説明

絶縁フィルム及びそれを用いたフラットケーブル

【課題】誘電率を低くできると共に難燃性に優れる絶縁フィルム及びそれを用いたフラットケーブルを提供すること。
【解決手段】樹脂フィルムに難燃樹脂層が積層された絶縁フィルムであって、
前記難燃樹脂層は、共重合ポリエステル樹脂100質量部に対して平均粒径0.1μm以上20μm以下の中空粒子を5質量部以上40質量部以下、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、金属水酸化物、ハロゲン系難燃剤、及びアンチモン系難燃剤からなる群から選択される1種以上の難燃剤を10質量部以上100質量部以下含有する樹脂組成物からなる、絶縁フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットケーブルの被覆材、特に高速伝送用のフラットケーブルの被覆材として好適に用いることができる絶縁フィルム及びそれを用いたフレキシブルフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の内部配線用の電線として多心平型のフレキシブルフラットケーブルが使用されている。フラットケーブルは、2枚の絶縁フィルムの間に複数本の導体を並列して挟み、絶縁フィルム同士を熱融着して一体化することにより製造されている。この絶縁フィルムは一般に、導体に接する接着層とその外側の樹脂フィルムを有している。樹脂フィルムとしては、機械的特性、電気的特性に優れた二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが汎用されている。接着層のベースポリマーにはポリ塩化ビニル(PVC)や飽和共重合ポリエステル等が使用されている。
【0003】
フラットケーブルは液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の電子機器の高速伝送用の配線ケーブルとしても用いられている。この場合ノイズ対策のために、絶縁層の外側にシールド層(金属層)を設けた構成としている。またLVDS規格においては高速伝送特性を出すためには特性インピーダンスを高速デジタル信号の送信用・受信用ICのインピーダンスと同じ100Ωに設定する必要がある。特性インピーダンスのファクターである静電容量を制御するためには絶縁層(接着層、樹脂フィルム)の誘電率を低くする必要がある。
【0004】
絶縁層の誘電率を低くするため、特許文献1には、接着層部分を発泡させたフラットケーブルが開示されている。樹脂フィルムと接着剤層とを積層した絶縁テープを準備し、2枚の絶縁テープの間に複数本の導体を挟み込み、加熱ロールでラミネートし一体化させる際に接着層部分を発泡させてフラットケーブルを製造している。接着層を発泡させることで、誘電率は1.5〜2.1と低くなっている(段落0012、0013)。
【0005】
また特許文献2には、接着層と絶縁層とからなり、絶縁層がポリオレフィン樹脂またはポリエステル樹脂の発泡体からなるフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープが開示されている。特許文献1と同様に、絶縁層を発泡体とすることで誘電率を低くしている。
【0006】
一方、特許文献3には導体と、該導体の両面を被覆する絶縁層と、該絶縁層の外側に設けられた低誘電層と、該低誘電層の外側に設けられたシールド層を備え、該低誘電層がポリオレフィン樹脂からなる樹脂組成物を主成分とするフラットケーブルが開示されている。低誘電層を設けることでフレキシブルフラットケーブルの特性インピーダンスを調整可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3006409号公報
【特許文献2】特開2008−251261号公報
【特許文献3】特開2008−47505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フラットケーブルには柔軟性や折り曲げ加工性が要求される。特許文献1、特許文献2で使用している発泡絶縁体は強度が弱いため、フラットケーブルを折り曲げた際に気泡がつぶれてその部分が坐屈し、静電容量が変化することで電気特性が悪化する場合がある。また特許文献3のように低誘電層を設けると電気特性は優れるが、フラットケーブルの厚みが厚くなることで柔軟性が低下し、良好に折り曲げることが難しくなる。
【0009】
またフラットケーブルには高度な難燃性が要求される用途があり、米国UL規格の垂直難燃試験(VW−1試験)のような難燃性が規定されている。難燃性の規格を満足させるためには低誘電層中に難燃剤を含有させる必要があり、難燃剤として臭素系難燃剤、塩素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤、又はリン系難燃剤、窒素系難燃剤等のノンハロゲン難燃剤を使用する。特許文献2の接着層に使用しているポリオレフィン系樹脂は難燃性が低く、燃焼性の規格を満足させるためには多量の難燃剤を添加する必要がある。特にノンハロゲン系難燃剤を使用する場合はハロゲン系難燃剤を使用する場合に比べてさらに多量の難燃剤の添加が必要であり、その結果絶縁層の柔軟性が低下する。
【0010】
そこで本発明は、誘電率を低くできると共に柔軟性及び難燃性に優れる絶縁フィルム及びそれを用いたフラットケーブルを提供することを課題とする。このフラットケーブルは特に高速伝送用のフラットケーブルとして好適に用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、樹脂フィルムに難燃樹脂層が積層された絶縁フィルムであって、前記難燃樹脂層は共重合ポリエステル樹脂100質量部に対して平均粒径0.1μm以上20μm以下の中空粒子を5質量部以上40質量部以下、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、金属水酸化物、ハロゲン系難燃剤、及びアンチモン系難燃剤からなる群より選択される1種以上の難燃剤を10質量部以上100質量部以下含有する樹脂組成物からなる絶縁フィルムである(請求項1)。
【0012】
共重合ポリエステル樹脂はポリオレフィン系樹脂よりも難燃性に優れるため、難燃剤の含有量を比較的少なくしても目的とする難燃性が得られる。しかし共重合ポリエステル樹脂は誘電率が高いため、ポリオレフィン系樹脂を用いる場合と比べて難燃樹脂層の誘電率が高くなる。そこで中空粒子を共重合ポリエステル樹脂100質量部に対して5質量部以上40質量部以下含有させることで難燃性と低誘電率とを両立可能であることを見いだしたことが本発明の特徴である。
【0013】
中空粒子を含有することで難燃樹脂層中に空隙部分が生じる。この空隙部分は独立気泡であり、発泡させてできた空隙部分(気泡)と比べて強度が強いため、フラットケーブルを折り曲げてもつぶれることなく、安定した電気特性が得られる。
【0014】
難燃剤としては、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、金属水酸化物、ハロゲン系難燃剤、及びアンチモン系難燃剤からなる群より選択される1種以上を使用し、共重合ポリエステル樹脂100質量部に対して10質量部以上100質量部以下とする。難燃剤の量が10質量部よりも少ないとVW−1垂直難燃試験に合格する難燃性が得られない。また難燃剤の含有量が100質量部よりも多くなると誘電率が高くなる。難燃剤の中でもリン系難燃剤を使用すると誘電率を低く抑えることができるため好ましい(請求項2)。リン系難燃剤を使用する場合、特に好ましい難燃剤の量は共重合ポリエステル樹脂100質量部に対して40質量%以上100質量%以下である。
【0015】
中空粒子の中空率は25体積%以上とすることが好ましい(請求項3)。中空率が大きいほど誘電率を低下することができる。図3(1)は中空粒子を示す模式図であり、図3(2)は図3(1)のA−A’断面図である。中空率とは中空粒子11全体の体積に対する空隙部分12の体積であり、中空粒子の断面写真から外径aと内径bとを測定して計算して求めることができる。中空粒子の粒径が変わっても殻13の厚みtはほとんど変わらないため、一般に中空粒子の粒径が大きくなるほど中空率は大きくなる。中空粒子の平均粒径は0.1μm以上20μm以下とする。中空粒子の平均粒径が0.1μmよりも小さいと中空率が低くなり誘電率低減効果が少なくなる。また平均粒径が20μmを超えると難燃樹脂層の表面の平滑性が悪くなり、また導体との接着性も低下する。より好ましい中空粒子の平均粒径は1μm以上10μm以下である。なお平均粒径はレーザー式粒度分布測定において累積値が50%となる粒子径(D50)とする。
【0016】
前記樹脂フィルムと前記難燃樹脂層との間にアンカーコート層を有すると好ましい(請求項4)。アンカーコート層を有することで、樹脂フィルムと難燃樹脂層との接着力が向上する。
【0017】
また本発明は、上記の難燃性樹脂シートを被覆材として用いたフラットケーブルを提供する(請求項5)。このフラットケーブルはインピーダンス特性、柔軟性及び難燃性が優れている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、誘電率を低くできると共に柔軟性、難燃性に優れる絶縁フィルム及びこの絶縁フィルムを被覆材として用いたフラットケーブルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のフラットケーブルを示す図である。
【図2】本発明のフラットケーブルを示す図であり、図1のA−A’断面図である。
【図3】本発明に使用する中空粒子示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明の絶縁フィルムを構成する各種材料について説明する。中空粒子とは内部に空隙を有する略球状の微小粒子である。中空粒子の構成材料としては、酸化ケイ素を主成分とするシリカ、ガラス、炭酸カルシウム等の無機材料や、架橋スチレン−アクリル共重合樹脂等の有機材料を使用することができる。シリカを構成材料とする中空シリカは入手の容易性、コストの面で好ましい。
【0021】
中空粒子の空隙率は25%以上が好ましい。ただし空隙率が高くなりすぎると中空粒子の強度が弱くなり、共重合ポリエステル樹脂等の他の材料と混合する際に粒子が破壊する可能性がある。また空隙率と粒径とはある程度相関しており空隙率が高くなると粒径が大きくなるため、空隙率の上限は70%程度とするのが好ましい。
【0022】
共重合ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート・セバケート、ポリブチレンテレフタレート・セバケート、ポリブチレンテレフタレート・アジペート、ポリエチレンテレフタレート・イソフタレートなどの飽和共重合ポリエステル樹脂を使用することができる。これらの樹脂はエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルコール成分と、テレフタル酸、ナフタレンカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸等の酸成分とを重合して得ることができる。また、フマル酸、イタコン酸等の分子内に炭素−炭素不飽和結合を有するモノマーを共重合させた不飽和ポリエステルを使用しても良い。
【0023】
本発明に用いる難燃剤としてはリン系難燃剤、窒素系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、アンチモン系難燃剤を使用できる。難燃剤は1種類としても良いし複数を組み合わせて使用しても良い。リン系難燃剤としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド等の環状有機リン化合物、トリフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート等のリン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アルミニウム、次亜リン酸アルミニウム等が例示される。窒素系難燃剤としてはメラミン樹脂、メラミンシアヌレート等が例示される。リン系難燃剤、窒素系難燃剤はハロゲン元素を含まず、使用後に焼却処理してもハロゲン化水素等の有毒ガスが発生しないので環境負荷が少なく好ましい。リン系難燃剤と窒素系難燃剤とを組み合わせて使用すると難燃性が向上して好ましい。ただし難燃樹脂層中の窒素系難燃剤の含有量を多くしすぎると難燃樹脂層の誘電率が高くなる可能性がある。また導体との接着力も低下する。したがって、窒素系難燃剤の量は共重合ポリエステル樹脂100質量部に対して30質量部以下とすることが好ましい。誘電率を低くする観点からはリン系難燃剤のみを使用することが好ましい。
【0024】
ハロゲン系難燃剤難燃剤としては、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリフェニル、パークロルペンタシクロデカン等の塩素系難燃剤や、エチレンビスペンタブロモジフェニル、テトラブロモエタン、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモビフェニルエーテル、テトラブロモ無水フタール酸、ポリジブロモフェニレンオキサイド、ヘキサブロモシクロデカン、臭化アンモニウム等の臭素系難燃剤が例示される。またアンチモン系難燃剤としては三酸化アンチモン、三塩化アンチモン、ホウ酸アンチモン、モリブテン酸アンチモン等が例示される。また金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム等が例示される。
【0025】
以上の材料を混合して樹脂組成物とする。さらに必要に応じて樹脂組成物には酸化防止剤、老化防止剤、滑剤、加工安定剤等を混合しても良い。これらの材料を短軸押出型混合機、加圧ニーダー、バンバリーミキサー等の既知の溶融混合機を用いて混合した後、押出成形加工等の方法で難燃樹脂層を作製する。また上記の樹脂組成物を溶剤に溶解した液を樹脂フィルム上に塗布した後乾燥させて難燃樹脂層を形成しても良い。
【0026】
樹脂フィルムとしては柔軟性に優れた樹脂材料が使用され、例えばポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等が例示される。ポリエステル樹脂としてはポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレートポリアリレート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂のうち、電気的特性、機械的特性、コスト等の観点からポリエチレンテレフタレート樹脂が樹脂フィルムとして好適に使用される。また樹脂フィルムの厚みは12〜50μmとすることが好ましい。
【0027】
樹脂フィルムと難燃樹脂層の間にアンカーコート層を有すると、樹脂フィルムと難燃樹脂層との接着力が向上して好ましい。アンカーコート層としては任意の材料を使用することができる。例えば主剤であるポリウレタン樹脂にイソシアネート系の硬化剤を混合したウレタン系のアンカーコート材料が好ましく使用できる。アンカーコート層の厚みは0.5〜5μmとすることが好ましい。以上の材料を積層して絶縁フィルムが得られる。
【0028】
次に本発明のフラットケーブルについて説明する。図1は本発明の絶縁フィルムを用いたフラットケーブルの一例を示す図であり、図2は図1のA−A’断面図である。平角形状の導体1の両面を、難燃樹脂層2、樹脂フィルム3及びアンカーコート層4からなる絶縁フィルム5が被覆している。フラットケーブルを製造する際は、複数の導体1の外側に2枚の絶縁フィルム5を樹脂フィルム3が外側となるように相対峙させて、既知の熱ラミネータや熱プレス装置を用いて加熱加圧処理を行って導体1と絶縁フィルム5及び絶縁フィルム5同士を接着させる。この際、フラットケーブル端部となる部分においては、絶縁フィルム5の一部に穴を開けておくことで、端部の導体1を露出させることができる。熱ラミネート又は熱プレスを連続して行うことで長尺のフラットケーブルが得られる。その後一定の長さに切断して任意の長さのフラットケーブルを得ることができる。さらにフラットケーブルの外側にシールド層を設けても良い。
【0029】
導体としては、銅、錫メッキ軟銅、ニッケルメッキ軟銅等の導電性金属を使用することができる。導体は平角形状が好ましく、その厚みは使用する電流量に対応するが、フラットケーブルの柔軟性を考慮すると15μm〜100μmが好ましい。
【実施例】
【0030】
次に、本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。なお実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0031】
(実施例1〜3、比較例1)
(絶縁フィルムの作製)
ウレタン系接着剤(三井化学ポリウレタン(株)製、商品名タケラックA−610)とイソシアネート系硬化剤(三井化学ポリウレタン(株)製、商品名タケネートA−50)とを固形分換算で10:2の割合で混合したアンカーコート剤を準備し、表面にコロナ処理を行った二軸延伸ポリエステルフィルム(三菱樹脂(株)製ダイアホイル(登録商標)、厚さ12μm)の表面に塗布した後、乾燥して溶剤を除去することで樹脂フィルムの表面に厚さ3μmのアンカーコート層を形成した。
【0032】
ポリエステル樹脂(東洋紡(株)製、バイロン(登録商標)GK780)の33%トルエン/メチルエチルケトン溶液に表1に示す配合の材料を添加してペイントシェーカーで混合して樹脂組成物溶液を作製した。なお表中のポリエステル樹脂の数値は固形分換算量である。上記のアンカーコート層を形成した樹脂フィルムに乾燥後の厚みが30μmになるように樹脂組成物溶液を塗布した後乾燥して絶縁フィルムを得た。
【0033】
(誘電率の測定)
得られた絶縁フィルムについて、誘電率測定器(日本ヒューレットパッカード(株)製、商品名4276A LCZメーター)を用い、ASTM標準D150−98で規定された方法により1kHzでの誘電率を測定した。
【0034】
(フラットケーブルの作製)
導体である錫メッキ軟銅箔(厚さ35μm、幅0.3mm)を0.5mmピッチで10本を平行に並べた状態で2枚の絶縁フィルムで挟み込み、130℃の加熱ローラを用いて導体の両面を絶縁フィルムで被覆した後、任意の長さに切断してフラットケーブルを作製した。
【0035】
(特性インピーダンスの測定)
作製したフラットケーブルの高速伝送特性を評価するため、アジレントテクノロジー(株)製ネットワークアナライザーE8362B(周波数1GHz)で特性インピーダンスを測定した。特性インピーダンスが高い方が高速伝送特性に優れる。
【0036】
(難燃性評価)
作製したフラットケーブルについて、UL規格1581のVW−1に規定される垂直燃焼試験を行った。より具体的には、フラットケーブルを10本準備し、着火後、10本中1本以上燃焼したもの、燃焼落下物によりフラットケーブルの下方に配置した脱脂綿が燃焼したもの、またはフラットケーブルの上部に取り付けたクラフト紙が燃焼したものを不合格とし、その他を合格とした。
【0037】
(接着力評価)
作製したフラットケーブルを用いて導体接着力を測定した。具体的には、フラットケーブル端部に露出した導体(厚さ35μm、幅0.3mm)を180°方向に引っ張り、剥離強度を測定した。剥離強度20g以上を合格レベルとする。以上の結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
(脚注)
(1)クラリアントジャパン(株)製、ExolitOP935
(2)チバスペシャリティケミカルズ(株)製、イルガノックス1010
(3)JSR(株)製、架橋スチレン−アクリル共重合樹脂SX866(A)
(平均粒径0.3μm、中空率30体積%)
(4)電気化学工業(株)製、中空シリカBS−0340
(平均粒径3μm、中空率40体積%)
(5)電気化学工業(株)製、中空シリカBS−0660
(平均粒径6μm、中空率60体積%)
【0040】
中空粒子を添加していない比較例1の誘電率が3.80であるのに対し、中空粒子を添加した実施例1〜3は誘電率が低くなっている。また中空粒子の中空率が高くなるほど誘電率が下がっていることがわかる。また特性インピーダンスの値も中空率が高くなるほど大きくなっている。難燃性、接着力は実施例と比較例とでの差はなく、中空粒子を添加しても特性が低下しないことがわかる。
【符号の説明】
【0041】
1導体
2難燃樹脂層
3樹脂フィルム
4アンカーコート層
5絶縁フィルム
11中空粒子
12中空粒子の空隙部分
13中空粒子の殻

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムに難燃樹脂層が積層された絶縁フィルムであって、
前記難燃樹脂層は、共重合ポリエステル樹脂100質量部に対して平均粒径0.1μm以上20μm以下の中空粒子を5質量部以上40質量部以下、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、金属水酸化物、ハロゲン系難燃剤、及びアンチモン系難燃剤からなる群から選択される1種以上の難燃剤を10質量部以上100質量部以下含有する樹脂組成物からなる、絶縁フィルム。
【請求項2】
前記難燃剤がリン系難燃剤である、請求項1に記載の絶縁フィルム。
【請求項3】
前記中空粒子の中空率が25体積%以上である、請求項1又は2に記載の絶縁フィルム。
【請求項4】
前記樹脂フィルムと前記難燃樹脂層との間にアンカーコート層を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁フィルムを被覆材として用いたフラットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−119177(P2012−119177A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268164(P2010−268164)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】