレクタ電極34が形成されている。コレクタ電極34は、コレクタ領域54とドリフトコンタクト領域50とに導通している。
【0023】
コレクタ領域54が形成されている領域42では、逆導通半導体素子30がIGBTとして作動する。IGBTとして作動する領域42では、n型のエミッタ領域40とp型のボディ領域46とn型のドリフト領域48とp型のコレクタ領域54が積層されている。IGBTとして作動する領域42では、エミッタ領域40とドリフト領域48を分離しているボディ領域46を貫通して伸びるトレンチゲート電極36が形成されている。
図3に示すように、コレクタ電極34にエミッタ電極32よりも高い正電圧を印加した状態で、トレンチゲート電極36に正電圧を印加すると、トレンチゲート電極36の周辺のボディ領域46にn型の反転層52が形成され、エミッタ領域40から反転層52を経てドリフト領域48に電子が注入される。すると、コレクタ領域54からドリフト領域48に正孔が注入される。ドリフト領域48に電子と正孔が注入され、伝導度変調現象が活発化する。これによって、エミッタ電極32とコレクタ電極34の間が導通し、電流が流れる。これをオン状態という。IGBTは、伝導度変調現象を利用するので、オン電圧が低い。
トレンチゲート電極36に正電圧を印加するのが中断されると、反転層52が消滅し、エミッタ領域40からドリフト領域48に電子が注入されなくなる。これをオフ状態という。IGBT素子領域42では、トレンチゲート電極36に正電圧を印加する間はオン状態に制御され、トレンチゲート電極36に正電圧を印加するのを中断するとオフ状態に制御される。
【0024】
複数個のIGBT素子を利用して給電装置を構成した場合、一つのIGBT素子をオフ状態に切替えた際に、電気的負荷の誘導成分によって、IGBT素子に大電圧が印加されて素子が損傷することがある。また、電気的負荷の誘導成分を用いて、給電電圧を昇圧したい場合がある。そこで、IGBT素子と逆並列にダイオードを接続することによって、IGBT素子をオフ状態に切替えた際に電気的負荷の誘導成分によって流れ続ける電流をダイオードに流す逆導通半導体素子が普及している。以下ではこれを還流ダイオードといい、そのダイオードに流れる電流を還流電流という。
【0025】
逆導通半導体素子30のダイオード素子領域44は、還流ダイオードとして作動する。すなわち、ドリフトコンタクト領域50が形成されている領域44では、逆導通半導体素子30が還流ダイオードとして作動する。
還流ダイオードとして作動する領域44では、p型のボディコンタクト領域45とp型のボディ領域46とn型のドリフト領域48とn型のドリフトコンタクト領域50が積層されている。p型のボディコンタクト領域45とp型のボディ領域46がアノードとして作動し、n型のドリフト領域48とn型のドリフトコンタクト領域50がカソードとして作動するダイオードが形成される。p型のアノードとn型のカソードの間に、不純物濃度が低い領域が形成されているPIN型のダイオードが形成されている。
図4に示すように、逆導通半導体素子30では、エミッタ電極32にコレクタ電極34の電位よりも高い正電圧が印加されると、還流電流が流れる。
【0026】
次に、給電装置10の動作を説明する。給電装置10では、駆動回路60が給電を開始すると、逆導通半導体素子30aをオフ状態とし、逆導通半導体素子30bをオン状態とする第1状態に切替える。これによって、外部電源から入力端子12を介してコイル16及び逆導通半導体素子30bのIGBT素子領域42bを通して電流が流れると共に、外部電源から入力用コンデンサ18に電荷が蓄えられる。
次に、駆動回路60は逆導通半導体素子30bをオフ状態とする第2状態に切替える。これによって、外部電源から入力端子12とコイル16と逆導通半導体素子30aのダイオード素子領域44aを介して出力用コンデンサ19に電荷が蓄えられる。また、インダクタ成分を有するコイル16に起電力が生じ、コイル16の起電力によって出力用コンデンサ19に電荷が蓄えられる。コイル16に生じる起電力は、外部電源と向きが等しい。そのため、出力用コンデンサ19には、入力用コンデンサ18に比べて多くの電荷が蓄えられる。出力端子14に出力される電圧は、出力用コンデンサ19に蓄えられた電荷に基づいて決定される。そのため、出力端子14には、入力端子12に接続された外部電源よりも昇圧された電圧が出力される。
【0027】
給電装置10では、第1状態から第2状態に切替わると、逆導通半導体素子30bがオフ状態に切替わるとともに、逆導通半導体素子30aのダイオード素子領域44aに還流電流が流れる。図2に示すように、同一半導体基板にIGBT素子領域42とダイオード素子領域44が混在して形成されている逆導通半導体素子30では、IGBT素子領域42の特性上、n型のドリフト領域48の不純物濃度よりもp型のボディ領域46の不純物濃度が高く設定される。そのため、図4に示すように、ダイオード素子領域44aに還流電流が流れると、不純物濃度が高いボディ領域46から不純物濃度が低いドリフト領域48へ多量の正孔が流れ込む。また、IGBT素子領域42aにおいても、不純物濃度が高いボディ領域46から不純物濃度が低いドリフト領域48へ多量の正孔が流れ込む。これにより、ドリフト領域48への正孔の注入量が増大する。
そして、駆動回路60が給電装置10を再び第1状態に切替えると、図5に示すように、還流電流が流れていた逆導通半導体素子30aのダイオード素子領域44aにおいて、ドリフト領域48に注入された正孔がボディ領域46に戻り、逆回復電流が流れる。大きな逆回復電流が流れると、逆回復損失が増大する。逆回復損失の大きさは、ドリフト領域48への正孔の注入効率に依存する。駆動回路60が給電装置10を第1状態と第2状態に単純に切替えるだけでは、逆導通半導体素子30aのドリフト領域48へ多量の正孔が注入され、逆回復損失が大きくなる。
【0028】
そこで、本実施例の駆動回路60は、逆導通半導体素子30aのダイオード素子領域44aに逆回復電流が流れる際に、逆導通半導体素子30aのIGBT素子領域42aをオン状態に切替える第1モードと、逆導通半導体素子30aのIGBT素子領域42aをオフ状態のままとする第2モードが設けられる。駆動回路60は、給電装置10の駆動状態に基づいて、第1モードで制御したときの給電装置10の損失量と、第2モードで制御したときの給電装置10の損失量を推定し、損失量が少なくなる方を選択する。すなわち、第1モードを選択した場合、逆導通半導体素子30aの逆回復時の損失量は低減できるものの、IGBT素子領域42aをオン状態とするための損失(駆動回路60のドライブ損失)が発生する。一方、第2モードを選択した場合、逆導通半導体素子30aの逆回復時の損失量は低減できないが、IGBT素子領域42aをオン状態とするための損失(駆動回路60のドライブ損失)は発生しない。したがって、給電装置10の損失が最も小さくなるように、第1モードか第2モードかを選択する。
【0029】
駆動回路60による第1モードか第2モードかの選択は、給電装置10の駆動状態に基づいて決定される。すなわち、図10に示すように、第1モードで制御することによる損失低減量L1は、給電装置10の出力電圧及び出力電流が大きくなるほど大きくなる。また、駆動回路60のドライブ損失L2(これは、第2モードで制御することによる損失低減量に等しい。)は、給電装置10の出力電圧及び出力電流に関係なく、給電装置10のスイッチング周波数が高いほど大きくなる。すなわち、第1モードで制御することによる損失低減量と、駆動回路60のドライブ損失L2は、給電装置10の駆動状態に基づいて算出(予測)することができる。従って、駆動回路60は、給電装置10の駆動状態(出力電圧,出力電流,スイッチング周波数)をモニタリングし、モニタリングした給電装置10の駆動状態に基づいて第1モードか第2モードかを選択することができる。
【0030】
例えば、図11(a),(b)に示すように、出力電圧と出力電流の組合せ毎に、第1モードで制御することによる損失低減量L1を記憶するマップを作成する。このマップは、給電装置10のスイッチング周波数(駆動周波数)毎に作成され、駆動回路60に記憶される。駆動回路60は、第1状態から第2状態に切替わる際に、モニタリングした給電装置10の駆動状態から、図11(a),(b)に示すマップを利用して、第1モードとすることによる損失低減量L1を特定する。(図11(a)参照)次いで、給電装置10のスイッチング周波数から、駆動回路60のドライブ損失L2を算出する。そして、第1モードとすることによる損失低減量L1が駆動回路60のドライブ損失L2(つまり、第2モードで制御することによる損失低減量)より大きい場合は、駆動回路60は第1モードで給電装置10を制御する。逆に、第1モードとすることによる損失低減量が駆動回路60のドライブ損失より小さい場合は、駆動回路60は第2モードで給電装置10を制御する。
【0031】
ここで、逆導通半導体素子30aを第1モードと第2モードで制御したときの、逆導通半導体素子30aの動作について説明する。図7に第1モードを選択した場合のタイムチャートを示す。以下に図7のタイムチャートについて説明する。
Vaは、逆導通半導体素子30aのトレンチゲートに印加する電圧を示す。Vbは、逆導通半導体素子30bのトレンチゲートに印加する電圧を示す。Iaは、逆導通半導体素子30aのダイオード素子領域44aに流れる電流を示す。「ON」は、各々の逆導通半導体素子30のIGBT素子領域42がオンする閾値電圧以上に設定されている電圧を示す。「ON」電圧が印加されている場合に、各々のIGBT素子領域42がオン状態となる。「OFF」は、各々の逆導通半導体素子30のIGBT素子領域42がオフする閾値電圧以下に設定されている電圧を示す。「OFF」電圧が印加されている場合に各々のIGBT素子領域42がオフ状態となる。T1は、第1状態に切替えられている第1期間を示す。T2は、第2状態に切替えられている第2期間を示す。t1は、第1状態から第2状態に切替わるタイミングを示す。タイミングt1において、逆導通半導体素子30bのIGBT素子領域42bは、オン状態からオフ状態に切替わる。t2は、逆導通半導体素子30aのIGBT素子領域42aをオフ状態からオン状態に切替えるタイミングを示す。t3は、逆導通半導体素子30aのIGBT素子領域42aをオン状態からオフ状態に切替えるタイミングを示す。t4は、第2状態から第1状態に切替わるタイミングを示す。タイミングt4において、逆導通半導体素子30bのIGBT素子領域42bは、オフ状態からオン状態に切替わる。タイミングt1とタイミングt2の間には、遅延時間T3が設けられている。遅延時間T3は、第1状態から第2状態への切替え時に、逆導通半導体素子30a、30bのIGBT素子領域42a、42bが同時にオン状態となることを確実に避けることができるように設定されている。タイミングt3とタイミングt4の間には、設定時間T4が設けられている。設定時間T4は、第2状態から第1状態への切替え時に、逆導通半導体素子30a、30bのIGBT素子領域42a、42bが同時にオン状態となることを確実に避けるように設定されている。図示番号Aに示す逆導通半導体素子30aのダイオード素子領域44aに流れるマイナスの電流は、逆回復電流を示している。
【0032】
駆動回路60は、第2状態において直列回路20を第1モードで制御することで、逆回復損失を抑制することができる。つまり、ダイオード素子領域44aに逆回復電流が流れている逆導通半導体素子30aのIGBT素子領域42aをオン状態に切替えると、図6に示すように、トレンチゲート電極36の周辺のボディ領域46にn型の反転層52が形成される。そのため、電子がn型の反転層52を通ってコレクタ電極34からエミッタ電極32へ流れることができる。これによって、ボディ領域46への電子の注入効率が増大し、ドリフト領域48への正孔の注入効率が低下する。正孔の注入効率を適値に調整することができ、逆回復電流Aが抑制される。これによって、逆回復損失が抑制される。
【0033】
一方、駆動回路60が第2モードを選択すると、図8に示すように、ダイオード素子領域44aに還流電流が流れる際に、逆導通半導体素子30aのIGBT素子領域42aをオフ状態のままとする。給電装置10では、第2モードとすることで、第1モードに比べて逆回復電流Aが大きくなり、逆回復損失が増大する。ただし、第2モードとすることで、第2期間に逆導通半導体素子30aをオン状態に切替える必要がなく、駆動回路60のドライブ損失は減少する。
【0034】
本実施例の給電装置10では、駆動回路60が給電装置10の駆動状態に基づいて、給電装置10の損失が小さくなるように、第2状態を制御するモードを決定する。これにより、給電装置10では、駆動状態に基づいて適切な制御が行われ、第2状態における給電装置10の損失を抑制することができる。
【実施例2】
【0035】
第1実施例の給電装置10では、第2状態において第1モードで制御した後に再び第1状態に切替えている。この際、直列回路20の逆導通半導体素子30a、30bが共にオン状態とならないように、逆導通半導体素子30aのIGBT素子領域42aをオン状態からオフ状態に切替えるタイミングt3と、給電装置10を第2状態から第1状態に切替わるタイミングt4との間隔を、十分に長い時間T4を設定していた。
【0036】
しかし、逆回復損失を小さく抑えるためには、図9に示すように、設定時間T4’を短縮し、逆導通半導体素子30bのIGBT素子領域42bを再びオン状態に切替える直前まで、逆導通半導体素子30aのIGBT素子領域42aをオン状態としておくことが望まれる。また、給電装置10の駆動状態によっては、逆導通半導体素子30a、30bのIGBT素子領域42a、42bが同時にオン状態となっても、逆導通半導体素子30a、30bが破壊されない場合がある。例えば、IGBT素子領域42a、42bの素子短絡耐量が10Jであり、出力用コンデンサ19の容量が500μFであるとする。この場合、出力端子14に求められる電圧が200V以下である場合には、逆導通半導体素子30a、30bが短絡したとしても、これらの逆導通半導体素子30a,30bは破壊されない。このような場合には、図9に示すように、図7に示す設定時間T4よりも設定時間T4’を短縮しておくことが好ましい。
【0037】
本実施例の駆動回路60は、第2状態において第1モードで制御する場合には、IGBT素子領域42bを再びオン状態に切替えるに先立つ第1タイミングt3(図7参照)と第2タイミングt3’(図9参照)のいずれかでIGBT素子領域42aをオフ状態に切替える。図7に示すように、第1タイミングt3でIGBT素子領域42aをオフ状態に切替えると、設定時間がT4となる。(以下、これを第1設定時間T4と呼ぶことがある。)図9に示すように、第2タイミングt3’でIGBT素子領域42aをオフ状態に切替えると、設定時間がT4’となる。(以下、これを第2設定時間T4’と呼ぶことがある。)第1設定時間T4は、逆導通半導体素子30a、30bのIGBT素子領域42a、42bが同時にオン状態とならない十分に長い時間に設定されている。第2設定時間T4’は、第1設定時間T4より短く、逆導通半導体素子30a、30bのIGBT素子領域42a、42bが同時にオン状態とならない限界の時間に設定されている。
【0038】
第2設定時間T4’は、第1設定時間T4より短く設定されている。そのため、図9に示すように、第2タイミングt3’でIGBT素子領域42aをオフ状態に切替えることで、逆回復電流Aが抑制され、逆回復損失が抑制される。その一方、第2タイミングt3’でIGBT素子領域42aをオフ状態に切替えた場合、給電装置10の駆動状態、あるいは給電装置10を構成する電子部品の特性のばらつきによっては、逆導通半導体素子30a、30bが短絡してしまうことがある。
【0039】
本実施例の給電装置10では、駆動回路60が給電装置10の駆動状態に基づいて、逆導通半導体素子30a、30bのIGBT素子領域42a、42bが共にオン状態となったとすると、逆導通半導体素子30a、30bが破壊されてしまうのか否かを判断する。駆動回路60は、逆導通半導体素子30a、30bが破壊されると判断されるときは、第1タイミングt3でIGBT素子領域42aをオフ状態に切替える。また、逆導通半導体素子30a、30bが破壊されないと判断されるときは、第2タイミングt3’でIGBT素子領域42aをオフ状態に切替える。これにより、逆導通半導体素子30a、30bの破壊を防止しつつ、直列回路20に発生する逆回復損失を効果的に低減することができる。
【0040】
なお、上述した第1タイミングt3でオフ状態とするか、第2タイミングt3’でオフ状態とするかの決定は、種々の方法によって行うことができる。例えば、電流検出機能を有する逆導通半導体素子が用いられ、逆導通半導体素子に過電流が流れたときに逆導通素子を保護する構成が採られている場合には、給電装置の駆動状態(出力電圧,出力電流等)と逆導通半導体素子の状態(電流量)から、第1タイミングt3か第2タイミングt3’かを選択するようにしてもよい。すなわち、給電装置の駆動状態と逆導通半導体素子の状態から、過電流保護機能で逆導通半導体素子を保護可能であると判断される場合には、第2タイミングt3’でIGBT素子領域42aをオフ状態に切替える。一方、過電流保護機能で逆導通半導体素子を保護できないと判断される場合には、第1タイミングt3でIGBT素子領域42aをオフ状態に切替える。例えば、過電流保護機能の応答性が5μsであり、素子電流が1000Aで、駆動電圧が200Vの場合、逆導通半導体素子に印加されるエネルギーは1Jとなる。このため、逆導通半導体素子の短絡耐量が1J以上であれば、逆導通半導体素子を保護できると判断し、第2タイミングt3’でIGBT素子領域42aをオフ状態に切替える。
【0041】
なお、逆導通半導体素子の短絡耐量は逆導通半導体素子の温度によっても変化する。すなわち、逆導通半導体素子の温度が上昇すると、逆導通半導体素子の短絡耐量が低下する。したがって、温度検出機能を有する逆導通半導体素子を用いる場合には、逆半導体素子の温度に応じて短絡耐量を変化させ、その変化させた短絡耐量に基づいて逆導通半導体素子を保護可能か否かを判断することができる。
【0042】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、IGBT素子領域42に形成されるIGBT素子はトレンチゲート型に限られるものでなく、プレーナ型のIGBT素子が形成されても良い。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0043】
10 給電装置
12 入力端子
14 出力端子
16 モータコイル
18 入力用コンデンサ
19 出力用コンデンサ
20 直列回路
22 中間電位点
30 逆導通半導体素子
32 エミッタ電極
34 コレクタ電極
36 トレンチゲート電極
38a、38b ゲート絶縁膜
40 エミッタ領域
42 IGBT素子領域
43 p型不純物領域
44 ダイオード素子領域
45 ボディコンタクト領域
46 ボディ領域
47 トレンチ
48 ドリフト領域
50 ドリフトコンタクト領域
52 反転層
54 コレクタ領域
60 駆動回路
t3 第1タイミング
t3’ 第2タイミング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的負荷に給電する給電装置であり、
同一半導体基板にIGBT素子領域とダイオード素子領域が混在しているダイオード内蔵型IGBTの2つが直列に接続された直列回路と、
各ダイオード内蔵型IGBTのIGBT素子領域のオン状態とオフ状態とを切替える駆動回路を備えており、
各IGBT素子領域は、エミッタ領域とボディ領域とドリフト領域とコレクタ領域が積層されており、エミッタ領域とドリフト領域を分離しているボディ領域に絶縁膜を介して対向しているゲート電極が形成されており、
各ダイオード素子領域は、ボディコンタクト領域とボディ領域とドリフト領域とドリフトコンタクト領域が積層されており、
駆動回路は、一方のIGBT素子領域をオフ状態に切替えることによって他方のダイオード素子領域に還流電流が流れるときに、(1)他方のIGBT素子領域をオン状態とする第1モードと、(2)他方のIGBT素子領域をオフ状態とする第2モードとに切替え可能となっており、
駆動回路は、
(a)給電装置の駆動状態に基づいて算出される、第1モードで制御したときの駆動回路の損失と第1モードで制御した後に行われるダイオード素子領域の逆回復時の損失との和が、第2モードで制御したときの駆動回路の損失と第2モードで制御した後に行われるダイオード素子領域の逆回復時の損失との和より小さいときは、第1モードで制御し、
(b)前記駆動状態に基づいて算出される、第2モードで制御したときの駆動回路の損失と第2モードで制御した後に行われるダイオード素子領域の逆回復時の損失との和が、第1モードで制御したときの駆動回路の損失と第1モードで制御した後に行われるダイオード素子領域の逆回復時の損失との和より小さいときは、第2モードで制御することを特徴とする給電装置。
【請求項2】
駆動回路は、第1モードで制御する場合は、一方のIGBT素子領域を再びオン状態に切替えるに先立つ第1タイミングと第2タイミングで他方のIGBT素子領域をオフ状態に切替えており、
第1タイミングは、他方のIGBT素子領域をオフ状態に切替えてから一方のIGBT素子領域をオン状態とするまでの時間が第1設定時間となるタイミングであり、
第2タイミングは、他方のIGBT素子領域をオフ状態に切替えてから一方のIGBT素子領域をオン状態とするまでの時間が第1設定時間よりも短い第2設定時間となるタイミングであり、
駆動回路は、
(c)前記駆動状態から一方のIGBT素子領域と他方のIGBT素子領域が共にオン状態となるとダイオード内蔵型IGBTが破壊されると判断されるときは、第1タイミングで他方のIGBT素子領域をオフ状態に切替え、
(d)前記駆動状態から一方のIGBT素子領域と他方のIGBT素子領域が共にオン状態となってもダイオード内蔵型IGBTが破壊されないと判断されるときは、第2タイミングで他方のIGBT素子領域をオフ状態に切替えることを特徴とする請求項1に記載の給電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−96852(P2011−96852A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249342(P2009−249342)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】