説明

絶縁抵抗測定装置及び絶縁抵抗測定方法

【課題】簡易な検出回路によって直流回路の絶縁不良を高感度かつ安全に検出すること。
【解決手段】この絶縁抵抗測定装置1は、直流電源回路2の対地絶縁抵抗を測定する装置であって、直列電源4の正極3A及び負極3Bに接続するための接続端子6A,6Bと、接続端子6A,6Bと接地電位との間に接続され、接続端子6A,6Bと接地電位との間の接続を切り換えるスイッチ素子7A,7Bと、接続端子6A,6Bのそれぞれと接地電位との間にスイッチ素子7A,7Bを介して接続された抵抗素子8A,8Bと、抵抗素子8A,8Bにおける電圧降下を検出する電圧検出部9と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流回路の対地絶縁抵抗を測定するための絶縁抵抗測定装置及び絶縁抵抗測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電源回路等の直流回路の安全対策として地絡を検出することが重要視されている。直流回路に地絡箇所が存在すると、直流回路の絶縁不良箇所に触れることで感電事故を誘発してしまうばかりか、2点の地絡箇所に起因する火災を発生させる場合もある。このような地絡を検出する方法としては、下記特許文献1に記載のように、複数の直流ラインを流れる直流電流の電流量の差を検出用コアを介して検出することにより、測定対象導線に生じた直流地絡を検出する方法が知られている。その他、直流回路の測定点に抵抗素子を介して交流電源を接続して、この抵抗成分を流れる電流に印加電圧と同相成分が存在するかどうかで地絡の有無を検出する方法や、直流回路の測定点と接地電位との間に直流電源及び抵抗素子を接続して測定点に直流バイアスを印加し、抵抗素子を介した漏れ電流を測定することにより地絡の有無を検出する方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−153991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の検出方法においては、実際に地絡電流が発生すればそれを検出することが可能となるが、地絡に至る危険性が潜んだ絶縁不良を検出することは困難である。また、直流回路に交流電源を接続する方法においては、抵抗素子を流れる電流に関する位相差を検出する必要があるため、検出回路の構成が複雑化する傾向にある。さらに、直流回路に直流バイアスを印加する方法においては、地絡箇所によって検出感度が大きく左右されることになるほか、不要な直流電圧を印加すること自体が地絡や直流回路の故障を招くことになり好ましくない。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、簡易な検出回路によって直流回路の絶縁不良を高感度かつ安全に検出することが可能な絶縁抵抗測定装置及び絶縁抵抗測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の絶縁抵抗測定装置は、直流回路の対地絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定装置であって、直流回路の2つの測定点に接続するための第1及び第2の接続端子と、第1及び第2の接続端子と接地電位との間に接続され、第1及び第2の接続端子と接地電位との間の接続を切り換える切換部と、第1及び第2の接続端子と接地電位との間に切換部を介して接続された少なくとも1つの抵抗素子と、抵抗素子における電圧降下を検出する電圧検出部と、を備える。
【0007】
このような絶縁抵抗測定装置によれば、直流回路の2つの測定点のそれぞれに第1及び第2の接続端子を接続し、切換部を第1の接続端子側及び第2の接続端子側に排他的に切り換えることにより、電圧検出部によって、一方の接続点と接地電位との間に接続された抵抗素子における電圧降下と、他方の接続点と接地電位との間に接続された抵抗素子における電圧降下とを別々に検出することができる。その結果、2つの電圧降下の値に基づいて直流回路の対地絶縁抵抗を導き出すことができる。従って、簡易な検出回路によって直流回路の絶縁不良を絶縁不良の箇所に関係なく高感度に検出することができるとともに、不要な電圧を印加することも無いので検出時の安全性も確保することができる。
【0008】
切換部を第1の接続端子側に切り換えたときに電圧検出部が検出した電圧降下の値と、切換部を第2の接続端子側に切り換えたときに電圧検出部が検出した電圧降下の値とに基づいて、対地絶縁抵抗を演算する演算部をさらに備える、ことが好ましい。この場合、直流回路の絶縁不良を高感度かつ瞬時に検出することができる。
【0009】
また、切換部は、第1の接続端子と接地電位との間に接続された第1のスイッチ素子と、第2の接続端子と接地電位との間に接続された第2のスイッチ素子とを有し、抵抗素子は、第1の接続端子と第1のスイッチ素子との間に接続された第1の抵抗素子と、第2の接続端子と第2のスイッチ素子との間に接続された第2の抵抗素子とを有する、ことも好ましい。
【0010】
かかる構成を採れば、第1のスイッチ素子と第2のスイッチ素子が誤って同時に閉じてしまった場合の直流回路を流れる不要電流を最小限に減らすことができる。
【0011】
さらに、第1の抵抗素子と第2の抵抗素子とは抵抗値が等しい、ことも好ましい。こうすれば、第1及び第2の抵抗素子の電圧降下の値と、直流回路の2つの測定点間の電位差に基づいて容易に対地絶縁抵抗を算出することができる。
【0012】
またさらに、直流回路は、太陽電池モジュールを含むものであることも好ましい。このような太陽電池モジュールを含む直流回路は配線が長くなったり、設置面積が大きくなる傾向にあるので、本発明の絶縁抵抗測定装置を使用するとより効果的である。
【0013】
或いは、本発明の絶縁抵抗測定方法は、直流回路の対地絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定方法であって、直流回路の第1の測定点と接地電位との間に抵抗素子を接続し、該抵抗素子に発生する第1の電圧降下を検出するステップと、直流回路の第2の測定点と接地電位との間にその抵抗素子と同一又は異なる抵抗素子を接続し、該抵抗素子に発生する第2の電圧降下を検出するステップと、第1及び第2の電圧降下の値に基づいて、対地絶縁抵抗を算出するステップと、を備える。
【0014】
このような絶縁抵抗測定方法によれば、直流回路の第1の測定点に第1の接続端子を接続して、第1の接続点と接地電位との間に接続された抵抗素子における電圧降下を検出した後に、直流回路の第2の測定点に第2の接続端子を接続して、第2の接続点と接地電位との間に接続された抵抗素子における電圧降下を検出する。そして、2つの電圧降下の値に基づいて直流回路の対地絶縁抵抗を導き出す。これにより、簡易な検出回路によって直流回路の絶縁不良を絶縁不良の箇所に関係なく高感度に検出することができるとともに、不要な電圧を印加することも無いので検出時の安全性も確保することができる。
【0015】
第1の電圧降下に対応する抵抗素子と第2の電圧降下に対応する抵抗素子とは抵抗値が等しい、ことが好ましい。この場合、2つの抵抗素子の電圧降下の値と、直流回路の2つの測定点間の電位差に基づいて容易に対地絶縁抵抗を算出することができる。
【0016】
また、第1及び第2の測定点は、直流電源回路の正極又は負極のいずれかであることも好ましい。こうすれば、直流電源回路の絶縁不良箇所を回路全体に亘って効率的に検出することができる。
【0017】
さらに、直流回路は、太陽電池モジュールを含むものであることも好ましい。このような太陽電池モジュールを含む直流回路は配線が長くなったり、設置面積が大きくなる傾向にあるので、本発明の絶縁抵抗測定方法を使用するとより効果的である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の絶縁抵抗測定装置によれば、簡易な検出回路によって直流回路の絶縁不良を高感度かつ安全に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好適な一実施形態にかかる絶縁抵抗測定装置の構成を、測定対象である直流電源回路と共に示す回路ブロック図である。
【図2】図1の絶縁抵抗測定装置による絶縁抵抗測定方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の変形例にかかる絶縁抵抗測定装置の構成を、測定対象である直流電源回路と共に示す回路ブロック図である。
【図4】本発明の比較例にかかる絶縁抵抗測定方法を説明するための回路ブロック図である。
【図5】本発明の比較例にかかる絶縁抵抗測定方法を説明するための回路ブロック図である。
【図6】本発明の比較例にかかる絶縁抵抗測定方法を説明するための回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る絶縁抵抗測定装置及び絶縁抵抗測定方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の好適な一実施形態にかかる絶縁抵抗測定装置1の構成を、測定対象である直流電源回路2と共に示す回路ブロック図である。同図に示すように、絶縁抵抗測定装置1は、複数の太陽電池モジュール3が直列に接続された直列電源4とその直列電源4の正極3A及び負極3Bに接続されて直流電圧を三相の交流電圧に変換するインバータ回路5とを含む直流電源回路2を対象にして、対地絶縁抵抗を測定するための装置である。なお、直流電源回路2のインバータ回路5としては、直列電源4の1点の絶縁不良箇所への接触による感電を防止するためにトランスを内蔵する絶縁型のインバータ回路が使用される。
【0022】
絶縁抵抗測定装置1は、直流電源回路2の2つの測定点に接続するための2つの接続端子6A,6Bを有している。この接続端子6A,6Bの接続先としては、例えば、直列電源4の正極3A及び負極3Bが挙げられるが、直列電源4の他の接続点であってもよい。
【0023】
この接続端子6Aと接地電位との間には、接続端子6Aと接地電位との間の接続をオン/オフするスイッチ素子(切換部)7Aが接続され、接続端子6Bと接地電位との間には、接続端子6Bと接地電位との間の接続をオン/オフするスイッチ素子(切換部)7Bが接続されている。このようなスイッチ素子7A,7Bとしては、FET等の半導体スイッチや機械式スイッチを用いることができる。
【0024】
さらに、接続端子6Aと接地電位との間には、スイッチ素子7Aを介して直列に抵抗値Rの抵抗素子8Aが接続され、接続端子6Bと接地電位との間には、スイッチ素子7Bを介して直列に抵抗素子8Aと等しい抵抗値Rの抵抗素子8Bが接続されている。詳細には、抵抗素子8Aは、接続端子6Aとスイッチ素子7Aとの間に接続され、抵抗素子8Bは、接続端子6Bとスイッチ素子7Bとの間に接続される。
【0025】
この抵抗素子8A,8Bの抵抗値Rとしては、検出範囲の絶縁抵抗値と許容される検出時間とに応じて適宜設定されうるが、直列電源4の対地容量がC[F]の場合は、抵抗値Rが、検出範囲の絶縁抵抗値の1/2以上、検出時間[sec]/(3×C[F])以下に設定されることが好ましい。これは、抵抗値Rが検出範囲の絶縁抵抗値よりも極端に小さいと絶縁抵抗測定装置1自体で地絡状態を招いてしまい安全性に問題を生じ、絶縁抵抗測定装置1による検出電圧が過渡状態から落ち着くためには対地容量Cと抵抗値Rとで決まる時間の経過を要するためである。例えば、C=1μFの場合で絶縁抵抗100kΩを検出時間1secで検出したい場合には、50kΩ≦R≦300kΩに設定することが好ましい。
【0026】
加えて、抵抗素子8A,8Bの両端には、抵抗素子8A,8Bの両端の電圧降下を検出する電圧検出部9が接続され、電圧検出部9の検出信号の出力には、検出信号をアナログデジタル変換するA/Dコンバータ10が接続され、A/Dコンバータ10の出力には、変換された検出信号に基づいて直流電源回路2の対地絶縁抵抗を演算する演算部12が接続されている。
【0027】
演算部12は、対地絶縁抵抗を演算する機能と共に、スイッチ素子7A,7Bのオン/オフを切り換えるための制御信号を生成し、スイッチ素子7A,7Bに送出する機能も有している。このような演算部12としては、パーソナルコンピュータに代表される汎用計算機を用いてもよいし、アナログIC回路やPLD(Programmable Logic Device)回路を用いてもよい。
【0028】
具体的には、演算部12は、スイッチ素子7A,7Bのうちスイッチ素子7Aをオンし、スイッチ素子7Bをオフした場合、すなわち、接地電位との接続を接続端子6A側に切り換えた時に電圧検出部9によって生成された検出電圧値VをA/Dコンバータ10経由でデジタル信号として受け取り内蔵メモリ(図示せず)に保持する。さらに、演算部12は、スイッチ素子7A,7Bのうちスイッチ素子7Aをオフし、スイッチ素子7Bをオンした場合、すなわち、接地電位との接続を接続端子6B側に切り換えた時に電圧検出部9によって生成された検出電圧値VをA/Dコンバータ10経由でデジタル信号として受け取る。そして、演算部12は、内蔵メモリに保持しておいた検出電圧値Vを読み出し、2つの検出電圧値V,Vに基づいて、下記式(1);
Rleak = Rd×| V0 / (V1-V2) | - Rd …(1)
に基づいて、対地絶縁抵抗Rleakを演算する。ここで、電圧値Vは、直列電源4の2つの測定点である正極3A及び負極3B間の電位差を表し、既知の値である。さらに、演算部12は、演算した対地絶縁抵抗Rleakを、内蔵又は外付けのディスプレイ装置等の各種出力装置に出力する。
【0029】
次に、図2を参照して、絶縁抵抗測定装置1の動作について説明するとともに、本実施形態にかかる絶縁抵抗測定方法について詳述する。
【0030】
まず、接続端子6A,6Bのそれぞれが直列電源4の正極3A及び負極3Bに接続された後、演算部12への所定の操作入力を契機として、演算部12は、スイッチ素子7Bに対してスイッチ素子7Bをオフするための制御信号を送出すると同時に、スイッチ素子7Aに対してスイッチ素子7Aをオンするための制御信号を送出する。スイッチ素子7Aとスイッチ素子7Bが同時にオンとなる危険を回避するため、スイッチ素子7Bをオフにした後、所定の待ち時間後にスイッチ素子7Aをオンにすることも可能である(ステップS101)。これにより、直列電源4の正極3Aと接地電位との間に抵抗素子8Aが接続されることになる。このとき、電圧検出部9によって抵抗素子8Aにおける電圧降下が検出され、検出電圧VがA/Dコンバータ10を経由して演算部12に送られる(ステップS102)。これに対して、演算部12において、抵抗素子8Aの電圧降下の値Vが内蔵メモリに記憶される(ステップS103)。なお、当該スイッチ素子7Aがオンとなってから、電圧降下値Vを取得する間には、後述するとおり、所定の待ち時間を挿入することが好ましい。
【0031】
その後、演算部12は、スイッチ素子7Aに対してスイッチ素子7Aをオフに切り換えるための制御信号を送出すると同時に、又は2個のスイッチが同時にオンとなる危険を回避するための所定の待ち時間の経過後、スイッチ素子7Bに対してスイッチ素子7Bをオンに切り換えるための制御信号を送出する(ステップS104)。これにより、直列電源4の負極3Bと接地電位との間に抵抗素子8Bが接続されることになる。このとき、電圧検出部9によって抵抗素子8Bにおける電圧降下が検出され、検出電圧VがA/Dコンバータ10を経由して演算部12に送られる(ステップS105)。なお、当該スイッチ素子7Bがオンとなってから、電圧降下値Vを取得する間には、後述するとおり、所定の待ち時間を挿入することが好ましい。これに対して、演算部12において、内蔵メモリから電圧降下の値Vが読み出され、電圧降下の値V,Vを上記式(1)に適用することにより、直流電源回路2の対地絶縁抵抗値Rleakが算出される(ステップS106)。最後に、算出された対地絶縁抵抗値Rleakが出力装置に出力される(ステップS107)。
【0032】
ここで、スイッチ素子7A,7Bを切り替えた直後、当該状態での抵抗素子8A,8Bには直流電源回路4の対地静電容量に起因する電流がながれるため、所定の待ち時間を挟むことが好ましい。この待ち時間は、対地静電容量を、抵抗素子8A,8Bの抵抗値で除した値の2倍以上、好ましくは3倍以上であることが適切である。この待ち時間を置かないと、対地絶縁抵抗値の計測値に誤差が大きくなるおそれがある。
【0033】
以上説明した絶縁抵抗測定装置1及びそれを用いた絶縁抵抗測定方法によれば、直列電源4の2つの測定点のそれぞれに接続端子6A,6Bを接続し、スイッチ素子7A,7B接続端子6A側及び接続端子6B側に排他的に切り換えることにより、電圧検出部9によって、一方の接続点と接地電位との間に接続された抵抗素子8Aにおける電圧降下と、他方の接続点と接地電位との間に接続された抵抗素子8Bにおける電圧降下とを別々に検出することができる。その結果、2つの電圧降下の値に基づいて直流電源回路2の対地絶縁抵抗を導き出すことができる。従って、スイッチ素子及び抵抗素子等から成る簡易な検出回路によって直流回路の絶縁不良を絶縁不良の箇所に関係なく高感度に検出することができるとともに、測定対象に不要な電圧を印加することも無いので検出時の安全性も確保することができる。
【0034】
本実施形態における利点を比較例と対比しつつ具体的に説明する。まず、図4に示すように、直列電源4の正極3A及び負極3Bと接地電位との間に抵抗素子901A,901Bを互いに並列となるように接続し、抵抗素子901Aと抵抗素子901Bとの接続点902から接地電位に向けた漏れ電流を監視することにより、直流電源回路2の地絡を検出することも考えられる。しかしながら、このような検出方法では、直列電源4の電気的な中点における地絡を検出することができない。これに対して、絶縁抵抗測定装置1によれば、任意の箇所での絶縁抵抗を検出できる。
【0035】
一方、図5に示すように、直列電源4の正極3A等の任意の測定点に、抵抗素子903及び交流電源904を接続し、抵抗素子903における電圧降下において交流電圧と同相成分(抵抗成分)が存在するかを判定することにより、直流電源回路2の地絡を検出ことも考えられる。しかしながら、この検出方法では電圧降下の位相を検出する必要があるため検出回路の構成が複雑になる傾向がある。これに対して、絶縁抵抗測定装置1では、2つの電圧降下の値を検出して演算する手法を取っているので検出回路が単純化され信頼性も高い。
【0036】
さらに、図6に示すように、直列電源4の正極3A等の任意の測定点に、直流電源905及び抵抗素子906を接続し、直流バイアスを測定点に印加した際の高抵抗を介した漏れ電流を監視することにより、直流電源回路2の地絡を検出ことも考えられる。この場合は、地絡箇所によって検出感度が大きく変化してしまうこと、直流電源回路2に不要な高電圧が印加されてしまう等の問題が存在する。これに対して、絶縁抵抗測定装置1では、直列電源4の任意の箇所における絶縁抵抗を検出することができるとともに、不要な電圧を印加することもない。
【0037】
また、接地電位に対して、スイッチ素子7A及び抵抗素子8Aと、スイッチ素子7B及び抵抗素子8Bとを分岐して接続しているので、スイッチ素子7A,7Bが誤って同時に閉じてショートしてしまった場合の直流電源回路2を流れる不要電流を最小限に減らすことができる。
【0038】
さらに、抵抗素子8Aと抵抗素子8Bとは抵抗値が等しいので、抵抗素子8A,8Bの電圧降下の値V,Vと、直列電源4の正極3Aと負極3B間の電位差Vとに基づいて、容易に対地絶縁抵抗Rleakを算出することができる。
【0039】
またさらに、配線が比較的長く設置面積も大きい太陽電池モジュール3を含む直流電源回路2を測定対象にすることで、絶縁抵抗測定装置1による高感度な絶縁抵抗の検出が有効に発揮される。
【0040】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、図3に示す本発明の変形例である絶縁抵抗測定装置101のように、抵抗素子は1つ以上備えていればよく、具体的には、2つのスイッチ素子7A,7Bと接地電位との間に共通に接続された抵抗素子108を備えていてもよい。この場合も、スイッチ素子7A,7Bを交互に切り換えながら抵抗素子108の電圧降下を電圧検出部9によって検出することで対地絶縁抵抗Rleakを算出することができる。このような構成にすれば、回路構成をより簡素化できる。
【0041】
また、演算部12は、内蔵メモリによって電圧降下値を記憶する機能を有するデジタル回路のほか、アナログ信号のレベルを保持するホールド回路を内蔵するアナログ回路によって実現されてもよい。従って、A/Dコンバータ10は省略されていてもよい。この場合、スイッチ素子7A,7Bをオンにしてから、電圧降下値VまたはVを取得するまでの間に挿入される待ち時間の間は、ホールド素子は電圧降下値を取得することがないよう、入力信号を取り込まないことが必要である。またこの場合、スイッチ素子動作のタイミングおよびホールド回路動作のタイミングは、演算部12自体で決定する必要はなく、別途設けたタイマーの指示により決定することも可能である。
【符号の説明】
【0042】
1,101…絶縁抵抗測定装置、2…直流電源回路、3…太陽電池モジュール、3A…正極、3B…負極、6A,6B…接続端子、7A,7B…スイッチ素子、8A,8B,108…抵抗素子、9…電圧検出部、12…演算部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流回路の対地絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定装置であって、
前記直流回路の2つの測定点に接続するための第1及び第2の接続端子と、
前記第1及び第2の接続端子と接地電位との間に接続され、前記第1及び第2の接続端子と前記接地電位との間の接続を切り換える切換部と、
前記第1及び第2の接続端子と前記接地電位との間に前記切換部を介して接続された少なくとも1つの抵抗素子と、
前記抵抗素子における電圧降下を検出する電圧検出部と、
を備えることを特徴とする絶縁抵抗測定装置。
【請求項2】
前記切換部を前記第1の接続端子側に切り換えたときに前記電圧検出部が検出した前記電圧降下の値と、前記切換部を前記第2の接続端子側に切り換えたときに前記電圧検出部が検出した前記電圧降下の値とに基づいて、前記対地絶縁抵抗を演算する演算部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1記載の絶縁抵抗測定装置。
【請求項3】
前記切換部は、前記第1の接続端子と前記接地電位との間に接続された第1のスイッチ素子と、前記第2の接続端子と前記接地電位との間に接続された第2のスイッチ素子とを有し、
前記抵抗素子は、前記第1の接続端子と前記第1のスイッチ素子との間に接続された第1の抵抗素子と、前記第2の接続端子と前記第2のスイッチ素子との間に接続された第2の抵抗素子とを有する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の絶縁抵抗測定装置。
【請求項4】
第1の抵抗素子と前記第2の抵抗素子とは抵抗値が等しい、
ことを特徴とする請求項3に記載の絶縁抵抗測定装置。
【請求項5】
前記直流回路は、太陽電池モジュールを含むものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁抵抗測定装置。
【請求項6】
直流回路の対地絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定方法であって、
前記直流回路の第1の測定点と接地電位との間に抵抗素子を接続し、該抵抗素子に発生する第1の電圧降下を検出するステップと、
前記直流回路の第2の測定点と接地電位との間に前記第1の抵抗素子と同一又は異なる抵抗素子を接続し、該抵抗素子に発生する第2の電圧降下を検出するステップと、
前記第1及び第2の電圧降下の値に基づいて、前記対地絶縁抵抗を算出するステップと、
を備えることを特徴とする絶縁抵抗測定方法。
【請求項7】
前記第1の電圧降下に対応する抵抗素子と前記第2の電圧降下に対応する抵抗素子とは抵抗値が等しい、
ことを特徴とする請求項6に記載の絶縁抵抗測定方法。
【請求項8】
前記第1及び第2の測定点は、直流電源回路の正極又は負極のいずれかであることを特徴とする請求項6又は7に記載の絶縁抵抗測定方法。
【請求項9】
前記直流回路は、太陽電池モジュールを含むものであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の絶縁抵抗測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−2417(P2011−2417A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147628(P2009−147628)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【出願人】(509176477)有限会社吉富電気 (1)
【出願人】(000232818)日本郵船株式会社 (61)
【出願人】(304035975)株式会社MTI (46)
【Fターム(参考)】