説明

絶縁膜、積層体および半導体装置

【課題】誘電率が低く、基板(絶縁膜を形成される部材)との密着性に優れ、信頼性が高く、製造時の歩留まりに優れた絶縁膜を提供すること。
【解決手段】本発明の絶縁膜は、分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造と、重合反応に寄与する重合性反応基とを有する重合性化合物および/または当該重合性化合物が部分的に重合した重合体を含む組成物を用いて形成されたものであって、面方向での線膨張係数が9×10−6−1以上25×10−6−1以下であることを特徴とする。前記重合性化合物の前記重合性反応基は、芳香環と、当該芳香環に直接結合するエチニル基またはビニル基とを有するものであり、前記重合性化合物において、前記芳香環由来の炭素の数は、当該重合性化合物全体の炭素の数に対して、15%以上、38%以下であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁膜、積層体および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子材料分野においては、半導体デバイスの高集積化、高速化、高性能化が進むにしたがって、半導体集積回路の配線間抵抗の増大や電気容量の増大による遅延時間が大きな問題となってきている。この遅延時間を減少させ、半導体デバイスをより高速化させるためには、低誘電率の層間絶縁膜を回路に用いることが必要である。
【0003】
従来、絶縁膜の低誘電率化を図るために、熱分解性成分(空孔形成材)を含む組成物を用い、絶縁膜形成の際の加熱焼成工程において、前記熱分解性成分を分解させ、空孔を形成する方法が用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような方法を用いた場合、形成される絶縁膜は、強度が低いものとなる。また、形成される絶縁膜に不本意な膜厚のばらつきを生じやすく、各部位での特性差が大きくなるという問題もあった。また、形成される絶縁膜の絶縁性が安定せず、抵抗値が比較的低い絶縁膜が形成されてしまうことがあるという問題点があった。
【0004】
また、特定の化学構造を有する重合体を用いることにより、誘電率を低いものとしつつ、上記のような問題の発生を防止する試みがある(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、このような絶縁膜では、接合された基板との密着性(特に、温度変化を生じた場合の密着性)が不十分となり、絶縁膜を備えた半導体装置等の信頼性が低いものとなるという問題点があった。また、このような絶縁膜では、焼成処理(熱処理)を伴う半導体装置の製造時(絶縁膜の形成時)において、形成される絶縁膜が基板(絶縁膜が形成される部材)から不本意な剥離を生じ、半導体装置の歩留まりが低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−243903号公報
【特許文献2】特表2006−526672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、誘電率が低く、基板(絶縁膜を形成される部材)との密着性に優れ、信頼性が高く、製造時の歩留まりに優れた絶縁膜を提供すること、誘電率が低く、基板(およびキャップ層)との密着性に優れた絶縁膜を備えた信頼性の高い積層体を提供すること、また、誘電率が低く、基板(およびキャップ層)との密着性に優れた絶縁膜を備え信頼性が高く、製造時の歩留まりに優れた半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(15)に記載の本発明により達成される。
(1) 分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造と、重合反応に寄与する重合性反応基とを有する重合性化合物および/または当該重合性化合物が部分的に重合した重合体を含む組成物を用いて形成された絶縁膜であって、
面方向での線膨張係数が9×10−6−1以上25×10−6−1以下であることを特徴とする絶縁膜。
【0008】
(2) 前記重合性化合物の前記重合性反応基は、芳香環と、当該芳香環に直接結合するエチニル基またはビニル基とを有するものであり、
前記重合性化合物において、前記芳香環由来の炭素の数は、当該重合性化合物全体の炭素の数に対して、15%以上、38%以下である上記(1)に記載の絶縁膜。
【0009】
(3) 前記芳香環は、前記かご型構造に直接結合したものである上記(2)に記載の絶縁膜。
【0010】
(4) 前記重合性反応基は、2つのエチニル基またはビニル基を有し、一方の前記エチニル基または前記ビニル基は、他方の前記エチニル基または前記ビニル基のメタ位に存在するものである上記(2)または(3)に記載の絶縁膜。
【0011】
(5) 2つの前記エチニル基または前記ビニル基は、いずれも、前記芳香環が前記かご型構造に結合する部位のメタ位に存在するものである上記(4)に記載の絶縁膜。
【0012】
(6) 前記部分構造は、アダマンタン構造を有するものである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の絶縁膜。
【0013】
(7) 前記アダマンタン構造は、置換基としてメチル基を有するものである上記(6)に記載の絶縁膜。
【0014】
(8) 前記重合性化合物は、下記式(1)で示される構造または下記式(5)で示される構造を有するものである上記(7)に記載の絶縁膜。
【化1】

[式中、nは1〜5の整数を表す。]
【化2】

[式中、nは1〜5の整数を表す。]
【0015】
(9) 前記部分構造は、ジアマンタン構造を有するものである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の絶縁膜。
【0016】
(10) 前記重合性化合物は、前記重合性反応基を2つ有し、前記部分構造を中心に、当該重合性反応基が対称的に結合した構造をなしているものである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の絶縁膜。
【0017】
(11) 膜形成に際して熱分解することにより膜中に空孔を形成する機能を有する空孔形成材を含まない前記組成物を用いて形成されたものである上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の絶縁膜。
【0018】
(12) 重量平均分子量が90000以上110000以下の前記重合体を含む組成物を用いて形成されたものである上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の絶縁膜。
【0019】
(13) 誘電率が1.80以上2.30以下である上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の絶縁膜。
【0020】
(14) 上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の絶縁膜と、当該絶縁膜に接触して設けられたSiO、SiN、SiC、SiCNおよびSiOCよりなる群から選択される少なくとも1種の材料で構成されたキャップ層とを備えたことを特徴とする積層体。
【0021】
(15) 上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の絶縁膜と、当該絶縁膜に接触して設けられたSiO、SiN、SiC、SiCNおよびSiOCよりなる群から選択される少なくとも1種の材料で構成されたキャップ層とを備えたことを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、誘電率が低く、基板(絶縁膜を形成される部材)との密着性に優れ、信頼性が高く、製造時の歩留まりに優れた絶縁膜、を提供すること、誘電率が低く、基板(およびキャップ層)との密着性に優れた絶縁膜を備えた信頼性の高い積層体を提供すること、また、誘電率が低く、基板(キャップ層)との密着性に優れた絶縁膜を備え信頼性が高く、製造時の歩留まりに優れた半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】半導体装置の製造方法の好適な実施形態を示す縦断面図である。
【図2】半導体装置の製造方法の好適な実施形態を示す縦断面図である。
【図3】半導体装置の製造方法の好適な実施形態を示す縦断面図である。
【図4】絶縁膜の面方向での線膨張係数の求め方を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。
<絶縁膜>
本発明の絶縁膜は、分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造と、重合反応に寄与する重合性反応基とを有する重合性化合物および/または当該重合性化合物が部分的に重合した重合体を含む組成物を用いて形成されたものであり、面方向での線膨張係数が9×10−6−1以上25×10−6−1以下であることを特徴とする。これにより、誘電率が低く、基板(絶縁膜を形成される部材)との密着性に優れ、信頼性が高く、製造時の歩留まりに優れた絶縁膜を提供することができる。
【0025】
このように、本発明は、鋭意研究の結果、絶縁膜が、所定の化学構造を有する化合物を用いて形成されたものであり、かつ、絶縁膜の面方向での線膨張係数が所定の範囲内であることにより、上記のような優れた効果が得られることを見出した点に特徴を有するのものである。したがって、単に絶縁膜が所定の化学構造を有する化合物を用いて形成されたものである場合(絶縁膜の面方向での線膨張係数が所定の範囲内に含まれない場合)や、単に絶縁膜の面方向での線膨張係数が所定の範囲内である場合(絶縁膜が所定の化学構造を有する化合物を用いて形成されたものでない場合)、さらには、絶縁膜の厚さ方向での線膨張係数が所定の範囲内であったとしても、絶縁膜の面方向での線膨張係数が所定の範囲内でない場合には、上記のような優れた効果は得られない。
【0026】
なお、絶縁膜の形成に用いられる組成物が、「アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造と、重合反応に寄与する重合性反応基とを有する重合性化合物」が部分的に重合した重合体を含むものである場合、当該重合体は、「アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造と、重合反応に寄与する重合性反応基とを有する重合性化合物」以外の重合性化合物(以下、「その他の重合性化合物」という)を含むものであってもよい。前記重合体が、その他の重合性化合物を含むものである場合、当該重合体中におけるその他の重合性化合物の含有率(重合体の合成に用いる重合性化合物の重量で換算して求められる値)は、30wt%以下であるのが好ましく、20wt%以下であるのがより好ましく、10wt%以下であるのがさらに好ましい。
【0027】
上記のように、本発明において、絶縁膜の面方向での線膨張係数は、9×10−6−1以上25×10−6−1以下であればよいが、10×10−6−1以上24×10−6−1以下であるのが好ましい。これにより、上述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
【0028】
本発明の絶縁膜の誘電率は、1.80以上2.30以下であるのが好ましく、2.00以上2.25以下であるのがより好ましい。これにより、半導体デバイスのさらなる高速化を図ることができる。なお、絶縁膜の誘電率は、例えば、日本エス・エス・エム(株)製、自動水銀プローブCV測定装置SSM495等を用いて求めることができる。
【0029】
絶縁膜の厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上20μm以下であるのが好ましく、0.02〜10μmであるのがより好ましく、0.03μm以上0.7μm以下であるのがさらに好ましい。
【0030】
上述したように、本発明の絶縁膜は、分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造と、重合反応に寄与する重合性反応基とを有する重合性化合物および/または当該重合性化合物が部分的に重合した重合体を含む組成物(膜形成用組成物)を用いて形成されたものである。以下、絶縁膜の形成に用いられる膜形成用組成物について詳細に説明する。
【0031】
(膜形成用組成物)
上述したような絶縁膜の形成に用いられる組成物(膜形成用組成物)は、分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造Aと、重合反応に寄与する重合性反応基Bとを有する重合性化合物および/または当該重合性化合物が部分的に重合した重合体を含むものであればよいが、以下に述べるような重合性化合物Xおよび/または当該重合性化合物Xが部分的に重合した重合体を含むものであるのが好ましい。
【0032】
[1]重合性化合物X
重合性化合物Xの重合性反応基Bが、芳香環と、当該芳香環に直接結合するエチニル基またはビニル基とを有するものであり、重合性化合物Xにおいて、前記芳香環由来の炭素の数は、重合性化合物X全体の炭素の数に対して、15%以上、38%以下であるのが好ましく、18%以上、27%以下であるのがより好ましい。これにより、絶縁膜の誘電率をより低いものとすることができる。また、絶縁膜の面方向での線膨張係数を、確実により好適なものとすることができ、絶縁膜を形成される部材との密着性を特に優れたものとすることができる。その結果、絶縁膜を備えた積層体、半導体装置の信頼性を特に高いものとすることができる。また、絶縁膜や当該絶縁膜を備えた半導体装置等の歩留まりを特に優れたものとすることができる。
【0033】
なお、重合性反応基Bが有するエチニル基またはビニル基は、重合性化合物同士が重合する際の重合性基であり、同一の機能を発揮するものであることから、以下では、重合性反応基Bがエチニル基を有する場合について代表的に説明する。
【0034】
以下、部分構造Aおよび重合性反応基Bについて、それぞれ説明する。
[1.1]部分構造A
重合性化合物Xが有する部分構造Aは、アダマンタン型のかご型構造を含むものである。これにより、膜形成用組成物を用いて形成される絶縁膜を、低密度のものとすることができ、形成される絶縁膜の誘電率を低いものとすることができる。また、絶縁膜の面方向での線膨張係数を、確実により好適なものとすることができ、絶縁膜を形成される部材との密着性を特に優れたものとすることができる。その結果、絶縁膜を備えた積層体、半導体装置の信頼性を特に高いものとすることができる。また、絶縁膜や当該絶縁膜を備えた半導体装置等の歩留まりを特に優れたものとすることができる。また、後に詳述するような重合性反応基Bを備える重合性化合物Xの反応性を適切なものとすることができるため、絶縁膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度を確実に好適なものとし、形成される絶縁膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきを抑制することができるとともに、最終的に形成される絶縁膜の強度を優れたものとすることができる。
【0035】
重合性化合物Xが有する部分構造Aとしては、例えば、アダマンタン、ポリアダマンタン(例えば、ビアダマンタン、トリアダマンタン、テトラアダマンタン、ペンタアダマンタン、ヘキサアダマンタン、ヘプタアダマンタン等)、ポリアマンタン(例えば、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン、ペンタマンタン、ヘキサマンタン、ヘプタマンタン等)、これらの化合物を構成する水素原子の少なくとも一部をアルキル基またはハロゲン原子で置換した化合物等の二価基(上記化合物を構成する2つの水素原子を除いた部分の構造)や、これらの二価基を2つ以上備えたもの(例えば、ビ(ジアマンタン)骨格、トリ(ジアマンタン)骨格、テトラ(ジアマンタン)骨格等の複数のジアマンタン骨格が連なったもの(ポリ(ジアマンタン)骨格を有するもの);ビ(トリアマンタン)骨格、トリ(トリアマンタン)骨格、テトラ(トリアマンタン)骨格等の複数のトリアマンタン骨格が連なったもの(ポリ(トリアマンタン)骨格を有するもの);アダマンタン骨格(またはポリアダマンタン骨格)とポリアマンタン骨格とが連なったもの等)等が挙げられる。以下に、部分構造Aの例の一部を、化学構造式で示すが、部分構造Aはこれらに限定されるものではない。ただし、下記式(A−1)〜式(A−7)中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン基を示し、l、m、nは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。
【0036】
【化3】

【0037】
また、部分構造Aは、アダマンタン構造を有するものであるのが好ましい。これにより、膜形成用組成物を用いて形成される絶縁膜の誘電率を特に低いものとすることができる。また、絶縁膜の面方向での線膨張係数を、確実により好適なものとすることができ、絶縁膜を形成される部材との密着性を特に優れたものとすることができる。その結果、絶縁膜を備えた積層体、半導体装置の信頼性を特に高いものとすることができる。また、絶縁膜や当該絶縁膜を備えた半導体装置等の歩留まりを特に優れたものとすることができる。また、重合性化合物Xの反応性をより好適なものとすることができ、絶縁膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される絶縁膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される絶縁膜の強度を特に優れたものとすることができる。
【0038】
また、アダマンタン構造は、置換基としてメチル基を有するものであるのが好ましい。これにより、膜形成用組成物を用いて形成される絶縁膜の誘電率を特に低いものとすることができる。また、絶縁膜の面方向での線膨張係数を、確実により好適なものとすることができ、絶縁膜を形成される部材との密着性を特に優れたものとすることができる。その結果、絶縁膜を備えた積層体、半導体装置の信頼性を特に高いものとすることができる。また、絶縁膜や当該絶縁膜を備えた半導体装置等の歩留まりを特に優れたものとすることができる。また、重合性化合物Xの反応性をより好適なものとすることができ、絶縁膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される絶縁膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される絶縁膜の強度を特に優れたものとすることができる。
【0039】
以上のことから、部分構造Aとしては、特に、下記式(2)で示される構造を有するものが特に好適である。なお、下記式(2)中、nは1以上の整数を表す。
【0040】
【化4】

【0041】
かかる構造を有するものを部分構造Aとして選択することにより、膜形成用組成物を用いて形成される絶縁膜は、前述した効果をより顕著に発揮するものとなる。
【0042】
なお、かかる構成の部分構造Aは、それ自体が対称性を有する構造のものであるのが好ましい。すなわち、上記式(2)中において、nは偶数であるのが好ましい。これにより、重合性化合物Xの反応性をより適切なものとすることができ、絶縁膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される絶縁膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される絶縁膜の強度を特に優れたものとすることができる。
【0043】
また、部分構造Aは、ジアマンタン構造を有するものであってもよい。これにより、膜形成用組成物を用いて形成される絶縁膜の誘電率を低いものとすることができる。また、重合性化合物Xの反応性をより好適なものとすることができ、絶縁膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される絶縁膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される絶縁膜の強度を特に優れたものとすることができる。また、絶縁膜の面方向での線膨張係数を、確実により好適なものとすることができ、絶縁膜を形成される部材との密着性を特に優れたものとすることができる。その結果、絶縁膜を備えた積層体、半導体装置の信頼性を特に高いものとすることができる。また、絶縁膜や当該絶縁膜を備えた半導体装置等の歩留まりを特に優れたものとすることができる。
【0044】
[1.2]重合性反応基B
重合性化合物Xは、上記のような部分構造Aに加え、重合反応に寄与する重合性反応基Bを有している。
【0045】
重合性化合物Xの好ましい態様として、重合性反応基Bは、芳香環と、当該芳香環に直接結合するエチニル基とを有するものである。重合性化合物Xは、この重合性反応基Bを、1つ有するものであってもよいが、2つ有し、これらが部分構造Aを中心に対称的に結合した構造をなしているのが好ましい。これにより、重合性化合物Xの反応性を適切なものとすることができ、絶縁膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度を確実に好適なものとし、形成される絶縁膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきを抑制することができるとともに、最終的に形成される絶縁膜の強度を優れたものとすることができる。
【0046】
このように、重合性化合物Xが、部分構造Aとともに、2つの重合性反応基Bを有し、さらに、これらが、特定の配置を有することにより、特に優れた効果が発揮される。
【0047】
重合性反応基Bを構成する芳香環としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ナフタセン環、フェナントレン環、クリセン環、ピレン環、ペリレン環、コロネン環、ビフェニル環、テルフェニル環、アズレン環等の炭化水素環式芳香環や、ピリジン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、インドール環、プリン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、カルバゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、キノリン環、テルチエニル環等の複素環式芳香環等が挙げられる。中でも、芳香環としては、ベンゼン環が好ましい。これにより、絶縁膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物の付与をより容易に行うことができる。また、絶縁膜の面方向での線膨張係数を、確実により好適なものとすることができ、絶縁膜を形成される部材との密着性を特に優れたものとすることができる。その結果、絶縁膜を備えた積層体、半導体装置の信頼性を特に高いものとすることができる。また、絶縁膜や当該絶縁膜を備えた半導体装置等の歩留まりを特に優れたものとすることができる。また、膜形成用組成物を用いて形成される絶縁膜の弾性率を好適なものとすることができ、形成される絶縁膜の強度および耐熱性等を特に優れたものとすることができる。
【0048】
重合性反応基Bを構成する芳香環は、少なくとも1つの他の原子を介して部分構造Aを構成するかご型構造に結合したものであってもよいが、部分構造Aを構成するかご型構造に直接結合したものであるのが好ましい。これにより、重合性化合物Xの反応性をより好適なものとすることができ、絶縁膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される絶縁膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される絶縁膜の強度を特に優れたものとすることができる。
【0049】
重合性反応基Bは、1つのエチニル基を有するものであっても良いが、2つのエチニル基を有し、上記のような芳香環に、2つのエチニル基が、直接、結合したものであるのが好ましい。これにより、絶縁膜の面方向での線膨張係数を、確実により好適なものとすることができ、絶縁膜を形成される部材との密着性を特に優れたものとすることができる。その結果、絶縁膜を備えた積層体、半導体装置の信頼性を特に高いものとすることができる。また、重合性反応基Bが反応部位としてのエチニル基を2つ有することにより、重合性化合物Xについての初期の反応が起こりやすくなる。その一方で、重合性反応基Bが有する2つのエチニル基のうち一方のエチニル基が反応(重合反応)すると、芳香環についての電子状態が変化し、他方のエチニル基の反応性は、急激に低下する。このため、比較的穏やかな条件で、重合性反応基Bが有する2つのエチニル基のうち一方のエチニル基のみを選択的に反応させることができる。そして、重合性化合物Xは、好ましくは分子内に2つの重合性反応基Bを有しているため、重合性化合物Xの分子内に存在する2つの重合性反応基Bについて、それぞれ、一方のエチニル基のみを選択的に反応させることができ、この場合、例えば、下記式(3)に示すような反応により、複数の重合性化合物Xが一次元的に重合した重合体(鎖状のプレポリマー)が得られる。
【0050】
【化5】

(式(3)中、Aは部分構造Aを示し、Arは重合性反応基Bを構成する芳香環を示す。また、nは、2以上の整数を表す。)
【0051】
なお、重合性反応基Bがエチニル基に代えてビニル基を有する場合には、下記式(3’)に示すような反応により、複数の重合性化合物Xが一次元的に重合した重合体(鎖状のプレポリマー)が得られる。
【0052】
【化6】

(式(3’)中、Aは部分構造Aを示し、Arは重合性反応基Bを構成する芳香環を示す。また、nは、2以上の整数を表す。)
【0053】
上記のような反応が起こることにより、膜形成用組成物の保存時等において、重合性化合物Xが、過度に反応し、膜形成用組成物が極端に高粘度化すること(例えば、ゲル化すること)を確実に防止することができ、絶縁膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度を確実に好適なものとすることができる。その結果、形成される絶縁膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきの発生を確実に抑制することができる。
【0054】
その一方で、上記のような反応により得られる重合体(部分的な重合反応により得られたプレポリマー)は、未反応のエチニル基を有しているため、後に詳述するような焼成条件(半導体基板上での加熱条件)において、残存するエチニル基を確実に反応させることができ、最終的に形成される絶縁膜中においては、三次元的に架橋反応した構造を有するものとなる。その結果、形成される絶縁膜は、特に耐熱性等に優れたものとなる。
【0055】
上記のように、重合性化合物Xを構成する各重合性反応基Bは、2つのエチニル基を有するものである場合、重合性反応基Bにおいて、一方のエチニル基は、他方のエチニル基のメタ位に存在するものであるのが好ましい。これにより、重合性反応基Bが有する2つのエチニル基のうち一方のエチニル基が反応(重合反応)した状態において、芳香環等の電子的な効果がより顕著に発揮され、他方のエチニル基の反応性をより効果的に低下させることができるとともに、当該反応した部位が適度な立体的な障害となり、他方のエチニル基(未反応のエチニル基)の反応性をより好適に制御することができる。その結果、重合性反応基Bが有する2つのエチニル基についての反応性(第1段目の反応についての反応性と第2段目の反応についての反応性)の選択性をより高いものとすることができるとともに、後に詳述するような焼成工程を、より好適な条件(半導体基板へのダメージを防止しつつ、優れた生産性で絶縁膜を形成することができる条件)で行うことができる。
【0056】
また、重合性反応基Bが2つのエチニル基を有する場合、2つのエチニル基は、いずれも、芳香環がかご型構造に結合する部位のメタ位に存在するものであるのが好ましい。これにより、重合性反応基Bが有する2つのエチニル基のうち一方のエチニル基が反応(重合反応)した状態において、芳香環等の電子的な効果がより顕著に発揮され、他方のエチニル基の反応性をより効果的に低下させることができるとともに、当該反応した部位、および、前述した部分構造Aが適度な立体的な障害となり、他方のエチニル基(未反応のエチニル基)の反応性をより好適に制御することができる。その結果、重合性反応基Bが有する2つのエチニル基についての反応性(第1段目の反応についての反応性と第2段目の反応についての反応性)の選択性をより高いものとすることができるとともに、後に詳述するような焼成工程を、より好適な条件(半導体基板へのダメージを防止しつつ、優れた生産性で絶縁膜を形成することができる条件)で行うことができる。また、絶縁膜の面方向での線膨張係数を、確実により好適なものとすることができ、絶縁膜を形成される部材との密着性を特に優れたものとすることができる。その結果、絶縁膜を備えた積層体、半導体装置の信頼性を特に高いものとすることができる。また、絶縁膜や当該絶縁膜を備えた半導体装置等の歩留まりを特に優れたものとすることができる。
【0057】
上記のような条件を満足する重合性化合物X、すなわち、部分構造Aおよび重合性反応基Bとして好ましいものが選択され、重合性化合物Xにおける芳香環由来の炭素が適正な数に設定されている重合性化合物X、としては、例えば、下記式(1)で示される構造を有するものや、下記式(5)で示される構造が挙げられる。なお、下記式(1)中、下記式(5)中、nは1〜5の整数を表す。
【0058】
【化7】

【0059】
【化8】

【0060】
かかる構造を有するものを重合性化合物Xとして選択することにより、膜形成用組成物を用いて形成される絶縁膜は、前述した効果をより顕著に発揮するものとなる。
【0061】
なお、上記式(1)で示される構造を有する重合性化合物Xでは、2つの重合性反応基Bを2つ有するものを例示したが、その他、1つの重合性反応基Bを有する重合性化合物Xとしては、例えば、下記式(1’)で示される構造を有するものが挙げられる。なお、下記式(1’)中、nは1または2の整数を表す。
【0062】
【化9】

【0063】
なお、重合性化合物Xは、部分構造A、および、重合性反応基B以外の部分構造を有するものであってもよい。
【0064】
上記のような重合性化合物Xは、2つの重合性反応基Bを有し、この重合性反応基Bが2つのエチニル基を有するものである場合、例えば、以下のようにして合成することができる。
【0065】
すなわち、部分構造Aに対応する化合物A’(二価基としてのAに水素原子が2つ接合した化合物)を臭素と反応させ、A’のジブロモ体(部分構造Aに2つのブロモ基が結合した化合物)を得る工程と、A’のジブロモ体をジブロモベンゼンと反応させ、A’のビス(ジブロモフェニル)体(部分構造Aに2つのジブロモフェニル基が結合した化合物)を得る工程と、A’のジブロモフェニル体をトリメチルシリルアセチレンと反応させ、A’のビス(ジ(トリメチルシリルエチニル)フェニル)体(部分構造Aに2つのジ(トリメチルシリルエチニル)フェニル基が結合した化合物)を得る工程と、A’のビス(ジ(トリメチルシリルエチニル)フェニル)体を加水分解(脱トリメチルシリル化)する工程とを有する方法により、目的とする重合性化合物Xを得ることができる。
【0066】
なお、重合性反応基Bが2つのエチニル基に代えて2つのビニル基を有する場合には、重合性化合物Xは、例えば、以下のようにして合成することができる。
【0067】
すなわち、上述した2つのエチニル基を有する重合性化合物Xを合成した後、特に限定されないが、水素ガスを用いたLindlar還元、ナトリウムと液体アンモニアを用いたBrich還元、ジイミドを用いたジイミド還元等を行うことで、目的とする重合性化合物Xを得ることができる。
【0068】
また前記エチニル基とビニル基が並存する場合も本発明では好ましいものであり、例えば、前記エチニル基を還元してビニル基とする場合、還元反応を途中で中止するなどの条件を制御することで、エチニル基とビニル基が並存するものとすることができる。
【0069】
膜形成用組成物は、上述したような重合性化合物Xを単独で含むものであってもよいし、例えば、重合性化合物Xが2つの重合性反応基Bを有し、および/または、重合性反応基Bが2つのエチニル基を有する場合、重合性化合物Xが部分的に重合した重合体(2つの重合性反応基Bのうち一方の重合性反応基Bのみが重合反応したプレポリマーや、重合性反応基Bが有する2つのエチニル基のうち一方のエチニル基のみが重合反応したプレポリマー)をさらに含むものであってもよい。また、当該重合体は、さらに、その他の重合性化合物(重合性化合物X以外の重合性化合物)を含むものであってもよい。膜形成用組成物が重合性化合物Xが部分的に重合した重合体(プレポリマー)を含むものであると、膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される絶縁膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される絶縁膜の強度を特に優れたものとすることができる。また、形成すべき絶縁膜が比較的厚いものであっても好適に形成することができる。また、膜形成用組成物が重合性化合物Xのプレポリマーを含むものであると、部材(例えば、半導体基板)上に絶縁膜を形成する際に、当該部材上において加える熱量を少なくすることができるため、当該部材への加熱によるダメージをより確実に防止することができる。このような重合性化合物Xのプレポリマーを含む膜形成用組成物は、絶縁膜用ワニスとして好適に用いることができる。
【0070】
本工程は、例えば、触媒を用いないで加熱して反応させる熱重合による方法、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル開始剤を用いたラジカル重合による方法、光照射等を用いた光ラジカル重合による方法、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)ジクロリド及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)などのパラジウム触媒を用いた重合による方法、酢酸銅(II)などの遷移金属触媒を用いた重合による方法、塩化モリブデン(V)、塩化タングステン(VI)及び塩化タンタル(V)などの遷移金属塩化物を用いた重合による方法などを挙げることができる。これらの中でも、反応を制御しやすく所望の重合体が得られ、また、金属触媒等の残存による不純物除去が不要なことから、熱重合やラジカル開始剤を用いたラジカル重合による方法が望ましい。
【0071】
前記熱重合の方法で調製する場合、熱処理の条件としては、加熱温度:120〜190℃、加熱時間:3〜11時間であるのが好ましく、加熱温度:140〜180℃、加熱時間:3〜9時間であるのがより好ましい。ラジカル開始剤を使用する場合は、熱処理の条件としては、加熱温度:40〜190℃、加熱時間:0.5〜11時間であるのが好ましく、加熱温度:60〜180℃、加熱時間:0.5〜9時間がより好ましい。また、前記工程で得られた組成物(重合性化合物を含む組成物)に対する加熱処理は、異なる条件を組み合わせて行ってもよい。例えば、熱重合においては、前記工程で得られた組成物(重合性化合物を含む組成物)に対しては、加熱温度:150〜190℃、加熱時間:1〜6時間という条件で行う第1の熱処理と、加熱温度:120〜160℃、加熱時間:2〜9時間という条件で行う第2の熱処理、あるいは、さらに多段階の熱処理を施すことも適宜選択できる。ラジカル開始剤を使用する場合においても、例えば、加熱温度:60〜190℃、加熱時間:0.5〜6時間という条件で行う第1の熱処理と、加熱温度:40〜160℃、加熱時間:0.5〜9時間という条件で行う第2の熱処理、あるいは、さらに多段階の熱処理を施すことも適宜選択できる。なお、上記のような加熱処理は、前記工程で得られた組成物(重合性化合物を含む組成物)を溶媒に溶解した状態で行うのが好ましい。また、上記のような加熱処理によるプレポリマーの合成は、調製すべき膜形成用組成物の構成成分としての溶媒中で行うものであってもよいし、膜形成用組成物の構成成分とは異なる組成の溶媒中で行うものであってもよい。すなわち、所定の溶媒を用いて重合性化合物を重合させプレポリマーを得た後、当該溶媒を、目的とする膜形成用組成物の構成成分としての溶媒に置換してもよい。重合性化合物が部分的に重合した重合体(プレポリマー)の合成に用いることのできる溶媒(反応溶媒)としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,4−ジメトキシベンゼン等のエーテル系溶剤;ベンゼン、トルエン、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、ヘプタン、ヘキサン、n−オクタン等の芳香族および脂肪族炭化水素系溶剤;クロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化物系溶剤;N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
なお、膜形成用組成物が重合性化合物Xのプレポリマーを含むものである場合、未反応の重合性化合物Xは精製により除去されている(未反応の重合性化合物Xが可能な限り含まれていない)のが好ましい。これにより、膜形成用組成物を用いて形成される絶縁膜の強度等の諸特性を、より確実に優れたものとすることができる。
【0073】
膜形成用組成物中における重合性化合物Xの含有率と重合性化合物Xが部分的に重合した重合体(例えば、2つの重合性反応基Bのうち一方の重合性反応基Bのみが重合反応したプレポリマーや、重合性反応基Bが有する2つのエチニル基のうち一方のエチニル基のみが重合反応したプレポリマー)の含有率との和は、1.0〜30wt%であるのが好ましい。
【0074】
上記の説明では、重合性化合物として、芳香環と当該芳香環に直接結合するエチニル基またはビニル基とを有する重合性反応基を備えるもの(重合性化合物X)を用いる場合について代表的に説明したが、本発明において、重合性化合物は、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造と、重合反応に寄与する重合性反応基とを有するものであればよく、上記のような重合性化合物X以外のものであってもよい。例えば、本発明において、重合性化合物は、芳香環を備えていないものであってもよい。また、本発明において、重合性化合物は、重合性反応基として、エチニル基、ビニル基以外の官能基(例えば、エチニル基の水素原子が他の原子または原子団で置換されたものや、ビニル基を構成する水素原子のうち少なくとも1つが他の原子または原子団で置換されたもの等)を備えるものであってもよい。
【0075】
またエチニル基に置換基を有するものである場合、前記トリメチルシリルアセチレンをプロピン、ブチン、ペンチンなどのようなアルキル基置換アセチレンや、フェニルアセチレントリルアセチレン、ナフチルアセチレン、フルオレニルアセチレンなどのようなアリール基置換アセチレン、さらにはシクロヘキシルアセチレン、アダマンチルアセチレンなどのようなシクロアルキル基置換アセチレンに変え、脱トリメチルシリル化以外の前記工程を行うことで対応する置換エチニル基を有する重合性化合物を得ることができる。
【0076】
また、重合性化合物が置換ビニル基を有するものである場合、対応する置換ビニル基の合成方法は置換エチニル基に対して同様の前記還元反応を行えばよい。
【0077】
[2]溶媒
膜形成用組成物は、上述したような重合性化合物および/または重合性化合物が部分的に重合した重合体を含むものであればよいが、通常、これらを溶解する溶媒を含むものである。
【0078】
溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アニソール、メシチレン等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、溶媒としては、シクロペンタノンおよびシクロヘキサノンが好ましい。膜形成用組成物を構成する溶媒としては、例えば、重合性化合物の合成や上述した重合体(重合性化合物が部分的に重合したプレポリマー)の合成に用いた溶媒(反応溶媒)等を含むものであってもよい。
【0079】
膜形成用組成物における溶媒の含有率は、特に限定されないが、70〜99wt%であるのが好ましい。
【0080】
[3]その他の成分
膜形成用組成物は、上記以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、界面活性剤;シランカップリンク剤等のカップリング剤;ラジカル開始剤、ジスルフィド類等の触媒、「アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造と、重合反応に寄与する重合性反応基とを有する重合性化合物」以外の重合性化合物(その他の重合性化合物)や、当該「その他の重合性化合物」が重合した重合体(その他の重合体)等が挙げられる。
【0081】
また、膜形成用組成物は、感光剤としてのナフトキノンジアジド化合物等を含むものであってもよい。これにより、膜形成用組成物を、感光性を有する表面保護膜の形成に好適に用いることができる。
【0082】
なお、本発明では、膜形成用組成物は、熱分解性により発泡し、形成される絶縁膜中に空孔を形成する空孔形成材を含まないものであるのが好ましい。従来、絶縁膜の誘電率を低下させる目的で空孔形成材が用いられていたが、このような空孔形成材を用いた場合、形成される絶縁膜の強度が低下したり、絶縁膜の各部位での不本意な厚さのばらつき、特性のばらつきを招く等の問題があったが、本発明においては、空孔形成材を用いなくても、形成される絶縁膜の誘電率を十分に低いものとすることができる。そして、空孔形成材を含まないことにより、上記のような問題の発生を確実に防止することができる。
【0083】
上記のような膜形成用組成物は、そのまま、絶縁膜の形成に用いるものであってもよいが、重合性化合物が2つの重合性反応基を有し、および/または、重合性反応基が2つのエチニル基を有する場合、絶縁膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上に付与するのに先立ち、加熱処理に供されるものであってもよい。これにより、膜形成用組成物を、重合性化合物が部分的に重合した重合体(プレポリマー)を含むものとすることができ、膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される絶縁膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される絶縁膜の強度を特に優れたものとすることができる。また、絶縁膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに先立って膜形成用組成物に加熱処理を施すことにより、形成すべき絶縁膜が比較的厚いものであっても好適に形成することができる。また、絶縁膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに先立って膜形成用組成物に加熱処理を施すことにより、当該部材上において加える熱量を少なくすることができるため、当該部材への加熱によるダメージをより確実に防止することができる。このような熱処理を施す場合、熱処理の条件としては、加熱温度:120〜190℃、加熱時間:3〜11時間であるのが好ましく、加熱温度:140〜180℃、加熱時間:3〜9時間であるのがより好ましい。また、上記のような加熱処理は、異なる条件を組み合わせて行ってもよい。例えば、加熱温度:150〜190℃、加熱時間:1〜6時間という条件で行う第1の熱処理と、加熱温度:120〜160℃、加熱時間:2〜9時間という条件で行う第2の熱処理とを施してもよい。
【0084】
本発明の絶縁膜は、例えば、上述したような膜形成用組成物を、半導体基板等の部材上に付与し、これに対し、加熱や活性エネルギー線の照射等の処理(焼成処理)を施すことにより形成される。
【0085】
上記のような焼成処理を行うことにより、重合性化合物や重合性化合物が部分的に重合したプレポリマーが有する未反応の重合性反応基が重合反応し、重合体(硬化物)で構成された絶縁膜が得られる。このような化学構造を有する重合体(硬化物)で構成された絶縁膜は、強度、耐熱性等に優れている。また、上記のようにして得られる絶縁膜は、誘電率が低いものである。また、上記のようにして得られる絶縁膜は、各部位での膜厚や特性についての不本意なばらつきが抑制されたものである。このようなことから、上記のような絶縁膜は、半導体装置を構成する絶縁膜として好適に用いることができる。また、上述したように、本発明の絶縁膜は、絶縁膜を形成される部材との密着性に優れるものであり、上記のような焼成処理(熱処理)を施した場合であっても、形成される絶縁膜が、膜形成用組成物が付与された部材(絶縁膜が形成される部材)から不本意な剥離を生じてしまうことが好適に防止される。その結果、絶縁膜や当該絶縁膜を備えた半導体装置等の歩留まりを優れたものとすることができる。
【0086】
膜形成用組成物を部材上に付与する方法としては、例えば、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等による方法が挙げられる。
【0087】
焼成処理に先立ち、例えば、部材上に付与された膜形成用組成物から溶媒を除去する処理(脱溶媒処理)を施してもよい。このような脱溶媒処理は、例えば、加熱処理、減圧処理などにより行うことができる。
【0088】
焼成処理は、例えば、処理温度:200〜450℃、処理時間:1〜60分間という条件で行うのが好ましく、処理温度:250〜400℃、処理時間:5〜30分間という条件で行うのがより好ましい。また、焼成工程では、異なる条件の加熱処理を組み合わせて行ってもよい。
【0089】
<半導体装置の製造方法、積層体、半導体装置>
図1〜図3は、半導体装置の製造方法の好適な実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図1〜図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0090】
図1〜図3に示すように、本実施形態の製造方法は、素子が形成された半導体基板1を用意する半導体基板用意工程と、半導体基板1の表面にSiCN膜等のバリア膜2を形成するバリア膜形成工程(1b)と、バリア膜2の表面に本発明の絶縁膜としての層間絶縁膜3を形成する絶縁膜形成工程(1c)と、層間絶縁膜3の表面にキャップ層4を形成して、層間絶縁膜3とキャップ層4との積層構造を備えた積層体10を得るキャップ層形成工程(1d)と、キャップ層4の表面にレジスト膜7を形成するレジスト膜形成工程(1e)と、フォトマスクを用いてレジスト膜7に露光・現像処理を施し、レジスト膜7のビア(導体ポスト)または配線溝を形成する位置に対応する位置に開口部(溝部)を形成するレジスト膜パターニング工程(1f)と、レジスト膜7をマスクとして、キャップ層4をエッチングする第1のエッチング工程(1g)と、レジスト膜7を除去するレジスト膜除去工程(1h)と、キャップ層4をマスクとして、層間絶縁膜3をエッチングし、開口部(溝部)を形成する第2のエッチング工程(1i)と、層間絶縁膜が設けられた面側に、後述する配線層6の構成成分の拡散を防止するバリアメタル5を形成するバリアメタル形成工程(1j)と、バリアメタル5で被覆された層間絶縁膜3の溝部内に配線層6を形成する配線層形成工程(1k)と、配線材料で構成され溝部の外部に設けられた部分、および、バリアメタル5の構成材料で構成され溝部の外部に設けられた部分を研磨により除去する研磨工程(1l)とを有している。
【0091】
バリア膜形成工程は、気相成膜法を用いて好適に行うことができる。
絶縁膜形成工程は、バリア膜2の表面に、上述したような方法により、膜形成用組成物を付与することにより、好適に行うことができる。なお、層間絶縁膜3は、予め、別途ドライフィルムとして用意した樹脂膜(絶縁膜)を、バリア膜2の上に積層するように形成することもできる。より具体的には、予め、膜形成用組成物を用いて、部材上に樹脂膜(絶縁膜)を形成して乾燥し、ドライフィルムを得、このドライフィルムを前記部材から剥離し、これを、バリア膜2の上に、積層して、加熱および/または放射線を照射することにより、層間絶縁膜3を形成してもよい。なお、バリア膜2には、当業者にバリア膜、エッチストッパー膜として公知の材料を用いればよいが、SiCNやSiCが好適に用いられるものである。
【0092】
キャップ層形成工程は、気相成膜法を用いて好適に行うことができる。キャップ層4は、通常、SiOで構成されるものであるが、例えば、SiN、SiC、SiCN、SiOC等で構成されたものであってもよい。
【0093】
レジスト膜形成工程は、例えば、各種塗布法を用いて行うことができるが、中でも、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等による方法を好適に適用することができる。
【0094】
第1のエッチング工程は、処理ガスとしてCFのようなフッ素系ガスを用いたエッチング法(リアクティブイオンエッチング法)により行う。層間絶縁膜3が上記のような条件を満たすものであるため、キャップ層4とともに層間絶縁膜3の一部が不本意なエッチングにより除去されてしまうことが確実に防止される。その結果、最終的に得られる半導体装置100を、絶縁不良等の問題の発生が確実に防止された信頼性の高いものとなる。
【0095】
第2のエッチング工程は、処理ガスとして窒素と水素の混合ガスまたはアンモニアガス等を用いたエッチング法(リアクティブイオンエッチング法)により行うことができる。
【0096】
なお、第2のエッチング工程前後等に適宜アッシングによるレジスト膜除去工程を行うことができる。
【0097】
バリアメタル形成工程は、PVD法等の気相成膜法により行うことができる。バリアメタル5の構成材料としては、例えば、Ta、Ti、TaN、TiN、WN等が挙げられる。
【0098】
配線層形成工程は、PVD等の気相成膜法と電界めっき等の湿式めっき法と組み合わせて行うのが好ましい。これにより、配線層6のバリアメタル5に対する密着性を十分に優れたものとしつつ、配線層6の形成効率を特に優れたものとすることができる。配線層6の構成材料は、特に限定されないが、銅(Cu)が好適に用いられる。
研磨工程は、CMP法(化学機械研磨法)により好適に行うことができる。
【0099】
以上が半導体装置の1層配線の好適な製造工程例であるが、多層配線では、この工程を繰り返すことになる。
上記のような工程を経て、半導体装置100を得ることができる。
【0100】
本発明の半導体装置は、該半導体装置の積層構造の中で絶縁膜と隣接する他の膜、例えば、バリア膜やキャップ層として使用されるSiCN膜、SiC膜、SiO膜、SiN膜、SiOC膜等との密着力が十分であるため、製造時の熱履歴によって密着不良が生じることが確実に防止された信頼性の高いものである。
【0101】
また、上述したような層間絶縁膜(本発明の絶縁膜)は、誘電特性に優れているので、半導体装置の信号損失を低下することができる。
【0102】
また、上述したような層間絶縁膜(本発明の絶縁膜)は、誘電特性に優れているので、配線遅延を低下することができる。
【0103】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0104】
例えば、上記の説明においては、本発明の絶縁膜としての層間絶縁膜3をバリア膜2の上に形成する例について代表的に説明したが、絶縁膜を形成する位置はこれに限定されない。
【0105】
また、本発明の絶縁膜は、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造と、重合反応に寄与する重合性反応基とを有する重合性化合物を含む組成物を用いて形成された絶縁膜であって、面方向での線膨張係数が9×10−6−1以上25×10−6−1以下であればよく、上述したような重合性化合物Xを含む組成物を用いて形成されたものでなくてもよい。また、上述した実施形態では、本発明の絶縁膜として層間絶縁膜を備えたものについて代表的に説明したが、本発明の絶縁膜は、層間絶縁膜以外に適用されるものであってもよい。
【実施例】
【0106】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0107】
[1]重合性化合物の合成
(合成例1)
まず、1,3−ジメチルアダマンタンを用意し、温度計、撹拌機および還流管を備えた4つ口の2000mLフラスコに、四塩化炭素:700mL、臭素:35g(0.22mol)を入れ、撹拌しながら、用意した1,3−ジメチルアダマンタン:32.9g(0.2mol)を、少量ずつ添加した。添加中、内温は20〜30℃に保った。
【0108】
添加終了後、温度が上昇しなくなってから、さらに1時間反応させた。
その後、冷水:約2000mLに注いで、粗生成物を濾別し、純水で洗い、乾燥した。
【0109】
さらに粗生成物を、熱エタノールにより再結晶した。得られた再結晶物を、減圧乾燥することにより、生成物:37.4gを得た。IR分析によりブロモ基の吸収が690〜515cm−1に見られること、質量分析による分子量が322である結果より、生成物が3,5−ジメチル−1,7−ジブロモアダマンタンであることが示された。
【0110】
次に、フラスコ内で、上記で得た3,5−ジメチル−1,7−ジブロモアダマンタン:33.2g(103.2mmol)および1,3−ジブロモベンゼン:1217g(5161.6mmol)を攪拌し、乾燥窒素下25℃において、臭化アルミニウム(III):24.8g(93.0mmol)を少量ずつ添加した。これを60℃に昇温して8時間攪拌した後、室温に戻し、反応液を得た。5%塩酸水溶液:700mlに、反応液を投入し、攪拌した。水層を除去し、有機層をアセトン:2000mlに投入した。析出物をろ過し、アセトン:1000mlで3回洗浄することにより、3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタン:57gを得た。質量分析による分子量が632である結果より、生成物が3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタンであることが示された。
【0111】
次に、上記で得られた3,5,−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタン:39.8g(62.9mmol)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム:3.53g(5.0mmol)、トリフェニルホスフィン:6.60g(25.2mmol)、ヨウ化銅(II):4.79g(25.2mmol)、トリエチルアミン:750mlをフラスコに添加し、攪拌した。これを75℃に昇温した後、トリメチルシリルアセチレン:37.1g(377.7mmol)をゆっくり添加した。これを75℃において7時間攪拌した後、120℃に昇温してトリエチルアミンを留去した。その後、室温に戻し、ジクロロメタン:1000mlを反応液に添加し、20分攪拌した。析出物をろ過により除去し、ろ液に5%塩酸水溶液:1000mlを加えて分液した。有機層を水:1000mlで3回洗浄した後、有機層の溶媒を減圧除去した。得られた化合物をヘキサン:1500mlに溶解させた。不溶物をろ過により除去し、ろ液部のヘキサンを減圧除去した。これにアセトン:1000mlを投入し、析出物をアセトンで3回洗浄することにより、3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)アダマンタン:36.1gを得た。質量分析による分子量が701である結果より、生成物が3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)アダマンタンであることが示された。
【0112】
さらに、上記で得られた3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)アダマンタン:32.3g(46.1mmol)と炭酸カリウム:1.46g(10.6mmol)とを、テトラヒドロフラン:600mlとメタノール:300mlとの混合溶媒中において、窒素雰囲気下、室温で4時間攪拌させた。これを10%塩酸水溶液:1000mlに投入して、析出物をろ過し、得られた析出物を水:1000mlで洗浄、さらにアセトン:1000mlで洗浄したのち乾燥させることにより、重合性化合物Xとしての3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタン:15.0gを得た。
【0113】
以下に、生成物の外観、質量分析および元素分析の結果を示す。これらのデータは、上記で得られた化合物が3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタンであることを示している。
【0114】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):413(M+)
元素分析:理論値(/%)C;93.16、H;6.84、実測値(/%)C;93.11、H;6.82
【0115】
(合成例2〜5)
ジメチルアダマンタンに代えて、テトラメチルビアダマンタン、ヘキサメチルトリアダマンタン、オクタメチルテトラアダマンタン、デカメチルペンタアダマンタンを用意したこと以外は、前記合成例1と同様にして、重合性化合物Xを得た。
【0116】
なお、合成例1〜5で得られた重合性化合物Xの構造式を下記式(1)に示す。下記式(1)中、nは1〜5の整数を表し、nの数は各合成例の番号に対応する。
【0117】
【化10】

【0118】
なお、上記式(1)中のn=2の重合性化合物X(合成例2)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0119】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):574(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.93、H;8.07、実測値(/%)C;91.87、H;8.00
【0120】
また、上記式(1)n=3の重合性化合物X(合成例3)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0121】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):737(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.25、H;8.75、実測値(/%)C;91.21、H;8.77
【0122】
上記式(1)n=4の重合性化合物X(合成例4)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0123】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):899(M+)
元素分析:理論値(/%)C;90.81、H;9.19、実測値(/%)C;90.75、H;9.16
【0124】
上記式(1)n=5の重合性化合物X(合成例5)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0125】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):1062(M+)
元素分析:理論値(/%)C;90.51、H;9.49、実測値(/%)C;90.49、H;9.47
【0126】
(合成例6)
まず、Journal of Organic Chemistry.,39,2987-3003(1974)に記載の合成法に従って、4,9−ジブロモジアマンタンを合成した。IR分析によりブロモ基の吸収が690〜515cm−1に見られること、質量分析による分子量が346である結果より、生成物が4,9−ジブロモジアマンタンであることが示された。
【0127】
次に、合成例1での合成中間体としての3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタンの合成において、3,5−ジメチル−1,7−ジブロモアダマンタンに代えて4,9−ジブロモジアマンタン:35.7g(103.1mmol)を用いた以外は、前記合成例1と同様な方法で反応させることにより、4,9−ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジアマンタン:56gを得た。質量分析による分子量が656である結果より、生成物が4,9−ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジアマンタンであることが示された。
【0128】
次に、合成例1での合成中間体としての3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)アダマンタンの合成において、3,5,−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタンに代えて、上記で得られた4,9−ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジアマンタン:41.2g(62.8mmol)を用いた以外は合成例1と同様な反応で反応させることにより、4,9−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)ジアマンタン:35.5gを得た。質量分析による分子量が725である結果より、生成物が4,9−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)ジアマンタンであることが示された。
【0129】
さらに合成例1での最終生成物としての3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタンの合成において、3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)アダマンタンに代えて、上記で得られた4,9−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)ジアマンタン38.8g(53.5mmol)を用いた以外は合成例1と同様な反応で反応させることにより、重合性化合物Xとしての4,9−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)ジアマンタン:14.3gを得た。
【0130】
以下に、生成物の外観、質量分析および元素分析の結果を示す。これらのデータは、上記で得られた化合物が4,9−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)ジアマンタンであることを示している。
【0131】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):436(M+)
元素分析:理論値(/%)C;93.54、H;6.46、実測値(/%)C;93.46、H;6.38
【0132】
(合成例7〜9)
ジブロモジアマンタンに代えて、ジブロモジ(ジアマンタン)、ジブロモトリ(ジアマンタン)、ジブロモテトラ(ジアマンタン)を用意したこと以外は前記合成例6と同様にして、重合性化合物Xを得た。
【0133】
なお、合成例6〜9で得られた重合性化合物Xの構造式を下記式(4)に示す。下記式(4)中、nは1〜4の整数を表し、nの数は(各合成例の番号−5)に対応する。
【0134】
【化11】

【0135】
なお、上記式(4)n=2の重合性化合物X(合成例7)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0136】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):622(M+)
元素分析:理論値(/%)C;92.56、H;7.44、実測値(/%)C;92.53、H;7.41
【0137】
また、上記式(4)n=3の重合性化合物X(合成例8)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0138】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):809(M+)
元素分析:理論値(/%)C;92.03、H;7.97、実測値(/%)C;92.01、H;7.94
【0139】
上記式(4)n=4の重合性化合物X(合成例9)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0140】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):995(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.70、H;8.30、実測値(/%)C;91.67、H;8.28
【0141】
(合成例10)
まず、温度計、攪拌器および還流管を備えた4つ口の2000mLフラスコに、3,5−ジメチル−1−ブロモアダマンタン:45.5g(187.1mmol)と1,3−ジブロモベンゼン:1217g(5161.6mmol)とを入れて攪拌し、乾燥窒素下25℃において、臭化アルミニウム(III):24.8g(93.0mmol)を少量ずつ添加した。これを60℃に昇温して8時間攪拌した後、室温に戻し、反応液を得た。
【0142】
次に、5%塩酸水溶液:700mLに、反応液を投入し、攪拌した。水層を除去し、有機層をアセトン:2000mLに投入した。析出物をろ過し、アセトン:1000mLで3回洗浄することにより、3,5,−ジメチル−1−(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタン:51.4gを得た。質量分析による分子量が398である結果より、生成物が3,5,−ジメチル−1−(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタンであることが示された。
【0143】
次に、上記で得られた3,5,−ジメチル−1−(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタン:47.1g(118.4mmol)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム:6.66g(9.5mmol)、トリフェニルホスフィン:179.5g(47.3mmol)、ヨウ化銅(II):248.7g(47.3mmol)、トリエチルアミン:750mLをフラスコに添加し、攪拌した。これを75℃に昇温した後、トリメチルシリルアセチレン:34.9g(355.2mmol)をゆっくり添加した。これを75℃において7時間攪拌した後、120℃に昇温してトリエチルアミンを留去した。その後、室温に戻し、ジクロロメタン:1000mLを反応液に添加し、20分攪拌した。析出物をろ過により除去し、ろ液に5%塩酸水溶液:1000mLを加えて分液した。有機層を水:1000mLで3回洗浄した後、有機層の溶媒を減圧除去した。得られた化合物をヘキサン:1500mLに溶解させた。不純物をろ過により除去し、ろ液部のヘキサンを減圧除去した。これにアセトン:1000mLを投入し、析出物をアセトンで3回洗浄することにより、3,5−ジメチル−1−(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)アダマンタン:37gを得た。質量分析による分子量が432である結果より、生成物が3,5−ジメチル−1−(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)アダマンタンであることが示された。
【0144】
さらに上記で得られた3,5−ジメチル−1−(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)アダマンタン:36g(83.1mmol)および炭酸カリウム:2.7g(19.3mmol)を、テトラヒドロフラン:600mLとメタノール:300mLとの混合溶媒中において、窒素雰囲気下、室温で4時間攪拌させた。これを10%塩酸水溶液:1000mLに投入して、析出物をろ過し、得られた析出物を水:1000mLで洗浄、さらにアセトン:1000mLで洗浄したのち乾燥させることにより、重合性化合物としての3,5−ジメチル−1−(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタン:19gを得た。
【0145】
以下に、生成物の外観、質量分析および元素分析の結果を示す。これらのデータは、上記で得られた化合物が3,5−ジメチル−1−(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタンであることを示している。
【0146】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):288(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.61、H;8.39、実測値(/%)C;91.59、H;8.37
【0147】
(合成例11)
ジメチルブロモアダマンタンに代えて、テトラメチルブロモビアダマンタンを用意したこと以外は、前記合成例10と同様にして、重合性化合物Xを得た。
【0148】
なお、合成例10、11で得られた重合性化合物Xの構造式を下記式(1’)に示す。下記式(1’)中、nは1〜2の整数を表し、nの数は(各合成例の番号−9)に対応する。
【0149】
【化12】

【0150】
なお、上記式(1’)n=2の重合性化合物X(合成例11)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0151】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):450(M+)
元素分析:理論値(/%)C;90.61、H;9.39、実測値(/%)C;90.59、H;9.36
【0152】
(合成例12)
まず、温度計、攪拌器および還流管を備えた4つ口の2000mLフラスコに、4−ブロモジアマンタン:50g(187.1mmol)と1,3−ジブロモベンゼン:1217g(5161.6mmol)とを入れて攪拌し、乾燥窒素下25℃において、臭化アルミニウム(III):24.8g(93.0mmol)を少量ずつ添加した。これを60℃に昇温して8時間攪拌した後、室温に戻し、反応液を得た。
【0153】
次に、5%塩酸水溶液:700mLに、反応液を投入し、攪拌した。水層を除去し、有機層をアセトン:2000mLに投入した。析出物をろ過し、アセトン:1000mLで3回洗浄することにより、4−(3,5−ジブロモフェニル)ジアマンタン:56gを得た。質量分析による分子量が422である結果より、生成物が4−(3,5−ジブロモフェニル)ジアマンタンであることが示された。
【0154】
次に、上記で得られた4−(3,5−ジブロモフェニル)ジアマンタン:50g(118.4mmol)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム:6.66g(9.5mmol)、トリフェニルホスフィン:179.5g(47.3mmol)、ヨウ化銅(II):248.7g(47.3mmol)、トリエチルアミン:750mLをフラスコに添加し、攪拌した。これを75℃に昇温した後、トリメチルシリルアセチレン:34.9g(355.2mmol)をゆっくり添加した。これを75℃において7時間攪拌した後、120℃に昇温してトリエチルアミンを留去した。その後、室温に戻し、ジクロロメタン:1000mLを反応液に添加し、20分攪拌した。析出物をろ過により除去し、ろ液に5%塩酸水溶液:1000mLを加えて分液した。有機層を水:1000mLで3回洗浄した後、有機層の溶媒を減圧除去した。得られた化合物をヘキサン:1500mLに溶解させた。不純物をろ過により除去し、ろ液部のヘキサンを減圧除去した。これにアセトン:1000mLを投入し、析出物をアセトンで3回洗浄することにより、4−(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)ジアマンタン:41gを得た。質量分析による分子量が456である結果より、生成物が4−(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)ジアマンタンであることが示された。
【0155】
さらに上記で得られた4−(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)ジアマンタン:40g(87.6mmol)および炭酸カリウム:2.7g(19.3mmol)を、テトラヒドロフラン:600mLとメタノール:300mLとの混合溶媒中において、窒素雰囲気下、室温で4時間攪拌させた。これを10%塩酸水溶液:1000mLに投入して、析出物をろ過し、得られた析出物を水:1000mLで洗浄、さらにアセトン:1000mLで洗浄したのち乾燥させることにより、重合性化合物としての4−(3,5−ジエチニルフェニル)ジアマンタン:23gを得た。
【0156】
以下に、生成物の外観、質量分析および元素分析の結果を示す。これらのデータは、上記で得られた化合物が4−(3,5−ジエチニルフェニル)ジアマンタンであることを示している。
【0157】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):312(M+)
元素分析:理論値(/%)C;92.26、H;7.74、実測値(/%)C;92.12、H;7.70
【0158】
(合成例13)
ブロモジアマンタンに代えて、ブロモビ(ジアマンタン)を用意したこと以外は前記合成例12と同様にして、重合性化合物Xを得た。
【0159】
なお、合成例12、13で得られた重合性化合物Xの構造式を下記式(4’)に示す。下記式(4’)中、nは1〜2の整数を表し、nの数は(各合成例の番号−11)に対応する。
【0160】
【化13】

【0161】
なお、上記式(4’)n=2の重合性化合物X(合成例13)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0162】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):498(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.51、H;8.94、実測値(/%)C;91.49、H;8.46
【0163】
(合成例14)
5Lナスフラスコに、前記合成例1で得られた3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタン14.4g(34.9mmol)、キノリン67.4g(522mmol)、5%パラジウム−炭酸カルシウム0.37g(0.174mmol)、テトラヒドロフラン(1000mL)及び攪拌子を投入し、水素気流下、室温で攪拌を開始した。水素3.35L(139mmol)が消費された時点で、窒素を導入して反応を停止させた。反応液を濾過後、濾液を減圧留去し、得られた個体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、重合性化合物Xとしての3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジビニルフェニル)アダマンタン18.1gを得た。
【0164】
以下に、生成物の外観、質量分析および元素分析の結果を示す。これらのデータは、上記で得られた化合物が3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジビニルフェニル)アダマンタンであることを示している。
【0165】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):420(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.37、H;8.63、実測値(/%)C;91.35、H;8.60
【0166】
(合成例15〜22)
3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタンに代えて、前記合成例2〜9で得られた重合性化合物を用意した以外は、前記合成例14と同様にして重合性化合物Xを得た。
【0167】
なお、合成例14〜18で得られた重合性化合物Xの構造式を上記式(5)に、合成例19〜22で得られた重合性化合物Xの構造式を下記式(6)に示す。また、式(5)中、nは1〜5の整数を表し、nの数は(各合成例の番号−13)に対応し、式(6)中、nは1〜4の整数を表し、nの数は(各合成例の番号−18)に対応する。
【0168】
【化14】

【0169】
なお、上記式(5)n=2の重合性化合物X(合成例15)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0170】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):582(M+)
元素分析:理論値(/%)C;90.66、H;9.34、実測値(/%)C;90.63、H;9.31
【0171】
また、上記式(5)n=3の重合性化合物X(合成例16)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0172】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):745(M+)
元素分析:理論値(/%)C;90.26、H;9.74、実測値(/%)C;90.24、H;9.70
【0173】
上記式(5)n=4の重合性化合物X(合成例17)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0174】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):907(M+)
元素分析:理論値(/%)C;90.00、H;10.00、実測値(/%)C;89.96、H;9.97
【0175】
上記式(5)n=5の重合性化合物X(合成例18)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0176】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):1069(M+)
元素分析:理論値(/%)C;89.82、H;10.18、実測値(/%)C;89.80、H;10.14
【0177】
上記式(6)n=1の重合性化合物X(合成例19)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0178】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):444(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.84、H;8.16、実測値(/%)C;91.81、H;8.13
【0179】
上記式(6)n=2の重合性化合物X(合成例20)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0180】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):630(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.37、H;8.63、実測値(/%)C;91.32、H;8.61
【0181】
上記式(6)n=3の重合性化合物X(合成例21)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0182】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):817(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.12、H;8.88、実測値(/%)C;91.10、H;8.84
【0183】
上記式(6)n=4の重合性化合物X(合成例22)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0184】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):1003(M+)
元素分析:理論値(/%)C;90.96、H;9.04、実測値(/%)C;90.93、H;9.01
【0185】
(合成例23)
まず、ジメチルアダマンタンに代えて、ドデカメチルヘキサアダマンタンを用意したこと以外は、前記合成例1と同様に反応を行い、生成物を得た。
得られた生成物の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0186】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):1223(M+)
元素分析:理論値(/%)C;90.28、H;9.72、実測値(/%)C;90.26、H;9.70
【0187】
これらのデータは、得られた生成物が式(1)のn=6で表される化合物であることを示している。
【0188】
次に、前記合成例14と同様の反応を行うことにより、重合性化合物Xを得た。
以下に、生成物の外観、質量分析および元素分析の結果を示す。これらのデータは、上記で得られた化合物(重合性化合物X)が式(5)のn=6で表される化合物であることを示している。
【0189】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):1231(M+)
元素分析:理論値(/%)C;89.69、H;10.31、実測値(/%)C;89.66、H;10.29
【0190】
(合成例24)
ブロモジアマンタンに代えて、ブロモトリ(ジアマンタン)を用意したこと以外は、前記合成例12と同様に反応を行い、生成物を得た。
【0191】
得られた生成物の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。これらのデータは、得られた生成物が式(4’)のn=3で表される化合物であることを示している。
【0192】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):684(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.17、H;8.83、実測値(/%)C;91.14、H;8.86
【0193】
(合成例25)
ジアマンタンを原料に用いて、Macromolecules., 5262, 5266 (1991)に記載の合成法に従って、4,9−ジエチニルジアマンタンを合成した。
【0194】
得られた生成物の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。これらのデータは、得られた生成物が4,9−ジエチニルジアマンタンであることを示している。
【0195】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):236(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.47、H;8.53、実測値(/%)C;91.45、H;8.57
【0196】
次に、4,9−ジエチニルジアマンタン10gと1,3,5−トリイソプロピルベンゼン50mlとPd(PPh120mgを窒素気流下で内温190℃で12時間攪拌した。反応液を室温にした後、イソプロピルアルコール300mlを添加した。析出した固体を濾過して、メタノールで洗浄することにより、下記式(7)で表される化合物を得た。得られた化合物の質量平均分子量は20000であった。
【0197】
【化15】

【0198】
[2]膜形成用組成物の調製
(調製例1)
上記合成例1で合成された重合性化合物としての3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタン:5gを1,3−ジメトキシベンゼン:45gに溶解させ、乾燥窒素下170℃で3時間反応させ、反応液を一旦室温まで冷却した。GPCにより分子量測定を行ったところ、数平均分子量が46,000であった。再び反応液を加熱し、150℃で6時間反応させ、反応液を、10倍の体積のメタノール/テトラヒドロフラン=3/1の混合溶媒に滴下して沈殿物を集めて乾燥し、2.8gのプレポリマーを得た(収率:56%)。得られたプレポリマー:2gを、シクロペンタノン:18gに溶解させ、フィルターでろ過することにより、有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物とした。
【0199】
(調製例2〜24)
重合性化合物として、合成例2〜24で合成したものをそれぞれ用いた以外は、前記調製例1と同様にして重合反応を行い、プレポリマーを得、さらに、当該プレポリマー:2gを用いて、前記調製例1で述べたのと同様の処理を施すことにより有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物を得た。
【0200】
(調製例25)
重合性化合物として、合成例25で合成した化合物:2.0gをシクロヘキサノン:20gに溶解させ、フィルターでろ過することにより、有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物とした。
【0201】
なお、各調製例における膜形成用組成物の調製に用いた重合性化合物について、それぞれ、芳香環由来の炭素数、重合性反応基由来の炭素数、部分構造由来の炭素数および芳香環由来の炭素の割合を表1に示した。
【0202】
【表1】

【0203】
[3]絶縁膜の形成(絶縁膜付き基板の作製)
以下のようにして、各実施例および比較例について、それぞれ、複数枚の絶縁膜付き基板を作成した。
【0204】
(実施例1〜23)
それぞれ、前記各調製例1〜23で得られた有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物を用い、以下のようにして絶縁膜を形成した。
【0205】
まず、有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物を、スピンコーターにより、シリコンウエハ上に塗布した。この際、熱処理後の絶縁膜の厚さが、150nmとなるように、スピンコーターの回転数と時間を設定した。
【0206】
次に、上記のようにして塗膜が設けられたシリコンウエハを、200℃のホットプレート上に1分間置き、塗膜中に含まれる溶媒(シクロペンタノン)を除去した。
【0207】
その後、乾燥した塗膜が設けられたシリコンウエハについて、400℃のオーブン中で窒素雰囲気下10分間の熱処理(焼成処理)を施すことにより、塗膜を構成するプレポリマーを硬化させ、絶縁膜を形成し、絶縁膜付き基板を得た。
【0208】
(比較例1)
膜形成用組成物として、前記調製例24で得られたものを用いた以外は、それぞれ、前記実施例と同様にして絶縁膜付き基板を得た。
【0209】
(比較例2)
膜形成用組成物として、前記調製例25で得られた有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物を用い、以下のようにして絶縁膜を形成した。
【0210】
まず、有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物を、スピンコーターにより、シリコンウエハ上に塗布した。この際、熱処理後の絶縁膜の厚さが、150nmとなるように、スピンコーターの回転数と時間を設定した。
【0211】
次に、上記のようにして塗膜が設けられたシリコンウエハを、窒素気流下110℃のホットプレート上に1分30秒間置いた後、窒素気流下250℃のホットプレート上に1分間置き、塗膜中に含まれる溶媒(シクロヘキサノン)を除去した。
【0212】
その後、乾燥した塗膜が設けられたシリコンウエハについて、電子線照射(Ar雰囲気、圧力20kPa、基板温度350℃、電子加速電圧20kV:電子線ドーズ量1μCcm−2:ウシオ電機社製Mini−EB)を行い、絶縁膜付き基板を得た。
【0213】
[4]絶縁膜(絶縁膜付き基板)についての評価
[4.1]誘電率
誘電率は、日本エス・エス・エム(株)製、自動水銀プローブCV測定装置SSM495を用いて評価した。
【0214】
[4.2]面方向での線膨張係数
上記[3]で述べた絶縁膜の形成方法に従って、各実施例および各比較例について、絶縁膜の形成(絶縁膜付き基板の作製)を行い、各絶縁膜の面方向での線膨張係数を求めた。すなわち、前記各調製例で得られた膜形成用組成物を、それぞれ、直径300mmのシリコンウエハ上に塗布し、200℃のホットプレート上に1分間置き、塗膜中に含まれる溶媒(シクロペンタノン)を除去した。
【0215】
比較例2については、窒素気流下110℃のホットプレート上に1分30秒間置いた後、窒素気流下250℃のホットプレート上に1分間置き、塗膜中に含まれる溶媒(シクロヘキサノン)を除去した。
【0216】
溶媒除去後の、シリコンウエハの反り量を、表面粗さ測定器(株式会社小坂研究所製サーフコーダSE3500)により測定した。続いて、同じシリコンウエハに対し、400℃のオーブン中で窒素雰囲気下10分間の熱処理(焼成処理)を施した後、再度、表面粗さ計で反り量を測定した。比較例2については、電子線照射後、表面粗さ計で反り量を測定した。
【0217】
それぞれの反り量から、下記式(A)および式(B)を用いて応力σを求めた。
σ=DSi/(6Rt(1−ν)) (A)
R(曲率半径)=(a+4X)/8X (B)
【0218】
それぞれの応力値から、下記式(C)、および式(D)を用いて絶縁膜の面方向での線膨張係数αを求めた。
【0219】
Δσ=(σ400℃−σ200℃)×(400−200) (C)
σ=Δσ/ΔT=(ESi(α−αSi))/(1−ν) (D)
【0220】
上記式中、σは応力、Δσは温度変化に対する内部応力変化、σ400℃は400℃熱処理後の内部応力、σ200℃は200℃熱処理後の内部応力、Dはシリコンウエハの厚み、ESiはシリコンウエハの弾性率、νはポアッソン比、Rは曲率半径、aは長さ、Xは反り量、αSiはシリコンウエハの線膨張係数、αは絶縁膜の線膨張係数を示す。また、図4に、絶縁膜の面方向での線膨張係数を求めるための方法を示した。
【0221】
[4.3]積層ウエハの歩留り
直径300mmのシリコン基板を用意し、当該シリコン基板上にCVD法により30nm厚のSiCN膜を形成し、次に、上記[3]で述べた方法に従って各実施例および各比較例についてそれぞれ得られた膜形成用組成物を用い、150nmの絶縁膜を形成した。この絶縁膜上に、CVD法により30nm厚のSiO膜を形成した。次にバリアメタルとして、PVD法によりTaN膜およびTa膜を併せて20nm厚で形成した。更に銅シード膜をPVD法により堆積させた後、電解めっき法により、銅を成膜した。銅の厚みが100nmになるまでCMPにより除去・平坦化を行った。CMP完了後、CVD法により30nm厚のSiCN膜を成膜し、積層ウエハの1層目とした。さらに上記[3]で述べた方法に従って150nmの絶縁膜の形成からCVD法による30nm厚のSiCN膜の成膜までの工程を5回繰り返して、歩留り評価用の積層ウエハを作製した。積層ウエハの歩留りの評価については、シリコン基板の中心座標を(0,0)、ノッチ部分を(0,−150)とし、座標(0,0)から3cm×3cm角の正方形を仮想1チップ領域として(外周部分の欠けた正方形も1チップとして)、それぞれのチップについて積層後の剥がれの有無を確認した。(剥がれありチップ数)/(剥がれなしチップ数)の値を積層ウエハの歩留りとして、評価した。当該値が大きいほど、積層ウエハの歩留りが低いといえる。
【0222】
[4.4]テープテスト
上記[3]で作製した各実施例および各比較例にかかる膜付き基板(シリコンウエハ/有機絶縁膜の積層体)について、JIS K 5600−5−6 付着性(クロスカット法)に従い、テープテストにより密着性を評価した。すなわち、カッターナイフで、絶縁膜に1mm角の正方形の升目を100個作り、その上にセロテープ(登録商標)を張った。1分後、基板を抑えてセロテープを剥がし、基板から樹脂膜がいくつ剥がれるかを数えた。絶縁膜の膜厚は100nmとした。
【0223】
これらの結果を、表2に示した。なお、表2には、各絶縁膜について、温度可変X線反射率法により求められた、厚さ方向での線膨張係数もあわせて示した。
【0224】
【表2】

【0225】
表2から明らかなように、面方向での線膨張係数が9×10−6−1以上25×10−6−1以下である本発明の絶縁膜では、密着性に優れ、信頼性が高く、製造時の歩留まりに優れた結果が得られたのに対し、比較例では、満足な結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0226】
1 半導体基板
2 バリア膜
3 層間絶縁膜
4 キャップ層
5 バリアメタル
6 配線層
7 レジスト膜
10 積層体
100 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造と、重合反応に寄与する重合性反応基とを有する重合性化合物および/または当該重合性化合物が部分的に重合した重合体を含む組成物を用いて形成された絶縁膜であって、
面方向での線膨張係数が9×10−6−1以上25×10−6−1以下であることを特徴とする絶縁膜。
【請求項2】
前記重合性化合物の前記重合性反応基は、芳香環と、当該芳香環に直接結合するエチニル基またはビニル基とを有するものであり、
前記重合性化合物において、前記芳香環由来の炭素の数は、当該重合性化合物全体の炭素の数に対して、15%以上、38%以下である請求項1に記載の絶縁膜。
【請求項3】
前記芳香環は、前記かご型構造に直接結合したものである請求項2に記載の絶縁膜。
【請求項4】
前記重合性反応基は、2つのエチニル基またはビニル基を有し、一方の前記エチニル基または前記ビニル基は、他方の前記エチニル基または前記ビニル基のメタ位に存在するものである請求項2または3に記載の絶縁膜。
【請求項5】
2つの前記エチニル基または前記ビニル基は、いずれも、前記芳香環が前記かご型構造に結合する部位のメタ位に存在するものである請求項4に記載の絶縁膜。
【請求項6】
前記部分構造は、アダマンタン構造を有するものである請求項1ないし5のいずれかに記載の絶縁膜。
【請求項7】
前記アダマンタン構造は、置換基としてメチル基を有するものである請求項6に記載の絶縁膜。
【請求項8】
前記重合性化合物は、下記式(1)で示される構造または下記式(5)で示される構造を有するものである請求項7に記載の絶縁膜。
【化1】

[式中、nは1〜5の整数を表す。]
【化2】

[式中、nは1〜5の整数を表す。]
【請求項9】
前記部分構造は、ジアマンタン構造を有するものである請求項1ないし5のいずれかに記載の絶縁膜。
【請求項10】
前記重合性化合物は、前記重合性反応基を2つ有し、前記部分構造を中心に、当該重合性反応基が対称的に結合した構造をなしているものである請求項1ないし9のいずれかに記載の絶縁膜。
【請求項11】
膜形成に際して熱分解することにより膜中に空孔を形成する機能を有する空孔形成材を含まない前記組成物を用いて形成されたものである請求項1ないし10のいずれかに記載の絶縁膜。
【請求項12】
重量平均分子量が90000以上110000以下の前記重合体を含む組成物を用いて形成されたものである請求項1ないし11のいずれかに記載の絶縁膜。
【請求項13】
誘電率が1.80以上2.30以下である請求項1ないし12のいずれかに記載の絶縁膜。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載の絶縁膜と、当該絶縁膜に接触して設けられたSiO、SiN、SiC、SiCNおよびSiOCよりなる群から選択される少なくとも1種の材料で構成されたキャップ層とを備えたことを特徴とする積層体。
【請求項15】
請求項1ないし13のいずれかに記載の絶縁膜と、当該絶縁膜に接触して設けられたSiO、SiN、SiC、SiCNおよびSiOCよりなる群から選択される少なくとも1種の材料で構成されたキャップ層とを備えたことを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−77176(P2012−77176A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222986(P2010−222986)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】