統合システムの簡便な保管
本発明は、酵素および安定化された補酵素を含む少なくとも1つの診断用テストエレメントを保管するための保管容器、そのような診断用テストエレメントを含む診断用製品、および、そのような保管容器または診断用製品を含む分析用測定装置に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素および安定化された補酵素を含む少なくとも1つの診断用テストエレメントを保管するための保管容器、そのような診断用テストエレメントを含む診断用製品、およびそのような保管容器または診断用製品を含む分析用測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
診断用テストエレメントは、臨床的に意義のある分析方法の重要な構成要素である。このため、たとえば、直接的にまたは間接的に、分析物に特異的である酵素を使用して測定され得る、たとえば代謝物や基質などの分析物の測定に重点が置かれている。この場合、分析物は、酵素−補酵素複合体を使用して変換され、ついで定量される。これは、測定されるべき分析物を適切な酵素、補酵素および任意にはメディエーターと接触させることを伴い、それによって補酵素は、酵素反応によってたとえば酸化または還元など物理化学的に変化する。メディエーターが追加で使用される場合、メディエーターは通常、還元された補酵素から分析物の変換のあいだに放出された電子を光学インジケーターまたは電極の導電性部位上に伝達し、これによりこのプロセスがたとえば光度計測的または蛍光計測的に検出され得る。較正により、測定された値と測定される分析物の濃度とのあいだの直接的な関係が提供される。
【0003】
診断用テストエレメントを提供する際の重要な基準は、長期間にわたるそれらの安定性である。たとえば血糖の測定に使用されている、先行技術において既知のテストエレメントは、補酵素およびメディエーターの機能が通常低下するため、一般的に、湿気および熱に対して非常に感受性が高い。たとえばエンドユーザー自身により実施される試験の場合などの特定の適用においては、誤りであるが気づかれることのない間違った測定システムの保管によって、使用者によって認識されることがほぼ不可能な、かつ、それぞれの疾患の誤った処置につながるかもしれない、誤った結果が生じる可能性がある。
【0004】
したがって、従来の診断用テストエレメントの製造および保管には、診断用テストエレメントの試験化学と特に湿気との接触を防ぐ特別な保護手段が必要である。これはたとえば、シリカゲルもしくはモレキュラーシーブなどの乾燥剤またはシーリングエレメントを、テストエレメントを含む保管容器に導入することによって達成され得る。
【0005】
その結果このようなテストエレメントは、完璧な機能性を保障するために保管容器から取り出して数分以内に使用しなければならないという不利な点を有している。テストエレメントを保管容器または当初の包装から取り出した後に分析用測定装置内に挿入することを目的としている場合、テストエレメントは、完全に使い切るまでさらに乾燥した状態で保存されなければならず、このことは精巧な装置を必要とし、そして、テストエレメントおよび分析用測定装置のデザインを大幅に制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の根底にある目的は、少なくとも部分的には先行技術の不利を除外するような、診断用テストエレメントのための保管容器を提供することであった。特には、診断用テストエレメントを保管容器の中で、精巧な装置なしに長期間にわたって湿度または/および熱の存在下で、それらによって酵素活性の著しい損失を受けることなく保管することを可能にすべきものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、本発明にもとづき、酵素および安定化された補酵素を含む少なくとも1つの診断用テストエレメントを含む保管容器であって、本質的に乾燥剤を含まず、または/および、周囲から保管容器内への湿気の侵入を実質的に防ぐシーリングエレメントを含まない保管容器を用いることによって達成された。
【0008】
もう一つの実施態様において上述の目的は、酵素および安定化された補酵素を含む少なくとも1つの診断用テストエレメントを含む保管容器であって、テストエレメントまたは複数のテストエレメントの未使用のテスト領域と使用済みのテスト領域との間で湿気が交換され得る保管容器を用いることによって達成される。
【発明の効果】
【0009】
驚くべきことに、本発明の範囲において酵素および安定化された補酵素をそれらの化学コーティング中に含む診断用テストエレメントは、高い相対空気湿度でまたは/および高温でさえ、数週間または数ヶ月間にわたって酵素活性の顕著な低下に付されることがなく、したがってテストエレメントを含む保管容器内への湿気の侵入を防ぐために必要とされる装置の複雑性を低減することができることが見出された。このことは同時に、ユーザーによる、より簡便かつより確実な診断用テストエレメントの取り扱いを可能にする。
【0010】
この結果は、酵素は天然の補酵素の存在下では数時間という短期間では安定性の増加を示すが(Bertoldiら、Biochem. J. (2005), 389, 885;van den Heuvelら、J. Biol. Chem. (2005), 280, 32115;およびPanら、J. Chin. Biochem. Soc. (1974), 3, 1)、より長期間にわたった場合には安定性が低下することが知られている(Nutrition Reviews (1978), 36, 251)ため驚くべきことである。本発明で認められた、酵素および安定化された補酵素を含む診断用テストエレメントの湿気または/および熱に対する長期間にわたる安定性は、安定化された補酵素が、対応する天然の補酵素よりも酵素とのより低い結合定数を有しているだけに一層驚くべきことである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】安定な補酵素カルバNAD(cNAD)の図である。
【図2A】NADの存在下およびcNADの存在下での、保管前後のグルコース脱水素酵素の酵素反応速度の結果の図である。NAD存在下1日後のGlucDHの反応速度。
【図2B】NADの存在下およびcNADの存在下での、保管前後のグルコース脱水素酵素の酵素反応速度の結果の図である。cNAD存在下1日後のGlucDHの反応速度。
【図2C】NADの存在下およびcNADの存在下での、保管前後のグルコース脱水素酵素の酵素反応速度の結果の図である。NAD存在下、32℃および85%の相対空気湿度で5週間保管した後のGlucDHの反応速度。
【図2D】NADの存在下およびcNADの存在下での、保管前後のグルコース脱水素酵素の酵素反応速度の結果の図である。cNAD存在下、32℃および85%の相対空気湿度で5週間保管した後のGlucDHの反応速度。
【図3】32℃および空気湿度85%で5週間までの期間のあいだの、NADの存在下におけるグルコース脱水素酵素の、または、cNADの存在下におけるGlucDHの空試験値の比較。
【図4】32℃および空気湿度85%でNADの存在下でのグルコース脱水素酵素の保管後のグルコース脱水素酵素の様々な関数曲線の図である。保管期間は1日と5週間とのあいだで変化された。
【図5A】32℃および空気湿度85%でcNADの存在下でのグルコース脱水素酵素の保管後のグルコース脱水素酵素の様々な関数曲線の図である。保管期間は1日と5週間とのあいだで変化された。
【図5B】32℃および空気湿度85%でcNADの存在下でのグルコース脱水素酵素の保管後のグルコース脱水素酵素の様々な関数曲線の図である。保管期間は1日と24週間とのあいだで変化された。
【図6】32℃および空気湿度85%で24週間、NADまたはcNADの存在下でのグルコース脱水素酵素の保管後のNADおよびcNADの残存含量の図である。
【図7A】32℃および空気湿度85%で5週間、NADまたはcNADの存在下でのグルコース脱水素酵素の保管後のGlucDH活性の図である。
【図7B】32℃および空気湿度85%で24週間、NADまたはcNADの存在下でのグルコース脱水素酵素の保管後のGlucDH活性の図である。
【図8A】液相中50℃で4日間にわたる、NADまたはcNADの存在下でのグルコース脱水素酵素の安定性の図である。テスト条件:GlucDH 10mg/mL;NADまたはcNAD 12mg/mL、緩衝液:0.1M トリス、1.2M NaCl、pH8.5;温度50℃。
【図8B】液相中50℃で14日間にわたる、NADまたはcNADの存在下でのグルコース脱水素酵素の安定性の図である。テスト条件:GlucDH 10mg/mL;NADまたはcNAD 12mg/mL、緩衝液:0.1M トリス、1.2M NaCl、pH8.5;温度50℃。
【図9】液相中35℃で65時間にわたる、NADまたはcNADの存在下での酵母由来のアルコール脱水素酵素の安定性の図である。テスト条件:ADH 5mg/mL;NADまたはcNAD 50mg/mL;緩衝液:75mM Na4P2O7、グリシン、pH9.0;温度35℃。
【図10A】その中でテストテープが診断用テストエレメントとして使用される2つのチャンバを備える、テープマガジンの形状である本発明の保管容器の図である。
【図10B】前記保管容器を含む分析用測定装置の図である。
【図11】複数の診断用テストエレメントを収容できるディスク状の回転マガジンの形状である本発明の保管容器の図である。
【図12】診断用テストエレメントとして複数の個別のテストストリップを含み、かつ、乾燥剤で満たされている外側の包装内に収容され得るTicTac(登録商標)ディスペンサーの形状である本発明の保管容器の図である。
【図13】診断用テストエレメントとして個別のテストストリップを含むランシングエイドの形状である本発明の保管容器の図である。
【図14A】棒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップを含む、乾燥剤を含むプラスティックボックスの形状である本発明の保管容器の図である。
【図14B】棒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップを含む、アルミニウム缶の形状である本発明の保管容器の図である。
【図14C】棒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップを含む、プラスティックバッグの形状である本発明の保管容器の図である。
【図15A】筒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップを含む、アルミニウム缶の形状である本発明の保管容器の図である。
【図15B】筒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップを含む、TicTac(登録商標)ディスペンサーの形状である本発明の保管容器の図である。
【図15C】筒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップを含む、プラスティックバッグの形状である本発明の保管容器の図である。
【図16】棒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップを含む、一体型保管容器を備えた本発明の分析用測定装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願の範囲内において使用される場合、用語「保管容器(storage container)」は、分析用測定装置内に挿入することができる容器、そして、容器中に保管された、1つのテスト領域またはいくつかのテスト領域を含み得る少なくとも1つの診断用テストエレメントの1つの個別のテスト領域が、分析用測定装置と常に相互作用し合えるようにデザインされている容器を意味する。診断用テストエレメントのテスト領域と分析用測定装置との間の相互作用は、原則としてどのような方法で行われてもよいが、特にはたとえば分析物の試料で湿潤されたテスト領域を適切な波長をもつ光で照射し、続いてテスト領域から放出される発光を分析用測定装置を用いて検出することによるなど、光学的手法で行われ得る。
【0013】
分析用測定装置を用いた分析物の定性的または/および定量的測定を可能にするために、本発明の保管容器は好ましくは、保管容器中に保管されている診断用テストエレメントのテスト領域が分析物の試料と接触され得る試料塗布位置、分析物が診断用テストエレメントのテスト領域と分析用測定装置との相互作用によって測定され得る測定位置ならびに試料との接触およびそれに続く分析物の測定前または/および後に診断用テストエレメントのテスト領域が保管され得る少なくとも1つの保管位置を含む。
【0014】
本明細書中に記載される保管容器としては基本的に、それらが少なくとも1つの診断用テストエレメントを収容可能である限り、当業者にとってよく知られており、本発明の目的に適していると思われる任意の物理的形状、特にはテープマガジンまたはテストストリップマガジンを含む。保管容器はたとえば、円形の、丸みを帯びたまたは角のある形状であってもよく、特には、円形のまたは丸みを帯びた保管容器によって高い気密性が達成され得る。しかしながら、本発明に基づいて使用される診断用テストエレメントは、非常に安定した試験化学を有しているため、極度に高い気密性は必ずしも必要であるとは限らず、したがって、保管容器として角のあるデザインの実施が容易に可能である。
【0015】
本発明の意味における保管容器の具体的な例としては、特には、複数の個別の診断用テストエレメント、たとえば、互いに連結しているが個々に分離が可能であり、かつ、輸送を目的として適切な外側の包装内に、本発明の保管容器とともにさらに収容され得る複数の診断用テストエレメントを好ましくは含む、パウチ、箱、缶、単純なディスペンサーおよびバッグが挙げられる。本発明において使用される「複数(plurality)」という用語は、1より大きい任意の数のことを指す。
【0016】
分析物の測定を阻害し得る塵粒子または他の粒子の外環境から内部への侵入を防ぐために、本発明の保管容器は、直径100μm以下、好ましい変形例においては特には20μm以下の侵入口しか有さない。本発明において使用される「侵入口(entry opening)」という用語は、それを通して無機または/および有機材料の粒子が保管容器の外環境からその内部へと入り込むことができる任意の開口部、たとえば保管容器を製造するために使用される材料の細孔などを包含する。
【0017】
本発明の保管容器は、診断用テストエレメントを保管するという目的のために当業者に適切と思われる任意の材料から構成され得る。しかしながら、保管容器は少なくとも部分的には、すなわち、部分的または全体的に、任意には追加で添加剤たとえば染料、平滑物質、劣化防止剤または/およびUV阻害剤などを含んでもよい水蒸気に対して透過性のある少なくとも1つの材料から構成される。本発明によれば、食用紙、被覆箔、木材、プラスティック、紙、厚紙、パーチメント(parchment)、プレスボードまたは合板が水蒸気に対して透過性のある材料として使用可能であり、このうち、プラスティックが好ましい。水蒸気に対して透過性のある材料として、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなる群より選択されるプラスティックを含む保管容器が本発明の範囲内で特に好ましく用いられる。
【0018】
保管容器としてテープマガジンが使用される場合、テープマガジンは、ただ一つの診断用テストエレメントを備えるが、通常2以上のテスト領域、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも25個、および最も好ましくは少なくとも50個の個別のテスト領域を含む診断用テストエレメントを好ましくは含む。テストストリップマガジンが保管容器として使用される場合には、テストストリップマガジンは、少なくとも3個、より好ましくは少なくとも5個、および最も好ましくは少なくとも7個の診断用テストエレメントを好ましくは含み、この場合、診断用テストエレメントは通常、2以上のテスト領域を有するが、必要に応じて、ただ一つのテスト領域のみを有していてもよい。
【0019】
本発明の目的のため使用され得る保管容器は、少なくとも1つの診断用テストエレメントを保管するための1またはそれ以上の空間的に隔てられた領域を含んでいてもよい。診断用テストエレメントが分析物を含む試料と接触され得る2以上のテスト領域を含んでいる場合、本発明の保管容器は、その中に診断用テストエレメントのテスト領域が保管され得る、互いに空間的に隔てられている1つまたは2つの領域、たとえば1つまたは2つのチャンバなどを好ましくは含む。
【0020】
保管容器が、診断用テストエレメントを保存するための、互いに空間的に隔てられている2つの領域を含む場合、1つの領域はたとえば診断用テストエレメントの未使用のテスト領域を保管するために使用されてもよく、一方、第二の領域は診断用テストエレメントの使用済みのテスト領域を保管するために提供される。これにより、診断用テストエレメントの未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域は、保管容器内で互いに直接には接触しあえない。また、それぞれの診断用テストエレメントを使用の前または後でそれ自身の領域内に、たとえばそれ自身のチャンバ内などに保管することも可能である。
【0021】
2以上のテスト領域を有する診断用テストエレメントを保管するために、1つの領域、たとえばただ一つのチャンバなどしか含まない保管容器の場合、診断用テストエレメントの未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域はその1つの領域内に保管される。第二のチャンバ、または、たとえば隔壁などの保管容器内での未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域のあいだの接触を防ぐ物理的手段なしで済むことにより、保管容器の製造およびテストエレメントの保管を著しく簡略化することが可能となるが、これは処理工程をより経済的にするものである。本発明において使用される用語「未使用のテスト領域(unused test area)」は、テスト領域と測定される分析物の試料とが接触される前の、本発明で記載される診断用テストエレメントのテスト領域を指し;一方、「使用済みのテスト領域(used test area)」という用語は、テスト領域と測定される分析物の試料とが接触された後のテスト領域を指すために使用される。
【0022】
好ましい実施態様において、本発明の保管容器はテープマガジンまたはテストストリップマガジンであって、このうち、テストストリップマガジンが好ましい。テストテープの形で存在する診断用テストエレメントの未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域の別々の保管のために2つのチャンバを有するテープマガジンは、例えば、独国特許出願公開第10 2005 013 685号明細書、欧州特許出願公開1 739 432号明細書および国際公開公報第2004/047642号に記載されている。本発明の意味におけるテストストリップマガジンは、一般的に当業者に公知であり、たとえば欧州特許出願公開0 951 939号明細書、欧州特許出願公開1 022 565号明細書、欧州特許出願公開1 736 772号明細書、国際公開公報第2005/104948号およびPCT/EP2010/000865に記載されているような、ブリスターマガジン(blister magazines)、レポレロマガジン(leporello magazines)、ディスクマガジン(disk magazines)、スタックマガジン(stack magazines)、ドラムマガジン(drum magazines)およびターニングマガジン(turning magazines)を特には含む。上述の刊行物の開示、とりわけ保管容器の形状に関する開示は、本明細書に参照として明確に組み込まれる。
【0023】
第一の実施態様において、本発明の保管容器は、本質的に乾燥剤を含まない1つの変形例にある。これに関連して、用語「本質的に乾燥剤を含まない(essentially free of desiccants)」とは、保管容器が、保管容器の空重量に対して5重量%より小さい量の、好ましくは1重量%より小さい量の、より好ましくは0.1重量%より小さい量の、さらにより好ましくは0.01重量%より小さい量の、および最も好ましくは0.001重量%より小さい量の乾燥剤を含むことを意味する。本明細書に記載される診断用テストエレメントの製造および保管の範囲内における、乾燥剤の量を著しく減少させることができる可能性または乾燥剤を完全に省略することができる可能性は、テストエレメントの製造および保管を簡略化することができ、そしてその結果、より経済的であるという点において有利である。
【0024】
本発明の保管容器が完全に乾燥剤なしではない、すなわち、上述した量のうちの1つの量で乾燥剤を含む場合、乾燥剤は、保管容器内へ別個に導入されてもよく、または/および、保管容器のハウジング内へ別個に一体化されてもよい。保管容器がそのハウジング内に一体化された乾燥剤を含む場合、これは、乾燥剤が保管容器の固体ハウジング内に組み込まれていることを意味しており、これは保管容器の少なくとも1つの内表面が保管容器の内部からの湿気を吸収することを可能にする。このような保管容器は、たとえば、ハウジングを製造し、そして続いてプラスティック組成物を冷却/硬化するために使用される型の中に乾燥剤を注入することにより製造され得る。
【0025】
第一の実施態様の二番目の変形例においては、本発明の保管容器は、周囲から保管容器内への湿気の侵入を実質的に防ぐシーリングエレメントを含まない。用語「周囲から保管容器内への湿気の侵入を実質的に防ぐシーリングエレメント(sealing elements which substantially prevent the penetration of moisture from the environment into the storage container)」とは、少なくとも4週間、好ましくは少なくとも8週間、および特に好ましくは少なくとも12週間の期間にわたって、シーリングエレメントが、周囲から保管容器内への湿気の侵入を完全に防ぐこと、または、たとえば補酵素および該当する場合にはメディエーターの不活性化などに起因する、診断用テストエレメントの試験化学の機能への障害をもたらすことがない量の湿気の侵入しか許さないことを意味する。
【0026】
本発明の意味におけるシーリングエレメントの例としては、特にはシールおよび密封シーリングが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。本明細書に記載される、周囲から保管容器内への湿気の侵入を許すが、本発明の好ましい実施態様で使用可能であるシーリングエレメントは、したがって、主として保管容器中に保管された診断用テストエレメントを塵粒子または物理的損傷から保護するために使用され、そして、たとえば紙、パーチメントまたは当業者にとって公知の他の材料から作られてもよい。したがって、診断用テストエレメントをその中に含む保管容器を密封するために通常使用される安定な金属箔は、効率的かつコスト削減のための方法において避けられ得る。
【0027】
周囲から保管容器内への湿気の侵入を実質的に防ぐシーリングエレメントの省略は、本明細書に記載されるテストエレメントの製造および保管を著しく簡略化および効率的にし得る。したがって、機械的構成要素の省略は、一方では、従来の保管容器と比較して組み立て工数の顕著な減少を導く。他方で、シーリングエレメントの省略はまた、たとえばシーリングエレメントを有するテープマガジンの場合に、テストテープの形状で存在する診断用テストエレメントの未使用のテスト領域をテープマガジン内の保管位置からテープマガジンン外側の試料塗布位置または測定位置へと移動させるために、シーリングエレメントにより生じる機械的抵抗に起因して必要とされる引張力を顕著に減少させる。
【0028】
この点に関して、本発明の保管容器の好ましい実施態様においては、(i)診断用テストエレメントの未使用のテスト領域を保管容器内の保管位置から保管容器外側の試料塗布位置または/および測定位置へと移動させるために必要とされる最小または/および最大の引張力、または/および、(ii)診断用テストエレメントの使用済みテスト領域を保管容器外側の試料塗布位置または/および測定位置から保管容器内の保管位置へと移動させるために必要とされる最小または/および最大の引張力が、シーリングエレメントを備える対応する保管容器と比較して減少する。この場合、最小または/および最大の引張力の減少は通常、シーリングエレメントを備える対応する保管容器において必要とされる最小または/および最大の引張力に対して、少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、および最も好ましくは少なくとも50%である。
【0029】
本発明の保管容器中の診断用テストエレメントのテスト領域をさらに移動させるために必要とされる最小または/および最大の引張力の減少は、たとえばテープマガジンの場合にテストテープのさらなる移動のために必要とされるエネルギーを減少させることができ、これは、保管容器を含む分析用測定装置のエネルギー必要量の総量を減少させることにつながり、そしてその結果、たとえば、より小さなバッテリーまたはより少ない数のバッテリーの使用を可能にする。これは、結果として、より小さな構成サイズをもたらし、そのため、保管容器の全体のサイズが著しく減少され、そしてその結果、保管容器を製造するために必要とされる材料が減少され得る。
【0030】
第二の実施態様において、本発明の保管容器は、個々の診断用テストエレメントまたはいくつかの診断用テストエレメントの、未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域のあいだの湿気の交換を可能にする。診断用テストエレメントは好ましくは、たとえばテストテープなどの、分析物を測定するための一以上のテスト領域を含むような保管容器中で使用される。
【0031】
第二の実施態様による、本発明に記載される診断用テストエレメントの未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域の保管は、未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域のあいだで湿気の交換が可能であれば、いかなる方法によって行われてもよい。したがって、未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域はたとえば、一またはそれ以上の保管領域および特には1つ、2つまたは3つ以上のチャンバを含む保管容器内に保管されてもよい。
【0032】
第二の実施態様における保管容器中では、診断用テストエレメントの未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域は、好ましくは、ただ一つのチャンバ内または湿気透過性の隔壁によって互いに隔てられている2つのチャンバ内に保管される。未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域がただ一つのチャンバ内に収容される場合、未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域は好ましくは、未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域のあいだで湿気は交換され得るが、未使用のテスト領域の汚染を避けるために診断用テストエレメントの未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域のあいだで直接的な接触はないような方法で、1つのチャンバ内に配置される。保管容器はその簡略化されたデザインにより、小型化することができ、より簡略な方法で製造され、そして、よりコスト効率よく提供され得る。
【0033】
本発明によれば、本明細書に記載される保管容器はまた、上述した第一および第二の実施態様の組み合わせを含んでもよい。したがって、本発明のさらなる変形例は、酵素および安定化された補酵素を含む少なくとも1つの診断用テストエレメントを含む保管容器を対象とするものであり、ここで保管容器は、(a)本質的に乾燥剤なしであり、(b)周囲から保管容器内への湿気の侵入を実質的に防ぐシーリングエレメントを含まず、または/および、(c)テストエレメントまたは複数のテストエレメントの未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域のあいだで湿気の交換を可能にする。
【0034】
さらに、本明細書に記載される保管容器は、しかしながらまた、周囲から保管容器内への粒子状物質の侵入を防ぐが、その一方で、湿気の侵入は許す物理的手段を含んでもよい。この意味において、たとえばテストテープなどのように2以上のテスト領域を有する診断用テストエレメントの場合において、保管容器内でテスト領域のさらなる移動は、たとえば上述したような対応する物理的手段を備えていない保管容器と比較して、保管容器内でテスト領域のさらなる移動のために必要とされる最小または/および最大の引張力が増加することにより妨げられないことが好ましい。
【0035】
本明細書に記載される保管容器は、少なくとも1つの診断用テストエレメントを含むことが必須である。本発明の範囲において使用可能な診断用テストエレメントは、基本的に当業者に公知であって、分析物を測定するために適切であり、そして、本発明の保管容器内に保管することの可能な任意のテストエレメントを含む。これに関連して、用語「保管(storage)」は、診断用テストエレメントが、好ましくは少なくとも2週間の期間、より好ましくは少なくとも3ヶ月の期間、さらにより好ましくは少なくとも6ヶ月の期間、および最も好ましくは少なくとも12ヶ月の期間、保管容器内に収容されていることを意味し、ここで保管は、好ましくは大気圧下、室温(25℃)および少なくとも50%の相対空気湿度で行われる。
【0036】
診断用テストエレメントは、本発明の範囲内で好ましくは使用され、分析物は水溶液または非水溶液の形状で診断用テストエレメント上に塗布され得る。本発明の好ましい実施態様において、テストエレメントは、この場合、テストテープ、テストディスク、テストパッド、テストストリップまたは国際公報第2005/084530号明細書で記載されている診断素子であり、本明細書に参照として明確に組み込まれる。本発明で記載される保管容器がテストストリップマガジンとして設計されている場合、それらは特に好ましい変形例において、棒状または/および筒状に配置された、相互に連結されておりかつ個々に分離可能な複数のテストストリップを含む。必要であれば、診断用テストエレメントは、それぞれの場合に使用されたテストエレメントのその後の同定を必要に応じて可能にするように、たとえばバーコードなどのマークを追加として含んでもよい。
【0037】
本明細書中で使用される用語「テストテープ(test tape)」は、通常2以上のテスト領域、好ましくは少なくとも10個の個別のテスト領域、より好ましくは少なくとも25個の個別のテスト領域、および最も好ましくは少なくとも50個の個別のテスト領域を含むテープ様のテストエレメントを意味する。ある実施態様では、個別のテスト領域は、相互に数ミリメーターから数センチメーター隔てて、たとえば2.5cmより小さな距離を隔ててそれぞれ配置されており、テストテープは任意には、連続したテスト領域のあいだに、テープの移動のあいだに動いた距離を検出するための、または/および、較正のための、通常試験化学が被覆されていないマーカー領域を含んでもよい。テープの移動のあいだに動いた距離を検出するための連続するテスト領域のあいだのマーカー領域を備えるテストテープは、たとえば欧州特許出願公開第1 739 432号明細書に記載されており、その開示は本明細書に参照として明確に組み込まれる。
【0038】
上述のテストテープは、好ましくは、少なくとも2つのテスト領域が直接的に互いに隣り合って、すなわち、2つのテスト領域のあいだのギャップなしに配置されている連続的なテストテープである。テスト領域のこのような配置は、より多くの数のテスト領域をテストテープ上に位置づけることが可能であり、そしてさらには個々のテスト領域のあいだで湿気が交換されることを可能にするという利点を有する。このことは、テストテープの製造を簡略化し、そして、コスト効率をより良くする。
【0039】
本発明の意味における連続したテストテープの場合、それはたとえば、第一番目および最後のテスト領域を除いて全てのテスト領域を、個々のテスト領域の両側が別のテスト領域に直接隣接するような方法で配置することが可能である。あるいは、連続したテストテープの場合、数個のテスト領域、たとえば5個またはそれ以上のテスト領域を互いに直接隣り合って配置することもまた可能であり、ここで、連続したテスト領域のグループは順番に、相互に数ミリメーターから数センチメーター隔てて、たとえば2.5cmより小さな距離を隔てて配置される。この場合、テストテープはまた、任意には、連続したテスト領域のグループのあいだに、テープの移動のあいだに動いた距離を検出するための、または/および、較正のためのマーカー領域を含んでもよい。
【0040】
本明細書で使用される用語「テストディスク(test disk)」とは、1またはそれ以上の個々のテスト領域、たとえば少なくとも10個のテスト領域を含むディスク状のテストエレメントを意味する。ある実施態様において、テストディスクは、分析物の試料がその上に塗布され得る試験化学の薄層、たとえば約20μmの厚さを有する層で被覆されており、それによって、大なり小なりのサイズのテストディスクの領域が試料の量に依存して試料によって湿潤され、そして、分析物の測定に使用され得る。試験化学層を通過した湿気によって部分的または全体的に湿潤され得る、テストディスクの非湿潤領域は、分析物のさらなる測定のためにのちに使用可能である。
【0041】
診断用テストエレメントにおいて使用される酵素は、それぞれの適用の目的のために当業者に適切と思われる任意の酵素であり、たとえば脱水素酵素であってもよい。酵素は好ましくは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD/NADH)依存性、または、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP/NADPH)依存性の脱水素酵素であって、特には、アルコール脱水素酵素(EC1.1.1.1;EC1.1.1.2)、L−アミノ酸脱水素酵素(EC1.4.1.5)、グルコース脱水素酵素(EC1.1.1.47)、グルコース−6−リン酸脱水素酵素(EC1.1.1.49)、グリセロール脱水素酵素(EC1.1.1.6)、3−ヒドロキシ酪酸脱水素酵素(EC1.1.1.30)、乳酸脱水素酵素(EC1.1.1.27、EC1.1.1.28)、リンゴ酸脱水素酵素(EC1.1.1.37)およびソルビトール脱水素酵素より選択される脱水素酵素である。最も好ましい実施態様において、酵素は、グルコース脱水素酵素(EC1.1.1.47)またはグルコース−6−リン酸脱水素酵素(EC1.1.1.49)である。
【0042】
本発明の意味における安定化された補酵素は、天然の補酵素と比較して化学的に修飾されており、湿気、特に0℃から50℃までの範囲の温度、特にpH4からpH10までの範囲の酸および塩基、または/および、たとえばアルコールもしくはアミンなどの求核試薬に対し、天然の補酵素と比較してより高い安定性を大気圧下で有しており、この結果、同一の環境条件下で天然の補酵素よりもより長期間にわたりその効果を発揮することができる補酵素である。安定化された補酵素は、好ましくは、天然の補酵素と比較してより高い加水分解安定性を有しており、試験条件下において完全に耐加水分解性であることが特に好ましい。天然の補酵素と比較して、安定化された補酵素は、酵素に対して低下した結合定数を有していてもよく、たとえば2倍またはそれ以上に低下した結合定数を有していてもよい。
【0043】
本発明の意味における安定化された補酵素の好ましい例は、安定化されたNAD(P)/NAD(P)H化合物、すなわち、天然のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD/NADH)またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP/NADPH)の化学的な誘導体である。安定化されたNAD(P)/NAD(P)化合物は、好ましくは、グリコシル結合なしに直鎖状または筒状有機残基により、特には、筒状有機残基により、たとえばリン酸残基などのリン含有残基に連結される3−ピリジンカルボニルまたは3−ピリジンチオカルボニル残基を含む。
【0044】
安定化されたNAD(P)/NAD(P)H化合物は、特に好ましくは一般式(I)の化合物
【化1】
式中、
A=アデニンまたはその類似体、
T=それぞれ独立してO、S、
U=それぞれ独立してOH、SH、BH3-、BCNH2-、
V=それぞれ独立してOHまたはリン酸基、または2つの基が筒状リン酸エステル基を形成する、
W=COOR、CON(R)2、COR、CSN(R)2、R=それぞれ独立してHまたはC1〜C2−アルキル、
X1、X2=それぞれ独立してO、CH2、CHCH3、C(CH3)2、NH、NCH3、
Y=NH、S、O、CH2、
Z=直鎖状または筒状有機残基、ただし、Zおよびピリジン残基は、グリコシル結合により連結されない
またはその塩、もしくは必要に応じて還元型
から選択される。
【0045】
式(I)の化合物においてZは、好ましくは4〜6個のC原子、好ましくは4個のC原子を有する直鎖状残基であって、1個または2個のC原子が任意に、O、SおよびNから選択される1つもしくはそれ以上のヘテロ原子で置換されている直鎖状残基であるか、または5個もしくは6個のC原子を有する筒状基を含む残基であって、任意にはO、SおよびNから選択されるヘテロ原子および任意には1つまたはそれ以上の置換基を含む残基、ならびにCR42残基(CR42は筒状基およびX2に結合され、R4はそれぞれ独立してH、F、Cl、CH3である)を含む残基である。
【0046】
Zは特に好ましくは、飽和または不飽和の炭素環式または複素環式の5員環、とりわけ一般式(II)の化合物
【化2】
式中、単結合または二重結合がR5'およびR5''との間に存在でき、
R4=それぞれ独立してH、F、Cl、CH3、
R5=CR42、
R5'およびR5''との間が単結合である場合、R5'=O、S、NH、NC1〜C2−アルキル、CR42、CHOH、CHOCH3、および、R5''=CR42、CHOH、CHOCH3、
R5'およびR5''との間が二重結合である場合、R5'=R5''=CR4、ならびに
R6、R6'=それぞれ独立してCHまたはCCH3
が好ましい。
【0047】
好ましい実施態様において、本発明の化合物は、アデニンまたはたとえばC8−置換およびN6−置換されたアデニンなどのアデニン類似体、7−デアザなどのデアザ変異体、8−アザなどのアザ変異体、またはたとえば7−デアザもしくは8−アザの組合せ、またはホルマイシンなどの炭素環類似体を含み、7−デアザ変異体はハロゲン、C1〜C6−アルキニル、C1〜C6−アルケニルまたはC1〜C6−アルキルによって7位が置換されてもよい。
【0048】
別の好ましい実施態様では、化合物は、リボースの代わりに、たとえば2−メトキシデオキシリボース、2’−フルオロデオキシリボース、ヘキシトール、アルトリトール、またはビシクロ、LNAおよびトリシクロ糖などの多環類似体を含むアデノシン類似体を含む。
【0049】
特に、(ジ)ホスフェート酸素はまた、式(I)の化合物において、等電子数的に、たとえばO-をS-またはBH3-によって、OをNH、NCH3またはCH2によって、および=Oを=Sによって置換することができる。本発明の式(I)の化合物におけるWは、好ましくはCONH2またはCOCH3である。
【0050】
式(II)の基において、R5は好ましくはCH2である。さらにR5'がCH2、CHOHおよびNHから選択されることが好ましい。特に好ましい実施態様では、R5'およびR5''は互いにCHOHである。なおさらに好ましい実施態様では、R5'がNHかつR5''がCH2である。R4=H、R5=CH2、R5'=R5''=CHOHおよびR6'=R6''=CHである式(II)の化合物が最も好ましい。
【0051】
最も好ましい実施態様において、安定化された補酵素は、文献に公知のカルバNAD化合物である(J.T. Slama, Biochemistry (1988), 27,183およびBiochemistry (1989), 28, 7688)。本発明により使用され得る他の安定化された補酵素は、国際公開第98/33936号、国際公開第01/49247号、国際公開第2007/012494号、米国特許第5,801,006号明細書、米国特許第11/460,336号明細書およびBlackburnらの文献(Chem. Comm. (1996),2765)に記載されており、その開示は本明細書に参照として明確に組み込まれる。
【0052】
本発明の範囲において記載される診断用テストエレメントは、酵素および安定化された補酵素を含む乾燥試薬層を含む任意のテストエレメントであり、分析物を含む試料によって湿潤され得る。酵素および安定化された補酵素に加えて、試薬層は任意には、分析物の定性的検出または定量的測定を促進する、たとえばメディエーター、光学的指示薬および適切な補助物質または/および添加剤などのさらなる試薬を含んでもよい。
【0053】
本発明の範囲において使用される用語「メディエーター(mediator)」は、分析物との反応により得られた還元された補酵素を酸化し、そしてその結果、補酵素の反応性を増大させる化合物を意味する。本発明により使用され得るメディエーターとしては、特には、たとえば[(4−ニトロソフェニル)イミノ]ジメタノール塩酸塩などのニトロソアニリン、たとえばフェナントレンキノン、フェナントロリンキノンもしくはベンゾ[h]キノリンキノンなどのキノン、たとえば1−(3−カルボキシプロポキシ)−5−エチル−フェナジニウム−トリフルオロメタンスルホネートなどのフェナジン、または/およびジアホラーゼ(EC1.6.99.2)がある。
【0054】
キノン、特には、1,10−フェナントロリンキノン、1,7−フェナントロリンキノン、4,7−フェナントロリンキノン、またはそれらのN−アルキル化またはN,N’−ジアルキル化塩がメディエーターとして好ましく使用される。これに関連して、N−メチル−1,10−フェナントロリニウム−5,6−キノン、N,N’−ジメチル−1,10−フェナントロリニウム−5,6−キノン、N−メチル−1,7−フェナントロリニウム−5,6−キノン、N,N’−ジメチル−1,7−フェナントロリニウム−5,6−キノン、N−メチル−4,7−フェナントロリニウム−5,6−キノンおよびN,N’−ジメチル−4,7−フェナントロリニウム−5,6−キノンがとりわけ有利であることが立証されており、ここで、N−アルキル化またはN,N’−ジアルキル化塩の場合、任意のアニオンがメディエーターのカウンターイオンとして作用し得る。好ましい実施態様においては、ハロゲン化物またはトリフルオロメタンスルホン酸塩がカウンターイオンとして使用される。
【0055】
還元可能であり、そして、たとえば色、蛍光、緩和、透過率、偏光または/および屈折率などの光学的性質において検出可能な変化を生じる任意の物質が、光学的指示薬として使用され得る。試料中の分析物の存在または/および量の測定は、肉眼で、または/および当業者には適切であることが明らかな光学的方法、特には測光法もしくは蛍光測定法、または、電気化学的方法を用いた検出装置により行うことができる。対応するヘテロポリブルーに還元される、ヘテロポリ酸、および特には2,18−リンモリブデン酸が、光学的指示薬として好ましく使用され得る。
【0056】
本発明の好ましい実施態様において、保管容器に加えて診断用テストエレメントはまた、本質的に乾燥剤を含まない。診断用テストエレメントに関して、用語「本質的に乾燥剤を含まない(essentially free of desiccants)」は、診断用テストエレメントが、診断用テストエレメントの試験化学の総重量に対して5重量%より小さい量の、好ましくは1重量%より小さい量の、より好ましくは0.1重量%より小さい量の、さらにより好ましくは0.01重量%より小さい量の、および最も好ましくは0.001重量%より小さい量の乾燥剤を含むことを意味する。本明細書に記載されるテストエレメントの製造および保管の範囲内における、乾燥剤の量を減少させることができる可能性または完全に乾燥剤を抜きにする可能性は、テストエレメントの製造および保管が簡略化され、その結果よりコスト効率よく行われ得るという点において有利である。
【0057】
さらに好ましい実施態様において、本発明によって使用される診断用テストエレメントは、酵素および安定化された補酵素に加えて、任意の材料から成るが、特には金属またはプラスティックから成り、そして好ましくは診断用テストエレメントに一体化されている、皮膚に小さな切開傷を形成するためのニードルエレメントを、追加で含む。本発明の意味における一体化されたニードルエレメントは、診断用テストエレメントに物理的に結合されているニードルエレメントとして理解される。一方、別個のニードルエレメントとは、診断用テストエレメントとは分離されて存在し、そして、診断用テストエレメントと物理的接続を有さないニードルエレメントとして定義される。
【0058】
本発明によれば、ニードルエレメントは、皮膚に小さな切開傷を形成して、たとえば血液などの、本明細書中で記載される診断用テストエレメントを使用して分析物について検査され得る体液を放出させるために使用される。この場合、放出された体液は、直接的にまたは間接的に、診断用テストエレメントの上に、たとえばサンプリングエレメントを使用することによって移動され得る。これに関連して、分析物を測定するために十分な量の体液を取り込むことが可能であり、かつ、取り込まれた体液の少なくとも一部の診断用テストエレメント上へのその後の移動を可能にする任意のエレメントが、サンプリングエレメントとして使用され得るが、キャピラリーが特に有利であることが立証されている。したがって、本発明の1つの変形例において、皮膚に小さな切開傷を形成するために使用されるニードルエレメントは、それによって放出された体液が取り込まれ、そして診断用テストエレメント上に移動されることが可能である、毛細管力を利用するキャピラリーチャンネルを追加で含む。
【0059】
本発明の保管容器は、必要であれば少なくとも50%の相対空気湿度で、または/および、少なくとも20℃の温度で、酵素活性の顕著な消失なしに比較的長期間にわたって上述の診断用テストエレメントを保管することを可能にする。これは、診断用テストエレメントが、たとえば少なくとも4週間、好ましくは少なくとも8週間、および特に好ましくは少なくとも12週間の期間のあいだ、少なくとも20℃、好ましくは少なくとも25℃、および特に好ましくは少なくとも30℃の温度での保管後に、酵素活性の初期値を基準として50%未満、好ましくは30%未満、および特に好ましくは20%未満しか酵素活性が低下しないことを意味している。
【0060】
酵素の活性を測定するための方法および試験は、先行技術において広く公知であり、そして、必要とあれば、当業者によって各要件に適合されることができるが、いずれの場合においても、保管の前および後の酵素活性を比較するため、同一の試験条件が使用される。
【0061】
本発明の保管容器によって保管される診断用テストエレメントは、光化学的または電気化学的に検出できる任意の生物学的または化学的物質を測定するために使用できる。分析物は、好ましくは、リンゴ酸、アルコール、アンモニウム、アスコルビン酸、コレステロール、システイン、グルコース、グルタチオン、グリセロール、尿素、3−ヒドロキシ酪酸塩、乳酸、5’−ヌクレオチダーゼ、ペプチド、ピルビン酸塩、サリチル酸塩およびトリグリセリドからなる群より選択されるが、特にはグルコースが好ましい。この関連において、分析物は、任意の供給源から得られうるが、好ましくは、これらに限定はされないが、全血、血漿、血清、リンパ液、胆汁、脳脊髄液、細胞外組織液、尿およびたとえば唾液または汗などの腺分泌物を含む体液中に存在する。全血、血漿、血清もしくは細胞外組織液である試料中の分析物の存在および/または量は、好ましくは、本明細書に記載される診断用テストエレメントによって測定される。
【0062】
分析物の定性的または/および定量的測定は、いかなる方法で行われてもよい。この目的のために、手動でまたは適切な方法を用いて評価または読み取りされ得る測定可能なシグナルを生成する、先行技術から公知のあらゆる酵素反応検出法が基本的に使用できる。本発明の範囲内において、好ましくは、たとえば吸光、蛍光、円偏光二色性(CD)、旋光分散(ORD)、屈折率などの測定を含む光学的検出法および電気化学的手法が使用される。分析物は特に好ましくは、光度計測的または蛍光計測的に、たとえば蛍光計測的に検出可能な補酵素の変化によって間接的に検出される。
【0063】
本発明のさらなる局面は、棒状または/および筒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップを含む診断用製品に関し、ここで、テストストリップはそれぞれ、酵素および安定化された補酵素を含む。好ましい変形例において、診断用製品は、棒状または/および筒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップからなり、ここで、テストストリップは上述のように定義される。テストストリップの好ましい実施態様に関して、本発明の保管容器中に保管される、本発明中に記載される診断用テストエレメントに関するリマークは参照として組み込まれる。テストストリップが棒状または/および筒状に配置される場合、乾燥剤または/およびシーリングエレメントの存在を省くことが可能である。
【0064】
さらなる局面では、本発明は、本発明の保管容器または本発明の診断用製品を含み、そして、分析物の定性的または/および定量的測定のために使用される分析用測定装置に関する。このような分析用測定装置の例としては、とりわけ、市販の製品であるAccu−Check(登録商標)Acitive、Accu−Check(登録商標)CompactおよびAccu−Check(登録商標)Mobile(全てRoche Company)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0065】
本発明は以下の図面および実施例により、さらに詳細に説明される。
【実施例】
【0066】
実施例1
カルバNAD(図1A)またはNADをグルコース特異的GlucDHに添加した。これらの処方を、それぞれPokalon(登録商標) foil(Lonza)に塗布し、乾燥後、温かく湿気のある条件下(32℃、相対空気湿度85%)で保管した。その後、反応速度および関数曲線(function curve)を定期的に測定した。cNAD/NAD分析および酵素の残存活性の測定を、各測定日に同時に行った。
【0067】
第1日目に測定されたNAD(図2A)およびcNAD(図2B)に関する反応速度曲線は類似しており、それらのグルコース依存性においてよく似た大きさを示す。しかしながら、反応速度曲線における明確な相違が5週間後に明らかとなる。NADに関する反応速度(図2C)がその変遷(dynamics)中顕著に減少するのに対し、cNADにより安定化された酵素の反応速度は殆ど変化しないままである(図2D)。
【0068】
図3に示されるように、空試験値(血液試料の塗布前の乾燥空試験値)にもまた明確な差異がある。NADに関する乾燥空試験値の上昇は蛍光粒子の形成に起因する(N.J. Oppenheimer, in the Pyridine Nucleotide Coenzymes, Academic Press New York, London 1982, editor J. Everese, B. Anderson, K. You, 第3章、56〜65頁)。驚くべきことに、これはcNADでは生じない。
【0069】
NADおよびcNADの存在下におけるグルコース脱水素酵素の異なる安定性もまた、図4および5の比較から明らかである。5週間後、cNADにより安定化された酵素に関する関数曲線は、依然として一連の先の測定値内に存在する(図5A)が、一方、NADにより処理した酵素に対する曲線(図4)は、酵素/補酵素の不適切な量を示す典型的なサインである、より高い濃度での低下が見られる。図5Bは、24週間の期間にわたるcNADにより安定化されたグルコース脱水素酵素に関する様々な関数曲線を示す。これに関連して、酵素の機能が全期間を通じて高いグルコース濃度で僅かに変化するのみであり、24週間後の値は5週間後に得られる値におおよそ相当することが明らかである。
【0070】
補酵素の構造と所定の期間にわたるその安定性との関係は図6から明らかである。これによると、24週間保管(32℃および相対空気湿度85%)後のグルコース検出試薬中のcNADの残存含量はなお、初期値の約80%であり、一方、NADにより安定化されたグルコース検出試薬中のNADの含有量は、5週間後にはすでに初期値の約35%に低下しており、そして、外挿によれば、約17週間後にはゼロに減少する。
【0071】
32℃および相対空気湿度85%で5週間後の、活性GlucDH酵素の残存活性の測定結果(図7A)は、全く驚くべきものである。NADにより安定化された酵素はここで極めて低い酵素活性(0.5%)しか示さず、一方、cNADにより安定化された酵素は、70%の残存活性をまだなお有している(いずれの場合においても、乾燥剤(TM)とともに冷蔵庫(KS)に保管したサンプルとの比較によって)。32℃および相対空気湿度85%で24週間後(図7B)、cNADにより安定化された場合、酵素の残存活性はまだなお約25%である。
【0072】
液相中でのグルコース脱水素酵素の保管の場合もまた、NADおよびcNADのあいだの相違を明確に示している(図8Aおよび8B)。50℃で95時間後、天然の補酵素NADの存在下でのグルコース脱水素酵素の残存活性は≫5%であり、一方、人工の補酵素cNADの存在下でのGlucDHの残存活性は75%である(図8A)。50℃で336時間保管後、NADで安定化された酵素の残存活性はもはや約1%のみである;cNADの存在下で保管された酵素では、依然として約70%の残存活性が観察された。対応するSDSゲルもまた、天然の補酵素NADの存在下でのGlucDHバンドにおける変化を示す:新しいバンドがより高い分子量に現れ、そして、30kDaバンドのシフトが見られる。
【0073】
概して、補因子の安定化が、同時に酵素を安定化するということ、そして、単に酵素のより良好な結合という協働的効果によるものではないということは非常に驚くべき結果である。補因子NADの分解は、酵素GlucDHの安定性に悪影響を及ぼし、その不活性化を促進すらする。天然のNADを人工の類似体で置換することにより、GlucDHはストレス条件(たとえば高温)下、補因子の存在下ですら保管可能となる。
【0074】
このようなシステムをもってすれば、顕著に改善された安定性の特性を有する血糖テストストリップを製造することが可能であり、そのため乾燥剤なしの提示が可能である。
【0075】
実施例2
cNADまたはNADがアルコール脱水素酵素を含む検出溶液に添加された。これらの混合物を35℃で保管した。ついで酵素の安定性を一定の間隔で調べ、そして、酵素の残存活性を測定した。
【0076】
液相中での保管は、再び、NADまたはcNADの存在下における保管のあいだで違いを示した(図9)。天然の補酵素NADの存在下でのアルコール脱水素酵素の残存活性は、35℃で65時間後、約6%であり、一方、人工の補酵素cNADの存在下での酵素の残存活性は、まだなお約60%である。
【0077】
実施例3
図10Aは、テープマガジンの形状である、分析用測定装置に挿入可能な本発明の保管容器の例示的な実施態様の断面図を示す。保管容器90は、その中に供給用スプール100および巻き取りスプール101が設置されているハウジング91を備える。保管容器は追加で、偏向チップ(deflection tip)20を外端を越えて含み、そこではテストテープ30が動く。テープマガジンは、偏向チップの内部側の端部に、光学的手段を収容するための第一の開口部93を備える。
【0078】
示されている実施態様において、テープマガジンは追加で、テープマガジン内を通るテストテープをガイドするためのローラーまたはピン92およびスプール駆動部を受容するための第二の開口部94を備える。回転軸95を有する巻き取りスプールは、この目的のためにその中心に開口部を、そして、スプール駆動部を受容するために係合エレメントを備える。
【0079】
図10Bは、その中に図10Aで記載されたテープマガジン90が挿入される、分析用測定装置10の断面図を示す。分析用測定装置は、テープマガジンの巻き取りスプール101内に係合し、そして、たとえばモーターによって駆動され得るスプール駆動部102を備える。これに関連して、スプール駆動部は、テープマガジンの偏向チップ20における試料塗布位置または測定位置内へのテストテープ30の移動の制御および調整を可能にするが、分析物の試料によって湿潤されたテストテープの測定はまた、必要に応じて、異なる位置で、たとえばテープマガジンの内部で行われてもよい。
【0080】
分析用測定装置は、テープマガジンが分析用測定装置に挿入されるや否や、第一の開口部93内に受容される光学的手段99を追加に含む。分析物の光学的測定を行うことを目的とする場合、分析用測定装置の光学システムは、偏向チップ20に連結されていなければならず、これはたとえば、光透過性の偏向チップを使用することによって、または、さもなければ光非透過性である偏向チップ内に光ファイバーを導入することによって、達成され得る。分析用測定装置の光学システムとしては、たとえば、光源および検出器が連結されている光ファイバーの使用が想定され得る。
【0081】
図10Bは、偏向チップおよび供給用スプールのあいだに配置されている、テープマガジン内のチャネル96を示しており、その中でテストテープは、テープマガジンの保管領域97から偏向チップ20へと前もってガイドされており、偏向チップにおいて分析物の試料と接触された後、テープマガジンの巻き取り領域98内に戻ってくる。この場合、テストテープの個々のテスト領域のあいだの距離は、必要に応じて湿気またはその他の外的影響の防止を確実にするために、たとえば、第二のテスト領域30”がまだテープマガジン内に配置されているのに対し、第一のテスト領域30’は、偏向チップ20における試料塗布位置または測定位置に位置するように選択され得る。
【0082】
実施例4
図11は、分析用測定装置114内に挿入可能である、ディスク状の回転マガジンの形状である本発明の保管容器の例示的な実施態様の断面図を示す。この場合、分析用測定装置114は、それを通じてサンプリング動作が行われ得るような、フィンガー開口部116を有するハウジング112を備える。
【0083】
保管容器110は、互いに本質的に対称であるようにデザインされた、2分の1のマガジン172、174の形状である2つのサブマガジンを備える。特には、保管容器110は、円形の中央開口部124および互いに離れて平行にそれぞれ配置されかつ保管容器面まで平行に伸びる2つの装置面118、120を備えたハウジング122を含む。複数のチャンバ126が、ハウジング122内の2つの装置面118、120のそれぞれに収容され、ここで、第二の装置面120のチャンバ126は、第一の装置面118のチャンバ126の下方で、2分の1ユニット分それぞれ回転されている。したがって、保管容器110は、相対して取り付けられ、かつ、互いに2分の1ユニット分、すなわち、チャンバ126の離間角度の2分の1分それぞれ回転されている、2つの同一な半分の面から構成され得る。
【0084】
分析用装置128は、チャンバ126のそれぞれに収容され、いくつかの部分装置130からなる。第一の部分装置130は、ランセット134およびランセット134から半径方向内側へと伸びるキャピラリーエレメント136を含む、チャンバ126内に半径方向に取り付けられたマイクロサンプラー132を含む。マイクロサンプラー132はそれぞれ、中央開口部124の方向を向いたそれらの端部において連結エレメント138を備えるが、これは、中央開口部124で、分析用測定装置114のアクチュエーター(図11には示されていない)がアクチュエーターロッドの鉤状のプッシュロッドによってその中に係合し得る、小穴(eye)の形状にデザインされ得る。分析用装置128は、第二の部分装置130として、テスト領域144の形状で試験化学142を含む診断用テストエレメント140を備え、そして、ハウジング122内に一体化され得る。
【0085】
保管容器110は、分析用装置128が2つの装置面118、120において互いにずれるよう配置され得る。したがって、2つの装置面118、120のうちの1つのテストエレメントウィンドウ168は、いずれの場合においても、それぞれ他の装置面118、120の2つのチャンバ126のあいだに位置している。このことは、テスト領域144の背面が、その塗布位置において、分析用測定装置によって、それぞれ別の装置面118,120の隣接するチャンバ126に邪魔されることなく観測され得ることを保障する。このずらされたチャンバ126の配置は、したがって、塗布位置において、それぞれのアクティブな診断用試験エレメント140へ両側からアクセスすることを可能にする。保管容器110内に残存している分析装置128は一般的に、この工程にはさらされず、それらの適切なシーリングにより使用されるまで無菌状態のまま保持される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素および安定化された補酵素を含む少なくとも1つの診断用テストエレメントを保管するための保管容器、そのような診断用テストエレメントを含む診断用製品、およびそのような保管容器または診断用製品を含む分析用測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
診断用テストエレメントは、臨床的に意義のある分析方法の重要な構成要素である。このため、たとえば、直接的にまたは間接的に、分析物に特異的である酵素を使用して測定され得る、たとえば代謝物や基質などの分析物の測定に重点が置かれている。この場合、分析物は、酵素−補酵素複合体を使用して変換され、ついで定量される。これは、測定されるべき分析物を適切な酵素、補酵素および任意にはメディエーターと接触させることを伴い、それによって補酵素は、酵素反応によってたとえば酸化または還元など物理化学的に変化する。メディエーターが追加で使用される場合、メディエーターは通常、還元された補酵素から分析物の変換のあいだに放出された電子を光学インジケーターまたは電極の導電性部位上に伝達し、これによりこのプロセスがたとえば光度計測的または蛍光計測的に検出され得る。較正により、測定された値と測定される分析物の濃度とのあいだの直接的な関係が提供される。
【0003】
診断用テストエレメントを提供する際の重要な基準は、長期間にわたるそれらの安定性である。たとえば血糖の測定に使用されている、先行技術において既知のテストエレメントは、補酵素およびメディエーターの機能が通常低下するため、一般的に、湿気および熱に対して非常に感受性が高い。たとえばエンドユーザー自身により実施される試験の場合などの特定の適用においては、誤りであるが気づかれることのない間違った測定システムの保管によって、使用者によって認識されることがほぼ不可能な、かつ、それぞれの疾患の誤った処置につながるかもしれない、誤った結果が生じる可能性がある。
【0004】
したがって、従来の診断用テストエレメントの製造および保管には、診断用テストエレメントの試験化学と特に湿気との接触を防ぐ特別な保護手段が必要である。これはたとえば、シリカゲルもしくはモレキュラーシーブなどの乾燥剤またはシーリングエレメントを、テストエレメントを含む保管容器に導入することによって達成され得る。
【0005】
その結果このようなテストエレメントは、完璧な機能性を保障するために保管容器から取り出して数分以内に使用しなければならないという不利な点を有している。テストエレメントを保管容器または当初の包装から取り出した後に分析用測定装置内に挿入することを目的としている場合、テストエレメントは、完全に使い切るまでさらに乾燥した状態で保存されなければならず、このことは精巧な装置を必要とし、そして、テストエレメントおよび分析用測定装置のデザインを大幅に制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の根底にある目的は、少なくとも部分的には先行技術の不利を除外するような、診断用テストエレメントのための保管容器を提供することであった。特には、診断用テストエレメントを保管容器の中で、精巧な装置なしに長期間にわたって湿度または/および熱の存在下で、それらによって酵素活性の著しい損失を受けることなく保管することを可能にすべきものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、本発明にもとづき、酵素および安定化された補酵素を含む少なくとも1つの診断用テストエレメントを含む保管容器であって、本質的に乾燥剤を含まず、または/および、周囲から保管容器内への湿気の侵入を実質的に防ぐシーリングエレメントを含まない保管容器を用いることによって達成された。
【0008】
もう一つの実施態様において上述の目的は、酵素および安定化された補酵素を含む少なくとも1つの診断用テストエレメントを含む保管容器であって、テストエレメントまたは複数のテストエレメントの未使用のテスト領域と使用済みのテスト領域との間で湿気が交換され得る保管容器を用いることによって達成される。
【発明の効果】
【0009】
驚くべきことに、本発明の範囲において酵素および安定化された補酵素をそれらの化学コーティング中に含む診断用テストエレメントは、高い相対空気湿度でまたは/および高温でさえ、数週間または数ヶ月間にわたって酵素活性の顕著な低下に付されることがなく、したがってテストエレメントを含む保管容器内への湿気の侵入を防ぐために必要とされる装置の複雑性を低減することができることが見出された。このことは同時に、ユーザーによる、より簡便かつより確実な診断用テストエレメントの取り扱いを可能にする。
【0010】
この結果は、酵素は天然の補酵素の存在下では数時間という短期間では安定性の増加を示すが(Bertoldiら、Biochem. J. (2005), 389, 885;van den Heuvelら、J. Biol. Chem. (2005), 280, 32115;およびPanら、J. Chin. Biochem. Soc. (1974), 3, 1)、より長期間にわたった場合には安定性が低下することが知られている(Nutrition Reviews (1978), 36, 251)ため驚くべきことである。本発明で認められた、酵素および安定化された補酵素を含む診断用テストエレメントの湿気または/および熱に対する長期間にわたる安定性は、安定化された補酵素が、対応する天然の補酵素よりも酵素とのより低い結合定数を有しているだけに一層驚くべきことである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】安定な補酵素カルバNAD(cNAD)の図である。
【図2A】NADの存在下およびcNADの存在下での、保管前後のグルコース脱水素酵素の酵素反応速度の結果の図である。NAD存在下1日後のGlucDHの反応速度。
【図2B】NADの存在下およびcNADの存在下での、保管前後のグルコース脱水素酵素の酵素反応速度の結果の図である。cNAD存在下1日後のGlucDHの反応速度。
【図2C】NADの存在下およびcNADの存在下での、保管前後のグルコース脱水素酵素の酵素反応速度の結果の図である。NAD存在下、32℃および85%の相対空気湿度で5週間保管した後のGlucDHの反応速度。
【図2D】NADの存在下およびcNADの存在下での、保管前後のグルコース脱水素酵素の酵素反応速度の結果の図である。cNAD存在下、32℃および85%の相対空気湿度で5週間保管した後のGlucDHの反応速度。
【図3】32℃および空気湿度85%で5週間までの期間のあいだの、NADの存在下におけるグルコース脱水素酵素の、または、cNADの存在下におけるGlucDHの空試験値の比較。
【図4】32℃および空気湿度85%でNADの存在下でのグルコース脱水素酵素の保管後のグルコース脱水素酵素の様々な関数曲線の図である。保管期間は1日と5週間とのあいだで変化された。
【図5A】32℃および空気湿度85%でcNADの存在下でのグルコース脱水素酵素の保管後のグルコース脱水素酵素の様々な関数曲線の図である。保管期間は1日と5週間とのあいだで変化された。
【図5B】32℃および空気湿度85%でcNADの存在下でのグルコース脱水素酵素の保管後のグルコース脱水素酵素の様々な関数曲線の図である。保管期間は1日と24週間とのあいだで変化された。
【図6】32℃および空気湿度85%で24週間、NADまたはcNADの存在下でのグルコース脱水素酵素の保管後のNADおよびcNADの残存含量の図である。
【図7A】32℃および空気湿度85%で5週間、NADまたはcNADの存在下でのグルコース脱水素酵素の保管後のGlucDH活性の図である。
【図7B】32℃および空気湿度85%で24週間、NADまたはcNADの存在下でのグルコース脱水素酵素の保管後のGlucDH活性の図である。
【図8A】液相中50℃で4日間にわたる、NADまたはcNADの存在下でのグルコース脱水素酵素の安定性の図である。テスト条件:GlucDH 10mg/mL;NADまたはcNAD 12mg/mL、緩衝液:0.1M トリス、1.2M NaCl、pH8.5;温度50℃。
【図8B】液相中50℃で14日間にわたる、NADまたはcNADの存在下でのグルコース脱水素酵素の安定性の図である。テスト条件:GlucDH 10mg/mL;NADまたはcNAD 12mg/mL、緩衝液:0.1M トリス、1.2M NaCl、pH8.5;温度50℃。
【図9】液相中35℃で65時間にわたる、NADまたはcNADの存在下での酵母由来のアルコール脱水素酵素の安定性の図である。テスト条件:ADH 5mg/mL;NADまたはcNAD 50mg/mL;緩衝液:75mM Na4P2O7、グリシン、pH9.0;温度35℃。
【図10A】その中でテストテープが診断用テストエレメントとして使用される2つのチャンバを備える、テープマガジンの形状である本発明の保管容器の図である。
【図10B】前記保管容器を含む分析用測定装置の図である。
【図11】複数の診断用テストエレメントを収容できるディスク状の回転マガジンの形状である本発明の保管容器の図である。
【図12】診断用テストエレメントとして複数の個別のテストストリップを含み、かつ、乾燥剤で満たされている外側の包装内に収容され得るTicTac(登録商標)ディスペンサーの形状である本発明の保管容器の図である。
【図13】診断用テストエレメントとして個別のテストストリップを含むランシングエイドの形状である本発明の保管容器の図である。
【図14A】棒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップを含む、乾燥剤を含むプラスティックボックスの形状である本発明の保管容器の図である。
【図14B】棒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップを含む、アルミニウム缶の形状である本発明の保管容器の図である。
【図14C】棒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップを含む、プラスティックバッグの形状である本発明の保管容器の図である。
【図15A】筒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップを含む、アルミニウム缶の形状である本発明の保管容器の図である。
【図15B】筒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップを含む、TicTac(登録商標)ディスペンサーの形状である本発明の保管容器の図である。
【図15C】筒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップを含む、プラスティックバッグの形状である本発明の保管容器の図である。
【図16】棒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップを含む、一体型保管容器を備えた本発明の分析用測定装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願の範囲内において使用される場合、用語「保管容器(storage container)」は、分析用測定装置内に挿入することができる容器、そして、容器中に保管された、1つのテスト領域またはいくつかのテスト領域を含み得る少なくとも1つの診断用テストエレメントの1つの個別のテスト領域が、分析用測定装置と常に相互作用し合えるようにデザインされている容器を意味する。診断用テストエレメントのテスト領域と分析用測定装置との間の相互作用は、原則としてどのような方法で行われてもよいが、特にはたとえば分析物の試料で湿潤されたテスト領域を適切な波長をもつ光で照射し、続いてテスト領域から放出される発光を分析用測定装置を用いて検出することによるなど、光学的手法で行われ得る。
【0013】
分析用測定装置を用いた分析物の定性的または/および定量的測定を可能にするために、本発明の保管容器は好ましくは、保管容器中に保管されている診断用テストエレメントのテスト領域が分析物の試料と接触され得る試料塗布位置、分析物が診断用テストエレメントのテスト領域と分析用測定装置との相互作用によって測定され得る測定位置ならびに試料との接触およびそれに続く分析物の測定前または/および後に診断用テストエレメントのテスト領域が保管され得る少なくとも1つの保管位置を含む。
【0014】
本明細書中に記載される保管容器としては基本的に、それらが少なくとも1つの診断用テストエレメントを収容可能である限り、当業者にとってよく知られており、本発明の目的に適していると思われる任意の物理的形状、特にはテープマガジンまたはテストストリップマガジンを含む。保管容器はたとえば、円形の、丸みを帯びたまたは角のある形状であってもよく、特には、円形のまたは丸みを帯びた保管容器によって高い気密性が達成され得る。しかしながら、本発明に基づいて使用される診断用テストエレメントは、非常に安定した試験化学を有しているため、極度に高い気密性は必ずしも必要であるとは限らず、したがって、保管容器として角のあるデザインの実施が容易に可能である。
【0015】
本発明の意味における保管容器の具体的な例としては、特には、複数の個別の診断用テストエレメント、たとえば、互いに連結しているが個々に分離が可能であり、かつ、輸送を目的として適切な外側の包装内に、本発明の保管容器とともにさらに収容され得る複数の診断用テストエレメントを好ましくは含む、パウチ、箱、缶、単純なディスペンサーおよびバッグが挙げられる。本発明において使用される「複数(plurality)」という用語は、1より大きい任意の数のことを指す。
【0016】
分析物の測定を阻害し得る塵粒子または他の粒子の外環境から内部への侵入を防ぐために、本発明の保管容器は、直径100μm以下、好ましい変形例においては特には20μm以下の侵入口しか有さない。本発明において使用される「侵入口(entry opening)」という用語は、それを通して無機または/および有機材料の粒子が保管容器の外環境からその内部へと入り込むことができる任意の開口部、たとえば保管容器を製造するために使用される材料の細孔などを包含する。
【0017】
本発明の保管容器は、診断用テストエレメントを保管するという目的のために当業者に適切と思われる任意の材料から構成され得る。しかしながら、保管容器は少なくとも部分的には、すなわち、部分的または全体的に、任意には追加で添加剤たとえば染料、平滑物質、劣化防止剤または/およびUV阻害剤などを含んでもよい水蒸気に対して透過性のある少なくとも1つの材料から構成される。本発明によれば、食用紙、被覆箔、木材、プラスティック、紙、厚紙、パーチメント(parchment)、プレスボードまたは合板が水蒸気に対して透過性のある材料として使用可能であり、このうち、プラスティックが好ましい。水蒸気に対して透過性のある材料として、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなる群より選択されるプラスティックを含む保管容器が本発明の範囲内で特に好ましく用いられる。
【0018】
保管容器としてテープマガジンが使用される場合、テープマガジンは、ただ一つの診断用テストエレメントを備えるが、通常2以上のテスト領域、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも25個、および最も好ましくは少なくとも50個の個別のテスト領域を含む診断用テストエレメントを好ましくは含む。テストストリップマガジンが保管容器として使用される場合には、テストストリップマガジンは、少なくとも3個、より好ましくは少なくとも5個、および最も好ましくは少なくとも7個の診断用テストエレメントを好ましくは含み、この場合、診断用テストエレメントは通常、2以上のテスト領域を有するが、必要に応じて、ただ一つのテスト領域のみを有していてもよい。
【0019】
本発明の目的のため使用され得る保管容器は、少なくとも1つの診断用テストエレメントを保管するための1またはそれ以上の空間的に隔てられた領域を含んでいてもよい。診断用テストエレメントが分析物を含む試料と接触され得る2以上のテスト領域を含んでいる場合、本発明の保管容器は、その中に診断用テストエレメントのテスト領域が保管され得る、互いに空間的に隔てられている1つまたは2つの領域、たとえば1つまたは2つのチャンバなどを好ましくは含む。
【0020】
保管容器が、診断用テストエレメントを保存するための、互いに空間的に隔てられている2つの領域を含む場合、1つの領域はたとえば診断用テストエレメントの未使用のテスト領域を保管するために使用されてもよく、一方、第二の領域は診断用テストエレメントの使用済みのテスト領域を保管するために提供される。これにより、診断用テストエレメントの未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域は、保管容器内で互いに直接には接触しあえない。また、それぞれの診断用テストエレメントを使用の前または後でそれ自身の領域内に、たとえばそれ自身のチャンバ内などに保管することも可能である。
【0021】
2以上のテスト領域を有する診断用テストエレメントを保管するために、1つの領域、たとえばただ一つのチャンバなどしか含まない保管容器の場合、診断用テストエレメントの未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域はその1つの領域内に保管される。第二のチャンバ、または、たとえば隔壁などの保管容器内での未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域のあいだの接触を防ぐ物理的手段なしで済むことにより、保管容器の製造およびテストエレメントの保管を著しく簡略化することが可能となるが、これは処理工程をより経済的にするものである。本発明において使用される用語「未使用のテスト領域(unused test area)」は、テスト領域と測定される分析物の試料とが接触される前の、本発明で記載される診断用テストエレメントのテスト領域を指し;一方、「使用済みのテスト領域(used test area)」という用語は、テスト領域と測定される分析物の試料とが接触された後のテスト領域を指すために使用される。
【0022】
好ましい実施態様において、本発明の保管容器はテープマガジンまたはテストストリップマガジンであって、このうち、テストストリップマガジンが好ましい。テストテープの形で存在する診断用テストエレメントの未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域の別々の保管のために2つのチャンバを有するテープマガジンは、例えば、独国特許出願公開第10 2005 013 685号明細書、欧州特許出願公開1 739 432号明細書および国際公開公報第2004/047642号に記載されている。本発明の意味におけるテストストリップマガジンは、一般的に当業者に公知であり、たとえば欧州特許出願公開0 951 939号明細書、欧州特許出願公開1 022 565号明細書、欧州特許出願公開1 736 772号明細書、国際公開公報第2005/104948号およびPCT/EP2010/000865に記載されているような、ブリスターマガジン(blister magazines)、レポレロマガジン(leporello magazines)、ディスクマガジン(disk magazines)、スタックマガジン(stack magazines)、ドラムマガジン(drum magazines)およびターニングマガジン(turning magazines)を特には含む。上述の刊行物の開示、とりわけ保管容器の形状に関する開示は、本明細書に参照として明確に組み込まれる。
【0023】
第一の実施態様において、本発明の保管容器は、本質的に乾燥剤を含まない1つの変形例にある。これに関連して、用語「本質的に乾燥剤を含まない(essentially free of desiccants)」とは、保管容器が、保管容器の空重量に対して5重量%より小さい量の、好ましくは1重量%より小さい量の、より好ましくは0.1重量%より小さい量の、さらにより好ましくは0.01重量%より小さい量の、および最も好ましくは0.001重量%より小さい量の乾燥剤を含むことを意味する。本明細書に記載される診断用テストエレメントの製造および保管の範囲内における、乾燥剤の量を著しく減少させることができる可能性または乾燥剤を完全に省略することができる可能性は、テストエレメントの製造および保管を簡略化することができ、そしてその結果、より経済的であるという点において有利である。
【0024】
本発明の保管容器が完全に乾燥剤なしではない、すなわち、上述した量のうちの1つの量で乾燥剤を含む場合、乾燥剤は、保管容器内へ別個に導入されてもよく、または/および、保管容器のハウジング内へ別個に一体化されてもよい。保管容器がそのハウジング内に一体化された乾燥剤を含む場合、これは、乾燥剤が保管容器の固体ハウジング内に組み込まれていることを意味しており、これは保管容器の少なくとも1つの内表面が保管容器の内部からの湿気を吸収することを可能にする。このような保管容器は、たとえば、ハウジングを製造し、そして続いてプラスティック組成物を冷却/硬化するために使用される型の中に乾燥剤を注入することにより製造され得る。
【0025】
第一の実施態様の二番目の変形例においては、本発明の保管容器は、周囲から保管容器内への湿気の侵入を実質的に防ぐシーリングエレメントを含まない。用語「周囲から保管容器内への湿気の侵入を実質的に防ぐシーリングエレメント(sealing elements which substantially prevent the penetration of moisture from the environment into the storage container)」とは、少なくとも4週間、好ましくは少なくとも8週間、および特に好ましくは少なくとも12週間の期間にわたって、シーリングエレメントが、周囲から保管容器内への湿気の侵入を完全に防ぐこと、または、たとえば補酵素および該当する場合にはメディエーターの不活性化などに起因する、診断用テストエレメントの試験化学の機能への障害をもたらすことがない量の湿気の侵入しか許さないことを意味する。
【0026】
本発明の意味におけるシーリングエレメントの例としては、特にはシールおよび密封シーリングが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。本明細書に記載される、周囲から保管容器内への湿気の侵入を許すが、本発明の好ましい実施態様で使用可能であるシーリングエレメントは、したがって、主として保管容器中に保管された診断用テストエレメントを塵粒子または物理的損傷から保護するために使用され、そして、たとえば紙、パーチメントまたは当業者にとって公知の他の材料から作られてもよい。したがって、診断用テストエレメントをその中に含む保管容器を密封するために通常使用される安定な金属箔は、効率的かつコスト削減のための方法において避けられ得る。
【0027】
周囲から保管容器内への湿気の侵入を実質的に防ぐシーリングエレメントの省略は、本明細書に記載されるテストエレメントの製造および保管を著しく簡略化および効率的にし得る。したがって、機械的構成要素の省略は、一方では、従来の保管容器と比較して組み立て工数の顕著な減少を導く。他方で、シーリングエレメントの省略はまた、たとえばシーリングエレメントを有するテープマガジンの場合に、テストテープの形状で存在する診断用テストエレメントの未使用のテスト領域をテープマガジン内の保管位置からテープマガジンン外側の試料塗布位置または測定位置へと移動させるために、シーリングエレメントにより生じる機械的抵抗に起因して必要とされる引張力を顕著に減少させる。
【0028】
この点に関して、本発明の保管容器の好ましい実施態様においては、(i)診断用テストエレメントの未使用のテスト領域を保管容器内の保管位置から保管容器外側の試料塗布位置または/および測定位置へと移動させるために必要とされる最小または/および最大の引張力、または/および、(ii)診断用テストエレメントの使用済みテスト領域を保管容器外側の試料塗布位置または/および測定位置から保管容器内の保管位置へと移動させるために必要とされる最小または/および最大の引張力が、シーリングエレメントを備える対応する保管容器と比較して減少する。この場合、最小または/および最大の引張力の減少は通常、シーリングエレメントを備える対応する保管容器において必要とされる最小または/および最大の引張力に対して、少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、および最も好ましくは少なくとも50%である。
【0029】
本発明の保管容器中の診断用テストエレメントのテスト領域をさらに移動させるために必要とされる最小または/および最大の引張力の減少は、たとえばテープマガジンの場合にテストテープのさらなる移動のために必要とされるエネルギーを減少させることができ、これは、保管容器を含む分析用測定装置のエネルギー必要量の総量を減少させることにつながり、そしてその結果、たとえば、より小さなバッテリーまたはより少ない数のバッテリーの使用を可能にする。これは、結果として、より小さな構成サイズをもたらし、そのため、保管容器の全体のサイズが著しく減少され、そしてその結果、保管容器を製造するために必要とされる材料が減少され得る。
【0030】
第二の実施態様において、本発明の保管容器は、個々の診断用テストエレメントまたはいくつかの診断用テストエレメントの、未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域のあいだの湿気の交換を可能にする。診断用テストエレメントは好ましくは、たとえばテストテープなどの、分析物を測定するための一以上のテスト領域を含むような保管容器中で使用される。
【0031】
第二の実施態様による、本発明に記載される診断用テストエレメントの未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域の保管は、未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域のあいだで湿気の交換が可能であれば、いかなる方法によって行われてもよい。したがって、未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域はたとえば、一またはそれ以上の保管領域および特には1つ、2つまたは3つ以上のチャンバを含む保管容器内に保管されてもよい。
【0032】
第二の実施態様における保管容器中では、診断用テストエレメントの未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域は、好ましくは、ただ一つのチャンバ内または湿気透過性の隔壁によって互いに隔てられている2つのチャンバ内に保管される。未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域がただ一つのチャンバ内に収容される場合、未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域は好ましくは、未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域のあいだで湿気は交換され得るが、未使用のテスト領域の汚染を避けるために診断用テストエレメントの未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域のあいだで直接的な接触はないような方法で、1つのチャンバ内に配置される。保管容器はその簡略化されたデザインにより、小型化することができ、より簡略な方法で製造され、そして、よりコスト効率よく提供され得る。
【0033】
本発明によれば、本明細書に記載される保管容器はまた、上述した第一および第二の実施態様の組み合わせを含んでもよい。したがって、本発明のさらなる変形例は、酵素および安定化された補酵素を含む少なくとも1つの診断用テストエレメントを含む保管容器を対象とするものであり、ここで保管容器は、(a)本質的に乾燥剤なしであり、(b)周囲から保管容器内への湿気の侵入を実質的に防ぐシーリングエレメントを含まず、または/および、(c)テストエレメントまたは複数のテストエレメントの未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域のあいだで湿気の交換を可能にする。
【0034】
さらに、本明細書に記載される保管容器は、しかしながらまた、周囲から保管容器内への粒子状物質の侵入を防ぐが、その一方で、湿気の侵入は許す物理的手段を含んでもよい。この意味において、たとえばテストテープなどのように2以上のテスト領域を有する診断用テストエレメントの場合において、保管容器内でテスト領域のさらなる移動は、たとえば上述したような対応する物理的手段を備えていない保管容器と比較して、保管容器内でテスト領域のさらなる移動のために必要とされる最小または/および最大の引張力が増加することにより妨げられないことが好ましい。
【0035】
本明細書に記載される保管容器は、少なくとも1つの診断用テストエレメントを含むことが必須である。本発明の範囲において使用可能な診断用テストエレメントは、基本的に当業者に公知であって、分析物を測定するために適切であり、そして、本発明の保管容器内に保管することの可能な任意のテストエレメントを含む。これに関連して、用語「保管(storage)」は、診断用テストエレメントが、好ましくは少なくとも2週間の期間、より好ましくは少なくとも3ヶ月の期間、さらにより好ましくは少なくとも6ヶ月の期間、および最も好ましくは少なくとも12ヶ月の期間、保管容器内に収容されていることを意味し、ここで保管は、好ましくは大気圧下、室温(25℃)および少なくとも50%の相対空気湿度で行われる。
【0036】
診断用テストエレメントは、本発明の範囲内で好ましくは使用され、分析物は水溶液または非水溶液の形状で診断用テストエレメント上に塗布され得る。本発明の好ましい実施態様において、テストエレメントは、この場合、テストテープ、テストディスク、テストパッド、テストストリップまたは国際公報第2005/084530号明細書で記載されている診断素子であり、本明細書に参照として明確に組み込まれる。本発明で記載される保管容器がテストストリップマガジンとして設計されている場合、それらは特に好ましい変形例において、棒状または/および筒状に配置された、相互に連結されておりかつ個々に分離可能な複数のテストストリップを含む。必要であれば、診断用テストエレメントは、それぞれの場合に使用されたテストエレメントのその後の同定を必要に応じて可能にするように、たとえばバーコードなどのマークを追加として含んでもよい。
【0037】
本明細書中で使用される用語「テストテープ(test tape)」は、通常2以上のテスト領域、好ましくは少なくとも10個の個別のテスト領域、より好ましくは少なくとも25個の個別のテスト領域、および最も好ましくは少なくとも50個の個別のテスト領域を含むテープ様のテストエレメントを意味する。ある実施態様では、個別のテスト領域は、相互に数ミリメーターから数センチメーター隔てて、たとえば2.5cmより小さな距離を隔ててそれぞれ配置されており、テストテープは任意には、連続したテスト領域のあいだに、テープの移動のあいだに動いた距離を検出するための、または/および、較正のための、通常試験化学が被覆されていないマーカー領域を含んでもよい。テープの移動のあいだに動いた距離を検出するための連続するテスト領域のあいだのマーカー領域を備えるテストテープは、たとえば欧州特許出願公開第1 739 432号明細書に記載されており、その開示は本明細書に参照として明確に組み込まれる。
【0038】
上述のテストテープは、好ましくは、少なくとも2つのテスト領域が直接的に互いに隣り合って、すなわち、2つのテスト領域のあいだのギャップなしに配置されている連続的なテストテープである。テスト領域のこのような配置は、より多くの数のテスト領域をテストテープ上に位置づけることが可能であり、そしてさらには個々のテスト領域のあいだで湿気が交換されることを可能にするという利点を有する。このことは、テストテープの製造を簡略化し、そして、コスト効率をより良くする。
【0039】
本発明の意味における連続したテストテープの場合、それはたとえば、第一番目および最後のテスト領域を除いて全てのテスト領域を、個々のテスト領域の両側が別のテスト領域に直接隣接するような方法で配置することが可能である。あるいは、連続したテストテープの場合、数個のテスト領域、たとえば5個またはそれ以上のテスト領域を互いに直接隣り合って配置することもまた可能であり、ここで、連続したテスト領域のグループは順番に、相互に数ミリメーターから数センチメーター隔てて、たとえば2.5cmより小さな距離を隔てて配置される。この場合、テストテープはまた、任意には、連続したテスト領域のグループのあいだに、テープの移動のあいだに動いた距離を検出するための、または/および、較正のためのマーカー領域を含んでもよい。
【0040】
本明細書で使用される用語「テストディスク(test disk)」とは、1またはそれ以上の個々のテスト領域、たとえば少なくとも10個のテスト領域を含むディスク状のテストエレメントを意味する。ある実施態様において、テストディスクは、分析物の試料がその上に塗布され得る試験化学の薄層、たとえば約20μmの厚さを有する層で被覆されており、それによって、大なり小なりのサイズのテストディスクの領域が試料の量に依存して試料によって湿潤され、そして、分析物の測定に使用され得る。試験化学層を通過した湿気によって部分的または全体的に湿潤され得る、テストディスクの非湿潤領域は、分析物のさらなる測定のためにのちに使用可能である。
【0041】
診断用テストエレメントにおいて使用される酵素は、それぞれの適用の目的のために当業者に適切と思われる任意の酵素であり、たとえば脱水素酵素であってもよい。酵素は好ましくは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD/NADH)依存性、または、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP/NADPH)依存性の脱水素酵素であって、特には、アルコール脱水素酵素(EC1.1.1.1;EC1.1.1.2)、L−アミノ酸脱水素酵素(EC1.4.1.5)、グルコース脱水素酵素(EC1.1.1.47)、グルコース−6−リン酸脱水素酵素(EC1.1.1.49)、グリセロール脱水素酵素(EC1.1.1.6)、3−ヒドロキシ酪酸脱水素酵素(EC1.1.1.30)、乳酸脱水素酵素(EC1.1.1.27、EC1.1.1.28)、リンゴ酸脱水素酵素(EC1.1.1.37)およびソルビトール脱水素酵素より選択される脱水素酵素である。最も好ましい実施態様において、酵素は、グルコース脱水素酵素(EC1.1.1.47)またはグルコース−6−リン酸脱水素酵素(EC1.1.1.49)である。
【0042】
本発明の意味における安定化された補酵素は、天然の補酵素と比較して化学的に修飾されており、湿気、特に0℃から50℃までの範囲の温度、特にpH4からpH10までの範囲の酸および塩基、または/および、たとえばアルコールもしくはアミンなどの求核試薬に対し、天然の補酵素と比較してより高い安定性を大気圧下で有しており、この結果、同一の環境条件下で天然の補酵素よりもより長期間にわたりその効果を発揮することができる補酵素である。安定化された補酵素は、好ましくは、天然の補酵素と比較してより高い加水分解安定性を有しており、試験条件下において完全に耐加水分解性であることが特に好ましい。天然の補酵素と比較して、安定化された補酵素は、酵素に対して低下した結合定数を有していてもよく、たとえば2倍またはそれ以上に低下した結合定数を有していてもよい。
【0043】
本発明の意味における安定化された補酵素の好ましい例は、安定化されたNAD(P)/NAD(P)H化合物、すなわち、天然のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD/NADH)またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP/NADPH)の化学的な誘導体である。安定化されたNAD(P)/NAD(P)化合物は、好ましくは、グリコシル結合なしに直鎖状または筒状有機残基により、特には、筒状有機残基により、たとえばリン酸残基などのリン含有残基に連結される3−ピリジンカルボニルまたは3−ピリジンチオカルボニル残基を含む。
【0044】
安定化されたNAD(P)/NAD(P)H化合物は、特に好ましくは一般式(I)の化合物
【化1】
式中、
A=アデニンまたはその類似体、
T=それぞれ独立してO、S、
U=それぞれ独立してOH、SH、BH3-、BCNH2-、
V=それぞれ独立してOHまたはリン酸基、または2つの基が筒状リン酸エステル基を形成する、
W=COOR、CON(R)2、COR、CSN(R)2、R=それぞれ独立してHまたはC1〜C2−アルキル、
X1、X2=それぞれ独立してO、CH2、CHCH3、C(CH3)2、NH、NCH3、
Y=NH、S、O、CH2、
Z=直鎖状または筒状有機残基、ただし、Zおよびピリジン残基は、グリコシル結合により連結されない
またはその塩、もしくは必要に応じて還元型
から選択される。
【0045】
式(I)の化合物においてZは、好ましくは4〜6個のC原子、好ましくは4個のC原子を有する直鎖状残基であって、1個または2個のC原子が任意に、O、SおよびNから選択される1つもしくはそれ以上のヘテロ原子で置換されている直鎖状残基であるか、または5個もしくは6個のC原子を有する筒状基を含む残基であって、任意にはO、SおよびNから選択されるヘテロ原子および任意には1つまたはそれ以上の置換基を含む残基、ならびにCR42残基(CR42は筒状基およびX2に結合され、R4はそれぞれ独立してH、F、Cl、CH3である)を含む残基である。
【0046】
Zは特に好ましくは、飽和または不飽和の炭素環式または複素環式の5員環、とりわけ一般式(II)の化合物
【化2】
式中、単結合または二重結合がR5'およびR5''との間に存在でき、
R4=それぞれ独立してH、F、Cl、CH3、
R5=CR42、
R5'およびR5''との間が単結合である場合、R5'=O、S、NH、NC1〜C2−アルキル、CR42、CHOH、CHOCH3、および、R5''=CR42、CHOH、CHOCH3、
R5'およびR5''との間が二重結合である場合、R5'=R5''=CR4、ならびに
R6、R6'=それぞれ独立してCHまたはCCH3
が好ましい。
【0047】
好ましい実施態様において、本発明の化合物は、アデニンまたはたとえばC8−置換およびN6−置換されたアデニンなどのアデニン類似体、7−デアザなどのデアザ変異体、8−アザなどのアザ変異体、またはたとえば7−デアザもしくは8−アザの組合せ、またはホルマイシンなどの炭素環類似体を含み、7−デアザ変異体はハロゲン、C1〜C6−アルキニル、C1〜C6−アルケニルまたはC1〜C6−アルキルによって7位が置換されてもよい。
【0048】
別の好ましい実施態様では、化合物は、リボースの代わりに、たとえば2−メトキシデオキシリボース、2’−フルオロデオキシリボース、ヘキシトール、アルトリトール、またはビシクロ、LNAおよびトリシクロ糖などの多環類似体を含むアデノシン類似体を含む。
【0049】
特に、(ジ)ホスフェート酸素はまた、式(I)の化合物において、等電子数的に、たとえばO-をS-またはBH3-によって、OをNH、NCH3またはCH2によって、および=Oを=Sによって置換することができる。本発明の式(I)の化合物におけるWは、好ましくはCONH2またはCOCH3である。
【0050】
式(II)の基において、R5は好ましくはCH2である。さらにR5'がCH2、CHOHおよびNHから選択されることが好ましい。特に好ましい実施態様では、R5'およびR5''は互いにCHOHである。なおさらに好ましい実施態様では、R5'がNHかつR5''がCH2である。R4=H、R5=CH2、R5'=R5''=CHOHおよびR6'=R6''=CHである式(II)の化合物が最も好ましい。
【0051】
最も好ましい実施態様において、安定化された補酵素は、文献に公知のカルバNAD化合物である(J.T. Slama, Biochemistry (1988), 27,183およびBiochemistry (1989), 28, 7688)。本発明により使用され得る他の安定化された補酵素は、国際公開第98/33936号、国際公開第01/49247号、国際公開第2007/012494号、米国特許第5,801,006号明細書、米国特許第11/460,336号明細書およびBlackburnらの文献(Chem. Comm. (1996),2765)に記載されており、その開示は本明細書に参照として明確に組み込まれる。
【0052】
本発明の範囲において記載される診断用テストエレメントは、酵素および安定化された補酵素を含む乾燥試薬層を含む任意のテストエレメントであり、分析物を含む試料によって湿潤され得る。酵素および安定化された補酵素に加えて、試薬層は任意には、分析物の定性的検出または定量的測定を促進する、たとえばメディエーター、光学的指示薬および適切な補助物質または/および添加剤などのさらなる試薬を含んでもよい。
【0053】
本発明の範囲において使用される用語「メディエーター(mediator)」は、分析物との反応により得られた還元された補酵素を酸化し、そしてその結果、補酵素の反応性を増大させる化合物を意味する。本発明により使用され得るメディエーターとしては、特には、たとえば[(4−ニトロソフェニル)イミノ]ジメタノール塩酸塩などのニトロソアニリン、たとえばフェナントレンキノン、フェナントロリンキノンもしくはベンゾ[h]キノリンキノンなどのキノン、たとえば1−(3−カルボキシプロポキシ)−5−エチル−フェナジニウム−トリフルオロメタンスルホネートなどのフェナジン、または/およびジアホラーゼ(EC1.6.99.2)がある。
【0054】
キノン、特には、1,10−フェナントロリンキノン、1,7−フェナントロリンキノン、4,7−フェナントロリンキノン、またはそれらのN−アルキル化またはN,N’−ジアルキル化塩がメディエーターとして好ましく使用される。これに関連して、N−メチル−1,10−フェナントロリニウム−5,6−キノン、N,N’−ジメチル−1,10−フェナントロリニウム−5,6−キノン、N−メチル−1,7−フェナントロリニウム−5,6−キノン、N,N’−ジメチル−1,7−フェナントロリニウム−5,6−キノン、N−メチル−4,7−フェナントロリニウム−5,6−キノンおよびN,N’−ジメチル−4,7−フェナントロリニウム−5,6−キノンがとりわけ有利であることが立証されており、ここで、N−アルキル化またはN,N’−ジアルキル化塩の場合、任意のアニオンがメディエーターのカウンターイオンとして作用し得る。好ましい実施態様においては、ハロゲン化物またはトリフルオロメタンスルホン酸塩がカウンターイオンとして使用される。
【0055】
還元可能であり、そして、たとえば色、蛍光、緩和、透過率、偏光または/および屈折率などの光学的性質において検出可能な変化を生じる任意の物質が、光学的指示薬として使用され得る。試料中の分析物の存在または/および量の測定は、肉眼で、または/および当業者には適切であることが明らかな光学的方法、特には測光法もしくは蛍光測定法、または、電気化学的方法を用いた検出装置により行うことができる。対応するヘテロポリブルーに還元される、ヘテロポリ酸、および特には2,18−リンモリブデン酸が、光学的指示薬として好ましく使用され得る。
【0056】
本発明の好ましい実施態様において、保管容器に加えて診断用テストエレメントはまた、本質的に乾燥剤を含まない。診断用テストエレメントに関して、用語「本質的に乾燥剤を含まない(essentially free of desiccants)」は、診断用テストエレメントが、診断用テストエレメントの試験化学の総重量に対して5重量%より小さい量の、好ましくは1重量%より小さい量の、より好ましくは0.1重量%より小さい量の、さらにより好ましくは0.01重量%より小さい量の、および最も好ましくは0.001重量%より小さい量の乾燥剤を含むことを意味する。本明細書に記載されるテストエレメントの製造および保管の範囲内における、乾燥剤の量を減少させることができる可能性または完全に乾燥剤を抜きにする可能性は、テストエレメントの製造および保管が簡略化され、その結果よりコスト効率よく行われ得るという点において有利である。
【0057】
さらに好ましい実施態様において、本発明によって使用される診断用テストエレメントは、酵素および安定化された補酵素に加えて、任意の材料から成るが、特には金属またはプラスティックから成り、そして好ましくは診断用テストエレメントに一体化されている、皮膚に小さな切開傷を形成するためのニードルエレメントを、追加で含む。本発明の意味における一体化されたニードルエレメントは、診断用テストエレメントに物理的に結合されているニードルエレメントとして理解される。一方、別個のニードルエレメントとは、診断用テストエレメントとは分離されて存在し、そして、診断用テストエレメントと物理的接続を有さないニードルエレメントとして定義される。
【0058】
本発明によれば、ニードルエレメントは、皮膚に小さな切開傷を形成して、たとえば血液などの、本明細書中で記載される診断用テストエレメントを使用して分析物について検査され得る体液を放出させるために使用される。この場合、放出された体液は、直接的にまたは間接的に、診断用テストエレメントの上に、たとえばサンプリングエレメントを使用することによって移動され得る。これに関連して、分析物を測定するために十分な量の体液を取り込むことが可能であり、かつ、取り込まれた体液の少なくとも一部の診断用テストエレメント上へのその後の移動を可能にする任意のエレメントが、サンプリングエレメントとして使用され得るが、キャピラリーが特に有利であることが立証されている。したがって、本発明の1つの変形例において、皮膚に小さな切開傷を形成するために使用されるニードルエレメントは、それによって放出された体液が取り込まれ、そして診断用テストエレメント上に移動されることが可能である、毛細管力を利用するキャピラリーチャンネルを追加で含む。
【0059】
本発明の保管容器は、必要であれば少なくとも50%の相対空気湿度で、または/および、少なくとも20℃の温度で、酵素活性の顕著な消失なしに比較的長期間にわたって上述の診断用テストエレメントを保管することを可能にする。これは、診断用テストエレメントが、たとえば少なくとも4週間、好ましくは少なくとも8週間、および特に好ましくは少なくとも12週間の期間のあいだ、少なくとも20℃、好ましくは少なくとも25℃、および特に好ましくは少なくとも30℃の温度での保管後に、酵素活性の初期値を基準として50%未満、好ましくは30%未満、および特に好ましくは20%未満しか酵素活性が低下しないことを意味している。
【0060】
酵素の活性を測定するための方法および試験は、先行技術において広く公知であり、そして、必要とあれば、当業者によって各要件に適合されることができるが、いずれの場合においても、保管の前および後の酵素活性を比較するため、同一の試験条件が使用される。
【0061】
本発明の保管容器によって保管される診断用テストエレメントは、光化学的または電気化学的に検出できる任意の生物学的または化学的物質を測定するために使用できる。分析物は、好ましくは、リンゴ酸、アルコール、アンモニウム、アスコルビン酸、コレステロール、システイン、グルコース、グルタチオン、グリセロール、尿素、3−ヒドロキシ酪酸塩、乳酸、5’−ヌクレオチダーゼ、ペプチド、ピルビン酸塩、サリチル酸塩およびトリグリセリドからなる群より選択されるが、特にはグルコースが好ましい。この関連において、分析物は、任意の供給源から得られうるが、好ましくは、これらに限定はされないが、全血、血漿、血清、リンパ液、胆汁、脳脊髄液、細胞外組織液、尿およびたとえば唾液または汗などの腺分泌物を含む体液中に存在する。全血、血漿、血清もしくは細胞外組織液である試料中の分析物の存在および/または量は、好ましくは、本明細書に記載される診断用テストエレメントによって測定される。
【0062】
分析物の定性的または/および定量的測定は、いかなる方法で行われてもよい。この目的のために、手動でまたは適切な方法を用いて評価または読み取りされ得る測定可能なシグナルを生成する、先行技術から公知のあらゆる酵素反応検出法が基本的に使用できる。本発明の範囲内において、好ましくは、たとえば吸光、蛍光、円偏光二色性(CD)、旋光分散(ORD)、屈折率などの測定を含む光学的検出法および電気化学的手法が使用される。分析物は特に好ましくは、光度計測的または蛍光計測的に、たとえば蛍光計測的に検出可能な補酵素の変化によって間接的に検出される。
【0063】
本発明のさらなる局面は、棒状または/および筒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップを含む診断用製品に関し、ここで、テストストリップはそれぞれ、酵素および安定化された補酵素を含む。好ましい変形例において、診断用製品は、棒状または/および筒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップからなり、ここで、テストストリップは上述のように定義される。テストストリップの好ましい実施態様に関して、本発明の保管容器中に保管される、本発明中に記載される診断用テストエレメントに関するリマークは参照として組み込まれる。テストストリップが棒状または/および筒状に配置される場合、乾燥剤または/およびシーリングエレメントの存在を省くことが可能である。
【0064】
さらなる局面では、本発明は、本発明の保管容器または本発明の診断用製品を含み、そして、分析物の定性的または/および定量的測定のために使用される分析用測定装置に関する。このような分析用測定装置の例としては、とりわけ、市販の製品であるAccu−Check(登録商標)Acitive、Accu−Check(登録商標)CompactおよびAccu−Check(登録商標)Mobile(全てRoche Company)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0065】
本発明は以下の図面および実施例により、さらに詳細に説明される。
【実施例】
【0066】
実施例1
カルバNAD(図1A)またはNADをグルコース特異的GlucDHに添加した。これらの処方を、それぞれPokalon(登録商標) foil(Lonza)に塗布し、乾燥後、温かく湿気のある条件下(32℃、相対空気湿度85%)で保管した。その後、反応速度および関数曲線(function curve)を定期的に測定した。cNAD/NAD分析および酵素の残存活性の測定を、各測定日に同時に行った。
【0067】
第1日目に測定されたNAD(図2A)およびcNAD(図2B)に関する反応速度曲線は類似しており、それらのグルコース依存性においてよく似た大きさを示す。しかしながら、反応速度曲線における明確な相違が5週間後に明らかとなる。NADに関する反応速度(図2C)がその変遷(dynamics)中顕著に減少するのに対し、cNADにより安定化された酵素の反応速度は殆ど変化しないままである(図2D)。
【0068】
図3に示されるように、空試験値(血液試料の塗布前の乾燥空試験値)にもまた明確な差異がある。NADに関する乾燥空試験値の上昇は蛍光粒子の形成に起因する(N.J. Oppenheimer, in the Pyridine Nucleotide Coenzymes, Academic Press New York, London 1982, editor J. Everese, B. Anderson, K. You, 第3章、56〜65頁)。驚くべきことに、これはcNADでは生じない。
【0069】
NADおよびcNADの存在下におけるグルコース脱水素酵素の異なる安定性もまた、図4および5の比較から明らかである。5週間後、cNADにより安定化された酵素に関する関数曲線は、依然として一連の先の測定値内に存在する(図5A)が、一方、NADにより処理した酵素に対する曲線(図4)は、酵素/補酵素の不適切な量を示す典型的なサインである、より高い濃度での低下が見られる。図5Bは、24週間の期間にわたるcNADにより安定化されたグルコース脱水素酵素に関する様々な関数曲線を示す。これに関連して、酵素の機能が全期間を通じて高いグルコース濃度で僅かに変化するのみであり、24週間後の値は5週間後に得られる値におおよそ相当することが明らかである。
【0070】
補酵素の構造と所定の期間にわたるその安定性との関係は図6から明らかである。これによると、24週間保管(32℃および相対空気湿度85%)後のグルコース検出試薬中のcNADの残存含量はなお、初期値の約80%であり、一方、NADにより安定化されたグルコース検出試薬中のNADの含有量は、5週間後にはすでに初期値の約35%に低下しており、そして、外挿によれば、約17週間後にはゼロに減少する。
【0071】
32℃および相対空気湿度85%で5週間後の、活性GlucDH酵素の残存活性の測定結果(図7A)は、全く驚くべきものである。NADにより安定化された酵素はここで極めて低い酵素活性(0.5%)しか示さず、一方、cNADにより安定化された酵素は、70%の残存活性をまだなお有している(いずれの場合においても、乾燥剤(TM)とともに冷蔵庫(KS)に保管したサンプルとの比較によって)。32℃および相対空気湿度85%で24週間後(図7B)、cNADにより安定化された場合、酵素の残存活性はまだなお約25%である。
【0072】
液相中でのグルコース脱水素酵素の保管の場合もまた、NADおよびcNADのあいだの相違を明確に示している(図8Aおよび8B)。50℃で95時間後、天然の補酵素NADの存在下でのグルコース脱水素酵素の残存活性は≫5%であり、一方、人工の補酵素cNADの存在下でのGlucDHの残存活性は75%である(図8A)。50℃で336時間保管後、NADで安定化された酵素の残存活性はもはや約1%のみである;cNADの存在下で保管された酵素では、依然として約70%の残存活性が観察された。対応するSDSゲルもまた、天然の補酵素NADの存在下でのGlucDHバンドにおける変化を示す:新しいバンドがより高い分子量に現れ、そして、30kDaバンドのシフトが見られる。
【0073】
概して、補因子の安定化が、同時に酵素を安定化するということ、そして、単に酵素のより良好な結合という協働的効果によるものではないということは非常に驚くべき結果である。補因子NADの分解は、酵素GlucDHの安定性に悪影響を及ぼし、その不活性化を促進すらする。天然のNADを人工の類似体で置換することにより、GlucDHはストレス条件(たとえば高温)下、補因子の存在下ですら保管可能となる。
【0074】
このようなシステムをもってすれば、顕著に改善された安定性の特性を有する血糖テストストリップを製造することが可能であり、そのため乾燥剤なしの提示が可能である。
【0075】
実施例2
cNADまたはNADがアルコール脱水素酵素を含む検出溶液に添加された。これらの混合物を35℃で保管した。ついで酵素の安定性を一定の間隔で調べ、そして、酵素の残存活性を測定した。
【0076】
液相中での保管は、再び、NADまたはcNADの存在下における保管のあいだで違いを示した(図9)。天然の補酵素NADの存在下でのアルコール脱水素酵素の残存活性は、35℃で65時間後、約6%であり、一方、人工の補酵素cNADの存在下での酵素の残存活性は、まだなお約60%である。
【0077】
実施例3
図10Aは、テープマガジンの形状である、分析用測定装置に挿入可能な本発明の保管容器の例示的な実施態様の断面図を示す。保管容器90は、その中に供給用スプール100および巻き取りスプール101が設置されているハウジング91を備える。保管容器は追加で、偏向チップ(deflection tip)20を外端を越えて含み、そこではテストテープ30が動く。テープマガジンは、偏向チップの内部側の端部に、光学的手段を収容するための第一の開口部93を備える。
【0078】
示されている実施態様において、テープマガジンは追加で、テープマガジン内を通るテストテープをガイドするためのローラーまたはピン92およびスプール駆動部を受容するための第二の開口部94を備える。回転軸95を有する巻き取りスプールは、この目的のためにその中心に開口部を、そして、スプール駆動部を受容するために係合エレメントを備える。
【0079】
図10Bは、その中に図10Aで記載されたテープマガジン90が挿入される、分析用測定装置10の断面図を示す。分析用測定装置は、テープマガジンの巻き取りスプール101内に係合し、そして、たとえばモーターによって駆動され得るスプール駆動部102を備える。これに関連して、スプール駆動部は、テープマガジンの偏向チップ20における試料塗布位置または測定位置内へのテストテープ30の移動の制御および調整を可能にするが、分析物の試料によって湿潤されたテストテープの測定はまた、必要に応じて、異なる位置で、たとえばテープマガジンの内部で行われてもよい。
【0080】
分析用測定装置は、テープマガジンが分析用測定装置に挿入されるや否や、第一の開口部93内に受容される光学的手段99を追加に含む。分析物の光学的測定を行うことを目的とする場合、分析用測定装置の光学システムは、偏向チップ20に連結されていなければならず、これはたとえば、光透過性の偏向チップを使用することによって、または、さもなければ光非透過性である偏向チップ内に光ファイバーを導入することによって、達成され得る。分析用測定装置の光学システムとしては、たとえば、光源および検出器が連結されている光ファイバーの使用が想定され得る。
【0081】
図10Bは、偏向チップおよび供給用スプールのあいだに配置されている、テープマガジン内のチャネル96を示しており、その中でテストテープは、テープマガジンの保管領域97から偏向チップ20へと前もってガイドされており、偏向チップにおいて分析物の試料と接触された後、テープマガジンの巻き取り領域98内に戻ってくる。この場合、テストテープの個々のテスト領域のあいだの距離は、必要に応じて湿気またはその他の外的影響の防止を確実にするために、たとえば、第二のテスト領域30”がまだテープマガジン内に配置されているのに対し、第一のテスト領域30’は、偏向チップ20における試料塗布位置または測定位置に位置するように選択され得る。
【0082】
実施例4
図11は、分析用測定装置114内に挿入可能である、ディスク状の回転マガジンの形状である本発明の保管容器の例示的な実施態様の断面図を示す。この場合、分析用測定装置114は、それを通じてサンプリング動作が行われ得るような、フィンガー開口部116を有するハウジング112を備える。
【0083】
保管容器110は、互いに本質的に対称であるようにデザインされた、2分の1のマガジン172、174の形状である2つのサブマガジンを備える。特には、保管容器110は、円形の中央開口部124および互いに離れて平行にそれぞれ配置されかつ保管容器面まで平行に伸びる2つの装置面118、120を備えたハウジング122を含む。複数のチャンバ126が、ハウジング122内の2つの装置面118、120のそれぞれに収容され、ここで、第二の装置面120のチャンバ126は、第一の装置面118のチャンバ126の下方で、2分の1ユニット分それぞれ回転されている。したがって、保管容器110は、相対して取り付けられ、かつ、互いに2分の1ユニット分、すなわち、チャンバ126の離間角度の2分の1分それぞれ回転されている、2つの同一な半分の面から構成され得る。
【0084】
分析用装置128は、チャンバ126のそれぞれに収容され、いくつかの部分装置130からなる。第一の部分装置130は、ランセット134およびランセット134から半径方向内側へと伸びるキャピラリーエレメント136を含む、チャンバ126内に半径方向に取り付けられたマイクロサンプラー132を含む。マイクロサンプラー132はそれぞれ、中央開口部124の方向を向いたそれらの端部において連結エレメント138を備えるが、これは、中央開口部124で、分析用測定装置114のアクチュエーター(図11には示されていない)がアクチュエーターロッドの鉤状のプッシュロッドによってその中に係合し得る、小穴(eye)の形状にデザインされ得る。分析用装置128は、第二の部分装置130として、テスト領域144の形状で試験化学142を含む診断用テストエレメント140を備え、そして、ハウジング122内に一体化され得る。
【0085】
保管容器110は、分析用装置128が2つの装置面118、120において互いにずれるよう配置され得る。したがって、2つの装置面118、120のうちの1つのテストエレメントウィンドウ168は、いずれの場合においても、それぞれ他の装置面118、120の2つのチャンバ126のあいだに位置している。このことは、テスト領域144の背面が、その塗布位置において、分析用測定装置によって、それぞれ別の装置面118,120の隣接するチャンバ126に邪魔されることなく観測され得ることを保障する。このずらされたチャンバ126の配置は、したがって、塗布位置において、それぞれのアクティブな診断用試験エレメント140へ両側からアクセスすることを可能にする。保管容器110内に残存している分析装置128は一般的に、この工程にはさらされず、それらの適切なシーリングにより使用されるまで無菌状態のまま保持される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素および安定化された補酵素を含む少なくとも1つの診断用テストエレメントを含む保管容器であって、前記保管容器が本質的に乾燥剤を含まず、または/および、周囲から保管容器内への湿気の侵入を実質的に防ぐシーリングエレメントを含まないことを特徴とする保管容器。
【請求項2】
前記テストエレメントの未使用のテスト領域を前記保管容器内の保管位置から前記保管容器外側の試料塗布位置または/および測定位置へと移動させるために必要とされる最小または/および最大の引張力、
または/および、
前記テストエレメントの使用済みテスト領域を前記保管容器外側の試料塗布位置または/および測定位置から前記保管容器内の保管位置へと移動させるために必要とされる最小または/および最大の引張力が、
シーリングエレメントを備える対応する保管容器と比較して減少していることを特徴とする請求項1記載の保管容器。
【請求項3】
酵素および安定化された補酵素を含む少なくとも1つの診断用テストエレメントを含む保管容器であって、前記保管容器がテストエレメントまたは複数のテストエレメントの、未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域のあいだの湿気の交換を可能にすることを特徴とする保管容器。
【請求項4】
前記未使用のテスト領域および前記使用済みのテスト領域が、ただ一つのチャンバ内または湿気透過性の隔壁によって互いに隔てられている2つのチャンバ内に保管されることを特徴とする請求項3記載の保管容器。
【請求項5】
前記テストエレメントが、1または複数のテスト領域を含み、いずれの場合にも、前記テストエレメントの1つの個別のテスト領域が、分析用測定装置と相互作用し合えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項6】
試料塗布位置、測定位置および前記テストエレメントのための少なくとも1つの保管位置を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項7】
前記保管容器が少なくとも部分的に水蒸気に対して透過性のある少なくとも1つの材料、特には、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1つのプラスティックから、構成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項8】
前記保管容器が、テープマガジンまたはテストストリップマガジンであって、特には、ブリスターマガジン、レポレロマガジン、ディスクマガジン、スタックマガジン、ドラムマガジンまたはターニングマガジンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項9】
直径100μm以下、特には20μm以下である侵入口しか有さないことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項10】
前記酵素が、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD/NADH)依存性、または、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP/NADPH)依存性の脱水素酵素であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項11】
前記酵素が、グルコース脱水素酵素(EC1.1.1.47)またはグルコース−6−リン酸脱水素酵素(EC1.1.1.49)であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項12】
前記安定化された補酵素が、安定化されたNAD(P)/NAD(P)化合物、特にはカルバNAD化合物であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項13】
前記テストエレメントが、メディエーター、特には、1,10−フェナントロリンキノン、1,7−フェナントロリンキノンおよび4,7−フェナントロリンキノンからなる群より選択されるメディエーターを追加で含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項14】
前記テストエレメントが、本質的に乾燥剤を含まないことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項15】
前記テストエレメントが、皮膚に小さな切開傷を形成するためのニードルエレメントを追加で含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項16】
前記テストエレメントが、テストテープであって、特には連続的なテストテープ、テストディスク、テストパッドまたはテストストリップであることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項17】
前記テストエレメントが、少なくとも4週間、好ましくは少なくとも8週間、特に好ましくは少なくとも12週間の期間のあいだ、少なくとも20℃、好ましくは少なくとも25℃、および特に好ましくは少なくとも30℃の温度での保管容器内での保管後に、酵素活性の初期値と比較して50%未満、好ましくは30%未満、特に好ましくは20%未満の酵素活性の低下を示すことを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項18】
棒状または/および筒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップを含むテストストリップマガジンであることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項19】
棒状または/および筒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップを含む診断用製品であって、前記テストストリップがそれぞれ、酵素および安定化された補酵素を含む診断用製品。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の保管容器または請求項19記載の診断用製品を含む分析用測定装置。
【請求項1】
酵素および安定化された補酵素を含む少なくとも1つの診断用テストエレメントを含む保管容器であって、前記保管容器が本質的に乾燥剤を含まず、または/および、周囲から保管容器内への湿気の侵入を実質的に防ぐシーリングエレメントを含まないことを特徴とする保管容器。
【請求項2】
前記テストエレメントの未使用のテスト領域を前記保管容器内の保管位置から前記保管容器外側の試料塗布位置または/および測定位置へと移動させるために必要とされる最小または/および最大の引張力、
または/および、
前記テストエレメントの使用済みテスト領域を前記保管容器外側の試料塗布位置または/および測定位置から前記保管容器内の保管位置へと移動させるために必要とされる最小または/および最大の引張力が、
シーリングエレメントを備える対応する保管容器と比較して減少していることを特徴とする請求項1記載の保管容器。
【請求項3】
酵素および安定化された補酵素を含む少なくとも1つの診断用テストエレメントを含む保管容器であって、前記保管容器がテストエレメントまたは複数のテストエレメントの、未使用のテスト領域および使用済みのテスト領域のあいだの湿気の交換を可能にすることを特徴とする保管容器。
【請求項4】
前記未使用のテスト領域および前記使用済みのテスト領域が、ただ一つのチャンバ内または湿気透過性の隔壁によって互いに隔てられている2つのチャンバ内に保管されることを特徴とする請求項3記載の保管容器。
【請求項5】
前記テストエレメントが、1または複数のテスト領域を含み、いずれの場合にも、前記テストエレメントの1つの個別のテスト領域が、分析用測定装置と相互作用し合えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項6】
試料塗布位置、測定位置および前記テストエレメントのための少なくとも1つの保管位置を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項7】
前記保管容器が少なくとも部分的に水蒸気に対して透過性のある少なくとも1つの材料、特には、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1つのプラスティックから、構成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項8】
前記保管容器が、テープマガジンまたはテストストリップマガジンであって、特には、ブリスターマガジン、レポレロマガジン、ディスクマガジン、スタックマガジン、ドラムマガジンまたはターニングマガジンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項9】
直径100μm以下、特には20μm以下である侵入口しか有さないことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項10】
前記酵素が、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD/NADH)依存性、または、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP/NADPH)依存性の脱水素酵素であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項11】
前記酵素が、グルコース脱水素酵素(EC1.1.1.47)またはグルコース−6−リン酸脱水素酵素(EC1.1.1.49)であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項12】
前記安定化された補酵素が、安定化されたNAD(P)/NAD(P)化合物、特にはカルバNAD化合物であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項13】
前記テストエレメントが、メディエーター、特には、1,10−フェナントロリンキノン、1,7−フェナントロリンキノンおよび4,7−フェナントロリンキノンからなる群より選択されるメディエーターを追加で含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項14】
前記テストエレメントが、本質的に乾燥剤を含まないことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項15】
前記テストエレメントが、皮膚に小さな切開傷を形成するためのニードルエレメントを追加で含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項16】
前記テストエレメントが、テストテープであって、特には連続的なテストテープ、テストディスク、テストパッドまたはテストストリップであることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項17】
前記テストエレメントが、少なくとも4週間、好ましくは少なくとも8週間、特に好ましくは少なくとも12週間の期間のあいだ、少なくとも20℃、好ましくは少なくとも25℃、および特に好ましくは少なくとも30℃の温度での保管容器内での保管後に、酵素活性の初期値と比較して50%未満、好ましくは30%未満、特に好ましくは20%未満の酵素活性の低下を示すことを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項18】
棒状または/および筒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップを含むテストストリップマガジンであることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の保管容器。
【請求項19】
棒状または/および筒状に配置された、相互に連結されているが個々に分離可能な複数のテストストリップを含む診断用製品であって、前記テストストリップがそれぞれ、酵素および安定化された補酵素を含む診断用製品。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の保管容器または請求項19記載の診断用製品を含む分析用測定装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14a】
【図14b】
【図14c】
【図15a】
【図15b】
【図15c】
【図16】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14a】
【図14b】
【図14c】
【図15a】
【図15b】
【図15c】
【図16】
【公表番号】特表2013−502567(P2013−502567A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525178(P2012−525178)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062179
【国際公開番号】WO2011/020914
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062179
【国際公開番号】WO2011/020914
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】
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