説明

絶縁材循環装置および静止誘導電器

【課題】本発明の実施形態は、メンテナンスを容易とした絶縁材循環装置および静止誘導電器を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の実施形態における絶縁材循環装置は、モータの駆動力を受けて回転する回転子軸を支持する軸受けと、前記軸受けと接続する給油孔と、前記軸受けと接続する排油孔と、前記排油孔と接続する潤滑剤溜めと、を備える。
また、前記給油孔から前記軸受けに供給された潤滑剤が前記排油孔に排出され、排出された前記潤滑剤が前記排油孔を通って外部潤滑剤溜めに蓄積する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、絶縁材循環装置および静止誘導電器に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器、リアクトル等の静止誘導電器は、タンク内に高電圧が印加される高電圧導体を格納している。そのため、静止誘導電器のタンク内は絶縁ガス、絶縁油等の絶縁材が充填されており、高電圧導体とタンクとを絶縁している。この絶縁材は、温度が上昇するほど絶縁性能が低下するため、高電圧導体の通電時には、絶縁材をタンク内で循環する絶縁材循環装置を動作させている。
【0003】
次に、絶縁材循環装置のうち、絶縁材として絶縁ガスを用いた場合のガス送風機について図5を用いて説明する。図5は、従来のガス送風機の構成を示す断面図である。
【0004】
従来のガス送風機は、グリス給油孔1、グリス排油孔2、軸受け3、回転子軸4、駆動モータ10、モータケース11、羽根12、羽根ケース13、ガス流入口14、およびガス流出口15を備える。
【0005】
グリス給油孔1は、モータケース11の外部と軸受け3とを連結しており、モータケース11の外部からグリス給油孔1にグリスを給油することによって、軸受け3にグリスが供給される。
【0006】
グリス排油孔2は、軸受け3とモータケース11の外部とを連結しており、軸受け3に供給されたグリスがグリス排油孔2内に排出される。排出されたグリスはグリス排油孔2に蓄積される。
【0007】
軸受け3は、例えばベアリングであり、駆動モータ10により回転される回転子軸4を支持している。また、これらのグリス給油孔1、グリス排油孔2、軸受け3、および駆動モータ10は、モータケース11の内部に格納されている。
【0008】
羽根12は、羽根ケース13に格納されており、回転子軸4の駆動力が伝達されることで回転する。羽根ケース13のガス流入口14およびガス流出口15は図示しない静止誘導電器のタンクと接続しているため、羽根12が回転することによって、ガス流入口14から絶縁ガスが流入し、ガス流出口15に流出する。
【0009】
上述した構成を持つガス送風機では、グリス給油孔1から軸受け3に供給したグリスは経年使用により潤滑性能が低下するため、数年おきに決められた量の新しいグリスをグリス給油孔1から軸受け3に補給する必要がある。新しいグリスを軸受け3へ補給することにより、それまで軸受け3にあった古い(経年使用)グリスが排油孔2に押し出される。しかし、軸受け3から排出されたグリスを蓄積するグリス排油孔2の容積は限定されているため、グリスを補給可能な回数が制限されている。
【0010】
したがって、補給可能な回数を超えてグリスを補給し、ガス送風機の使用を継続する場合は、グリス排油孔2に蓄積されるグリスを除去するため、ガス送風機を静止誘導電器から取り外してメンテナンスする。そのため、ガス送風機が設置される静止誘導電器を停止させる必要がある。
【0011】
さらに、静止誘導電器のタンクには高圧かつ温暖化係数の高い絶縁ガスが充填されているため、高圧対策や大規模なガス回収処理作業を伴うという課題があった。
【0012】
なお、絶縁材として絶縁油を用いた場合には、絶縁油ポンプを用いるが、ガス送風機と同様の構成を備えるものもある。その場合、ガス送風機と同様の課題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平6−81849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の実施形態は、メンテナンスを容易とした絶縁材循環装置および静止誘導電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の実施形態における絶縁材循環装置は、モータの駆動力を受けて回転する回転子軸を支持する軸受けと、前記軸受けと接続する給油孔と、前記軸受けと接続する排油孔と、前記排油孔と接続する潤滑剤溜めと、を備える。
【0016】
また、前記給油孔から前記軸受けに供給された潤滑剤が前記排油孔に排出され、排出された前記潤滑剤が前記排油孔を通って外部潤滑剤溜めに蓄積する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態のガス送風機の構成を示す断面図。
【図2】第2の実施形態のガス送風機の構成を示す断面図。
【図3】第2の実施形態のガス送風機の外部グリス溜め5のメンテナンス手順を示すフローチャート。
【図4】第3の実施形態のガス送風機の構成を示す断面図。
【図5】従来のガス送風機の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態の絶縁材循環装置および静止誘導電器について図面を参照して説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
第1の実施形態のガス送風機の構成について図1を用いて説明する。図1は、本実施形態のガス送風機の構成を示す断面図である。従来の同一の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0020】
図5に示す従来のガス送風機と異なる点は、モータケース11の外部に接続管6、外部グリス溜め5を備える点である。
【0021】
接続管6は、グリス排油孔2のうち、軸受け3が接続する端部の対向端に接続されている。また、この接続管6は例えば金属材料にて円筒形状に形成されており、図示しない静止誘導電器のタンク内に充填された絶縁ガスのガス圧力に耐える。
【0022】
外部グリス溜め5は、接続管6のうち、グリス排油孔2が接続する端部の対向端に接続されている。また、この外部グリス溜め5は例えば金属材料にて方体形状にて形成されており、図示しない静止誘導電器のタンク内に充填された絶縁ガスのガス圧力に耐える。
【0023】
上述した構成を備えることによって、グリス給油孔1から供給したグリスは軸受け3、グリス排油孔2、および接続管6を通って外部グリス溜め5に排出される。
【0024】
すなわち、接続管6および外部グリス溜め5を備えることによって、グリス排油孔2から排出されたグリスの蓄積量を増加させることが可能である。また、静止誘導電器又はガス送風機の運転可能年数(寿命)に応じて、外部グリス溜め5の容積を変更することによって、メンテナンスの必要のないガス送風機を提供することが可能である。
【0025】
さらに、メンテナンスの必要がない本実施形態のガス送風機を静止誘導電器に設置することによって、電力の安定供給が可能となる。
【0026】
なお、本実施形態は絶縁材として絶縁ガスを用いた場合のガス送風機について説明したが、絶縁材として絶縁油を用いた場合には、絶縁油ポンプを用いる。この絶縁油ポンプはガス送風機と同様の構成を備えるものもあり、絶縁油ポンプに接続管および外部グリス溜めを備えることによって、上述した同様の効果を得ることが可能である。
【0027】
さらに、接続管6の内径をグリス排油孔2の内径より大きくすることによって、軸受け3から排出されたグリスが、グリス排油孔2、接続管6を通って外部グリス溜め5に流入し易くなる。例えば、使用するグリスの粘度が5〜1000mm2/sの場合には、接続管6の内径をグリス排油孔2の内径の1倍〜5倍とすることで、グリスが外部グリス溜め5に流入し易くなる。
【0028】

(第2の実施形態)
第2の実施形態のガス送風機の構成について図2を用いて説明する。図2は、本実施形態のガス遮断器の構成を示す断面図である。第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0029】
本実施形態の構成が第1の実施形態のガス送風機と異なる点は、接続バルブ7、仕切りバルブ8を備える点である。
【0030】
接続バルブ7は、接続管6と外部グリス溜め5との間に設置され、図示しない静止誘導電器のタンクに充填された絶縁ガスのガス圧力に耐える。この接続バルブ7を閉めることによって、接続管6と外部グリス溜め5との絶縁ガス又はグリスの流入出を防ぎ、開けることによって、接続管6と外部グリス溜め5との絶縁ガス又はグリスの流入出を可能とする。
【0031】
仕切りバルブ8は、外部グリス溜め5に接続され、図示しない静止誘導電器のタンクに充填された絶縁ガスのガス圧力に耐える。仕切りバルブ8を閉めることによって、外部と外部グリス溜め5との絶縁ガス又はグリスの流入出を防ぎ、開けることによって、外部と外部グリス溜め5との絶縁ガス又はグリスの流入出を可能とする。
【0032】
なお、本実施形態のガス送風機が動作している場合は、接続バルブ7は開けられており、仕切りバルブ8は閉じられている。
【0033】
上述した構成を備えるガス送風機では、グリス給油孔1から供給したグリスは軸受け3、グリス排油孔2、接続管6、および接続バルブ7を通って外部グリス溜め5に排出される。
【0034】
次に、長期間の運転が行われることで、外部グリス溜め5の蓄積量が許容量近くに達し、外部グリス溜め5のメンテナンスを行う際の手順について図3を用いて説明する。図3は外部グリス溜め5のメンテナンスの手順を示すフローチャートである。
【0035】
・仕切りバルブ8の外部側に絶縁ガスを回収するガス回収機を設置する(S1)。
【0036】
・接続バルブ7を閉じる(S2)。
【0037】
・仕切りバルブ8を開ける(S3)。
【0038】
・ガス回収機を動作させ、外部グリス溜め5内の絶縁ガスを回収する(S4)。
【0039】
・ガス回収機を取り外す(S5)。
【0040】
・外部グリス溜め5内に蓄積したグリスを除去する(S6)。
【0041】
・外部グリス溜め5の外部側に真空引きを行う真空ポンプを設置する(S7)。
【0042】
・真空ポンプを動作させ、外部グリス溜め5内部を真空に引く(S8)。
【0043】
・仕切りバルブ8を閉じる(S9)。
【0044】
・真空ポンプを取り外す(S10)。
【0045】
・接続バルブ7を開ける(S11)。
【0046】
上述した手順により、外部グリス溜め5のメンテナンスを行う。
【0047】
本実施形態のガス送風機によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることが可能である。また、長期間の使用により外部グリス溜め5の蓄積許容量近くに達した場合にも、メンテナンスが可能である。そのメンテナンスの際は、接続バルブ7および仕切りバルブ8を開け閉めすることによって、静止誘導電器の内部に充填された絶縁ガスを外部に排出することなく、外部グリス溜め5に蓄積したグリスを除去することが可能である。
【0048】
さらに、外部グリス溜め5のメンテナンスを行う際には、本実施形態のガス送風機を設置した静止誘導電器を停止させる必要がないため、さらなる電力の安定供給を可能とする。
【0049】
なお、外部グリス溜め5は、接続バルブ7および仕切りバルブ8とから取り外し可能とすることによって、メンテナンスの際には、外部グリス溜め5を交換することができる。
【0050】

(第3の実施形態)
第3の実施形態のガス送風機の構成について図4を用いて説明する。図4は、本実施形態のガス送風機の構成を示す断面図である。第2の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0051】
第2の実施形態のガス送風機と異なる点は、接続管6を鉛直方向上向きに折り曲げ、さらに接続バルブ7に代えて逆止弁9を備えた点である。
【0052】
逆止弁9は、接続管6と外部グリス溜め5との間に設置され、接続管6から外部グリス溜め5への絶縁ガスおよびグリスの流出を可能とし、外部グリス溜め5から接続管6へのグリスの流出を防止している。
【0053】
上述した構成を備えることによって、グリス給油孔1から供給したグリスは軸受け3、グリス排油孔2、接続管6、および逆止弁9を通って外部グリス溜め5に排出される。
【0054】
本実施形態のガス送風機によれば、逆止弁9を備えることによって、接続管6を鉛直方向上向きに折り曲げても外部グリス溜め5に蓄積されたグリスが接続管6に逆流することがない。すなわち、接続管6を鉛直方向上向きに設置することが可能となり、ガス送風機周辺の空きスペースが狭い場合にも第2の実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0055】

なお、本実施形態は絶縁材として絶縁ガスを用いたガス送風機について記したが、絶縁材として絶縁油を用いた場合には、絶縁油ポンプを用いる。この絶縁油ポンプは、ガス送風機と同様の構成を備えるものもあり、上述した同様の効果を得ることが可能である。
【0056】

本発明に係る実施形態によれば、メンテナンスを容易とした絶縁材循環装置および静止誘導電器を提供することができる。
【0057】

以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1…グリス給油孔
2…グリス排油孔
3…軸受け
4…回転子軸
5…外部グリス溜め
6…接続管
7…接続バルブ
8…仕切りバルブ
9…逆止弁
10…駆動モータ
11…モータケース
12…羽根
13…羽根ケース
14…ガス流入口
15…ガス流出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を発生させる駆動手段と、
前記駆動手段の駆動力を受けて回転する回転子軸と、
前記回転子軸を支持する軸受けと、
前記軸受けと接続し、潤滑剤を軸受けに供給する給油孔と、
前記軸受けと接続し、前記軸受けから潤滑剤を排出する排油孔と、
前記排油孔と接続し、前記排油孔から排出される潤滑剤を蓄積する潤滑剤溜めと、を備える絶縁材循環装置。
【請求項2】
前記排油孔と前記潤滑剤溜めとを接続し、前記排油孔から前記潤滑剤溜めへ潤滑剤を通過させる接続管と、
を備える請求項1記載の絶縁材循環装置。
【請求項3】
前記接続管は、鉛直方向上向きに設置される請求項2記載の絶縁材循環装置。
【請求項4】
前記接続管の断面積は、前記排油孔の断面積より大きい請求項2又は3に記載の絶縁材循環装置。
【請求項5】
前記排油孔と前記潤滑剤溜めとの潤滑剤の流入出を制御する接続バルブと、
を備える請求項1乃至4のいずれか1項に記載の絶縁材循環装置。
【請求項6】
前記潤滑剤溜め内部と前記潤滑剤溜め外部との潤滑剤の流入出を制御止する仕切りバルブと、
を備える請求項1乃至5のいずれか1項に記載の絶縁材循環装置。
【請求項7】
絶縁材が充填されたタンクと、
前記タンクに格納された巻線と、
駆動力を発生させる駆動手段と、
前記駆動手段の駆動力を受けて回転する回転子軸と、
前記回転子軸を支持する軸受けと、
前記軸受けと接続し、潤滑剤を軸受けに供給する給油孔と、
前記軸受けと接続し、前記軸受けから潤滑剤を排出する排油孔と、
前記排油孔と接続し、前記排油孔から排出される潤滑剤を蓄積する潤滑剤溜めと、を備える静止誘導電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−149708(P2012−149708A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8984(P2011−8984)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】