説明

絶縁性樹脂組成物、それから形成された硬化膜、および硬化膜を有するタッチパネル用素子

【課題】高透明性、高耐薬品性と、透明電極に対する高い密着性を併せ持つタッチパネル用絶縁性組成物を提供する。
【解決手段】(a)下記一般式(1)で表される構造単位を主成分とし重量平均分子量が1000〜30000であることを特徴とするポリマー、(b)溶剤、(c) メチロール系化合物を含有することを特徴とする絶縁性樹脂組成物。
【化1】


(R及びRは、それぞれ独立にハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、またはフェニル基を表し、R及びRが複数ある場合、同一でも異なっていてもよい。nおよびmは、それぞれ独立に0〜4の整数を表す。Xは2価の芳香族基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルの透明電極間の絶縁膜や保護膜、液晶表示素子や有機EL表示素子などの薄膜トランジスタ(TFT)基板用平坦化膜、半導体素子の層間絶縁膜、固体撮像素子用平坦化膜やマイクロレンズアレイパターン、あるいは光導波路のコアやクラッド材を形成するための絶縁性樹脂組成物、それから形成された硬化膜、およびその硬化膜を有する素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイの前面に配置され、ディスプレイ一体型の入力装置としてのタッチパネルは、その使い勝手のよさから広く利用されている。このタッチパネルの方式には各種あり、光学式、超音波方式、抵抗膜方式、静電容量結合方式等が知られている(特許文献1、2参照)。タッチパネルの透明電極間には絶縁膜が介在し、この絶縁膜の透過率が低いと、タッチパネルの透明性が低下し、表示精度が損なわれる(特許文献3参照)。そのためこの絶縁膜には透明性が高く、基板の高温処理によっても透明性が低下することのない絶縁性組成物が求められている。
【0003】
一方、高耐熱性、高耐薬品性、低誘電性といった特性を有する他の材料として、芳香族系ポリマーにトリアゼン化合物を組み合わせた材料が知られている(特許文献4参照)。しかしながら、タッチパネルの透明電極間の絶縁膜には、前記の高耐熱性、高耐薬品性に加えて、透明電極に対する高い接着性や高透明性も同時に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−48625号公報
【特許文献2】実開2006−11523号公報
【特許文献3】実開平5−43124号公報
【特許文献4】特開2001−55513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、高透明性、高耐薬品性と、透明電極に対する高い密着性を併せ持つタッチパネル用絶縁性組成物を提供する。また、本発明の別の目的は、上記の絶縁性組成物から形成されたタッチパネルの透明電極間の絶縁膜や保護膜、TFT基板用平坦化膜、層間絶縁膜、コアやクラッド材などの硬化膜、およびその硬化膜を有する表示素子、半導体素子、固体撮像素子、光導波路などの素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。すなわち、(a)下記一般式(1)で表される構造単位を主成分とし重量平均分子量が1000〜30000であることを特徴とするポリマー、(b)溶剤、(c)メチロール系架橋剤を含有することを特徴とするタッチパネル用絶縁性樹脂組成物。
【0007】
【化1】

【0008】
(R及びRは、それぞれ独立にハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、またはフェニル基を表し、R及びRが複数ある場合、同一でも異なっていてもよい。nおよびmは、それぞれ独立に0〜4の整数を表す。Xは2価の芳香族基を表す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の絶縁性樹脂組成物は高透明性、高耐薬品性の特性を有し、かつ透明電極に対する高い密着性を有する。得られた硬化膜は、タッチパネル用絶縁膜として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】タッチパネル素子の一例を示す概略断面図。
【図2】タッチパネル素子の一例を示す概略上面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のタッチパネル用絶縁性樹脂組成物は、(a)下記一般式(1)で表される構造単位を主成分とし重量平均分子量が1000〜30000であることを特徴とするポリマー、(b)溶剤、(c)メチロール系架橋剤を含有することを特徴とするタッチパネル用絶縁性樹脂組成物。
【0012】
【化2】

【0013】
(R及びRは、それぞれ独立にハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、またはフェニル基を表し、R及びRが複数ある場合、同一でも異なっていてもよい。nおよびmは、それぞれ独立に0〜4の整数を表す。Xは2価の芳香族基を表す。)
本発明のタッチパネル用絶縁性樹脂組成物は、(a)下記一般式(1)で表される構造単位を主成分とし重量平均分子量が1000〜30000であることを特徴とするポリマーを含有する。これにより、特にキュア後の硬化膜における透明電極に対する密着性が向上し、また高透過率、高耐薬品性の硬化膜を提供することができる。
【0014】
【化3】

【0015】
(R及びRは、それぞれ独立にハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、またはフェニル基を表し、R及びRが複数ある場合、同一でも異なっていてもよい。nおよびmは、それぞれ独立に0〜4の整数を表す。Xは2価の芳香族基を表す。)
一般式(1)で表されるポリマーにおいて、Xはフェノール性水酸基を2個以上有するフェノール類に由来する2価の基を表し、このフェノール類の具体例としては、4,4'-ビフェノール、4,4'-ジフェニルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2-ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、 9,9’-ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、α,α’-ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、9,9’−ビス(4−フェニル)フルオレン、α,α,α’-トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン、4,4,4’−トリヒドロキシトリフェニルメタン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、パラクレゾールノボラック3PCなどが挙げられる。
【0016】
一般式(1)で表されるポリマーは、4−、4’−ビス(クロロフェニル)スルホンなどのジクロロ化合物と2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物から、公知の方法で重合することができる。硬化膜とITOなどの透明電極との密着性の観点から、末端はフェノール性水酸基を有することが好ましい。例えば、前記ジクロロ化合物と2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物のモルバランスを崩して、フェノール性水酸基のモル比率を多くすることで、ポリマー末端にフェノール性水酸基を有するポリマーを合成することができる。また、アルカリ金属化合物(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)および2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物を用いて、ポリエーテルスルホンを解重合することでも、ポリマー末端にフェノール性水酸基を有するポリマーを合成することができる。好ましくは、ポリエーテルスルホン100重量部に対して、2つ以上フェノール性水酸基を有する化合物を4〜60重量部とすることが好ましく、さらに好ましくは12〜50重量部である。
ポリマー末端にフェノール性水酸基を有するポリマーは、フェノール性水酸基と透明電極との相互作用のために、硬化膜における透明電極に対する密着性が高くなる。
一般式(1)で表されるポリマーの構造単位の配列は特に限定されず、ランダム共重合体、交互共重合体またはブロック共重合体であってもよい。
【0017】
一般式(1)で表されるポリマーの重量平均分子量(Mw)は1000〜30000であることが好ましい。Mwが1000以上だと溶解性が良好で、塗布したときに所望の膜厚に調整しやすく、30000以下だと該ポリマー溶液組成物の粘度が抑えられることで固化せず、保存安定性および濾過性が向上することから好ましい。さらにMwは3000以上10000以下の範囲がより下地基板との密着性がより良好となるため好ましい。上記の重合溶媒としては特に制限は無いが、通常は後述の(b)溶剤と同様のものが用いられる。
【0018】
本発明のタッチパネル用絶縁性樹脂組成物は、(b)溶剤を含有する。使用する溶剤に特に制限はないが、単一溶剤系でも2種以上の溶剤を組み合わせるでもよい。用いられる溶剤としては例えば、N−メチルピロリドン、N−シクロヘキシルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系極性溶剤、スルホラン、ジメチルスルホンなどのスルホン系極性溶剤、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系極性溶剤、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶剤、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン系溶剤などが挙げられる。ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトンなどがポリマーの溶解性が高く好ましい。
【0019】
また、本発明のタッチパネル用絶縁性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、その他の溶剤を含有してもよい。その他の溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−1−ブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシ−1−ブチルアセテート、アセト酢酸エチル、炭酸プロピレンなどのエステル系溶剤、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンなどのケトン系溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル系溶剤、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200などの石油系溶剤、トルエン、キシレン、安息香酸エチル、ナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンなどの芳香族系溶剤などが挙げられる。
【0020】
本発明のタッチパネル用絶縁性樹脂組成物は、(c)メチロール系架橋剤を含有する。架橋剤は熱硬化時にポリマーを架橋し、樹脂中に取り込まれる化合物であり、含有することによって硬化膜の架橋度が高くなる。これによって、硬化膜の耐薬品性が向上する。架橋剤に特に制限は無いが、好ましくは一般式(2)で表されるメチロール基、エポキシ構造、オキセタン構造の群から選択される構造を2個以上有する化合物が挙げられる。上記構造の組み合わせは特に限定されないが、選択される構造は同じものであることが好ましい。
【0021】
【化4】

【0022】
一般式(2)で表される基を2個以上有する化合物において、Rは水素、炭素数1〜10のアルキル基のいずれかを表す。なお、化合物中の複数のRはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−デシル基が挙げられる。
【0023】
一般式(2)で表される基を2個以上有する化合物の具体例としては、以下のようなメラミン誘導体や尿素誘導体(商品名、三和ケミカル(株)製)が挙げられる。
【0024】
【化5】

【0025】
エポキシ構造を2個以上有する化合物の具体例としては、エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト80MF、エポライト4000、エポライト3002(以上商品名、共栄社化学工業(株)製)、デナコールEX−212L、デナコールEX−214L、デナコールEX−216L、デナコールEX−850L、デナコールEX−321L(以上商品名、ナガセケムテックス(株)製)、GAN、GOT、EPPN502H、NC3000、NC6000(以上商品名、日本化薬(株)製)、エピコート828、エピコート1002、エピコート1750、エピコート1007、YX8100−BH30、E1256、E4250、E4275(以上商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)、エピクロンEXA−9583、エピクロンHP4032、エピクロンN695、エピクロンHP7200(以上商品名、大日本インキ化学工業(株)製)、テピックS、テピックG、テピックP(以上商品名、日産化学工業(株)製)、エポトートYH−434L(商品名、東都化成(株)製)などが挙げられる。
【0026】
オキセタン構造を2個以上有する化合物の具体例としては、OXT−121、OXT−221、OX−SQ−H、OXT−191、PNOX−1009、RSOX(以上商品名、東亜合成(株)製)、エタナコールOXBP、エタナコールOXTP(以上商品名、宇部興産(株)製)などが挙げられる。
【0027】
なお、上記の架橋剤は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
架橋剤の添加量は特に制限されないが、好ましくは樹脂100質量部に対して0.1〜200質量部の範囲である。架橋剤の添加量が0.1質量部より少ないと、樹脂の架橋が不十分で効果が少ない。一方、架橋剤の添加量が200質量部より多いと、硬化膜の無色透明性が低下したり、組成物の貯蔵安定性が低下する。
【0028】
さらに、本発明の絶縁性樹脂組成物は必要に応じて、シランカップリング剤、架橋剤、架橋促進剤、増感剤、熱ラジカル発生剤、溶解促進剤、溶解抑止剤、界面活性剤、安定剤、消泡剤などの添加剤を含有することもできる。
【0029】
シランカップリング剤の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリメトキシシラン、〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸、N−t−ブチル−3−(3−トリメトキシシリルプロピル)コハク酸イミドなどが挙げられる。
【0030】
中でも、基板密着性や組成物の保存安定性の点から2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましく使用される。
【0031】
シランカップリング剤の添加量に特に制限は無いが、好ましくはポリマー100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲である。添加量が0.1質量部より少ないと密着性向上の効果が十分ではなく、10質量部より多いと保管中にシランカップリング剤同士が縮合反応し、ゲル化の原因となる。
【0032】
本発明のタッチパネル用絶縁性樹脂組成物は、界面活性剤を含有しても良い。界面活性剤を含有することで、塗布ムラが改善し均一な塗布膜が得られる。フッ素系界面活性剤や、シリコーン系界面活性剤が好ましく用いられる。
【0033】
フッ素系界面活性剤の具体的な例としては、1,1,2,2−テトラフロロオクチル(1,1,2,2−テトラフロロプロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフロロオクチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサエチレングリコール(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、パーフロロドデシルスルホン酸ナトリウム、1,1,2,2,8,8,9,9,10,10−デカフロロドデカン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロデカン、N−[3−(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]−N,N′−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、パーフルオロアルキルスルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル−N−エチルスルホニルグリシン塩、リン酸ビス(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−エチルアミノエチル)、モノパーフルオロアルキルエチルリン酸エステルなどの末端、主鎖および側鎖の少なくとも何れかの部位にフルオロアルキルまたはフルオロアルキレン基を有する化合物からなるフッ素系界面活性剤を挙げることができる。また、市販品としては、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183、同F475(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、エフトップEF301、同303、同352(新秋田化成(株)製)、フロラードFC−430、同FC−431(住友スリーエム(株)製))、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(旭硝子(株)製)、BM−1000、BM−1100(裕商(株)製)、NBX−15、FTX−218、DFX−218((株)ネオス製)などのフッ素系界面活性剤がある。
【0034】
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、SH28PA、SH7PA、SH21PA、SH30PA、ST94PA(いずれも東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)、BYK−333(ビックケミー・ジャパン(株)製)などが挙げられる。
界面活性剤の含有量は、絶縁性樹脂組成物中、0.0001〜1質量%とするのが一般的である。
【0035】
本発明の絶縁性樹脂組成物を用いた硬化膜の形成方法について説明する。本発明の絶縁性樹脂組成物をスピンコーティング法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法、ダイコーティング法、キャップコーティング法、ディッピング等などの公知の方法によって下地基板上に塗布し、ホットプレート、オーブンなどの加熱装置でプリベークする。プリベークは、50〜150℃の範囲で30秒〜30分間行い、プリベーク後の膜厚は、0.1〜15μmとするのが好ましい。プリベーク後、ホットプレート、オーブンなどの加熱装置で150〜450℃の範囲で1時間程度キュアすることで、タッチパネルの透明電極間の絶縁膜や保護膜、表示素子におけるTFT用平坦化膜、半導体素子における層間絶縁膜、あるいは光導波路におけるコアやクラッド材といった硬化膜が形成される。
【0036】
この下地基板には透明電極配線が形成される。この透明電極配線として、酸化スズ・酸化アンチモン系材料(ATO)や酸化インジウム・酸化スズ系材料(ITO)などが知られている。中でもITO(Indium Tin Oxide)膜は、導電性及び透過率が高い膜として最も広く使用されている。
【0037】
本発明の絶縁性樹脂組成物を用いて作製した硬化膜は、波長400nmにおける膜厚2μmあたりの光透過率が90%以上であり、さらに好ましくは92%以上である。光透過率が90%より低いと、液晶表示素子のTFT基板用平坦化膜として用いた場合、バックライトが通過する際に色変化が起こり、白色表示が黄色味を帯びる。
【0038】
前記の波長400nmにおける膜厚2μmあたりの透過率は、以下の方法により求められる。組成物をテンパックスガラス板にスピンコーターを用いて任意の回転数でスピンコートし、ホットプレートを用いて100℃で1〜2分間プリベークする。その後、オーブンを用いて空気中230℃で1時間熱硬化して膜厚2μmの硬化膜を作製する。得られた硬化膜の紫外可視吸収スペクトルを(株)島津製作所製MultiSpec−1500を用いて測定し、波長400nmでの透過率を求める。
【0039】
この硬化膜はタッチパネルの透明電極間の絶縁膜や保護膜、表示素子におけるTFT用平坦化膜、半導体素子における層間絶縁膜、あるいは光導波路におけるコアやクラッド材等に好適に使用される。
【0040】
本発明における素子は、上述のような高耐熱性、高透明性の硬化膜を有する表示素子、半導体素子、あるいは光導波路材を指し、特に、タッチパネルの透明電極間の絶縁膜や保護膜、TFT用平坦化膜として有する液晶、ならびに有機EL表示素子に好適である。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。なお、用いた化合物のうち、略語を使用しているものについて、以下に示す。
GBL:γ−ブチロラクトン
NMP:N−メチルピロリドン。
【0042】
また、ポリマーの重量平均分子量(Mw)は以下の通りで求めた。
(1)重量平均分子量
重量平均分子量はGPC(Waters社製996型PDA検出器、流動層:NMP)にてポリスチレン換算により求めた。
【0043】
合成例1 ポリマー(a)の合成
500ml四口フラスコにPES4800P(住友化学工業(株)製)20g、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン5.38g(21.5mmol)、炭酸カリウム1.19g(8.6mmol)、NMP180g、トルエン20gを仕込み、窒素フロー下80℃1時間撹拌しながら溶解した。その後、温度を120℃に上げ1時間撹拌してトルエンと水分を留去した後、温度を150℃に上げ5時間反応させた。冷却後、濃塩酸2gと精製水2Lの液にて再沈殿させ濾過した。その濾過物を精製水1Lで2回洗浄、メタノール250mlで2回洗浄して、50〜80℃で24時間以上常圧乾燥させてポリマー(a)を得た。
得られたポリマー(a)の収量は22g、重量平均分子量は7100であった。
【0044】
合成例2 ポリマー(b)の合成
ビスフェノール化合物に4,4'-ビフェノール4.00g(21.5mmol)を用いた以外は合成例1と同様の方法で合成した。得られたポリマー(b)の収量は23g、重量平均分子量は4200であった。
【0045】
合成例3 ポリマー(c)の合成
ビスフェノール化合物に4,4'-ジフェニルエーテル4.35g(21.5mmol)を用いた以外は合成例1と同様の方法で合成した。得られたポリマー(c)の収量は24g、重量平均分子量は6100であった。
【0046】
合成例4 ポリマー(d)の合成
ビスフェノール化合物に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン7.23g(21.5mmol)を用いた以外は合成例1と同様の方法で合成した。得られたポリマー(d)の収量は27g、重量平均分子量は5700であった。
【0047】
合成例5 ポリマー(e)の合成
ビスフェノール化合物に4,4'-ビフェノール2.83g(15.2mmol)を用いた以外は合成例1と同様の方法で合成した。得られたポリマー(e)の収量は23g、重量平均分子量は7200であった。
【0048】
合成例6 ポリマー(f)の合成
ビスフェノール化合物に9,9'-ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン7.53g(21.5mmol)を用いた以外は合成例1と同様の方法で合成した。得られたポリマー(f)の収量は28g、重量平均分子量は6400であった。
【0049】
合成例7 ポリマー(g)の合成
ビスフェノール化合物にビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン2.39g(9.57mmol)を用いた以外は合成例1と同様の方法で合成した。得られたポリマー(f)の収量は22g、重量平均分子量は10200であった。
【0050】
合成例8 ポリマー(h)の合成
ビスフェノール化合物にビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン1.13g(4.53mmol)を用いた以外は合成例1と同様の方法で合成した。得られたポリマー(g)の収量は20g、重量平均分子量は16000であった。
【0051】
実施例1
合成例1で得られたポリマー(a)10.0g、ニカラックMW−100LM2.00g、GBL14.4g、NMP3.6gを混合、攪拌して均一溶液とした後、0.45μmのフィルターで濾過して組成物1を調製した。組成物1を、ITOをスパッタにより成膜したガラス基板およびOA−10ガラス板(日本電気硝子(株)製)にスピンコーター(ミカサ(株)製1H−360S)を用いて任意の回転数でスピンコートした後、ホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製SCW−636)を用いて100℃で1〜2分間プリベークし、次いでオーブン(タバイエスペック(株)製IHPS−222)を用いて空気中230℃で1時間キュアして硬化膜を作製した。
【0052】
実施例2〜11、比較例1〜14
組成物1と同様に、組成物2〜25を表1に記載の組成にて調製した。なお、ポリマーとして用いたPES3600P、PES4800Pは共に住友化学工業(株)製のポリエーテルスルホンで、重量平均分子量はそれぞれ46000、67000である。ニカラックMX−270は三和ケミカル(株)製、KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサ及びペンタアクリレート混合物)は日本化薬(株)製の架橋剤、SI-200は三新化学工業(株)製の熱酸発生剤である。
【0053】
硬化膜特性の評価結果を表1に示す。なお、表中の評価は以下の方法で行った。なお、下記の(2)の評価はITOをスパッタ成膜したガラス基板を、(3)、(4)の評価はOA−10ガラス板を用いて行った。
【0054】
(2)密着性
ITOをスパッタ成膜したガラス基板に組成物の硬化膜を形成して、JIS K5600に従いクロスカット試験を行った。剥離面積の割合が、0:0%(剥がれ無し)、1:0〜5%、2:5〜15%、3:15〜35%、4:35〜65%、5:65〜100%として判定した。
【0055】
(3)光透過率の測定
MultiSpec−1500(商品名、(株)島津製作所)を用いて、まずOA−10ガラス板のみを測定し、その紫外可視吸収スペクトルをリファレンスとした。次にOA−10ガラス板上に組成物の硬化膜を形成し、このサンプルをシングルビームで測定し、2μmあたりの波長400nmでの光透過率を求め、リファレンスとの差異を硬化膜の光透過率とした。
【0056】
(4)膜厚測定
上記(3)で作成した硬化膜の一部を切り欠け、表面粗さ形状測定機サーフコム1400D(商品名、(株)東京精密製)を用い、膜厚測定を行った。
【0057】
(5)耐薬品性
上記(3)で作成した硬化膜を室温でPGMEAに1分間浸した。その後硬化膜が白濁や膜減りしないものを良好として判定した。
【0058】
(6)保存安定性
組成物を調整し、その溶液が室温で1日放置後でも固化しなかったものを良好として判定した。
【0059】
【表1】

【0060】
得られた各組成物を用いて、実施例1と同様にして各組成物の評価を行った。
【0061】
表1に記載のとおり、MW100LM、MX270を含む場合に良好な耐薬品性、ポリマー(a)〜(h)の化合物を含む場合に良好な密着性及び保存安定性が得られ、かつ透過率も良好であった。
【0062】
(7)タッチパネル素子作成方法
タッチパネル素子作成方法について一例を説明する。
【0063】
透明電極には一般に使用されるインジウム錫酸化物(ITO)、錫アンチモン酸等の金属酸化物、または金、銀、銅、アルミニウム等の金属の薄膜を使用した。これらの透明導電極は、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、イオンビーム蒸着等の物理的方法や化学的気相成長法など従来より行われている方法によって形成される。
【0064】
厚み約1mmのガラス基板にITOを蒸着し、その上にレジスト材料により菱形のパターンを形成し、膜厚200オングストロームの透明電極を有するガラス基板を作製した。
後から形成する透明電極と交差する部位にインクジェット印刷方式により、組成物1を塗布しオーブンで230℃1h加熱して絶縁膜を作成した。
【0065】
その上に同様にITOを蒸着・パターン形成を行って透明電極を作成し、透明保護膜としてアクリル樹脂をスピンコーティングにより全面塗布してタッチパネル素子を作成した。各透明電極を構成する電極群の端部はそれぞれ抵抗体に接続した。
【0066】
透明保護膜はアクリル樹脂以外にも、例えばポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、フッ素含有樹脂などの熱可塑性樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミドなどの熱硬化性樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂、エポキシ系紫外線硬化型樹脂、ウレタン系紫外線硬化型樹脂、ポリエステル系紫外線硬化型樹脂、シリコーン系紫外線硬化型樹脂などの光重合性樹脂、シリコンなどの無機材料などが挙げられ、特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の絶縁性樹脂組成物は、タッチパネルの透明電極間の絶縁膜や保護膜、液晶表示素子や有機EL表示素子などの薄膜トランジスタ(TFT)基板用平坦化膜、半導体素子の層間絶縁膜、固体撮像素子用平坦化膜やマイクロレンズアレイパターン、あるいは光導波路のコアやクラッド材を形成するために利用できる。
【符号の説明】
【0068】
1:ガラス基板
2:透明電極(下ITO)
3:透明絶縁膜
4:透明電極(上ITO)
5:透明保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(1)で表される構造単位を主成分とし重量平均分子量が1000〜30000であることを特徴とするポリマー、(b)溶剤、(c)メチロール系化合物を含有することを特徴とする絶縁性樹脂組成物。
【化1】

(R及びRは、それぞれ独立にハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、またはフェニル基を表し、R及びRが複数ある場合、同一でも異なっていてもよい。nおよびmは、それぞれ独立に0〜4の整数を表す。Xは2価の芳香族基を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の絶縁性樹脂組成物を硬化して成る硬化膜。
【請求項3】
請求項2に記載の硬化膜を具備する素子。
【請求項4】
透明電極配線間に請求項1に記載の絶縁性樹脂組成物を塗布・硬化して成る硬化膜を具備するタッチパネル用素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−208009(P2011−208009A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77068(P2010−77068)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】