説明

絶縁材料及び積層構造体

【課題】熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を導電層に接着するために用いられ、硬化後の硬化物の放熱性及び加工性が高い絶縁材料を提供する。
【解決手段】本発明に係る絶縁材料は、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体2を導電層4に接着するために用いられる。本発明に係る絶縁材料は、エポキシ基又はオキセタニル基を有する硬化性化合物と、硬化剤と、ケイ砂とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を導電層に接着するために用いられる絶縁材料に関し、より詳細には、硬化後の硬化物の放熱性及び加工性が高い絶縁材料、並びに該絶縁材料を用いた積層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器及び通信機器では、絶縁層を有するプリント配線板が用いられている。該絶縁層は、ペースト状又はシート状の絶縁接着材料を用いて形成されている。
【0003】
上記絶縁接着材料の一例として、下記の特許文献1には、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤、硬化促進剤、エラストマー及び無機充填剤を含む接着剤組成物を、ガラスクロスに含浸させた絶縁接着シートが開示されている。
【0004】
ガラスクロスを含まない絶縁接着材料も知られている。例えば、下記の特許文献2の実施例には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノールノボラック、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びアルミナを含む絶縁接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−342238号公報
【特許文献2】特開平8−332696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の絶縁接着シートでは、ハンドリング性を高めるために、ガラスクロスが用いられている。ガラスクロスを含む絶縁接着シートでは、薄膜化が困難であり、かつレーザー加工又はドリル穴開け加工等の各種加工が困難である。また、ガラスクロスを含む絶縁接着シートの硬化物の熱伝導率は比較的低いため、充分な放熱性が得られないことがある。さらに、ガラスクロスに接着剤組成物を含浸させるために、特殊な含浸設備を用意しなければならない。
【0007】
特許文献2に記載の絶縁接着剤では、ガラスクロスが用いられていないため、未硬化状態ではそれ自体が自立性を有するシートではない。このため、絶縁接着剤のハンドリング性が低い。
【0008】
また、近年、電気機器の小型化及び高性能化が進行している。このため、上記電子機器及び通信機器に用いられるプリント配線板では、多層化及び薄膜化が進行しており、かつ電子部品の実装密度が高くなっている。これに伴って、電子部品から大きな熱量が発生しやすくなっており、発生した熱を放散させる必要が高まっている。熱を放散させるために、プリント配線板の絶縁層は、高い熱伝導率を有する必要がある。
【0009】
高い熱伝導率を上記絶縁層に付与するために、例えば、該絶縁層を形成するための絶縁接着材料に、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導性が高いフィラーを配合する方法が一般的に採用されている。また、熱伝導性が比較的高いフィラーとして、アルミナが知られている。しかしながら、従来のアルミナを含む絶縁接着材料では、硬化物の加工性が低いことがある。
【0010】
また、アルミナよりもモース硬度が低いフィラーとして、石英結晶鉱石を破砕した石英フィラーが知られている。しかしながら、一般的な石英フィラーの熱伝導率は、アルミナの熱伝導率と比較すると低い。このため、アルミナを用いた場合と同等の放熱性を得るためには、石英フィラーの充填量を増やす必要があり、結果として加工性の大幅な改善にはつながらないことがある。
【0011】
本発明の目的は、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を導電層に接着するために用いられ、硬化後の硬化物の放熱性及び加工性が高い絶縁材料、並びに該絶縁材料を用いた積層構造体を提供することである。
【0012】
本発明の限定的な目的は、硬化後の硬化物の放熱性及び加工性が高いだけでなく、該硬化物の反射率も高い絶縁材料、並びに該絶縁材料を用いた積層構造体を提供することである。
【0013】
本発明のさらに限定的な目的は、シート状の絶縁シートであって、未硬化状態での該絶縁シートのハンドリング性に優れている絶縁材料、並びに該絶縁材料を用いた積層構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の広い局面によれば、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を導電層に接着するために用いられる絶縁材料であって、エポキシ基又はオキセタニル基を有する硬化性化合物と、硬化剤と、ケイ砂とを含む、絶縁材料が提供される。
【0015】
上記ケイ砂のSiOの含有量は99%以上であることが好ましい。上記ケイ砂の白色度は80以上、90以下であることが好ましい。また、上記ケイ砂の重量平均粒子径が12μm以下であり、かつ最大粒子径が50μm以下であることが好ましい。上記ケイ砂は、重量平均粒子径が6μm以上、12μm以下である第1のケイ砂と、重量平均粒子径が1μm以上、3μm以下である第2のケイ砂との双方を含有することも好ましい。また、上記ケイ砂は、Alの含有量が0.05%以上であるケイ砂を含有することが好ましい。
【0016】
本発明に係る絶縁材料100体積%中、上記ケイ砂の全含有量は40体積%以上、80体積%以下であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る絶縁材料のある特定の局面では、チタネート系又はジルコネート系のカップリング剤がさらに含まれる。
【0018】
本発明に係る絶縁材料の他の特定の局面では、重量平均分子量が10000以上であるポリマーがさらに含まれる。
【0019】
上記硬化剤は塩基性の硬化剤であることが好ましい。さらに、上記硬化剤はジシアンジアミドを含有することが好ましい。
【0020】
本発明に係る絶縁材料の別の特定の局面では、該絶縁材料は、シート状の絶縁シートである。
【0021】
本発明に係る積層構造体は、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体と、該熱伝導体の少なくとも一方の表面に積層された絶縁層と、該絶縁層の上記熱伝導体が積層された表面とは反対側の表面に積層された導電層とを備えており、上記絶縁層が、本発明に従って構成された絶縁材料を硬化させることにより形成されている。上記熱伝導体は金属であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る絶縁材料は、エポキシ基又はオキセタニル基を有する硬化性化合物と、硬化剤と、ケイ砂とを含むので、本発明に係る絶縁材料を硬化させた硬化物の放熱性及び加工性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る積層構造体を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0025】
本発明に係る絶縁材料は、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を導電層に接着するために用いられる絶縁材料である。本発明に係る絶縁材料は、エポキシ基又はオキセタニル基を有する硬化性化合物(A)と、硬化剤(C)と、ケイ砂(D)とを含む。
【0026】
本発明に係る絶縁材料における上記組成の採用により、モース硬度が非常に高いアルミナを用いた絶縁材料の硬化物や、石英結晶鉱石を破砕した石英フィラーを用いた絶縁材料の硬化物と比較して、本発明に係る絶縁材料の硬化物の熱伝導性及び加工性をバランスよく高めることができる。絶縁材料の硬化物の熱伝導性が高くなる結果、硬化物の放熱性が高くなる。さらに、本発明に係る絶縁材料は上記組成を有し、特にケイ砂を含むので、硬化物の反射率を高く維持したままで、硬化物の加工性を高めることが可能である。
【0027】
さらに、本発明に係る絶縁材料における上記組成の採用により、硬化物の耐熱性及び絶縁破壊特性も高めることができる。
【0028】
本発明に係る絶縁材料は、液状の絶縁組成物であってもよく、シート状の絶縁シートであってもよい。取り扱い性を高めるために、本発明に係る絶縁材料は、シート状の絶縁シートであることが好ましい。本発明に係る絶縁材料は上記組成を有するので、未硬化状態での絶縁シートのハンドリング性を高めることができる。
【0029】
本発明に係る絶縁材料は、重量平均分子量が10000以上であるポリマー(B)をさらに含むことが好ましい。ポリマー(B)の使用により、ハンドリング性がより一層良好な絶縁シートを得ることができる。
【0030】
本発明に係る絶縁材料は、上述の成分に加えて、チタン系又はジルコン系のカップリング剤(E)をさらに含むことが好ましい。上記成分とともに特定のカップリング剤(E)を用いることにより、接着対象部材である導電層及び熱伝導体に対する硬化物の接着性を高くすることができる。特に、本発明者は、上記成分とともに特定のカップリング剤(E)を用いることにより、絶縁材料の硬化物の銅により形成された導電層に対する接着性を高くすることができることを見出した。更に、特定のカップリング剤(E)を含む上記組成の採用により、絶縁材料の硬化物の耐水性及び耐湿性を高くすることができる。
【0031】
以下、先ず、本発明に係る絶縁材料に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0032】
(硬化性化合物(A))
本発明に係る絶縁材料に含まれている硬化性化合物(A)は、エポキシ基又はオキセタニル基を有していれば特に限定されない。エポキシ基又はオキセタニル基を有する硬化性化合物(A)として、従来公知のエポキシ化合物又はオキセタン化合物を用いることができる。硬化性化合物(A)は、硬化剤(C)の作用により硬化する。硬化性化合物(A)は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0033】
硬化性化合物(A)は、エポキシ基を有するエポキシ化合物(A1)を含んでいてもよく、オキセタニル基を有するオキセタン化合物(A2)を含んでいてもよい。
【0034】
硬化物の耐熱性及び絶縁破壊特性をより高める観点からは、硬化性化合物(A)は芳香族骨格を有することが好ましい。
【0035】
エポキシ基を有するエポキシ化合物(A1)の具体例としては、ビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシモノマー、ナフタレン骨格を有するエポキシモノマー、アダマンタン骨格を有するエポキシモノマー、フルオレン骨格を有するエポキシモノマー、ビフェニル骨格を有するエポキシモノマー、バイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシモノマー、キサンテン骨格を有するエポキシモノマー、アントラセン骨格を有するエポキシモノマー、及びピレン骨格を有するエポキシモノマー等が挙げられる。これらの水素添加物又は変性物を用いてもよい。エポキシ化合物(A1)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
上記ビスフェノール骨格を有するエポキシモノマーとしては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型又はビスフェノールS型のビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー等が挙げられる。
【0037】
上記ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシモノマーとしては、ジシクロペンタジエンジオキシド、及びジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシモノマー等が挙げられる。
【0038】
上記ナフタレン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1−グリシジルナフタレン、2−グリシジルナフタレン、1,2−ジグリシジルナフタレン、1,5−ジグリシジルナフタレン、1,6−ジグリシジルナフタレン、1,7−ジグリシジルナフタレン、2,7−ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、及び1,2,5,6−テトラグリシジルナフタレン等が挙げられる。
【0039】
上記アダマンタン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,3−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン、及び2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン等が挙げられる。
【0040】
上記フルオレン骨格を有するエポキシモノマーとしては、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、及び9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0041】
上記ビフェニル骨格を有するエポキシモノマーとしては、4,4’−ジグリシジルビフェニル、及び4,4’−ジグリシジル−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル等が挙げられる。
【0042】
上記バイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,1’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、及び1,2’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン等が挙げられる。
【0043】
上記キサンテン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,3,4,5,6,8−ヘキサメチル−2,7−ビス−オキシラニルメトキシ−9−フェニル−9H−キサンテン等が挙げられる。
【0044】
オキセタニル基を有するオキセタン化合物(A2)の具体例としては、例えば、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ベンゼンジカルボン酸ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]エステル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、及びオキセタン変性フェノールノボラック等が挙げられる。オキセタン化合物(A2)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0045】
硬化性化合物(A)の分子量は、10000未満であることが好ましい。硬化性化合物(A)の分子量は、好ましくは200以上、より好ましくは1200以下、更に好ましくは600以下、特に好ましくは550以下である。硬化性化合物(A)の分子量が上記下限以上であると、硬化性化合物(A)の揮発性が低くなり、絶縁材料の取扱い性がより一層高くなる。硬化性化合物(A)の分子量が上記上限以下であると、硬化物の接着性がより一層高くなる。さらに、絶縁材料が固くかつ脆くなり難く、硬化物の接着性がより一層高くなる。
【0046】
なお、本明細書において、硬化性化合物(A)における分子量とは、重合体ではない場合、及び構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味し、重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
【0047】
絶縁材料及び絶縁シートに含まれている全樹脂成分(以下、全樹脂成分Xと略記することがある)の合計100重量%中、硬化性化合物(A)の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更に好ましくは70重量%以下、特に好ましくは60重量%以下、最も好ましくは50重量%以下である。硬化性化合物(A)の含有量が上記下限以上であると、硬化物の接着性及び耐熱性がより一層高くなる。硬化性化合物(A)の含有量が上記上限以下であると、絶縁材料の塗工性及び絶縁シートのハンドリング性がより一層高くなる。なお、全樹脂成分Xとは、硬化性化合物(A)、硬化剤(C)及び必要に応じて添加される他の樹脂成分の総和をいう。全樹脂成分Xに、ケイ砂(D)は含まれない。
【0048】
(ポリマー(B))
本発明に係る絶縁材料は、重量平均分子量が10000以上であるポリマー(B)を含むことが好ましい。但し、上記絶縁材料は、ポリマー(B)を必ずしも含んでいなくてもよい。ポリマー(B)は、重量平均分子量が10000以上であれば特に限定されない。硬化物の耐熱性をより一層高める観点からは、ポリマー(B)は、芳香族骨格を有することが好ましい。ポリマー(B)が芳香族骨格を有する場合には、ポリマー(B)は、芳香族骨格をポリマー全体のいずれかの部分に有していればよく、主鎖骨格内に有していてもよく、側鎖中に有していてもよい。ポリマー(B)は、芳香族骨格を主鎖骨格内に有することが好ましい。この場合には、絶縁材料の硬化物の耐熱性がさらに一層高くなる。ポリマー(B)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
上記芳香族骨格は特に限定されない。上記芳香族骨格の具体例としては、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びビスフェノールA型骨格等が挙げられる。なかでも、ビフェニル骨格又はフルオレン骨格が好ましい。この場合には、絶縁材料の硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0050】
ポリマー(B)として、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂などの硬化性樹脂等が使用可能である。ポリマー(B)は硬化性樹脂であることが好ましい。
【0051】
上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、特に限定されない。上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン又はポリエーテルケトン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂として、熱可塑性ポリイミド、熱硬化性ポリイミド、ベンゾオキサジン、及びポリベンゾオキサゾールとベンゾオキサジンとの反応物などのスーパーエンプラと呼ばれている耐熱性樹脂群等を使用できる。上記熱可塑性樹脂及び上記熱硬化性樹脂はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の内のいずれか一方が用いられてもよく、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とが併用されてもよい。
【0052】
ポリマー(B)は、エポキシ樹脂、スチレン系重合体、(メタ)アクリル系重合体又はフェノキシ樹脂であることが好ましく、エポキシ樹脂又はフェノキシ樹脂であることがより好ましく、フェノキシ樹脂であることが更に好ましい。この好ましいポリマーの使用により、絶縁材料の硬化物が酸化劣化し難くなり、かつ耐熱性がより一層高くなる。特に、エポキシ樹脂又はフェノキシ樹脂の使用により、硬化物の耐熱性がより一層高くなり、フェノキシ樹脂の使用により、硬化物の耐熱性が更に一層高くなる。
【0053】
上記エポキシ樹脂は、フェノキシ樹脂以外のエポキシ樹脂であることが好ましい。該エポキシ樹脂としては、スチレン骨格含有エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。また、ポリマー(B)はエポキシ基を有していなくてもよい。
【0054】
上記スチレン系重合体として、具体的には、スチレン系モノマーの単独重合体、又はスチレン系モノマーとアクリル系モノマーとの共重合体等が使用可能である。中でも、スチレン−メタクリル酸グリシジルの構造を有するスチレン系重合体が好ましい。
【0055】
上記スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン及び3,4−ジクロロスチレン等が挙げられる。
【0056】
上記アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル及びメタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0057】
上記フェノキシ樹脂は、具体的には、例えばエピハロヒドリンと2価フェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂である。
【0058】
上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びジシクロペンタジエン骨格からなる群から選択された少なくとも1つの骨格を有することが好ましい。中でも、上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格及びビフェニル骨格からなる群から選択された少なくとも1種の骨格を有することがより好ましく、フルオレン骨格及びビフェニル骨格の内の少なくとも1種の骨格を有することが更に好ましい。これらの好ましい骨格を有するフェノキシ樹脂の使用により、絶縁材料の硬化物の耐熱性がさらに一層高くなる。
【0059】
上記フェノキシ樹脂は、主鎖中に多環式芳香族骨格を有することが好ましい。また、上記フェノキシ樹脂は、下記式(11)〜(16)で表される骨格の内の少なくとも1つの骨格を主鎖中に有することがより好ましい。
【0060】
【化1】

【0061】
上記式(11)中、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン原子であり、Xは単結合、炭素数1〜7の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO−、又は−CO−である。
【0062】
【化2】

【0063】
上記式(12)中、R1aは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン原子であり、Rは、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン原子であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、mは0〜5の整数である。
【0064】
【化3】

【0065】
上記式(13)中、R1bは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン原子であり、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン原子であり、lは0〜4の整数である。
【0066】
【化4】

【0067】
【化5】

【0068】
上記式(15)中、R及びRは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子であり、Xは−SO−、−CH−、−C(CH−、又は−O−であり、kは0又は1である。
【0069】
【化6】

【0070】
ポリマー(B)として、例えば、下記式(17)又は下記式(18)で表されるフェノキシ樹脂が好適に用いられる。
【0071】
【化7】

【0072】
上記式(17)中、Aは上記式(11)〜(13)の内のいずれかで表される構造を有し、かつその構成は上記式(11)で表される構造が0〜60モル%、上記式(12)で表される構造が5〜95モル%、及び上記式(13)で表される構造が5〜95モル%であり、Aは水素原子、又は上記式(14)で表される基であり、nは平均値で25〜500の数である。上記式(17)中、上記式(11)で表される構造は含まれていなくてもよい。
【0073】
【化8】

【0074】
上記式(18)中、Aは上記式(15)又は上記式(16)で表される構造を有し、nは少なくとも21以上の値である。
【0075】
ポリマー(B)のガラス転移温度Tgは、好ましくは60℃以上、より好ましくは90℃以上、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。ポリマー(B)のTgが上記下限以上であると、樹脂が熱劣化し難い。ポリマー(B)のTgが上記上限以下であると、ポリマー(B)と他の樹脂との相溶性が高くなる。この結果、未硬化状態での絶縁シートのハンドリング性がより一層良好になり、かつ絶縁材料の硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0076】
ポリマー(B)がフェノキシ樹脂である場合には、フェノキシ樹脂のガラス転移温度Tgは、好ましくは95℃以上、より好ましくは110℃以上、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。フェノキシ樹脂のTgが上記下限以上であると、樹脂の熱劣化をより一層抑制できる。フェノキシ樹脂のTgが上記上限以下であると、フェノキシ樹脂と他の樹脂との相溶性が高くなる。この結果、未硬化状態での絶縁シートのハンドリング性、並びに絶縁材料の硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0077】
ポリマー(B)の重量平均分子量は10000以上である。ポリマー(B)の重量平均分子量は、好ましくは30000以上、より好ましくは40000以上、好ましくは1000000以下、より好ましくは250000以下である。ポリマー(B)の重量平均分子量が上記下限以上であると、絶縁材料が熱劣化し難い。ポリマー(B)の重量平均分子量が上記上限以下であると、ポリマー(B)と他の樹脂との相溶性が高くなる。この結果、未硬化状態での絶縁シートのハンドリング性がより一層良好になり、並びに絶縁材料の硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0078】
ポリマー(B)は、原材料として添加されていてもよく、また本発明の絶縁材料又は絶縁シートの作製時における攪拌、塗工及び乾燥などの各工程中における反応を利用して生成されたポリマーであってもよい。
【0079】
上記全樹脂成分Xの合計100重量%中、ポリマー(B)の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、更に好ましくは30重量%以上、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。ポリマー(B)の含有量が上記下限以上であると、未硬化状態での絶縁シートのハンドリング性がより一層良好になる。ポリマー(B)の含有量が上記上限以下であると、ケイ砂(D)の分散が容易になる。
【0080】
(硬化剤(C))
本発明に係る絶縁材料に含まれている硬化剤(C)は、絶縁材料を硬化させることが可能であれば特に限定されない。硬化剤(C)は、熱硬化剤であることが好ましい。硬化剤(C)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0081】
硬化物の耐熱性をより一層高める観点からは、硬化剤(C)は、芳香族骨格又は脂環式骨格を有することが好ましい。硬化剤(C)は、ジシアンジアミドを含むか、イミダゾール化合物を含むか、フェノール樹脂を含むか、芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物を含むか、又は、脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物を含むことが好ましい。
【0082】
ケイ砂(D)の分散性を改善し、更に硬化物の絶縁破壊電特性及び放熱性を高める観点からは、硬化剤(C)は塩基性の硬化剤であることが好ましい。また、ケイ砂(D)の分散性をより一層改善し、更に硬化物の絶縁破壊電特性及び放熱性をより一層高める観点からは、硬化剤(C)は、ジシアンジアミド及びイミダゾール化合物の内の少なくとも1種を含有することがより好ましく、ジシアンジアミドを含むことが特に好ましい。また、硬化剤(C)は、ジシアンジアミドとイミダゾール化合物との双方を含むことも好ましい。これらの好ましい硬化剤の使用により、ケイ砂(D)の絶縁材料中での分散性が高くなり、更に耐熱性、耐湿性及び電気物性のバランスに優れた硬化物を得ることができる。この結果、ケイ砂(D)の含有量を増やし、放熱性を高めることもできる。特にジシアンジアミドを用いた場合、硬化物と銅箔との密着力を高めることができる。
【0083】
上記イミダゾール化合物としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0084】
上記フェノール樹脂としては特に限定されないが、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、ポリパラビニルフェノール、ビスフェノールA型ノボラック、キシリレン変性ノボラック、デカリン変性ノボラック、ポリ(ジ−o−ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ−m−ヒドロキシフェニル)メタン、及びポリ(ジ−p−ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。絶縁材料の柔軟性及び硬化物の難燃性をより一層高める観点からは、メラミン骨格を有するフェノール樹脂、トリアジン骨格を有するフェノール樹脂、又はアリル基を有するフェノール樹脂が好ましい。
【0085】
上記フェノール樹脂の市販品としては、MEH−8005、MEH−8010及びMEH−8015(以上いずれも明和化成社製)、YLH903(三菱化学社製)、LA−7052、LA−7054、LA−7751、LA−1356及びLA−3018−50P(以上いずれもDIC社製)、並びにPS6313及びPS6492(以上いずれも群栄化学社製)等が挙げられる。
【0086】
上記芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物としては特に限定されないが、例えば、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ピロメリット酸無水物、トリメリット酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、フェニルエチニルフタル酸無水物、グリセロールビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及びトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0087】
上記芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物の市販品としては、SMAレジンEF30、SMAレジンEF40、SMAレジンEF60及びSMAレジンEF80(以上いずれもサートマー・ジャパン社製)、ODPA−M及びPEPA(以上いずれもマナック社製)、リカシッドMTA−10、リカシッドMTA−15、リカシッドTMTA、リカシッドTMEG−100、リカシッドTMEG−200、リカシッドTMEG−300、リカシッドTMEG−500、リカシッドTMEG−S、リカシッドTH、リカシッドHT−1A、リカシッドHH、リカシッドMH−700、リカシッドMT−500、リカシッドDSDA及びリカシッドTDA−100(以上いずれも新日本理化社製)、並びにEPICLON B4400、EPICLON B650、及びEPICLON B570(以上いずれもDIC社製)等が挙げられる。
【0088】
上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物は、多脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物、又はテルペン系化合物と無水マレイン酸との付加反応により得られる脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物であることが好ましい。これらの硬化剤の使用により、硬化物の柔軟性、並びに硬化物の耐湿性及び接着性がより一層高くなる。
【0089】
上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物としては、メチルナジック酸無水物、ジシクロペンタジエン骨格を有する酸無水物又は該酸無水物の変性物等も挙げられる。
【0090】
上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物の市販品としては、リカシッドHNA及びリカシッドHNA−100(以上いずれも新日本理化社製)、並びにエピキュアYH306、エピキュアYH307、エピキュアYH308H及びエピキュアYH309(以上いずれも三菱化学社製)等が挙げられる。
【0091】
硬化剤(C)は、メチルナジック酸無水物又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸であることも好ましい。メチルナジック酸無水物又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸の使用により、硬化物の耐水性が高くなる。
【0092】
上記全樹脂成分Xの合計100重量%中、硬化剤(C)の含有量は好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。硬化剤(C)の含有量が上記下限以上であると、絶縁材料を充分に硬化させることが容易である。硬化剤(C)の含有量が上記上限以下であると、硬化に関与しない余剰な硬化剤(C)が発生し難くなる。このため、硬化物の耐熱性及び接着性がより一層高くなる。
【0093】
(ケイ砂(D))
本発明に係る絶縁材料に含まれているケイ砂(D)は、アルミナと比較するとやや熱伝導率は低いものの加工性に優れている。このため、ケイ砂(D)の充填量を増やすことができ、この結果として熱伝導率及び加工性に優れた硬化物を得ることができる。また一般的な結晶性石英鉱石を破砕した石英フィラーと比較した場合でも、ケイ砂(D)は加工性に優れている。この理由は、結晶性石英鉱石を破砕した石英フィラーと比較して、ケイ砂(D)の破断面は鋭利ではないためである。従って、ケイ砂(D)の使用により、硬化物の放熱性及び加工性の双方を良好にすることができる。ケイ砂(D)は、石英結晶鉱石を破砕した石英フィラーではない。
【0094】
本発明に係る絶縁材料に含まれているケイ砂(D)の蛍光X線分析による純度(SiOの含有量)は、好ましくは99.0%以上、好ましくは99.9%以下である。このような純度のケイ砂の使用により、硬化物の放熱性及び加工性がより一層高くなる。純度が99.9%を超えるケイ砂を用いた場合には、硬化物の加工性が低くなる傾向がある。純度が99.0%未満であると、硬化物の放熱性が低くなる傾向があり、また硬化物の反射率の低下による製品外観上の問題が生じやすくなる傾向がある。上記純度は、配合されるケイ砂(D)である無機フィラー100%中のSiOの含有量である。蛍光X線分析による純度が99.0%以上、99.9%以下であるケイ砂(D)は、言い換えれば、蛍光X線分析によるSiOの純度が99.0%以上、99.9%以下である無機フィラーである。
【0095】
ケイ砂(D)は、該ケイ砂(D)の蛍光X線分析によるAlの含有量が0.05%以上であるケイ砂を含有することが好ましい。Alを0.05%以上含むケイ砂の使用により、加工性を損なうことなく、放熱性をより一層高くすることができる。ケイ砂(D)におけるAlの含有量は0.05%以上、0.1%以下であることが好ましい。Alの含有量が0.1%以下であると、硬化物の加工性がより一層高くなる。
【0096】
ケイ砂(D)の白色度は好ましくは80以上、好ましくは90以下である。白色度が80以上であると、硬化物の外観を白色に近づけることができ、硬化物の反射率をより一層高めることができる。このため、特にLED用途などで基板の表面に絶縁材料により硬化物層を形成した場合に、該硬化物層の光の反射率を高めることができる。白色度が90を超えるケイ砂は、極めて純度の高いために価格が非常に高く、更に不純物として酸化チタン及び炭酸カルシウム等を含むことが多い。従って、白色度が90を超えるケイ砂を用いると、電気的信頼性及び耐湿信頼性が悪くなる傾向がある。
【0097】
ケイ砂(D)の重量平均粒子径は12μm以下であることが好ましい。ケイ砂(D)の最大粒子径は50μm以下であることが好ましい。ケイ砂(D)の重量平均粒子径が12μm以下であり、かつ最大粒子径が50μm以下であることがより好ましい。ケイ砂(D)の最大粒子径は、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下である。ケイ砂(D)の平均粒子径が10μm以下であると、絶縁シートの厚みが100μm以下程度であっても、硬化物の絶縁破壊特性が良好になる。ケイ砂(D)の最大粒子径は、絶縁シートの厚みの1/2以下であることが好ましい。上記関係を満たすように、フィルタリング又は篩による分級などで、実質的に最大粒子径が大きいケイ砂をほとんど存在しないように処理されたケイ砂を用いてもよい。
【0098】
ケイ砂(D)は、重量平均粒子径が6μm以上、12μm以下である第1のケイ砂と、重量平均粒子径が1μm以上、3μm以下である第2のケイ砂との双方を含有することが好ましい。このような重量平均粒子径が異なる2種類の第1,第2のケイ砂の使用によって、絶縁材料中でのケイ砂の充填性が改善され、硬化物の絶縁破壊特性を良好に維持したままで、硬化物の熱伝導率をより一層高くすることができる。第1,第2のケイ砂を用いた絶縁材料の硬化物と、第1,第2のケイ砂を用いていない絶縁材料の硬化物との熱伝導率が同程度である場合に、第1,第2のケイ砂を用いた絶縁材料の硬化物の方が、絶縁破壊特性がより一層高くなる。
【0099】
ケイ砂(D)は、上記第1のケイ砂と上記第2のケイ砂とを、重量比(第1のケイ砂:第2のケイ砂)で、90:10〜50:50で含有することが好ましく、80:20〜60:40で含有することがより好ましい。第1のケイ砂の使用量が上記上限以下であり、かつ第2のケイ砂の使用量が上記下限以上であると、充填性の改善効果が十分に得られる。第1のケイ砂の使用量が上記下限以上であり、かつ上記第2のケイ砂の使用量が上記上限以下であると、硬化物の密着性がより一層高くなる。
【0100】
ケイ砂(D)は、一般的に非常に安価である。このため、ケイ砂の使用により、絶縁材料のコストを低減できる。また、重量平均粒子径が上記範囲内である第1,第2のケイ砂は、一般的に非常に安価である。このため、第1,第2のケイ砂の使用により、絶縁材料のコストを低減できる。
【0101】
ケイ砂(D)のアスペクト比は特に限定されない。ケイ砂(D)のアスペクト比は、好ましくは1.5以上、好ましくは10以下である。アスペクト比が1.5未満であるケイ砂は、比較的高価であり、絶縁材料のコストの増加につながる。上記アスペクト比が10以下であると、絶縁材料中へのケイ砂の充填が容易であり、かつ一般的な破砕石英フィラーと比較して加工性が良好になる。
【0102】
ケイ砂(D)のアスペクト比は、例えば、デジタル画像解析方式粒度分布測定装置(商品名:FPA、日本ルフト社製)を用いて、ケイ砂(D)の破砕面を測定することにより求めることが可能である。
【0103】
絶縁材料100体積%中及び絶縁シート100体積%中、ケイ砂(D)の含有量は好ましくは40体積%以上、好ましくは80体積%以下である。ケイ砂(D)の含有量が40体積%以上、80体積%以下であると、硬化物の放熱性及び加工性がより一層高くなる。硬化物の放熱性をより一層高める観点からは、絶縁材料100体積%中及び絶縁シート100体積%中、ケイ砂(D)の含有量はより好ましくは50体積%以上、更に好ましくは60体積%以上である。未硬化状態での絶縁シートのハンドリング性及び硬化物の加工性をより一層高める観点からは、絶縁材料100体積%中及び絶縁シート100体積%中、ケイ砂(D)の含有量は、より好ましくは80体積%以下である。一般的なケイ砂(D)はアルミナと比較すると熱伝導率が低い。従って、硬化物の熱伝導性を高めるためには、ケイ砂(D)の含有量は多い方が好ましい。
【0104】
(カップリング剤(E))
本発明に係る絶縁材料は、チタン系又はジルコン系のカップリング剤(E)を含むことが好ましい。この特定のカップリング剤(E)の使用により、硬化物の接着性が高くなり、特に銅に対する硬化物の接着性が高くなる。カップリング剤(E)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0105】
硬化性化合物(A)、ポリマー(B)、硬化剤(C)及びケイ砂(D)とともに、カップリング剤(E)を用いることにより、硬化物の耐水性及び耐湿性、並びに絶縁材料の硬化物の接着対象部材に対する接着性がかなり高くなり、特に銅により形成された導電層に対する接着性がかなり高くなる。さまた、カップリング剤(E)の使用により、ケイ砂(D)の凝集を抑制でき、かつ硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性をより一層高めることができる。
【0106】
カップリング剤(E)は、チタン系のカップリング剤であってもよく、ジルコン系のカップリング剤であってもよい。硬化物の耐水性及び耐湿性、並びに絶縁材料の硬化物の接着対象部材に対する接着性をより一層高める観点からは、カップリング剤(E)は、チタン系のカップリング剤であることが好ましい。
【0107】
チタン系のカップリング剤は、チタン原子を含む。チタン系のカップリング剤としては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン及びテトラブトキシチタン等が挙げられる。チタン系のカップリング剤の市販品としては、プレンアクトTTS、プレンアクト55、プレンアクト46B、プレンアクト338X、プレンアクト238S、プレンアクト38S、プレンアクト138S、プレンアクト41B、プレンアクト9SA及びプレンアクトKR44(いずれも味の素ファインテクト)等が挙げられる。これら以外のチタン系のカップリング剤を用いてもよい。チタン系のカップリング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0108】
硬化物の耐水性及び耐湿性、並びに絶縁材料の硬化物の接着対象部材に対する接着性をさらに一層高める観点からは、カップリング剤(E)は、リン原子を含むことが好ましく、下記式(20)で表される構造単位を有することがより好ましく、下記式(21)〜(23)の内のいずれかで表されるチタン系のカップリング剤であることが更に好ましい。
【0109】
【化9】

【0110】
【化10】

【0111】
上記式(21)中、n及びmはそれぞれ1〜3の整数を示し、nとmとの合計は4である。
【0112】
【化11】

【0113】
【化12】

【0114】
ジルコン系のカップリング剤は、ジルコン原子を含む。ジルコン系のカップリング剤の市販品としては、NZ01、NZ09、NZ12、NZ33、NZ37、NZ38、NZ39、NZ44、NZ66A、NZ97、NZ38J、KZTPP及びKZ55(いずれもケンリッチ・ペトロケミカル社製)等が挙げられる。これら以外のジルコン系のカップリング剤を用いてもよい。ジルコン系のカップリング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0115】
上記全樹脂成分Xの合計100重量%中、カップリング剤(E)の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。カップリング剤(E)の含有量が上記下限以上であると、絶縁材料の硬化物の銅箔との接着性、耐湿性がより一層高くなる。カップリング剤(E)の含有量が上記上限以下であると、絶縁材料の硬化物の耐熱性、及び未硬化状態での絶縁シートのハンドリング性がより一層高くなる。さらに、カップリング剤(E)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、ケイ砂(D)の凝集をより一層抑制でき、かつ硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性をより一層高めることができる。上記全樹脂成分Xには、カップリング剤(E)が含まれる。
【0116】
(他の成分)
本発明に係る絶縁材料は、ゴム粒子を含んでいてもよい。該ゴム粒子の使用により、絶縁材料の応力緩和性及び柔軟性が高くなる。
【0117】
本発明に係る絶縁材料は、分散剤を含んでいてもよい。該分散剤の使用により、硬化物の熱伝導率及び絶縁破壊特性がより一層高くなる。
【0118】
上記分散剤は、水素結合性を有する水素原子を含む官能基を有することが好ましい。上記分散剤が水素結合性を有する水素原子を含む官能基を有することで、硬化物の熱伝導率及び絶縁破壊特性がより一層高くなる。上記水素結合性を有する水素原子を含む官能基としては、例えば、カルボキシル基(pKa=4)、リン酸基(pKa=7)、及びフェノール基(pKa=10)等が挙げられる。
【0119】
上記水素結合性を有する水素原子を含む官能基のpKaは、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、好ましくは10以下、より好ましくは9以下である。上記官能基のpKaが上記下限以上であると、上記分散剤の酸性度が高くなりすぎない。従って、絶縁材料の貯蔵安定性がより一層高くなる。上記官能基のpKaが上記上限以下であると、上記分散剤としての機能が充分に果たされ、硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性がより一層高くなる。
【0120】
上記水素結合性を有する水素原子を含む官能基は、カルボキシル基又はリン酸基であることが好ましい。この場合には、硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性がさらに一層高くなる。
【0121】
上記分散剤としては、具体的には、例えば、ポリエステル系カルボン酸、ポリエーテル系カルボン酸、ポリアクリル系カルボン酸、脂肪族系カルボン酸、ポリシロキサン系カルボン酸、ポリエステル系リン酸、ポリエーテル系リン酸、ポリアクリル系リン酸、脂肪族系リン酸、ポリシロキサン系リン酸、ポリエステル系フェノール、ポリエーテル系フェノール、ポリアクリル系フェノール、脂肪族系フェノール、及びポリシロキサン系フェノール等が挙げられる。上記分散剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0122】
上記全樹脂成分Xの合計100重量%中、上記分散剤の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。上記分散剤の含有量が上記下限以上及び上限以下であると、ケイ砂(D)の凝集を抑制でき、かつ硬化物の放熱性及び絶縁破壊特性をより一層高めることができる。
【0123】
ハンドリング性をより一層高めるために、上記絶縁シートは、ガラスクロス、ガラス不織布、アラミド不織布等の基材物質を含んでいてもよい。ただし、上記基材物質を含まなくても、上記組成を有するシート状の絶縁材料(絶縁シート)は室温(23℃)において自立性を有し、かつ優れたハンドリング性を有する。よって、絶縁シートは基材物質を含まないことが好ましく、特にガラスクロスを含まないことが好ましい。絶縁シートが上記基材物質を含まない場合には、絶縁シートの厚みを薄くすることができ、かつ硬化物の熱伝導性をより一層高めることができる。さらに、絶縁シートが上記基材物質を含まない場合には、必要に応じて絶縁シートにレーザー加工又はドリル穴開け加工等の各種加工を容易に行うこともできる。なお、自立性とは、PETフィルム又は銅箔といった支持体が存在しなくても、シートの形状を保持し、シートとして取り扱うことができることをいう。
【0124】
さらに、本発明に係る絶縁シートは、必要に応じて、粘着性付与剤、可塑剤、カップリング剤(E)以外のカップリング剤、チキソ性付与剤、難燃剤、光増感剤及び着色剤などを含んでいてもよい。さらに、本発明に係る絶縁材料は、ケイ砂(D)以外のフィラーを含んでいてもよい。
【0125】
(絶縁材料)
本発明に係る絶縁材料は、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を導電層に接着するために用いられる。
【0126】
上記絶縁シートの製造方法は特に限定されない。絶縁シートは、例えば、上述した材料を混合した混合物を溶剤キャスト法又は押し出し成膜法等の方法でシート状に成形することにより得ることができる。シート状に成形する際に、脱泡することが好ましい。
【0127】
絶縁シートの厚みは特に限定されない。絶縁シートの厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上、更に好ましくは70μm以上、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは120μm以下である。厚みが上記下限以上であると、絶縁シートの硬化物の絶縁性が高くなる。厚みが上記上限以下であると、金属体を導電層に接着したときに放熱性が高くなる。
【0128】
未硬化状態での絶縁材料のガラス転移温度Tgは、25℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が25℃以下であると、絶縁材料が室温において固く、かつ脆くなり難い。このため、未硬化状態での絶縁シートのハンドリング性が高くなる。
【0129】
絶縁材料の硬化物の熱伝導率は、好ましくは0.7W/m・K以上、より好ましくは1.0W/m・K以上、更に好ましくは1.5W/m・K以上である。熱伝導率が高いほど、絶縁材料の硬化物の放熱性が十分に高くなる。
【0130】
絶縁材料の硬化物の絶縁破壊電圧は、好ましくは40kV/mm以上、より好ましくは60kV/mm以上、更に好ましくは80kV/mm以上、特に好ましくは100kV/mm以上である。絶縁破壊電圧が高いほど、絶縁材料が例えば電力素子用のような大電流用途に用いられた場合に、絶縁性を十分に確保できる。
【0131】
硬化物を白色又は白色に近い色にするために、本発明に係る絶縁材料を硬化させたときに、硬化物の反射率Y値が60以上であることが好ましい。上記反射率Y値は、好ましくは絶縁材料を120℃で1時間硬化させた後、200℃でさらに1時間硬化させた硬化物において測定される。
【0132】
(積層構造体)
本発明に係る絶縁材料は、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体の少なくとも片面に、絶縁層を介して導電層が積層されている積層構造体の絶縁層を構成するために好適に用いられる。
【0133】
図1に、本発明の一実施形態に係る絶縁材料を用いた積層構造体の一例を示す。
【0134】
図1に示す積層構造体1は、熱伝導体2と、熱伝導体2の第1の表面2aに積層された絶縁層3と、絶縁層3の熱伝導体2が積層された表面とは反対側の表面に積層された導電層4とを備える。熱伝導体2の第1の表面2aとは反対の第2の表面2bには、絶縁層及び導電層は積層されていない。絶縁層3は、本発明に係る絶縁材料を硬化させることにより形成されている。熱伝導体2の熱伝導率は10W/m・K以上である。
【0135】
熱伝導体の少なくとも一方の面に、絶縁層と導電層とがこの順に積層されていればよく、熱伝導体の他方の面にも、絶縁層と導電層とがこの順に積層されていてもよい。
【0136】
積層構造体1では、絶縁層3が高い熱伝導率を有するので、導電層4側からの熱が絶縁層3を介して熱伝導体2に伝わりやすい。積層構造体1では、熱伝導体2によって熱を効率的に放散させることができる。
【0137】
例えば、両面に銅回路が設けられた積層板又は多層配線板、銅箔、銅板、半導体素子又は半導体パッケージ等の各導電層に、絶縁材料を介して金属体を接着した後、絶縁材料を硬化させることにより、積層構造体1を得ることができる。
【0138】
上記熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体は特に限定されない。上記熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体としては、例えば、アルミニウム、銅、アルミナ、ベリリア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム及びグラファイトシート等が挙げられる。中でも、上記熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体は、銅又はアルミニウムであることが好ましい。銅又はアルミニウムは、放熱性に優れている。
【0139】
本発明に係る絶縁材料は、基板上に半導体素子が実装されている半導体装置の導電層に、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を接着するために好適に用いられる。
【0140】
本発明に係る絶縁材料は、半導体素子以外の電子部品素子が基板上に搭載されている電子部品装置の導電層に、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を接着するためにも好適に用いられる。
【0141】
なお、本発明に係る絶縁材料は、積層構造体1以外の用途に用いてもよい。良好な白色度を有する硬化物層を形成することが求められる用途に、本発明に係る絶縁材料は好適に用いられる。
【0142】
また、本発明に係る絶縁材料の硬化物は白色であるか又は白色に近い色であるので、絶縁材料をLED素子を搭載するプリント配線板に用いた場合に、光の利用効率を高めることができる。
【0143】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0144】
以下の材料を用意した。
【0145】
[硬化性化合物(A)]
(1)ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱化学社製、商品名:エピコート828US、Mw=370)
(2)ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(三菱化学社製、商品名:エピコート806L、Mw=370)
(3)3官能グリシジルジアミン型液状エポキシ樹脂(三菱化学社製、商品名:エピコート630、Mw=300)
(4)フルオレン骨格エポキシ樹脂(大阪ガスケミカル社製、商品名:オンコートEX1011、Mw=486)
(5)ナフタレン骨格液状エポキシ樹脂(DIC社製、商品名:EPICLON HP−4032D、Mw=304)
(6)ヘキサヒドロフタル酸骨格液状エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名:AK−601、Mw=284)
(7)ビスフェノールA型固体状エポキシ樹脂(三菱化学社製、商品名:1003、Mw=1300)
(8)ベンゼン骨格含有オキセタン樹脂(宇部興産社製、商品名:エタナコールOXTP、Mw=362.4)
【0146】
[ポリマー(B)]
(1)ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(三菱化学社製、商品名:E1256、Mw=51000、Tg=98℃)
(2)高耐熱フェノキシ樹脂(東都化成社製、商品名:FX−293、Mw=43700、Tg=163℃)
(3)エポキシ基含有スチレン樹脂(日油社製、商品名:マープルーフG−1010S、Mw=100000、Tg=93℃)
【0147】
[その他のポリマー]
(1)エポキシ基含有アクリル樹脂(日油社製、商品名:マープルーフG−0130S、Mw=9000、Tg=69℃)
[硬化剤(C)]
(1)ジシアンジアミド
(2)脂環式骨格酸無水物(新日本理化社製、商品名:MH−700)
(3)芳香族骨格酸無水物(サートマー・ジャパン社製、商品名:SMAレジンEF60)
(4)多脂環式骨格酸無水物(新日本理化社製、商品名:HNA−100)
(5)テルペン系骨格酸無水物(三菱化学社製、商品名:エピキュアYH−306)
(6)ビフェニル骨格フェノール樹脂(明和化成社製、商品名:MEH−7851−S)
(7)アリル基含有骨格フェノール樹脂(三菱化学社製、商品名:YLH−903)
(8)トリアジン骨格系フェノール樹脂(DIC社製、商品名:フェノライトKA−7052−L2)
(9)メラミン骨格系フェノール樹脂(群栄化学工業社製、商品名:PS−6492)
(10)イソシアヌル変性固体分散型イミダゾール(イミダゾール系硬化促進剤、四国化成社製、商品名:2MZA−PW)
【0148】
[ケイ砂(D)]
(1)ケイ砂1(東洋化成社製、商品名:WG200、重量平均粒子径9μm、最大粒子径30μm、蛍光X線分析による純度(SiO含有量)99.8%、蛍光X線分析によるAl含有量0.05%、白色度88、熱伝導率10W/m・K)
(2)ケイ砂2(東洋化成社製、商品名:WG1000、重量平均粒子径1.5μm、最大粒子径30μm、蛍光X線分析による純度(SiO含有量)99.7%、蛍光X線分析によるAl含有量0.1%、白色度88、熱伝導率10W/m・K)
(3)ケイ砂3(中国産、重量平均粒子径15μm、最大粒子径60μm、蛍光X線分析による純度(SiO含有量)96.5%、蛍光X線分析によるAl含有量0.7%、白色度76、熱伝導率10W/m・K)
【0149】
[その他のフィラー]
(1)破砕アルミナ(昭和電工社製、商品名:A−172、平均粒子径1.8μm、最大粒子径32μm、熱伝導率36W/m・K)
(2)高純度結晶性石英フィラー(龍森社製、商品名:クリスタライトCMC−12、平均粒子径5μm、最大粒子径20μm、蛍光X線分析による純度(SiO含有量)99.9%、蛍光X線分析によるAl含有量0.02%、白色度96、熱伝導率10W/m・K)
(3)溶融シリカ(トクヤマ社製、商品名:SE15、平均粒径15μm、最大粒子径60μm、蛍光X線分析による純度99.9%、熱伝導率2W/m・K)
【0150】
[カップリング剤(E)]
(1)チタン系のカップリング剤1(味の素ファインテクノ社製、商品名:プレンアクト138S)
(2)チタン系のカップリング剤2(味の素ファインテクノ社製、商品名:プレンアクト238S)
(3)チタン系のカップリング剤3(味の素ファインテクノ社製、商品名:プレンアクト338X)
(4)チタン系のカップリング剤4(味の素ファインテクノ社製、商品名:プレンアクト38S)
(5)ジルコン系のカップリング剤(ケンリッチペトロケミカル社製、商品名:NZ38)
【0151】
[カップリング剤(E)以外の他のカップリング剤]
(1)フェニルトリエトキシシラン(信越化学工業社製、商品名:KBE103)
【0152】
[溶剤]
(1)メチルエチルケトン
(実施例1〜37及び比較例1〜3)
ホモディスパー型撹拌機を用いて、下記の表1〜2に示す割合(配合単位は重量部)で各原料を配合し、混練し、絶縁材料を調製した。
【0153】
厚み50μmの離型PETシートに、上記絶縁材料を100μmの厚みになるように塗工し、90℃のオーブン内で30分乾燥して、PET(ポリエチレンテレフタレート)シート上に絶縁シートを作製した。
【0154】
(評価)
(1)ハンドリング性
PETシートと、該PETシート上に形成された絶縁シートとを有する積層シートを460mm×610mmの大きさに切り出して、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルを用いて、室温(23℃)でPETシートから熱硬化前の絶縁シートを剥離したときのハンドリング性を下記の基準で評価した。
【0155】
[ハンドリング性の判定基準]
〇:絶縁シートの変形がなく、容易に剥離可能
△:絶縁シートを剥離できるものの、シート伸び又は破断が発生する
×:絶縁シートを剥離できない
【0156】
(2)ガラス転移温度
示差走査熱量測定装置「DSC220C」(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、3℃/分の昇温速度で、未硬化状態での絶縁シートのガラス転移温度を測定した。
【0157】
(3)熱伝導率
京都電子工業社製熱伝導率計「迅速熱伝導率計QTM−500」を用いて、絶縁シートの熱伝導率を測定した。
【0158】
(4)半田耐熱試験(耐熱性)
厚み1.5mmのアルミニウム板と厚み35μmの電解銅箔との間に絶縁シートを挟み、真空プレス機で4MPaの圧力を保持しながら120℃で1時間、更に200℃で1時間、絶縁シートをプレス硬化し、銅張り積層板を形成した。この銅張り積層板を50mm×60mmの大きさに切り出し、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルを288℃の半田浴に銅箔側を下に向けて浮かべ、銅箔の膨れ又は剥がれが発生するまでの時間を測定し、以下の基準で判定した。
【0159】
[半田耐熱試験の判定基準]
〇:3分経過しても膨れ及び剥離の発生無し
△:1分経過後、かつ3分経過する前に膨れ又は剥離が発生
×:1分経過する前に膨れ又は剥離が発生
【0160】
(5)絶縁破壊電圧(耐電圧性)
絶縁シートを100mm×100mmの大きさに切り出して、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルを120℃のオーブン内で1時間、更に200℃のオーブン内で1時間硬化させ、絶縁シートの硬化物を得た。耐電圧試験器(MODEL7473、EXTECH Electronics社製)を用いて、絶縁シートの硬化物間に1kV/秒の速度で電圧が上昇するように、交流電圧を印加した。絶縁シートの硬化物が破壊した電圧を、絶縁破壊電圧とした。
【0161】
(6)加工性
上記(4)の評価で得られた銅張り積層板を用意した。この銅張り積層板を直径2.0mmのドリル(ユニオンツール社製、RA series)を用いて、回転数60000及びテーブル送り速度0.3m/分の条件でルーター加工した。ばりが発生するまでの加工距離を測定し、加工性を以下の基準で評価した。
【0162】
[加工性の判定基準]
A:ばりが発生することなく30m以上加工可能
B:ばりが発生することなく20m以上、30m未満加工可能
C:ばりが発生することなく10m以上、20m未満加工可能
D:10m未満の加工によりばりが発生
【0163】
(7)引き剥がし強さ
厚み1mmのアルミニウム板と厚み35μmの電解銅箔との間に絶縁シートを挟み、真空プレス機で4MPaの圧力を保持しながら120℃で1時間、更に200℃で1時間絶縁シートをプレス硬化し、銅張り積層板を形成した。得られた銅張り積層板の銅箔をエッチングして幅10mmの銅箔の帯を形成し、銅箔を基板に対して90度の角度及び50mm/分の引っ張り速度で剥離した際の引き剥がし強さを測定した。
【0164】
(8)反射率
上記(4)の評価で得られた銅張り積層板を用意した。この銅張り積層板を50mm×60mmの大きさに切り出した後に銅箔を剥離し、露出した絶縁層表面を色彩・色差計(コニカミノルタ社製、CR−400)を用いて、評価サンプルのY値を測定した。そのY値を反射率とした。反射率Yが、60以上の場合を「○」、60未満の場合を「×」と判定した。
【0165】
結果を下記の表1〜2に示す。下記の表1〜2において、*1は全樹脂成分X100重量%中の含有量(重量%)を示す。*2は、絶縁シート100体積%中の含有量(体積%)を示す。
【0166】
【表1】

【0167】
【表2】

【符号の説明】
【0168】
1…積層構造体
2…熱伝導体
2a…第1の表面
2b…第2の表面
3…絶縁層
4…導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を導電層に接着するために用いられる絶縁材料であって、
エポキシ基又はオキセタニル基を有する硬化性化合物と、
硬化剤と、
ケイ砂とを含む、絶縁材料。
【請求項2】
前記ケイ砂のSiOの含有量が99%以上である、請求項1に記載の絶縁材料。
【請求項3】
前記ケイ砂の白色度が80以上、90以下である、請求項1又は2に記載の絶縁材料。
【請求項4】
前記ケイ砂の重量平均粒子径が12μm以下であり、かつ最大粒子径が50μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁材料。
【請求項5】
前記ケイ砂が、重量平均粒子径が6μm以上、12μm以下である第1のケイ砂と、重量平均粒子径が1μm以上、3μm以下である第2のケイ砂との双方を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁材料。
【請求項6】
前記ケイ砂が、Alの含有量が0.05%以上であるケイ砂を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の絶縁材料。
【請求項7】
絶縁材料100体積%中、前記ケイ砂の全含有量が40体積%以上、80体積%以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の絶縁材料。
【請求項8】
チタネート系又はジルコネート系のカップリング剤をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の絶縁材料。
【請求項9】
重量平均分子量が10000以上であるポリマーをさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の絶縁材料。
【請求項10】
前記硬化剤が塩基性の硬化剤である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の絶縁材料。
【請求項11】
前記硬化剤がジシアンジアミドを含有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の絶縁材料。
【請求項12】
シート状の絶縁シートである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の絶縁材料。
【請求項13】
熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体と、
前記熱伝導体の少なくとも一方の表面に積層された絶縁層と、
前記絶縁層の前記熱伝導体が積層された表面とは反対側の表面に積層された導電層とを備え、
前記絶縁層が、請求項1〜12のいずれか1項に記載の絶縁材料を硬化させることにより形成されている、積層構造体。
【請求項14】
前記熱伝導体が金属である、請求項13に記載の積層構造体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−229319(P2012−229319A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97903(P2011−97903)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】