説明

絶縁性判定方法および絶縁性判定システム

【課題】海底パイプラインのライザ部分と外界との導通の有無や導通箇所の判定を容易に行えるようにする。
【解決手段】絶縁性判定システムが、海中に設けられる海中側端子113と、海中側端子113と海底パイプラインのライザとの間に電圧を印加する交流信号電流発信部111と、海底パイプラインのライザを流れる電流、または、海洋構造物を流れる電流、または、絶縁継手を介してパイプラインに接続される海上側パイプを流れる電流のうち少なくとも1つを測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底パイプラインのライザ部分と周辺の金属物との導通の有無または導通箇所の判定を行う絶縁性判定方法および絶縁性判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
港湾の沖合で原油やガスを受け入れるシーバースや、原油やガスを産出する固定式プラットフォームなどの海洋構造物は、海底地盤に打ち込まれ海上まで伸びる多数の杭の上に、人員や機材等を収容するための平面を有するデッキが載って構成されることが一般的である。そして、これらの杭は、海中や海底土中においては無塗装鋼材にて生成され、犠牲陽極により電気防食されることが一般的である。
また、シーバースにて受け入れられた原油やガス、あるいは、固定式プラットフォームにて産出された原油やガスは、通常、海底パイプラインによって陸上の基地に搬送される。そして、このパイプラインは、海中や海底土中においては防食被覆で覆われ、さらに犠牲陽極により電気防食されることが一般的である。
【0003】
このように、海洋構造物の杭も、海底パイプラインも、共に電気防食されるが、両者の電気的特性は、漏れ抵抗に関して大きく異なる。すなわち、海洋構造物の杭は、無塗装鋼材にて生成されるため、海水や土などと接する面積が大きく、漏れ抵抗が非常に小さい。一方、海底パイプラインは、防食被覆で覆われ、被覆損傷部の鋼露出面や犠牲陽極を通じてのみ海水や土などと接するため、接する面積が小さく、海洋構造物の杭と比較すると漏れ抵抗が大きい。
この漏れ抵抗の違いは、被防食体への防食電流の流入量に大きな影響を及ぼす。すなわち、防食電流は、漏れ抵抗が小さい被防食体には流入量が多く、漏れ抵抗が大きい被防食体には流入量が少ない。
【0004】
このため、漏れ抵抗の大きい被防食体と漏れ抵抗の小さい被防食体とが導通した状態で、それぞれを電気防食すると、漏れ抵抗の大きい被防食体の防食電流が漏れ抵抗の小さい被防食体に流入し、漏れ抵抗の小さい被防食体の電気防食に使用されてしまう。海洋構造物の杭と海底パイプラインとが導通した場合も、漏れ抵抗が大きい海底パイプラインの防食電流が、漏れ抵抗の小さい海洋構造物の杭に流入し、海底パイプラインの電気防食ではなく、海洋構造物の杭の電気防食に使用されてしまう。
【0005】
このため、例えば、海底パイプラインの犠牲陽極のうち、杭との導通箇所から数キロメートル(km)の範囲内の犠牲陽極が、杭の電気防食のために使われ、短期間で消耗してしまうといった問題が生じる。
あるいは、外部電源装置を用いて海底パイプラインを電気防食した場合は、多くの防食電流が杭にも流入してしまい、外部電源装置の定格最大出力電流を通電しても海底パイプラインが防食電位に達しないといった問題が生じる。
【0006】
このように、漏れ抵抗が大きく異なる海底パイプラインと海洋構造物の杭との導通は、海底パイプラインの防食に重大な悪影響を及ぼす。
したがって、海底パイプラインと海洋構造物の杭とを互いに電気的に絶縁状態とし、それぞれを独立に電気防食する必要がある。
【0007】
ここで、海底パイプラインと海洋構造物の杭とを電気的に絶縁状態とするためには、海洋構造物や海底パイプラインの施工時に、海底パイプラインが海洋構造物の杭に沿って立ち上がるライザ部分と、当該杭とが接触しないよう注意して施工する必要がある。
また、海洋構造物の杭や、配管の架台や、上載設備などは、デッキ中の鉄筋と接触して鉄筋と導通する可能性が高い。このため、ライザ部分がデッキを貫通する箇所では、例えば、ライザ部分を耐圧ゴムなどの高強度な絶縁材料で覆い、ライザ部分と鉄筋とが直接接触しないように施工する。
更に、デッキ上では、ライザ部分が、配管架台や上載設備やデッキ中の鉄筋などを介して海洋構造物の杭と導通しないように、例えば、配管架台や上載設備とライザ部分との間に、フランジ型やモノブロック型などの絶縁継手を挿入する。
これらの対策を行うことにより、海底パイプラインと海洋構造物の杭とを電気的に絶縁状態とし、それぞれを独立に電気防食できる。
【0008】
しかし、ライザ部分の絶縁継手の絶縁性が悪くなり、あるいは、海洋構造物建設時の残資材の海洋投棄物や他者の海洋投棄物など、鋼製の海洋投棄物によって海底パイプラインのライザ部分と海洋構造物の杭とが接続され、海底パイプラインと海洋構造物の杭とが導通することがしばしばある。
このうち、ライザ部分の絶縁継手の絶縁性は、欧州規格やNACE(National Association Of Corrosion Engineers)の規格に記載されている幾つかの方法を組み合わせることにより診断することが考えられる。
【0009】
一方、海底面等で海底パイプラインと海洋構造物の杭とが海洋投棄物などを介して導通した場合の導通箇所の調査は、現時点では、遠隔操作無人探索機(Remotely Operated Vehicle;ROV)や潜水士の目視によって、導通の可能性のある箇所を発見する方法が唯一である。
しかし、この導通箇所が、生物の死骸などの堆積や海底面の変化などで海底土中に埋もれてしまった場合には、導通箇所の調査を行うためには、ジェットなどを用いて堆積物を除去した後に、ROVや潜水士による目視観察を実施する必要がある。このため、調査に費用や時間を要し、また、作業者の負担が大きい。
【0010】
また、海底パイプラインと海洋構造物の杭とが実際に導通していたかどうかの判断は、導通を生ぜしめた可能性のある海洋投棄物を切断するなどし、切断タイミングの前と後とでの、海洋構造物の杭や海底パイプラインの対海水電位の変化、あるいは、電気防食装置の出力電流の変化をモニタリングすることにより行われる。
ここで、通常、海洋構造物の杭のように、海水中で大規模な無塗装面を有する金属体は、電気防食状態から自然腐食状態に戻る(復極する)ために、場合によっては数ヶ月の時間を要する。このため、導通の有無を判定するためのモニタリングには長期の期間を要する。
【0011】
そこで、既存技術の中から、海底パイプラインと海洋構造物との導通箇所の判定に適用できる可能性のある技術を抽出すると、特許文献1に開示されている、互いに並行して地中に埋設されている金属管の接触位置を地表面から検知する方法が挙げられる。
図14は、特許文献1の方法を用いて金属管の接触位置を検知する例を示す図である。
同図において、調査対象の金属管1001と、この金属管1001に並行する金属管1002とが、点1003にて接触している。ここで、金属管1001と金属管1002とは、地面からほぼ同じ深さの位置に埋設されている。図14は、金属管1001と金属管1002とを上から見た位置関係を示している。
また、同図の発信器1004は、金属管1001との接点1006と、地中に埋設された通電陽極1005との間に周波数f1の交流信号電圧を印加する。また、同図の発信器1009は、金属管1001との接点1006と、地中に埋設された通電陽極1010との間に周波数f2の交流信号電圧を印加する。
【0012】
すると、発信器1004から出力される交流信号電流は、同図の実線の矢印で示されるように、接触箇所1003から発信器1004側(同図の左側)では、金属管1001と金属管1002とで逆向きに流れ、接触箇所1003から発信器1009側(同図の右側)では、金属管1001と金属管1002とで同じ向きに流れる。また、発信器1009から出力される交流信号電流は、同図の破線の矢印で示されるように、接触箇所1003から発信器1004側では、金属管1001と金属管1002とで同じ向きに流れ、接触箇所1003から発信器1009側では、金属管1001と金属管1002とで逆向きに流れる。
【0013】
ここで、地表面上で、金属管1001および金属管1002の延長方向(同図に示すX方向)対して直交する方向(同図に示すY方向)に磁気センサ1012を動かすと、この交流信号電流の流れの向きの違いに応じて、磁気センサの出力のピーク位置が異なる。
図15は、特許文献1の方法における、磁気センサの出力のピーク位置を示す図である。
同図の実線1017で示すように、金属管1001と金属管1002とが接触する点1003より右側(図14の発信器1009側)では、発信器1004から出力される交流信号電流が、金属管1001と金属管1002とで同じ向きに流れるので、これらの交流信号電流によって磁気センサに生じる誘導電圧が最大となる位置は、金属管1001と金属管1002との間にある。一方、金属管1001と金属管1002とが接触する点1003より左側(図14の発信器1004側)では、発信器1004から出力される交流信号電流が、金属管1001と金属管1002とで逆向きに流れることにより、これらの交流信号電流によって磁気センサに生じる誘導電圧が最大となる位置は、金属管1001よりも外側にある。
【0014】
逆に、同図の破線1018で示すように、金属管1001と金属管1002とが接触する点1003より右側では、発信器1009から出力される交流信号電流は、金属管1001と金属管1002とで逆向きに流れることにより、これらの交流信号電流によって磁気センサに生じる誘導電圧が最大となる位置は、金属管1001よりも外側にある。一方、金属管1001と金属管1002とが接触する点1003より左側では、発信器1009から出力される交流信号電流は、金属管1001と金属管1002とで同じ向きに流れるので、これらの交流信号電流によって磁気センサに生じる誘導電圧が最大となる位置は、金属管1001と金属管1002との間にある。
【0015】
そこで、金属管1001と金属管1002とが接触していると思われる位置を中心に、地表面の数か所で、磁気センサ1012(図14)を金属管1001と金属管1002との延長方向に対して直角方向(図14のY方向)に移動させ、磁気センサの出力電圧の周波数f1成分が最大となる位置と、周波数f2成分が最大となる位置とを測定する。そして、測定結果に基づいて、磁気センサ1012の出力電圧の、周波数f1成分が最大となる位置と、周波数f2成分が最大となる位置とが重なる地点を取得または推定する。この、周波数f1成分が最大となる位置と、周波数f2成分が最大となる位置とが重なる地点にて、金属管1001と金属管1002とが接触していると考えられる。
【0016】
図16は、この特許文献1の方法を、海底パイプラインのライザ部分と海洋構造物の杭との絶縁性判定に適用する例を示す図である。
同図において、発信器1104は、海底パイプライン1119の、海洋構造物側の絶縁継手1121よりも陸側(パイプラインが海底に延びる側)における接点1106と、海面近くの海中に吊るされた通電陽極1105との間に周波数f1の交流信号電圧を印加する。また、発信器1109は、海底パイプライン1119の、陸上側の絶縁継手1126よりも海洋構造物側(パイプラインが海底に延びる側)における接点1106と、海中に吊るされた通電陽極1110との間に周波数f2の交流信号電圧を印加する。
【0017】
そして、海底パイプライン1119のライザ部分1120と、海洋構造物の杭1124との導通位置は、ライザ部分1120と杭1124とが隣接する区間において、ライザ部分1120の延長する鉛直方向に対して直交方向、かつ、ライザ部分1120と、隣接する杭1124とを結んだ仮想平面に平行に磁気センサを移動させる。そして、図14および図15で説明したように、磁気センサの出力電圧の、周波数f1成分が最大となる位置と、周波数f2成分が最大となる位置とが重なる地点を取得または推定することにより、ライザ部分1120と杭1124とが導通する箇所を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2005−134159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、図16で説明した判定方法には、以下の問題点がある。
問題点の第一は、海底パイプラインの陸上側から印加した周波数f2の交流信号電圧が、検査箇所であるライザ部分ではほとんどゼロになってしまう可能性が高いという点である。
海底パイプラインに印加した交流信号電圧は、海底パイプラインの鋼管の抵抗が大きいほど、すなわち、鋼管の長さが長いほど、また、鋼管の口径が小さいほど、また、鋼管の厚さが薄いほど減衰しやすくなる。ここで、シーバースや固定式プラットフォームなどの海洋構造物は、陸上側から数キロメートル(km)〜数十キロメートル以上先にある場合が多い。このため、陸上側から印加した交流信号電圧が、検査箇所であるライザ部分ではほとんどゼロになってしまう可能性が高い。
【0020】
また、海底パイプラインの陸上側から印加した交流信号電圧の減衰には、海底パイプラインの漏れ抵抗が大きく影響し、漏れ抵抗が小さいほど、すなわち、防食被覆損傷部の鋼露出面が大きいほど、また、鋼露出面の箇所数が多いほど交流信号電圧が減衰しやすくなる。また、海底パイプラインが非埋設の箇所では、防食被覆損傷部の鋼露出面が海水に露出することにより、さらに、交流信号電圧が減衰しやすくなる。
ここで、海底パイプラインは、半割りブレスレット型アルミニウム合金陽極などの犠牲陽極を、当該海底パイプラインに等間隔に設置することにより電気防食されるのが通常である。この、等間隔に設置された犠牲陽極により、非常に大きな防食被覆損傷部の鋼露出面が均一に分布する場合と同様に、交流信号電圧が減衰してしまう。したがって、犠牲陽極により電気防食された海底パイプラインでは、防食被覆の損傷がない場合でも、印加した交流信号電圧が著しく減衰してしまう。
【0021】
そして、海底パイプラインが非埋設で海水中に犠牲陽極がさらされている場合には、印加した交流信号電圧は、さらに減衰しやすくなる。
このように、特許文献1の方法を海底パイプラインのライザ部分と海洋構造物の杭との絶縁性判定に適用した図16の方法では、海底パイプラインの陸上側から印加した交流信号電圧が減衰し、ライザ部分において、判定に必要な信号レベルが得られないことが考えられる。
【0022】
この問題点の対策として、周波数f2の交流信号電圧を、海底パイプラインの陸上側ではなくライザ部分近傍の海底において海底パイプラインに印加することが考えられる。この場合、交流信号電圧を印加する箇所の防食被覆を除去し、露出した鋼面にケーブルを接続し、さらにケーブルを接続した鋼露出面を防食被覆で覆う。そして、周波数f2の発信器(図16の1109)を海洋構造物上に設置し、この発信器に、海底において海底パイプラインの鋼面に接続したケーブルを接続して周波数f2の交流信号電圧を印加する。
しかし、この方法は、海底での多くの作業を必要とする。海底の水深は、シーバースで数十メートル、固定式プラットフォームでは数十〜三百メートルとなることが多く、海底で多くの作業をするには多大な費用がかかり、また、作業者の負担が大きい。
【0023】
また、図16で説明した判定方法の問題点の第二は、磁気センサと、ライザ部分や杭との距離が変化することによって磁気センサの出力が大きく変化し、これにより誤判定してしまうおそれがある点である。
図16の方法でライザ部分と杭との導通箇所を正確に判定するためには、磁気センサを、ライザ部分と隣接する杭とを結んだ仮想平面に平行に、かつ、ライザ部分の延長する鉛直方向に対して直交を維持しながら移動させる必要がある。このためには、磁気センサとライザ部分との距離および磁気センサと杭との距離を検出し、検出結果に基づいて磁気センサを姿勢制御して、磁気センサとライザ部分や杭との距離補正を行う必要がある。これらの機能を磁気センサに付加するためには、多大な費用がかかる。
【0024】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、海底パイプラインのライザ部分と周辺の金属物との導通の有無や導通箇所の判定を容易に行える絶縁性判定方法および絶縁性判定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
[1]この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の一様態による絶縁性判定方法は、海中に設けられる海中側端子と、前記海中側端子と導通する電源であって、海面下と海上とにわたって設置され海面下にて電気防食された金属管と導通可能な電源と、電流を測定する測定装置と、を含む絶縁性測定システムにより、前記金属管と、構造物または構造物に導通している導体と、の間の絶縁性を判定する絶縁性判定方法であって、前記電源は、前記海中側端子と前記金属管との間に電圧を印加し、前記測定装置は、前記金属管を流れる電流または前記構造物を流れる電流または前記導体を流れる電流のうち少なくとも1つを測定することを特徴とする。
【0026】
[2]また、本発明の一様態による絶縁性判定方法は、上述の絶縁性判定方法であって、前記構造物は、海上および海中にわたって設置され海底に固定された杭を具備し、前記測定装置は、前記杭を流れる電流を測定することを特徴とする。
【0027】
[3]また、本発明の一様態による絶縁性判定方法は、上述の絶縁性判定方法であって、前記構造物は、海上および海中にわたって設置され海底に固定された複数の杭を具備し、前記電源は、前記海中側端子と前記金属管との間に電圧を印加し、前記測定装置は、複数ある前記杭に流れる電流を測定することを特徴とする。
【0028】
[4]また、本発明の一様態による絶縁性判定方法は、上述の絶縁性判定方法であって、前記構造物は、海上および海中にわたって設置され海底に固定された複数の杭を具備し、前記電源は、前記海中側端子と前記金属管との間に交流電圧を印加し、前記測定装置は、前記杭のうち1本の、第1の測定箇所を流れる交流電流の位相を測定し、前記測定した交流電流の位相を基準にして、第2の測定箇所を流れる交流電流の位相を測定し、交流電流の向きが反転する位置、すなわち位相の逆転する位置を検出することを特徴とする。
【0029】
[5]また、本発明の一様態による絶縁性判定方法は、上述の絶縁性判定方法であって、前記金属管は、海上の端部にて絶縁継手に接し、海上かつ前記絶縁継手よりも海面側にて前記電源により電圧を印加され、海上かつ前記電源に電圧を印加される箇所よりも海面側にて構造物に支持され、前記絶縁継手は、前記導体に接し、前記測定装置は、前記金属管の、前記電源により電圧を印加される箇所と前記絶縁継手との間を流れる電流の電流値、または、前記金属管の、前記電源により電圧を印加される箇所から当該金属管が前記構造物に支持される箇所までの間の区間を流れる電流の電流値のいずれかを測定することを特徴とする。
【0030】
[6]また、本発明の一様態による絶縁性判定方法は、上述の絶縁性判定方法であって、前記金属管は、海上にて前記電源により電圧を印加され、海上かつ前記電源に電圧を印加される箇所よりも海面側にて構造物に支持され、前記測定装置は、前記金属管の、当該金属管が前記構造物に支持される箇所より海面側かつ海上部分を流れる電流の電流値を測定し、前記金属管の、当該金属管が前記構造物に支持される箇所から前記金属管が前記電源により電圧を印加される箇所までの間の区間を流れる電流の電流値を測定することを特徴とする。
【0031】
[7]また、本発明の一様態よる絶縁性判定方法は、上述の絶縁性判定方法であって、前記金属管は、海上にて前記電源により電圧を印加され、海上かつ前記電源に電圧を印加される箇所よりも海面側にて構造物に支持され、前記測定装置は、前記金属管の、当該第1の金属管が前記構造物に支持される箇所より海面側かつ海上部分を流れる電流の電流値を測定することを特徴とする。
【0032】
[8]また、本発明の一様態による絶縁性判定方法は、上述の絶縁性判定方法であって、上記[5]に記載の絶縁性判定方法を行い、測定された電流の電流値が所定の閾値未満である場合は、さらに上記[6]または上記[7]に記載の絶縁性判定方法を行い、上記[6]に記載の絶縁性判定方法にて測定された、前記金属管の、当該金属管が前記構造物に支持される箇所より海面側かつ海上部分を流れる電流の電流値と、前記金属管の、当該金属管が前記構造物に支持される箇所から前記金属管が前記電源により電圧を印加される箇所までの間の区間を流れる電流の電流値との差が所定の閾値未満である場合、あるいは、前記電源の電流値と、上記[7]に記載の絶縁性判定方法にて測定された電流値との差が所定の閾値未満である場合は、さらに上記[3]に記載の複数の前記杭の電流を測定することによる絶縁性判定方法を行い、電流が確認された前記杭について、さらに上記[4]に記載の絶縁性判定方法を行うことを特徴とする。
【0033】
[9]また、本発明の一様態による絶縁性判定システムは、請求項1から請求項8までのいずれかの絶縁性判定方法による電流の測定を行う絶縁性判定システムであって、メッセージを表示する表示部と、前記電流の測定箇所に電流測定用のセンサを設置すべき旨の指示を表示するよう、前記表示部を制御する制御部と、前記センサを設置した旨の通知を取得する入力部と、前記入力部が前記通知を取得すると前記電流を検出する電流検出部とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
この発明によれば、海底パイプラインのライザ部分と周辺の金属物との導通の有無や導通箇所の判定を容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態における絶縁性測定システムの機能ブロック構成を示す構成図である。
【図2】同実施形態において絶縁性判定の対象となるライザおよび海洋構造物の構成を示す概略図である。
【図3】同実施形態において、海洋投棄物など海面下の導体によるライザ210と杭310−1との導通の有無を判定する場合の、絶縁性測定システム100の設置例を示す図である。
【図4】同実施形態において、ライザ210と杭310−1との接触箇所を判定する場合の、絶縁性測定システム100の設置例を示す図である。
【図5】同実施形態において、絶縁物220の絶縁良否を判定する場合の、絶縁性測定システム100の設置例を示す図である。
【図6】同実施形態において、絶縁継手230の絶縁良否を判定する場合の、絶縁性測定システム100の設置例を示す図である。
【図7】同実施形態において、判定手順を表示する絶縁性測定システムの機能ブロック構成を示す構成図である。
【図8】同実施形態において、制御部623が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図9】同実施形態において、制御部623が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図10】ライザと杭との導通判定の実験を行った模型の構成を示す回路図である。
【図11】ライザと杭との導通判定の実験結果を示す図である。
【図12】ライザと杭との導通箇所検知の実験を行った模型の構成の磁気センサに関する部分を示す回路図である。
【図13】ライザと杭との導通箇所検知の実験結果を示す図である。
【図14】特許文献1の方法を用いて金属管の接触位置を検知する例を示す図である。
【図15】特許文献1の方法における、磁気センサの出力のピーク位置を示す図である。
【図16】特許文献1の方法を、海底パイプラインのライザ部分と海洋構造物の杭との絶縁性判定に適用する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態における絶縁性測定システムの機能ブロック構成を示す構成図である。同図において、絶縁性測定システム100は、交流信号電圧印加装置110と、交流信号電流測定装置(測定装置)120とを具備する。交流信号電圧印加装置110は、交流信号電流発信部(電源)111と、交流信号電流設定部112と、海中側端子113と、ライザ側端子114とを具備する。交流信号電流測定装置120は、磁気センサ121と、交流信号電流検出部(電流検出部)122とを具備する。
【0037】
絶縁性測定システム100は、海底パイプラインのライザ部分に用いられる金属管(以下では、単に「ライザ」と称する)と、当該ライザの周辺の金属物との電気的絶縁性の判定に用いられるシステムであり、ライザと海中に設けた通電用の端子(海中側端子113)との間に交流信号電圧を印加し(すなわち、交流信号電流を導通し)、ライザ等に設定される測定箇所の交流信号電流を測定する。
交流信号電圧印加装置110は、ライザと海中に設けた通電用の端子との間に交流信号電圧を印加する。
交流信号電流発信部111は、交流信号電流を出力する。
【0038】
海中側端子113は、海中に設置される端子である。海中側端子113としては、例えば、小径の裸鋼管または裸電線または外部電源方式の電気防食で用いられる不溶性の陽極などの導体を用いる。
ライザ側端子114は、ライザに導通して設置される端子である。例えば、ライザが磁性体の鋼管の場合、ライザ側端子114を磁石にて生成し、磁力にてライザ側端子114をライザの鋼面に密着させて設置する。あるいは、ライザ側端子114を磁化されていない導体にて生成し、ライザの鋼面とライザ側端子114とを接触させて紐等で巻きつけて設置するなど、他の方法で設置してもよい。
海中側端子113とライザ側端子114とは、それぞれ被覆電線にて交流信号電流発信部111に接続される。交流信号電流発信部111は、被覆電線を介して海中側端子113と導通し、また、被覆電線およびライザ側端子114を介してライザ210と導通し、海中側端子113とライザ210との間に交流信号電圧を印加する。
【0039】
交流信号電流設定部112は、交流信号電流の大きさと周波数のユーザ設定を受け付け、ユーザにより設定された交流信号電流の大きさおよび周波数の交流信号電流を出力するよう交流信号電流発信部111を制御する。その際、交流信号電流発信部111の周波数として、50ヘルツまたは60ヘルツの商用周波数とその高調波の周波数とを除いた周波数を用いることにより、商用周波数によって誘起されるノイズ(雑音)の影響を抑制できノイズによる誤測定のおそれを低減できる。
なお、交流信号電圧印加装置110が交流信号電流設定部112を具備せず、交流信号電流発信部111が予め定められた交流信号電流値および予め定められた周波数の交流信号電流を出力するようにしてもよい。これにより、装置構成を簡単にできる。一方、交流信号電圧印加装置110が交流信号電流設定部112を具備し、交流信号電流発信部111と交流信号電流検出部122とを同期させることにより、交流信号電流設定部112で設定した周波数成分の交流信号電流と全く同じ周波数の交流信号電流のみ交流信号電流検出部122で測定することができる。
このため、通電した交流信号電流がノイズの中に埋もれていても、通電した交流信号電流と全く同じ周波数の目的とする成分のみ抽出できるため、交流信号電流が例え微小でも極めて高精度な測定が可能となる。
【0040】
交流信号電流測定装置120は、測定対象を流れる交流信号電流の大きさおよび位相を測定する。
磁気センサ121は、交流信号電圧印加装置110から出力された交流信号電流により、ライザなどの測定対象の周囲に生じる磁界を検出する。磁気センサ121として、様々な方式の磁気センサを用いることができ、大きくは、閉磁路の磁界を検出する方式のものと閉磁路を必要としない方式のものとに分類される。
【0041】
閉磁路の磁界を検出する方式の磁気センサとしては、例えば、環状の鉄心に巻線を施した変流器(Current Trans-former;CT)を用いることができる。CTでの交流信号電流の測定法は、まず測定対象を取り囲むように環状の鉄心で閉磁路を構成する。そして、測定対象(一次側)に交流信号電流が流れることによって閉磁路鉄心に磁束が生じ、この磁束が閉磁路鉄心に施した巻線(二次側)を横切ることで、一次側電流すなわち、測定対象に流れる信号電流に比例し、二次側巻線数に反比例した二次電流が測定されるといった原理を利用する。
この他、磁気センサ121としてホール素子型クランプメータを用いて、導磁路中の空隙部にホール素子を配し、検出対象の磁界成分の大きさに比例してホール素子を通過する磁束を電圧に変換して測定するようにしてもよい。
一方、閉磁路を必要としない磁気センサとして、磁気抵抗効果を利用したMRセンサ、または、磁気インピーダンス効果を利用したMIセンサなどを用いることができる。特に、後述するライザと杭との導通箇所の判定では、閉磁路がいらない磁気センサを用いることにより、より容易に判定を行える。
【0042】
交流信号電流検出部122は、磁気センサ121が検出する磁界強度に基づいて、ライザ等の測定対象を流れる交流信号電圧印加装置110から出力される交流信号電流の大きさおよび位相を検出し表示する。その際、位相を検出するために、交流信号電流検出部122は、交流信号電流発信部111と同期を取る。このように交流信号電流発信部111と同期を取る交流信号電流検出部122としては、例えば、ロックインアンプを用いることができる。
一方、測定内容によっては、交流信号電流検出部122が、交流信号電流発信部111と同期を取らずに測定を行うことも可能である。交流信号電流発信部111と同期を取らない交流信号電流検出部122としては、例えば、デジタルマルチメータ等の電圧計を用いることができる。
【0043】
交流信号電流検出部122としてデジタルマルチメータを用いる場合、特定の周波数成分を抽出できないため測定対象の電流にノイズが含まれる場合には判定精度が低下することが考えられ、また、位相の検出は行えないが、装置構成を簡単にできる。
デジタルマルチメータは、ライザ210と海上部パイプ240との絶縁性の測定(絶縁継手の絶縁性の良否の測定)や、デッキ部320がライザ210を支持する箇所(以下では「デッキ貫通部」と称する)におけるデッキ内鉄筋とライザとの接触の有無の測定や、杭310とライザ210との導通有無の測定といった、位相情報を用いずに行える測定(杭310とライザ210との間の導通箇所の特定以外の測定)に用いることができる。
【0044】
交流信号電流の大きさと位相とを、より正確に測定するためには、交流信号電流検出部122として、測定対象の信号から特定の周波数成分を抽出する信号処理装置であるロックインアンプを用いることが考えられる。
ロックインアンプは、測定対象の交流信号である目的信号(本実施形態では、交流信号電流発信部111から出力される信号)とノイズとを含む測定値に対して、目的信号と同じ周波数で目的信号に同期している参照信号を掛け合わせることによって、参照信号に対する同期成分である目的信号を直流成分に変換し、参照信号に対する非同期成分であるノイズを交流成分に変換する。そして、ロックインアンプは、直流成分および交流成分を含む変換後の信号から、低域フィルタ(ローパスフィルタ)を用いて交流成分を除去することによって、直流成分である目的信号を抽出する。より具体的には、ロックインアンプでは、90°の位相差を有する2つの参照信号を、それぞれ測定データと掛け算することにより、交流電流に比例する2つの直流成分を求めている。そして、上記2つの直流成分を演算処理することによって、交流電流の大きさ(振幅)および位相を算出して出力している。
【0045】
交流信号電流検出部122として、このロックインアンプを用いて、交流信号電流発信部111と同期を取ることにより、磁気センサ121が検出した磁界のうち、交流信号電流発信部111が出力する電流と同一の周波数成分のみを抽出できる。これにより、測定対象の交流信号電流がノイズに埋もれている場合でもノイズを除去し、より正確に判定を行えることが期待できる。また、ロックインアンプを用いることにより、当然のことながら位相の測定も行える。
なお、交流信号電流検出部122として上述のデジタルマルチメータを用いる場合、測定値がデジタルマルチメータに入力される前の段階にフィルタを設け、ノイズの周波数帯域を制限することによってノイズを除去し、測定精度を高めることができる。
但し、このデジタルマルチメータの前にフィルタを設ける方法では、目的信号の周波数に近い周波数のノイズを除去することは困難である。一方、交流信号電流検出部122としてロックインアンプを用いる場合は、測定信号と参照信号との掛け算により、交流電流の周波数帯域を変えてノイズ成分を分離することができるため、フィルタでは取り除けない目的信号に近い周波数のノイズも容易に除去することが可能である。
【0046】
ここで、交流信号電流検出部122(ロックインアンプ)と、交流信号電流発信部111との同期は、例えば、交流信号電流検出部122と、交流信号電流発信部111とを、絶縁アンプを介してケーブルで接続し、交流信号電力発信部111の出力信号を、参照信号として交流信号電流検出部122に入力することによって行う。
なお、交流信号電流検出部122と交流信号電流発信部111との同期を取る方法は、上述した方法に限らない。例えば、交流信号電流検出部122と、交流信号電流発信部111とが、無線通信装置を備えるようにしてもよい。この場合、交流信号電流発信部111は、出力信号を無線送信し、交流信号電流検出部122は、交流信号電流発信部111から無線送信される出力信号を参照信号として用いて同期を取る。これにより、交流信号電流検出部122と交流信号電流発信部111と間をケーブルで接続する必要なく同期を取ることができる。
あるいは、交流信号電流検出部122が、交流信号電流発信部111から独立した発信器を具備するようにしてもよい。この場合、交流信号電流検出部122の具備する発信機は、交流信号電流発信部111の出力信号の周波数および位相を近似する参照信号を出力し、交流信号電流検出部122は、この参照信号を用いて(擬似的に)同期をとる。交流信号電流検出部122の具備する発信機が、交流信号電流発信部111の出力信号の周波数および位相を高精度で近似する参照信号を出力することにより、交流信号電流検出部122と交流信号電流発信部111と間をケーブルで接続する必要なく同期を取ることができる。
【0047】
交流信号電流検出部122としてロックインアンプを用いた場合に、交流信号電流発信部111との同期を取るためには、例えば、交流信号電流発信部111の出力を、絶縁アンプを介してロックインアンプに参照信号として入力する。参照信号は、例えばBNCケーブルを用いて送信する。あるいは、交流信号電流発信部111とロックインアンプとに無線通信装置を取り付けて無線にて同期信号を伝送するなど、他の方法で同期を取るようにしてもよい。あるいは、交流信号電流発信部111の周波数に近似する発振器を設け、この発振器から模擬的に同期信号を取得するようにしてもよい。
【0048】
次に、図2を参照して、絶縁性判定の対象となるライザおよび海洋構造物の構成について説明する。
図2は、ライザおよび海洋構造物の構成を示す概略図である。
同図において、海洋構造物(構造物)300は、杭310−1および310−2と、デッキ部320とを具備する。また、海洋構造物は、デッキ部320を貫通するライザ210を支持する。ライザ210とデッキ部320との間には絶縁物220が挿入されている。また、ライザ210は、デッキ部320に支持される箇所、すなわち、絶縁物220と接する箇所であるデッキ貫通部よりも上部にある上端にて絶縁継手230に接続され、絶縁継手230は海上部パイプ(導体)240に接続されている。
また、同図の領域Aは海上の領域(大気中)を示し、同図の領域Bは海中の領域を示し、同図の領域Cは海底下の領域を示している。この、海底下の領域Cは、海底土中、あるいは、生物の死骸等が堆積した領域である。以下では、海中の領域Bと海底下の領域Cとを合わせて、「海面下」と称する。
【0049】
海洋構造物300は、港湾の沖合で原油またはガスなどを受け入れるシーバースや、海底から原油またはガスなどを掘削する固定式プラットフォームなど、海洋に設置される構造物である。
杭310−1および310−2は、それぞれ海面下と海上とにわたって設置される。具体的には、杭310−1および310−2は、下端を海底に打ち込まれ、海上の上端にてデッキ部320を支持する。以下では、海洋構造物300の杭を纏めて「杭310」と称する。杭310は、海面下では、無塗装鋼材にて生成されており、一般的には犠牲陽極にて電気防食されている。
なお、海洋構造物の具備する杭の数は、同図に示す2本に限らず、1本以上であればよい。
デッキ部320は、海上に設置され、人員や機材等を収容するための平面を有する。また、デッキ部320は、当該デッキ部320を貫通するライザ210を支持する。デッキ部320は、鉄筋を含み、通常、杭310の各々と導通している。
【0050】
ライザ210は、海底パイプラインの海上への立ち上げ部分であるライザ部分を構成する金属管である。ライザ210は防食被覆を有し、この防食被覆を有する部分では周辺の金属物と電気的に絶縁されている。また、ライザ210は、ライザ若しくは海底パイプラインに設置した犠牲陽極によって電気防食されている。
絶縁物220は、耐圧ゴムなどの高強度な絶縁材料で生成されており、ライザ210の被覆とともにライザ210とデッキ部320とを電気的に絶縁する。
【0051】
海上部パイプ240は、海上に設置され、原油またはガスなどを受け取る。そして、原油またはガスは、ライザ210および海底パイプラインによって陸上に移送される。
絶縁継手230は、ライザ210と海上部パイプ240との間に設置され、ライザ210と海上部パイプ240とを管路上で電気的に絶縁する。絶縁継手230は、海上部パイプ240からライザ210への原油またはガスなどを漏らさず、かつ、ライザ210と海上部パイプ240とを電気的に絶縁するものであれば任意の継手でよく、例えば、規格フランジに絶縁ガスケット、絶縁スリーブ、絶縁ワッシャを組み込んだフランジ型絶縁継手であってもよいし、締め付けボルトを一切使用せずに一体構造としたモノブロック型絶縁継手であってもよい。
【0052】
次に図3〜図6を参照して、絶縁性測定システム100の設置箇所について説明する。
図3は、海洋投棄物など海面下の導体によるライザ210と杭310−1との導通の有無を判定する場合の、絶縁性測定システム100の設置例を示す図である。同図において、図1および図2の各部と同様の部分には同一の符号(111〜114、121、122、210、220、230、240、310−1、310−2、320)を付し、説明を省略する。
同図では、ライザ210と杭310−1とは、いずれも、鋼製の海洋投棄物400に接しており、海洋投棄物400を介して導通している。なお、同図では、海洋投棄物400が海底下(図2の領域C)にあるが、海洋投棄物400が海中(図2の領域B)にある場合も電流の流れは以下の説明と同様である。
【0053】
ここで、海中側端子113を吊り下げて海中の適当な水深に設置し、ライザ側端子114をライザ210のデッキ貫通部と絶縁継手230との間のいずれかの箇所に接触させて設置する。その際、ライザ210は防食被覆で覆われて絶縁されているので、防食被覆の一部を剥がす等して、ライザ210とライザ側端子114とが導通するように接触させる。なお、予め建設時に、専用のライザ側端子をライザに溶接しておいてもよい。これにより、ライザ被覆をわざわざ剥がす必要はなくなり、導通作業が容易になる。
そして、交流信号電流発信部111によって、海中側端子113と、ライザ側端子114を介してライザ210との間に交流信号電圧を印加すると、海中に交流信号電流が流れる。なお、以下では、図3に電流iの矢印にて示すように、交流信号電流発信部111から海中側端子113への向きに電流iが流れるタイミングを基準に説明する。電流iが逆向き、すなわち海中側端子113から交流信号電流発信部111への向きに流れるタイミングでは、同図に示す交流信号電流(以下、単に電流と記す)i〜iも全て逆向きとなる。
【0054】
海中側端子113から海中に流れる電流の一部は、ライザ210の防食被覆損傷部(鋼露出面)あるいは犠牲陽極を通じてライザ210に流入する。また、海中側端子113から海中に流れる電流は、パイプラインの海底部分の防食被覆損傷部(鋼露出面)あるいは犠牲陽極を通じて当該海底部分にも流入し、当該海底部分を経由してライザ210に流入する。海中あるいはパイプラインの海底部分からライザ210に流入した電流は、ライザ210内をライザ側端子114に向かって流れる(電流i)。
また、海中側端子113から海中に流れる電流は、無塗装鋼材の杭310の各々にも流入する。そして、海洋投棄物400に接する杭310−1において、海洋投棄物400より下部にて杭310−1に流入した電流は、海洋投棄物400に向かって流れる(電流i)。一方、杭310−2のように、海洋投棄物400に接しない杭に流入した電流は、電流iのようにデッキ部320に向かって流れる。
【0055】
海洋投棄物400に接しない杭からデッキ部320の鉄筋に流入した電流は、海洋投棄物400に接する杭310−1に向かって流れる(電流i)。そして、デッキ部320の鉄筋内を流れた電流iは、海洋投棄物400に接する杭310−1に流入し、海洋投棄物400に向かって流れる(電流i)。海面下で海洋投棄物400より下部にて杭310−1に流入した電流iと、デッキ部320から杭310−1に流入した電流iとは、海洋投棄物400内に流入した電流と共に、海洋投棄物400内をライザ210に向かって流れる(電流i)。海洋投棄物400内を流れた電流iは、ライザ210に流入すると、海中あるいはパイプラインの海底部分からライザ210に流入した電流iと共に、ライザ側端子114に向かって流れ(電流i)、ライザ側端子114を経由して交流信号電流発信部111に戻る。
【0056】
海洋投棄物400と導通している杭310−1が1本以上存在すると、上述のように海洋投棄物400と導通していない杭310−2にも電流が流れるようになる。
この場合の電流は、海洋投棄物400と導通していない複数の杭310−2に流入した電流の殆どすべてが、デッキ部320内の鉄筋を介して海洋投棄物400と導通している杭310−1に流入し、その杭の海面下で海洋投棄物400と導通している箇所に向かって電流が流れる。このため、各杭に流れる電流の大きさを比較すると、海洋投棄物400と導通している杭310−1に流れる電流が他の杭(海洋投棄物400と導通していない杭310−2)に流れる電流よりも非常に大きな値を示すことになる。
【0057】
また、海洋投棄物400を介してのライザ210と杭310の導通がない場合でも、デッキ部320がライザ210を支持する箇所(デッキ貫通部)において、ライザ210がデッキ部320内の鉄筋と導通している場合、若しくは、デッキ部320上でライザ210と海上部パイプ240との間に挿入される絶縁継手230の絶縁性能が悪い場合には、海洋投棄物400を介してライザ210と杭310−1が導通している場合と同様に、複数の杭310に電流が流れる。この場合の電流の向きは全て海面下からデッキに向かって流れ、デッキ貫通部の絶縁性が悪ければ、杭310に流入した電流はデッキ部320中の鉄筋を流れ、デッキ貫通部からライザ210に流入するし、また、絶縁継手230の性能が悪ければデッキ部320内の鉄筋につながる架台などの導体を介して海上部パイプ240から絶縁継手230を通過する向きに電流が流れる。
【0058】
このときの各杭310の電流の大きさは、ほぼ同じような電流値を示し、海洋投棄物400と導通している杭310−1がある場合と異なる。
なお、ライザ210が鋼製の海洋投棄物400と導通しておらず、且つ、デッキ貫通部において、ライザ210がデッキ部320内の鉄筋と導通しておらず、且つ、デッキ部320上でライザ210と海上部パイプ240との間に挿入される絶縁継手230の絶縁性能が良好な場合においては、海中側端子113から通電された電流は、海底パイプラインおよびライザ210の防食被覆損傷部(鋼露出面)や犠牲陽極のみに流入し、ライザ側端子114に向かって流れる。すなわち、ライザ210が周辺の金属物と導通していない場合には、ライザのみに電流が流れる。
【0059】
これらの現象に着目し、ライザ210に海中側端子113から電流を通電した場合において、ライザ210周辺で、デッキ部320を支持する複数の杭310のデッキ下の海上部の所定位置に、磁気センサ121を設置し電流の大きさを測定した結果、何れの杭310にも電流が検出されなかった若しくは極めて小さい場合には、ライザ210が周辺の金属体と導通していないと判定できる。
すなわち、ライザ210が海洋投棄物400を介して周辺の杭310と導通していないこと、および、ライザ210のデッキ貫通部でライザ210がデッキ部320内の鉄筋と導通していないこと、および、絶縁継手230の絶縁性が良好で、ライザ210が海上部パイプ240と導通していないことが確認できる。
【0060】
また、複数の杭310で電流が測定され、各杭で測定された電流の大きさに大きな差異がなければ、測定された電流は、ライザ210が海洋投棄物400を介して周辺の杭310と導通しているためではなく、ライザ210のデッキ貫通部でライザ210がデッキ部320内の鉄筋と導通しているか、若しくは、ライザ210と海上部パイプ240と導通しているか、あるいは、両方とも導通している状況によるものと判断することができる。
一方、複数の杭310で電流が測定され、各杭で測定された電流の大きさに大きな差異があれば、杭310のいずれかとライザ210とが、海洋投棄物400を介して導通していると判断することができる。
この場合、1本または小数本の杭で測定された電流が、他の多数本の杭で測定された電流よりも大きい場合、他の杭と比較して大きな電流が流れた杭が海洋投棄物400を介してライザ210と導通している状況にあり、ライザ210のデッキ貫通部でライザ210とデッキ部320内の鉄筋との導通はなく、また、絶縁継手230の絶縁性が良好で、ライザ210と海上部パイプ240との導通はないものと判断することができる。すなわち、図3に示すように、ライザと直接導通していない杭310−2のいずれに流入する電流も、ライザ210と導通する杭310−1および海洋投棄物400を介してライザ210に流入する。従って、海中から杭310−2に流入した電流が集約されて杭310−1を流れる電流iとなるため、杭310−1に大きな電流が流れることになる。
【0061】
これに対し、1本または小数本の杭で測定された電流が、他の多数本の杭で測定された電流よりも小さい場合、他の杭と比較して小さな電流が流れた杭が海洋投棄物400を介してライザ210と導通している状況にあり、加えて、ライザ210のデッキ貫通部でのライザ210とデッキ部320内の鉄筋との導通と、絶縁継手230の絶縁不良によるライザ210と海上部パイプ240との導通との、いずれか、あるいは両方がある状況と判断することができる。例えば、図3において、絶縁物220が絶縁不良となり、ライザ210とデッキ部320内の鉄筋とが導通した場合、海中から杭310−2に流入した電流は、杭310−1と海洋投棄物400とを介してライザ210に流入する電流経路より、より電流経路の抵抗値が小さいと思われるデッキ部320内の鉄筋からライザ210に流入する。一方、海中から杭310−1に流入した電流は、その一部が、海洋投棄物400を介してライザ210に流入する。そして、残った電流の一部が杭310−1からデッキに向かって流れて、デッキ部320内の鉄筋を介してライザ210に流入する。ここで、杭310−1において、海洋投棄物400側に流れる電流とデッキ部320内の鉄筋に向かって流れる電流との割合は、双方の電流経路の回路抵抗の割合に応じて決まる。いずれにしても、杭310−1において測定される電流(電流iと逆向きの電流)は、海洋投棄物400にある程度、電流が分流するため、杭310−2において測定される電流(電流i)よりも小さくなる。
【0062】
以上のように、交流信号電流発信部111が、海中側端子113とライザ210との間に交流信号電圧を印加し、交流信号電流検出部122が、測定対象の杭を流れる電流の大きさを測定することによって、ライザ210が杭をはじめとする周辺の構造物や導体と導通しているか否かを判定することができる。
なお、図3では、海洋投棄物400が海底の領域にある場合が示されているが、海洋投棄物400が海中の領域にある場合にも同様に判定を行うことができる。
【0063】
さらに、後述する絶縁継手230の絶縁性の良否判定や、デッキ貫通部におけるライザ210とデッキ部320との絶縁性の判定を組み合わせることで、ライザ210と他の金属体と導通している原因が絶縁継手230の不良なのか、デッキ貫通部におけるデッキ内鉄筋との導通なのか、海洋投棄物を介した導通なのかを、より確実に判断することができる。
また、ライザ210と杭310との導通の有無を判断する前段階に、デッキ上でライザ210と海上部パイプ240の間に設置されている絶縁継手230の絶縁性の良否、および、ライザ210のデッキ貫通部でのライザ210の被覆とその外周に設置した絶縁物220の絶縁性の良否の判定を後述する方法で行い、絶縁継手230、デッキ貫通部の絶縁物220とも絶縁性が良好であると判断できる場合には、ライザ210と杭310との導通有無の確認は、容易に簡略化できる。
【0064】
すなわち、前述したように、絶縁継手230、デッキ貫通部の絶縁物220とも絶縁性が良好で、且つ、ライザ210と杭310とに導通がなければ、交流信号電圧をライザ210と海中側端子113に印加すると、交流信号電流は海中側端子113から海中や海底土中を介してライザのみに流れるのみで、杭310には一切流れない。
一方、絶縁継手230、デッキ貫通部の絶縁物220とも絶縁性が良好だが、ライザ210と杭310とが、海洋投棄物400との接続などによって導通している場合には、杭310のデッキ下の海上部で流れる電流の方向は、海洋投棄物400と接触している杭310−1と海洋投棄物400と接触していない杭310−2とでは逆方向を示すが、杭には電流が流れる。
【0065】
したがって、絶縁継手230とデッキ貫通部の絶縁物220の絶縁性の良否判定を実施し、絶縁性が良好な結果であれば、次に、ライザ周辺の杭310のうち、最低1本について交流信号電流の大きさを測定し、その大きさがゼロか若しくは予め設定した閾値以下のときに、ライザ210と杭310との導通はないと判断できる。
一方、1本以上の杭310で交流信号電流の大きさを測定し、その大きさが予め設定した閾値以上であれば、ライザ210と杭310とは導通があると判断できる。
杭310のうち、ライザ210と接触している杭310−1を検知するには、前述した通り、交流信号電流の大きさに着目して、複数ある杭310のうち交流信号電流の大きさが突出して大きい杭を探せば良い。
【0066】
さらに、海洋投棄物400に接する杭310−1では、海洋投棄物400に接触する箇所の上下で電流の向き(位相)が反転することを利用して、杭310−1と海洋投棄物400との接触箇所を判定できる。
図4は、ライザ210と杭310−1との接触箇所を判定する場合の、絶縁性測定システム100の設置例を示す図である。同図において、図3の各部と同様の部分には同一の符号(111〜114、121、122、210、220、230、240、310−1、310−2、320、400、i〜i)を付し、説明を省略する。
【0067】
図4の判定では、磁気センサ昇降装置510を用いて、測定対象の杭310−1の近傍に杭310−1に沿って磁気センサ121を吊り下げ、磁気センサ121の位置(水深)を変えながら杭310−1を流れる電流の位相を測定する。杭310−1を流れる電流は海洋投棄物400に向かって流れるため、海洋投棄物400に接する箇所の上下で、杭310−1を流れる電流の位相が反転する。そこで、磁気センサ121が検出する磁界に基づいて、交流信号電流検出部122が、杭310−1を流れる電流の位相の反転する水深を、杭310−1が海洋投棄物400に接している箇所の水深として判定する。
【0068】
より詳細には、海洋投棄物400に接する杭310−1のデッキ部320下の海上部に磁気センサ121を設置して、交流信号電流検出部122で、電流(i)の大きさと位相を測定したのち、交流信号電流検出部122に内蔵している、若しくは、外付けした位相調整器によって、測定された電流の位相を、例えば正側(プラス)の90°に設定する。その後、磁気センサ121を杭310−1に沿って海上側から海底に向かって移動させ、磁気センサが、杭310−1が海洋投棄物400に接している箇所を通過すると、海洋投棄物400に接している箇所を境として、測定される電流(i)の位相が正側(プラス)の90°から負側(マイナス)の90°に反転する。
上記では、杭310−1のデッキ部320下の海上部で測定される電流(i)の位相をプラス側に設定したがマイナス側でも、また、位相調整器の調整範囲の中であれば、任意の位相の値に設定しても良い。
【0069】
磁気センサ昇降装置510が磁気センサ121を吊り下げる際、磁気センサ121として閉磁路を必要としない比較的軽量の磁気センサを用いることにより、磁気センサ121の位置を変えることが容易になる。この際、磁気センサ121が海流に流されるのを防ぐため、樹脂管など非磁性体の材質のパイプ520を測定対象の杭310−1に沿って打ち込み、このパイプ520内に磁気センサ121を吊り下げる。これにより、磁気センサ121を確実に杭310−1に沿わせることができるので、磁気センサ121や、磁気センサ121を吊り下げるケーブルが海流に流されるのを防ぎ、位相の反転する水深をより正確に判定できる。また、パイプ520を海底の領域まで打ち込んで、磁気センサ121を海底の領域に吊り下げられるようにすることにより、海洋投棄物400が海底の領域にある場合(例えば、海洋投棄物400が生物の死骸等に埋もれている場合)にも、杭310−1が海洋投棄物400に接している箇所を判定できる。
【0070】
以上のように、交流信号電流発信部111が、海中側端子113とライザ210との間に交流信号電圧を印加し、交流信号電流検出部122が、測定対象の杭の2箇所以上において、当該箇所を流れる電流の位相を検出することにより、第1の測定箇所で検出された位相と第2の測定箇所で検出された位相とが逆位相である場合に、当該第2の測定箇所の近傍(第1の測定箇所と第2の測定箇所との間)に、海洋投棄物400との接触などによりライザ210と導通している箇所があると判定できる。
なお、図4では、海洋投棄物400が海底の領域にある場合が示されているが、海洋投棄物400が海中の領域にある場合にも同様に判定を行うことができる。
【0071】
なお、海中の領域については、潜水士が磁気センサ121を持って移動することにより磁気センサ121を昇降させても、杭310−1とライザ210との導通箇所の判定を行うことができる。この場合、パイプ520を用意する必要が無い。
上述した杭310−1とライザ210との導通箇所の判定では、杭310−1を流れる電流の位相を検出できればよいので、磁気センサ121の昇降の際に磁気センサ121と杭310−1との距離が変化し磁気センサ121の検出する磁束量が変化した場合でも、正確に判定を行えることが期待できる。
なお、パイプ520を用いて判定を行う場合は、図3で説明した判定において海洋投棄物等と接している杭を特定した後にパイプ520を設置すればよい。従って、杭毎に予めパイプ520を設置しておく必要は無い。
【0072】
また、絶縁性測定システム100を用いて、絶縁物220の絶縁性の良否、すなわち、デッキ貫通部におけるライザ210とデッキ部320内鉄筋との導通の有無の判定も行える。
図5は、絶縁物220の絶縁良否を判定する場合の、絶縁性測定システム100の設置例を示す図である。この図では、絶縁継手230の絶縁性能が良好で、且つ、杭310−1とライザ210は、海洋投棄物400に接触していないことを前提としている。
同図において、図3の各部と同様の部分には同一の符号(111〜114、121、122、210、220、230、240、310−1、310−2、320、i〜i、i)を付し、説明を省略する。なお、同図の例では、上述したように、杭310−1は海洋投棄物に接しておらず、杭310−2と同様に、海中から杭310−1に流入する電流はデッキ部320に流れるので、この電流も杭310−2の電流と同様にiで示している。
【0073】
絶縁物220の絶縁性が良好な場合、デッキ貫通部においてデッキ部320内鉄筋からライザ210へは電流が流れず、i11=0である。ここで、電流を示す符号と同一の符号にて、当該電流の大きさ(交流信号電流値)を示している(以下同様)。
一方、絶縁物220の絶縁性が不良な場合、デッキ部320からライザ210に電流が流入する(i11)。ここで、電流i11の大きさと、デッキ貫通部より下(ライザ側端子114と反対側)でライザ210を流れる電流iの大きさと、デッキ貫通部より上(ライザ側端子114の側)でライザ210を流れる電流i12の大きさとの関係は、i+i11=i12なので、i<i12となる。そこで、交流信号電流測定装置120を用いて、電流iの大きさと、電流i12の大きさとを測定し、両者の差が小さければ、具体的には、予め定められた閾値未満であれば絶縁物220の絶縁性を良好と判定し、閾値以上であれば絶縁物220の絶縁性を不良と判定する。
【0074】
この、電流の差が閾値未満か否かの判定は、交流信号電流測定装置120の電流測定値に基づいてユーザが行ってもよいし、交流信号電流測定装置120の交流信号電流検出部122が行うようにしてもよい。また、判定に用いる閾値の大きさは、例えば、交流信号電流発信部111が出力する電流iの大きさの100分の1とするなど、交流信号電流発信部111が出力する電流iの大きさに基づいて定めることができる。
【0075】
なお、図5に示すように、交流信号電流測定装置120が複数の磁気センサ121を具備することにより、電流iの大きさと、電流i12の大きさとを同時に測定できる。あるいは、電流iの大きさと、電流i12の大きさとを、同一の磁気センサ121を用いて個別に測定するようにしてもよい。この場合、交流信号電流測定装置120が具備する磁気センサ121は1つで足りる。
【0076】
なお、絶縁継手230の絶縁性が良好な場合、デッキ貫通部より上(ライザ側端子114の側)でライザ210を流れる電流i12の大きさと、交流信号電流発信部111から出力された電流iの大きさとは等しい、すなわち、i12=iである。そこで、次に説明する絶縁継手の絶縁性能の良否判定にて、絶縁継手の絶縁性が良好と判定した後、電流iの大きさと、電流iの大きさとの差が閾値以下か否かを判定するようにしても良い。この際、交流信号電流発信部にて出力電流を測定でき、且つ、電流値の表示機能がある場合には、電流iの大きさをあらためて測定する必要はない。一方、交流信号電流発信部111に電流測定の機能がない場合には、シャント抵抗を挿入し、シャントでの電圧降下を交流信号電流発信部と同期をとったロックインアンプで測定し、電圧降下の測定値をシャント抵抗で除して電流iの大きさを算出すればよい。なお、ロックインアンプは、交流信号電流検出部122が多チャンネル入力できる装置であれば、電流iの測定用に単独に準備する必要はなく、交流信号電流検出部122で測定しても良い。
【0077】
なお、図5では、杭310−1とライザ210とが導通していない場合の例を示しているが、杭310−1とライザ210とが導通している場合でも、絶縁物220に絶縁不良が生じるとデッキ部320からライザ210に電流i11が流入する。したがって、杭310とライザ210との導通の有無にかかわらず、上述した判定にて絶縁物220の絶縁良否を判定できる。
海中から杭310−1に流入した電流は、その一部が、海洋投棄物400を介してライザ210に流入する。そして、残った電流の一部が杭310−1からデッキに向かって流れて、デッキ部320内の鉄筋を介してライザ210に流入する。ここで、杭310−1において、海洋投棄物400側に流れる電流とデッキ部320内の鉄筋に向かって流れる電流との割合は、双方の電流経路の回路抵抗の割合に応じて決まる。
【0078】
杭310−1に流入した電流の経路を詳しくみると、一般に、海中から杭310−1に流入した電流は、その一部が海洋投棄物400を介してライザ210に流入する。そして、残った電流の一部が杭310−1からデッキに向かって流れて、デッキ部320内の鉄筋を介してライザ210に流入する。但し、杭310−1において、海洋投棄物400側に流れる電流とデッキ部320内の鉄筋に向かって流れる電流の割合は、双方の電流経路の回路抵抗の割合に応じて決まる。杭310−1とライザ210が接触している図4で説明すると、杭310−1に流入した電流(i)のうち一部が海洋投棄物400へ流入し、残った電流の一部が海上のデッキ部320に向かって流れるので、海上のデッキ部320側から海中に向かって流れる電流(i)は生じない(逆向きの電流が生じる)ことになる。
また、杭310−1とライザ210とが導通し、且つ、絶縁継手230が絶縁不良でも、絶縁物220に絶縁不良が生じるとデッキ部320からライザ210に電流i11が流入する。したがって、杭310とライザ210との導通の有無にかかわらず、上述した判定にて絶縁物220の絶縁良否を判定できる。
【0079】
以上のように、交流信号電流発信部111が、海中側端子113とライザ210との間に交流信号電圧を印加し、交流信号電流検出部122が、ライザ210の、デッキ貫通部より海面側かつ海上部分を流れる電流iの大きさを測定し、ライザ210の、デッキ貫通部からライザ側端子114の接する箇所までの間の区間を流れる電流i12の電流値を測定することにより、測定された電流値に基づいて、絶縁物220の絶縁性の良否、すなわち、デッキ貫通部でのライザ210とデッキ部320との絶縁性を判定できる。
あるいは、絶縁継手230の絶縁性が良好である場合は、交流信号電流発信部111が、海中側端子113とライザ210との間に交流信号電圧を印加し、交流信号電流検出部122が、ライザ210の、デッキ貫通部より海側を流れる電流iの電流値を測定することにより、測定された電流値と交流信号電流発信部111の出力電流値(i)を比較することによって、絶縁物220の絶縁性の良否、すなわち、デッキ貫通部でのライザ210とデッキ部320との絶縁性を判定できる。
すなわち、ライザ210の、デッキ貫通部より海側を流れる電流と交流信号電流発信部111の出力電流の大きさに差異がなければ、デッキ貫通部でのライザ210とデッキ部320との絶縁性は良好であると判断できる。
また、間接的ではあるが、絶縁継手230の絶縁性能も良好であると判断できる。
【0080】
また、絶縁性測定システム100を用いて、絶縁継手230の絶縁性の良否、すなわち、ライザ210と海上部パイプ240との導通の有無の判定も行える。
図6は、絶縁継手230の絶縁良否を判定する場合の、絶縁性測定システム100の設置例を示す図である。同図において、図3の各部と同様の部分には同一の符号(111〜114、121、122、210、220、230、240、310−1、310−2、320、i、i、i、i12)を付し、説明を省略する。
絶縁継手230の絶縁性が良好な場合、海上部パイプ240からライザ210へは電流が流れず、i21=0である。
一方、絶縁継手230の絶縁性が不良な場合、海上部パイプ240からライザ210に電流が流入する(i21)。電流i21は、海中側端子113から海中に流れた電流の一部が、杭310およびデッキ部320や、海上部パイプ240がデッキ部320と直接あるいは間接に接する箇所を介して、海上部パイプ240内に流入したものである。
【0081】
ここで、電流i21の大きさと、デッキ貫通部より上(ライザ側端子114の側)でライザ210を流れる電流i12の大きさと、交流信号電流発信部111の出力電流(ライザ側端子114から交流信号電流発信部111に流れる電流)iの大きさとの関係は、i21+i12=iとなる。そこで、交流信号電流測定装置120を用いて、電流i21の大きさと、電流i12の大きさとを測定し、電流i12に対して電流i21が非常に小さければ、具体的には、電流i21が予め定められた閾値未満であれば絶縁継手の絶縁性が良好と判定し、閾値以上であれば絶縁性が不良と判定する。この、電流i21が閾値未満か否かの判定は、交流信号電流測定装置120の電流測定値に基づいてユーザが行ってもよいし、交流信号電流測定装置120の交流信号電流検出部122が行うようにしてもよい。また、判定に用いる閾値の大きさは、例えば、交流信号電流発信部111が出力する電流iの大きさの100分の1など、交流信号電流発信部111が出力する電流iの大きさに基づいて定めることができる。また、電流i21を測定しなくとも電流i12と電流iの大きさがほぼ等しい場合は、絶縁継手230の絶縁性は良好であると判定できる。電流iについては、交流信号電流発信部111にて出力電流を測定でき、且つ、電流値の表示機能がある場合には、電流iの大きさをあらためて測定する必要はない。一方、交流信号電流発信部111に電流測定の機能がない場合には、シャント抵抗を挿入し、シャントでの電圧降下を交流信号電流発信部と同期をとったロックインアンプで測定し、電圧降下の測定値をシャント抵抗で除して電流を算出すればよい。ここで、ロックインアンプは、交流信号電流検出部122が多チャンネル入力できる装置であれば、電流iの測定用に単独に準備する必要はなく、交流信号電流検出部122で測定しても良い。
【0082】
なお、絶縁物220の絶縁性が不良の場合でも、デッキ貫通部より上でライザ210を流れる電流i12は、海面下からライザ210に流入する電流の合計(i)と、デッキ部320からライザ210に流入する電流(図5のi11)とが合わさった後の電流なので、電流i12の大きさと、交流信号電流発信部111の電流iの大きさとの関係は、絶縁物220の絶縁性が良好の場合と同様である。したがって、絶縁物220の絶縁性の良否にかかわらず、上述した判定にて絶縁継手230の絶縁良否を判定できる。同様に、杭310とライザ210との導通の有無にかかわらず、上述した判定にて絶縁継手230の絶縁良否を判定できる。
【0083】
以上のように、交流信号電流発信部111が、海中側端子113とライザ210との間に交流信号電圧を印加し、交流信号電流検出部122が、ライザ210の、交流信号電流発信部111により電流を出力される箇所(すなわち、ライザ側端子114の接する箇所)と絶縁継手230との間を流れる電流i21の電流値、または、ライザ210の、交流信号電流発信部111により電流を出力される箇所から、ライザ210が海洋構造物のデッキ部320に支持される箇所(すなわちデッキ貫通部)までの区間を流れる電流i12の電流値、または、交流信号電流発信部111の出力電流iのいずれかを測定することにより、その測定結果に基づいて、絶縁継手230の絶縁性の良否、すなわち、ライザ210と海上部パイプ240との絶縁性を判定することができる。なお、上述したように、交流信号電流発信部にて出力電流を測定でき、且つ、電流値の表示機能がある場合には、電流iの大きさをあらためて測定する必要はない。
【0084】
なお、以上で説明した測定方法の原理は、海中側端子113とライザ210との間に交流信号電圧を印加する場合に限らず、海中側端子113とライザ210との間に直流信号電圧を印加する場合にも当てはまる。交流信号電流を用いる場合は、上述したように、通電した交流信号電流がノイズの中に埋もれていても、通電した交流信号電流と同じ周波数成分のみ抽出できるため、微小な電流で高精度な測定を行うことができる。
直流信号電流を用いる場合、位相情報を得ることはできないが、杭310とライザ210との導通有無の測定や、ライザ210と海上部パイプ240との絶縁性の測定など、位相情報を用いずに行える測定(杭310とライザ210との間の導通箇所の特定以外の測定)に、直流信号電流を用いることができる。測定用の直流信号電流として、例えば脈流(電流の向きは一定だが、大きさが変化する電流)を用いてもよい。
なお、直流信号電流を用いて測定を行う場合、電源装置(交流信号電流発信部111に相当する)の+(プラス)極を海中側端子に接続し、−(マイナス)極をライザ210に接続することにより、杭やライザの被覆損傷部や犠牲陽極などの腐食を防止する。
【0085】
上述したように、絶縁物220の絶縁良否や杭310とライザ210との導通の有無にかかわらず、絶縁継手230の絶縁良否の判定を行うことができ、また、絶縁継手230の絶縁良否や杭310とライザ210との導通の有無にかかわらず、絶縁物220の絶縁良否の判定を行うことができる。そこで、まず、絶縁継手230の絶縁性の良否を判定し、次に、絶縁物220の絶縁性の良否を判定し、その後、杭310とライザ210との導通の有無を判定し、導通有りと判定した場合にはさらに杭310とライザ210との導通箇所(杭310が海洋投棄物400と接する箇所)を判定することにより、判定ごとに判定結果を確定させることができる。
そして、絶縁性測定システムが、この判定手順を表示するようにできる。
以下、図7〜図9を参照して、上記の判定手順を表示する絶縁性測定システムについて説明する。
【0086】
図7は、判定手順を表示する絶縁性測定システムの機能ブロック構成を示す構成図である。同図において、絶縁性測定システム600は、交流信号電圧印加装置110と、交流信号電流測定装置620とを具備する。交流信号電圧印加装置110は、交流信号電流発信部111と、交流信号電流設定部112と、海中側端子113と、ライザ側端子114とを具備する。交流信号電流測定装置620は、磁気センサ121と、交流信号電流検出部122と、制御部623と、記憶部624と、表示部625と、入力部626と、センサ昇降部627とを具備する。同図において、図1の各部と同様の部分には同一の符号(110〜114、121、122)を付し、説明を省略する。
【0087】
交流信号電流測定装置620は、交流信号電流測定装置120と同様、測定対象を流れる電流の大きさおよび位相を測定する。加えて、交流信号電流測定装置620は、測定結果に基づいて絶縁性の判定を行う。
記憶部624は、絶縁性測定システム600の行う判定の判定手順や、制御部623が表示部625に表示させるメッセージや、制御部623が判定を行う際の閾値を記憶する。また、記憶部624は、制御部623が判定処理を行う際のワーキングメモリとして機能する。
入力部626は、判定開始タイミングを示す押ボタン(以下、「測定開始ボタン」と称する)を有し、測定開始ボタン押下によるユーザの操作入力を受け付ける。
【0088】
制御部623は、記憶部624から判定手順を読み出して、ユーザの行うべき操作を示すメッセージを表示するように、表示部625を制御する。また、制御部623は、入力部626が受け付ける操作入力に応じて、交流信号電流検出部122の検出結果の電流の大きさや位相を示す情報や、交流信号電流発信部111の出力電流の大きさや位相を示す情報に基づいて、絶縁性の判定を行い、判定結果を表示するように、表示部625を制御する。
交流信号電圧印加装置110と、交流信号電流測定装置620との同期をとるため、交流信号電流発信部111の出力を、交流信号電流測定装置620の交流信号電流検出部122に参照信号として入力する。
表示部625は、液晶ディスプレイ等の表示面を有し、制御部623の制御に従ってメッセージを表示する。
センサ昇降部627は、図4で説明した磁気センサ昇降装置510と同様、制御部623の制御に従って、磁気センサ121の位置(水深)を変える。
【0089】
図8および図9は、制御部623が行う処理手順を示すフローチャートである。
同図の処理において、制御部623は、まず、デッキ貫通部より上(ライザ側端子114の側)でライザ210を流れる電流i12(図6)を測定する位置に磁気センサ121を設置するよう指示するメッセージを表示するよう、表示部625を制御する。そして、制御部623は、判定開始ボタン押下を示す信号が入力部626から出力されるのを待ち受ける(以上、ステップS11)。
判定開始ボタン押下を示す信号が入力部626から出力されると、制御部623は、交流信号電流設定部112から交流信号電流発信部111の電流iの大きさを示す情報を取得する(ステップS12)。また、制御部623は、交流信号電流検出部122から出力される、電流i12の大きさを示す情報を取得する(ステップS13)。そして、制御部623は、記憶部624から閾値を読み出し、電流iの大きさと電流i12の大きさとの差(i−i12)が、読み出した閾値未満か否かを判定する。
【0090】
電流iの大きさと電流i12の大きさとの差が閾値以上であると判定した場合(ステップS14:NO)、制御部623は、絶縁継手230が絶縁不良であることを示すメッセージを表示するよう、表示部625を制御する(ステップS15)。その後、制御部623は、ユーザが、絶縁継手230を補修若しくは交換し、判定開始ボタンを押下するのを待ち受ける(ステップS16)。判定開始ボタン押下を示す信号が入力部626から出力されると、制御部623はステップS12に戻る。
絶縁継手230の補修や交換は流体を抜いた状態でなければ実施できないので、測定後すぐに絶縁継手230の補修若しくは交換が実施できない場合が多い。したがって、絶縁継手は補修若しくは交換が必要というメッセージが表示された後にリセット機能によって次のステップに行くことを可能としている。
【0091】
一方、ステップS14にて、電流iの大きさと電流i12の大きさとの差が閾値未満であると判定した場合(ステップS14:YES)、制御部623は、絶縁継手230が絶縁良好であることを示すメッセージを表示するよう、表示部625を制御する。さらに、制御部623は、デッキ貫通部より下(ライザ側端子114と反対側)でライザ210を流れる電流i(図5)を測定する位置に磁気センサ121を設置するよう指示するメッセージを表示するよう、表示部625を制御する。そして、制御部623は、判定開始ボタン押下を示す信号が入力部626から出力されるのを待ち受ける(以上、ステップS17)。
【0092】
判定開始ボタン押下を示す信号が入力部626から出力されると、制御部623は、交流信号電流検出部122から出力される、電流iの大きさを示す情報を取得する(ステップS21)。そして、制御部623は、記憶部624から閾値を読み出し、ステップS13にて取得した電流i12の大きさと、電流iの大きさとの差(i12−i)が、読み出した閾値未満か否かを判定する(ステップS22)。なお、制御部623がステップS22で用いる閾値とステップS14で用いる閾値とは、同一の閾値であってもよいし、互いに異なる閾値であってもよい。後述するステップS32で用いる閾値も同様である。判定箇所ごとに異なる閾値を用いることにより、より正確に判定を行えることが期待できる。一方、同一の閾値を用いることにより、記憶部624が閾値を記憶するために必要な記憶領域を削減できる。
【0093】
電流i12の大きさと電流iの大きさとの差が閾値以上であると判定した場合(ステップS22:NO)、制御部623は、絶縁物220が絶縁不良であることを示すメッセージを表示するよう、表示部625を制御する(ステップS23)。その後、制御部623は、ユーザが、デッキ貫通部周辺のデッキ部320のコンクリートをはつって(削って)絶縁物220を交換するなどして、ライザ210とデッキ部320との電気的絶縁を確保し、判定開始ボタンを押下するのを待ち受ける(ステップS24)。判定開始ボタン押下を示す信号が入力部626から出力されると、制御部623はステップS21に戻る。
絶縁物220の補修や交換のためのデッキ部320のコンクリートをはつる作業は、測定後すぐに実施されない場合もあるので、実際には、絶縁物の補修若しくは交換が必要というメッセージが表示された後にリセット機能によって次のステップに行くことが可能となっている。
【0094】
一方、ステップS22にて、電流i12の大きさと電流iの大きさとの差が閾値未満であると判定した場合(ステップS22:YES)、制御部623は、絶縁物220が絶縁良好であることを示すメッセージを表示するよう、表示部625を制御する。さらに、制御部623は、図4に示す杭310を流れる電流(i若しくはi(この時点では電流がiかiかの判断はできない))を測定する位置に磁気センサ121を設置するよう指示するメッセージを表示するよう、表示部625を制御する。そして、制御部623は、判定開始ボタン押下を示す信号が入力部626から出力されるのを待ち受ける(以上、ステップS25)。ここで、杭310が複数あれば、ユーザは、いずれか1本の杭を選択して磁気センサ121を設置する。例えば、ユーザは、ライザ210との距離が最も短い杭を選択し、選択した杭に磁気センサ121を設置する。
【0095】
判定開始ボタン押下を示す信号が入力部626から出力されると、制御部623は、交流信号電流検出部122から出力される、選択した杭の電流(i若しくはi)の大きさを示す情報を取得し、記憶部624に書き込む(ステップS31)。そして、制御部623は、記憶部624から閾値を読み出し、選択した杭の電流(i若しくはi)の大きさが、読み出した閾値未満か否かを判定する(ステップS32)。
【0096】
選択した、ライザ210に近い杭の電流(i若しくはi)の大きさが閾値未満であると判定した場合(ステップS32:YES)、ライザ210と全ての杭310とに、導通はないと判定される。そこで、制御部623は、ライザ210と杭310との間に導通が無いことを示すメッセージを表示するよう、表示部625を制御する(ステップS33)。その後、制御部623は、図8および図9に示す処理を終了する。この場合、確認のため、選択した杭の他の杭でも(数量としては2、3本程度)同様の結果が得られることを確認するのが望ましい。
一方、選択した杭の電流(i若しくはi)の大きさが閾値以上であると判定した場合(ステップS32:NO)、制御部623は、ライザ210が何れかの杭と海洋投棄物400などを通じて導通していることを示すメッセージを表示するよう、表示部625を制御する(ステップS41)。
【0097】
次に、図4に示すライザ210と海洋投棄物400を通じて導通している杭310−1を特定するため、周辺の杭でも同様に電流(i若しくはi)の測定を実施する必要がある。このため、制御部623は、他杭(未だ電流の大きさを測定していない杭)で電流を測定するために磁気センサ121を他杭の所定位置に設置するよう指示するメッセージを表示するよう、表示部625を制御する。そして、制御部623は、磁気センサ121設置後、判定開始ボタン押下を示す信号が入力部626から出力されるのを待ち受ける(以上、ステップS42)。以下では、磁気センサ121が設置されている杭を「現在の杭」と称する。
判定開始ボタン押下を示す信号が入力部626から出力されると、制御部623は、交流信号電流検出部122から出力される、現在の杭の電流(i若しくはi)の大きさを示す情報を取得し、記憶部624に書き込む(ステップS43)。
【0098】
そして、制御部623は、測定済みの杭の電流の大きさを記憶部624から読み出し、読み出した電流の大きさの各々と、ステップS43で獲得した、新たに測定した杭を流れる電流の大きさとを比較する。読み出した電流の大きさのいずれと比較しても、新たに測定した杭を流れる電流の大きさに大きな差異がない(具体的には、電流の大きさの差が予め定められた閾値未満である)と判定した場合、制御部623は、測定済みの杭および現在の杭はライザと接触している杭ではないと判定する。
例えば、ステップS44の判定を初めて行う場合、電流の大きさを測定済みの杭は、ステップS31で測定した杭のみである。この場合、制御部623は、記憶部624から、ステップ31で測定した杭310に流れる電流の大きさを読み出し、読み出した電流の大きさと、ステップS43で測定した杭310に流れる電流の大きさを比較する。電流の大きさに大きな差異がなければ、制御部623は、ステップ31で測定した杭310と、ステップS42で測定した杭(現在の杭)は、いずれもライザと接触している杭ではないと判定する。
【0099】
また、ステップS44の判定を2回目に行う場合、電流の大きさを測定済みの杭は、ステップS31で測定した杭(以下では、「最初に測定した杭」と称する)310と、ステップS43を最初に実行した際に測定した杭(以下では、「2番目に測定した杭」と称する)310とである。この場合、制御部623は、記憶部624から、最初に測定した杭の電流の大きさと、2番目に測定した杭の電流の大きさとを読み出し、読み出した電流の大きさの各々と、ステップS43で測定した杭(以下では、「3番目に測定した杭」と称する)310に流れる電流の大きさを比較する。最初に測定した杭と、2番目に測定した杭のいずれと比較しても、3番目に測定した杭の電流の大きさに大きな差異がなければ、制御部623は、最初に測定した杭と、2番目に測定した杭と、3番目に測定した杭(現在の杭)は、いずれもライザと接触している杭ではないと判定する(以上、ステップS44)。
【0100】
ステップ44で、現在の杭とこれまでに測定した杭との比較で、電流の大きさに大きな差異がみられないと判定した場合(ステップS44:NO)には、ステップS41に戻り、電流の大きさに差異が生じる杭を検知するまで他杭を選択して流入電流の測定を行う処理(ステップS41〜S44のループ)を繰り返す。
一方、電流の大きさに大きな差異が存在すると判定した場合(ステップS44:YES)、制御部623は、現在の杭(突出した電流を示した杭)とライザ210との間に導通があることを示すメッセージと、ライザ210と杭310−1との導通位置を検知するため、ステップS45で得られた電流iの位相を調整するよう指示するメッセージと、磁気センサ121を、図4で説明したように杭に沿って昇降可能とするよう準備するよう指示するメッセージとを表示するよう、表示部625を制御する(ステップS45)。
【0101】
その際、必要に応じて、磁気センサ121からの出力電圧に対して位相調整を行う。例えば、磁気センサ121からの出力電圧の位相変化を捕捉し易いように(例えば、オシロスコープでモニタし易いように)、正側(プラス側)の90°に調整しておく。この位相調整は、例えば、交流信号電流検出部121が位相調整器を具備し、あるいは、外付けの位相調整器を用いて、磁気センサ121の出力電圧を位相調整器に入力し、ユーザ(計測者)が現場で、位相調整器の出力電圧の位相を確認しながら、当該位相調整器の位相調整用ダイヤルを回転させることによって行う。あるいは、交流信号電流検出部121が位相調整器を具備し、予め設定された位相に自動的に変化させるようにしてもよい。
【0102】
そして、制御部623は、ユーザが、位相調整と、磁気センサ121を昇降可能とする準備とを行い、判定開始ボタンを押下する(判定開始ボタン押下を示す信号が入力部626から出力される)のを待ち受ける(ステップS51)。
判定開始ボタン押下を示す信号が入力部626から出力されると、制御部623は、予め定められた測定開始水深まで磁気センサ121を降下させる。そして、制御部623は、交流信号電流検出部122から出力される、杭を流れる電流iの(位相調整した後の)電流の大きさと位相、および現在の磁気センサの位置を示す情報を取得し、取得した情報を表示部625に表示させる。また、制御部623は、記憶部624に測定データを格納するためのファイルを生成する等の測定準備を行う(以上、ステップS52)。
【0103】
そして、次に、制御部623は、予め定められた水深間隔だけ、若しくは連続的に、磁気センサ121を降下させ、交流信号電流検出部122から出力される、杭を流れる電流iの大きさと位相および磁気センサの位置(水深)をリアルタイムに表示部625に表示させるとともに記憶部624に書き込む(ステップS53)。
そして、制御部623は、交流信号電流検出部122から出力される、杭を流れる電流iの位相を示す情報と、(位相調整により設定された)測定開始時(接触箇所を検出する前)の交流信号電流の位相とを、リアルタイムで比較しながら(ステップS55)、位相が逆転したと判定したとき(ステップS55:YES)、表示部625に接触箇所検出信号(パルス信号など)を送信する。さらに、制御部623が、位相が逆転する位置を検出したことを示す情報を、位相逆転時の水深と共に記憶部624に書き込むようにしてもよい(以上、ステップS56)。
一方、ステップS55で位相が逆転していないと判定した場合(ステップS55:NO)、制御部623は、ステップS53に戻って、電流の測定および位相の判定を行う処理を引き続き行う。
【0104】
位相が逆位相であると判定した場合(ステップS55:YES)の処理についてさらに詳述すると、制御部623は、今回判定を行った際の磁気センサ121の水深と、この水深において判定対象の杭がライザ210と導通していることを示すメッセージと、導通を解消するよう指示するメッセージとを表示するよう、表示部625を制御する(ステップS56)。その後、制御部623は、ユーザが、杭に接する海洋投棄物を除去する等により杭とライザ210との間の導通を解消し、判定開始ボタンを押下するのを待ち受ける(ステップS57)。判定開始ボタン押下を示す信号が入力部626から出力されると、制御部623はステップS31に戻る。
【0105】
なお、海洋投棄物400の除去作業は、測定作業後すぐに実施されない場合もある。そこで、表示部625が、海洋投棄物400の除去が必要というメッセージを表示し、交流信号電流測定装置620が、ユーザのリセット操作を待受けるようにしてもよい。ユーザのリセット操作は、例えば、交流信号電流測定装置620が、リセットボタン等のリセット操作入力手段を具備し、ユーザがリセット操作入力手段を操作することによって行われる。リセット操作が行われると、交流信号電流測定装置620(制御部623)は、ステップS31に戻る。
なお、以上では、ステップS57の後、ステップS31に戻って、ライザ210と杭との導通の判定を再度行う場合について説明したが、ライザと複数の杭とに間に導通が生じることは少ないと考えられる。そこで、ステップS57の終了後、交流信号電流測定装置620(制御部623)が、図9の処理を終了するようにしてもよい。
【0106】
以上のように、図6で説明した絶縁継手の絶縁良否の判定を行い、絶縁良好と判定された場合に、図5で説明したデッキ部における絶縁性の判定を行い、絶縁良好と判定された場合に、図3で説明した杭とライザ210との導通の有無の判定を行い、導通ありと判定した場合に、図4で説明した杭とライザ210との導通箇所の判定を行うことにより、上述したように、判定毎に絶縁性の良否を確定できる。すなわち、まず、絶縁継手の絶縁良否を確定でき、次に、デッキ貫通部における絶縁良否と確定でき、次に、杭における導通の有無を確定でき、さらに、杭において導通があった場合には導通箇所を特定できる。
【0107】
なお、絶縁性測定システム600により、図8および図9で説明した判定の一部のみを行うようにしてもよい。例えば、絶縁性測定システム600が、ステップS11〜S16の判定(絶縁継手230の絶縁性の判定)のみを行うよう指示するようにし、この指示に従って判定を行うなど、上述した各判定の1つのみを行うようにしてもよい。この場合も、判定対象の絶縁性の判定を行うことができる。
【0108】
なお、図5で説明したように、図8のステップS22で、電流iの大きさと電流iの大きさとの差が閾値以下か否かを判定するようにしても、絶縁物220の絶縁性の良否、すなわちデッキ貫通部におけるライザ210とデッキ部320内鉄筋の導通の有無を判定できる。また、図6で説明したように、図8のステップS12〜S13で電流i21の大きさを測定し、ステップS14で、電流i21が予め定められた閾値未満か否かを判定するようにしても、絶縁継手230の絶縁性の判定を行うことができる。
【0109】
次に、図3で説明した、ライザ210と杭310−1との導通有無判定の、模型による実験について説明する。
図10は、実験を行った模型の構成を示す回路図である。
同図の実験回路は、交流信号電流発信部111に対応する発信器711と、海中側端子に対応するステンレス製通電極713と、磁気センサ121に対応する磁気センサ721と、交流信号電流検出部122に対応する3つのロックインアンプ722と、発信器711とロックインアンプ722の同期をとるためのBNCケーブル751と、電流計測用の2つのシャント752と、電流調整用抵抗753と、ライザ210に対応する絶縁被覆を設けた被覆棒鋼810と、杭310−1に対応する裸棒鋼811−1と、杭310−2に対応する裸棒鋼811−2と、デッキ部320の鉄筋に対応する導線820と、海洋投棄物400に対応する導線840と、海洋投棄物400の接触および除去を模擬するスイッチ841とを具備する。また、ステンレス製通電極713と、被覆棒鋼810と、裸棒鋼811−1および811−2とは、容器851内の、海水に対応する3%食塩水に浸かっている。なお、実験に用いた導線840は、腐食防止のため全て被覆電線とした。
【0110】
杭310の各々はデッキ部320中の鉄筋を介して互いに導通しているので、裸棒鋼811−1と811−2とを、大気中にて導線820で接続している。
また、ライザ210と杭310−1とが海中で導通した際に、デッキ部320内を流れる電流を測定するため、裸棒鋼811−1と811−2とを結ぶ導線820にシャント752を挿入し、挿入したシャント752の両側の電圧端子にロックインアンプ722を接続した。
また、ライザ210とデッキ部320とが絶縁物220により絶縁されている状態を模して、被覆棒鋼810と導線820とは非接触としている。
【0111】
また、杭310−1と海洋投棄物400との接触を模して、裸棒鋼811−1と導線840とを水中で接続している。また、ライザ210と海洋投棄物400との接触を模して、被覆棒鋼810の絶縁被覆の一部を剥がし、導線840と水中で接続している。そして、海洋投棄物の接触および除去を模擬するスイッチ841を、大気中にて導線840に挿入している。
また、交流信号電流発信部111とライザ210とはライザ側端子114にて接続されるので、発信器711と被覆棒鋼810とを導線で導通させている。この導線には、電流調整用抵抗753と、電流測定用のシャント752とが直列に挿入され、シャント752の両側の電圧端子にはロックインアンプ722が接続されている。また、発信器711とステンレス製通電極713とも、導線で導通させている。
また、導線840に磁気センサ721を設置し、ロックインアンプ722を接続している。これにより、磁気センサ121が検出する電流に相当する電流を検出する。
また、発信器711からの出力を、絶縁アンプを介してBNCケーブル751にてロックインアンプ722の参照信号端子に入力することにより、ロックインアンプ722の各々が、発信器711の出力する電流と同じ周波数成分のみを検出するようにした。
【0112】
そして、発信器711の周波数を220ヘルツ(Hz)と、760ヘルツと、1キロヘルツ(kHz)とに変化させ、図11に示す測定結果を得た。
同図の測定結果が示すように、被覆棒鋼810と裸棒鋼811−1とが導通していない状態、すなわちスイッチ841を開いた状態では、いずれの周波数においても、裸棒鋼811−2と裸棒鋼811−1に間に流れる電流および裸棒鋼811−1と被覆棒鋼810に流れる電流はほとんどゼロであり、ライザ210に相当する被覆棒鋼810に電流は流入しなかった。これに対して、被覆棒鋼810と裸棒鋼811−1とが導通している状態、すなわちスイッチ841を閉じた状態では、いずれの周波数においても、裸棒鋼811−2と裸棒鋼811−1に間に流れる電流および裸棒鋼811−1と被覆棒鋼810に流れる電流の大きさは、発信器711の出力電流の約5分の1の大きさが測定された。また、いずれの周波数においても、スイッチ841を閉じた状態で測定された電流の向きは、デッキ部320から海中に向かう方向に相当する下向きであった。
この実験結果により、本発明によって、ライザ210と杭310とが、鋼製の海洋投棄物などによって導通しているか否かを検知できることが示された。
なお、発信器711の周波数にかかわらず同様の実験結果が得られたことにより、商用周波数およびその高調波以外の適当な周波数を用いて本発明の判定を行えることが示された。
【0113】
次に、上記実験に加え、被覆棒鋼810と裸棒鋼811−1とが導通している箇所の検出実験を行った。実験は、図12に示すように容器851の外側に磁気センサ900−1を配置し、当該磁気センサに、磁気センサの駆動用電源900−2から電源を供給し、磁気センサ900−1の出力を、発信器711と同期をとったロックインアンプ722に入力した。なお、当該ロックインアンプ722には、位相調整機能が組み込まれているものを使用した。
そして、磁気センサ900−1を容器851の水面側の位置に固定した後、導線820から被覆棒鋼811−1に流入する交流電流を測定し、この電流の位相を位相調整器によって+90°に設定した。そして、磁気センサ900−1を容器851に沿って下向きに移動させ、その時の位相出力を、ロックインアンプ722で監視した。
その結果、図13に示すように、被覆棒鋼811−1に導線840が接続されている箇所を境にして、位相出力は、+90°から−90°に変化した。
この実験結果により、本発明によって、ライザ210と杭310とが、鋼製の海洋投棄物などによって導通している箇所を検知できることが示された。
なお、発信器711の周波数にかかわらず同様の実験結果が得られたことにより、商用周波数およびその高調波以外の適当な周波数を用いて本発明の判定を行えることが示された。
【0114】
なお、交流信号電流検出部122と制御部623と表示部625と入力部626との全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の保持装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0115】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、海底パイプラインのライザ部分と周辺の他金属体との導通の有無または導通箇所の判定を行う絶縁性判定方法および絶縁性判定システムに用いて好適である。
【符号の説明】
【0117】
100、600 絶縁性測定システム
110 交流信号電圧印加装置
111 交流信号電流発信部
112 交流信号電流設定部
113 海中側端子
114 ライザ側端子
120、620 交流信号電流測定装置
121 磁気センサ
122 交流信号電流検出部
510 磁気センサ昇降装置
520 パイプ
623 制御部
624 記憶部
625 表示部
626 入力部
627 センサ昇降部
210 ライザ
220 絶縁物
230 絶縁継手
240 海上部パイプ
300 海洋構造物
310、310−1、310−2 杭
320 デッキ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海中に設けられる海中側端子と、
前記海中側端子と導通する電源であって、海面下と海上とにわたって設置され海面下にて電気防食された金属管と導通可能な電源と、
電流を測定する測定装置と、
を含む絶縁性測定システムにより、
前記金属管と、構造物または構造物に導通している導体と、の間の絶縁性を判定する絶縁性判定方法であって、
前記電源は、前記海中側端子と前記金属管との間に電圧を印加し、
前記測定装置は、前記金属管を流れる電流または前記構造物を流れる電流または前記導体を流れる電流のうち少なくとも1つを測定する
ことを特徴とする絶縁性判定方法。
【請求項2】
前記構造物は、海上および海中にわたって設置され海底に固定された杭を具備し、
前記測定装置は、前記杭を流れる電流を測定する
ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁性判定方法。
【請求項3】
前記構造物は、海上および海中にわたって設置され海底に固定された複数の杭を具備し、
前記電源は、前記海中側端子と前記金属管との間に電圧を印加し、
前記測定装置は、複数ある前記杭に流れる電流を測定する
ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁性判定方法。
【請求項4】
前記構造物は、海上および海中にわたって設置され海底に固定された複数の杭を具備し、
前記電源は、前記海中側端子と前記金属管との間に交流電圧を印加し、
前記測定装置は、前記杭のうち1本の、第1の測定箇所を流れる交流電流の位相を測定し、前記測定した交流電流の位相を基準にして、第2の測定箇所を流れる交流電流の位相を測定し、交流電流の向きが反転する位置、すなわち位相の逆転する位置を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁性判定方法。
【請求項5】
前記金属管は、海上の端部にて絶縁継手に接し、海上かつ前記絶縁継手よりも海面側にて前記電源により電圧を印加され、海上かつ前記電源に電圧を印加される箇所よりも海面側にて構造物に支持され、
前記絶縁継手は、前記導体に接し、
前記測定装置は、前記金属管の、前記電源により電圧を印加される箇所と前記絶縁継手との間を流れる電流の電流値、または、前記金属管の、前記電源により電圧を印加される箇所から当該金属管が前記構造物に支持される箇所までの間の区間を流れる電流の電流値のいずれかを測定する
ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁性判定方法。
【請求項6】
前記金属管は、海上にて前記電源により電圧を印加され、海上かつ前記電源に電圧を印加される箇所よりも海面側にて構造物に支持され、
前記測定装置は、前記金属管の、当該金属管が前記構造物に支持される箇所より海面側かつ海上部分を流れる電流の電流値を測定し、前記金属管の、当該金属管が前記構造物に支持される箇所から前記金属管が前記電源により電圧を印加される箇所までの間の区間を流れる電流の電流値を測定する
ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁性判定方法。
【請求項7】
前記金属管は、海上にて前記電源により電圧を印加され、海上かつ前記電源に電圧を印加される箇所よりも海面側にて構造物に支持され、
前記測定装置は、前記金属管の、当該第1の金属管が前記構造物に支持される箇所より海面側かつ海上部分を流れる電流の電流値を測定する
ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁性判定方法。
【請求項8】
請求項5に記載の絶縁性判定方法を行い、測定された電流の電流値が所定の閾値未満である場合は、さらに請求項6または請求項7に記載の絶縁性判定方法を行い、請求項6に記載の絶縁性判定方法にて測定された、前記金属管の、当該金属管が前記構造物に支持される箇所より海面側かつ海上部分を流れる電流の電流値と、前記金属管の、当該金属管が前記構造物に支持される箇所から前記金属管が前記電源により電圧を印加される箇所までの間の区間を流れる電流の電流値との差が所定の閾値未満である場合、あるいは、前記電源の電流値と、請求項7に記載の絶縁性判定方法にて測定された電流値との差が所定の閾値未満である場合は、さらに請求項3に記載の複数の前記杭の電流有無を測定による絶縁性判定方法を行い、電流が確認された前記杭について、さらに請求項4に記載の絶縁性判定方法を行うことを特徴とする絶縁性判定方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれかの絶縁性判定方法による電流の測定を行う絶縁性判定システムであって、
メッセージを表示する表示部と、
前記電流の測定箇所に電流測定用のセンサを設置すべき旨の指示を表示するよう、前記表示部を制御する制御部と、
前記センサを設置した旨の通知を取得する入力部と、
前記入力部が前記通知を取得すると前記電流を検出する電流検出部と
を具備することを特徴とする絶縁性判定システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−167353(P2012−167353A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30982(P2011−30982)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】