説明

絶縁型AC−DCコンバータおよびそれを用いるLED用直流電源装置

【課題】商用電源からの入力電流を高周波に変換し、絶縁された直流電流を得る絶縁型AC−DCコンバータにおいて、総合効率を高めるとともに、構造を簡略化する。
【解決手段】第1のコンバータとして絶縁トランスTを有する複合共振型のハーフブリッジDC−DCコンバータ33を用い、第2のコンバータとして力率改善のための昇圧チョッパ回路36を用いる。したがって、複合共振動作によって、スイッチング周波数を高めても損失の増大を抑制でき、またハーフブリッジ回路であるためにスイッチング素子などの低耐圧化が可能で、総合効率を高めることができる。さらに出力のコンデンサC2から昇圧チョッパ回路36の入力には、電源電圧Vacの全波整流波形と略相似の電圧が得られ、絶縁トランスTをまたいでのフィードフォワード回路も不要であるとともに、コンバータ33の入力側に設けていた電解コンデンサが不要であり、小型・薄型化に有利となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用電源からの入力電流を高周波に変換し、絶縁された直流電流を得る絶縁型AC−DCコンバータおよびそれを用いるLED用直流電源装置に関し、特に力率改善型の高効率なコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
商用電源から所望の直流電力を得るAC−DCコンバータは、スイッチング周波数を高くすることによって、トランスやインダクタ等の小型化が可能になるが、高周波化に伴い、スイッチング損失など回路損失の増大が課題となり、効率を上げるために、回路面での工夫が種々なされている。
【0003】
そこで、前記高周波化に対してもスイッチング損失を抑えることができる絶縁型AC−DCコンバータの従来技術が、特許文献1などで示される電流共振(複合共振)型のAC−DCコンバータとして知られている。図10は、その複合共振型のAC−DCコンバータ1の電気的構成を示すブロック図である。このコンバータ1は、大略的に、ダイオードブリッジdbおよび平滑コンデンサc1ならびにDC−DCコンバータ2を備えて構成される。商用電源3からの正弦波交流Vacは電流ヒューズfを介して前記ダイオードブリッジdbおよび平滑コンデンサc1に入力され、整流・平滑化された直流電圧が前記DC−DCコンバータ2の電源電圧となる。
【0004】
DC−DCコンバータ2では、前記電源電圧が2段直列のスイッチング素子q1,q2に与えられ、一方のスイッチング素子q2と並列に、チョークコイルl1、絶縁トランスt1の1次巻線t1およびコンデンサc2から成る直列共振回路と、コンデンサc3とが接続される。前記絶縁トランスtの2次巻線t2は、両端がダイオードd1,d2をそれぞれ介して平滑コンデンサc4のハイ側端子に接続され、中間タップが前記平滑コンデンサc4のロー側端子に接続され、こうして整流・平滑化された所望の直流電圧が直流負荷4に供給される。
【0005】
図11は、上記従来回路の動作を説明するための各部波形図である。Vg1,Vg2は、スイッチング素子であるMOSFETq1,q2に制御回路5から与えられるゲート信号を示す。このゲート信号Vg1、Vg2に応答して、スイッチング素子q1,q2は交互にON−OFF動作を行い、そのドレイン−ソース間電圧およびドレイン電流は、それぞれVq1,Iq1およびVq2,Iq2に示した波形となる。Vc2はコンデンサc2の印加電圧であり、スイッチング周波数に対して前記直列回路を適切なLC直列共振条件に設定することによって、略正弦波の電流共振状態となっている。
【0006】
またId1,Id2は、絶縁トランスtの2次側のダイオードd1,d2の電流波形を示すもので、絶縁トランスtの二次側誘起電圧と平滑コンデンサc4の直流電圧との差異によって、図示したタイミングで導通・非導通期間が存在する。ダイオードd1またはd2が導通する期間では、該絶縁トランスtの2次側がそれらのダイオードd1またはd2を介して短絡された状態であり、簡単のため、絶縁トランスtがノンギャップのトランス(1次巻線t1と2次巻線t2との間が密結合)とすると、絶縁トランスtの1次の励磁インダクタンスも略短絡となるので、インダクタl1とコンデンサc3との直列共振となるのに対して、ダイオードd1,d2共非導通の期間は、絶縁トランスtの二次側は開放された状態となって、インダクタl1およびトランス励磁インダクタンス(l0)の合成値とコンデンサc3との直列共振になる。
【0007】
したがって、ダイオードd1またはd2が導通する期間W1での回路の共振周波数f1は、1/2π(l1・c3)1/2となり、非導通の期間W2での共振周波数f2は、1/2π((l1+l0)・c3)1/2となり、低くなる。
【0008】
これらの動作波形から、スイッチング素子q1またはq2がONするタイミングでは、スイッチング電流は若干の負電流(MOSFETの内蔵ダイオードを流れる)となるので、ゼロ電流スイッチング(ZCS)動作が可能で、スイッチング損失は極めて小さくなっている。また、スイッチング素子q1またはq2がONオンするタイミングでは、デッドオフ期間中にスイッチング素子q2と並列に接続したコンデンサc2がインダクタl1の共振エネルギーを吸収し、印加電圧は緩やかな傾斜をもって上昇することから、ソフトスイッチングによるゼロ電圧スイッチング(ZVS)動作が可能で、スイッチング損失は極めて小さくなっている。
【0009】
このように複合共振型のAC−DCコンバータ1では、スイッチングの高周波化において懸念されるスイッチング損失の増大が抑制され、小型化に好適である。しかしながら、このコンバータ1では、制御回路3は、フィードバック回路6を介して出力電圧をモニタし、負荷変動が生じると、複合共振の波形を維持しながら出力を一定化するために、スイッチング周波数を変えて変動補償を行う。このため、大幅な負荷変動や商用電源の電圧変動など広範囲の変動に対して出力を補償しようとすると、複合共振波形の維持が極めて難しく、結局は複合共振を外れたところでの素子選定や放熱対策が不可欠であるという問題がある。また、商用電源3からの入力電流に高調波歪みを与えてしまうという問題がある。特に照明用途では、前記高調波歪みに対する規制が厳しい。
【0010】
そこで、このような問題を解決するために、力率改善を図った標準的なAC−DCコンバータ11を図12で示す。このコンバータ11は、大略的に、上述のAC−DCコンバータ1の構成において、ダイオードブリッジdbの入力側にインダクタl2およびコンデンサc5から成るフィルタ回路が挿入されるとともに、前記ダイオードブリッジdbで全波整流された脈流を、そのまま昇圧チョッパ回路12で昇圧し、平滑コンデンサで平滑化された直流電圧が降圧のDC−DCコンバータ2の電源電圧となっている。
【0011】
前記昇圧チョッパ回路12は、前記ダイオードブリッジdbからの脈流の出力電圧を、チョークコイルl3、スイッチング素子(MOSFET)q3およびそのソース抵抗Rの直列回路に与え、前記スイッチング素子q3を制御回路13がスイッチングすることで、チョークコイルl3とスイッチング素子q3との接続点から昇圧された電圧を取出し、ダイオードd3を介して前記平滑コンデンサc1に与えるようになっている。前記制御回路13は、入力電圧信号、出力電圧フィードバック信号、スイッチング電流信号、同期信号(チョークコイルl3の補助巻線信号)を取込み、スイッチング電流値が入力電圧信号と出力電圧フィードバック信号との乗算値で得られる基準値と一致するように、チョッパ用のスイッチング素子q3を制御して、商用電源3側に設けたチョークコイルl2およびコンデンサc5から成るフィルタ回路の効果も併せて正弦波の入力電流とする。
【0012】
このように構成することで、DC−DCコンバータ2への入力電圧を高くし、商用電源3からの入力交流Vacに対する高調波歪みを抑えた高力率のAC−DCコンバータが実現可能となっている。しかしながら、2つのコンバータ(12,2)を縦続に接続したことによる回路全体での損失の増加、部品点数増加に伴うコストアップおよび小型化メリットの縮小などの問題がある。なお、DC−DCコンバータ2の前段に昇圧チョッパ回路12を設けることによって、入力電圧は安定化され、商用電源3の電圧変動に対する変動補償が不要になる分、制御回路5での制御は容易となる。
【0013】
そこで図13は、上記の構成における2つのコンバータの縦続構成を入替えたAC−DCコンバータ21である。この従来技術は、特許文献2で示されたものである。このコンバータ21では、前段のコンバータ22は、その出力を平滑せずに2段目のコンバータ(昇圧チョッパ回路)23に入力しているので、インバータとしている。すなわち、商用電源3からの入力交流Vacをダイオードブリッジdb1で整流した脈流を、前記1段目のコンバータ22に入力し、スイッチング素子q11〜q14によるフルブリッジ構成のインバータスイッチによって高周波交流電圧に変換し、絶縁トランスtによって変圧された出力を得て、その出力をダイオードブリッジdb2で再度整流した後、2段目のコンバータ23を介して直流出力を得るもので、そのコンバータ23の制御回路24は、交流入力電流iacを入力交流Vacに対応した正弦波状に、また直流出力電圧VAを定電圧になるよう制御している。
【0014】
コンバータ23は、前記ダイオードブリッジdb2からの高周波脈流出力電圧を、チョークコイルl4、スイッチング素子q3の直列回路に与え、前記スイッチング素子q3を制御回路24がスイッチングすることで、チョークコイルl4とスイッチング素子q3との接続点から昇圧された電圧を取出し、ダイオードd3を介して前記コンデンサc6から直流負荷4に与えるようになっている。
【特許文献1】特許第3371595号公報
【特許文献2】特許第2514885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図13で示すAC−DCコンバータ21では、高調波歪み対策とともに、入力側の高耐圧、大容量の平滑コンデンサc1が削除できること、およびそれに伴い電源投入時の突入電流対策が不要なこと、ならびにチョークコイルl4およびコンデンサc6が、1段目のコンバータ22の平滑フィルタと、2段目のコンバータ23の平滑フィルタとして共用されていることが特徴とされる。
【0016】
しかしながら、1段目のフルブリッジのインバータ(22)には損失低減の工夫が見られず、2段目のコンバータ23との縦続接続によって総合効率が低下するという問題がある。また、2段目のコンバータ23への入力電流を正弦波にするために、前記制御回路24は、絶縁トランスtの2次側の直流出力電圧VAとともに、1次側の交流入力電流iacおよび入力交流Vacをモニタしなければならず、電流トランスや電圧トランスなどの絶縁手段が必要になり、コストや形状面の問題が生じる。
【0017】
本発明の目的は、総合効率を高めることができるとともに、構造を簡略化することができる絶縁型AC−DCコンバータおよびそれを用いるLED用直流電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の絶縁型AC−DCコンバータは、商用電源からの入力電流を全波整流する全波整流手段と、前記全波整流手段の後段に設けられ、絶縁トランスを有する複合共振型のハーフブリッジDC−DCコンバータから成る第1のコンバータと、前記第1のコンバータの後段に設けられて所望の電圧または電流で安定化された直流電力を直流負荷へ出力し、力率改善のための制御手段を有する昇圧チョッパ回路から成る第2のコンバータとを含むことを特徴とする。
【0019】
上記の構成によれば、商用電源からの入力電流を高周波に変換し、絶縁された直流電流を得る絶縁型AC−DCコンバータにおいて、先ず第1のコンバータとして、絶縁トランスを有する複合共振型のハーフブリッジDC−DCコンバータを用い、さらに第2のコンバータとして、力率改善のための昇圧チョッパ回路を用いる。
【0020】
したがって、第1のコンバータの複合共振動作によって、スイッチング周波数を高めても、スイッチングによる損失の増大を抑制することができる。また、商用電源の電圧変動に対しては、たとえば入力電圧の谷部で複合共振波形を維持するための多少の補正を加えることはあっても、基本的には出力側の昇圧チョッパ回路入力部に電源電圧の全波整流波形と略相似の電圧が得られるように駆動することは容易であり、第2のコンバータでの力率改善動作を容易に行うことができる。さらにまた、ハーフブリッジ回路を用いることによって、絶縁トランスに入力される電圧は、シングルエンド回路などを用いる場合に比べて低くできるので、前記絶縁トランスの小型化に適し、また該第1のコンバータに用いるスイッチング素子も低耐圧化することができ、ON抵抗の小さいMOSFETなどの選定が可能になる。このような損失面の優位性によって、回路全体での効率を高めることができる。
【0021】
また、上述のような効率面の利点だけではなく、該第1のコンバータは複合共振波形が維持できる範囲内の周波数または単一周波数でスイッチング動作をすればよく、絶縁トランスを介しての負荷側からのフィードバックは不要になる。これによって、第1のコンバータの制御機能を大幅に縮小して、たとえば自励駆動の可能性もあり、制御回路用電源の簡易化、省略によって損失低減が可能となる。
【0022】
さらにまた、2段目のコンバータである昇圧チョッパ回路の入力には、上述のように電源電圧の全波整流波形と略相似の電圧が得られ、高調波歪抑制のために必要な信号は総て1段目のコンバータの出力側、すなわち該2段目のコンバータの入力側で得られるので、絶縁トランスをまたいで該2段目のコンバータへの商用電源側からのフィードフォワード回路も不要である。これによって、該第2のコンバータの力率改善制御に関する回路構成を簡略化することができるとともに、該第2のコンバータの制御電源は第1のコンバータ出力から容易に得られるので、大きな損失にはならない。
【0023】
さらにまた、従来では、絶縁トランスを有する複合共振型のハーフブリッジDC−DCコンバータの入力側に設けていた高耐圧大容量の電解コンデンサが不要であり、小型・薄型化に有利となる。
【0024】
また、本発明の絶縁型AC−DCコンバータでは、前記第1のコンバータは、前記全波整流手段からの電源ライン間に設けられる第1および第2のスイッチング素子の直列回路と、前記第1および第2のスイッチング素子の一方と並列に接続され、第1のチョークコイル、前記絶縁トランスの1次巻線、および第1のコンデンサから成る直列共振回路と、前記絶縁トランスの2次側に設けられる複数の第1の整流手段と、前記第1の整流手段からの出力を包絡線検波する第2のコンデンサと、前記複合共振波形が維持できる範囲内の周波数または単一周波数で前記第1および第2のスイッチング素子のスイッチングを制御する第1の制御手段とを備えて構成される前記複合共振型のハーフブリッジDC−DCコンバータから成ることを特徴とする。
【0025】
さらにまた、本発明の絶縁型AC−DCコンバータでは、前記第2のコンバータは、前記第2のコンデンサの端子間に接続され、第2のチョークコイルおよび第3のスイッチング素子から成る直列回路と、前記第3のスイッチング素子の端子間に接続され、並列に直流負荷が接続される平滑コンデンサおよび第2の整流手段から成る直列回路と、前記第3のスイッチング素子の電流を検出する第1の検出手段と、前記第2のコンデンサの端子電圧を検出する第2の検出手段と、負荷電圧または電流を検出する第3の検出手段と、前記第3の検出手段によって検出される負荷電圧または電流が予め定める基準値となるように、前記第2の検出手段の検出結果と第3の検出手段の検出結果とに基づいて第3のスイッチング素子のスイッチング電流値を設定し、前記第1の検出手段の検出結果がその設定値となるように前記第3のスイッチング素子を制御する第2の制御手段とを備えて構成される前記力率改善機能を有する昇圧チョッパ回路から成ることを特徴とする。
【0026】
上記の構成において、第1のコンバータに入力される商用電源の全波整流波形の位相角または電圧谷部の局所を除く概ね全位相角で、第1のチョークコイル、絶縁トランスの1次巻線、および第1のコンデンサから成る直列共振回路による共振状態が維持できるように(絶縁トランスの2次側に設けられる前記第1の整流手段の電流が高周波動作の1周期毎に非導通期間を有するように)第1のコンバータを動作させることによって、第1および第2のスイッチング素子によるスイッチング損失を抑制できるとともに、前記絶縁トランスの2次側に設けられる複数の第1の整流手段によって整流され、第2のコンデンサによって包絡線検波された電圧波形は、商用電源の全波整流電圧波形と略相似形とすることができる。そこで、第2の検出手段によるこの第2のコンデンサの端子電圧の検出結果を、第3の検出手段による負荷電圧または電流の検出結果を予め定める基準値と比較したエラーアンプ出力と乗算して第3のスイッチング素子の電流値を設定し、第1の検出手段で検出されるその第3のスイッチング素子の電流値が設定値と一致するように、第2の制御手段がスイッチングを制御することで、第2のコンバータへの入力電流の包絡線をその入力電圧である第2のコンデンサの端子電圧、すなわち前記商用電源の全波整流電圧波形に合わせながら、所望とする直流出力を得ることができろ。こうして、商用電源からの入力電流波形を概ね正弦波にすることによって、入力電流高調波歪みを抑制できる。
【0027】
また、商用電源の全波整流波形と略相似の電圧波形が第2のコンデンサの端子間電圧に現れることで、第2のコンバータの力率改善制御に必要な信号が絶縁トランスの2次側で得られ、該絶縁トランスの1次側から信号を送る場合に必要な信号用トランスやフォトカプラなどの絶縁手段不要であり、形状的、コスト的に有利である。
【0028】
また、本発明の絶縁型AC−DCコンバータでは、前記第2のチョークコイルはトランスであり、その補助巻線から、前記第2の制御手段は、前記第2のチョークコイルを流れる電流を検知し、前記電流が略0となったタイミングで前記第3のスイッチング素子をONすることを特徴とする。
【0029】
上記の構成によれば、比較的容量の小さい負荷を駆動するのに好適な不連続式の駆動を行うことができる。
【0030】
さらにまた、本発明の絶縁型AC−DCコンバータは、前記第1のチョークコイルおよび絶縁トランスを、1つの漏洩型トランスで形成することを特徴とする。
【0031】
上記の構成によれば、絶縁トランスの巻線結合を疎として漏洩インダクタンスを発生させることで、前記直列共振回路を形成するにあたって該絶縁トランスの1次巻線に直列の第1のチョークコイルを省略することができる。
【0032】
また、本発明の絶縁型AC−DCコンバータでは、前記第1の整流手段は、MOSFETを有する同期整流回路から成ることを特徴とする。
【0033】
上記の構成によれば、ダイオードを用いる場合に比べて、該第1の整流手段による損失を大幅に削減することができる。
【0034】
さらにまた、本発明のLED用直流電源装置は、前記の絶縁型AC−DCコンバータから成り、負荷として直流点灯されるLED負荷を有することを特徴とする。
【0035】
上記の構成によれば、上述のような絶縁型AC−DCコンバータは汎用電源としての有用性は当然ながら、特に入力高調波歪低減が重要な照明器具用電源として最適であり、小型・薄型のLED照明用としての効果が期待できる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の絶縁型AC−DCコンバータは、以上のように、商用電源からの入力電流を高周波に変換し、絶縁された直流電流を得る絶縁型AC−DCコンバータにおいて、先ず第1のコンバータとして、絶縁トランスを有する複合共振型のハーフブリッジDC−DCコンバータを用い、さらに第2のコンバータとして、力率改善のための昇圧チョッパ回路を用いる。
【0037】
それゆえ、第1のコンバータの複合共振動作によって、スイッチング周波数を高めても、スイッチングによる損失の増大を抑制することができる。また、商用電源の電圧変動に対しては、たとえば入力電圧の谷部で複合共振波形を維持するための多少の補正を加えることはあっても、基本的には出力側の昇圧チョッパ回路入力部に電源電圧の全波整流波形と略相似の電圧が得られるように駆動することは容易であり、第2のコンバータでの力率改善動作を容易に行うことができる。さらにまた、ハーフブリッジ回路を用いることによって、絶縁トランスに入力される電圧は、シングルエンド回路などを用いる場合に比べて低くできるので、前記絶縁トランスの小型化に適し、また該第1のコンバータに用いるスイッチング素子も低耐圧化することができ、ON抵抗の小さいMOSFETなどの選定が可能になる。このような損失面の優位性によって、回路全体での効率を高めることができる。
【0038】
また、上述のような効率面の利点だけではなく、該第1のコンバータは複合共振波形が維持できる範囲内の周波数または単一周波数でスイッチング動作をすればよく、絶縁トランスを介しての負荷側からのフィードバックは不要になる。これによって、第1のコンバータの制御機能を大幅に縮小して、たとえば自励駆動の可能性もあり、制御回路用電源の簡易化、省略によって損失低減が可能となる。
【0039】
さらにまた、2段目のコンバータである昇圧チョッパ回路の入力には、上述のように電源電圧の全波整流波形と略相似の電圧が得られ、高調波歪抑制のために必要な信号は総て1段目のコンバータの出力側、すなわち該2段目のコンバータの入力側で得られるので、絶縁トランスをまたいで該2段目のコンバータへの商用電源側からのフィードフォワード回路も不要である。これによって、該第2のコンバータの力率改善制御に関する回路構成を簡略化することができるとともに、該第2のコンバータの制御電源は第1のコンバータ出力から容易に得られるので、大きな損失にはならない。
【0040】
さらにまた、従来では、絶縁トランスを有する複合共振型のハーフブリッジDC−DCコンバータの入力側に設けていた高耐圧大容量の電解コンデンサが不要であり、小型・薄型化に有利となる。
【0041】
また、本発明の絶縁型AC−DCコンバータは、以上のように、前記第1のコンバータを、前記全波整流手段からの電源ライン間に設けられる第1および第2のスイッチング素子の直列回路と、前記第1および第2のスイッチング素子の一方と並列に接続され、第1のチョークコイル、前記絶縁トランスの1次巻線、および第1のコンデンサから成る直列共振回路と、前記絶縁トランスの2次側に設けられる複数の第1の整流手段と、前記第1の整流手段からの出力を包絡線検波する第2のコンデンサと、前記複合共振波形が維持できる範囲内の周波数または単一周波数で前記第1および第2のスイッチング素子のスイッチングを制御する第1の制御手段とを備えて構成される前記複合共振型のハーフブリッジDC−DCコンバータで構成し、前記第2のコンバータを、前記第2のコンデンサの端子間に接続され、第2のチョークコイルおよび第3のスイッチング素子から成る直列回路と、前記第3のスイッチング素子の端子間に接続され、並列に直流負荷が接続される平滑コンデンサおよび第2の整流手段から成る直列回路と、前記第3のスイッチング素子の電流を検出する第1の検出手段と、前記第2のコンデンサの端子電圧を検出する第2の検出手段と、負荷電圧または電流を検出する第3の検出手段と、前記第3の検出手段によって検出される負荷電圧または電流が予め定める基準値となるように、前記第2の検出手段の検出結果と第3の検出手段の検出結果とに基づいて第3のスイッチング素子のスイッチング電流値を設定し、前記第1の検出手段の検出結果がその設定値となるように前記第3のスイッチング素子を制御する第2の制御手段とを備えて構成される前記力率改善機能を有する昇圧チョッパ回路で構成する。
【0042】
それゆえ、商用電源の全波整流波形と略相似の電圧波形が第2のコンデンサの端子間電圧に現れることで、第2のコンバータの力率改善制御に必要な信号が絶縁トランスの2次側で得られ、該絶縁トランスの1次側から信号を送る場合に必要な信号用トランスやフォトカプラなどの絶縁手段不要であり、形状的、コスト的に有利である。
【0043】
また、本発明の絶縁型AC−DCコンバータは、以上のように、前記第2のチョークコイルをトランスとし、その補助巻線から、前記第2の制御手段は、前記第2のチョークコイルを流れる電流を検知し、前記電流が略0となったタイミングで前記第3のスイッチング素子をONする。
【0044】
それゆえ、比較的容量の小さい負荷を駆動するのに好適な不連続式の駆動を行うことができる。
【0045】
さらにまた、本発明の絶縁型AC−DCコンバータは、以上のように、前記第1のチョークコイルおよび絶縁トランスを、1つの漏洩型トランスで形成する。
【0046】
それゆえ、前記直列共振回路を形成するにあたって、絶縁トランスの1次巻線に直列の第1のチョークコイルを省略することができる。
【0047】
また、本発明の絶縁型AC−DCコンバータは、以上のように、前記第1の整流手段を、MOSFETを有する同期整流回路とする。
【0048】
それゆえ、ダイオードを用いる場合に比べて、該第1の整流手段による損失を大幅に削減することができる。
【0049】
さらにまた、本発明のLED用直流電源装置は、以上のように、前記の絶縁型AC−DCコンバータから成る。
【0050】
それゆえ、上述のような絶縁型AC−DCコンバータは汎用電源としての有用性は当然ながら、特に入力高調波歪低減が重要な照明器具用電源として最適であり、小型・薄型のLED照明用としての効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
[実施の形態1]
図1および図2は、本発明の実施の第1の形態に係る絶縁型のAC−DCコンバータ31,31aの電気的構成を示すブロック図である。コンバータ31は、大略的に、商用電源32からの入力電流を全波整流する全波整流手段であるダイオードブリッジDBと、前記ダイオードブリッジDBの後段に設けられ、絶縁トランスTを有し、第1のコンバータである複合共振型のハーフブリッジDC−DCコンバータ33と、前記商用電源32とハーフブリッジDC−DCコンバータ33との間に介在され、高周波成分を含んだ入力電流を平滑化するフィルタ回路34と、前記ハーフブリッジDC−DCコンバータ33の後段に設けられて所望の電圧で安定化された直流電圧を直流負荷35へ出力し、第2のコンバータである力率改善のための昇圧チョッパ回路36とを備えて構成される。
【0052】
前記商用電源32からの正弦波交流Vacは、電流ヒューズFから、インダクタL11およびコンデンサC11から成る前記フィルタ回路34を介して前記ダイオードブリッジDBに入力され、全波整流された後、脈流が電源ライン37,38間に出力され、回生電流ループ確保用のコンデンサC12を介して、電源電圧として前記ハーフブリッジDC−DCコンバータ33に入力される。
【0053】
前記ハーフブリッジDC−DCコンバータ33は、前記電源ライン37,38間に設けられ、図示しない逆並列のダイオードをそれぞれ有する第1および第2のスイッチング素子Q1,Q2の直列回路と、前記第1および第2のスイッチング素子Q1,Q2の一方(図1および図2ではQ2)と並列に接続され、第1のチョークコイルL1、前記絶縁トランスTの1次巻線T1、および第1のコンデンサC1から成る直列共振回路と、前記第1および第2のスイッチング素子Q1,Q2の一方(図1および図2ではQ2)と並列に接続されるコンデンサC13と、前記絶縁トランスTの2次巻線T2の両端にそれぞれにアノードが接続され、第1の整流手段である2つのダイオードD11,D12と、前記ダイオードD11,D12のカソードに一端が接続され、前記2次巻線T2の中間タップに他端が接続され、前記ダイオードD11,D12からの脈流出力を包絡線検波する第2のコンデンサC2と、前記第1および第2のスイッチング素子Q1,Q2のスイッチングを制御するための第1の制御手段である制御回路39とを備えて構成される。
【0054】
前記絶縁トランスTの2次側は、上述のような2つのダイオードD11,D12を用いた中間タップを使用した取出しではなく、4つのダイオードを使用した全波整流による取出しであってもよい。その場合、二次巻線T2の中間タップが不要となる。
【0055】
前記第2のコンデンサC2の端子電圧が与えられる昇圧チョッパ回路36は、前記脈流出力が与えられる第2のチョークコイルL2、第3のスイッチング素子Q3および前記第3のスイッチング素子Q3を流れる電流を検知する電流検知抵抗R1から成る直列回路と、前記第3のスイッチング素子Q3および電流検知抵抗R1の直列回路と並列に配置され、第2の整流手段であるダイオードD2および平滑コンデンサC3の直列回路と、前記第3のスイッチング素子Q3のスイッチングを制御し、第2の制御手段であり、PFCコントローラから成る制御回路40とを備えて構成される。制御回路40には、前記電流検知抵抗R1で得られる前記第3のスイッチング素子を流れる電流の電流値、および第2のコンデンサC2の端子電圧が入力されるとともに、負荷電圧が入力される。前記平滑コンデンサC3と並列に直流負荷35が接続される。
【0056】
これに対して、図2で示すAC−DCコンバータ31aでは、昇圧チョッパ回路36aにおいて、前記負荷電圧に代えて、負荷ラインに直列に挿入される電流検知抵抗R2によって検知される負荷電流が制御回路40aに入力されるだけで、他は図1で示すAC−DCコンバータ31と同様である。
【0057】
図3は、上述のように構成されるAC−DCコンバータ31,31aの動作を説明するための各部波形図である。商用電源32からの正弦波交流VacをダイオードブリッジDBで全波整流すると、コンデンサC12から電源ライン37,38間へは、VC12で示す脈動した電圧が、ハーフブリッジDC−DCコンバータ33の非平滑電源として出力される。VQ2,IQ2はスイッチング素子Q2の電圧・電流包絡線を示したもので、VQ2包絡線はVC12と一致し、またスイッチング周波数に対して前記直列共振回路を適切なLC直列共振条件に設定し、複合共振波形が維持できる範囲内の周波数または単一周波数で動作させれば、スイッチング電流波形IQ2包絡線もVC12と相似形となる。
【0058】
そして、図4および図5には、ハーフブリッジDC−DCコンバータ33の入力電圧VC12の山部と谷部とにおけるスイッチング素子Q1,Q2のドレイン−ソース間電圧VQ1,VQ2、電流IQ1,IQ2およびコンデンサC1の端子電圧VC1、2次側ダイオードD1,D2の電流ID1,ID2を示している。これらの図4および図5で示すように、絶縁トランスTの2次側に設けられるダイオードD1,D2を流れる電流が、高周波動作の1周期毎に非導通期間を有するように制御回路39によって制御されていると、スイッチング素子Q1またはQ2がONするタイミングでは、スイッチング電流は若干の負電流(MOSFETの内蔵ダイオードを流れる)となるので、ゼロ電流スイッチング(ZCS)動作が可能で、スイッチング損失は極めて小さくなっている。また、スイッチング素子Q1またはQ2がONオンするタイミングでは、デッドオフ期間中にスイッチング素子Q2と並列に接続したコンデンサC13がインダクタL1の共振エネルギーを吸収し、印加電圧は緩やかな傾斜をもって上昇することから、ソフトスイッチングによるゼロ電圧スイッチング(ZVS)動作が可能で、スイッチング損失は極めて小さくなっている。
【0059】
また、上述のようにハーフブリッジDC−DCコンバータ33が共振状態にあると、前記コンデンサC2によってダイオードD1,D2からの電圧を包絡線検波した電圧VC2には、図3で示すように、入力交流電圧Vacに相似の正弦波電圧が現れる。さらに、第3のスイッチング素子Q3を流れる電流はIQ3となり、したがって平滑コンデンサC3の出力電圧は整流・平滑化された所望の直流電圧VC3となる。これらの結果、商用電源32からの入力電流Iacは正弦波となり高調波歪が抑制できる。
【0060】
そして、制御回路40は、前記電圧VC2に、負荷電圧または負荷電流(検出手段は図示していない)を検出し、それらの負荷電圧または負荷電流を予め定める基準値と比較したエラーアンプ出力に前記電圧VC2の検出結果を乗算した結果に基づいて、第3のスイッチング素子Q3のスイッチング電流値を設定し、電流検知抵抗R1で検出された電流値がその電流値となるように、前記第3のスイッチング素子Q3のスイッチングを制御するPFCコントローラを構成する。
【0061】
こうして、第1段目の複合共振型のハーフブリッジDC−DCコンバータ33によって、スイッチング周波数を高めても、スイッチングによる損失の増大を抑制することができる。また、商用電源32の電圧Vacの変動に対しては、たとえば入力電圧Vacの谷部で複合共振波形を維持するための多少の補正を加えることはあっても、基本的には出力側の昇圧チョッパ回路36の入力部に電源電圧Vacの全波整流波形VC12と相似の電圧VC2が得られるように駆動することによって、第1および第2のスイッチング素子Q1,Q2のスイッチング損失を抑制できるとともに、前記絶縁トランスTの2次側に設けられるダイオードD1,D2によって整流され、コンデンサC3で包絡線検波された電圧波形は、商用電源32の全波整流電圧波形と略相似形とすることができる。さらにまた、ハーフブリッジ回路を用いることによって、絶縁トランスTに入力される電圧VQ1,VQ2をシングルエンド回路などを用いる場合に比べて低くできるので、トランスTの小型化に適し、また該コンバータ33に用いるスイッチング素子Q1,Q2も低耐圧化することができ、ON抵抗の小さいMOSFETなどの選定が可能になる。こうして、総合効率を高めることができる。
【0062】
また、上述のようにコンバータ33を低耐圧化することができるとともに、該コンバータ33は複合共振波形が維持できる範囲内の周波数または単一周波数でスイッチング動作をすればよく、絶縁トランスTを介しての負荷35側からのフィードバックは不要になる。これによって、制御回路39の機能を大幅に縮小して、たとえば自励駆動の可能性もあり、該制御回路39用電源の簡易化、省略によって一層の損失低減が可能となる。
【0063】
さらにまた、第2段目のコンバータである昇圧チョッパ回路36の入力には、上述のように電源電圧Vacの全波整流波形VC12と略相似の電圧VC2を得ることができ、高調波歪抑制のために必要な信号は総て第1段目のコンバータ33の出力側、すなわち該昇圧チョッパ回路36の入力側で得られるので、絶縁トランスをまたいで該昇圧チョッパ回路36への商用電源側からのフィードフォワード回路も不要である。これによって、該昇圧チョッパ回路36における制御回路40の力率改善制御に要する回路構成を簡略化することができるとともに、該制御回路40の電源はコンバータ33の出力から容易に得られるので、大きな損失にはならない。
【0064】
さらにまた、図10や図12で示す従来技術では、絶縁トランスtを有する複合共振型のハーフブリッジDC−DCコンバータ2の入力側に高耐圧大容量の電解コンデンサc1を設けているのに対して、本AC−DCコンバータ31,31aでは不要であり、小型・薄型化に有利となる。たとえば、昇圧チョッパ回路36をIC化することができる。
【0065】
なお、上述のような絶縁型AC−DCコンバータ31,31aは、汎用電源としての有用性は当然ながら、特に入力高調波歪低減が重要な照明器具用電源として最適であり、小型・薄型のLED照明用としてこの効果が期待できる。その場合、図1で示す定電圧制御と、図2で示す定電流制御とでは、輝度を一定にできる定電流制御の方が好適である。
【0066】
[実施の形態2]
図6は、本発明の実施の第2の形態に係る絶縁型のAC−DCコンバータにおける昇圧チョッパ回路46の電気的構成を示すブロック図である。このAC−DCコンバータにおいて、昇圧チョッパ回路46以外の構成は、前述の図1や図2で示すAC−DCコンバータ31,31aと同一であり、省略している。また、昇圧チョッパ回路46は、前述の昇圧チョッパ回路36に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。注目すべきは、この昇圧チョッパ回路46では、前記第2のチョークコイルL2がトランスT10の1次巻線T101から成り、その補助巻線T102への誘起電圧が制御回路50に入力されることである。そして、制御回路50は、第2のチョークコイルである該1次巻線T1101を流れる電流I101を検知し、前記電流I101が略0となったタイミングで前記第3のスイッチング素子Q3をONする。
【0067】
したがって、図7(a)で示す第3のスイッチング素子Q3のソース−ドレイン電圧VQ3を拡大すると、図7(b)や図7(c)で示すようになり、一方、前記電流I101は図7(b)で示すように連続する可能性があるのに対して、図7(c)で示すように不連続にすることができ、比較的容量の小さい負荷、たとえば150〜300Wまでを駆動するのに好適である。図7(b)および図7(c)において、斜線部分が第3のスイッチング素子Q3のON時に流れる電流量である。
【0068】
また、スイッチング電流検出用の検知抵抗R1を入力部に変更しているが、該検知抵抗R1の位置は、制御回路50として用いる汎用のPFCコントローラICの仕様に応じて決定すればよい。
【0069】
[実施の形態3]
図8は、本発明の実施の第3の形態に係る絶縁型のAC−DCコンバータにおけるハーフブリッジDC−DCコンバータ53の電気的構成を示すブロック図である。このAC−DCコンバータにおいて、DC−DCコンバータ53以外の構成は、前述の図1や図2で示すAC−DCコンバータ31,31aと同一であり、省略している。また、DC−DCコンバータ53は、前述のDC−DCコンバータ33に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。注目すべきは、このDC−DCコンバータ53では、前記第1のチョークコイルL1および絶縁トランスTを、1つの漏洩型トランスT’で形成することである。
【0070】
すなわち、前述の絶縁トランスTの巻線結合を疎として漏洩インダクタンスを発生させることで、前記直列共振回路を形成するにあたって、該漏洩型トランスT’の1次巻線T1’が前記第1のチョークコイルL1の機能を併せて実現することができる。これによって、第1のチョークコイルL1を省略することができる。
【0071】
[実施の形態4]
図9は、本発明の実施の第4の形態に係る絶縁型のAC−DCコンバータにおけるハーフブリッジDC−DCコンバータ63の電気的構成を示すブロック図である。このAC−DCコンバータにおいて、DC−DCコンバータ63以外の構成は、前述の図1や図2で示すAC−DCコンバータ31,31aと同一であり、省略している。また、DC−DCコンバータ63は、前述のDC−DCコンバータ33に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。注目すべきは、このDC−DCコンバータ63では、前記第1および第2のダイオードD11,D12に代えて、MOSFETQ11,Q12が用いられ、同期整流が行われることである。
【0072】
具体的には、前記絶縁トランスT’’の2次巻線T2’’の中間タップを2次側回路のGNDとし、2次巻線T2’’の両端を前記MOSFETQ11,Q12のソース端子にそれぞれ接続し、ドレイン端子を一括して前記2次側GNDとの間に前記第2のコンデンサC2を接続する。また、前記MOSFETQ11,Q12のゲート端子は、それぞれ駆動抵抗R11,R12を介して、前記2次巻線T2’’から巻き足した巻線T31’’,T32’’に接続され、これら巻線T31’’,T32’’の誘起電圧が、それぞれMOSFETQ11,Q12のソース−ゲート間を順バイアスするのと同期して、該MOSFETQ11,Q12がONする。前記MOSFETQ11,Q12としてON抵抗の小さいものを用いれば、前記ダイオードD11,D12を用いる場合に比べて、整流に伴う損失を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施の第1の形態に係る絶縁型AC−DCコンバータの一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の第1の形態に係る絶縁型AC−DCコンバータの他の例を示すブロック図である。
【図3】前記AC−DCコンバータの動作を説明するための各部波形図である。
【図4】前記AC−DCコンバータにおけるハーフブリッジDC−DCコンバータの動作を説明するための各部波形図である。
【図5】前記AC−DCコンバータにおけるハーフブリッジDC−DCコンバータの動作を説明するための各部波形図である。
【図6】本発明の実施の第2の形態に係る絶縁型のAC−DCコンバータにおける昇圧チョッパ回路の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】図6で示す昇圧チョッパ回路の動作を説明するための波形図である。
【図8】本発明の実施の第3の形態に係る絶縁型のAC−DCコンバータにおけるハーフブリッジDC−DCコンバータの電気的構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施の第4の形態に係る絶縁型のAC−DCコンバータにおけるハーフブリッジDC−DCコンバータの電気的構成を示すブロック図である。
【図10】典型的な従来技術の複合共振型のAC−DCコンバータの電気的構成を示すブロック図である。
【図11】図10で示すAC−DCコンバータの動作を説明するための各部波形図である。
【図12】他の従来技術のAC−DCコンバータの電気的構成を示すブロック図である。
【図13】さらに他の従来技術のAC−DCコンバータの電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0074】
31,31a AC−DCコンバータ
32 商用電源
33,53,63 複合共振型のハーフブリッジDC−DCコンバータ
34 フィルタ回路
35 直流負荷
36,36a,46 昇圧チョッパ回路
37,38 電源ライン
39,40,40a,50 制御回路
C1 第1のコンデンサ
C2 第2のコンデンサ
C11,C12,C13 コンデンサ
D2,D11,D12 ダイオード
DB ダイオードブリッジ
L1 第1のチョークコイル
L2 第2のチョークコイル
L11 インダクタ
Q1 第1のスイッチング素子
Q2 第2のスイッチング素子
Q3 第3のスイッチング素子
Q11,Q12 MOSFET
R1 電流検知抵抗
R11,R12 駆動抵抗
T 絶縁トランス
T’ 洩型トランス
T10 トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源からの入力電流を全波整流する全波整流手段と、
前記全波整流手段の後段に設けられ、絶縁トランスを有する複合共振型のハーフブリッジDC−DCコンバータから成る第1のコンバータと、
前記第1のコンバータの後段に設けられて所望の電圧または電流で安定化された直流電力を直流負荷へ出力し、力率改善のための制御手段を有する昇圧チョッパ回路から成る第2のコンバータとを含むことを特徴とする絶縁型AC−DCコンバータ。
【請求項2】
前記第1のコンバータは、
前記全波整流手段からの電源ライン間に設けられる第1および第2のスイッチング素子の直列回路と、
前記第1および第2のスイッチング素子の一方と並列に接続され、第1のチョークコイル、前記絶縁トランスの1次巻線、および第1のコンデンサから成る直列共振回路と、
前記絶縁トランスの2次側に設けられる複数の第1の整流手段と、
前記第1の整流手段からの出力を包絡線検波する第2のコンデンサと、
前記複合共振波形が維持できる範囲内の周波数または単一周波数で前記第1および第2のスイッチング素子のスイッチングを制御する第1の制御手段とを備えて構成される前記複合共振型のハーフブリッジDC−DCコンバータから成ることを特徴とする請求項1記載の絶縁型AC−DCコンバータ。
【請求項3】
前記第2のコンバータは、
前記第2のコンデンサの端子間に接続され、第2のチョークコイルおよび第3のスイッチング素子から成る直列回路と、
前記第3のスイッチング素子の端子間に接続され、並列に直流負荷が接続される平滑コンデンサおよび第2の整流手段から成る直列回路と、
前記第3のスイッチング素子の電流を検出する第1の検出手段と、
前記第2のコンデンサの端子電圧を検出する第2の検出手段と、
負荷電圧または電流を検出する第3の検出手段と、
前記第3の検出手段によって検出される負荷電圧または電流が予め定める基準値となるように、前記第2の検出手段の検出結果と第3の検出手段の検出結果とに基づいて第3のスイッチング素子のスイッチング電流値を設定し、前記第1の検出手段の検出結果がその設定値となるように前記第3のスイッチング素子を制御する第2の制御手段とを備えて構成される前記力率改善機能を有する昇圧チョッパ回路から成ることを特徴とする請求項1または2記載の絶縁型AC−DCコンバータ。
【請求項4】
前記第2のチョークコイルはトランスであり、その補助巻線から、前記第2の制御手段は、前記第2のチョークコイルを流れる電流を検知し、前記電流が略0となったタイミングで前記第3のスイッチング素子をONすることを特徴とする請求項3記載の絶縁型AC−DCコンバータ。
【請求項5】
前記第1のチョークコイルおよび絶縁トランスを、1つの漏洩型トランスで形成することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の絶縁型AC−DCコンバータ。
【請求項6】
前記第1の整流手段は、MOSFETを有する同期整流回路から成ることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の絶縁型AC−DCコンバータ。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の絶縁型AC−DCコンバータから成り、負荷として直流点灯されるLED負荷を有することを特徴とするLED用直流電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−187821(P2008−187821A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19081(P2007−19081)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年、環境省、「省エネ型白色LED照明器具の普及促進のための低コスト化技術開発業務」、産業再生法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】