説明

絶縁性微粒子、絶縁性微粒子被覆導電性微粒子、異方性導電接着剤組成物、および異方性導電成形体

【課題】導電性微粒子を被覆する用途に好適な絶縁性微粒子であって、導電性微粒子の表面と強固な密着性を有し、導電性微粒子の表面から脱落・脱離し難く、また、該絶縁性微粒子で被覆された絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を異方性導電接着剤組成物中に含有させた場合に、その絶縁性微粒子被覆導電性微粒子の密度を増やして該絶縁性微粒子被覆導電性微粒子同士が隣接しても、該絶縁性微粒子が十分な弾性を有し、塑性変形しないため、優れた導通性と絶縁性を発揮できるような、絶縁性微粒子を提供する。
【解決手段】本発明の導電性微粒子被覆用の絶縁性微粒子は、コア層の外周にシェル層を備えるコアシェル構造を有する、導電性微粒子被覆用の絶縁性微粒子であって、該コア層がビニル重合体を含み、該シェル層がアミノ樹脂を含み、該コア部の直径をDnm、該シェル部の厚みをdnmとしたときに、0.10<d/D<2.0である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性微粒子に関する。より詳細には、本発明は、導電性微粒子を被覆する用途に好適な絶縁性微粒子に関する。
【0002】
本発明は、また、絶縁性微粒子被覆導電性微粒子に関する。より詳細には、本発明は、導電性微粒子の表面に絶縁性微粒子が存在してなる絶縁性微粒子被覆導電性微粒子に関する。
【0003】
本発明は、また、絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を含む異方性導電接着剤組成物に関する。
【0004】
本発明は、また、異方性導電接着剤組成物から得られる異方性導電成形体に関する。
【背景技術】
【0005】
近年、電子部品の高密度実装化に伴い、電子回路の電極が微細化し、実装するICチップのバンプ(突起状電極)サイズもより狭小化する流れがある。
【0006】
一方、対向する多数の電極間の電気的接続を行うため、従来、樹脂中に導電性微粒子が分散した異方性導電接着剤組成物が使用されている。例えば、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電フィルム、異方性導電シート等が広く知られている。
【0007】
これらの異方性導電接着剤組成物を使用して、微細化、狭小化する電極間の安定した導通性を確保するためには、電極が捕捉する導電性微粒子の個数を増やす必要がある。しかし、その場合、隣接する導電性微粒子が接触すると電極間で短絡を起こすという問題があり、導通性とあわせて、さらなる絶縁信頼性の確保が課題となっている。
【0008】
導電性微粒子の表面を絶縁層で被覆した絶縁被覆導電性微粒子は、電気接続用異方導電材料として電極間に配置させた場合、該電極間に圧力または熱および圧力を作用させることで、電極間を結ぶ方向に導電性を生じさせる。さらに、このような絶縁被覆導電性微粒子においては、該微粒子間には必ず絶縁層が存在するので、目的としない横方向の導通の発生に起因する横方向の短絡を効果的に抑制することができる。
【0009】
例えば、導電性材料からなる微粒子を電気絶縁性物質の皮膜で被覆した電気接続用異方導電性粒子が提案されている(特許文献1、特に、図2参照)。また、特許文献1に記載の発明の応用として、導電性微粒子の表面に圧力により破れる絶縁性樹脂被覆層が形成された絶縁被覆導電性微粒子(特許文献2)、導電性微粒子の表面に加熱により流動性が増加する絶縁性樹脂被覆層が形成された絶縁被覆導電性微粒子(特許文献3)、導電性微粒子の表面に少なくとも2層の絶縁性樹脂被覆層が形成された絶縁被覆導電性微粒子(特許文献4)、導電性微粒子の表面に所定の被覆状態に制御した絶縁性樹脂被覆層が形成された絶縁被覆導電性微粒子(特許文献5)、導電性粒子の表面に特定の表面処理を施した絶縁性樹脂被覆層が形成された絶縁被覆導電粒子(特許文献6、7)が提案されている。
【0010】
他方、導電性微粒子の表面に絶縁性材料を微粒子の形で設けて絶縁被覆導電性微粒子とする形態が知られている。このような形態で用いられる絶縁性微粒子としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂等を材質とする絶縁性微粒子(特許文献8、特に、実施例では架橋アクリル樹脂を使用)、水酸基を表面に有する無機酸化物微粒子(特許文献9、特に、実施例ではシリカ微粒子を使用)、無機酸化物(特許文献10、特に実施例ではシリカ微粒子)、アミノ樹脂微粒子(特許文献11)が報告されている。
【0011】
しかし、従来の絶縁性微粒子被覆導電性微粒子においては、絶縁性微粒子の導電性微粒子に対する密着性が不十分であるため、異方性導電接着剤組成物を作製する際に、絶縁性微粒子が導電性微粒子表面から脱落しやすいという問題がある。そのため、最終的に異方性導電成形体として使用した場合に、導通性は問題ないものの、絶縁信頼性に劣るという問題がある。
【0012】
このようなことから、圧縮変形時における導電性微粒子表面からの絶縁性微粒子の脱落による導電性微粒子の接触を回避するため、従来よりも高いレベルの導電性微粒子と絶縁性微粒子間の密着性が求められている。また、導電性微粒子同士が隣接しても、絶縁性微粒子が十分な弾性を有し、塑性変形しないことが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第2794009号公報
【特許文献2】特開2000−67647号公報
【特許文献3】特開2000−100249号公報
【特許文献4】特開2000−129157号公報
【特許文献5】特開2004−146261号公報
【特許文献6】特開2005−63904号公報
【特許文献7】特開2006−236759号公報
【特許文献8】特開2006−59721号公報
【特許文献9】特開2009−170414号公報
【特許文献10】特開2009−102731号公報
【特許文献11】特開2011−86598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、導電性微粒子を被覆する用途に好適な絶縁性微粒子であって、導電性微粒子の表面と強固な密着性を有し、導電性微粒子の表面から脱落・脱離し難く、また、該絶縁性微粒子で被覆された絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を異方性導電接着剤組成物中に含有させた場合に、その絶縁性微粒子被覆導電性微粒子の密度を増やして該絶縁性微粒子被覆導電性微粒子同士が隣接しても、該絶縁性微粒子が十分な弾性を有し、塑性変形しないため、優れた導通性と絶縁性を発揮できるような、絶縁性微粒子を提供することにある。また、導電性微粒子の表面にこのような絶縁性微粒子が存在してなる絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を提供することにある。また、このような絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を含む異方性導電接着剤組成物を提供することにある。さらに、このような異方性導電接着剤組成物から得られる異方性導電成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の導電性微粒子被覆用の絶縁性微粒子は、
コア層の外周にシェル層を備えるコアシェル構造を有する、導電性微粒子被覆用の絶縁性微粒子であって、
該コア層がビニル重合体を含み、該シェル層がアミノ樹脂を含み、
該コア部の直径をDnm、該シェル部の厚みをdnmとしたときに、0.10<d/D<2.0である。
【0016】
本発明の絶縁性微粒子被覆導電性微粒子は、導電性微粒子の表面に本発明の絶縁性微粒子が存在してなる。
【0017】
好ましい実施形態においては、本発明の絶縁性微粒子被覆導電性微粒子は、上記導電性微粒子の最表面に、金、パラジウム、銀、銅、錫、およびこれらの合金から選ばれる少なくとも1種を有する。
【0018】
好ましい実施形態においては、本発明の絶縁性微粒子被覆導電性微粒子は、上記導電性微粒子の平均粒子径が1.0μm〜5.0μmである。
【0019】
本発明の異方性導電接着剤組成物は、本発明の絶縁性微粒子被覆導電性微粒子がバインダー樹脂中に分散してなる。
【0020】
本発明の異方性導電成形体は、本発明の異方性導電接着剤組成物から得られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、導電性微粒子を被覆する用途に好適な絶縁性微粒子であって、導電性微粒子の表面と強固な密着性を有し、導電性微粒子の表面から脱落・脱離し難く、また、該絶縁性微粒子で被覆された絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を異方性導電接着剤組成物中に含有させた場合に、その絶縁性微粒子被覆導電性微粒子の密度を増やして該絶縁性微粒子被覆導電性微粒子同士が隣接しても、該絶縁性微粒子が十分な弾性を有し、塑性変形しないため、優れた導通性と絶縁性を発揮できるような、絶縁性微粒子を提供することができる。また、導電性微粒子の表面にこのような絶縁性微粒子が存在してなる絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を提供することができる。また、このような絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を含む異方性導電接着剤組成物を提供することができる。さらに、このような異方性導電接着剤組成物から得られる異方性導電成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
≪A.絶縁性微粒子≫
本発明の絶縁性微粒子は、導電性微粒子被覆用の絶縁性微粒子である。すなわち、本発明の絶縁性微粒子は、導電性微粒子の表面に配置させることによって絶縁性微粒子被覆導電性微粒子とすることができる絶縁性微粒子である。
【0023】
本発明の絶縁性微粒子は、コア層の外周にシェル層を備えるコアシェル構造を有する。
【0024】
本発明の絶縁性微粒子においては、コア部の直径をDnm、シェル部の厚みをdnmとしたときに、0.10<d/D<2.0である。d/Dは、好ましくは、0.12<d/D<1.50である。
【0025】
コア部の直径は、任意の適切な方法によって測定し得る。コア部の直径は、例えば、動的光散乱粒度分布装置によって体積平均粒子径を測定して得られ得る。
【0026】
シェル部の厚みは、任意の適切な方法によって測定し得る。シェル部の厚みは、例えば、動的光散乱粒度分布装置によって測定される絶縁性微粒子およびコア部の体積平均粒子径に基づき、下記式によって算出し得る。
【0027】
シェル部の厚み=(絶縁性微粒子の体積平均粒子径−コア部の体積平均粒子径)/2
【0028】
このようなd/Dは、コアシェル構造における、コア部の大きさに対するシェル部の大きさを表す指標の一つであり、本発明の絶縁性微粒子においては、このようなd/Dが、0.10<d/D<2.0という特定の範囲内に収まることによって、導電性微粒子の表面と強固な密着性を有し、導電性微粒子の表面から脱落・脱離し難く、また、該絶縁性微粒子で被覆された絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を異方性導電接着剤組成物中に含有させた場合に、その絶縁性微粒子被覆導電性微粒子の密度を増やして該絶縁性微粒子被覆導電性微粒子同士が隣接しても、該絶縁性微粒子が十分な弾性を有し、塑性変形しないため、優れた導通性と絶縁性を発揮できるような、絶縁性微粒子を提供することができる。
【0029】
このようなd/Dが、0.10以下の場合や、2.0以上の場合には、上記のような本発明の効果を発現することが困難になる。
【0030】
本発明の絶縁性微粒子においては、コア部の直径に対するシェル部の厚みの割合(d/D)が一定以上であることにより、導電性微粒子との良好な密着性を確保し得る。しかし、一方で、本発明を完成する過程において、コア部の直径に対するシェル部の厚みが大きくなると、導電性微粒子との密着性は優れるものの、絶縁性がかえって悪くなることが判明した。この原因は、本発明の絶縁性微粒子におけるシェル部の圧縮に対する弾性回復力が低いため、隣接する導電性微粒子間が接触して絶縁性微粒子が変形したときに、絶縁性微粒子の塑性変形が大きくなってしまい、導電性微粒子間の距離が狭まり、導電性微粒子表面同士の接触が発生しやすくなるためと推察される。
【0031】
本発明の絶縁性微粒子の体積平均粒子径としては、任意の適切な体積平均粒子径を採用し得る。本発明の絶縁性微粒子の体積平均粒子径は、該絶縁性微粒子が有する特定のコアシェル構造によって、非常に精密にコントロールされ得る。
【0032】
本発明の絶縁性微粒子の体積平均粒子径としては、好ましくは0.005μm〜1.0μmであり、さらに好ましくは0.01μm〜0.8μmである。
【0033】
本発明の絶縁性微粒子の体積平均粒子径を上記のように非常に精密にコントロールできれば、導電性微粒子の表面と強固な密着性を有し、導電性微粒子の表面から脱落・脱離し難く、また、該絶縁性微粒子で被覆された絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を異方性導電接着剤組成物中に含有させた場合に、その絶縁性微粒子被覆導電性微粒子の密度を増やして該絶縁性微粒子被覆導電性微粒子同士が隣接しても、該絶縁性微粒子が十分な弾性を有し、塑性変形しないため、優れた導通性と絶縁性を発揮できるような、絶縁性微粒子を提供することができる。
【0034】
体積平均粒子径の評価方法については後述する。
【0035】
本発明の絶縁性微粒子の粒度分布のシャープさは、粒子径の変動係数(CV値)で示すことができる。本発明の絶縁性微粒子の粒度分布は、該絶縁性微粒子が有する特定のコアシェル構造によって、非常にシャープなものとなり得る。
【0036】
本発明の絶縁性微粒子の粒子径の変動係数(CV値)としては、好ましくは40%以下であり、より好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは20%以下である。
【0037】
本発明の絶縁性微粒子は、該絶縁性微粒子が有する特定のコアシェル構造によって、吸湿性が十分に低いものとなり得る。このような吸湿性は、例えば、飽和吸湿量で示すことができる。
【0038】
本発明の絶縁性微粒子の飽和吸湿量は、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは7重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下であり、特に好ましくは4重量%以下であり、最も好ましくは3重量%以下である。
【0039】
本発明の絶縁性微粒子の残存ホルマリン量は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、さらに好ましくは100ppm以下であり、特に好ましくは50ppm以下である。
【0040】
本発明の絶縁性微粒子の残存ホルマリン量が上記範囲内に収まる場合には、低ホルマリンが強く望まれる環境においても、導電性微粒子の表面と強固な密着性を有し、導電性微粒子の表面から脱落・脱離し難く、また、該絶縁性微粒子で被覆された絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を異方性導電接着剤組成物中に含有させた場合に、その絶縁性微粒子被覆導電性微粒子の密度を増やして該絶縁性微粒子被覆導電性微粒子同士が隣接しても、該絶縁性微粒子が十分な弾性を有し、塑性変形しないため、優れた導通性と絶縁性を発揮できるような、絶縁性微粒子を提供することができる。
【0041】
本発明の絶縁性微粒子におけるコア層は、ビニル重合体を含む。本発明の絶縁性微粒子におけるコア層中のビニル重合体の含有割合は、好ましくは80重量%〜100重量%であり、より好ましくは90重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは95重量%〜100重量%であり、特に好ましくは98重量%〜100重量%であり、最も好ましくは実質的に100重量%である。
【0042】
本発明の絶縁性微粒子におけるコア層が、ビニル重合体以外の成分を含む場合は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な成分を含み得る。
【0043】
ビニル重合体としては、例えば、分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基を含有する化合物の重合体が挙げられる。ビニル重合体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する単量体類;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、等のポリエチレングリコール成分を有する単量体類;(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ラウリル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル等のアルキル(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタンフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロアミル(メタ)アクリレート等のフッ素原子含有(メタ)アクリレート類;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル等の重合体;芳香環を有するビニル重合体、芳香環を有する架橋ビニル重合体等の芳香環構造含有樹脂;等が挙げられる。
【0044】
ビニル重合体は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0045】
ビニル重合体としては、上記の中でも、好ましくは、アルキル(メタ)アクリレート類の重合体、芳香環構造含有樹脂が挙げられる。
【0046】
アルキル(メタ)アクリレート類としては、好ましくはメタクリル酸エステルが挙げられ、より好ましくはメタクリル酸メチルが挙げられる。
【0047】
芳香環構造含有樹脂としては、好ましくは、芳香環を有するビニル重合体、芳香環を有する架橋ビニル重合体が挙げられる。芳香環を有するビニル重合体、芳香環を有する架橋ビニル重合体は、工業的に平均粒子径が1μm以下のものを製造し易く、あるいは、入手し易いからである。
【0048】
芳香環を有するビニル重合体としては、芳香環含有ビニル化合物を必須に含むビニルモノマーの重合体が挙げられる。
【0049】
芳香環含有ビニル化合物を必須に含むビニルモノマーの重合体としては、例えば、1種以上の芳香環含有ビニル化合物と1種以上の他のビニル化合物との共重合体が挙げられる。
【0050】
芳香環含有ビニル化合物としては、芳香族ビニル化合物が好ましく、中でも例えば、スチレン系モノマーが好ましい。スチレン系モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン(エチルビニルベンゼン)などが挙げられる。芳香環含有ビニル化合物としては、上記スチレン系モノマー以外に、メタクリル酸ベンジルなどの芳香環を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
芳香環含有ビニル化合物と共重合させ得る他のビニル化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基を含有する化合物が挙げられる。このような他のビニル化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する単量体類;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、等のポリエチレングリコール成分を有する単量体類;(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ラウリル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル等のアルキル(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタンフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロアミル(メタ)アクリレート等のフッ素原子含有(メタ)アクリレート類;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;等が挙げられる。
【0052】
芳香環含有ビニル化合物と共重合させ得る他のビニル化合物としては、これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、メタクリル酸エステルがより好ましく、メタクリル酸メチルがさらに好ましい。
【0053】
したがって、芳香環を有するビニル重合体としては、1種以上の芳香環含有ビニル化合物と1種以上の他のビニル化合物との共重合体が好ましく、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体がより好ましい。
【0054】
芳香環を有する架橋ビニル重合体は、適度な架橋構造を有するので、このような重合体からなるコア層を有する絶縁性微粒子を導電性微粒子被覆用の絶縁性微粒子として用いると、絶縁性微粒子被覆導電性微粒子に適度な弾性を付与し得る。
【0055】
芳香環を有する架橋ビニル重合体としては、例えば、多官能芳香環含有ビニル化合物を必須に含むビニルモノマーの重合体、単官能芳香環含有ビニル化合物および多官能ビニル化合物を必須に含むビニルモノマーの重合体が挙げられる。前者として、多官能芳香環含有ビニル化合物および単官能ビニル化合物を必須に含むビニルモノマーの重合体、多官能芳香環含有ビニル化合物および多官能ビニル化合物を必須に含むビニルモノマーの重合体、多官能芳香環含有ビニル化合物および単官能芳香環含有ビニル化合物を必須に含むビニルモノマーの重合体などが挙げられる。
【0056】
多官能芳香族ビニル化合物および単官能ビニル化合物を必須に含むビニルモノマーの重合体としては、例えば、1種以上の多官能芳香環含有ビニル化合物と1種以上の他の単官能ビニル化合物との共重合体が挙げられる。
【0057】
多官能芳香環含有ビニル化合物および多官能ビニル化合物を必須に含むビニルモノマーの重合体としては、例えば、1種以上の多官能芳香環含有ビニル化合物と1種以上の多官能ビニル化合物と必要に応じて1種以上の他の単官能ビニル化合物の共重合体が挙げられる。
【0058】
多官能芳香環含有ビニル化合物および単官能芳香環含有ビニル化合物を必須に含むビニルモノマーの重合体としては、例えば、1種以上の多官能芳香環含有ビニル化合物と1種以上の単官能芳香環含有ビニル化合物と必要に応じて1種以上の他の単官能ビニル化合物または多官能ビニル化合物の共重合体が挙げられる。
【0059】
単官能芳香環含有ビニル化合物および多官能ビニル化合物を必須に含むビニルモノマーの重合体としては、例えば、1種以上の単官能芳香環含有ビニル化合物と1種以上の多官能ビニル化合物と必要に応じて1種以上の他の単官能ビニル化合物の共重合体が挙げられる。
【0060】
多官能芳香環含有ビニル化合物の中でも多官能芳香族ビニル化合物が好ましく、多官能芳香族ビニル化合物としては、例えば、ジビニルベンゼンが挙げられる。
【0061】
他の単官能ビニル化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基を含有する化合物であればよい。具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する単量体類;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、等のポリエチレングリコール成分を有する単量体類;(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル等のアルキル(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタンフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロアミル(メタ)アクリレート等のフッ素原子含有(メタ)アクリレート類;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;等が挙げられる。
【0062】
単官能芳香環含有ビニル化合物の中でも単官能芳香族ビニル化合物が好ましく、中でも、単官能スチレン系モノマーが好ましい。単官能スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン(エチルビニルベンゼン)などが挙げられる。
【0063】
多官能ビニル化合物としては、例えば、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジアリルフタレートおよびその異性体、トリアリルイソシアヌレートおよびその誘導体、等が挙げられる。
【0064】
多官能ビニル化合物としては、これらの中でも、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく、エチレングリコールジメタクリレートがより好ましい。
【0065】
芳香環を有する架橋性ビニル重合体を形成し得るモノマー中の、架橋性モノマー(多官能芳香環含有ビニル化合物、多官能ビニル化合物)の含有割合は、好ましくは1重量%〜90重量%であり、より好ましくは10重量%〜70重量%であり、さらに好ましくは20重量%〜60重量%であり、特に好ましくは30重量%〜50重量%である。
【0066】
本発明の絶縁性微粒子におけるシェル層は、アミノ樹脂を含む。アミノ樹脂は、好ましくは、アミノ化合物とホルムアルデヒドとの縮合物からなる。
【0067】
本発明の絶縁性微粒子におけるシェル層中のアミノ樹脂の含有割合は、好ましくは80重量%〜100重量%であり、より好ましくは90重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは95重量%〜100重量%であり、特に好ましくは98重量%〜100重量%であり、最も好ましくは実質的に100重量%である。
【0068】
本発明の絶縁性微粒子におけるシェル層が、アミノ樹脂以外の成分を含む場合は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な成分を含み得る。
【0069】
アミノ化合物としては、好ましくは、多官能アミノ化合物であり、より好ましくは、トリアジン環構造を有する多官能アミノ化合物である。
【0070】
アミノ化合物は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0071】
トリアジン環構造を有する多官能アミノ化合物としては、例えば、メラミン;一般式(1)で表されるアミノ化合物;一般式(2)や一般式(3)などで表されるジアミノトリアジン化合物;ベンゾグアナミン、シクロヘキサンカルボグアナミン、シクロヘキセンカルボグアナミン、アセトグアナミン、ノルボルネンカルボグアナミン、スピログアナミンなどのグアナミン化合物;などが挙げられる。これらの中でも、メラミン、ベンゾグアナミンが好ましい。
【0072】
【化1】

【0073】
【化2】

【0074】
【化3】

【0075】
一般式(1)中、Rは、同一または異なり、水素原子または置換基があっても良いアルキル基を表し、Rの少なくとも1つは置換基があっても良いアルキル基である。
【0076】
一般式(1)中、Rは、好ましくは、水素原子、ヒドロキシアルキル基である。
【0077】
一般式(2)中、Rは、同一または異なり、直鎖構造または側鎖を有する構造である炭素原子数1〜2の炭化水素基(−CH−、−CHCH−、−CH(CH)−)である。
【0078】
一般式(3)中、Rは、直鎖構造、側鎖を有する構造、置換基があっても良い芳香族環を有する構造、置換基があっても良い脂環を有する構造のいずれかである炭素原子数1〜8の炭化水素基である。
【0079】
なお、芳香族環を有する構造や脂環を有する構造は、側鎖を有する構造であっても良い。
【0080】
アミノ化合物は、好ましくはグアナミン化合物を含む。
【0081】
グアナミン化合物としては、例えば、ベンゾグアナミン、シクロヘキサンカルボグアナミン、シクロヘキセンカルボグアナミン、アセトグアナミン、ノルボルネンカルボグアナミン、スピログアナミンが挙げられ、好ましくはベンゾグアナミンである。このようなグアナミン化合物は、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0082】
アミノ化合物中のグアナミン化合物の含有割合は、好ましくは10重量%〜100重量%であり、より好ましくは20重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは40重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは50重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは60重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは70重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは80重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは90重量%〜100重量%であり、特に好ましくは95重量%〜100重量%であり、最も好ましくは100重量%である。
【0083】
アミノ化合物中のグアナミン化合物の含有割合が上記範囲内に収まることにより、得られる絶縁性微粒子は、粒度分布がシャープであり、粒子径が精密にコントロールされ、絶縁性微粒子被覆導電性微粒子に好適に用いることができる。
【0084】
本発明の絶縁性微粒子におけるシェル層を構成する縮合物の原料であるアミノ化合物中の、グアナミン化合物以外のアミノ化合物は、例えば、メラミン;上記一般式(1)で表されるアミノ化合物;上記一般式(2)や上記一般式(3)などで表されるジアミノトリアジン化合物;などが挙げられ、好ましくは、メラミンや上記一般式(1)で表されるアミノ化合物であり、より好ましくはメラミンである。
【0085】
本発明の絶縁性微粒子におけるシェル層にはアミノ化合物以外の成分として、フェノール類を使用してもよい。フェノール類とは、フェノール性水酸基を有する化合物を意味する。フェノール性水酸基を有する化合物は、上記アミノ化合物と一緒に添加するなどアミノ化合物とホルムアルデヒドと共縮合することにより、ホルムアルデヒドとの縮合物、該フェノール類とアミノ化合物およびホルムアルデヒドの共縮合物としてシェル層に複合化できる。フェノール類の添加条件等については、本発明の作用効果を損なわない範囲で所望の吸湿性抑制効果を奏することができる。
【0086】
上記フェノール類の使用量としては、アミノ化合物1モルに対して、好ましくは0.1〜3モルであり、より好ましくは0.2〜1.5モルである。
【0087】
上記フェノール類としては、例えば、フェノール、o−エチルフェノール、p−エチルフェノール、混合クレゾール、p−n−プロピルフェノール、o−イソプロピルフェノール、p−イソプロピルフェノール、混合イソプロピルフェノール、o−sec−ブチルフェノール、m−tert−ブチルフェノ−ル、p−tert−ブチルフェノール、ペンチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、2,4−ジ−s−ブチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,6−ジ−s−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、3−メチル−5−イソプロピルフェノール、3−メチル−6−イソプロピルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、3−メチル−6−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−エチルフェノール等のフェノール性水酸基を有する化合物;カテコール、レゾルシン、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF等の分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物;などが挙げられる。
【0088】
本発明の絶縁性微粒子は、コアシェル構造を構築するための任意の適切な方法で製造し得る。例えば、水性媒体中でコア層となる粒子が分散された状態で、アミノ化合物とホルムアルデヒドを反応(付加縮合反応)させることによりアミノ樹脂からなるシェル層を形成する。通常、この反応は加熱下(50〜100℃)で行い、架橋度を高めるために、ドデシルベンゼンスルホン酸や硫酸などの酸触媒の存在下で行われる。
【0089】
コア層の製造方法としては、例えば、乳化重合、ミニエマルション重合、ソープフリー乳化重合、マイクロエマルション重合、懸濁重合などの任意の適切な樹脂粒子製造方法を採用し得る。好ましくは、レドックス系開始剤を用いた乳化重合による製造方法を採用し得る。レドックス系開始剤を用いた乳化重合による製造方法を採用すると、粒度分布がシャープであり、粒子径が精密にコントロールされたコア層を製造し得る。
【0090】
シェル層の製造方法としては、例えば、特開2000−256432号公報、特開2002−293854号公報、特開2002−293855号公報、特開2002−293856号公報、特開2002−293857号公報、特開2003−55422号公報、特開2003−82049号公報、特開2003−138023号公報、特開2003−147039号公報、特開2003−171432号公報、特開2003−176330号公報、特開2005−97575号公報、特開2007−186716号公報、特開2008−101040号公報、特開2010−248475号公報などに記載のアミノ樹脂架橋粒子およびその製造方法を適用することが好ましい。具体的には、例えば、上記多官能アミノ化合物とホルムアルデヒドを、コア層となる粒子を分散含有させた水性媒体(好ましくは塩基性の水性媒体)中で反応(付加縮合反応)させて縮合物オリゴマーを生成させ、アミノ化合物とホルムアルデヒドとの縮合物(アミノ樹脂)を含むシェル層を形成させることができ、好ましくは、該縮合物オリゴマーが溶解または分散する水性媒体にドデシルベンゼンスルホン酸や硫酸などの酸触媒を混合して硬化させることによって、架橋されたアミノ樹脂を含むシェル層を形成させることができる。縮合物オリゴマーを生成させる段階、架橋構造のアミノ樹脂とする段階は、いずれも、50〜100℃の温度で加熱された状態で行うことが好ましい。また、シェル層の膜厚が均一なシェル層とするためには、上記のシェル層形成反応は界面活性剤の存在下で行われることが好ましい。
【0091】
また、得られた絶縁性微粒子の後処理方法(固液分離、乾燥、粉砕、分級等)については、特開2010−248475号公報記載の方法が適宜適用できる。
【0092】
≪B.絶縁性微粒子被覆導電性微粒子≫
本発明の絶縁性微粒子被覆導電性微粒子は、導電性微粒子の表面に本発明の絶縁性微粒子が存在してなる。
【0093】
本発明の絶縁性微粒子被覆導電性微粒子は、絶縁性微粒子として本発明の絶縁性微粒子を有しているので、絶縁性微粒子が導電性微粒子の表面と強固な密着性を有し、絶縁性微粒子が導電性微粒子の表面から脱落・脱離し難く、また、該絶縁性微粒子で被覆された絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を異方性導電接着剤組成物中に含有させた場合に、その絶縁性微粒子被覆導電性微粒子の密度を増やして該絶縁性微粒子被覆導電性微粒子同士が隣接しても、該絶縁性微粒子が十分な弾性を有し、塑性変形しないため、優れた導通性と絶縁性を発揮できる。
【0094】
上記導電性微粒子の表面に本発明の絶縁性微粒子を存在させる方法としては、任意の適切な被覆方法を採用し得る。例えば、無電解めっき処理後の導電性微粒子および本発明の絶縁性微粒子を有機溶媒あるいは水性媒体などの液体中に分散させた後にスプレードライを行う方法、有機溶媒あるいは水性媒体などの液体中で導電性微粒子の表面に本発明の絶縁性微粒子を付着させた後に導電性微粒子と本発明の絶縁性微粒子を化学結合させる方法、導電性微粒子の粉体と本発明の絶縁性微粒子の粉体の共存下で高速撹拌機による撹拌やハイブリダイゼーション処理を行う方法、などが挙げられる。
【0095】
本発明の絶縁性微粒子被覆導電性微粒子において、本発明の絶縁性微粒子による導電性微粒子の被覆率は、好ましくは1%〜98%であり、より好ましくは5%〜95%である。本発明の絶縁性微粒子による導電性微粒子の被覆率が1%未満の場合、隣接する絶縁性微粒子被覆導電性微粒子間での絶縁性を確保できないおそれがある。本発明の絶縁性微粒子による導電性微粒子の被覆率が98%を超えると、十分な導通性が得られないおそれがある。
【0096】
本発明の絶縁性微粒子被覆導電性微粒子は、異方性導電材料の構成材料として好適である。上記異方性導電材料とは、さまざまな形態により相対向する基板同士や電極端子同士を電気的に接続するものである。
【0097】
上記異方性導電材料を用いて電極同士を電気的に接続する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、絶縁性のバインダー樹脂中に本発明の絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を分散させて異方性導電接着剤組成物を作製したうえで、この異方性導電接着剤組成物により接続する方法;絶縁性のバインダー樹脂と本発明の絶縁性微粒子被覆導電性微粒子とを別々に使用して接続する方法;等が挙げられる。
【0098】
導電性微粒子の平均粒子径は、好ましくは1.0μm〜5.0μmであり、より好ましくは1.5μm〜3.5μmであり、さらに好ましくは2.0μm〜3.0μmである。絶縁性微粒子被覆導電性微粒子は、異方性導電接着剤組成物に用いる場合が多く、この場合、特に、絶縁性微粒子被覆導電性微粒子の密度を増やして該絶縁性微粒子被覆導電性微粒子同士が隣接しても、優れた導通性と絶縁性を発揮できるようにするために、近年、導電性微粒子の平均粒子径が小さいことが要求されている。
【0099】
上記導電性微粒子は、基材粒子と該基材粒子表面を被覆する導電性金属層を有する。
【0100】
上記基材粒子は、導電性微粒子の基材粒子として用い得るものであれば、任意の適切な基材粒子を採用し得る。このような基材粒子の材料としては、例えば、シリカなどの無機材料;シリコーン樹脂(ポリメチルシルセスキオキサン、フェニルシルセスキオキサン)、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリブタジエンなど)、ビニル重合体樹脂((メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、(メタ)アクリル−スチレン樹脂など)、ポリスルホン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂(メラミン樹脂、メラミン−ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂など)、尿素樹脂などの有機材料;有機無機複合材料;などが挙げられる。これらの中でも、適度な弾性率や回復特性を有する点で、ビニル重合体樹脂((メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、(メタ)アクリル−スチレン樹脂など)、アミノ樹脂(メラミン樹脂、メラミン−ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂など)、有機無機複合材料が好ましい。有機無機複合材料としては、任意の適切な有機無機複合材料を採用し得る。好ましくは、後述する、絶縁性微粒子として用いるアミノ樹脂微粒子の形態3における有機無機複合微粒子の形態a)〜e)と同様の形態のものを採用し得る。有機無機複合材料としては、また、特開2003−183337号公報や特開平8−81561号公報などに記載されているものを好ましく採用し得る。
【0101】
上記基材粒子の平均粒子径は、好ましくは1.0μm〜5.0μmであり、より好ましくは1.5μm〜3.5μmであり、さらに好ましくは2.0μm〜3.0μmである。上記基材粒子の平均粒子径が1.0μm未満の場合、無電解めっきなどで導電性金属層を被覆する際に、粒子が凝集し易くなり、均一な導電性金属層を形成できないおそれがある。上記基材粒子の平均粒子径が5.0μmを超えると、微細化、狭小化する電極間の安定した電気的接続に利用できないおそれがある。
【0102】
平均粒子径の評価方法については後述する。
【0103】
上記導電性金属層を構成する金属としては、任意の適切な金属を採用し得る。このような金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、鉄、鉛、アルミニウム、クロム、パラジウム、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、スズ、コバルト、インジウム、ニッケル−リン、ニッケル−ホウ素などの金属や金属化合物、および、これらの合金などが挙げられる。これらの中でも、導電性に優れ、工業的に安価であり、本発明の効果を十分に発現できる点で、上記導電性微粒子の最表面に、金、パラジウム、銀、銅、錫、およびこれらの合金から選ばれる少なくとも1種を有することが好ましく、金、パラジウム、およびこれらの合金から選ばれる少なくとも1種を有することがより好ましい。これらのような抵抗値の低い金属を適用するほど、絶縁性微粒子が導電性微粒子の表面と強固な密着性を有し、絶縁性微粒子が導電性微粒子の表面から脱落・脱離し難く、また、該絶縁性微粒子で被覆された絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を異方性導電接着剤組成物中に含有させた場合に、その絶縁性微粒子被覆導電性微粒子の密度を増やして該絶縁性微粒子被覆導電性微粒子同士が隣接しても、該絶縁性微粒子が十分な弾性を有し、塑性変形しないため、優れた導通性と絶縁性を発揮できる。
【0104】
上記導電性金属層の厚みは、好ましくは10〜500nm、より好ましくは20〜400nm、さらに好ましくは50〜300nmである。上記導電性金属層の厚みが10nm未満の場合、導電性微粒子として異方性導電接着剤組成物に用いた場合に、安定した電気的接続を維持し難くなるおそれがある。上記導電性金属層の厚みが500nmを超える場合、導電性微粒子としたときの表面の硬度が高くなりすぎ、回復率等の機械的特性を十分に発揮できないおそれがある。
【0105】
上記導電性金属層は、その表面に、実質的な割れや、導電性金属層が形成されていない面が存在しないものであることが好ましい。ここで、「実質的な割れや、導電性金属層が形成されていない面」とは、電子顕微鏡(倍率1000倍)を用いて任意の10000個の導電性微粒子の表面を観察した場合に、導電性金属層の割れ、および、基材粒子表面の露出が、実質的に目視で観察されないことを意味する。
【0106】
上記基材粒子の表面に導電性金属層を被覆する方法は、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、無電解めっき法、置換めっき法などによるめっき方法;金属微粉を単独またはバインダーに混ぜ合わせて得られるペーストを基材粒子にコーティングする方法;真空蒸着、イオンプレーティング、イオンスパッタリングなどの物理的蒸着方法;などが挙げられる。これらの中でも、大掛かりな装置を必要とせず、容易に導電性金属層を形成できる点で、無電解めっき法が好ましい。
【0107】
通常、無電解めっき法は、(1)親水化工程(エッチング)、(2)触媒化工程、(3)無電解めっき工程、の3工程からなる。親水化工程(エッチング)は、基材粒子の種類に応じて、省略することができる。
【0108】
上記親水化工程(エッチング)は、基材粒子の表面に微小な凹凸を形成して、導電性金属層の密着を良くするために行われる。上記親水化工程(エッチング)は、例えば、クロム酸、硫酸−クロム酸混液、過マンガン酸溶液等の酸化剤;塩酸、硫酸等の強酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強アルカリ溶液;などを用いて、基材粒子の表面に微小な凹凸を形成する。
【0109】
上記触媒化工程は、基材粒子の表面に無電解めっき工程の起点となり得る触媒層を形成するために行われる。触媒層を形成する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、無電解めっき用として市販されている触媒化試薬などを用いて行うことができる。このような市販されている触媒化試薬としては、例えば、ピンクシューマー(日本カニゼン株式会社製)、レッドシューマー(日本カニゼン株式会社製)などが挙げられる。触媒層を形成する方法としては、具体的には、例えば、塩化パラジウムと塩化スズとからなる溶液に基材粒子を浸漬した後、硫酸、塩酸等の強酸や水酸化ナトリウム等の強アルカリ溶液で活性化してパラジウムを基材粒子表面に析出させる方法;硫酸パラジウム溶液に基材粒子を浸漬した後、ジメチルアミンボラン等の還元剤を含む溶液で活性化してパラジウムを基材粒子表面に析出させる方法;などが挙げられる。
【0110】
上記無電解めっき工程においては、好ましくは、基材粒子を水性媒体に十分に分散させ、水性スラリーを調製する。ここで、基材粒子は水性媒体に十分に分散させておくことが好ましい。基材粒子が凝集した状態で導電性金属層が形成すると、未処理面が露出するおそれがある。基材粒子の分散は、任意の適切な分散方法を採用し得る。例えば、通常撹拌、高速撹拌、コロイドミルやホモジナイザーのようなせん断分散装置を用いた分散、などが挙げられる。分散の際に、超音波照射を併用しても良い。また、分散の際に、界面活性剤などの分散剤を用いても良い。
【0111】
次いで、金属塩、還元剤、錯化剤などを含んだ無電解めっき浴に、上記分散処理した基材粒子スラリーを添加し、無電解めっきを行う。
【0112】
上記金属塩としては、例えば、導電性金属層を構成する金属として上述した金属の塩が挙げられる。例えば、ニッケル塩を用いる場合、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル等が挙げられる。無電解めっき浴中における上記金属塩の濃度は、所望の厚みの導電性金属層が形成されるように、基材粒子のサイズ(表面積)に応じて適宜設定すれば良い。
【0113】
上記還元剤としては、次亜燐酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、ヒドラジンなどが挙げられる。
【0114】
上記錯化剤としては、例えば、クエン酸、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、またはそれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩などのカルボン酸塩、グリシンなどのアミノ酸、エチレンジアミン、アルキルアミンなどのアミン酸、アンモニウム化合物、EDTA、ピロリン酸(塩)などが挙げられる。上記錯化剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0115】
上記無電解めっき法における無電解めっき浴のpHは、好ましくは4〜14である。
【0116】
無電解めっき法においては、基材粒子のスラリーを添加すると、速やかに反応が始まり、水素ガスの発生を伴う。無電解めっき法における、無電解めっき工程の終了は、その水素ガスの発生が完全に認められなくなった時点をもって終了とする。反応終了後、反応系内から導電性微粒子を取り出し、必要に応じて洗浄、乾燥を行う。
【0117】
上記無電解めっき工程は、複数回繰り返しても良い。このようにすることで、基材粒子に複層の導電性金属層を被覆することができる。例えば、基材粒子にニッケルめっきを施してニッケル被覆粒子を得た後に、無電解金めっき浴に該ニッケル被覆粒子を投入して金めっきを施すことにより、最外層に金の被覆層を有する導電性微粒子が得られる。
【0118】
≪C.異方性導電接着剤組成物≫
本発明の異方性導電接着剤組成物は、本発明の絶縁性微粒子被覆導電性微粒子がバインダー樹脂中に分散してなる。
【0119】
上記バインダー樹脂としては、任意の適切なバインダー樹脂を採用し得る。例えば、アクリレート樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の熱可塑性樹脂;グリシジル基を有するモノマーやオリゴマー及びイソシアネート等の硬化剤との反応により得られる硬化性樹脂組成物等の光や熱による硬化性樹脂組成物;等が挙げられる。
【0120】
上記異方性導電接着剤組成物としては、任意の適切な用途に適用し得る。例えば、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電接着剤、液晶表示素子(LCD)のシール剤に含有される導電性スペーサ等が挙げられる。
【0121】
上記異方性導電ペーストは、例えば、異方性導電接着剤組成物をペースト状にすることにより得られる。得られた異方性導電ペーストは、例えば、適当なディスペンサーに入れられ、接続すべき電極上に所望の厚さに塗工され、塗工された異方性導電ペースト上に対向電極を重ね合わせ、加熱するとともに加圧して樹脂を硬化させることにより、電極間の接続に使用される。
【0122】
上記異方性導電インクは、例えば、異方性導電接着剤組成物に溶媒を加えて印刷に適した粘度にすることにより得られる。得られた異方性導電インクは、例えば、接着すべき電極上にスクリーン印刷し、その溶媒を蒸発させた後、印刷された異方性導電インクの上に対向電極を重ね合わせ、加熱圧縮することにより電極間の接続に使用される。
【0123】
≪D.異方性導電成形体≫
本発明の異方性導電成形体は、本発明の異方性導電接着剤組成物から得られる。本発明の異方性導電成形体の具体例としては、例えば、異方性導電膜、異方性導電フィルム、異方性導電シートなどが挙げられる。
【0124】
本発明の異方性導電成形体は、例えば、本発明の異方性導電接着剤組成物に溶媒を加えて溶液状にし、この溶液を離型フィルム上に流し込んだ後、溶媒を蒸発させて異方性導電接着剤組成物を被膜状にすることにより得られる。
【0125】
本発明の異方性導電成形体は、例えば、接着すべき電極上に配置され、配置された異方性導電成形体上に対向電極を重ね合わせ、加熱圧縮することにより電極間の接続に使用される。
【0126】
上記異方性導電成形体における膜厚、塗工膜厚及び印刷膜厚は、含有する絶縁性微粒子被覆導電性微粒子の平均粒子径と接続すべき電極の仕様とから計算し、接続すべき電極間に絶縁性微粒子被覆導電性微粒子が挟持され、接続すべき電極が形成された接合基板同士の空隙がバインダー樹脂層により充分に満たされるよう設定することが好ましい。
【0127】
本発明の絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を用いた異方性導電成形体は、相対向する電極基板間の電気的な接続を確保することができると同時に隣接する電極間でのショートを防ぐことができる。また、経時安定性にも優れるので、長期間の使用においても導電性の低下を来すことなく、電極基板間の電気的な接続を堅持し信頼性の向上を図ることができる。
【実施例】
【0128】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と記すことがある。また、「重量%」を「wt%」と記すことがある。また、本明細書において、「重量」とあるのは、「質量」と読み替えても良い。
【0129】
<絶縁性微粒子、コア部の体積平均粒子径、変動係数(CV)>
動的光散乱粒度分布測定装置(ピーエスエスジャパン社製、「NICOMP380」)により、絶縁性微粒子およびコア部(コア粒子)の体積平均粒子径、変動係数(CV)を測定した。
【0130】
<シェル部の厚み>
動的光散乱粒度分布測定装置(ピーエスエスジャパン社製、「NICOMP380」)により測定した絶縁性微粒子およびコア部(コア粒子)の体積平均粒子径の値をもとに、下記式に従ってシェル部の厚み(d)を算出した。
シェル部の厚み=(絶縁性微粒子の平均粒子径−コア部(コア粒子)の平均粒子径)/2
【0131】
<基材粒子>
粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、「コールターマルチサイザーIII型」)により30000個の粒子の粒子径を測定し、個数平均粒子径、粒子径の標準偏差を求めるとともに、下記式に従って粒子径のCV値(変動係数)を算出した。
基材粒子の変動係数(%)=100×(粒子径の標準偏差/個数平均粒子径)
【0132】
<導電性微粒子>
フロー式粒子像解析装置(シスメックス社製、「FPIA(登録商標)−3000」)を用いて、導電性微粒子3000個の粒子径(μm)を測定し、個数平均粒子径を求めた。
【0133】
<絶縁性微粒子の被覆状態の評価>
SEMを用いて、絶縁性微粒子の被覆状態の評価を下記の基準に従って行った。
(A):異方性導電接着剤組成物製造前の絶縁性微粒子被覆導電性微粒子における絶縁性微粒子の被覆率(%)
(B):異方性導電接着剤組成物をトルエンに希釈した後、30分間超音波分散処理を行い、次いで濾過を行って取り出した絶縁性微粒子被覆導電性微粒子における絶縁性微粒子の被覆率(%)
被覆率低下度(%)=100×((A)−(B))/(A)
被覆率低下度が10%未満:○
被覆率低下度が10%以上:×
【0134】
<導通性の評価>
異方性導電成形体の電極間の抵抗値を4端子法により測定した。
抵抗値が10Ω未満:○
抵抗値が10Ω以上:×
【0135】
<絶縁性の評価>
絶縁性微粒子被覆導電性微粒子をバインダー樹脂としてのストラクトボンドXN−5A(三井化学社製)に50000個/mmになるように分散し、30μmピッチの対向した櫛形パターンフィルム間に塗布し圧着した後、パターン間の抵抗を測定し、以下の基準により評価した。
抵抗値が100MΩ以上:○
抵抗値が100MΩ未満:×
【0136】
〔実施例1〕:絶縁性微粒子(1)
(コア粒子の作製)
攪拌機、温度計、および冷却機を備えたステンレス製の反応釜に、脱イオン水800部およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(有効成分60重量%;以下「DBSNa」と称する)2.3部を加え、内温を75℃まで昇温し、同温度に保った。
他方、上記反応釜とは異なる容器に、メタクリル酸メチル(以下「MMA」と称する)140部とジビニルベンゼン(有効成分81重量%;以下「DVB」と称する)60部とを混合して、単量体組成物200部を調製した。
上記反応釜内を窒素ガスで置換した後、上記単量体組成物20部(単量体組成物全量の10重量%)、0.4重量%過酸化水素水50部、および0.4重量%L−アスコルビン酸水溶液50部を上記反応釜内に添加して、初期重合反応を行った。
次いで、上記単量体組成物の残部(単量体組成物全量の90重量%)180部、0.4重量%過酸化水素水450部、および0.4重量%L−アスコルビン酸水溶液450部を、各々異なる投入口より反応釜へ6時間かけて均一に滴下した。その後、内温を90℃まで昇温し、同温度で6時間保持して熟成を行い、ビニル重合体コア粒子(1)が分散したビニル重合体コア粒子分散液(1)を得た。この分散液の一部を抜き取り、分散液の仕込み総重量を200部とした。
なお、分散中のビニル重合体コア粒子(1)の平均粒子径および変動係数を測定したところ、体積平均粒子径は72nm、変動係数は11%であった。
(シェル層の形成による絶縁性微粒子の製造)
ベンゾグアナミン(以下「BG」と称する)100部、37重量%ホルマリン130部、65重量%DBSNa12部、ドデシルベンゼンスルホン酸(以下「DBS」と称する)10部、イオン交換水1300部を均一に分散混合し、BG分散液を得た。
上記の90℃に保持されたビニル重合体コア粒子分散液(1)200部中に上記のBG分散液を8時間かけて滴下した。滴下後、さらに90℃で4時間保持し、その後30℃まで冷却して、ビニル重合体コア粒子(1)の表面がBGとホルムアルデヒドとの縮合物により被覆された絶縁性微粒子(1)を含有する分散液を得た。この分散液中の絶縁性微粒子(1)の平均粒子径および変動係数を測定したところ、体積平均粒子径は146nm、変動係数は8%であった。
上記絶縁性微粒子(1)を含有する分散液を遠心分離機により固液分離を行い、上澄みを廃棄し、得られた濾過ケーキをメタノールに希釈して、再分散を行った。その再分散したメタノールスラリーを遠心分離により固液分離し、上澄み液を廃棄して得られた濾過ケーキを190℃で5時間真空乾燥を行った後、ジェットミル粉砕機(粉砕圧:0.7MPa)による粉砕と気流分級を行い、絶縁性微粒子(1)を得た。
上記ビニル重合体コア粒子(1)の体積平均粒子径は72nmであり、絶縁性微粒子(1)の体積平均粒子径は146nmであるので、絶縁性微粒子(1)においてd/D=0.51であった。
結果を表1に示す。
【0137】
〔実施例2〕:絶縁性微粒子(2)
(コア粒子の作製)
DBSNaの量を1.5部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、ビニル重合体コア粒子(2)が分散したビニル重合体コア粒子分散液(2)を得た。この分散液中のビニル重合体コア粒子(2)の平均粒子径および変動係数を測定したところ、体積平均粒子径は110nm、変動係数は12%であった。
(シェル層の形成による絶縁性微粒子の製造)
BGの量を18部、37重量%ホルマリンの量を18.2部、65重量%DBSNaの量を1.7部、DBSの量を1.4 部、イオン交換水の量を180部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、絶縁性微粒子(2)を含有する分散液を得た。この分散液中の絶縁性微粒子(2)の平均粒子径および変動係数を測定したところ、体積平均粒子径は136nm、変動係数は5%であった。次いで、固液分離、乾燥、粉砕、分級を実施例1と同様の手法により行い、絶縁性微粒子(2)を得た。
上記ビニル重合体コア粒子(2)の体積平均粒子径は110nmであり、絶縁性微粒子(2)の体積平均粒子径は136nmであるので、絶縁性微粒子(2)においてd/D=0.12であった。
結果を表1に示す。
【0138】
〔実施例3〕:絶縁性微粒子(3)
(コア粒子の作製)
DBSNaの量を3部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、ビニル重合体コア粒子(3)が分散したビニル重合体コア粒子分散液(3)を得た。この分散液中のビニル重合体コア粒子(3)の平均粒子径および変動係数を測定したところ、体積平均粒子径は50nm、変動係数は13%であった。
(シェル層の形成による絶縁性微粒子の製造)
BGの量を1500部、37重量%ホルマリンの量を1950部、65重量%DBSNaの量を185部、DBSの量を220部、イオン交換水の量を19500部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、絶縁性微粒子(3)を含有する分散液を得た。この分散液中の絶縁性微粒子(3)の平均粒子径および変動係数を測定したところ、体積平均粒子径は240nm、変動係数は6%であった。次いで、固液分離、乾燥、粉砕、分級を実施例1と同様の手法により行い、絶縁性微粒子(3)を得た。
上記ビニル重合体コア粒子(3)の体積平均粒子径は50nmであり、絶縁性微粒子(3)の体積平均粒子径は240nmであるので、絶縁性微粒子(3)においてd/D=1.90であった。
結果を表1に示す。
【0139】
〔比較例1〕:絶縁性微粒子(C1)
(コア粒子の作製)
実施例1と同様に行い、ビニル重合体コア粒子(C1)が分散したビニル重合体コア粒子分散液(C1)を得た。この分散液中のビニル重合体コア粒子(C1)の平均粒子径および変動係数を測定したところ、体積平均粒子径は112nm、変動係数は12%であった。
(シェル層の形成による絶縁性微粒子の製造)
BGの量を8部、37重量%ホルマリンの量を10.4部、65重量%DBSNaの量を1部、DBSの量を1.2 部、イオン交換水の量を105部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、絶縁性微粒子(C1)を含有する分散液を得た。この分散液中の絶縁性微粒子(C1)の平均粒子径および変動係数を測定したところ、体積平均粒子径は132nm、変動係数は5%であった。次いで、固液分離、乾燥、粉砕、分級を実施例1と同様の手法により行い、絶縁性微粒子(C1)を得た。
上記ビニル重合体コア粒子(C1)の体積平均粒子径は112nmであり、絶縁性微粒子(C1)の体積平均粒子径は132nmであるので、絶縁性微粒子(C1)においてd/D=0.09であった。
結果を表1に示す。
【0140】
〔比較例2〕:絶縁性微粒子(C2)
(コア粒子の作製)
実施例3と同様に行い、ビニル重合体コア粒子(C2)が分散したビニル重合体コア粒子分散液(C2)を得た。この分散液中のビニル重合体コア粒子(C2)の平均粒子径および変動係数を測定したところ、体積平均粒子径は50nm、変動係数は16%であった。
(シェル層の形成による絶縁性微粒子の製造)
BGの量を1900部、37重量%ホルマリンの量を2470部、65重量%DBSNaの量を345部、DBSの量を280部、イオン交換水の量を25000部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、絶縁性微粒子(C2)を含有する分散液を得た。この分散液中の絶縁性微粒子(C2)の平均粒子径および変動係数を測定したところ、体積平均粒子径は260nm、変動係数は7%であった。次いで、固液分離、乾燥、粉砕、分級を実施例1と同様の手法により行い、絶縁性微粒子(C2)を得た。
上記ビニル重合体コア粒子(C2)の体積平均粒子径は50nmであり、絶縁性微粒子(C2)の体積平均粒子径は260nmであるので、絶縁性微粒子(C2)においてd/D=2.10であった。
結果を表1に示す。
【0141】
〔実施例4〕:絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(1)、異方性導電接着剤組成物(1)、異方性導電成形体(1)
(導電性微粒子(1)の合成)
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、界面活性剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、ハイテノール(登録商標)NF−08)2部をイオン交換水で溶解した水溶液150部を仕込んだ。そこへ、予め準備しておいた、スチレン50部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート50部、重合開始剤として2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、V−65)2部を仕込み、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)により7000rpmで5分間乳化分散させて、懸濁液を調製した。この懸濁液に、イオン交換水250部を加え、窒素雰囲気下で65℃に昇温し、65℃で2時間保持し、ラジカル重合を行った。ラジカル重合の後、生成した乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、次いで、メタノールで洗浄した。その後、分級を行い、窒素雰囲気下で、40℃で2時間真空乾燥を行い、重合体微粒子(1)を得た。重合体微粒子(1)の粒子径をコールターマルチサイザーIII型(ベックマンコールター社製)により測定したところ、平均粒子径は2.7μm、変動係数(CV)は3.7%であった。
ビーカーに「ピンクシューマー」(日本カニゼン株式会社製)50部とイオン交換水400部を入れ、混合して混合液を得た。別途、イオン交換水50部に重合体微粒子(1)10部を加えて超音波分散を行ったものを準備し、上記混合液に投入し、30℃で10分間撹拌して懸濁液とし、この懸濁液を固液分離し、得られたケーキを、イオン交換水、メタノールの順で洗浄した後、窒素雰囲気下100℃で2時間真空乾燥した。
次に、「レッドシューマー」(日本カニゼン株式会社製)100部とイオン交換水350部を入れ、混合して混合液を得た。別途、イオン交換水50部に上記で得られた乾燥粒子10部を加えて超音波分散を行ったものを準備し、上記混合液に投入し、30℃で10分間撹拌して懸濁液とした後、この懸濁液を固液分離し、得られたケーキを、イオン交換水、メタノールの順で洗浄した後、窒素雰囲気下100℃で2時間真空乾燥した。
以上の操作により、重合体微粒子(1)の表面にパラジウムが吸着されたパラジウム活性重合体微粒子(1)を得た。
パラジウム活性重合体微粒子(1)をイオン交換水500部に添加し、超音波分散処理を30分間行い、粒子を十分に分散させて微粒子懸濁液を得た。この微粒子懸濁液を50℃で撹拌しながら、硫酸ニッケル6水和物50g/L、次亜リン酸ナトリウム1水和物20g/L、ジメチルアミンボラン2.5g/L、クエン酸50g/Lからなる無電解めっき液(pH=7.5)を徐々に微粒子懸濁液に添加して、無電解ニッケルめっきを行った後、置換金メッキを行い、得られた微粒子を濾別し、イオン交換水で洗浄した後、さらにメタノールで洗浄し、60℃で12時間真空乾燥を行い、導電性微粒子(1)を得た。導電性微粒子(1)の平均粒子径は2.8μmであった。
(絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(1)の製造)
実施例1で得られた絶縁性微粒子(1)の濃度が5.0重量%になるように、メタノール中に超音波分散させた。得られた絶縁性微粒子(1)のメタノール分散液100部に、上記導電性微粒子(1)50部を加え、超音波を用いて均一に分散させた後、エバポレーターでメタノールを留去し、導電性微粒子(1)の表面を絶縁性微粒子(1)で被覆して、絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(1)を得た。
結果を表2に示した。
(異方性導電接着剤組成物(1)の製造)
バインダー樹脂としてのストラクトボンドXN−5A(三井化学社製)100部に上記絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(1)を2部加え、遊星式攪拌装置を用いてバインダー樹脂中に絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(1)を均一に分散させて、異方性導電接着剤組成物(1)を得た。
得られた異方性導電接着剤組成物(1)をトルエンに希釈した後、30分間超音波分散処理を行い、次いで濾過を行って、絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を取り出し、SEMにて絶縁性微粒子の被覆状態を評価した。
結果を表2に示した。
(異方性導電成形体(1)の製造)
得られた異方性導電接着剤組成物(1)をITOガラス基板2枚の間にパターンが直交および対向するようにして挟み、160℃で20分、加重6kg/cmで加熱および加圧し、異方性導電成形体(1)を得た。
(導通性、絶縁性の評価)
得られた絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(1)、異方性導電成形体(1)を用いて、導通性、絶縁性を評価した。
結果を表2に示した。
【0142】
〔実施例5〕:絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(2)、異方性導電接着剤組成物(2)、異方性導電成形体(2)
(導電性微粒子(2)の合成)
実施例1において置換金めっきの代わりに置換パラジウムめっきを行ったこと以外は実施例1と同様の手法により導電性微粒子(2)を得た。
導電性微粒子(2)の平均粒子径は2.8μmであった。
(絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(2)の製造)
実施例1で得られた絶縁性微粒子(1)の濃度が5.0重量%になるように、メタノール中に超音波分散させた。得られた絶縁性微粒子(1)のメタノール分散液100部に、上記導電性微粒子(2)50部を加え、超音波を用いて均一に分散させた後、エバポレーターでメタノールを留去し、導電性微粒子(2)の表面を絶縁性微粒子(1)で被覆して、絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(2)を得た。
結果を表2に示した。
(異方性導電接着剤組成物(2)の製造)
バインダー樹脂としてのストラクトボンドXN−5A(三井化学社製)100部に上記絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(2)を2部加え、遊星式攪拌装置を用いてバインダー樹脂中に絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(2)を均一に分散させて、異方性導電接着剤組成物(2)を得た。
得られた異方性導電接着剤組成物(2)をトルエンに希釈した後、30分間超音波分散処理を行い、次いで濾過を行って、絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を取り出し、SEMにて絶縁性微粒子の被覆状態を評価した。
結果を表2に示した。
(異方性導電成形体(2)の製造)
得られた異方性導電接着剤組成物(2)をITOガラス基板2枚の間にパターンが直交および対向するようにして挟み、160℃で20分、加重6kg/cmで加熱および加圧し、異方性導電成形体(2)を得た。
(導通性、絶縁性の評価)
得られた絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(2)、異方性導電成形体(2)を用いて、導通性、絶縁性を評価した。
結果を表2に示した。
【0143】
〔実施例6〕:絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(3)、異方性導電接着剤組成物(3)、異方性導電成形体(3)
(絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(3)の製造)
実施例2で得られた絶縁性微粒子(2)の濃度が5.0重量%になるように、メタノール中に超音波分散させた。得られた絶縁性微粒子(2)のメタノール分散液100部に、上記導電性微粒子(1)50部を加え、超音波を用いて均一に分散させた後、エバポレーターでメタノールを留去し、導電性微粒子(1)の表面を絶縁性微粒子(2)で被覆して、絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(3)を得た。
結果を表2に示した。
(異方性導電接着剤組成物(3)の製造)
バインダー樹脂としてのストラクトボンドXN−5A(三井化学社製)100部に上記絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(3)を2部加え、遊星式攪拌装置を用いてバインダー樹脂中に絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(3)を均一に分散させて、異方性導電接着剤組成物(3)を得た。
得られた異方性導電接着剤組成物(3)をトルエンに希釈した後、30分間超音波分散処理を行い、次いで濾過を行って、絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を取り出し、SEMにて絶縁性微粒子の被覆状態を評価した。
結果を表2に示した。
(異方性導電成形体(3)の製造)
得られた異方性導電接着剤組成物(3)をITOガラス基板2枚の間にパターンが直交および対向するようにして挟み、160℃で20分、加重6kg/cmで加熱および加圧し、異方性導電成形体(3)を得た。
(導通性、絶縁性の評価)
得られた絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(3)、異方性導電成形体(3)を用いて、導通性、絶縁性を評価した。
結果を表2に示した。
【0144】
〔実施例7〕:絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(4)、異方性導電接着剤組成物(4)、異方性導電成形体(4)
(絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(4)の製造)
実施例3で得られた絶縁性微粒子(3)の濃度が5.0重量%になるように、メタノール中に超音波分散させた。得られた絶縁性微粒子(3)のメタノール分散液100部に、上記導電性微粒子(1)50部を加え、超音波を用いて均一に分散させた後、エバポレーターでメタノールを留去し、導電性微粒子(1)の表面を絶縁性微粒子(3)で被覆して、絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(4)を得た。
結果を表2に示した。
(異方性導電接着剤組成物(4)の製造)
バインダー樹脂としてのストラクトボンドXN−5A(三井化学社製)100部に上記絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(4)を2部加え、遊星式攪拌装置を用いてバインダー樹脂中に絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(4)を均一に分散させて、異方性導電接着剤組成物(4)を得た。
得られた異方性導電接着剤組成物(4)をトルエンに希釈した後、30分間超音波分散処理を行い、次いで濾過を行って、絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を取り出し、SEMにて絶縁性微粒子の被覆状態を評価した。
結果を表2に示した。
(異方性導電成形体(4)の製造)
得られた異方性導電接着剤組成物(4)をITOガラス基板2枚の間にパターンが直交および対向するようにして挟み、160℃で20分、加重6kg/cmで加熱および加圧し、異方性導電成形体(4)を得た。
(導通性、絶縁性の評価)
得られた絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(4)、異方性導電成形体(4)を用いて、導通性、絶縁性を評価した。
結果を表2に示した。
【0145】
〔比較例3〕:絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(C1)、異方性導電接着剤組成物(C1)、異方性導電成形体(C1)
(絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(C1)の製造)
比較例1で得られた絶縁性微粒子(C1)の濃度が5.0重量%になるように、メタノール中に超音波分散させた。得られた絶縁性微粒子(C1)のメタノール分散液100部に、上記導電性微粒子(1)50部を加え、超音波を用いて均一に分散させた後、エバポレーターでメタノールを留去し、導電性微粒子(1)の表面を絶縁性微粒子(C1)で被覆して、絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(C1)を得た。
結果を表2に示した。
(異方性導電接着剤組成物(C1)の製造)
バインダー樹脂としてのストラクトボンドXN−5A(三井化学社製)100部に上記絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(C1)を2部加え、遊星式攪拌装置を用いてバインダー樹脂中に絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(C1)を均一に分散させて、異方性導電接着剤組成物(C1)を得た。
得られた異方性導電接着剤組成物(C1)をトルエンに希釈した後、30分間超音波分散処理を行い、次いで濾過を行って、絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を取り出し、SEMにて絶縁性微粒子の被覆状態を評価した。
結果を表2に示した。
(異方性導電成形体(C1)の製造)
得られた異方性導電接着剤組成物(C1)をITOガラス基板2枚の間にパターンが直交および対向するようにして挟み、160℃で20分、加重6kg/cmで加熱および加圧し、異方性導電成形体(C1)を得た。
(導通性、絶縁性の評価)
得られた絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(C1)、異方性導電成形体(C1)を用いて、導通性、絶縁性を評価した。
結果を表2に示した。
【0146】
〔比較例4〕:絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(C2)、異方性導電接着剤組成物(C2)、異方性導電成形体(C2)
(絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(C2)の製造)
比較例2で得られた絶縁性微粒子(C2)の濃度が5.0重量%になるように、メタノール中に超音波分散させた。得られた絶縁性微粒子(C2)のメタノール分散液100部に、上記導電性微粒子(1)50部を加え、超音波を用いて均一に分散させた後、エバポレーターでメタノールを留去し、導電性微粒子(1)の表面を絶縁性微粒子(C2)で被覆して、絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(C2)を得た。
結果を表2に示した。
(異方性導電接着剤組成物(C2)の製造)
バインダー樹脂としてのストラクトボンドXN−5A(三井化学社製)100部に上記絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(C2)を2部加え、遊星式攪拌装置を用いてバインダー樹脂中に絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(C2)を均一に分散させて、異方性導電接着剤組成物(C2)を得た。
得られた異方性導電接着剤組成物(C2)をトルエンに希釈した後、30分間超音波分散処理を行い、次いで濾過を行って、絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を取り出し、SEMにて絶縁性微粒子の被覆状態を評価した。
結果を表2に示した。
(異方性導電成形体(C2)の製造)
得られた異方性導電接着剤組成物(C2)をITOガラス基板2枚の間にパターンが直交および対向するようにして挟み、160℃で20分、加重6kg/cmで加熱および加圧し、異方性導電成形体(C2)を得た。
(導通性、絶縁性の評価)
得られた絶縁性微粒子被覆導電性微粒子(C2)、異方性導電成形体(C2)を用いて、導通性、絶縁性を評価した。
結果を表2に示した。
【0147】
【表1】

【0148】
【表2】

【0149】
表1、2に示すように、0.10<d/D<2.0を満たす本発明の絶縁性微粒子(実施例1−3)を用いた実施例4−7においては、絶縁性微粒子の被覆率低下度に基づく被覆状態の評価が○(被覆率低下度が10%未満)となっており、絶縁性微粒子が導電性微粒子の表面と強固な密着性を有し、絶縁性微粒子が導電性微粒子の表面から脱落・脱離し難いことが判る。また、実施例4−7においては、導通性と絶縁性の評価がいずれも○となっており、絶縁性微粒子で被覆された絶縁性微粒子被覆導電性微粒子を異方性導電接着剤組成物中に含有させた場合に、本実施例で採用した50000個/mmという高密度の絶縁性微粒子被覆導電性微粒子が存在する異方性導電材料において該絶縁性微粒子被覆導電性微粒子同士が隣接しても、該絶縁性微粒子が十分な弾性を有し、塑性変形しないため、優れた導通性と絶縁性を発揮できることが判る。
【0150】
一方、d/Dが0.10以下である絶縁性微粒子(比較例1:d/D=0.09)を用いた比較例3においては、絶縁性微粒子の被覆率低下度に基づく被覆状態の評価が×(被覆率低下度が10%以上)となっており、絶縁性微粒子が導電性微粒子の表面と十分な密着性を有さず、絶縁性微粒子が導電性微粒子の表面から脱落・脱離し易くなっていることが判る。また、比較例3においては、絶縁性の評価が×となっており、優れた絶縁性が発揮できないことが判る。
【0151】
また、d/Dが2.0以上である絶縁性微粒子(比較例2:d/D=2.10)を用いた比較例4においては、絶縁性の評価が×となっており、優れた絶縁性が発揮できないことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明の絶縁性微粒子は、絶縁性微粒子被覆導電性微粒子に用いることで、それを電気接続用異方導電材料として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア層の外周にシェル層を備えるコアシェル構造を有する、導電性微粒子被覆用の絶縁性微粒子であって、
該コア層がビニル重合体を含み、該シェル層がアミノ樹脂を含み、
該コア部の直径をDnm、該シェル部の厚みをdnmとしたときに、0.10<d/D<2.0である、
導電性微粒子被覆用の絶縁性微粒子。
【請求項2】
導電性微粒子の表面に請求項1に記載の絶縁性微粒子が存在してなる、絶縁性微粒子被覆導電性微粒子。
【請求項3】
前記導電性微粒子の最表面に、金、パラジウム、銀、銅、錫、およびこれらの合金から選ばれる少なくとも1種を有する、請求項2に記載の絶縁性微粒子被覆導電性微粒子。
【請求項4】
前記導電性微粒子の平均粒子径が1.0μm〜5.0μmである、請求項2または3に記載の絶縁性微粒子被覆導電性微粒子。
【請求項5】
請求項2から4までのいずれかに記載の絶縁性微粒子被覆導電性微粒子がバインダー樹脂中に分散してなる、異方性導電接着剤組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の異方性導電接着剤組成物から得られる、異方性導電成形体。



【公開番号】特開2013−62069(P2013−62069A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198432(P2011−198432)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】