説明

絶縁基板に貫通孔を形成する方法およびインターポーザ用の絶縁基板を製造する方法

【課題】絶縁基板に複数の貫通孔を形成する際、形成位置にずれが生じ難い方法を提供する。
【解決手段】レーザ誘導式放電技術を利用して、絶縁基板に複数の貫通孔を形成する際に、最も中心にある対象位置から貫通孔を形成し、その後、貫通孔の形成対象位置を外方に広げて行く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターポーザ等を製作する際等に利用される、絶縁基板に貫通孔を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、絶縁基板にレーザ光を照射することにより、複数の貫通孔(ビア)を形成して、インターポーザ用基板を製造する方法が開示されている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、最近では、放電加工技術(レーザ誘導式放電加工技術)を利用して、絶縁基板に貫通孔を開ける技術が開示されている(例えば特許文献2)。この方法では、レーザ光を用いて絶縁基板の所望の位置を加熱した後、誘導式放電によりこの加熱位置を溶融させるとともに、溶融材料の除去が行われる。この方法では、レーザ光のみを利用する方法に比べて、より迅速に絶縁基板に貫通孔を形成することができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO2010/087483号
【特許文献2】国際公開第WO2011/038788号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように、レーザ誘導式放電加工技術では、迅速に絶縁基板に貫通孔を形成できる。
【0006】
しかしながら、この方法は、絶縁基板に局部的に熱が蓄積され易いという特徴がある。このため、絶縁基板に複数の貫通孔を逐次的に形成していくと、貫通孔の形成プロセス中に、絶縁基板が変形するという問題がある。さらに、貫通孔の形成プロセス中に、絶縁基板にこのような変形が生じると、以降の貫通孔の形成処理の際に、貫通孔の形成位置が所望の位置からずれてしまい、正確な位置に貫通孔を形成することが難しくなるという問題が生じ得る。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、本発明では、レーザ誘導式放電加工技術を用いて、絶縁基板に複数の貫通孔を形成する際に、貫通孔の形成位置にずれが生じ難い方法の提供を目的とする。また、本発明では、貫通孔の形成位置にずれが生じ難い、インターポーザ用の絶縁基板を製造する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、レーザ誘導式放電技術を利用して、絶縁基板に複数の貫通孔を形成する方法であって、
(i)絶縁基板を準備する工程と、
(ii)前記絶縁基板の表面に、水平X方向および垂直Y方向に一定のピッチPで、合計n個(ただしnは、9以上の整数)の貫通孔を逐次的に形成する工程と、
を有し、
前記(ii)の工程は、
(a)貫通孔が形成されるn個の対象位置のうち、最も中心にある対象位置が1つの場合、該対象位置は、中心位置と称され、
(b)貫通孔が形成されるn個の対象位置のうち、最も中心にある対象位置が2つ以上の場合、該対象位置は、中心対象位置群と称され、
前記対象位置から選ばれた4つの対象位置を頂点とし、前記水平X方向に平行な2辺および前記垂直Y方向に平行な2辺で構成される四角形の中で、前記中心位置または前記中心対象位置群を内部に含む最も小さな四角形を描いたとき、該四角形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を第1対象位置群とし、
前記対象位置から選ばれた4つの対象位置を頂点とし、前記水平X方向に平行な2辺および前記垂直Y方向に平行な2辺で構成される四角形の中で、前記第1対象位置群を内部に含む最も小さな四角形を描いたとき、該四角形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を第2対象位置群とし、
以下同様に、
前記対象位置から選ばれた4つの対象位置を頂点とし、前記水平X方向に平行な2辺および前記垂直Y方向に平行な2辺で構成される四角形の中で、第(k−1)対象位置群を内部に含む最も小さな四角形を描いたとき、該四角形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を第k対象位置群とした場合(ただしkは2以上の整数)、
(b1)最初に、前記中心位置または前記中心対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成するステップと、
(b2)前記(b1)のステップの次に、前記第1対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成するステップと、
...
(bk)前記(b(k−1))のステップの次に、前記第k対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成するステップと、
を含むことを特徴とする方法が提供される。
【0009】
ここで、本発明による方法において、前記n個の対象位置に貫通孔が形成される順番は、螺旋状になっていても良い。
【0010】
また、本発明による方法において、1つの対象位置に貫通孔を形成してから、次の対象位置に貫通孔を形成するまでの時間は、1msec〜2msecの範囲であっても良い。
【0011】
また、本発明による方法において、各貫通孔の直径は、5μm〜200μmの範囲であっても良い。
【0012】
また、本発明による方法において、前記絶縁基板は、厚さが0.03mm〜1.0mmの範囲であっても良い。
【0013】
また、本発明による方法において、前記ピッチPは、30μm〜500μmの範囲であっても良い。
【0014】
また、本発明による方法において、前記絶縁基板表面における貫通孔密度は、1000個/cm〜2000個/cmの範囲であっても良い。
【0015】
さらに、本発明では、レーザ誘導式放電技術を利用して、複数の貫通孔を有するインターポーザ用の絶縁基板を製造する方法であって、
(i)絶縁基板を準備する工程と、
(ii)前記絶縁基板の表面に、水平X方向および垂直Y方向に一定のピッチPで、合計n個(ただしnは、9以上の整数)の貫通孔を逐次的に形成する工程と、
を有し、
前記(ii)の工程は、
(a)貫通孔が形成されるn個の対象位置のうち、最も中心にある対象位置が1つの場合、該対象位置は、中心位置と称され、
(b)貫通孔が形成されるn個の対象位置のうち、最も中心にある対象位置が2つ以上の場合、該対象位置は、中心対象位置群と称され、
前記対象位置から選ばれた4つの対象位置を頂点とし、前記水平X方向に平行な2辺および前記垂直Y方向に平行な2辺で構成される四角形の中で、前記中心位置または前記中心対象位置群を内部に含む最も小さな四角形を描いたとき、該四角形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を第1対象位置群とし、
前記対象位置から選ばれた4つの対象位置を頂点とし、前記水平X方向に平行な2辺および前記垂直Y方向に平行な2辺で構成される四角形の中で、前記第1対象位置群を内部に含む最も小さな四角形を描いたとき、該四角形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を第2対象位置群とし、
以下同様に、
前記対象位置から選ばれた4つの対象位置を頂点とし、前記水平X方向に平行な2辺および前記垂直Y方向に平行な2辺で構成される四角形の中で、第(k−1)対象位置群を内部に含む最も小さな四角形を描いたとき、該四角形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を第k対象位置群とした場合(ただしkは2以上の整数)、
(b1)最初に、前記中心位置または前記中心対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成するステップと、
(b2)前記(b1)のステップの次に、前記第1対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成するステップと、
...
(bk)前記(b(k−1))のステップの次に、前記第k対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成するステップと、
を含むことを特徴とする方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、レーザ誘導式放電加工技術を用いて、絶縁基板に複数の貫通孔を形成する際に、貫通孔の形成位置にずれが生じ難い方法を提供できる。また、本発明では、貫通孔の形成位置にずれが生じ難い、インターポーザ用の絶縁基板を製造する方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】レーザ誘導式放電加工技術に利用されるレーザ誘導式放電加工装置の構成の一例を示した図である。
【図2】図1に示したレーザ誘導式放電加工装置100を用いて、絶縁基板180に、複数の貫通孔185P、185Qを形成する際の様子を模式的に示した図である。
【図3】図1に示したレーザ誘導式放電加工装置を用いて、絶縁基板に貫通孔を形成する際の、絶縁基板およびその近傍を拡大して示した模式図である。
【図4】絶縁基板180の部分上面図である。
【図5】従来の方法で絶縁基板に複数の貫通孔を形成する途中の、絶縁基板およびその近傍を拡大して示した模式図である。
【図6】従来の方法で絶縁基板に複数の貫通孔を形成する途中の、絶縁基板およびその近傍を拡大して示した模式図である。
【図7】絶縁基板180の部分上面図である。
【図8】本発明の方法により、絶縁基板に複数の貫通孔を形成する途中の、絶縁基板およびその近傍を拡大して示した模式図である。
【図9】絶縁基板180の部分上面図である。
【図10】本発明によるインターポーザ用の絶縁基板を製造する方法の一例の概略的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明について説明する。
【0019】
(レーザ誘導式放電加工技術)
まず初めに、本発明に利用されるレーザ誘導式放電加工技術について、簡単に説明する。
【0020】
なお、本願において、「レーザ誘導式放電加工技術」とは、以下に示すような、被加工対象に対するレーザ光照射と、電極間放電現象とを組み合わせて、被加工対象に貫通孔を形成する技術の総称を意味する。
【0021】
図1には、レーザ誘導式放電加工技術に利用されるレーザ誘導式放電加工装置の構成の一例を概略的に示す。
【0022】
図1に示すように、レーザ誘導式放電加工装置100は、レーザ光源110と、高周波高電圧電源130と、直流高圧電源140と、切り替えユニット150と、一組の電極160A、160Bとを有する。
【0023】
レーザ光源110は、これに限られるものではないが、例えば1W〜100Wの出力を有する二酸化炭素レーザであり、被加工対象に対して、例えば10μm〜50μmの範囲の焦点スポットを形成できる。
【0024】
電極160Aおよび160Bは、それぞれ、導体162Aおよび162Bと電気的に接続されており、これらの導体162A、162Bは、切り替えユニット150を介して、高周波高電圧電源130および直流高圧電源140と接続されている。
【0025】
切り替えユニット150は、導体162Aおよび162Bの接続先を、高周波高電圧電源130/直流高圧電源140の間で切り替える役割を有する。
【0026】
このようなレーザ誘導式放電加工装置100を用いて貫通孔を形成する際には、被加工対象となる絶縁基板180が、電極160A、160Bの間に配置される。電極間距離は、通常の場合、1mm程度である。さらに、ステージ(図示されていない)を水平方向に移動させることにより、絶縁基板180が電極160A、160Bに対して所定の位置に配置される。
【0027】
次に、レーザ光源110から、対象位置(貫通孔形成位置)に、レーザ光113が照射される。これにより、絶縁基板180のレーザ光113の照射位置183の温度が上昇する。
【0028】
レーザ光113の照射後、短時間の内に、切り替えユニット150により、導体162Aおよび162Bが高周波高電圧電源130に接続され、これにより、電極160A、160B間で、高周波高電圧の放電が生じる。放電は、丁度、レーザ光113の照射位置183において生じる。これは、この位置では、レーザ光113の照射により温度が局部的に上昇しており、絶縁基板の抵抗が他の部分よりも低くなっているためである。
【0029】
電極160A、160B間での放電により、絶縁基板180の照射位置183には、大きなエネルギーが印加され、局部的に絶縁基板180が溶融する。
【0030】
次に、切り替えユニット150により、導体162Aおよび162Bが直流高圧電源140に接続され、両電極160A、160B間に、高直流電圧が印加される。これにより、絶縁基板180の照射位置183の溶融物が除去され、絶縁基板180の所望の位置に、貫通孔185が形成される。
【0031】
なお、図1に示したレーザ誘導式放電加工装置100は、一例であって、その他の構成のレーザ誘導式放電加工装置を使用しても良いことは、当業者には明らかである。
【0032】
図2には、図1に示したレーザ誘導式放電加工装置100を用いて、絶縁基板180に、複数の貫通孔185P、185Qを逐次的に形成する際の様子を模式的に示した図である。
【0033】
図2に示すように、絶縁基板180に複数の貫通孔を形成する場合、最初に、前述の操作により、絶縁基板180に第1の貫通孔185Pが形成される。
【0034】
次に、貫通孔の形成ピッチPに合わせて、絶縁基板180に対して、電極160A、160Bの位置がずらされる。そして、第1の貫通孔185Pの形成の際の操作と同様の操作が行われ、第2の貫通孔185Qが形成される。なお、通常の場合、貫通孔185P、185Q間のピッチPは、比較的狭く、例えば、最大でも100μm程度である。
【0035】
図3は、前述のようなレーザ誘導式放電加工装置100を使用して貫通孔を形成する際の、絶縁基板180およびその近傍部分を拡大して示した概略的な断面図である。
【0036】
図3に示すように、絶縁基板180は、加工前に、ステージ190の上に置載される。ステージ190は、中央部分が中空の「額縁」状の形状となっており、この中空部分192が加工領域となる。すなわち、絶縁基板180において、ステージ190の中空部分192と対応する領域内で、貫通孔185の形成が行われる。なお、絶縁基板180は、位置ずれを防止するため、周囲が拘束部材210で拘束されている。
【0037】
ここで、前述のようなレーザ誘導式放電加工技術を用いて、絶縁基板に貫通孔を形成する場合、絶縁基板に局部的に熱が蓄積され易いという問題がある。このため、絶縁基板180に複数の貫通孔185を逐次的に形成していくと、貫通孔の形成プロセス中に、絶縁基板180が変形するという問題が生じ得る。さらに、貫通孔の形成プロセス中に、絶縁基板180にこのような変形が生じると、以降の貫通孔の形成処理の際に、貫通孔の形成位置が所望の位置からずれてしまい、正確な位置に貫通孔を形成することが難しくなるという問題が生じ得る。
【0038】
図4および図5を参照して、この問題を具体的に説明する。
【0039】
図4には、絶縁基板180の部分上面図を示す。図4において、○の位置(1,1)〜(5,5)は、貫通孔が形成される位置を示している。各位置(1,1)〜(5,5)は、一定のピッチPで、XY平面に配列されている。
【0040】
ここで、貫通孔を形成する際に、図4の右上の枠内の矢印に示すように、位置(1,1)を開始位置とし、矢印の方向に沿って、順次位置(2,1)、位置(3,1)、位置(4,1)、および位置(5,1)と貫通孔を形成し、次に位置(5,2)、位置(4,2)、位置(3,2)、位置(2,2)、および位置(1,2)と貫通孔を形成し、次に、位置(1,3)、位置(2,3)、位置(3,3)、位置(4,3)、および位置(5,3)と貫通孔を形成し、次に位置(5,4)、位置(4,4)、位置(3,4)、位置(2,4)、および位置(1,4)と貫通孔を形成し、さらに位置(1,5)、位置(2,5)、位置(3,5)、位置(4,5)、および位置(5,5)と貫通孔を形成する場合を考える。
【0041】
この場合、貫通孔が形成される順番は、図4に示すように、位置(1,1)が第1番目(185−1)となり、位置(2,1)が第2番目(185−2)となり、...位置(5,5)が第25番目(185−25)となる。
【0042】
このような順番で、絶縁基板180に複数の貫通孔を形成しようとすると、例えば、第15番目の貫通孔185−15を形成した段階で、図4における絶縁基板180の表面の上側、すなわち位置(1,1)〜(5,1)、位置(1,2)〜(5,2)、および位置(1,3)〜(5,3)の部分に、熱が蓄積されるようになる。そのため、プロセスの途中の段階で、絶縁基板180に変形が生じる。
【0043】
図5および図6は、第15番目の貫通孔185−15を形成した段階における、絶縁基板180を図4の矢印410の方向から見たときの概略的な断面図を示している。
【0044】
図5および図6において、貫通孔185Aは、図4における位置(1,1)〜(5,1)に形成された貫通孔185−1〜185−5に相当し、貫通孔185Bは、図4における位置(1,2)〜(5,2)に形成された貫通孔185−6〜185−10に相当し、貫通孔185Cは、図4における位置(1,3)〜(5,3)に形成された貫通孔185−11〜185−15に相当する。
【0045】
図5に示す例では、絶縁基板180の右側部分が変形し、上向きに突出している。この変形部分は、貫通孔の形成が完了した領域に対応しているため、以下、「貫通孔形成完了領域」と称し、符号430で表すことにする。一方、変形の生じていない絶縁基板180の左側部分は、貫通孔の形成が未完了の領域に対応しているため、以下、「貫通孔形成未完了領域」と称し、符号440で表すことにする。
【0046】
一方、図6に示す例では、絶縁基板180には、右側部分が上向きに突出し、左側部分が下向きに突出するような変形が生じている。すなわち、「貫通孔形成完了領域」430が上部に突出し、「貫通孔形成未完了領域」440が下向きに突出している。
【0047】
ここで、貫通孔形成の途中段階で、絶縁基板180が図5に示すような変形、すなわち、「貫通孔形成完了領域」430が上向きに突出し、「貫通孔形成未完了領域」440が平坦なままであるような変形が生じた場合、その後の「貫通孔形成未完了領域」440における貫通孔の形成過程で、貫通孔の形成位置が所望の位置からずれる可能性は低いと言える。
【0048】
これに対して、貫通孔の形成途中段階で、絶縁基板180が図6に示すような変形、すなわち、「貫通孔形成完了領域」430が上向きに突出し、「貫通孔形成未完了領域」440が下向きに突出したような変形が生じた場合、その後の「貫通孔形成未完了領域」440における貫通孔の形成過程において、貫通孔の形成位置が所望の位置からずれる可能性が高くなる。
【0049】
なお、絶縁基板180に、図5および図6のうちいずれの態様の変形が生じるかは、プロセス条件等の僅かの変動等によっても異なるため、予め、絶縁基板の変形の態様を予測しておくことは難しい。
【0050】
また、絶縁基板に複数の貫通孔を逐次的に形成する場合には、それぞれの貫通孔を形成する際の絶縁基板に対する電極対の位置を予めプログラム化しておき、このプログラムに基づいて、電極または絶縁基板を移動させる操作を行うことが一般的である。しかしながら、絶縁基板の変形の態様が予測できなければ、そのようなプログラム化を行うことができなくなる。また、図5および図6の変形態様のうちの一方に基づいて、プログラム化を行った場合、予め定めた態様とは異なる変形が生じた場合、「貫通孔形成未完了領域」に貫通孔を形成する際に、所望の位置からの位置ずれが生じてしまう。
【0051】
また、通常、電極160A、160Bの間の距離は、1mm〜2mm程度と極めて狭くなっている。このため、絶縁基板180の変形の態様として、図5のような変形を予測して、貫通孔形成プロセスを実施した場合、図6のような態様の変形が生じると、プロセスの途中で、電極が絶縁基板180に衝突してしまうという問題も生じ得る。また逆に、図6のような態様の変形を予測して貫通孔形成プロセスを実施したにも関わらず、図5のような態様の変形が生じた場合も、同様に電極の衝突の問題が生じ得る。
【0052】
本願発明者らは、このような絶縁基板の変形に起因した貫通孔形成位置のずれの問題および電極の衝突に関する問題を認識し、この問題を軽減するための方策を検討してきた。その結果、貫通孔の形成の順番を所定の順番とすることにより、位置ずれおよび/または電極と絶縁基板の衝突の問題が有意に抑制されることを見出し、本願発明に至った。
【0053】
すなわち、本発明では、
レーザ誘導式放電技術を利用して、絶縁基板に複数の貫通孔を形成する方法であって、
(i)絶縁基板を準備する工程と、
(ii)前記絶縁基板の表面に、水平X方向および垂直Y方向に一定のピッチPで、合計n個(ただしnは、9以上の整数)の貫通孔を逐次的に形成する工程と、
を有し、
前記(ii)の工程は、
(a)貫通孔が形成されるn個の対象位置のうち、最も中心にある対象位置が1つの場合、該対象位置は、中心位置と称され、
(b)貫通孔が形成されるn個の対象位置のうち、最も中心にある対象位置が2つ以上の場合、該対象位置は、中心対象位置群と称され、
前記対象位置から選ばれた4つの対象位置を頂点とし、前記水平X方向に平行な2辺および前記垂直Y方向に平行な2辺で構成される四角形の中で、前記中心位置または前記中心対象位置群を内部に含む最も小さな四角形を描いたとき、該四角形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を第1対象位置群とし、
前記対象位置から選ばれた4つの対象位置を頂点とし、前記水平X方向に平行な2辺および前記垂直Y方向に平行な2辺で構成される四角形の中で、前記第1対象位置群を内部に含む最も小さな四角形を描いたとき、該四角形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を第2対象位置群とし、
以下同様に、
前記対象位置から選ばれた4つの対象位置を頂点とし、前記水平X方向に平行な2辺および前記垂直Y方向に平行な2辺で構成される四角形の中で、第(k−1)対象位置群を内部に含む最も小さな四角形を描いたとき、該四角形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を第k対象位置群とした場合(ただしkは2以上の整数)、
(b1)最初に、前記中心位置または前記中心対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成するステップと、
(b2)前記(b1)のステップの次に、前記第1対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成するステップと、
...
(bk)前記(b(k−1))のステップの次に、前記第k対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成するステップと、
を含むことを特徴とする方法が提供される。
【0054】
以下、本発明による効果を、図7〜図8を参照して説明する。
【0055】
図7には、図4と同様の、絶縁基板180の部分上面図を示す。図7において、○の位置(1,1)〜(5,5)は、貫通孔が形成される位置を示している。各位置(1,1)〜(5,5)は、X方向およびY方向に一定のピッチP(例えば100μm)で、XY平面に配列されている。
【0056】
ここで、図7の場合、貫通孔が形成される順番が図4の場合とは異なっている。すなわち、貫通孔は、中央の位置(3,3)が第1番目(185−1)となり、位置(3,2)が第2番目(185−2)となり、位置(4,2)が第3番目(185−3)となり、位置(4,3)が第4番目(185−4)となり、位置(4,4)が第5番目(185−5)となり、位置(3,4)が第6番目(185−6)となり、位置(2,4)が第7番目(185−7)となり、位置(2,3)が第8番目(185−8)となり、位置(2,2)が第9番目(185−9)となり、位置(2,1)が第10番目(185−10)となり、位置(3,1)が第11番目(185−11)となり、位置(4,1)が第12番目(185−12)となり、位置(5,1)が第13番目(185−13)となり、位置(5,2)が第14番目(185−14)となり、位置(5,3)が第15番目(185−15)となり、位置(5,4)が第16番目(185−16)となり、位置(5,5)が第17番目(185−17)となり、位置(4,5)が第18番目(185−18)となり、位置(3,5)が第19番目(185−19)となり、位置(2,5)が第20番目(185−20)となり、位置(1,5)が第21番目(185−21)となり、位置(1,4)が第22番目(185−22)となり、位置(1,3)が第23番目(185−23)となり、位置(1,2)が第24番目(185−24)となり、位置(1,1)が第25番目(185−25)となるようにして、形成される。
【0057】
すなわち、図7の場合、図の右上の枠内に示したような「螺旋状」の順番で、貫通孔が形成される。
【0058】
図8には、位置(2,2)に、第9番目の貫通孔185−9を形成した段階における、絶縁基板180を図7の矢印410の方向から見たときの概略的な断面図を示す。
【0059】
図8において、貫通孔185Dは、図7における位置(3,3)、(4,3)および(2,3)に形成された貫通孔185−1、185−4、および185−8に相当し、貫通孔185Eは、図7における位置(3,2)、(4,2)および(2,2)に形成された貫通孔185−2、185−3および185−9に相当し、貫通孔185Fは、図7における位置(4,4)、(3,4)および(2,4)に形成された貫通孔185−5、185−6および185−7に相当する。
【0060】
図8に示すように、この場合、貫通孔の形成途中段階で、絶縁基板180は、「貫通孔形成完了領域」430、すなわち絶縁基板180の中央部分が上向きに突出するような変形を受ける。しかしながら、「貫通孔形成未完了領域」440、すなわち絶縁基板180の両端部分は、実質的に平坦なままである。また、この場合、「貫通孔形成未完了領域」440が下向きに突出するような変形は生じ難い。従って、図7のような順番で、貫通孔を形成した場合、絶縁基板の変形の態様が毎回ほぼ一定となる。このため、絶縁基板の変形を考慮した上で、各貫通孔の形成位置を正確に定めることが可能となる。
【0061】
このように、図7に示すような順番で、貫通孔を形成した場合、その後の「貫通孔形成未完了領域」440における貫通孔の形成過程で、貫通孔の形成位置が所望の位置からずれるという問題を軽減することが可能となる。
【0062】
また、常に図8に示すような変形が生じる場合には、絶縁基板180が電極160A、160Bに衝突してしまうという問題も軽減される。変形量に基づいて、予め電極160A、160Bの鉛直方向の位置を調整しておくことができるからである。
【0063】
このように、本発明では、レーザ誘導式放電加工技術を用いて、絶縁基板に複数の貫通孔を形成する際に、貫通孔の形成位置にずれが生じ難い方法を提供することが可能となる。また、本発明では、電極と絶縁基板の衝突の問題が軽減された方法を提供することが可能となる。
【0064】
なお、図7に示した貫通孔の形成順番は、単なる一例に過ぎないことは、当業者には明らかである。
【0065】
すなわち、本発明により、XY平面上において、X方向およびY方向に一定のピッチPで貫通孔を形成する際の、貫通孔の形成順番をより一般的に表現すると、以下のように言える。
【0066】
貫通孔が形成されるn個の対象位置のうち、最も中心にある対象位置が1つの場合、該対象位置を「中心位置」と称し、この「中心位置」のXY座標を(i,j)としたとき、
座標(i−1,j−1)、座標(i−1,j+1)、座標(i+1,j−1)、および座標(i+1,j+1)で表される対象位置の4点を頂点とする正方形において、該正方形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を「第1対象位置群」とし、
座標(i−2,j−2)、座標(i−2,j+2)、座標(i+2,j−2)、および座標(i+2,j+2)で表される対象位置の4点を頂点とする正方形において、該正方形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を「第2対象位置群」とし、
以下同様に、
座標(i−k,j−k)、座標(i−k,j+k)、座標(i+k,j−k)、および座標(i+k,j+k)で表される対象位置の4点を頂点とする正方形において、該正方形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を「第k対象位置群」とした場合、
(1)最初に、前記中心位置に貫通孔を形成し、
(2)前記(1)のステップの次に、前記第1対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成し、
...
(k)前記(k−1)のステップの次に、前記第k対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成する。
【0067】
このような順番で貫通孔を形成することにより、前述のような本発明の効果を得ることができる。
【0068】
なお、以上の説明では、貫通孔が形成される全対象位置の「中心」に、単一の対象位置、すなわち「中心位置」が存在する場合を例に説明した。例えば、図7のように、貫通孔が5×5のマトリクス状に形成される例では、全対象位置の「中心位置」は、位置(3,3)となる。また、例えば、貫通孔が3×3のマトリクス状に形成される場合、全対象位置の「中心位置」の座標は、(2,2)となる。
【0069】
しかしながら、貫通孔が形成される全対象位置の「中心」には、複数の対象位置が存在する場合もある。
【0070】
以下、図9を参照して、このような場合の貫通孔の形成順番について説明する。
【0071】
図9には、図7と同様の、絶縁基板180の部分上面図を示す。図9において、○の位置(1,1)〜(4,4)は、貫通孔が形成される位置を示している。各位置(1,1)〜(4,4)は、X方向およびY方向に一定のピッチP(例えば100μm)で、XY平面に配列されている。
【0072】
このような貫通孔が4×4のマトリクス状に形成される配置では、絶縁基板180の表面には、いわゆる数学的な「中心」となる対象位置は存在しない。そこで、本発明では、このような場合、貫通孔が形成される対象位置のうち、最も中心にある複数の対象位置を「中心対象一群」と表すことにする。
【0073】
このような「中心対象一群」が存在する場合、この「中心対象一群」を、前述の「中心位置」と同様に取扱い、各貫通孔の形成順番を定めることにより、前述のような本発明の効果を得ることができる。
【0074】
例えば、図9に示した貫通孔配置の場合、位置(2,2)、位置(3,2)、位置(2,3)、および位置(3,3)が「中心対象一群」となる。また、この「中心対象一群」を取り囲む残りの対象位置が、「第1対象位置群」を構成する。
【0075】
従って、図9に示した貫通孔配置の場合、貫通孔は、例えば、「中心対象一群」の位置(2,3)が第1番目(185−1)となり、位置(2,2)が第2番目(185−2)となり、位置(3,2)が第3番目(185−3)となり、位置(3,3)が第4番目(185−4)となり(以上「中心対象一群」)、次に、位置(3,4)が第5番目(185−5)となり、位置(2,4)が第6番目(185−6)となり、位置(1,4)が第7番目(185−7)となり、位置(1,3)が第8番目(185−8)となり、位置(1,2)が第9番目(185−9)となり、位置(1,1)が第10番目(185−10)となり、位置(2,1)が第11番目(185−11)となり、位置(3,1)が第12番目(185−12)となり、位置(4,1)が第13番目(185−13)となり、位置(4,2)が第14番目(185−14)となり、位置(4,3)が第15番目(185−15)となり、位置(4,4)が第16番目(185−16)となるようにして(以上「第1対象位置群」)、形成されれば良い。
【0076】
図9以外の貫通孔配置においても、同様の手順で「中心対象一群」が定義されることは当業者には明らかであろう。例えば、貫通孔が3×4(または4×3)のマトリクス状に形成される配置の場合、最も中心にある2つの対象位置が「中心対象一群」として選定される。
【0077】
以上の議論をまとめると、XY平面上において、X方向およびY方向に一定のピッチPで貫通孔を形成する場合、本発明における貫通孔の形成順番は、以下のように定められる:
貫通孔が形成されるn個の対象位置から選ばれた4つの対象位置を頂点とし、前記水平X方向に平行な2辺および前記垂直Y方向に平行な2辺で構成される四角形の中で、「中心位置」または「中心対象位置群」を内部に含む最も小さな四角形を描いたとき、該四角形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を第1対象位置群とし、
前記対象位置から選ばれた4つの対象位置を頂点とし、前記水平X方向に平行な2辺および前記垂直Y方向に平行な2辺で構成される四角形の中で、前記第1対象位置群を内部に含む最も小さな四角形を描いたとき、該四角形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を第2対象位置群とし、
以下同様に、
前記対象位置から選ばれた4つの対象位置を頂点とし、前記水平X方向に平行な2辺および前記垂直Y方向に平行な2辺で構成される四角形の中で、第(k−1)対象位置群を内部に含む最も小さな四角形を描いたとき、該四角形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を第k対象位置群とした場合(ただしkは2以上の整数)、
(1)最初に、前記中心位置または前記中心対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成するステップと、
(2)前記(1)のステップの次に、前記第1対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成するステップと、
...
(k)前記(k−1)のステップの次に、前記第k対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【0078】
ここで、「(対象位置群を)内部に含む」四角形と言う表現は、対象とする「対象位置群」の全位置が、前記四角形の内側に存在することを意味し、対象とする「対象位置群」のいずれかの位置が、前記四角形の頂点および各辺上に位置する場合を含まないことに留意する必要がある。例えば、図9において、位置(1,2)、位置(4,2)、位置(4,4)および位置(1,4)を4頂点とする四角形は、位置(2,2)および位置(3,2)がその辺上に存在するため、「中心対象一群」を内部に含んではいない。従って、この四角形の4頂点および各辺上の位置は、第1対象位置群を構成しない。
【0079】
なお、「中心対象一群」内の各対象位置については、貫通孔を形成する順番は、特に限られない。同一の「第k対象位置群」内の各対象位置についても同様である。ただし、図7および図9に示したように、中心側から外側に向かって螺旋状に広がるような順番で貫通孔を形成した場合、絶縁基板180に対する電極160A、160Bの位置をあまり移動させずに済み、より効率的に貫通孔を形成することができる。
【0080】
(インターポーザ用の絶縁基板を製造する方法)
次に、図10を参照して、本発明によるインターポーザ用の絶縁基板を製造する方法について、説明する。
【0081】
図10には、本発明によるインターポーザ用の絶縁基板を製造する方法の概略的なフロー図の一例を示す。
【0082】
図10に示すように、本発明によるインターポーザ用の絶縁基板を製造する方法は、
(a)絶縁基板を準備する工程(ステップS110)と、
(b)前記絶縁基板の表面に、水平X方向および垂直Y方向に一定のピッチPで、合計n個(ただしnは、9以上の整数)の貫通孔を逐次的に形成する工程(ステップS120)と、
を有する。
【0083】
以下、各工程について、詳しく説明する。
【0084】
(ステップS110)
まず、インターポーザ用の絶縁基板が準備される。
【0085】
絶縁基板の材質は、特に限られない。絶縁基板は、例えば、ソーダライムガラスのようなガラス基板であっても良い。
【0086】
また、絶縁基板の厚さは、特に限られない。絶縁基板の厚さは、例えば、0.03mm〜0.5mmの範囲であっても良い。絶縁基板の厚さが薄くなるほど、貫通孔の形成時間が短縮できるが、ハンドリングが煩雑となる。
【0087】
(ステップS120)
次に、レーザ誘導式放電技術を用いて、ステップS110で準備した絶縁基板に、複数の貫通孔が形成される。
【0088】
適用されるレーザ誘導式放電技術は、特に限られないが、例えば図1に示したような装置を用いて、絶縁基板に複数の貫通孔を形成しても良い。
【0089】
使用されるレーザ光は、二酸化炭素レーザであっても良い。また、レーザ光の出力は、例えば、1W〜100Wの範囲であっても良い。さらに、レーザ光のスポット直径は、例えば、10μm〜50μmの範囲であっても良い。ただし、レーザ光のスポットの形状は、円形状以外の形状、例えば楕円形状であっても良い。なお、レーザ光は、絶縁基板の両面側から照射しても良い。
【0090】
使用される高周波高電圧電源は、周波数1MHz〜100MHzであっても良い。使用される直流高圧電源は、電極間に、1kV〜250kVの範囲の直流電圧を印加できる電源であっても良い。なお、電極間距離は、例えば、1mm〜10mmの範囲である。
【0091】
前述のように、絶縁基板に貫通孔を形成する際には、絶縁基板の上下に電極を配置する。次に、絶縁基板にレーザ光を照射し、目標位置(貫通孔形成位置)を加熱した状態で、高周波高電圧電源から電極に高周波電圧を印加することにより、同位置に放電を発生させる。これにより、絶縁基板が局部的に溶融する。次に、電極間に、直流高電圧を印加することにより、溶融物が除去され、絶縁基板に貫通孔が形成される。
【0092】
貫通孔が形成される度に、電極を絶縁基板に対して移動させる。そして、新たな対象位置で同様の操作を行い、絶縁基板に貫通孔を連続的に形成する。一つの貫通孔が形成されてから、次の貫通孔が形成されるまでの時間は、例えば1msec〜2msecの範囲である。
【0093】
貫通孔の開口部の直径は、例えば、10μm〜70μmの範囲である。貫通孔の形成密度は、例えば、1000個/cm〜2000個/cmの範囲である。また、貫通孔間のピッチPは、例えば、100μmである。
【0094】
ここで、本発明では、このステップS120は、
(a)貫通孔が形成されるn個の対象位置のうち、最も中心にある対象位置が1つの場合、該対象位置は、中心位置と称され、
(b)貫通孔が形成されるn個の対象位置のうち、最も中心にある対象位置が2つ以上の場合、該対象位置は、中心対象位置群と称され、
前記対象位置から選ばれた4つの対象位置を頂点とし、前記水平X方向に平行な2辺および前記垂直Y方向に平行な2辺で構成される四角形の中で、前記中心位置または前記中心対象位置群を内部に含む最も小さな四角形を描いたとき、該四角形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を第1対象位置群とし、
前記対象位置から選ばれた4つの対象位置を頂点とし、前記水平X方向に平行な2辺および前記垂直Y方向に平行な2辺で構成される四角形の中で、前記第1対象位置群を内部に含む最も小さな四角形を描いたとき、該四角形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を第2対象位置群とし、
以下同様に、
前記対象位置から選ばれた4つの対象位置を頂点とし、前記水平X方向に平行な2辺および前記垂直Y方向に平行な2辺で構成される四角形の中で、第(k−1)対象位置群を内部に含む最も小さな四角形を描いたとき、該四角形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を第k対象位置群とした場合(ただしkは2以上の整数)、
(b1)最初に、前記中心位置または前記中心対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成するステップと、
(b2)前記(b1)のステップの次に、前記第1対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成するステップと、
...
(bk)前記(b(k−1))のステップの次に、前記第k対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成するステップと、
を含む。
【0095】
前述のように、このような順番で、貫通孔を形成することにより、「貫通孔形成未完了領域」における貫通孔の形成過程で、貫通孔の形成位置が所望の位置からずれるという問題を軽減することが可能となる。また、絶縁基板と電極対の衝突の問題も軽減される。
【0096】
このように、本発明では、レーザ誘導式放電加工技術を用いて、インターポーザ用の絶縁基板を製造する際に、貫通孔の形成位置にずれが生じ難い方法を提供することが可能となる。また、レーザ誘導式放電加工技術を用いて、インターポーザ用の絶縁基板を製造する際に、電極と絶縁基板の衝突の問題が軽減された方法を提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、インターポーザ等の製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0098】
100 レーザ誘導式放電加工装置
110 レーザ光源
113 レーザ光
130 高周波高電圧電源
140 直流高圧電源
150 切り替えユニット
160A、160B 電極
162A、162B 導体
180 絶縁基板
183 照射位置
185 貫通孔
185A〜185F 貫通孔
185P、185Q 貫通孔
190 ステージ
192 中空部分
210 拘束部材
430 貫通孔形成完了領域
440 貫通孔形成未完了領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ誘導式放電技術を利用して、絶縁基板に複数の貫通孔を形成する方法であって、
(i)絶縁基板を準備する工程と、
(ii)前記絶縁基板の表面に、水平X方向および垂直Y方向に一定のピッチPで、合計n個(ただしnは、9以上の整数)の貫通孔を逐次的に形成する工程と、
を有し、
前記(ii)の工程は、
(a)貫通孔が形成されるn個の対象位置のうち、最も中心にある対象位置が1つの場合、該対象位置は、中心位置と称され、
(b)貫通孔が形成されるn個の対象位置のうち、最も中心にある対象位置が2つ以上の場合、該対象位置は、中心対象位置群と称され、
前記対象位置から選ばれた4つの対象位置を頂点とし、前記水平X方向に平行な2辺および前記垂直Y方向に平行な2辺で構成される四角形の中で、前記中心位置または前記中心対象位置群を内部に含む最も小さな四角形を描いたとき、該四角形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を第1対象位置群とし、
前記対象位置から選ばれた4つの対象位置を頂点とし、前記水平X方向に平行な2辺および前記垂直Y方向に平行な2辺で構成される四角形の中で、前記第1対象位置群を内部に含む最も小さな四角形を描いたとき、該四角形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を第2対象位置群とし、
以下同様に、
前記対象位置から選ばれた4つの対象位置を頂点とし、前記水平X方向に平行な2辺および前記垂直Y方向に平行な2辺で構成される四角形の中で、第(k−1)対象位置群を内部に含む最も小さな四角形を描いたとき、該四角形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を第k対象位置群とした場合(ただしkは2以上の整数)、
(b1)最初に、前記中心位置または前記中心対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成するステップと、
(b2)前記(b1)のステップの次に、前記第1対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成するステップと、
...
(bk)前記(b(k−1))のステップの次に、前記第k対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記n個の対象位置に貫通孔が形成される順番は、螺旋状になっている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つの対象位置に貫通孔を形成してから、次の対象位置に貫通孔を形成するまでの時間は、1msec〜2msecの範囲である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
各貫通孔の直径は、5μm〜200μmの範囲である請求項1乃至3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記絶縁基板は、厚さが0.3mm〜1.0mmの範囲である請求項1乃至4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記ピッチPは、30μm〜500μmの範囲である請求項1乃至5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記絶縁基板表面における貫通孔密度は、1000個/cm〜2000個/cmの範囲である請求項1乃至6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
レーザ誘導式放電技術を利用して、複数の貫通孔を有するインターポーザ用の絶縁基板を製造する方法であって、
(i)絶縁基板を準備する工程と、
(ii)前記絶縁基板の表面に、水平X方向および垂直Y方向に一定のピッチPで、合計n個(ただしnは、9以上の整数)の貫通孔を逐次的に形成する工程と、
を有し、
前記(ii)の工程は、
(a)貫通孔が形成されるn個の対象位置のうち、最も中心にある対象位置が1つの場合、該対象位置は、中心位置と称され、
(b)貫通孔が形成されるn個の対象位置のうち、最も中心にある対象位置が2つ以上の場合、該対象位置は、中心対象位置群と称され、
前記対象位置から選ばれた4つの対象位置を頂点とし、前記水平X方向に平行な2辺および前記垂直Y方向に平行な2辺で構成される四角形の中で、前記中心位置または前記中心対象位置群を内部に含む最も小さな四角形を描いたとき、該四角形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を第1対象位置群とし、
前記対象位置から選ばれた4つの対象位置を頂点とし、前記水平X方向に平行な2辺および前記垂直Y方向に平行な2辺で構成される四角形の中で、前記第1対象位置群を内部に含む最も小さな四角形を描いたとき、該四角形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を第2対象位置群とし、
以下同様に、
前記対象位置から選ばれた4つの対象位置を頂点とし、前記水平X方向に平行な2辺および前記垂直Y方向に平行な2辺で構成される四角形の中で、第(k−1)対象位置群を内部に含む最も小さな四角形を描いたとき、該四角形の4つの辺上および4つの頂点に位置する対象位置を第k対象位置群とした場合(ただしkは2以上の整数)、
(b1)最初に、前記中心位置または前記中心対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成するステップと、
(b2)前記(b1)のステップの次に、前記第1対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成するステップと、
...
(bk)前記(b(k−1))のステップの次に、前記第k対象位置群に属する対象位置の全てに、貫通孔を形成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−86236(P2013−86236A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231102(P2011−231102)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】