説明

絶縁樹脂組成物及びこれを用いて製造された印刷回路基板

【課題】可溶性のフッ素系樹脂を含む絶縁樹脂組成物及びこれを用いて製造された印刷回路基板を提供する。
【解決手段】本発明は可溶性のフッ素系樹脂;熱硬化性樹脂;及び前記可溶性のフッ素系樹脂と前記熱硬化性樹脂を同時に溶解させることができる溶媒;を含む絶縁樹脂組成物及びこれを用いて製造された印刷回路基板を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷回路基板に関し、可溶性のフッ素系樹脂を含む絶縁樹脂組成物及びこれを用いて製造された印刷回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子部品の小型化及び多機能化の趨勢により、多数または一部部品を多層基板の内部に内蔵することによって集積度をさらに高め、小型化及び高性能化を果たすことができる埋め込み基板に対する要求が増大している。
【0003】
埋め込み基板に高密度化、高機能化及び高周波特性が求められることにより、これとともに埋め込み基板を形成する絶縁材料にも機械的物性とともに低誘電率及び低損失特性が求められるようになった。
【0004】
低誘電率及び低損失特性を有する絶縁材料として、現在LCP(Liquid Crystal Polymer)やBCB(Benzocyclobutene)が用いられている。しかし、BCBは高価であるため印刷回路基板に適用するのに限界があり、LCPは熱可塑性樹脂特性であるために印刷回路基板の工程に適用するのに限界がある。
【0005】
そのため、コスト及び印刷回路基板の工程への適用性を同時に満足することができる低誘電率及び低損失特性を有する絶縁材料の開発が必要とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−194436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は印刷回路基板で発生される問題点を解決するために導き出されたものであり、具体的には、可溶性のフッ素系樹脂を含む絶縁樹脂組成物及びこれを用いて製造された印刷回路基板を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る絶縁樹脂組成物は、可溶性のフッ素系樹脂;熱硬化性樹脂;及び前記可溶性のフッ素系樹脂と前記熱硬化性樹脂を同時に溶解させることができる溶媒;を含むことができる。
【0009】
ここで、前記フッ素系樹脂はポリフッ化ビニリデン(Poly Vinylidene fluoride)またはポリフッ化ビニリデン系誘導体を含むことができる。
【0010】
また、前記フッ素系樹脂の含量は前記絶縁樹脂組成物の全体含量のうち5重量部から40重量部の範囲を有することができる。
【0011】
また、前記溶媒はエステル系溶媒及びアミン系溶媒のうち何れか一つまたはこれらの混合からなることができる。
【0012】
また、前記溶媒はメチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、エタノールアミン、イソプロパノールアミン、及びトリエタノールアミンのうち何れか一つまたは二つ以上の混合を含むことができる。
【0013】
また、前記熱硬化性樹脂はエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、及びイミド系樹脂のうち何れか一つまたは二つ以上を含むことができる。
【0014】
また、前記絶縁組成物は無機充填剤をさらに含むことができる。
【0015】
本発明の他の目的は印刷回路基板を提供することである。前記印刷回路基板は、キャビティを備えた絶縁体;前記キャビティの内部に配置された電子部品;及び前記半導体素子を含んだ前記絶縁体の上面及び下面のうち少なくとも何れか一面に配置された絶縁層及び前記絶縁層の上面に配置されて層間接続を成す回路層を含むビルドアップ層;を含み、
【0016】
前記絶縁体及び前記絶縁層のうち少なくとも何れか一つは、可溶性のフッ素系樹脂と、熱硬化性樹脂、及び前記可溶性のフッ素系樹脂と前記熱硬化性樹脂を同時に溶解させることができる溶媒を含む絶縁樹脂組成物から製造されることができる。
【0017】
ここで、前記フッ素系樹脂はポリフッ化ビニリデンまたはポリフッ化ビニリデン系誘導体を含むことができる。
【0018】
また、前記フッ素系樹脂の含量は前記絶縁組成物の全体含量のうち5重量部から40重量部の範囲を有することができる。
【0019】
また、前記溶媒はエステル系溶媒及びアミン系溶媒のうち何れか一つまたはこれらの混合からなることができる。
【0020】
また、前記溶媒はメチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、エタノールアミン、イソプロパノールアミン、及びトリエタノールアミンのうち何れか一つまたは二つ以上の混合からなることができる。
【0021】
また、前記熱硬化性樹脂はエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、及びイミド系樹脂のうち何れか一つまたは二つ以上を含むことができる。
【0022】
また、前記絶縁組成物は無機充填剤をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の絶縁樹脂組成物は可溶性のフッ素系樹脂を含んで、容易な工程を通じて低損失及び低誘電率特性を有する基板を製造することができる。
【0024】
また、本発明の絶縁樹脂組成物は熱硬化性樹脂を含んで、基板の機械的物性を満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例による印刷回路基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施例を印刷回路基板の図面を参照して詳細に説明する。以下で紹介される実施例は当業者に本発明の思想が十分に伝達されるための例として提供されるものである。従って、本発明は以下で説明される実施例に限定されず、他の形態で具体化されることもできる。そして、図面において、装置の大きさ及び厚さなどは便宜のために誇張されて表現されることもできる。明細書の全体における同一の参照番号は同一の構成要素を示す。
【0027】
図1は本発明の実施例による印刷回路基板の断面図である。
【0028】
図1に例示した印刷回路基板100は電子部品を内蔵している埋め込み基板であることができる。
【0029】
具体的には、印刷回路基板100は、キャビティを備えた絶縁体110と、キャビティの内部に配置された電子部品120と、電子部品120を含んだ絶縁体110の上面及び下面のうち少なくとも一面に配置されたビルドアップ層130とを含むことができる。ビルドアップ層130は、絶縁体110の上面及び下面のうち少なくとも一面に配置された絶縁層131と絶縁層131上に配置されて層間接続を成す回路層132とを含むことができる。
【0030】
ここで、電子部品120の例としては、半導体素子のような能動素子であることができる。これに加えて、印刷回路基板100は一つの電子部品120のみを内蔵しているのでなく、少なくとも一つ以上の付加電子部品、例えばキャパシタ140及び抵抗素子150などをさらに内蔵していてもよく、本発明の実施例によって電子部品の種類や個数を限定するものではない。
【0031】
ここで、絶縁体110及び絶縁層131は、回路層間または電子部品間の絶縁性を付与する役割を持つとともに、パッケージの剛性を維持するための構造材の役割を持つことができる。
【0032】
ここで、印刷回路基板100の配線密度が高くなる場合、回路層間のノイズを減らし、これと同時に寄生容量を減らすために、絶縁体110及び絶縁層131には低い誘電率特性が求められ、また、絶縁体110及び絶縁層131には絶縁特性を高めるために低い誘電損失特性が求められる。
【0033】
このように、絶縁体110及び絶縁層131のうち少なくとも何れか一つは誘電率及び誘電損失等を低めて剛性を有するために、可溶性のフッ素系樹脂、熱硬化性樹脂、及び前記可溶性のフッ素系樹脂と前記熱硬化性樹脂を同時に溶解させることができる溶媒を含む絶縁性樹脂組成物から形成されることができる。
【0034】
具体的には、フッ素系樹脂はLCP(Liquid Crystal Polymer)やBCB(Benzocyclobutene)に比べて低誘電特性及び低損失特性を有する材質である。したがって、フッ素系樹脂は絶縁体110または絶縁層131の誘電特性と損失特性を低める役割を果たすことができる。この際、フッ素系樹脂は印刷回路基板100の工程に適用するために可溶性を有する材質が選択されることができる。例えば、フッ素系樹脂はポリフッ化ビニリデン(Poly Vinylidene fluoride)またはポリフッ化ビニリデン系誘導体であることができる。
【0035】
フッ素系樹脂の含量は絶縁樹脂組成物の全体含量のうち5重量部から40重量部の範囲を有することができる。ここで、フッ素系樹脂の含量が5重量部未満の場合、低誘電特性及び低損失特性を満足することができなくなり、フッ素系樹脂が40重量部を超過する場合、印刷回路基板に適用されるための機械的物性を満足することができなくなったり、回路層を形成するための金属層、例えば銅層との接着力が低くなったりする可能性がある。
【0036】
フッ素系樹脂は低誘電特性及び低誘電損失特性だけでなく、耐磨耗性、耐熱性、低熱膨脹特性のような機械的物性を同時に満足させることができるが、フッ素系樹脂を印刷回路基板に単独で用いるためには機械的物性が不足している。
【0037】
そのため、熱硬化性樹脂を絶縁樹脂組成物に加えて、フッ素系樹脂を印刷回路基板に単独で用いる場合に不足する物性、例えば接着強度、熱的安全性及び熱膨脹係数の特性等を補助する役割を持たせるようにすることができる。
【0038】
ここで、熱硬化性樹脂は、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、及びイミド系樹脂のうち何れか一つまたは二つ以上を含むことができる。この際、エポキシ系樹脂の例としては、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、及び燐(phospher)系エポキシ樹脂等であることができる。
【0039】
溶媒はフッ素系樹脂と熱硬化性樹脂を同時に溶解させることができる材質からなることができる。ここで、溶媒はエステル系溶媒及びアミン系溶媒のうち何れか一つまたは二つを混合して用いられることができる。溶媒として用いられることができる材質の例としては、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、エタノールアミン、イソプロパノールアミン、及びトリエタノールアミンのうち何れか一つまたは二つ以上の混合溶媒であることができる。
【0040】
絶縁樹脂組成物はこのような溶媒によって混合されているフッ素系樹脂と熱硬化性樹脂を含んでいるため、絶縁樹脂組成物を用いて容易な溶液工程(solution process)、コーティング方法、または印刷法を通じて絶縁体110または絶縁層131を形成することができる。
【0041】
これに加えて、絶縁樹脂組成物は、無機充填剤をさらに含むことによって、絶縁体110または絶縁層131の強度を増大させることができる。
【0042】
ここで、無機充填剤の例としてはグラファイト、カーボンブラック、シリカ、及びクレーのうち何れか一つまたは二つ以上を混合して用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
これに加えて、印刷回路基板は最上層及び最下層に回路層132と電気的に接続されたパッド180を露出させた半田レジスト160がさらに配置されることができる。
【0044】
また、印刷回路基板の最下層には、半田レジスト160によって露出されたパッドと電気的に接続された外部接続手段170がさらに配置されることができる。ここで、外部接続手段170の例としては半田ボール及び半田バンプなどであることができる。
【0045】
従って、本発明の実施例のように、フッ素系樹脂を含んで絶縁樹脂組成物を形成することによって、低誘電特性及び低損失特性を満足することができる。
【0046】
また、フッ素系樹脂は熱硬化性樹脂と同一の溶媒に対して可溶性特性を有するため、印刷回路基板の製造工程に十分に適用することができる。
【0047】
本発明の実施例で、絶縁樹脂組成物が埋め込み基板に適用されたことで説明したが、これに限定されず、絶縁樹脂組成物は一般的な印刷回路基板またはパッケージ基板の絶縁材を形成することに用いられることもできる。
【0048】
以下、下記実験例を通じて本発明をさらに具体的に説明するが、これに本発明の範疇が限定されるものではない。
【0049】
<実験例>
【0050】
2−メトキシエタノール(2−Methoxy ethanol)に平均粒径0.2から1μmのサイズ分布を有するシリカを分散させて、シリカスラリーを製造した。
【0051】
その後、製造されたシリカスラリー2、300gに平均エポキシ当量が100から300であるナフタレン系エポキシ樹脂400g、平均エポキシ当量が100から1、200であるビスフェノールA型エポキシ樹脂400g及びポリフッ化ビニリデン200gを添加した後、メチルエチルケトン(Methyl Ethyl Ketone;MEK)337gを添加し、常温で300rpmで撹拌して溶解させて混合物を製造した。
【0052】
その後、混合物にアミノトリアジン系硬化剤を380g添加した後、300rpmで1時間追加撹拌した。
【0053】
その後、2−エチル−4−メチルイミダゾール2.5gとシリカベースレベリング剤を全体混合物の1.5PHR(Parts per Hundred parts of Resin)で添加した後、1時間の間撹拌して絶縁樹脂組成物を製造した。
【0054】
その後、絶縁樹脂組成物をPETフィルム上に塗布及び完全硬化させた後、1GHzでDk値とDf値を測定した。
【0055】
<比較例>
【0056】
ポリフッ化ビニリデンを添加せず、平均エポキシ当量が100から300であるナフタレン系エポキシ樹脂500g及び平均エポキシ当量が100から1、200であるビスフェノールA型エポキシ樹脂500gを混合することを除いて、上述の実施例と同一の方法及び組成で絶縁樹脂組成物を製造した。
【0057】
その後、絶縁樹脂組成物をPETフィルム上に塗布及び完全硬化させた後、1GHzでDk値とDf値を測定した。
【0058】
下記表1は実験例と比較例によるDk値とDf値を比較した表である。
【0059】
【表1】

【0060】
表1のように、絶縁樹脂組成物がポリフッ化ビニリデンを含む場合に誘電率(Dk値)と損失値(Df値)が低くなることを確認することができた。
【0061】
従って、本発明の実施例のように、絶縁樹脂組成物にエポキシ系樹脂と同一の溶媒に溶解されるポリフッ化ビニリデンを含ませることによって、容易な工程を通じて誘電率及び損失値を低めることができる絶縁層を製造することができる。
【符号の説明】
【0062】
100 印刷回路基板
110 絶縁体
120 電子部品
130 ビルドアップ層
131 絶縁層
132 回路層
140 キャパシタ
150 抵抗素子
160 半田レジスト
170 外部接続手段
180 パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性のフッ素系樹脂;
熱硬化性樹脂;及び
前記可溶性のフッ素系樹脂と前記熱硬化性樹脂を同時に溶解させることができる溶媒;
を含む絶縁樹脂組成物。
【請求項2】
前記フッ素系樹脂はポリフッ化ビニリデンまたはポリフッ化ビニリデン系誘導体を含む、請求項1に記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項3】
前記フッ素系樹脂の含量は前記絶縁樹脂組成物の全体含量のうち5重量部から40重量部の範囲内である、請求項1に記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項4】
前記溶媒はエステル系溶媒及びアミン系溶媒のうち何れか一つまたはこれらの混合からなる、請求項1に記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項5】
前記溶媒はメチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、エタノールアミン、イソプロパノールアミン、及びトリエタノールアミンのうち何れか一つまたは二つ以上の混合を含む、請求項4に記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂はエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、及びイミド系樹脂のうち何れか一つまたは二つ以上を含む、請求項1に記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項7】
前記絶縁組成物は無機充填剤をさらに含む、請求項1に記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項8】
キャビティを備えた絶縁体;
前記キャビティの内部に配置された電子部品;及び
前記半導体素子を含んだ前記絶縁体の上面及び下面のうち少なくとも何れか一面に配置された絶縁層及び前記絶縁層の上面に配置されて層間接続を成す回路層を含むビルドアップ層;
を含み、
前記絶縁体及び前記絶縁層のうち少なくとも何れか一つは可溶性のフッ素系樹脂と熱硬化性樹脂及び前記可溶性のフッ素系樹脂と前記熱硬化性樹脂を同時に溶解させることができる溶媒を含む、
絶縁樹脂組成物から製造される印刷回路基板。
【請求項9】
前記フッ素系樹脂はポリフッ化ビニリデンまたはポリフッ化ビニリデン系誘導体を含む、請求項8に記載の印刷回路基板。
【請求項10】
前記フッ素系樹脂の含量は前記絶縁組成物の全体含量のうち5重量部から40重量部の範囲内である、請求項8に記載の印刷回路基板。
【請求項11】
前記溶媒はエステル系溶媒及びアミン系溶媒のうち何れか一つまたはこれらの混合からなる、請求項8に記載の印刷回路基板。
【請求項12】
前記溶媒はメチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、エタノールアミン、イソプロパノールアミン、及びトリエタノールアミンのうち何れか一つまたは二つ以上の混合を含む、請求項11に記載の印刷回路基板。
【請求項13】
前記熱硬化性樹脂はエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、及びイミド系樹脂のうち何れか一つまたは二つ以上を含む請求項8に記載の印刷回路基板。
【請求項14】
前記絶縁組成物は無機充填剤をさらに含む、請求項8に記載の印刷回路基板。

【図1】
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【公開番号】特開2012−7150(P2012−7150A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103436(P2011−103436)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】