説明

絶縁手段を備えた燃料電池システム

本発明は、第1の部分(14)を第2の部分(16)から熱的に絶縁するための絶縁手段(12)を備えた燃料電池システム(10)であって、燃料電池システムが動作している間、第1の部分の方が第2の部分より温度レベルが高く、絶縁手段が、第1の部分および第2の部分と界面をなす少なくとも1つのリードスルー部分(18)を備える。燃料電池システムが動作している間、このリードスルー部分(18)を介して燃料電池システムの少なくとも1つのコンポーネント(20)が導かれ、第1の部分および第2の部分と熱接触する燃料電池システム(10)に関する。本発明によれば、コンポーネントの少なくとも一部は、隣接する部分の熱伝導率より小さく、少なくとも一部がリードスルー部分(18)の中に位置している絶縁部分(22)を構築していることを特徴とする材料でできている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の部分を第2の部分から熱的に絶縁するための絶縁手段を備えた燃料電池システムであって、燃料電池システムが動作している間、通常は第1の部分の方が第2の部分より温度レベルが高く、絶縁手段が、第1の部分および第2の部分と界面をなす少なくとも1つのリードスルー部分を備え、燃料電池システムが動作している間、該リードスルー部分を介して燃料電池システムの少なくとも1つのコンポーネントが導かれ、それにより第1の部分および第2の部分と熱接触する燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、ますますその重要性が増している化石燃料の一次供給物である電気エネルギーおよび熱エネルギーを生成する役割を果たしている。可動装置の分野、つまり、とりわけ自動車両の分野では、自動車両のための標準として燃料が優先的に使用されているが、非可動装置の分野、つまり、とりわけ国内アプリケーションでは、天然ガスおよび燃料油が使用されている。
【0003】
これらの燃料を処理するためには、少なくとも部分的に、強力な発熱性プロセスである改質プロセスが必要である。同様に、燃料電池の排気ガスまたは同じく発熱反応における一次供給燃料の排気ガスを変換することができるアフターバーナも発熱を伴うアプリケーションである。燃料電池システムの中で燃料電池自体によって生成される廃熱、とりわけ固体酸化物燃料電池(SOFC)の場合、極めて大量になることがある廃熱を考慮しなければならない。したがって、燃料電池システムには、動作条件および設計に応じて500℃から1000℃の範囲に及ぶ温度がもたらされる。
【0004】
燃料電池システムの環境への熱伝達による熱損失を少なくすることは、基本的な要求事項であり、そのために高性能絶縁手段が使用されているが、この高性能絶縁手段には、たとえば燃料を供給し、空気を供給し、あるいは排気ガスを排出するためのリードスルー部分を考案する必要がある。高温物質化のため、これらのコンポーネントは、良好な熱伝導体でもある高温金属でできていることがしばしばであるため、高性能絶縁手段のリードスルー部分がヒート・ブリッジによってブリッジされ、そのために高温部分から環境へ大量の熱が損失する。また、燃料電池システム内の様々な部分を互いに熱的に絶縁しなければならず、その界面が過度の熱伝達を特徴としている場合にも同様の問題に遭遇する。
【0005】
システムの効率を悪くしているのは、とりわけ、環境へのこの放熱によるものであり、そのために高温部分の外側に位置しているコンポーネントが熱的に過負荷になることによるものである。他の欠点は、運転停止時におけるシステムの急激な冷却のため、システムをONに復帰する際の始動に必要な時間が著しく長くなることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、燃料電池システムにおける望ましくない熱伝達を回避する目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、独立請求項の特徴によって達成される。
【0008】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0009】
本発明は、コンポーネントの少なくとも一部が、隣接する部分の熱伝導率より小さく、少なくとも一部がリードスルー部分の範囲内に位置している絶縁部分を構築していることを特徴とする材料でできている点では、汎用燃料電池システムに基づいている。コンポーネントがたとえば排気管である場合、その排気管の部分は、熱伝導率が小さい熱伝導体でできており、一方、その排気管の隣接する部分は、従来、耐熱性の金属でできている。このようにして得られる排気管の絶縁部分は、少なくとも部分的にリードスルー部分の範囲内に配置されており、第1の部分に位置している金属管部分の熱伝導率は、第2の部分の熱伝導率になることができず、第2の部分に位置している如何に小さい金属管部分であっても、第1の部分の熱伝導率になることはできない。一例として排気管によって示されているこの原理は、絶縁部分を介して導かれる任意のあらゆるコンポーネントに適用され、たとえば燃料供給装置、酸化剤供給装置、バーナ管、フレーム管、改質器管、等々に適用される。
【0010】
本発明は、便宜的に、絶縁部分がリードスルー部分の範囲内に完全に位置するように構成することができる。本発明を基本的に成功させるためではあるが、絶縁部分の一部をリードスルー部分とオーバラップさせることは本質にすぎず、目的を達成するためには絶縁部分をリードスルー部分の範囲内に完全に配置することが好ましい。
【0011】
絶縁部分内で第1の部分と対向する反射表面であって、これらの2つの部分の間の熱伝導を防止するように作用するだけでなく、該反射表面による放射損失を少なくするように作用する反射表面を備えた絶縁部分を提供することができる。反射コーティングは、たとえば絶縁部分の上に気相成長させることができる。
【0012】
他の機能に関しては、隣接する部分を接続するための接続手段を備えた絶縁部分が提供される。たとえば、絶縁部分は、雄ねじが機械加工された隣接コンポーネント部分をねじ込むことができる雌ねじを特徴とすることができる。同様に、ツイスト・ロックまたは類似した機械式継手も可能である。
【0013】
本発明の他の実施形態では、絶縁部分は、絶縁手段のコンポーネントであり、絶縁手段は、様々なモジュールを結合するための手段として作用している。絶縁手段は、たとえばこれらの様々なモジュールを所定の位置にねじ込むことによってそれらを絶縁部分に単純に取り付けることができるよう、これらの様々なモジュールの絶縁部分に予め嵌合させることができる。
【0014】
とりわけ好ましい実施形態によれば、絶縁部分はセラミック材料でできている。
【0015】
以下、本発明について、添付の図面を参照して、とりわけ好ましい実施形態によって詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による燃料電池システムの第1の実施形態の一部の部分断面図である。
【図2】本発明による燃料電池システムの第2の実施形態の一部の部分断面図である。
【図3】本発明による燃料電池システムの第3の実施形態の一部の部分断面図である。
【図4】本発明による燃料電池システムの第4の実施形態の一部の部分断面図である。
【図5】本発明による燃料電池システムの第5の実施形態の一部の部分断面図である。
【図6】絶縁手段を介して導かれる絶縁部分を備えたコンポーネントを示す図である。
【図7】リードスルー部分に絶縁部分を備えた絶縁手段を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の図面についての以下の説明では、参照数表示は、同じコンポーネントまたは類似のコンポーネントを識別している。
【0018】
図1を参照すると、本発明による燃料電池システムの第1の実施形態の一部の部分断面図が示されている。燃料電池システム10は、部分的に示されているように、高温部分14および低温部分16を備えている。低温部分16は、たとえば燃料電池システム10の環境であり、部分14、16は、いずれも燃料電池システム10内に配置することも可能であるが、便宜上、異なる温度レベルに維持されている。部分14、16は、絶縁手段12によって互いに分離されている。絶縁手段12は、リードスルー部分18を備えており、このリードスルー部分18を介して、燃料電池システム10のコンポーネント20、たとえば排気管が導かれている。部分14から部分16への熱伝導率を防止するために、コンポーネント20の一部は、絶縁部分22として構成されている。たとえば、絶縁部分22はセラミック材料でできており、一方、コンポーネント20の残りの部分は、耐高温性を有する金属でできている。絶縁部分22は、絶縁体として作用しているだけでなく、接続手段を備えていることにより、接続エレメントとしても作用することができる。たとえば、絶縁部分22は、これらの部分を接続するために雄ねじがねじ込まれる雌ねじを有している。
【0019】
次に図2を参照すると、本発明による燃料電池システムの第2の実施形態の一部の部分断面図が示されている。ここでは、図1に示されている実施形態に加えて、第1の部分14から第2の部分16への放射損失を少なくする反射表面24が絶縁部分の領域に提供されている。
【0020】
次に図3を参照すると、本発明による燃料電池システムの第3の実施形態の一部の部分断面図が示されており、絶縁部分22の一部が高温部分14とオーバラップしている。図1に示されている実施形態とは異なり、この実施形態の絶縁部分22は、リードスルー部分18の中に完全に位置していない。しかしながら、この場合も、この方法によってヒート・ブリッジの形成が回避されている。
【0021】
次に図4を参照すると、本発明による燃料電池システムの第4の実施形態の一部の部分断面図が示されている。この実施形態によれば、絶縁部分は、部分的に低温部分16とオーバラップしているが、この場合も、この構造によって高温部分14と部分16の間のホット・ブリッジの形成が回避されている。
【0022】
次に図5を参照すると、本発明による燃料電池システムの第5の実施形態の一部の部分断面図が示されている。この実施形態では、リードスルー部分18を介して導かれるコンポーネント20は、絶縁部分22の相対する2つの面の異なる寸法を特徴としている。この実例態様は、本発明を多くの変形態様に使用することができることを明らかにしており、また、この実例態様は、絶縁部分が絶縁タスクまたは接続タスクに合致するのに適しているだけでなく、特定のアダプタ機能を利用可能にするのにも適していることを示している。
【0023】
次に図6を参照すると、絶縁手段を介して導かれる絶縁部分を備えたコンポーネントの図が示されている。この実施例では、絶縁部分22は、コンポーネント20の隣接部分と共に、他の部分とは独立して取り扱うことができる。
【0024】
次に図7を参照すると、リードスルー部分に絶縁部分を備えた絶縁手段の図が示されている。図に示されているこの実例態様では、絶縁手段12に絶縁部分22が固定接続されており、とりわけ絶縁部分22が接続手段を備えている場合、絶縁手段12は、燃料電池システムの個々のモジュールを取り付けるための手段の利用を可能にしている。
【0025】
以上の説明および図面の中で開示されている本発明の特徴、ならびに特許請求されている本発明の特徴は、場合によってはそれら自体またはそれらの任意の組合せの両方によって本発明を達成するための本質であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0026】
10…燃料電池システム、12…絶縁手段、14…高温部分(第1の部分)、16…低温部分(第2の部分)、18…リードスルー部分、20…コンポーネント、22…絶縁部分、24…反射表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部分(14)を第2の部分(16)から熱的に絶縁するための絶縁手段(12)を備えた燃料電池システム(10)であって、前記燃料電池システムが動作している間、通常は前記第1の部分の方が前記第2の部分より温度レベルが高く、前記絶縁手段が、前記第1の部分および第2の部分と界面をなす少なくとも1つのリードスルー部分(18)を備え、前記燃料電池システムが動作している間、前記リードスルー部分(18)を介して前記燃料電池システムの少なくとも1つのコンポーネント(20)が導かれ、それによって前記第1の部分および前記第2の部分と熱接触する燃料電池システム(10)であって、前記コンポーネントの少なくとも一部が、隣接する部分の熱伝導率より小さく、少なくとも一部が前記リードスルー部分(18)の中に位置している絶縁部分(22)を構築していることを特徴とする材料でできていることを特徴とする燃料電池システム(10)。
【請求項2】
前記絶縁部分(22)が前記リードスルー部分の範囲内に完全に位置していることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記絶縁部分が、前記第1の部分と対向する反射面(24)を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記絶縁部分(22)が、隣接する部分を接続するための接続手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記絶縁部分(22)が、前記絶縁手段のコンポーネントであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記絶縁部分(22)が、セラミック材料でできていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−543301(P2009−543301A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518708(P2009−518708)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【国際出願番号】PCT/DE2007/000928
【国際公開番号】WO2008/006325
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(507391362)エネルディ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (25)
【氏名又は名称原語表記】ENERDAY GmbH
【住所又は居所原語表記】Speicherstr. 3, 17033 Neubrandenburg, Germany
【Fターム(参考)】