説明

絶縁層用組成物

【課題】 低温で絶縁層(例えば、トランジスタのゲート絶縁膜や保護層)を形成することが可能であり、しかも優れた絶縁耐圧を有する絶縁層を形成可能な絶縁層用組成物を提供すること。
【解決手段】 本発明の絶縁層用組成物は、分子内に活性水素基を2個以上有する高分子化合物からなる第1の化合物と、分子内に電磁線又は熱により活性水素基と反応する官能基を生成する基を2個以上有する低分子化合物からなる第2の化合物とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁層用組成物、特に、トランジスタ等における絶縁層を形成するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ペーパー等のフレキシブルな表示デバイスの基板としては、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック基板が検討されている。ところが、これらのプラスチック基板は、加熱時に僅かに伸張や収縮を生じる問題があるため、耐熱性の向上が求められている。一方、上記デバイスの基板に搭載するトランジスタとしては、薄型且つ柔軟性に優れることから有機薄膜トランジスタが注目されている。プラスチック基板は、上記のようにこれまで十分な耐熱性を有していなかったので、基板上に有機薄膜トランジスタを製造するプロセスは、できるだけ低温で行なえることが望ましい。
【0003】
有機薄膜トランジスタの製造プロセスにおいては、一般に、ゲート電極と有機半導体層との間に設けられる絶縁層であるゲート絶縁膜や、有機薄膜トランジスタを保護するために最上部に設けられる絶縁性の保護層を成膜・硬化するプロセスに特に高温が要求される。そのため、有機薄膜トランジスタの製造プロセスの低温化には、これらの層の形成工程を低温化することが重要である。
【0004】
例えば、ゲート絶縁膜を低温で形成する方法としては、ゲート電極の表面を陽極酸化する方法(特許文献1参照)や、化学気相堆積法で成膜する方法(特許文献2参照)等が知られている。しかしながら、これらの方法は、ゲート絶縁膜の形成プロセスが煩雑である。
【0005】
そこで、ゲート絶縁膜を低温で且つ簡便に形成する手法として、塗布等の手段により成膜を行うことが検討されている。例えば、下記非特許文献1には、ポリ(4−ビニルフェノール)やポリ(メラミン−ホルムアルデヒド)をスピンコートし、200℃で硬化させてゲート絶縁膜を形成したことが示されている。
【特許文献1】特開2003−258260号公報
【特許文献2】特開2004−72049号公報
【非特許文献1】Hagen Klauk etal., J. Appl. Phys., Vol.92., No.9., p.5259-5263(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した非特許文献1に示される方法の場合、ゲート絶縁膜の形成には、高温で材料の硬化を行う必要であった。ところが、このような硬化に要する温度においては、プラスチック基板の熱による伸縮を十分には抑制できない場合も多く、例えば、微細な画素を有する表示デバイスを作製する場合に、その影響を無視できなくなる。したがって、近年では、さらなる低温でゲート絶縁膜が形成可能となることが求められている。
【0007】
また、上述したような有機薄膜トランジスタにおけるゲート絶縁膜や保護層に対しては、印加される電圧による破壊を生じ難いこと、すなわち、絶縁耐圧が高いことが求められる。しかしながら、これらの層として、低温形成が可能であるとともに、高い絶縁耐圧を有するという両方の特性を有するものを得ることは未だ困難な傾向にあった。
【0008】
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、低温で絶縁層(例えば、トランジスタのゲート絶縁膜や保護層)を形成することが可能であり、しかも優れた絶縁耐圧を有する絶縁層を形成可能な絶縁層用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の絶縁層用組成物は、分子内に活性水素基を2個以上有する高分子化合物からなる第1の化合物と、分子内に電磁線又は熱により活性水素基と反応する官能基(以下、「反応性官能基」という。)を生成する基(以下、「解離性基」という)を2個以上有する低分子化合物からなる第2の化合物とを含むことを特徴とする。
【0010】
このような構成を有する本発明の絶縁層用組成物は、第2の化合物に電磁線又は熱を加えることにより解離性基から反応性官能基が生成し、次いで、この反応性官能基と第1の化合物における活性水素基との反応が生じて硬化が進行する。ここで、第2の化合物は、電磁線又は熱によって反応性官能基を容易に生じることができ、これにより生じた反応性官能基も、第1の化合物の活性水素基と容易に反応することができる。そのため、本発明の絶縁層用組成物は、電磁線の照射か比較的低温での加熱によって硬化させることが可能であり、絶縁層(ゲート絶縁膜や保護層)を形成する際に従来のような高温を必要としないものである。したがって、上記本発明の絶縁層用組成物は、低温であっても良好に絶縁層を形成することが可能である。
【0011】
また、本発明の絶縁層用組成物においては、電磁線又は熱によって第2の化合物に反応性官能基が形成された後には、この反応性官能基が第1の化合物が有する活性水素基との反応を容易に生じ得るため、その結果、得られる硬化物は、第1の化合物と第2の化合物とが良好に結合した緻密な構造を有するものとなる。したがって、本発明の絶縁層用組成物によれば、比較的低温で硬化させた場合であっても、絶縁性に優れ、しかも高い絶縁耐圧を有する絶縁層を形成することができる。
【0012】
上記本発明の絶縁層用組成物において、第1の化合物は、活性水素基としてフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、メルカプト基及びカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有する高分子化合物からなるものであると好ましい。これらの活性水素基は、第2の化合物に生じた反応性官能基との反応を良好に生じることができるものである。
【0013】
特に、第1の化合物は、活性水素基を有するポリオルガノシルセスキオキサン樹脂であることが好ましく、下記一般式(1)で表される基及び下記一般式(2)で表される基のうちの少なくとも1種の基を有するポリオルガノシルセスキオキサン樹脂であることがより好ましい。これらのポリオルガノシルセスキオキサン酸樹脂を用いることで、アルコール系溶媒に可溶であり、取り扱い性等に優れるという効果が得られるようになる。
【化1】


[式(1)中、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基を表し、R13は、水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基を表し、rは1〜5の整数であり、kは0以上の整数である。ただし、R13が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、式(2)中、R21、R22、R23、R24、R25及びR26は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基を表し、l及びmはそれぞれ独立に0以上の整数であり、nは1以上の整数である。]
【0014】
また、本発明の絶縁層用組成物において、第2の化合物における電磁線又は熱により活性水素基と反応する官能基を生成する基(解離性基)は、ブロックされたイソシアネート基又はブロックされたイソチオシアネート基であると好ましい。これらの基は、電磁線又は熱を加えることによって容易に反応性官能基であるイソシアネート基又はイソチオシアネート基を生成することができるため、より低温での絶縁層の形成を可能とすることができるものである。
【0015】
このようなブロックされたイソシアネート基又はブロックされたイソチオシアネート基としては、下記一般式(3a)で表される基又は下記一般式(3b)で表される基が好適である。
【化2】


[式中、X及びXは、それぞれ独立に酸素原子又は硫黄原子を表し、R31、R32、R33、R34及びR35は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基を表す。]
【0016】
より具体的には、第2の化合物は、下記一般式(4a)で表される化合物及び下記一般式(4b)で表される化合物のうちの少なくとも1種の化合物であると好ましい。このような第2の化合物を適用することで、絶縁層用組成物の低温での硬化に一層有利となり、しかも、より優れた絶縁耐圧が得られるようになる。
【化3】


[式中、X41及びX42は、それぞれ独立に酸素原子又は硫黄原子を表し、R41、R42、R43、R44、R45、R46及びR47は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基を表し、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜20の2価の有機基を表し、a及びbはそれぞれ独立に2〜6の整数であり、c及びdは、それぞれ独立に0〜20の整数である。]
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低温で絶縁層(例えば、トランジスタのゲート絶縁膜や保護層)を形成することが可能であり、しかも優れた絶縁耐圧を有する絶縁層を形成可能な絶縁層用組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、必要に応じて図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明においては、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明については省略することとする。
【0019】
[絶縁層用組成物]
まず、好適な実施形態に係る絶縁層用組成物について説明する。
【0020】
本実施形態の絶縁層用組成物は、分子内に活性水素基を2個以上有する高分子化合物からなる第1の化合物と、分子内に電磁線又は熱により活性水素基と反応する官能基(反応性官能基)を生成する基(解離性基)を2個以上有する低分子化合物からなる第2の化合物とを含むものである。
【0021】
なお、本明細書において、「高分子化合物」とは、分子中に同じ構造単位が複数繰り返された構造を含む化合物をいい、いわゆる2量体もこれに含まれる。一方、「低分子化合物」とは、分子中に同じ構造単位を繰り返し有していない化合物を意味する。
【0022】
(第1の化合物)
まず、第1の化合物について説明する。
【0023】
第1の化合物は、分子内に活性水素基を2個以上有する高分子化合物である。この第1の化合物において、活性水素基としては、アミノ基、水酸基又はメルカプト基が挙げられる。なかでも、活性水素基としては、後述する反応性官能基(特にイソシアネート基又はイソチオシアネート基)との反応を良好に生じることができる水酸基が好適である。
【0024】
第1の化合物において、活性水素基は、高分子化合物を構成する主鎖に直接結合していてもよく、所定の基を介して結合していてもよい。また、活性水素基は、高分子化合物を構成する構造単位に含まれていてもよく、その場合は、各構造単位に含まれていてもよく、一部の構造単位にのみ含まれていてもよい。さらに、活性水素基は、高分子化合物の末端にのみ結合していてもよい。
【0025】
このような第1の化合物は、例えば、活性水素基を有しており、縮合や重合が可能な単量体化合物(モノマー)を、単独で縮合又は重合させるか、他の共重合性化合物と共重合させることによって得ることができる。なお、これらの製造においては、活性水素基を所定の形態で保護された状態で有する単量体化合物を用い、縮合又は重合後に脱保護によって活性水素基を生じさせるようにしてもよい。
【0026】
第1の化合物としては、まず、2個以上の活性水素基を有するポリオルガノシルセスキオキサン樹脂が好ましい。このポリオルガノシルセスキオキサン樹脂は、活性水素基又は保護された活性水素基を有するオルガノアルコキシシランを、酸触媒又はアルカリ触媒及び水の存在下で加水分解縮合し、必要に応じて活性水素基の脱保護を行うことによって得ることができる。また、加水分解縮合後、活性水素基を付与するようにしてもよい。
【0027】
活性水素基を有するポリオルガノシルセスキオキサン樹脂のなかでも、2個以上の水酸基を有するポリオルガノシルセスキオキサン樹脂が好ましい。かかるポリオルガノシルセスキオキサン樹脂は、例えば、オルガノアルコキシシランを酸又はアルカリ触媒及び水の存在下で加水分解縮合した後、この加水分解縮合物が有する両末端のシラノール基中の水酸基を、クロロシラン化合物で封止した後、必要に応じて水酸基を脱保護することによって得ることができる。また、予め水酸基又は保護された水酸基を有するオルガノアルコキシシランを加水分解縮合した後、必要に応じて脱保護することによっても得ることができる。オルガノアルコキシシランの加水分解縮合に用いる酸触媒としては、例えば、塩酸、酢酸等が挙げられる。また、アルカリ触媒としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0028】
ポリオルガノシルセスキオキサン樹脂の原料であるオルガノアルコキシシランとしては、オルガノエトキシシラン、オルガノメトキシシラン等が挙げられる。より具体的には、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルフェニルエトキシシラン、ジメチルフェニルメトキシシラン等が挙げられる。
【0029】
また、オルガノアルコキシシランの加水分解縮合物と反応させる保護された水酸基を有するクロロシランとしては、分子内に保護された水酸基とビニル基やアリル基等の不飽和結合とを有する化合物と、ジアルキルクロロヒドロシラン化合物とを、遷移金属触媒の存在下で反応させ、ヒドロシリル化することによって得られたものが挙げられる。また、分子内に保護された水酸基を有する有機金属化合物と、ジアルキルジクロロシラン化合物との加水分解縮合反応によって得られたものも挙げられる。
【0030】
これらの保護された水酸基において、水酸基を保護する基としては、例えば、通常水酸基の保護基として適用されるアルキル基、シリル基、エステル基等が挙げられる。具体的には、メトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、t−ブトキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基、2,2,2−トリクロロエトキシメチル基、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、3−ブロモテトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、4−メトキシテトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、1−エトキシエチル基、1−メチル−1−メトキシエチル基、1−(イソプロポキシ)エチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2−(フェニルセレニル)エチル基、t−ブチル基、ベンジル基、3−メチル−2−ピコリル−N−オキシド基、ジフェニルメチル基、5−ジベンゾスベリル基、トリフェニルメチル基、9−アンスリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、(トリフェニルメチル)ジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、メチルジイソプロピルシリル基、メチル−ジ−t−ブチルシリル基、トリベンジルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、ホルミル基、アセチル基、3−フェニルプロピオネート基、3−ベンゾイルプロピオネート基、イソブチレート基、4−オキソペンタノエート基、ピバロエート基、アダマントエート基、ベンゾエート基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、ベンジルカーボネート基等を例示することができる。
【0031】
上記のようにして得られるポリオルガノシルセスキオキサン樹脂が有する活性水素基としては、フェノール性水酸基及びアルコール性水酸基が好ましく、フェノール性水酸基がより好ましい。フェノール性水酸基としては、下記一般式(1)で表されるフェノール性水酸基が特に好ましい。なお、一般式(1)中の符号は、いずれも上記と同義である。
【化4】

【0032】
上記一般式(1)で表されるフェノール性水酸基中、R11〜R13で表される基としての炭素数1〜20の一価の有機基は、直鎖、分岐、環状のいずれの基であってもよく、飽和基であっても不飽和基であってもよい。
【0033】
この炭素数1〜20の一価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の分岐状炭化水素基、炭素数3〜20の環状炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜6の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜6の分岐状炭化水素基、炭素数3〜6の環状炭化水素基又は炭素数6〜20の芳香族炭化水素基である。なお、これらの炭化水素基は、水素原子の一部が他の基によって置換されたものであってもよい。例えば、環状炭化水素基は、フッ素置換されていてもよく、芳香族炭化水素基は、アルキル基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0034】
炭素数1〜20の一価の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチニル基、シクロヘキシニル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、トリル基、キシリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、ジエチルフェニル基、トリエチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、メチルナフチル基、ジメチルナフチル基、トリメチルナフチル基、ビニルナフチル基、エテニルナフチル基、メチルアンスリル基、エチルアンスリル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基等が挙げられる。
【0035】
一方、アルコール性水酸基としては、下記一般式(2)で表される基が好適である。なお、式中の符号はいずれも上記と同義であり、R21〜R26としての炭素数1〜20の一価の有機基としても、上記一般式(1)の場合と同様の基が例示できる。
【化5】

【0036】
また、第1の化合物としては、上述した2個以上の活性水素基を有するポリオルガノシルセスキオキサン樹脂以外に、例えば、活性水素基及び不飽和結合(例えば、二重結合)を分子内に有する単量体化合物(モノマー)を、単独で重合させるか、他の共重合性化合物(共重合モノマー)とともに共重合させて重合体を形成することによって得られたものも挙げられる。これは、保護された活性水素基を有するモノマーを用い、重合後に脱保護して得られたものであってもよい。これらの重合の際には、光重合開始剤や熱重合開始剤を使用することができる。
【0037】
活性水素基と不飽和二重結合とを有するモノマーとしては、例えば、アミノスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ビニルベンジルアルコール、アミノエチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシフェニルエチル、エチレングリコールモノビニルエーテル、アリルアルコール等が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを総称した名称であり、これらのいずれか又は両方を示している。
【0038】
また、これらのモノマーと共重合させる共重合モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル及びその誘導体、スチレン及びその誘導体、酢酸ビニル及びその誘導体、(メタ)アクリロニトリル及びその誘導体、有機カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体、有機カルボン酸のアリルエステル及びその誘導体、フマル酸のジアルキルエステル及びその誘導体、マレイン酸のジアルキルエステル及びその誘導体、イタコン酸のジアルキルエステル及びその誘導体、有機カルボン酸のN−ビニルアミド誘導体、マレイミド及びその誘導体、末端不飽和炭化水素及びその誘導体等、有機ゲルマニウム誘導体等が挙げられる。
【0039】
共重合モノマーのうち、(メタ)アクリル酸エステル類及びその誘導体としては、単官能の(メタ)アクリレートや、多官能の(メタ)アクリレートを適用することができる。なお、多官能の(メタ)アクリレートは、目的とする重合体の性状に応じて使用量が制約される場合がある。
【0040】
(メタ)アクリル酸エステル類及びその誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシフェニルエチル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン等を挙げることができる。
【0041】
また、スチレン及びその誘導体としては、スチレン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、2,4,5−トリメチルスチレン、ペンタメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−ビニルビフェニル、3−ビニルビフェニル、4−ビニルビフェニル、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、4−ビニル−p−ターフェニル、1−ビニルアントラセン、α−メチルスチレン、o−イソプロペニルトルエン、m−イソプロペニルトルエン、p−イソプロペニルトルエン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、2,3−ジメチル−α−メチルスチレン、3,5−ジメチル−α−メチルスチレン、p−イソプロピル−α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロピルベンゼン、4−アミノスチレン等が挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリロニトリル及びその誘導体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。有機カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、アジピン酸ジビニル等が挙げられる。有機カルボン酸のアリルエステルおよびその誘導体としては、酢酸アリル、安息香酸アリル、アジピン酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル等が挙げられる。
【0043】
フマル酸のジアルキルエステル及びその誘導体としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ−sec−ブチル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジ−n−ブチル、フマル酸ジ−2−エチルヘキシル、フマル酸ジベンジル等が挙げられる。マレイン酸のジアルキルエステル及びその誘導体としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジ−sec−ブチル、マレイン酸ジイソブチル、マレイン酸ジ−n−ブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル、マレイン酸ジベンジル等が挙げられる。
【0044】
イタコン酸のジアルキルエステル及びその誘導体としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピル、イタコン酸ジ−sec−ブチル、イタコン酸ジイソブチル、イタコン酸ジ−n−ブチル、イタコン酸ジ−2−エチルヘキシル、イタコン酸ジベンジル等が挙げられる。有機カルボン酸のN−ビニルアミド誘導体としては、N−メチル−N−ビニルアセトアミド等が挙げられる。マレイミド及びその誘導体としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0045】
末端不飽和炭化水素及びその誘導体としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサン、塩化ビニル、アリルアルコール等が挙げられる。有機ゲルマニウム誘導体としては、アリルトリメチルゲルマニウム、アリルトリエチルゲルマニウム、アリルトリブチルゲルマニウム、トリメチルビニルゲルマニウム、トリエチルビニルゲルマニウム等が挙げられる。
【0046】
これらの共重合モノマーのなかでは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン、(メタ)アクリロニトリル又はアリルトリメチルゲルマニウムが好ましく、これらを適宜組み合わせて適用してもよい。
【0047】
また、重合体を形成する際の重合反応に用いる光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾフェノン、メチル(o−ベンゾイル)ベンゾエート、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインオクチルエーテル、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ジアセチル等のカルボニル化合物、メチルアントラキノン、クロロアントラキノン、クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のアントラキノン又はチオキサントン誘導体、ジフェニルジスルフィド、ジチオカーバメート等の硫黄化合物が挙げられる。
【0048】
また、熱重合開始剤は、ラジカル重合の開始剤として機能し得るものである。例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、1、1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩等のアゾ系化合物、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド等のケトンパーオキシド類、イソブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、o−メチルベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、2,4,4−トリメチルペンチル−2−ヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシド等のヒドロパーオキシド類、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン等のジアルキルパーオキシド類、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート等のアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーカーボネート類等が挙げられる。
【0049】
上述した第1の化合物は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が3000〜1000000であると好ましく、5000〜500000であるとより好ましい。このような重量平均分子量を有することで、得られる膜の平坦性及び均一性が良好となるという利点がある。
【0050】
(第2の化合物)
次に、第2の化合物について説明する。
【0051】
第2の化合物は、分子内に解離性基を2個以上有する低分子化合物であり、具体的には、2個以上の解離性基が低分子(単量体)構造に結合した構造を有する化合物である。この低分子構造の形態としては、例えば、アルキル構造や、置換基を有していてもよいベンゼン環が好適である。
【0052】
第2の化合物において、解離性基としては、ブロックされたイソシアネート基(以下、「ブロックイソシアネート基」という。)、ブロックされたイソチオシアネート基(以下、「ブロックイソチオシアネート基」という。)等が挙げられる。
【0053】
解離性基としては、ブロックイソシアネート基又はブロックイソチオシアネート基が好ましい。ブロックイソシアネート基又はブロックイソチオシアネート基は、熱により反応性官能基であるイソシアネート基又はイソチオシアネート基をそれぞれ生成する。
【0054】
ブロックイソシアネート基又はブロックイソチオシアネート基とは、ブロック化剤によってブロックされたイソシアネート基又はイソチオシアネート基である。このブロック化剤としては、イソシアネート基又はイソチオシアネート基と反応してこれらを保護する基を形成し得る化合物であり、例えば、イソシアネート基又はイソチオシアネート基と反応し得る活性水素基を一個有する化合物が挙げられる。特に、ブロック化剤としては、ブロック化後、170℃以下の温度を加えることで解離し、再びイソシアネート基又はイソチオシアネート基を生成し得るものが好ましい。
【0055】
このブロック化剤としては、例えば、アルコ−ル系、フェノ−ル系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系、イミド系、ピリジン系化合物、ピラゾール系化合物等の化合物が挙げられる。ブロック化剤は、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、オキシム系化合物又はピラゾール系化合物が好適である。
【0056】
より具体的には、ブロック化剤としては、アルコ−ル系化合物としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等が挙げられ、フェノール系化合物としてフェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等が挙げられる。活性メチレン系化合物としては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等が挙げられ、メルカプタン系化合物としては、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等が挙げられる。
【0057】
また、ブロック化剤である酸アミド系化合物としては、アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等が挙げられ、酸イミド系化合物としては、コハク酸イミド、マレイン酸イミド等が挙げられる。イミダゾール系化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール等が挙げられ、尿素系化合物としては、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等が挙げられる。アミン系化合物としては、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール等が挙げられ、イミン系化合物としては、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。重亜硫酸塩としては、重亜硫酸ソーダ等が挙げられ、ピリジン系化合物としては2−ヒドロキシピリジン、2−ヒドロキシキノリン等が挙げられる。さらに、オキシム系化合物としては、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等が挙げられ、ピラゾール系化合物としては、3,5−ジメチルピラゾール、3,5−ジエチルピラゾール等が挙げられる。
【0058】
上述したブロックイソシアネート基又はブロックイソチオシアネート基としては、下記一般式(3a)で表される基又は下記一般式(3b)で表される基が好適である。なお、これらの式中の符号は、いずれも上記と同義である。また、式中のR31〜R35で表される基が炭素数1〜20の1価の有機基である場合、その具体例としては、上記一般式(1)における炭素数1〜20の1価の有機基と同様のものが好適である。
【化6】

【0059】
上述したようなブロックイソシアネート基としては、O−(メチリデンアミノ)カルボキシアミノ基、O−(1−エチリデンアミノ)カルボキシアミノ基、O−(1−メチルエチリデンアミノ)カルボキシアミノ基、O−[1−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ基、1−(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ基、1−(3−エチル−5−メチルピラゾリル)カルボニルアミノ基、1−(3,5−ジエチルピラゾリル)カルボニルアミノ基、1−(3−プロピル−5−メチルピラゾリル)カルボニルアミノ基、1−(3−エチル−5−プロピルピラゾリル)カルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0060】
また、ブロックイソチオシアネート基としては、O−(メチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ基、O−(1−エチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ基、O−(1−メチルエチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ基、O−[1−メチルプロピリデンアミノ]チオカルボキシアミノ基、1−(3,5−ジメチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ基、1−(3−エチル−5−メチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ基、1−(3,5−ジエチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ基、1−(3−プロピル−5−メチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ基、1−(3−エチル−5−プロピルピラゾリル)チオカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0061】
解離性基としてこれらのブロックイソシアネート基又はブロックイソチオシアネート基を有する第2の化合物としては、より具体的には、下記一般式(4a)で表される化合物又は下記一般式(4b)で表される化合物が好適である。
【化7】

【0062】
上記式(4a)、(4b)中の符号は、いずれも上記と同義である。また、式中のR41〜R47で表される基が炭素数1〜20の1価の有機基である場合、その具体例としては、上記一般式(1)における炭素数1〜20の1価の有機基と同様のものが好適である。また、R及びRで表される炭素数1〜20の2価の有機基としては、前述の1価の有機基が有している水素原子のうちの1個が他の構造との結合手となった構造を有する2価の基が挙げられる。
【0063】
例えば、2価の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピルレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、ジメチルプロピレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。また、2価の芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基、アンスリレン基、ジメチルフェニレン基、トリメチルフェニレン基、エチレンフェニレン基、ジエチレンフェニレン基、トリエチレンフェニレン基、プロピレンフェニレン基、ブチレンフェニレン基、メチルナフチレン基、ジメチルナフチレン基、トリメチルナフチレン基、ビニルナフチレン基、エテニルナフチレン基、メチルアンスリレン基、エチルアンスリレン基等が挙げられる。
【0064】
このような第2の化合物は、例えば、イソシアネート基又はイソチオシアネート基を2個以上有する低分子化合物に対し、上述したブロック化剤を反応させることで、反応性官能基であるイソシアネート基又はイソチオシアネート基を、解離性基であるブロックイソシアネート基又はブロックイソチオシアネート基に変換することによって得ることができる。この反応の際には、有機溶媒や触媒等を適宜加えてもよい。
【0065】
イソシアネート基又はイソチオシアネート基を2個以上有する低分子化合物としては、例えば、オルト−フェニレンジイソシアネート、メタ−フェニランジイソシアネート、パラ−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0066】
そして、上記反応によって得ることができる、ブロックイソシアネート基又はブロックイソチオシアネート基を2個以上有する低分子化合物としては、次のようなものが例示できる。
【0067】
すなわち、1,2−ジ[O−(メチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[O−(メチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[O−(メチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[O−(1’−エチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[O−(1’−エチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[O−(1’−エチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[O−(1’−メチルエチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[O−(1’−メチルエチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[O−(1’−メチルエチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[O−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[O−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[O−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[1’−(3’,5’−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[1’(3’,5’−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[1’−(3’,5’−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[1’−(3’−エチル−5’−メチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[1−(3’−エチル−5’−メチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[1’−(3’−エチル−5’−メチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[1’−(3’,5’−ジエチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[1’−(3’,5’−ジエチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[1’−(3’,5’−ジエチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[1’−(3’−プロピル−5’−メチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[1’−(3’−プロピル−5’−メチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[1’−(3’−プロピル−5’−メチルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[1’−(3’−エチル−5’−プロピルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[1’−(3’−エチル−5’−プロピルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[1’−(3’−エチル−5’−プロピルピラゾリル)カルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[O−(メチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ブタン、1,4−ジ[O−(1’−メチルエチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ブタン、1,6−ジ[O−(メチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ヘキサン、1,6−ジ[O−(1’−メチルエチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ヘキサン、1,2−ジ[O−(メチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[O−(メチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[O−(メチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[O−(1’−エチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[O−(1’−エチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[O−(1’−エチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[O−(1’−メチルエチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[O−(1’−メチルエチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[O−(1’−メチルエチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[O−[1’−メチルプロピリデンアミノ]チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[O−[1’−メチルプロピリデンアミノ]チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[O−[1’−メチルプロピリデンアミノ]チオカルボキシアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[1’−(3’,5’−ジメチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[1’−(3’,5’−ジメチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[1’−(3’,5’−ジメチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[1’−(3’−エチル−5’−メチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[1’−(3’−エチル−5’−メチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[1’(3’−エチル−5’−メチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[1’−(3’,5’−ジエチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[1’−(3’,5’−ジエチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[1’−(3’,5’−ジエチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[1’−(3’−プロピル−5’−メチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[1’−(3’−プロピル−5’−メチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[1’−(3’−プロピル−5’−メチルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,2−ジ[1’−(3’−エチル−5’−プロピルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,3−ジ[1’−(3’−エチル−5’−プロピルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[1’−(3’−エチル−5’−プロピルピラゾリル)チオカルボニルアミノ]ベンゼン、1,4−ジ[O−(メチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ブタン、1,4−ジ[O−(1’−メチルエチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ブタン、1,6−ジ[O−(メチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ヘキサン、1,6−ジ[O−(1’−メチルエチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ]ヘキサン等が挙げられる。
【0068】
(絶縁層用組成物の含有比)
本実施形態の絶縁層用組成物は、上述した第1及び第2の化合物を含むものであるが、当該組成物においては、第1の化合物は、第1及び第2の化合物の合計中、20〜90質量%含まれていることが好ましく、40〜80質量%含まれていることがより好ましい。このような含有比を満たすことで、絶縁層用組成物によって得られる絶縁層の絶縁性や絶縁耐圧が特に良好に得られる傾向にある。
【0069】
(その他の成分)
本実施形態の絶縁層用組成物は、第1及び第2の化合物以外に、本発明による効果を損なわない範囲で、所望の特性に応じて硬化触媒、架橋剤、界面活性剤、レベリング剤、増粘剤等を含んでいてもよい。
【0070】
[有機薄膜トランジスタ]
次に、上述した絶縁層用組成物からなる絶縁層を備える有機薄膜トランジスタ(以下、単に「トランジスタ」と略す。)の好適な実施形態について説明する。
【0071】
好適な実施形態のトランジスタとしては、ソース電極と、ドレイン電極と、これらの間の電流経路となる有機半導体層と、電流経路を通る電流を制御するゲート電極と、有機半導体層とゲート電極とを絶縁する絶縁層とを備えるトランジスタであって、絶縁層が上述した実施形態の絶縁層用組成物の硬化物からなるものが挙げられる。
【0072】
また、トランジスタとしては、ソース電極と、ドレイン電極と、これらの間の電流経路となる有機半導体層と、電流経路を通る電流を制御するゲート電極と、有機半導体層とゲート電極とを絶縁する絶縁層と、これらの構成を覆うように設けられた保護層とを備えるトランジスタであって、保護層が上述した実施形態の絶縁層用組成物の硬化物からなるものも挙げられる。以下、これらのトランジスタの例についてより具体的に説明する。
【0073】
図1は、第1実施形態に係るトランジスタの断面構成を模式的に示す図であり、図2は、第2実施形態に係るトランジスタの断面構成を模式的に示す図である。図1に示す第1実施形態のトランジスタは、いわゆるトップゲート型のトランジスタであり、図2に示す第2実施形態のトランジスタは、いわゆるボトムゲート型のトランジスタであるが、本発明のトランジスタは、必ずしもこれらの形態に限定されない。
【0074】
図1に示すように、第1実施形態のトランジスタ100は、基板10上に、ソース電極12及びドレイン電極14、有機半導体層16、ゲート絶縁層(絶縁層)18、並びにゲート電極19がこの順に設けられている。
【0075】
このトランジスタ100において、ソース電極12及びドレイン電極14は、基板10上に所定の間隔をあけて設けられている。有機半導体層16は、ソース電極12及びドレイン電極14の少なくとも一部をそれぞれ覆うようにして基板10上に形成されている。有機半導体層16は、このようにソース電極12及びドレイン電極14の両方と接することで、これらの電極間の電流経路となる。
【0076】
また、ゲート絶縁層18は、下部に形成されたソース電極12、ドレイン電極14及び有機半導体層16の全てを覆うように設けられている。さらに、ゲート電極19は、このゲート絶縁層18上に設けられている。このように、ゲート絶縁層18が、有機半導体層16とゲート電極19との間に形成されることで、有機半導体層16とゲート電極19とが絶縁される。
【0077】
一方、図2に示すように、第2実施形態のトランジスタ200は、基板20上に、ゲート電極29、ゲート絶縁層28、ソース電極22及びドレイン電極24、有機半導体層26、並びにトップコート30がこの順に設けられている。
【0078】
このトランジスタ200において、ゲート電極29は、基板20上に直接設けられており、このゲート電極29を覆うようにゲート絶縁層28が形成されている。ゲート絶縁層28上には、ソース電極22及びドレイン電極24が所定の間隔をあけて設けられている。また、有機半導体層26は、ゲート絶縁層28上に、ソース電極22及びドレイン電極24の少なくとも一部をそれぞれ覆うようにして設けられている。
【0079】
有機半導体層26は、このようにソース電極22及びドレイン電極24の両方と接することで、これらの電極間の電流経路となる。また、有機半導体層26とゲート電極29とは、これらの間にゲート絶縁層28が形成されることによって絶縁されている。
【0080】
そして、トランジスタ200においては、上記のような素子構造を全て覆うようにして基板20上にトップコート30が設けられている。このトップコート30は、保護層として機能し、素子構造、特に外部との接触で劣化しやすい有機半導体層26を保護することができる。
【0081】
上述したトランジスタ100及び200において、まず、基板10及び20は、ガラス基板やプラスチック基板等によって構成される。ただし、後述するように、本発明のトランジスタは、低温形成が可能なものであることから、基板10,20として、通常では熱によって伸縮等を生じ易いプラスチック基板を良好に適用することが可能である。プラスチック基板を適用することで、トランジスタ100,200の軽量化やフレキシブル化が容易となる。
【0082】
ゲート電極19,29は、導電性材料から構成される。導電性材料としては、アルミニウム、金、白金、銀、銅、クロム、ニッケル、チタン等の金属、ITO等の導電性酸化物、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の混合高分子等の導電性高分子等が例示できる。また、金属微粒子、カーボンブラック、グラファイト微粉がバインダー中に分散した導電性材料も適用できる。また、ソース電極12,22やドレイン電極14,24も、ゲート電極19,29と同様の導電性材料によって構成されるものを適用できる。
【0083】
有機半導体層16,26としては、低分子有機半導体材料や高分子有機半導体材料からなるものを適用できる。低分子有機半導体材料としては、例えばペンタセン等が挙げられる。また、高分子有機半導体材料としては、例えばポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT)やフルオレンジチオフェン(F8T2)等が挙げられる。なお、有機半導体層16,26は、半導体として機能し得る有機材料から構成される。
【0084】
そして、トランジスタ100,200におけるゲート絶縁層18,28(絶縁層)は、上述した好適な実施形態の絶縁層用組成物の硬化物からなるものである。また、トランジスタ200におけるトップコート30も、絶縁層用組成物の硬化物からなるものである。
【0085】
ここで、絶縁層用組成物の硬化物とは、第1の化合物と第2の化合物との間で生じる反応によって、第1の化合物と第2の化合物とが繰り返し結合されてなる構造が形成された状態のものである。このような第1の化合物と第2の化合物との反応は、まず、電磁線又は熱を加えることにより、第2の化合物の解離性基から反応性官能基が形成され、これに続いて、第2の化合物で生じた反応性官能基が第1の化合物の活性水素基と反応することによって生じるものである。このように、絶縁相用組成物は、電磁線又は熱を加えることによって硬化させることができる。電磁線とは、所定の波長を有する電磁波であり、例えば、X線や紫外線等がこれに該当する。
【0086】
[有機薄膜トランジスタの製造方法]
次に、上述した構成を有する有機薄膜トランジスタ(トランジスタ)の製造方法の好適な実施形態について説明する。
【0087】
好適な実施形態のトランジスタの製造方法は、ソース電極と、ドレイン電極と、これらの間の電流経路となる有機半導体層と、電流経路を通る電流を制御するゲート電極と、有機半導体層とゲート電極とを絶縁する絶縁層とを備える有機薄膜トランジスタの製造方法であって、当該絶縁層を形成する面上に、上述した絶縁層用組成物を塗布し、硬化させることによって形成するものである。
【0088】
まず、第1実施形態のトランジスタ100の製造においては、基板10を準備し、この基板10上に、例えば蒸着法、スパッタリング法、印刷法、インクジェット法等の公知の方法により、上述したような導電性材料を堆積させることによって、ソース電極12及びドレイン電極14を形成する。
【0089】
それから、ソース電極12及びドレイン電極14が形成された基板10上に、これらのそれぞれ一部を覆うように有機半導体層16を形成する。有機半導体層16は、例えば、上述した低分子又は高分子有機半導体材料を、これらを溶解可能な溶媒に溶解した後、基板上に塗布し、乾燥させることによって形成することが好ましい。
【0090】
ここで用いる溶媒としては有機半導体材料を溶解させ得るものであればよく、乾燥による除去をできるだけ低温で行う観点からは、常圧での沸点が50℃〜200℃であるものが好ましい。溶媒としては、クロロホルム、トルエン、アニソール、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の有機溶媒が挙げられる。有機半導体材料の溶液の塗布は、例えば、スピンコート法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、インクジェット法等により行うことが出来る。
【0091】
次いで、ソース電極12、ドレイン電極14及び有機半導体層16が形成された基板10上に、これらを覆うように絶縁層18を形成する。絶縁層18は、上述した絶縁層用組成物を塗布後、硬化させることによって形成することができる。この第1実施形態のトランジスタ100の製造の場合、基板10上にソース電極12、ドレイン電極14及び有機半導体層16が形成された積層構造の上面が、「絶縁層を形成する面」に該当する。なお、絶縁層18の詳細な形成方法については後述する。
【0092】
その後、絶縁層18上に、ゲート電極19を、ソース電極12やドレイン電極14と同様の方法によって形成する。これにより、図1に示す第1実施形態のトランジスタ100が得られる。
【0093】
一方、第2実施形態のトランジスタ200は、まず、基板20上に、第1実施形態と同様にしてゲート電極29を形成する。次に、このゲート電極29を覆うように基板20上にゲート絶縁層28を形成する。ゲート絶縁層28の形成方法については後述するが、第2実施形態においては、基板20上にゲート電極29が形成された積層構造の上面が、「絶縁層を形成する面」に該当する。
【0094】
それから、ゲート絶縁層28上に、ソース電極22及びドレイン電極24を形成し、さらに、これらのそれぞれ一部を覆うように、有機半導体層26を形成する。これらは、第1実施形態と同様にして行うことができる。そして、このようにして基板20上に形成されたゲート電極29、ゲート絶縁層28、ソース電極22、ドレイン電極24及び有機半導体層26を覆うようにトップコート30を形成することにより、図2に示す第2実施形態のトランジスタ200が得られる。
【0095】
以下、これらのトランジスタ100,200におけるゲート絶縁層18,28の形成方法について具体的に説明する。
【0096】
ゲート絶縁層18、28の形成においては、まず、これらのゲート絶縁層を形成する面上に、上述した絶縁層用組成物を塗布する。絶縁層用組成物の塗布は、例えば、絶縁層用組成物を有機溶媒に溶解した溶液の状態で行うことができる。この溶液に用いる有機溶媒としては、絶縁層用組成物の成分を溶解させ得るものであり、例えば、常圧での沸点が100℃〜200℃のものが、乾燥による除去が容易であることから好ましい。このような有機溶媒としては、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1−ブタノール等が挙げられる。
【0097】
絶縁層用組成物を含む溶液の塗布は、スピンコート法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、インクジェット法等によって行うことができる。なお、絶縁層用組成物の溶液中には、必要に応じてレベリング剤、界面活性剤、硬化触媒等を添加してもよい。
【0098】
次に、上記のようにして塗布された絶縁層用組成物の溶液を、乾燥させて有機溶媒を除去し、これにより絶縁層用組成物からなる層を形成する。乾燥は、有機溶媒が揮発する程度に加熱することによって行うことができる。この際、低温でトランジスタを形成する観点からは、過度には高温としないことが望ましい。
【0099】
そして、絶縁層用組成物からなる層を硬化させることによって、ゲート絶縁層18,28を形成することができる。硬化は、上述したように、電磁線の照射又は加熱によって行うことができる。例えば、絶縁層用組成物における第2の化合物が、解離性基としてブロックイソシアネート基又はブロックイソチオシアネート基を有している場合、硬化は、加熱によって生じさせることができる。
【0100】
この場合、加熱温度は、60〜250℃とすることが好ましく、80〜200℃とすることがより好ましい。加熱温度が250℃を超えると、例えば、プラスチック基板等を用いた場合にその伸縮を十分に抑制できなくなるおそれがある。一方、60℃よりも小さいと、絶縁層用組成物が十分に硬化せずに、リーク電流の抑制、絶縁耐圧の向上、ヒステリシスの安定といった効果が十分に得られなくなる場合がある。
【0101】
また、トランジスタ200におけるトップコート30も、トランジスタの素子構造を形成した後、これらを覆うように、上述したゲート絶縁層18,28と同様にして絶縁層用組成物を塗布、硬化することによって形成することができる。
【0102】
なお、このようなトランジスタ100,200の製造方法においては、ゲート絶縁層18,28上に、自己組織化単分子膜層を形成してもよい(図示せず)。このような自己組織化単分子膜層を形成することで、絶縁耐圧の向上、トランジスタ特性の改善といった効果が得られるようになる。
【0103】
自己組織化単分子膜層は、例えば、ゲート絶縁層18,28に、アルキルクロロシラン化合物又はアルキルアルコキシシラン化合物を処理することによって形成することができる。このようにして形成された自己組織化単分子膜層は、アルキルクロロシラン化合物又はアルキルアルコキシシラン化合物が加水分解・縮合等を生じた構造を有し、ゲート絶縁層18,28表面とイオン結合、水素結合等によって相互作用した構成を有すると考えられる。
【0104】
アルキルクロロシラン化合物又はアルキルアルコキシシラン化合物の処理は、例えば、これらの化合物を有機溶媒中に1〜10重量%となるように溶解した溶液を、ゲート絶縁層18,28上に塗布して乾燥させること等によって形成することができる。
【0105】
アルキルクロロシラン化合物としては、例えば、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン等が挙げられる。また、アルキルアルコキシシラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0106】
[ディスプレイ用部材及びディスプレイ]
次に、上述した実施形態のトランジスタを用いたディスプレイ用部材及びディスプレイについて説明する。以下の説明では、ディスプレイとして、有機EL素子を用いたものの構造を例に挙げて説明するが、本発明に適用できるディスプレイはこれに限定されない。
【0107】
図3は、好適な実施形態に係るディスプレイの断面構成を模式的に示す図である。図3に示すように、本実施形態のディスプレイ300は、トランジスタ200と、有機EL素子40とを備えた構成を有している。このディスプレイ300は、ディスプレイにおける1個の画素を構成するものであり、有機EL素子40にトランジスタ200が接続されて、この有機EL素子40の発光を制御する。そして、実際のディスプレイは、このようなディスプレイ300が多数設けられることによって画像の表示が可能なものである。
【0108】
ディスプレイ300において、トランジスタ200は、上述した第2実施形態のトランジスタ200と同様の構造を有するものである。このトランジスタ200における基板20は、その面方向に延びており、有機EL素子40を搭載する基板を兼ねている。また、基板20と有機EL素子40との間には、トランジスタ200におけるトップコート30が配置されるようになっている。有機EL素子40としては、公知の構造を有するものを適用することができる。
【0109】
かかるディスプレイ300のように、本発明のトランジスタの一実施形態であるトランジスタ200は、ディスプレイに用いられるディスプレイ用部材として好適に用いることができる。そして、かかるトランジスタ200は、上述したように、特に、従来高温が必要とされたゲート絶縁層28やトップコート30を低温で形成可能であることから、例えば、基板20としてプラスチック基板を用いた場合であっても、この基板の伸縮等を十分に抑制することができる。そして、通常、高画素化のためにディスプレイ300で表されるような素子を小さくした場合、基板の変形が表示特性に大きく影響を与える傾向にあるが、本実施形態では、低温での形成が可能トランジスタ200をディスプレイ部材として適用していることから、このような基板の変形を抑制でき、ディスプレイ300の狭小化が容易である。
【実施例】
【0110】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0111】
[第1及び第2の化合物の合成]
(合成例1)
50ml平衡型滴下ロート、三方コック、メカニカルスターラーを取り付けた500ml三つ口フラスコの内部をチッソ置換した後、1,3−フェニレンジイソシアネート25.0g(和光純薬製)、脱水テトラヒドロフラン250mlを加え、これらを攪拌して溶解させ、1,3−フェニレンジイソシアネートのテトラヒドロフラン溶液を得た。次いで、反応フラスコを氷浴に入れ、1,3−フェニレンジイソシアネートのテトラヒドロフラン溶液を200rpmで攪拌しながらブタノンケトオキシム(和光純薬製)をゆっくり滴下した。滴下終了後、1時間氷浴中で攪拌を続けた後、更に室温で一晩攪拌しながら反応させ、淡黄色透明な反応混合物を得た。
【0112】
得られた反応混合物を、1000mlのイオン交換水に攪拌しながら滴下し、上澄みをすて、粘稠な固体を得た。得られた個体をエタノール200mlに再溶解し、ろ紙で不溶物をろ過した後、減圧下でエタノールを留去した。これにより、第2の化合物である1,3−ジ[O−(1’−メチルエチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ベンゼンを粘調な固体として得た(得られた量は、45gであった)。
【0113】
(合成例2)
2−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル−ジメチルシリル−ポリシルセスキオキサン樹脂(BOPH樹脂;東亞合成製、ポリスチレン換算の重量平均分子量=10000)の42.4重量%の2−ヘプタノン溶液60gを、300mlナス型フラスコに入れ、ロータリーエバポレータ−を用いて減圧下で2−ヘプタノンを留去して、2−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル−ジメチルシリル−ポリシルセスキオキサン樹脂を得た。
【0114】
得られた樹脂に、1−ブタノール30gを加えて再溶解させた後、ロータリーエバポレータ−を用いて溶媒を再度留去させた。この再溶解・溶媒留去の操作を3回繰り返し、最後に1−ブタノールの添加量を調製して、第1の化合物である2−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル−ジメチルシリル−ポリシルセスキオキサン樹脂の30重量%の1−ブタノール溶液を調製した。
【0115】
[実施例1]
(絶縁層用組成物溶液の調製)
合成例2で得られた2−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル−ジメチルシリル−ポリシルセスキオキサン樹脂の30重量%1−ブタノール溶液を3.00g、合成例1で得られた1,3−ジ[O−(1’−メチルエチリデンアミノ)カルボキシアミノ]ベンゼンを0.27g、1−ブタノールを5.70g、10mlのサンプル瓶に入れ、これらを攪拌溶解して均一な塗布溶液(絶縁層用組成物溶液)を調製した。
【0116】
(絶縁層の形成)
次いで、得られた塗布溶液を、0.2μmのメンブレンフィルターを用いてろ過し、シリコンウェハー上にスピンコートした後、ホットプレート上で150℃で90分間加熱して、絶縁層を得た。
【0117】
(絶縁層の耐溶剤性の評価)
得られた絶縁層にトルエン又はクロロホルムを滴下したところ、絶縁層は溶解しなかった。
【0118】
(絶縁層の絶縁耐圧の評価)
絶縁層の一部を剥離して段差計(ケイエルエムテンコール製)で膜厚を測定したところ、185nmであった。
【0119】
この絶縁層上に、アルミニウム電極を蒸着し、真空プロ−バ(BCT22MDC−5−HT−SCU;Nagase Electronic Equipments Service Co. LTD製)によりその絶縁破壊電圧を測定したところ、100Vを印加しても絶縁破壊を起こさなかった。また、100Vを印加した時のリーク電流は、3.38×10−6A(電極面積=0.0314cm)であった。
【0120】
(トランジスタの作製)
ガラス基板上にメタルマスクを用いた真空蒸着法により、チャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極及びドレイン電極(後述の有機半導体層側から、フラーレン、金の順番で積層構造を有する)を形成した。
【0121】
次に、F8T2(9,9−ジオクチルフルオレン:ビチオフェン=50:50(モル比)の共重合体;ポリスチレン換算の重量平均分子量=69,000)を溶媒であるクロロホルムに溶解し、濃度が0.5重量%である溶液(有機半導体組成物)を作製した後、これをメンブランフィルターでろ過して塗布液を調製した。それから、得られた塗布液を、上記のソース及びドレイン電極を覆うようにガラス基板上にスピンコート法により塗布し、約60nmの厚さを有する有機半導体層を形成した。
【0122】
それから、上述した絶縁層用組成物溶液を、0.2μmのメンブレンフィルターでろ過した後、これを有機半導体層上にスピンコート法により塗布した後、150℃で90分間加熱することにより硬化させて、約300nmの厚さを有するゲート絶縁層を形成した。
【0123】
そして、メタルマスクを用いた真空蒸着法により、ゲート絶縁層上に、ゲート電極(有機半導体側から、フラーレン、金の順番で積層構造を有する)を形成することにより、トップゲート型の電界効果型有機薄膜トランジスタ(トランジスタ)を作製した。
【0124】
(トランジスタの特性評価)
得られたトランジスタについて、ゲート電圧Vgを0〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−60Vに変化させた条件で、そのトランジスタ特性を真空プロ−バ(BCT22MDC−5−HT−SCU;Nagase Electronic Equipments Service Co. LTD製)を用いて測定した。また、ヒステリシスは、ソース・ドレイン間電圧Vsdが−50Vで、ゲート電圧Vgを0Vから−60Vに変化させた際の閾値電圧Vthとゲート電圧Vgを−60Vから0Vに変化させた際の閾値電圧Vthとの差異の絶対値で表した。得られた結果を表1に示す。
【表1】

【0125】
[比較例1]
(絶縁層用組成物溶液の調製)
ポリビニルフェノール(アルドリッチ製、ポリスチレン換算の重量平均分子量=8000)1.00g、ポリ(メラミン−co−ホルムアルデヒド)メチル化物の84重量%1−ブタノール溶液(アルドリッチ製)0.194g、及び2−ヘプタノン7.00gを10mlのサンプル瓶に入れ、攪拌溶解して均一な塗布溶液(絶縁層用組成物溶液)を調製した。
【0126】
(トランジスタの作製)
この絶縁層用組成物溶液を用いたこと、及び、ゲート絶縁層を200℃で1時間加熱することにより形成したこと以外は、実施例1と同様にして、トップゲート型の電界効果型有機薄膜トランジスタを作製した。
【0127】
得られたトランジスタについて、ゲート電圧Vgを0〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−60Vに変化させた条件で、そのトランジスタ特性を真空プローバ(BCT22MDC−5−HT−SCU;Nagase Electronic Equipments Service Co. LTD製)を用いて測定した。しかしながら、このトランジスタは、トランジスタとして動作することができなかった。
【0128】
上記の結果より、第1及び第2の化合物を組み合わせて含む絶縁層用組成物により形成したゲート絶縁層を備える実施例1のトランジスタは、絶縁層をプラスチック基板の伸縮が生じない程度の低温で形成することができ、また、この絶縁層の絶縁耐圧が優れていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタの断面構成を模式的に示す図である。
【図2】第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタの断面構成を模式的に示す図である。
【図3】好適な実施形態に係るディスプレイの断面構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0130】
10,20…基板、12,22…ソース電極、14,24…ドレイン電極、16,26…有機半導体層、18,28…ゲート絶縁層、19,29…ゲート電極、30…トップコート、40…有機EL素子、100,200…トランジスタ、300…ディスプレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に活性水素基を2個以上有する高分子化合物からなる第1の化合物と、分子内に電磁線又は熱により活性水素基と反応する官能基を生成する基を2個以上有する低分子化合物からなる第2の化合物と、を含む、絶縁層用組成物。
【請求項2】
前記第1の化合物が、前記活性水素基としてフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、メルカプト基及びカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有する高分子化合物である、請求項1記載の絶縁層用組成物。
【請求項3】
前記第1の化合物が、活性水素基を有するポリオルガノシルセスキオキサン樹脂である、請求項1又は2記載の絶縁層用組成物。
【請求項4】
前記第1の化合物が、前記活性水素基として下記一般式(1)で表される基及び下記一般式(2)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有するポリオルガノシルセスキオキサン樹脂である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の絶縁層用組成物。
【化1】


[式(1)中、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基を表し、R13は、水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基を表し、rは1〜5の整数であり、kは0以上の整数である。ただし、R13が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、式(2)中、R21、R22、R23、R24、R25及びR26は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基を表し、l及びmはそれぞれ独立に0以上の整数であり、nは1以上の整数である。]
【請求項5】
前記第2の化合物における前記電磁線又は熱により活性水素基と反応する官能基を生成する基が、ブロックされたイソシアネート基及びブロックされたイソチオシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の絶縁層用組成物。
【請求項6】
前記ブロックされたイソシアネート基又は前記ブロックされたイソチオシアネート基が、下記一般式(3a)で表される基又は下記一般式(3b)で表される基である、請求項5記載の絶縁層用組成物。
【化2】


[式中、X及びXは、それぞれ独立に酸素原子又は硫黄原子を表し、R31、R32、R33、R34及びR35は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基を表す。]
【請求項7】
前記第2の化合物が、下記一般式(4a)で表される化合物及び下記一般式(4b)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の絶縁層用組成物。
【化3】


[式中、X41及びX42は、それぞれ独立に酸素原子又は硫黄原子を表し、R41、R42、R43、R44、R45、R46及びR47は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基を表し、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜20の2価の有機基を表し、a及びbはそれぞれ独立に2〜6の整数であり、c及びdは、それぞれ独立に0〜20の整数である。]


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−7030(P2010−7030A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171155(P2008−171155)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】