説明

絶縁フィルム構造体及びその製造方法

【課題】本発明は、単純な構造を有すると共に、多様な電子材料への適用の際、不良の発生がない絶縁フィルム構造体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁フィルム構造体は、絶縁フィルム層10及びキャリアフィルム層20から成る2層構造を有し、キャリアフィルム層20で、絶縁フィルム層10に当接する一面には離型層21が形成され、その他面には表面処理層22が形成される

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多様な電子材料における絶縁フィルムを保護するための絶縁フィルム構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル電子製品の小型化及び多機能化に伴って、尖端部品の機能も、より一層アップグレードされている。特に、PCB基板の場合、高仕様に応じるための薄膜化、高集積化及び小型回路の具現のためにビルドアップ(build−up)絶縁フィルムが使われる。
【0003】
そのような絶縁フィルムは、2種類の副材料によって構成されている。一つは、キャスティング(casting)時、送りのためのキャリアフィルム(carrier film)で、他の一つは、キャスティング後、絶縁材の保護のための保護フィルム(cover film)である。該副材料として使われるフィルムは、各々が異なる機能を持たなければならない。
【0004】
前記キャリアフィルムは、絶縁フィルムが円滑に移送されるように滑り(スリップ)がないと共に、製品への適用の際、円滑に剥離可能なように離型性を備えなければならない。
【0005】
また、保護フィルムは、絶縁フィルムを十分に保護可能なように合紙性(張り合わせ性又は接着性)を有すると共に、製品への適用の際には、十分に分離可能なように剥離性も備えなければならない。
【0006】
従来において使われた構造は、図1に示すように、表面処理されていないキャリアフィルム(PET)1に絶縁フィルム2をキャスティングし、その後に、合紙(張り合わせ又は接着。以下、同じ)が容易になるように粘着剤が添加された保護フィルム3を形成して、計3層の構成として絶縁フィルムロール(roll)を製作した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2010−0049267号公報
【特許文献2】米国法定発明登録第H1935号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のような構造の絶縁フィルムロールを製品へ適用する場合、図2に示すように、保護フィルム3とキャリアフィルム1との剥離の際に、該絶縁フィルム2まで剥離されてしまうという問題がある。このような問題は、前述のような構造を有する絶縁フィルム構造体の各層に求められる物性を満足していないため引き起こされる。
【0009】
そのため、印刷回路基板を含む多様な電子材料に求められるビルドアップ絶縁フィルムの開発が必要である。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みて成されたものであって、その目的は、単純な構造を有すると共に、多様な電子材料への適用の際、不良の発生がない絶縁フィルム構造体を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、該絶縁フィルム構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を解決するために、本発明の好適な実施形態による絶縁フィルム構造体は、絶縁フィルム層及びキャリアフィルム層から成る2層構造を有し、該キャリアフィルム層において、前記絶縁フィルム層に当接する一面には、離型層が形成され、他面には、表面処理層が形成される。
【0013】
前記キャリアフィルム層に形成された離型層の離型力は、望ましくは、30gf〜1000gfである。
【0014】
前記キャリアフィルム層に形成された表面処理層の表面は、粗さ処理されている。
【0015】
前記キャリアフィルム層に形成された表面処理層の合紙力(張り合わせ力又は接着力をいう。以下、同じ)は、望ましくは、34dyne〜40dyneである。
【0016】
前記キャリアフィルム層に形成された表面処理層の表面抵抗は、望ましくは、1010Ω〜1012Ωである。
【0017】
前記キャリアフィルム層は、PET、PP(ポリプロピレン)及びPE(ポリエチレン)のうちの少なくともいずれか一つによって形成される。
【0018】
前記絶縁フィルムは、望ましくは、B−stage、C−stageのエポキシ樹脂から成る。
【0019】
また、上記目的を解決するために、本発明の他の好適な実施形態による絶縁フィルム構造体の製造方法は、キャリアフィルム層の一面に離型層を形成する工程と、前記キャリアフィルム層の他面に表面処理層を形成する工程と、前記離型層が形成されたキャリアフィルム層に、絶縁フィルムをキャスティングする工程とを含むことができる。
【0020】
前記離型層は、シリコン離型処理及びフッ素離型処理のうちのいずれか一つによって形成されることができる。
【0021】
また、前記表面処理層は、メタロセン触媒重合を用いるポリエチレン樹脂及びポリエチレン−ポリプロピレンブロック共重合体のうちのいずれか一つによって形成されることができる。
【0022】
前記絶縁フィルム構造体の製造方法は、前記表面処理層に対して粗さ処理を施す工程を、さらに含むことができる。
【0023】
前記粗さ処理は、前記キャリアフィルム層に対して物理的処理及び化学的処理を施す工程を含み、これによって微細粗さを具現することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、絶縁フィルムの保護のために別に設けられる保護フィルム層を不要とし、絶縁フィルム層及びキャリアフィルム層の計2層の構造で絶縁フィルム構造体を製造する。よって、該絶縁フィルムの製作に必要となる原副資材の購入費用、剥離後の廃棄物処理費用などのコスト削減に繋がると共に、ロールタイプで絶縁フィルムを製作する場合、該絶縁フィルムの厚さを保護フィルム層の厚さ分、減らして、同径のロール内への絶縁フィルムの包装量を増大させることができる。
【0025】
また、前述のような構造を有する絶縁フィルム構造体は、電子材料の絶縁フィルムを保護するのに多様に用いることができると共に、実製品への適用の際にも、キャリアフィルム層が剥離されるなどの問題を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来の絶縁フィルム構造体の構造を示す断面図である。
【図2】従来の絶縁フィルム構造体を製品へ適用するときに発生する問題である剥離を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による絶縁フィルム構造体の構造を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による絶縁フィルム構造体の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施の形態を、図面を参考して詳細に説明する。次に示される各実施の形態は、当業者にとって本発明の思想が十分に伝達されるようにするために例として挙げられるものである。従って、本発明は、以下示している各実施の形態に限定されることなく、他の形態で具体化されることができる。そして、図面において、装置の大きさ及び厚さなどは、便宜上誇張して表現されることがある。明細書全体に渡って同一の参照符号は、同一の構成要素を示している。
【0028】
本明細書で使われた用語は、実施形態を説明するためのものであって、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数形は、特別に言及しない限り複数形も含む。明細書で使われる「含む」とは、言及された構成要素、工程、動作及び/又は、素子は、一つ以上の他の構成要素、工程、動作及び/又は、素子の存在または、追加を排除しないことに理解されたい。
【0029】
本発明による絶縁フィルム構造体は、通常、絶縁フィルムの保護のために別に設けられる保護フィルム層が不要であり、絶縁フィルム層10及びキャリアフィルム層20の計2層の構造を有し、前記キャリアフィルム層20は、前記絶縁フィルム層10に当接する一面に離型層21が形成され、他面には表面処理層22が形成される。すなわち、前記キャリアフィルム層20は、その両面にそれぞれ離型層21及び表面処理層22を形成することによって、キャリアフィルム層及び保護フィルム層の両方の役割を共に備えるようになる。
【0030】
本発明の絶縁フィルム構造体において、キャリアフィルム層20は、該キャリアフィルム層20上に形成される絶縁フィルム10が円滑に移送されるように滑り(スリップ)がなく、製品への適用時に円滑に剥離可能なように、離型性を備えるようにする。したがって、本発明では、前記キャリアフィルム層20にノンスリップ(non−slip)特性及び剥離力を共に与えるために、絶縁フィルム10がキャスティングされる表面に離型層21を形成する。
【0031】
前記離型層21は、望ましくは、シリコン離型処理及びフッ素離型処理のうちのいずれか一つによって形成されるが、これに限定されるのではない。
【0032】
前記キャリアフィルム層20に形成された離型層21の離型力は、望ましくは、30gf〜1000gfである。該離型層21の離型力が1000gfを超過する場合、基板工程で絶縁フィルム10を適用した後、キャリアフィルムが円滑に除去されず、絶縁フィルム10の表面不良を引き起こすことがある。また、離型力が30gf未満の場合、絶縁フィルム10への適用時に、キャリアフィルムの離型層21の反対側へ絶縁フィルムが転写される恐れがあって望ましくない。
【0033】
続いて、絶縁フィルム10に合紙されるべき保護フィルム層の特性を得るために、該絶縁フィルムがキャスティングされるキャリアフィルム層20の反対面に対して表面処理を施す。
【0034】
前記表面処理は、メタロセン触媒重合を用いるポリエチレン樹脂及びポリエチレン−ポリプロピレンブロック共重合体のうちのいずれか一つに対して施されてもよいが、これに限定されるのではない。
【0035】
そのため、前記キャリアフィルム層20に形成された表面処理層22の合紙力が、34dyne〜40dyneになるようにする。前記表面処理層22の合紙力が34dyne未満の場合は、絶縁フィルム10と保護フィルム層との間の合紙が不均一であるという問題がある。また、表面処理層22の合紙力が40dyneを超過する場合、基板工程で保護フィルム層を除去するとき、該絶縁フィルム10が保護フィルム層に転写される恐れがあって望ましくない。
【0036】
また、前記キャリアフィルム層20に形成された表面処理層22の表面抵抗は、望ましくは、1010Ω〜1012Ωである。前記表面処理層22の表面抵抗が1010Ω〜1012Ωであるとき、その表面に帯電防止効果が現われることになる。これによって、保護層としてのキャリアフィルム層を取り除く過程で発生する静電気による汚染(例えば、空気中のほこりの吸着)から絶縁フィルム10を保護することができる。
【0037】
したがって、本発明によるキャリアフィルム層20は、保護フィルム層及びキャリアフィルム層が有するべき異なる特性を共に備えることができる。
【0038】
また、製品への適用時にロール状製品の間接工程性をさらに高めるために、該表面処理層に対して粗さ処理を施すことによって合紙面の接触面積を最小化して、ロール状態でフィルムの排出を改善することができる。前記粗さ処理は、キャリアフィルム層に対して物理化学的処理を施す工程を含み、これによって微細粗さを具現することができる。
【0039】
本発明の絶縁フィルム構造体において、前記キャリアフィルム層は、PET、PP及びPEのうちの少なくともいずれか一つによって形成することができる。特に、PETが望ましいが、これに限定されるのではない。
【0040】
また、本発明の絶縁フィルム構造体において、前記絶縁フィルムは、B−stage、C−stageのエポキシ樹脂から成ることが望ましく、用途によって適宜選択して用いてもよいが、これに限定されるのではない。
【0041】
以下、本発明による絶縁フィルム構造体の製造方法について説明する。
【0042】
本発明による絶縁フィルム構造体の製造方法は、キャリアフィルム層の一面に離型層を形成する工程と、該キャリアフィルム層の他面に表面処理層を形成する工程と、該離型層の形成されたキャリアフィルム層に絶縁フィルムをキャスティングする工程とを含む。
【0043】
前記キャリアフィルム層の一面に形成される離型層は、シリコン離型処理及びフッ素離型処理のうちのいずれか一つによって形成される。
【0044】
シリコンコーティングとは、有機シリコン化合物であるシリコン樹脂をキャリアフィルム層の表面に塗布することを意味する。該シリコン樹脂の種類は、これに限定されるのではなく、表面処理のために使われるシリコン樹脂なら全て使用可能である。
【0045】
また、フッ素コーティングを用いる離型処理は、前記シリコン樹脂の代わりにフッ素樹脂を前記キャリアフィルム層の表面に塗布することを意味する。該フッ素樹脂の種類は、特別に限定されるものでなく、離型性を与えることができるフッ素樹脂ならいずれもよい。
【0046】
離型力30gf〜1000gfを得るために、離型層の厚さは望ましくは、0.3〜0.4μmである。
【0047】
続いて、離型層の形成されたキャリアフィルム層の反対面に表面処理層を形成する。該表面処理層は、メタロセン触媒を用いるポリエチレン樹脂及びポリエチレン−ポリプロピレンブロック共重合体のうちのいずれか一つによって形成される。
【0048】
また、本発明による絶縁フィルム保護構造体の製造方法は、前記表面処理層に対して粗さ処理を施す工程をさらに含む。
【0049】
該粗さ処理は、キャリアフィルム層に対して物理化学的処理を施す工程を含み、これによって微細粗さを具現することができる。前記表面処理層に粗さを与えることによって、合紙面の接触面積を最小化してロール状態でフィルムの排出を改善することができる。
【0050】
図3は、本発明の一実施形態による絶縁フィルム構造体の構造を示す図面である。
【0051】
絶縁フィルム構造体は、絶縁フィルム層10及びキャリアフィルム層20から成る2層構造を有する。
【0052】
まず、絶縁フィルム層10に当接する前記キャリアフィルム層20の一面に、シリコンまたはフッ素樹脂を塗布して離型層21を形成する。該キャリアフィルムとしては、PETが挙げられる。
【0053】
また、キャリアフィルム層20の他面には、メタロセン触媒を用いて製造されたポリオレフィン系樹脂、またはPP-PEのブロック共重合体によって製造されたフィルムを塗布して表面処理層22を形成する。
【0054】
したがって、本発明によるキャリアフィルム層20は、離型層21及び表面処理層22の両方を備えることによって、キャリアフィルム層の役割と保護フィルム層の役割を共に行うことができる。
【0055】
キャリアフィルム層20に形成された離型層離型層21の離型力は、30gf〜1000gfである。
【0056】
また、キャリアフィルム層20に形成された表面処理層22の合紙力は34dyne〜40dyneであり、表面抵抗は1010Ω〜1012Ωである。
【0057】
続いて、離型層21の形成されたキャリアフィルム層20上に、エポキシ樹脂をキャスティングして絶縁フィルム層10を形成する。この絶縁フィルム層10は、望ましくは、エポキシ樹脂によって形成され、半硬化状態のB−stage、または完全硬化状態のC−stageで形成されてもよい。
【0058】
また、本発明の製造方法は、表面処理層22に対して、粗面化処理を施す工程をさらに含むことができる。したがって、図4に示すように、該粗面化処理によって、表面処理層22は一定の粗さ23を有するようになり、絶縁フィルム構造体がロール形態で巻き取られて使われる場合、フィルムの排出が容易になるという効果を奏する。
【0059】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものでは、ないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記した実施の形態の説明では、なくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
10 絶縁フィルム層
20 キャリアフィルム層
21 離型層
22 表面処理層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁フィルム層及びキャリアフィルム層から成る2層構造を有し、
前記キャリアフィルム層において、前記絶縁フィルム層に当接する一面には離型層が形成され、その他面には表面処理層が形成される絶縁フィルム構造体。
【請求項2】
前記キャリアフィルム層に形成された前記離型層の離型力が、30gf〜1000gfである請求項1に記載の絶縁フィルム構造体。
【請求項3】
前記キャリアフィルム層に形成された前記表面処理層の表面は、粗さ処理される請求項1に記載の絶縁フィルム構造体。
【請求項4】
前記キャリアフィルム層に形成された前記表面処理層の合紙力が、34dyne〜40dyneである請求項1に記載の絶縁フィルム構造体。
【請求項5】
前記キャリアフィルム層に形成された前記表面処理層の表面抵抗が、1010Ω〜1012Ωである請求項1に記載の絶縁フィルム構造体。
【請求項6】
前記キャリアフィルム層は、PET、PP及びPEのうちの少なくともいずれか一つによって形成される請求項1に記載の絶縁フィルム構造体。
【請求項7】
前記絶縁フィルムは、B−stageまたはC−stageエポキシ樹脂によって形成される請求項1に記載の絶縁フィルム構造体。
【請求項8】
キャリアフィルム層の一面に離型層を形成する工程と、
前記キャリアフィルム層の他面に表面処理層を形成する工程と、
前記離型層の形成された前記キャリアフィルム層に絶縁フィルムをキャスティングする工程と、
を含む絶縁フィルム構造体の製造方法。
【請求項9】
前記離型層は、シリコン離型処理及びフッ素離型処理のうちのいずれか一つによって形成される請求項8に記載の絶縁フィルム構造体の製造方法。
【請求項10】
前記表面処理層は、メタロセン触媒重合を用いるポリオレフィン樹脂及びPE(ポリエチレン)−PP(ポリプロピレン)のブロック共重合体のうちのいずれか一つによって形成される請求項8に記載の絶縁フィルム構造体の製造方法。
【請求項11】
前記表面処理層に対して粗さ処理を施す工程を、さらに含む請求項8に記載の絶縁フィルム構造体の製造方法。
【請求項12】
前記粗さ処理は、前記キャリアフィルム層に対して物理的処理及び化学的処理を施す工程を含む請求項11に記載の絶縁フィルム構造体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−169268(P2012−169268A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−17990(P2012−17990)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】