説明

絶縁層用樹脂組成物

【課題】高温で長時間の処理を行わないで架橋され、表面接着性に優れた絶縁層を形成可能な有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)ウレア結合もしくはウレタン結合を介して結合した感光性基を有する繰り返し単位を含有する高分子化合物と、(B)硬化剤と、(C)有機溶剤とを含有することを特徴とする有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物である。有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物をオーバーコート層に用いることを特徴とした有機薄膜トランジスタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁層を形成するための樹脂組成物に関し、特に有機薄膜トランジスタにおける絶縁層を形成するための樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界効果トランジスタは、無機半導体より低温プロセスで製造できるため、基板としてプラスチック基板やフィルムを用いることができ、軽量で壊れにくい素子を作製することができる。また、有機材料を含む溶液の塗布や印刷法を用いた成膜により素子作製が可能な場合があり、大面積の素子を低コストで製造することが可能である。さらに、トランジスタの検討に用いることができる材料の種類が豊富であるため、分子構造の異なる材料を検討に用いれば、容易に材料特性を根本的に変化させることが可能である。そのため、異なる機能を有する材料を組み合わせることで、無機半導体では不可能なフレキシブルな機能、素子等を実現することも可能である。
【0003】
電界効果トランジスタでは、ゲート電極に印加される電圧がゲート絶縁層を介して半導体層に作用して、ドレイン電流のオン、オフを制御する。そのため、ゲート電極と半導体層の間にはゲート絶縁層が形成される。
【0004】
また、有機電界効果トランジスタに用いられる有機半導体化合物は、湿度、酸素等の環境の影響を受けやすく、トランジスタ特性が、湿度、酸素等に起因する経時劣化を起こしやすい。
【0005】
そのため、有機半導体化合物が剥き出し状態になるボトムゲート型有機電界効果トランジスタ素子構造では、素子構造全体を覆うオーバーコート層を形成して有機半導体化合物を外気との接触から保護することが必須となっている。一方、トップゲート型有機電界効果トランジスタ素子構造では、有機半導体化合物はゲート絶縁層によりコートされて保護されている。
【0006】
このように、有機電界効果トランジスタでは、有機半導体層を覆うオーバーコート層及びゲート絶縁層等を形成するために、樹脂組成物が用いられる。本願明細書では、このような絶縁層及び絶縁膜を形成するのに用いる樹脂組成物を絶縁層用樹脂組成物という。
【0007】
絶縁層用樹脂組成物には、薄膜にしたときの絶縁破壊強度、有機半導体と良好な界面を形成するための有機半導体との親和性、半導体との界面を形成する膜表面の平坦さ等の特性が要求される。また、絶縁層中に含まれる高分子化合物が架橋していると電気特性が良好になるが、架橋のために絶縁層用樹脂組成物を高温で長時間処理すると素子を構成する有機物が劣化してトランジスタ特性が低下する。そのため、絶縁層用樹脂組成物は比較的低温で架橋することが好ましい。
【0008】
例えば、特許文献1には、有機電界効果トランジスタにおけるゲート絶縁層として、フッ素樹脂を含む層が報告されている。しかしながら、上記フッ素樹脂を絶縁層に用いた有機電界効果トランジスタでは、フッ素樹脂の撥液性ならびに密着性の問題から、その上に塗布法によって平坦な層を形成することが困難であり、表面に電極などを安定的に付着させることも困難である。
【0009】
そのため、有機電界効果トランジスタに用いた場合、電気絶縁性に優れ、トランジスタ特性に悪影響を与えずに、絶縁層を含む有機層の積層構造を容易に形成することが可能であって該絶縁層の表面密着性が優れる有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2005−513788
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、高温で長時間の処理を行わないで、表面接着性に優れた絶縁層を形成可能な有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題に鑑み、種々検討を行った結果、感光性である特定の樹脂組成物を用いることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明に到った。
【0013】
即ち、本発明は第一に、(A)ウレア結合もしくはウレタン結合を介して結合した感光性基を有する繰り返し単位を含有する高分子化合物と、(B)硬化剤と、(C)有機溶剤とを含有することを特徴とする有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物を提供する。
【0014】
本発明は第二に、ウレア結合もしくはウレタン結合を介して結合した感光性基を有する繰り返し単位を含有する高分子化合物が、一般式(1)で表される繰り返し単位及び一般式(2)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含有する高分子化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物を提供する。
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、R及びRは、同一又は相異なり、水素原子又はメチル基を表し、Rは、炭素数1〜20の一価の有機基を表し、Raa及びRbbは、同一又は相異なり、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、qは、0〜20の整数を表し、rは、1〜20の整数を表す。Raaが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Rbbが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、R及びRは、同一又は相異なり、水素原子又はメチル基を表し、Rc及びRdは、同一又は相異なり、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、sは、0〜20の整数を表し、tは、1〜20の整数を表す。Rcが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Rdが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【0019】
本発明は第三に、高分子化合物が、さらに、一般式(3)で表される繰り返し単位、一般式(4)で表される繰り返し単位、一般式(5)で表される繰り返し単位及び一般式(6)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含有することを特徴とする前記有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物を提供する。
【0020】
【化3】

【0021】
(式中、Rは、炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【0022】
【化4】

【0023】
(式中、Rは、炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【0024】
【化5】

【0025】
(式中、Rは、炭素数1〜20の一価の有機基又はシアノ基を表す。該一価の有機基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【0026】
【化6】

【0027】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、R10は、炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【0028】
本発明は第四に、前記有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物をオーバーコート層に用いることを特徴とした有機薄膜トランジスタを提供する。
【0029】
本発明は第五に、前記有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物をゲート絶縁層に用いることを特徴とした有機薄膜トランジスタを提供する。
【0030】
本発明は第六に、前記有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物を含むディスプレイ用部材を提供する。
【0031】
本発明は第七に、前記ディスプレイ用部材からなるディスプレイを提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明の絶縁層用樹脂組成物は架橋構造を形成することができ、電気特性に優れている。また、感光性であり、架橋構造の形成時に高温で長時間加熱する必要がないためトランジスタ特性に悪影響を与えない。更に、形成される絶縁層は表面の接着性が優れているため絶縁層を含む有機層の積層構造を容易に形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態であるボトムゲート型有機薄膜トランジスタの構造を示す模式断面図である。
【図2】本発明の一実施形態であるトップゲート型有機薄膜トランジスタの構造を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、本発明をさらに詳細に説明する。
なお、本明細書において、「高分子化合物」とは、分子中に同じ構造単位が複数繰り返された構造を含む化合物をいい、いわゆる2量体もこれに含まれる。一方、「低分子化合物」とは、分子中に同じ構造単位を繰り返し有していない化合物を意味する。
【0035】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物は、(A)ウレア結合もしくはウレタン結合を介して結合した感光性基を有する繰り返し単位を含有する高分子化合物と、(B)硬化剤と、(C)有機溶剤とを含有してなることが特徴である。
【0036】
高分子化合物(A)
本発明に用いられる高分子化合物は、ウレア結合もしくはウレタン結合を介して結合した感光性基を有する繰り返し単位を含有する。ここで、感光性基とは光又は放射線を照射することにより化学変化しうる基をさし、具体的には、式
【0037】
【化7】

(式中、波線は結合手を表す。)
【0038】
で表される構造を有する基、等が挙げられる。該高分子化合物としては、一般式(1)で表される繰り返し単位及び一般式(2)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含有する高分子化合物が好ましい。
【0039】
本発明に用いられる高分子化合物において、一般式(1)〜(6)で表される繰り返し単位のいずれかは、フッ素原子を含有することが好ましい。樹脂構造中にフッ素原子が存在すると形成される層の絶縁性等の電気特性が向上するからである。フッ素原子は、繰り返し単位の側鎖部分に、有機基の置換基として存在することが好ましい。そうすれば、フッ素原子が主鎖部分に置換している場合と比較して、形成される層の表面接着性が低下し難いからである。
【0040】
高分子化合物(A)に導入されるフッ素の量は、高分子化合物の質量に対して、好ましくは60質量%以下、より好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは5〜40質量%である。フッ素の量が60質量%を超えると形成される層の表面接着性が低下する傾向にある。
【0041】
一般式(1)及び一般式(2)の式中、R1、R2、R4及びR5は、同一又は相異なり水素原子又はメチル基を表し、R3は、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。ある一形態では、R及びRは水素原子であり、R及びRはメチル基であり、Rは水素原子である。Raa、Rbb、Rc及びRdは、同一又は相異なり炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、q及びsは、0〜20の整数を表し、r及びtは、1〜20の整数を表す。Raaが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Rbbが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Rcが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Rdが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。ある一形態では、Xは酸素原子であり、q、r、s及びtは1である。
【0042】
炭素数1〜20の二価の有機基としては、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、アルキル基等で置換されていてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が挙げられ、炭素数1〜6の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜6の分岐状炭化水素基、炭素数3〜6の環状炭化水素基、アルキル基等で置換されていてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0043】
脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピルレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、ジメチルプロピレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基などが挙げられる。
【0044】
炭素数6〜20の芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基、アンスリレン基、ジメチルフェニレン基、トリメチルフェニレン基、エチレンフェニレン基、ジエチレンフェニレン基、トリエチレンフェニレン基、プロピレンフェニレン基、ブチレンフェニレン基、メチルナフチレン基、ジメチルナフチレン基、トリメチルナフチレン基、ビニルナフチレン基、エテニルナフチレン基、メチルアンスリレン基、エチルアンスリレン基などが挙げられる。
【0045】
ある一形態では、Raa及びRcはフェニレン基である。また、Rbb及びRdはエチレン基である。
【0046】
炭素数1〜20の一価の有機基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。
炭素数1〜20の一価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の分岐状炭化水素基、炭素数3〜20の環状炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が挙げられ、好ましくは、炭素数1〜6の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜6の分岐状炭化水素基、炭素数3〜6の環状炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
炭素数1〜20の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の分岐状炭化水素基、炭素数3〜20の環状炭化水素基は、これらの基に含まれる水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。
炭素数6〜20の芳香族炭化水素基は、基中の水素原子がアルキル基、フルオロアルキル基、ハロゲン原子などで置換されていてもよい。
【0047】
炭素数1〜20の一価の有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチニル基、シクロヘキシニル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、トリル基、キシリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、ジエチルフェニル基、トリエチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、メチルナフチル基、ジメチルナフチル基、トリメチルナフチル基、ビニルナフチル基、エテニルナフチル基、メチルアンスリル基、エチルアンスリル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基などが挙げられる。
【0048】
本発明に用いられる高分子化合物は、さらに、一般式(3)で表される繰り返し単位、一般式(4)で表される繰り返し単位、一般式(5)で表される繰り返し単位及び一般式(6)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含有していてもよい。
【0049】
一般式(3)〜一般式(6)の式中、R、R及びR10は、同一又は相異なり、炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。Rは、炭素数1〜20の一価の有機基又はシアノ基を表す。該一価の有機基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。Rは、水素原子又はメチル基を表す。尚、炭素数1〜20の一価の有機基の具体例は既に説明したものと同様である。
【0050】
ある一形態では、R及びRのいずれかは、フェニル基、o−フルオロアルキルフェニル基及びp−フルオロアルキルフェニル基からなる群から選択される基である。好ましくは、R及びRのいずれかは、フェニル基及びo−フルオロアルキルフェニル基からなる群から選択される基である。o−フルオロアルキルフェニル基の好ましい具体例はo−トリフルオロメチルフェニル基である。p−フルオロアルキルフェニル基の好ましい具体例はp−トリフルオロメチルフェニル基である。
【0051】
本発明に用いられる高分子化合物は、活性水素を含有する基を含み一般式(1)及び一般式(2)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーを、光重合開始剤もしくは熱重合開始剤を用いて重合させた後、分子内にイソシアネート基もしくはイソチアネート基を含有するアクリレート化合物又は分子内にイソシアネート基もしくはイソチアネート基を含有するメタアクリレート化合物と反応させる方法により製造することが出来る。
【0052】
本発明に用いられる高分子化合物が一般式(3)で表される繰り返し単位、一般式(4)で表される繰り返し単位、一般式(5)で表される繰り返し単位及び一般式(6)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含有する場合、活性水素を含有する基を含み一般式(1)及び一般式(2)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーと一般式(3)〜一般式(6)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーとを、光重合開始剤もしくは熱重合開始剤を用いて共重合させた後、分子内にイソシアネート基もしくはイソチアネート基を含有するアクリレート化合物又は分子内にイソシアネート基もしくはイソチアネート基を含有するメタアクリレート化合物と反応させる方法によっても製造することが出来る。
【0053】
活性水素を含有する基を含み一般式(1)及び一般式(2)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーとしては、4−アミノスチレン、4−アリルアニリン、4−アミノフェニルビニルエーテル、4−(N−フェニルアミノ)フェニルアリルエーテル、4−(N−メチルアミノ)フェニルアリルエーテル、4−アミノフェニルアリルエーテル、アリルアミン、2−アミノエチルアクリレート、4−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシアリルベンゼン、4−ヒドロキシフェニルビニルエーテル、4−ヒドロキシフェニルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ビニルアルコール、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、アクリル酸−4−ヒドロキシフェニル、アクリル酸−2−ヒドロキシフェニルエチル2−アミノエチルメタアクリレート、メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタアクリル酸−4−ヒドロキシフェニル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシフェニルエチル等が挙げられる。
【0054】
分子内にイソシアネート基もしくはイソチアネート基を含有するアクリレート化合物としては、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソチオシアネート等が挙げられる。
分子内にイソシアネート基もしくはイソチアネート基を含有するメタアクリレート化合物としては、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(2‘−メタクリロイルオキシエチル)オキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソチオシアネート、2−(2‘−メタクリロイルオキシエチル)オキシエチルイソチオシアネート等が挙げられる。
【0055】
一般式(3)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーとしては、ビニル酢酸、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート、ビニル−2−メチルベンゾエート、ビニル−3−メチルベンゾエート、ビニル−4−メチルベンゾエート、ビニル−2−トリフルオロメチルベンゾエート、ビニル−3−トリフルオロメチルベンゾエート、ビニル−4−トリフルオロメチルベンゾエート等が挙げられる。
【0056】
一般式(4)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーとしては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルベンジルエーテル、ビニル−4−メチルフェニルエーテル、ビニル−4−トリフルオロメチルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0057】
一般式(5)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、2,4,5−トリメチルスチレン、ペンタメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−ビニルビフェニル、3−ビニルビフェニル、4−ビニルビフェニル、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、4−ビニル−p−ターフェニル、1−ビニルアントラセン、o−イソプロペニルトルエン、m−イソプロペニルトルエン、p−イソプロペニルトルエン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、2,3−ジメチル−α−メチルスチレン、3,5−ジメチル−α−メチルスチレン、p−イソプロピル−α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロピルベンゼン、4−アミノスチレン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン、2−トリフルオロメチルスチレン、3−トリフルオロメチルスチレン、4−トリフルオロメチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸アリル、安息香酸アリル、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサン、塩化ビニル、アリルトリメチルゲルマニウム、アリルトリエチルゲルマニウム、アリルトリブチルゲルマニウム、トリメチルビニルゲルマニウム、トリエチルビニルゲルマニウム等が挙げられる。
【0058】
一般式(6)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−sec−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸−n−プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸−n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸−sec−ブチル、メタアクリル酸ヘキシル、メタアクリル酸オクチル、メタアクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸ベンジル、N,N−ジメチルメタアクリルアミド、N,N−ジエチルメタアクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチルアクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルアクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、1H、1H、3H−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H、1H、5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H、1H、7H−ドデカフルオロヘプチルアクリレート、1H、1H、9H−ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルアクリレート、1H、1H、3H−ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルメタアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルメタアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチルメタアクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチルメタアクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルメタアクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルメタアクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、1H、1H、3H−テトラフルオロプロピルメタアクリレート、1H、1H、5H−オクタフルオロペンチルメタアクリレート、1H、1H、7H−ドデカフルオロヘプチルメタアクリレート、1H、1H、9H−ヘキサデカフルオロノニルメタアクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルメタアクリレート、1H、1H、3H−ヘキサフルオロブチルメタアクリレート等を挙げることができる。
【0059】
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾフェノン、メチル(o−ベンゾイル)ベンゾエート、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインオクチルエーテル、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ジアセチル等のカルボニル化合物、メチルアントラキノン、クロロアントラキノン、クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のアントラキノン又はチオキサントン誘導体、ジフェニルジスルフィド、ジチオカーバメート等の硫黄化合物が挙げられる。
【0060】
熱重合開始剤としては、ラジカル重合の開始剤となるものであればよく、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビスイソバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、1、1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩等のアゾ系化合物、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド等のケトンパーオキシド類、イソブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、o−メチルベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、2,4,4−トリメチルペンチル−2−ヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシド等のヒドロパーオキシド類、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン等のジアルキルパーオキシド類、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート等のアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーカーボネート類が挙げられる。
【0061】
本発明に用いられる高分子化合物は、重量平均分子量が3000〜1000000が好ましく、5000〜500000がより好ましく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0062】
本発明に用いる前記活性水素を含有する基を含み一般式(1)及び一般式(2)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーの仕込みモル量は、重合に用いる全モノマーの合計に対して、好ましくは1モル%以上95モル%以下であり、より好ましくは5モル%以上80モル%以下であり、更に好ましくは10モル%以上70モル%以下である。前記活性水素を含有する基を含み一般式(1)及び一般式(2)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーの仕込みモル量が1モル%より少ない場合、充分な耐溶剤性が得られないことがあり、また、95モル%より大きい場合、保存安定性が悪いことがある。
【0063】
本発明に用いられる高分子化合物としては、例えば、ポリ{スチレン−コ−ペンタフルオロスチレン−コ−[4−〔(2’−メタクリロイルオキシエチル)アミノカルボニルアミノ〕−スチレン]}、ポリ{スチレン−コ−ペンタフルオロスチレン−コ−アクリロニトリル−コ−[4−〔(2’−メタクリロイルオキシエチル)アミノカルボニルアミノ〕−スチレン]}、ポリ{ビニルベンゾエート−コ−ペンタフルオロスチレン−コ−[4−〔(2’−メタクリロイルオキシエチル)アミノカルボニルアミノ〕−スチレン]}、ポリ{ビニルベンゾエート−コ−ペンタフルオロスチレン−コ−アクリロニトリル−コ−[4−〔(2’−メタクリロイルオキシエチル)アミノカルボニルアミノ〕−スチレン]}、ポリ{スチレン−コ−ペンタフルオロスチレン−コ−メチルメタクリレート−コ−[4−〔(2’−メタクリロイルオキシエチル)アミノカルボニルアミノ〕−スチレン]}、ポリ{スチレン−コ−ペンタフルオロスチレン−コ−[4−〔(2’−メタクリロイルオキシエチル)アミノカルボニルオキシ〕−スチレン]}、ポリ{スチレン−コ−ペンタフルオロスチレン−コ−アクリロニトリル−コ−[4−〔(2’−メタクリロイルオキシエチル)アミノカルボニルオキシ〕−スチレン]}、ポリ{ビニルベンゾエート−コ−ペンタフルオロスチレン−コ−[4−〔(2’−メタクリロイルオキシエチル)アミノカルボニルオキシ〕−スチレン]}、ポリ{ビニルベンゾエート−コ−ペンタフルオロスチレン−コ−アクリロニトリル−コ−[4−〔(2’−メタクリロイルオキシエチル)アミノカルボニルオキシ〕−スチレン]}、ポリ{スチレン−コ−ペンタフルオロスチレン−コ−メチルメタクリレート−コ−[4−〔(2’−メタクリロイルオキシエチル)アミノカルボニルオキシ〕−スチレン]}等が挙げられる。
【0064】
硬化剤(B)
本発明に用いられる(B)硬化剤としては、有機アゾ化合物ならびに有機過酸化物が挙げられる。
該有機ジアゾ化合物としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビスイソバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、1、1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩等アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
該有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド等のケトンパーオキシド類、イソブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、o−メチルベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、2,4,4−トリメチルペンチル−2−ヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシド等のヒドロパーオキシド類、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン等のジアルキルパーオキシド類、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート等のアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーカーボネート類が挙げられる。
【0065】
本発明に用いられる硬化剤は、好ましくは、10時間半減期温度が30℃〜200℃であり、より好ましくは、10時間半減期温度が40℃〜150℃であり、更に好ましくは、10時間半減期温度が40℃〜100℃である。
10時間半減期温度が30℃より低い場合、保存安定性が悪く、ゲル化することがあり、200℃より高い場合、硬化時に有機半導体化合物に悪影響を及ぼすことがある。
【0066】
有機溶剤(C)
本発明に用いられる有機溶剤としては、(A)前記一般式(1)で表される繰り返し単位及び一般式(2)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含有する高分子化合物ならびに(B)硬化剤に対して良溶媒であり、且つ、有機半導体化合物に対して貧溶媒であるものであれば特に制限はなく、例えば、酢酸ブチル、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0067】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物において、一般式(1)で表される繰り返し単位及び一般式(2)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含有する高分子化合物の重量と硬化剤の重量を100重量部とした場合、有機溶剤の重量は50〜1000重量部であることが好ましい。
【0068】
また、一般式(1)で表される繰り返し単位及び一般式(2)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含有する高分子化合物の重量部を100重量部とした場合、硬化剤の重量は0.1〜10重量部であることが好ましい。
【0069】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物は、必要に応じ、架橋剤、レベリング剤、界面活性剤等を添加することが出来る。
架橋剤としては、分子内に不飽和二重結合を二つ以上含有する低分子化合物、アクリル樹脂用架橋剤等が挙げられる。
該分子内に不飽和二重結合を二つ以上含有する低分子化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート等が挙げられる。
該アクリル樹脂用架橋剤としては、ジキュミルパーオキサイド、4,4−ジ−ターシャリーブチルパーオキシ−n−ブチルバレレート等が挙げられる。
【0070】
有機薄膜トランジスタ
図1は、本発明の一実施形態であるボトムゲート型有機薄膜トランジスタの構造を示す模式断面図である。この有機薄膜トランジスタには、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極2と、ゲート電極2上に形成されたゲート絶縁層3と、ゲート絶縁層3上に形成された有機半導体層4と、有機半導体層4上にチャネル部を挟んで形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、素子全体を覆うオーバーコート7とが、備えられている。
【0071】
上記有機薄膜トランジスタの製造方法の一態様は、(i)基板上にゲート電極を形成する工程、(ii)ゲート電極上にゲート絶縁層を形成する工程、(iii)ゲート絶縁層上に有機半導体層を形成する工程、(iv)有機半導体層上にソース電極及びドレイン電極を形成する工程、及び(v)素子全体を覆うようにオーバーコート層を形成する工程を包含する。工程(ii)で形成するゲート絶縁層及び工程(v)で形成するオーバーコート層の少なくともいずれかは、本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物を含む樹脂溶液を塗布、乾燥、硬化させて形成する。
【0072】
工程(i)で形成するゲート電極の材料としては、クロム、金、銀、アルミニウム等が挙げられる。該ゲート電極は、蒸着法、スパッタ法、印刷法、インクジェット法等の公知の方法で形成することが出来る。
【0073】
工程(ii)でゲート絶縁層を形成する際に本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物を含む樹脂溶液を用いる場合、樹脂溶液に含まれる有機溶媒としては、使用する樹脂組成物を溶解させるものであれば特に制限は無いが、好ましくは、常圧での沸点が100℃〜200℃のものである。該有機溶媒としては、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
該樹脂溶液には、必要に応じてレベリング剤、硬化触媒等を添加することが出来る。該ゲート絶縁層塗布溶液は公知のスピンコート、ダイコーター、スクリーン印刷、インクジェット等によりゲート電極上に塗布することが出来る。
【0074】
該ゲート絶縁層上には、自己組織化単分子膜層を形成してもよい。
該自己組織化単分子膜層は、例えば、有機溶媒中にアルキルクロロシラン化合物もしくはアルキルアルコキシシラン化合物を1〜10質量%溶解した溶液でゲート絶縁層を処理することにより形成することが出来る。
該アルキルクロロシラン化合物としては、例えば、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン等を例示できる。
該アルキルアルコキシシラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン等を例示できる。
【0075】
工程(iii)の有機半導体層の形成は、通常は有機半導体化合物を有機溶媒に溶解してなる有機半導体塗布溶液を塗布、乾燥させることにより行なわれる。有機半導体塗布溶液に用いられる有機溶媒としては、有機半導体化合物を溶解させるものであれば特に制限は無いが、好ましくは、常圧での沸点が50℃〜200℃のものである。該有機溶媒としては、クロロホルム、トルエン、アニソール、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。該有機半導体塗布溶液も前記ゲート絶縁層塗布溶液と同様に公知のスピンコート、ダイコーター、スクリーン印刷、インクジェット等によりゲート絶縁層上に塗布することが出来る。
【0076】
工程(iv)で形成するソース電極の材料及びドレイン電極の材料としては、クロム、金、銀、アルミニウム等が挙げられる。該ソース電極及びドレイン電極は、前記ゲート電極と同様の方法で形成することが出来る。
【0077】
工程(v)でオーバーコート層を形成する際に本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物を含む樹脂溶液を用いる場合は、前記ゲート絶縁層を形成する場合と同様に公知のスピンコート、ダイコーター、スクリーン印刷、インクジェット等により有機半導体層上に塗布することが出来る。硬化温度は、好ましくは、50℃〜250℃であり、より好ましくは、60℃〜230℃であり、更に好ましくは、80℃〜200℃である。硬化時間は、硬化温度に合わせ適宜選択することが出来る。硬化温度が50℃より低いと、硬化が不充分である場合があり、250℃より高いと、高分子化合物が熱分解する場合がある。
硬化方法は、公知のホットプレート、オーブン、遠赤外線ベーク炉等を用いることができ、大気中もしくは不活性ガス雰囲気中特に制限はないが、好ましくは、不活性ガス雰囲気中である。
【0078】
図2は、本発明の他の実施形態であるトップゲート型有機薄膜トランジスタの構造を示す模式断面図である。この有機薄膜トランジスタには、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、これら電極の上にチャンネル部を挟んで形成された有機半導体層4と、有機半導体層4上に形成された素子全体を覆うゲート絶縁層3と、ゲート絶縁層3の表面上に形成されたゲート電極2とが、備えられている。
【0079】
上記有機薄膜トランジスタの製造方法の一態様は、(a)基板上にソース電極及びドレイン電極を形成する工程、(b)ソース電極及びドレイン電極上に有機半導体層を形成する工程、(c)有機半導体層上にゲート絶縁層を形成する工程、及び(d)ゲート絶縁層上にゲート電極を形成する工程を包含する。工程(d)で形成するゲート絶縁層は、本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物を含む樹脂溶液を塗布、乾燥、硬化させて形成する。
【0080】
ソース電極の材料、ソース電極の形成方法、ドレイン電極の材料、ドレイン電極の形成方法、ゲート電極の材料、ゲート電極の形成方法、有機半導体塗布溶液に用いられる有機溶媒、有機半導体層の形成方法、有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物を含む絶縁層塗布溶液を塗布する方法、該絶縁層塗布溶液の硬化温度、硬化時間、硬化方法としては、前述と同じ、材料、方法等が挙げられる。
【0081】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物を用いて製造した絶縁層は、その上に平坦な膜等を積層することができ、積層構造を容易に形成することができる。また、該絶縁層上に有機エレクトロルミネッセンス素子を好適に搭載することができる。
【0082】
本発明の有機薄膜トランジスタを用いて、好適に有機薄膜トランジスタを有するディスプレイ用部材を作製できる。該有機薄膜トランジスタを有するディスプレイ用部材を用いて、ディスプレイ用部材を備えるディスプレイを好適に作製できる。
【実施例】
【0083】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明が実施例により限定されるものではないことは言うまでもない。
【0084】
<合成例1>
ビニルベンゾエート(アルドリッチ製)8.47g、2−トリフルオロメチルスチレン(アルドリッチ製)6.16g、4−トリフルオロメチルスチレン(アルドリッチ製)6.16g、4−アミノスチレン(アルドリッチ製)1.70g、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.22g、2−ヘプタノン(和光純薬製)52.93gを、125ml耐圧容器(エース製)に入れ、窒素をバブリングした後、密栓し、60℃のオイルバス中で48時間重合させて、粘稠な溶液を得た。
得られた粘調な溶液に2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工製、カレンズMOI)2.21gを加え、室温で24時間反応させ高分子化合物1の2−ヘプタノン溶液を得た。
【0085】
高分子化合物1は式(A)〜式(D)で表される繰り返し単位を有する。
【0086】
【化8】

【0087】
得られた高分子化合物1の標準ポリスチレンから求めた重量平均分子量は、19000であった。(島津製GPC、Tskgel super HM−H 1本+Tskgel super H2000 1本、移動相=THF)
【0088】
<実施例1>
(有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物の調製)
高分子化合物1の2−ヘプタノン溶液 3.00g、ターシャリーアミルパーオキシイソプロピルカーボネート(AIC-75、化薬アクゾ製)0.036gを10mlのサンプル瓶に入れ、攪拌溶解して均一な塗布溶液を調製した。
得られた塗布溶液を孔径0.2μmのメンブレンフィルターを用いてろ過し、高分子化合物1の塗布溶液を調製した。
【0089】
(電界効果型有機薄膜トランジスタの作製)
F8T2(9,9−ジオクチルフルオレン:ビチオフェン=50:50(モル比)の共重合体;ポリスチレン換算の重量平均分子量=69,000)を溶媒であるクロロホルムに溶解して、濃度が0.5質量%である溶液(有機半導体組成物)を作製し、これをメンブランフィルターでろ過して有機半導体塗布液を調製した。
二酸化ケイ素(SiO)からなる熱酸化膜が300nmの厚さで付いたゲート電極であるn型クリスタルシリコン基板(アドバンテック社製、比抵抗<0.1Ω)上にメタルマスクを用いた真空蒸着法により、チャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極及びドレイン電極(絶縁層側から、クロム、金の順番で積層構造を有する)を形成し、次いで、電極を形成した基板上に有機半導体塗布溶液をスピンコート法により塗布し、100℃で10分間焼成を行い約60nmの厚さを有する活性層を形成し、ボトムゲートボトムコンタクト型トランジスタを作製した。
次に、得られたトランジスタ上に高分子化合物1の塗布溶液をスピンコートした後、窒素雰囲気中ホットプレート上で200℃で1分間焼成し、500nmの厚さのオーバーコート層を有する電界効果型有機薄膜トランジスタを作製した。
【0090】
<電界効果型有機薄膜トランジスタのトランジスタ特性>
こうして作製した電界効果型有機薄膜トランジスタについて、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−60Vに変化させた条件で、そのトランジスタ特性であるオン電圧(Von電圧)、ON/OFF比及び−60Vにおけるオン電流密度(Ion A/cm)を真空プロ−バ(BCT22MDC−5−HT−SCU;Nagase Electronic Equipments Service Co. LTD製)を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0091】
<絶縁層の電気特性>
高分子化合物1の塗布溶液を裏面にアルミニウムを蒸着したシリコン基板上に塗布し、窒素雰囲気中で200℃で1分間焼成して絶縁層(膜厚507nm)を形成し、絶縁層上にメタルマスクを用いてアルミニウム電極を蒸着して評価素子を作成した。得られた評価素子の電気特性を真空プロ−バ(BCT22MDC−5−HT−SCU;Nagase Electronic Equipments Service Co. LTD製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0092】
[表1]

【0093】
<絶縁層の密着性>
高分子化合物1の塗布溶液をシリコン基板上に塗布し、窒素雰囲気中で200℃で1分間焼成して絶縁層(膜厚507nm)を形成し、絶縁層上にメタルマスクを用いてアルミニウム電極を蒸着した。アルミニウム電極上にカプトンテープを貼付し、カプトンテープを剥がしたところ、アルミニウム電極の剥れは無かった。
【0094】
<比較例1>
(電界効果型有機薄膜トランジスタの作製)
高分子化合物1の塗布溶液を塗布しない以外は、実施例1と同様にして電界効果型有機薄膜トランジスタを作製し、該電界効果型有機薄膜トランジスタのトランジスタ特性であるオン電圧(Von電圧)、ON/OFF比及び−60Vにおけるオン電流密度(Ion A/cm)を測定した。結果を表2に示す。
【0095】
<評価例1>
<フッ素樹脂の密着性>
フッ素樹脂であるCytop(旭硝子製)をシリコン基板上に塗布し、窒素雰囲気中で200℃で10分間焼成して絶縁層(膜厚1μm)を形成し、絶縁層上にメタルマスクを用いてアルミニウム電極を蒸着した。アルミニウム電極上にカプトンテープを貼付し、カプトンテープを剥がしたところ、アルミニウム電極が剥れた。
【0096】
[表2]

【符号の説明】
【0097】
1…基板、
2…ゲート電極、
3…ゲート絶縁層、
4…有機半導体層、
5…ソース電極、
6…ドレイン電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ウレア結合もしくはウレタン結合を介して結合した感光性基を有する繰り返し単位を含有する高分子化合物と、(B)硬化剤と、(C)有機溶剤とを含有することを特徴とする有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物。
【請求項2】
ウレア結合もしくはウレタン結合を介して結合した感光性基を有する繰り返し単位を含有する高分子化合物が、一般式(1)で表される繰り返し単位及び一般式(2)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含有する高分子化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物。
【化1】

(式中、R及びRは、同一又は相異なり、水素原子又はメチル基を表し、Rは、炭素数1〜20の一価の有機基を表し、Raa及びRbbは、同一又は相異なり、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、qは、0〜20の整数を表し、rは、1〜20の整数を表す。Raaが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Rbbが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【化2】

(式中、R及びRは、同一又は相異なり、水素原子又はメチル基を表し、Rc及びRdは、同一又は相異なり、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、sは、0〜20の整数を表し、tは、1〜20の整数を表す。Rcが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Rdが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。)
【請求項3】
高分子化合物が、さらに、一般式(3)で表される繰り返し単位、一般式(4)で表される繰り返し単位、一般式(5)で表される繰り返し単位及び一般式(6)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物。
【化3】

(式中、Rは、炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【化4】

(式中、Rは、炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【化5】

(式中、Rは、炭素数1〜20の一価の有機基又はシアノ基を表す。該一価の有機基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【化6】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、R10は、炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物をオーバーコート層に用いることを特徴とした有機薄膜トランジスタ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物をゲート絶縁層に用いることを特徴とした有機薄膜トランジスタ。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ絶縁層用樹脂組成物を含むディスプレイ用部材。
【請求項7】
請求項6に記載のディスプレイ用部材からなるディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−163521(P2010−163521A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5812(P2009−5812)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】