説明

統合ナビゲーションシステム

【課題】産業用機械装置のための各プロセスにおける複数のナビゲータを統合し、プロセス間の相互理解が可能な統合ナビゲーションシステムを提供する。
【解決手段】統合ナビゲーションシステムは、独立の複数のナビゲータとリンクしており、ユーザからの要求を入力する入力装置を有するものである。統合ナビゲーションシステムは、複数のナビゲータを統合するために、入力装置からの入力情報に基づき、複数のナビゲータから必要なナビゲータを選択し、選択されたナビゲータの必要な項目のみを適切な順番に並べたナビゲーション手順をユーザに提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は統合ナビゲーションシステムに関し、特に、産業用機械装置のための複数のナビゲータを統合する統合ナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用機械装置の設計、製造からユーザでの導入、使用、保守等までの各プロセスは、技術の高度化と就業者の多様化が進み、複雑さを極めている。したがって、これらのプロセス間の相互理解は困難となっている。その結果、産業用機械装置の製品精度や工場の稼働率が、望み通りに得られなくなっている。例えば自動車業界では、多くの専任者によりデジタル化技術が進められており、このような状況の打開には有望であると考えられるが、多くの専任者の雇用が望めない中小企業等の産業用機械装置の製造業者では、デジタル化技術の恩恵にあずかることは困難を極めている。
【0003】
ここで、デジタル化技術としては、企画、設計、製造、導入、使用、保守、検査の各プロセスにおける種々のナビゲータが挙げられる。各ナビゲータはコンピュータ等を用いて製品の設計や製造、工程設計等を事前に解析・検討するものであり、CAE(Computer Aided Engineering)ともいわれる技術が取り入れられている。CAEには製品の最適な設計、量産品の性能検証、設計変更を行う場合の最適条件等、種々の用途があり、各プロセスにおいてナビゲーションするための種々のソフトウェアが存在している。自動車業界等では、このような各ナビゲータについてそれぞれ専任者を配置し、それぞれ独立してプロセスを進めていた。
【0004】
特定のプロセスに対するナビゲータの従来技術としては、例えば、初心者でも解析の収束性を判断できるようにし、解析条件の傾向を調べることによって解析条件を修正できるようにした特許文献1に開示のものがある。また、特許文献2には、複数台の端末装置を用いて同じ解析対象物に対してCAE解析を行うシステムが開示されている。さらに、特許文献3には、CAEの汎用操作部分をナビゲーション形式の汎用作業手順とすることにより、汎用的に使用することができるシステムが開示されている。さらにまた、特許文献4には、解析を行おうとする特定の対象物の解析ノウハウの部分を変更することで汎用解析ソフトを専用解析ソフトとすることが可能なシステムが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−268422号公報
【特許文献2】特開2005−276151号公報
【特許文献3】特開2003−316832号公報
【特許文献4】特開2002−202997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来のシステムは何れも各プロセス単体の独立したナビゲータであり、プロセス間の相互理解を行えるものではなかった。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、各プロセスにおけるナビゲータを統合し、プロセス間の相互理解が可能な統合ナビゲーションシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明による統合ナビゲーションシステムは、独立の複数のナビゲータとリンクするリンク手段と、ユーザからの要求を入力可能な入力手段と、リンク手段を介して複数のナビゲータを統合する統合手段であって、入力手段からの入力情報に基づき、複数のナビゲータから必要なナビゲータを選択し、選択されたナビゲータの必要な項目のみを順に並べたナビゲーション手順をユーザに提示する、統合手段と、を具備するものである。
【0009】
さらに、統合手段によるナビゲーション手順の履歴情報を蓄積する蓄積手段と、入力手段からの入力情報に応じて蓄積手段に蓄積される過去の履歴情報から類似のナビゲーション手順を検索する検索手段と、検索手段により検索される類似のナビゲーション手順を表示する表示手段と、を具備するように構成されても良い。
【0010】
また、入力手段は、複数のナビゲータに関連付けられる複数の文章群をユーザが選択可能なようにユーザに提示し、文章群に応じてユーザの目的に関連付けられるキーワードをユーザにより入力可能であり、蓄積手段は、入力手段により選択される文章群とキーワードを含めたナビゲーション手順に対応する課題及び解決手段を蓄積し、検索手段は、入力手段により選択される文章群とキーワードを用いて検索される類似のナビゲーション手順に対応する課題及び解決手段を検索し、表示手段は、検索手段により検索される課題及び解決手段を表示するものであっても良い。
【0011】
また、入力手段は、ナビゲーション結果情報を入力可能であり、蓄積手段は、ナビゲーション結果情報を蓄積し、検索手段は、入力手段から入力されるナビゲーション結果情報に応じて蓄積手段に蓄積される過去のナビゲーション結果情報から類似のナビゲーション結果情報を検索し、表示手段は、検索手段により検索される類似のナビゲーション結果情報を表示するものであっても良い。
【0012】
ここで、入力手段は、インタラクティブに入力可能であれば良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明の統合ナビゲーションシステムには、各プロセスにおけるナビゲータをシームレスに取り扱うことが可能となるため、例えば産業用機械装置のユーザがあたかも設計者のような感覚で産業用機械装置を扱うことも可能となるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図示例と共に説明する。図1は、本発明の統合ナビゲーションシステムの概念を説明するためのブロック図である。図示の通り、本発明の統合ナビゲーションシステムは、統合ナビゲータ10が、企画ナビゲータ、設計ナビゲータ、製造ナビゲータ、導入ナビゲータ、使用ナビゲータ、保守ナビゲータ、検査ナビゲータ等の複数のナビゲータ4とリンクするものである。統合ナビゲータ10は、例えばコンピュータ等の電子計算機1と、それに接続される入力装置2及び表示装置3とからなるハードウェアを用いるものである。そして、統合ナビゲータ10はリンクを介して複数のナビゲータを統合するものであり、複数のナビゲータから必要なナビゲータを選択し、選択されたナビゲータの必要な項目のみを適切な順番に並べたナビゲーション手順をユーザに提示するものである。これらのナビゲータは例えばコンピュータ等の電子計算機上で稼働するソフトウェアから構成されるものであり、各種ナビゲーションソフトウェアが複数の電子計算機、又は1台の電子計算機にインストールされるものである。なお、統合ナビゲータの電子計算機1にこれらの各種ソフトウェアがインストールされていても良い。ユーザからの要求は、電子計算機1に接続されたキーボード等の入力装置2により入力され、ユーザへの各種情報提供は表示装置3を介して行われる。
【0015】
統合ナビゲーションシステムは、例えばユーザからの要求に対して、どのナビゲータのプロセスが必要か、どういう順番で必要か、その手順をモニタ等に表示する。より具体的には、例えば、今回の産業用機械装置においては、営業・企画・設計・製造工程が必要である、ここで設計工程には、仕様入力、構想設計、詳細設計が必要である、ここで構想設計には、今回必要なユニットは、A、B、D、Eである、といった手順を順番に表示すれば良い。なお、このような表示は、ツリー表示形式でユーザに分かりやすく表示しても良い。これにより、ユーザは今回の検討に必要な項目だけを参照して検討を行うことが可能となる。
【0016】
本発明によれば、上述のように複雑な複数のナビゲータを統合して扱うことが可能となるため、ユーザは各ナビゲータをシームレスに、意識することなく取り扱うことが可能となるため、専門のオペレータではなくても簡単に各種のプロセスを遂行することが可能となる。
【0017】
さらに、本発明の統合ナビゲーションシステムでは、ナビゲーションを行うときに以下に説明するように履歴情報を用いて、今回の検討で参考にできるようにしても良い。例えば、統合ナビゲーションシステムによりナビゲーションして生成したナビゲーション手順の履歴情報をデータベースに蓄積しておく。なお、データベースは電子計算機1内に設けられても良いし、別途外部に用意しても良い。プロセス検討時に、システムは、ユーザからの要求に応じて、データベースに蓄積される過去のナビゲーション手順の履歴情報から類似のナビゲーション手順を検索する。例えば今回検討する製品に類似の製品についての同様の検討課題について、過去に行ったナビゲーション手順を検索し、これをモニタ等に表示する。
【0018】
図2は、上述の統合ナビゲーションシステムの履歴情報の利用について説明するためのフローチャートである。統合ナビゲーションシステムは、まずユーザからの要求入力(ステップ201)に対して、これを認識して複数のナビゲータから必要なナビゲータを選択する(ステップ202)。そして、システムが今回の目的に近い過去のナビゲーション手順をデータベース6にアクセスして検索する(ステップ203)。次に、システムは、ユーザからの要求入力に基づき必要なナビゲータを選択して必要な項目のみを並べたナビゲーション手順、すなわちユーザが行うべきプロセスを表示装置に表示すると共に、データベース6から類似のナビゲーション手順が検索されると、この類似のナビゲーション手順も表示する(ステップ204)。そして、これらの結果情報を利用して、ユーザは必要なプロセスを実行することが可能となる(ステップ205)。そして、システムは今回検討した結果であるナビゲーション手順を履歴情報としてデータベース6に蓄積する(ステップ206)。
【0019】
なお、ユーザが統合ナビゲーションシステムに入力するにあたり、システムはインタラクティブに入力可能なように構成されていても良い。すなわち、初心者でも理解できるような質問を表示し、ユーザと対話方式でやり取りすることで最終的に必要な情報を無理なく入力できるように導くように構成される。
【0020】
ここで、ステップ202においてユーザからの入力情報を認識するときに、所定のキーワードを抽出しておき、ステップ203においてこのキーワードを基に、選択されたナビゲーション手順に対応する課題及び解決手段を検索するようにしても良い。図3にキーワードを用いた検索について説明するためのフローチャートを示す。なお、予めキーワードに関連付けられる課題及び解決手段を含んだ履歴情報をデータベース6に蓄積しておく。ここで、キーワードとは、具体的には例えば装置の種類や構成、サイズや、客先等の情報である。
【0021】
まず、ユーザからの入力があると(ステップ301)、それを基にユーザの要求を理解し、所定のキーワードに落とし込む(ステップ302)。そして、このキーワードを基に、データベース6から類似のナビゲーション手順に対応する課題及び解決手段が検索される(ステップ303)。ここで、例えばナビゲーション手順においてあるユニットの設計が必要だとすると、課題及び解決手段とは、このユニットに関係した問題点及びその解決手法のことである。より具体的には、あるユニットに対して課題として例えば強度不足という問題点があり、その解決手法として例えばそのユニットの板厚をアップするという解決手段がある。そして、このようにして検索された類似のナビゲーション手順に対応する課題及び解決手段をユーザに提示する(ステップ304)。
【0022】
なお、ステップ301のユーザの入力において、複数のナビゲータに関連付けられる複数の文章群をユーザが選択可能なようにユーザに提示して、文章群に応じてユーザの目的に関連付けられるキーワードをユーザにより入力可能とするようにしても良い。これにより、システムは、選択された文章群がそれぞれナビゲータに関連付けられているため、ステップ302でユーザの要求を容易に理解可能となる。そして、入力装置で選択された文章群と入力されたキーワードを用いて、ナビゲーション手順に対応する課題及び解決手段を検索すれば良い。この場合、データベース6には予め文章群とキーワードを対応付けてナビゲーション手順に対応する課題及び解決手段を蓄積しておけば良い。
【0023】
このように、本発明の統合ナビゲーションシステムによれば、ユーザは過去の類似例を参考にして今回の検討を行うことも可能となるため、初心者でも容易に必要な検討が可能となる。そして、例えばあるユニットを設計するにあたり、ナビゲーション手順と共に課題及び解決手段を提示するため、過去の類似の問題を再び繰り返さないようにすることが可能となる。
【0024】
本発明の統合ナビゲーションシステムにおいては、さらに、ナビゲーション手順等の結果情報を以下のように利用することが可能なように構成されていても良い。図4は、ナビゲーションの結果情報を利用して過去の類似のナビゲーション結果情報を検索して利用するためのフローチャートである。なお、予めナビゲーション結果情報をデータベース6に蓄積しておく。ここで、ナビゲーション結果情報とは、統合ナビゲーションシステムで検討した結果生成されたデータを意味し、これは例えばユーザが決定した設計仕様に対する出力結果を意味し、具体的にはその仕様に沿った図面やその番号、名称や用途等を含むものである。また、ナビゲーション結果情報の他の例としては、例えば、ユニット構成やユニットの詳細仕様、解析結果等も挙げられる。
【0025】
まず、ユーザが過去に得られたナビゲーション結果情報を入力する(ステップ401)。システムは、入力された情報を解析し、図面番号や名称、用途等を認識する(ステップ402)。そして、入力されたナビゲーション結果情報を基に、データベースに蓄積された過去のナビゲーション結果情報から、類似のナビゲーション結果情報を検索する(ステップ403)。次に、検索された類似のナビゲーション結果情報を表示装置3を介してユーザに提示する(ステップ404)。そして、ユーザはこのようにして得られたナビゲーション結果情報を利用して、例えばナビゲーション手順に改良を加えて再度の検討を行うことも可能となる。
【0026】
これにより、類似のナビゲーション結果情報を利用してさらに検討を行うことが容易に可能となる。
【0027】
なお、本発明の統合ナビゲーションシステムは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の統合ナビゲーションシステムの概念を説明するためのブロック図である。
【図2】図2は、上述の統合ナビゲーションシステムの履歴情報の利用について説明するためのフローチャートである。
【図3】図3は、キーワードを用いた検索について説明するためのフローチャートである。
【図4】図4は、ナビゲーションの結果情報を利用して過去の類似のナビゲーション結果情報を検索して利用するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0029】
1 電子計算機
2 入力装置
3 表示装置
4 複数のナビゲータ
6 データベース
10 統合ナビゲータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用機械装置のための複数のナビゲータを統合する統合ナビゲーションシステムであって、該システムは、
独立の複数のナビゲータとリンクするリンク手段と、
ユーザからの要求を入力可能な入力手段と、
前記リンク手段を介して複数のナビゲータを統合する統合手段であって、前記入力手段からの入力情報に基づき、複数のナビゲータから必要なナビゲータを選択し、選択されたナビゲータの必要な項目のみを順に並べたナビゲーション手順をユーザに提示する、統合手段と、
を具備することを特徴とする統合ナビゲーションシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の統合ナビゲーションシステムであって、さらに、
前記統合手段によるナビゲーション手順の履歴情報を蓄積する蓄積手段と、
前記入力手段からの入力情報に応じて前記蓄積手段に蓄積される過去の履歴情報から類似のナビゲーション手順を検索する検索手段と、
前記検索手段により検索される類似のナビゲーション手順を表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする統合ナビゲーションシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の統合ナビゲーションシステムにおいて、
前記入力手段は、複数のナビゲータに関連付けられる複数の文章群をユーザが選択可能なようにユーザに提示し、文章群に応じてユーザの目的に関連付けられるキーワードをユーザにより入力可能であり、
前記蓄積手段は、前記入力手段により選択される文章群とキーワードを含めたナビゲーション手順に対応する課題及び解決手段を蓄積し、
前記検索手段は、前記入力手段により選択される文章群とキーワードを用いて検索される類似のナビゲーション手順に対応する課題及び解決手段を検索し、
前記表示手段は、前記検索手段により検索される課題及び解決手段を表示する、
ことを特徴とする統合ナビゲーションシステム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の統合ナビゲーションシステムにおいて、
前記入力手段は、ナビゲーション結果情報を入力可能であり、
前記蓄積手段は、ナビゲーション結果情報を蓄積し、
前記検索手段は、前記入力手段から入力されるナビゲーション結果情報に応じて前記蓄積手段に蓄積される過去のナビゲーション結果情報から類似のナビゲーション結果情報を検索し、
前記表示手段は、前記検索手段により検索される類似のナビゲーション結果情報を表示する、
ことを特徴とする統合ナビゲーションシステム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の統合ナビゲーションシステムにおいて、前記入力手段は、インタラクティブに入力可能であることを特徴とする統合ナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−276659(P2008−276659A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121934(P2007−121934)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000189109)湘南技術センター株式会社 (4)
【出願人】(507145950)株式会社インターローカス (2)
【Fターム(参考)】