説明

統合ガス化複合サイクル発電システム用の水性ガス転化反応器システム

【課題】本出願は従って、統合ガス化複合サイクルシステム(390)を提供する。
【解決手段】本統合ガス化複合サイクルシステム(390)は、水性ガス転化反応器システム(400)と、熱回収蒸気発生器(160)とを含むことができる。水性ガス転化反応器システム(400)は、合成ガス(315)の流れを加熱する再循環熱交換器(430)を備えた再循環システム(445)を含むことができる。熱回収蒸気発生器(160)は、再循環熱交換器(430)と熱導通した分岐水流(450)を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、総括的には統合ガス化複合サイクル(「IGCC」)発電システムに関し、より具体的には、それと共に使用する改良型の水性ガス転化反応器システムを備えたIGCC発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
公知のIGCC発電システムは、少なくとも1つの動力発生タービンシステムと統合されたガス化システムを含むことができる。例えば、公知のガス化装置は、燃料、空気又は酸素、蒸気及びその他の添加剤の混合物を一般的に「合成ガス(シンガス)」と呼ばれる部分的に燃焼したガス生成物に変換することができる。これらの高温燃焼ガスは、ガスタービンエンジンの燃焼器に供給される。ガスタービンエンジンは次に、電力の生成のための発電機に動力供給し或いは別のタイプの負荷を駆動する。ガスタービンエンジンからの排気は、熱回収蒸気発生器(「HRSG」)に供給して、蒸気タービンのための蒸気を発生するようにすることができる。蒸気タービンにより発生させた出力よってもまた、発電機又は別のタイプの負荷を駆動することができる。同様のタイプの発電システムもまた知られている。
【0003】
ガス化プロセスでは、水性ガス転化反応器を使用することができる。基本的水性ガス転化反応は、つぎの通り、つまりCO+H2O<−>CO2+H2である。転化反応を改善するために、水性ガス転化反応器に流入する原料合成ガスに高圧蒸気を混合して、H2O/CO比率を増大させるようにすることができる。蒸気の供給源は一般的に、ボトミングサイクルから或いは高温/低温ガス冷却セクションにおける合成ガスを冷却することにより取出される。反応もまた、温度感受性がある。
【0004】
しかしながら、CO2捕捉を備えたIGCCシステム全体の効率は、水性ガス転化反応器の高圧蒸気要件を考えると、低下する可能性がある。具体的には、原料合成ガスの飽和に必要となる高圧蒸気は、その蒸気が蒸気タービンにおける膨張仕事に使用できないことで性能低下を伴う。従って、分流(流れを分岐させること)は、システム全体効率、正味出力及び熱消費率を低下させるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4999995号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、CO2捕捉を備えた統合ガス複合サイクル発電システムの改良に対する願望が存在する。そのようなシステムは、システム全体効率及び性能を増大させながら適切なCO2捕捉を維持することができるのが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本出願は、統合ガス化複合サイクルシステムを提供する。本統合ガス化複合サイクルシステムは、水性ガス転化反応器システムと熱回収蒸気発生器とを含むことができる。水性ガス転化反応器システムは、合成ガスの流れを加熱する再循環熱交換器を備えた再循環システムを含むことができる。熱回収蒸気発生器は、再循環熱交換器と熱導通した分岐水流を含むことができる。
【0008】
本出願はさらに、1以上の水性ガス転化反応器並びに熱回収蒸気発生器を有する統合ガス化複合サイクルシステムを作動させる方法を提供する。本方法は、再循環水流を流入合成ガスの流れと熱導通させるステップと、熱回収蒸気発生器から高圧水抽出流を分岐させるステップと、高圧水抽出流及び再循環水流間で熱交換させるステップと、水性ガス転化反応器に合成ガスを流すステップと、合成ガスの流れの水分含有量を増加させるステップとを含む。
【0009】
本出願はさらに、統合ガス化複合サイクルシステムを提供することができる。本統合ガス化複合サイクルシステムは、1以上の水性ガス転化反応器を備えた水性ガス転化反応器システムと熱回収蒸気発生器とを含むことができる。水性ガス転化反応器システムは、合成ガスの流れを加熱する再循環熱交換器を備えた再循環システムを含むことができる。熱回収蒸気発生器は、高圧セクションと、再循環熱交換器と熱導通した分岐高圧水流とを含むことができる。
【0010】
本出願のこれらの及びその他の特徴及び改良は、幾つかの図面及び特許請求の範囲と関連させてなした以下の詳細な説明を精査することにより、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】CO2捕捉を備えたIGCC発電システムの概略図。
【図2】公知のIGCCシステムのHRSGを使用した低温ガス冷却セクションの概略図。
【図3】本明細書に記載することができるようなHRSGを使用した低温ガス冷却セクションの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、幾つかの図全体を通して同じ参照符号が同様な要素を表している図面を参照すると、図1は、CO2捕捉を備えたIGCC発電システム100を示している。IGCCシステム100は、顕熱回収を最大にする高圧放射熱伝導ガス化装置110と、放射シンガス冷却器115と、ガスタービンからの部分空気抽出流についての高圧空気分離を使用してガス化に必要となる可能性がある所望の純度の酸素を生成する空気分離ユニット120と、卓越H2−CO2リッチガスを生成する水性ガス転化反応器システム130内の1以上の触媒水性ガス転化反応器と、CO2除去による付加的生成ガス清浄化のための酸性ガス除去システム140と、改良型合成ガス燃料ガスタービン発電サイクル150を使用した発電とを含むことができる。本明細書では、その他の構成も使用することができる。
【0013】
図2は、蒸気のIGCCシステム100の一部分を示している。具体的には、図2は、熱回収蒸気発生器(「HRSG」)160と組合せた状態の放射シンガス冷却器115及び水性ガス転化反応器システム130の組合せを示している。複合サイクル発電ブロック150のガスタービンからの排気ガス165は、HRSG160に供給して、該排気ガスからの廃熱を回収するようにすることができる。HRSG160は、高圧(「HP」)セクション225、中圧(「IP」)セクション255及び低圧(「LP」)セクション285を含むことができる。HRSG160は、排気ガス165からの漸減低位熱を各漸減低圧セクションにおける水循環流に伝達するように構成することができる。本明細書では、その他の構成を使用することができる。
【0014】
高圧セクション225は、1以上の高圧過熱器200、高圧蒸発器220並びに1以上の高圧エコノマイザ230を含むことができる。エコノマイザ230は一般的に、例えば蒸発器又はその他において水が蒸気に変換される前に、水を予熱する。同様に、中圧セクション255は、1以上の中圧再熱器210、中圧過熱器240、中圧蒸発器250、並びに中圧エコノマイザ260を含むことができる。さらに、低圧セクション285は、低圧過熱器270、低圧蒸発器280及び低圧エコノマイザ290を含むことができる。本明細書では、その他の構成要素及び構成を使用することができる。
【0015】
放射シンガス冷却器115は、高圧エコノマイザ230又はその他の1つからの高圧水抽出流300を加熱して高圧蒸気流310にすることができる。高圧蒸気流310は、高圧蒸発器220に戻すことができ、或いは高圧蒸気流310は、水性ガス転化反応器システム130に流入する原料合成ガス315の流れと混合することができる。この実施例では、水性ガス転化反応器システム130は、第1の水性ガス転化反応器320及び第2の水性ガス転化反応器330を含むことができる。本明細書では、システム全体から捕捉することになるCO2の量に応じて、あらゆる数の反応器を使用することができる。高圧蒸気流310は、合成ガス315の流れを飽和させて、反応器320、330のいずれか又は両方におけるH2O/CO比率を改善することができる。任意選択的に、熱エネルギーもまた、高、中又は低圧セクションにおける蒸気タービン抽出流から取得して、H2O/CO比率を高めることができる。
【0016】
水性ガス転化反応器システム130はまた、水再循環システム340を含むことができる。水再循環システム340は、カラム350又はその他において合成ガス315の流れを加熱するために使用することができる。水再循環システム340内の水流は、幾つかのガス/水熱交換器により温めることができる。このケースでは、第1のガス/水熱交換器360及び第2のガス/水熱交換器370を使用することができる。ガス/ガス熱交換器380もまた使用することができる。本明細書では、あらゆる数の熱交換器を使用することができる。本明細書では、その他の構成要素及び構成もまた使用することができる。
【0017】
図3は、本明細書に記載することができるような水性ガス転化反応器システム400を備えたIGCCシステム390を示している。水性ガス転化反応器システム400は、ここでも同様にHRSG160と組合されている。具体的には、高圧水抽出流410が、1つの高圧エコノマイザ230から取出される。高圧水抽出流410は、ここでも同様に放射シンガス冷却器115を通って流れかつ高圧蒸気流420に変化する。しかしながら、高圧蒸気流420の全ては、水性ガス転化反応器システム400の反応器320、330の1つに転送される代わりに高圧蒸発器220に戻される。
【0018】
それどころか、再循環熱交換器430が、水性ガス転化反応器システム400の再循環システム445内で再循環(水)流440を温める。上述のように、再循環流440は、第1及び第2の熱交換器360、370並びにカラム350を通って流れる。再循環熱交換器430は、高圧水抽出流410の分岐水流450により給水される。分岐水流450は、再循環熱交換器430を通って流れ、かつ次に高圧エコノマイザ230に戻る。この流れ上で、分流ポンプ460を使用することもできる。本明細書では、その他の構成を使用することができる。
【0019】
従って、再循環流440は、高圧エコノマイザ230又はその他から利用可能な廃熱を使用して加熱することができる。再循環流440は次に、反応器320、330に流入すると、流入原料合成ガス315の流れを予熱する。このようにして、反応器320、330に導かれる高圧蒸気流420の必要性を排除及び/又は少なくとも減少させることができる。従って、高圧水抽出流410によって原料合成ガス315の流れを予熱することにより該合成ガスの水分を保持する能力を高め、一方で、高圧蒸気流420は、有用な仕事に利用可能になる。従って、IGCCシステム100の全体出力は、高圧蒸気流420の代わりに高圧水抽出流410を使用することによって向上させることができる。同じ飽和状態を得るために、より低圧側に移した改造形態も実施可能である。
【0020】
上記の説明は本出願の一部の実施形態のみに関するものであること並びに本明細書において当業者は特許請求の範囲及びその均等物によって定まる本発明の一般的技術思想及び技術的範囲から逸脱せずに多くの変更及び修正を加えることができることを理解されたい。
【符号の説明】
【0021】
100 IGCC発電システム
110 ガス化装置
115 合成ガス冷却器
120 空気分離ユニット
130 水性ガス転化反応器システム
140 酸性ガス除去システム
150 ガスタービン発電サイクル
151 選炭
152 CO2リサイクル圧縮
153 CO2圧縮
154 排ガス処理ユニットを備えた硫黄回収ユニット
155 合成ガス加熱ユニット
160 熱回収蒸気発生器
165 排出ガス
200 高圧過熱器
210 高圧再熱器
220 高圧蒸発器
225 高圧セクション
230 高圧エコノマイザ
240 中圧過熱器
250 中圧蒸発器
255 中圧セクション
260 中圧エコノマイザ
270 低圧過熱器
280 低圧蒸発器
285 低圧セクション
290 低圧エコノマイザ
300 高圧水抽出流
310 高圧蒸気流
315 合成ガスの流れ
320 第1の水性ガス転化反応器
330 第2の水性ガス転化反応器
340 水再循環システム
350 カラム
360 第1のガス/水熱交換器
370 第2のガス/水熱交換器
380 ガス/ガス熱交換器
390 IGCCシステム
400 水性ガス転化反応器システム
410 高圧水抽出流
420 高圧蒸気流
430 再循環熱交換器
440 再循環(水)流
445 再循環システム
450 分岐水流
460 分流ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ガス転化反応器システム(400)と、
熱回収蒸気発生器(160)と
を備える統合ガス化複合サイクルシステム(390)であって、前記水性ガス転化反応器システム(400)が、再循環システム(445)を含み、前記再循環システム(445)が、合成ガス(315)の流れを加熱する再循環熱交換器(430)を含み、前記熱回収蒸気発生器(160)が、前記再循環熱交換器(430)と熱導通した分岐水流(450)を含む、統合ガス化複合サイクルシステム(390)。
【請求項2】
前記水性ガス転化反応器システム(400)が、1以上の水性ガス転化反応器(320、330)を含む、請求項1記載の統合ガス化複合サイクルシステム(390)。
【請求項3】
前記熱回収蒸気発生器(160)が、高圧セクション(225)を含む、請求項1記載の統合ガス化複合サイクルシステム(390)。
【請求項4】
前記高圧セクション(225)が、1以上の高圧過熱器(200)、1以上の再熱器(210)並びに/或いは1以上のエコノマイザ(230)を含む、請求項3記載の統合ガス化複合サイクルシステム(390)。
【請求項5】
前記高圧セクション(225)が、前記分岐水流(450)と熱導通した1以上のエコノマイザ(230)を含む、請求項3記載の統合ガス化複合サイクルシステム(390)。
【請求項6】
前記分岐水流(450)が、高圧水抽出流(410)を含む、請求項1記載の統合ガス化複合サイクルシステム(390)。
【請求項7】
前記高圧水抽出流(410)と熱導通して高圧蒸気流(420)を形成する合成ガス冷却器(115)をさらに含む、請求項1記載の統合ガス化複合サイクルシステム(390)。
【請求項8】
前記高圧蒸気流(420)が、前記熱回収蒸気発生器(160)と熱導通している、請求項7記載の統合ガス化複合サイクルシステム(390)。
【請求項9】
前記熱回収蒸気発生器(160)が、高圧蒸発器(220)を含み、前記高圧蒸発器(220)が、前記高圧蒸気流(420)と熱導通している、請求項8記載の統合ガス化複合サイクルシステム(390)。
【請求項10】
1以上の水性ガス転化反応器(320、330)並びに熱回収蒸気発生器(160)を有する統合ガス化複合サイクルシステム(390)を作動させる方法であって、
再循環水流(440)を流入合成ガス(315)の流れと熱導通させるステップと、
前記熱回収蒸気発生器(160)から高圧水抽出流(410)を分岐させるステップと、
前記高圧水抽出流(410)及び再循環水流(440)間で熱交換させるステップと、
前記1以上の水性ガス転化反応器(320、330)に前記合成ガス(315)を流すステップと、
前記合成ガス(315)の流れの水分含有量を増加させるステップと
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−231320(P2011−231320A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−90645(P2011−90645)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】