説明

絶縁膜形成用組成物及び絶縁膜

【課題】
塗布法により形成可能な絶縁膜形成用組成物を提供する。
【解決手段】
エポキシ基を有する樹脂とヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選択される前記エポキシ基と反応する官能基を有する少なくとも一種の化合物との反応生成物であるポリマー又はオリゴマー、及び溶剤を含む絶縁膜形成用組成物。前記絶縁膜形成用組成物を基材上に塗布し、ベークすることによって、絶縁膜が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池、薄膜トランジスタ等に用いられる絶縁膜を比較的低温で形成するための組成物に関する。また、当該組成物を用いて形成された絶縁膜に関する。
【背景技術】
【0002】
pn接合型、色素増感型などの各種太陽電池が研究され、実用化されている。pn接合型太陽電池の代表例であるシリコン型太陽電池は、アモルファス、微結晶、多結晶及び単結晶から選択された少なくとも1種の結晶構造を有するシリコン層が裏面電極と受光面電極(透明電極)との間に挟まれ、且つそれらが封止材で被覆されている。さらに、当該封止材を介して、受光面電極上方にカバー材、及び裏面電極下方にバックシートが設けられる。その封止材として、エチレン−酢酸ビニル共重合体を用いることが知られている(例えば特許文献1参照)。上記裏面電極は例えば銀ペーストを用いて形成され、上記受光面電極は例えばITO(酸化インジウム錫)材料を用いて形成される。
【0003】
また、ケイ素に代表される無機半導体材料の代わりに、ペンタセン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリフェニレンビニレン等の有機材料を用いた薄膜トランジスタが盛んに研究されている。有機溶媒に可溶な有機材料は、その溶液から容易に半導体膜を形成できるという利点があり、そのためプラスチック基板等の可撓性基板上に薄膜トランジスタを形成することが可能になる。薄膜トランジスタは、半導体膜とゲート電極との間にゲート絶縁膜が設けられた素子である。そのゲート絶縁膜として、ポリイミド樹脂を用いることが知られている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
上記ポリイミド樹脂とは異なる、エポキシ樹脂類と硬化剤類とからなるエポキシ樹脂組成物が特許文献3に開示されている。そのエポキシ樹脂組成物の硬化物は低誘電率であることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−177412号公報
【特許文献2】特開2006−352083号公報
【特許文献3】特開平8−165328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
太陽電池の受光面電極及び裏面電極は、外気中の湿気から保護されると共に、電気的に絶縁されている必要がある。しかしながら、従来のエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いた封止材だけでは絶縁性が十分とはいえない場合がある。したがって、さらに受光面電極及び裏面電極を被覆するための適当な絶縁膜が求められている。
【0007】
薄膜トランジスタのゲート絶縁膜は、リーク電流を抑制するために高い絶縁性が要求される。また、耐熱性の低い基板上に有機材料を用いて薄膜トランジスタを形成する場合は、比較的低温(200℃以下)で、比誘電率が約4であるSiO膜と同等又はそれ以上の比誘電率を有するゲート絶縁膜を形成できることが望ましい。しかしながら、従来のポリイミド樹脂は、ゲート絶縁膜として必ずしも十分な比誘電率を有するとはいえない。
【0008】
特許文献3に記載のエポキシ樹脂組成物は、実施例1によると、150℃で2時間加熱を行い、更に180℃で3時間硬化を行うことで硬化物を得ている。200℃を超えない温度で組成物を硬化させるのに必要な時間を、特許文献3に記載の時間よりもさらに短縮することは、工業的に重要である。
したがって、本発明の課題は、上述のような状況を解決するための絶縁膜形成用組成物、及びそれを用いて得られる絶縁膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エポキシ基を有する樹脂とヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選択される前記エポキシ基と反応する官能基を有する少なくとも一種の化合物との反応生成物であるポリマー又はオリゴマー、及び溶剤を含む絶縁膜形成用組成物である。本明細書で“樹脂”とは、ポリマーだけでなく、オリゴマーも含むものであると定義する。
【0010】
また本発明は、上記絶縁膜形成用組成物を基材上に塗布し、ベークして形成された絶縁膜である。前記基材として、例えば、ガラス基板等の透明基板、シリコン基板等の半導体基板、プラスチック製の可撓性基板(フィルム)、太陽電池用バックシートが挙げられる。
【0011】
さらに本発明は、上記絶縁膜を備えた電子部品、上記絶縁膜を裏面電極及び/又は受光面電極の保護膜として備えた太陽電池、又は上記絶縁膜をゲート絶縁膜として備えた薄膜トランジスタである。ここで、電子部品とは、携帯電話機、電子ペーパー、液晶表示装置、有機EL表示装置等の各種電子機器に使用される部品をいい、当該部品は太陽電池及び薄膜トランジスタに限定されない。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る絶縁膜形成用組成物を用いることによって、スピンコート法、スプレー法、ディップ法など種々の塗布法により簡易に絶縁膜を形成することができると共に、例えば120℃乃至200℃の比較的低温で、2時間を越えないベーク時間で膜形成が可能である。また、本発明に係る絶縁膜形成用組成物を用いることによって、太陽電池の裏面電極及び受光面電極を保護する絶縁膜を形成することができる。さらに本発明に係る絶縁膜形成用組成物を用いることによって、比誘電率が3.5を超える、好ましくは4.0以上のゲート絶縁膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る絶縁膜形成用組成物に含まれるポリマー又はオリゴマーは、エポキシ基を有する樹脂と、前記エポキシ基と反応する官能基を有する少なくとも一種の化合物との反応生成物である。
【0014】
エポキシ基を有する樹脂として、例えばノボラック型エポキシ樹脂が挙げられるが、それに限定されない。
例えば、下記式(A)乃至式(D)で表される構造単位を有するポリマー、
【化1】


下記式(E)で表される化合物(式中、nは正の整数を表す。)、
【化2】


及び、下記式(F)で表される2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(式中、n,n及びnはそれぞれ独立に0乃至15の整数を表す。)が挙げられる。
【化3】

【0015】
エポキシ基と反応する官能基を有する少なくとも一種の化合物は、例えば、
式:A−(X)
(式中、Aは芳香族炭化水素を表し、Xはヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基又はカルボキシル基を表し、nは1乃至3の整数を表し、nが2又は3を表す場合、Xは同一の基でも異なる基でもよい。)
で表される。このような化合物を、以下に式(a)乃至式(e)として例示する。
【化4】

【0016】
本発明に係る絶縁膜形成用組成物に含まれる溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、アセチルアセトン、トルエン、及びN,N−ジメチルホルムアミドのような有機溶媒が挙げられる。前記溶剤は、二種以上の有機溶媒の組み合わせでもよい。本発明に係る絶縁膜形成用組成物から溶剤を除いた成分を固形分とみなすと、当該組成物に対する固形分の割合は例えば3〜40質量%、好ましくは7〜30質量%である。
【0017】
本発明に係る絶縁膜形成用組成物に含まれるポリマー又はオリゴマーは、架橋部位を有してもよい。その架橋部位として、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基及びアルキニル基が挙げられる。前記ポリマー又はオリゴマーは、例えばノボラック樹脂である。
【0018】
本発明に係る絶縁膜形成用組成物は、さらに架橋剤を含有することができる。その架橋剤は、前記ポリマー又はオリゴマーの安定性(特に耐熱性、耐光性)が不十分である場合に、架橋により、その安定性を向上させることができる。架橋剤として、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(ブトキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(メトキシメチル)尿素、及びブロックイソシアネート(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート,ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート,トリレンジイソシアネート,ヘキサメチレンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネート,テトラメチルキシリレンジイソシアネート等をメタノール,エタノール,プロパノール,イソプロピルアルコール,ブタノール,2−エチルヘキサノール,シクロヘキサノール等のアルコール類、フェノール類、マロン酸ジメチル,アセト酢酸エチル等の活性メチレン類、メチルエチルケトンオキシム,アセトンオキシム,シクロヘキサノンオキシム,アセトフェノンオキシム,ベンゾフェノンオキシム等のオキシム類、ε−カプロラクタム,γ−カプロラクタム,β−プロピオラクタム等のラクタム類により保護した化合物)が挙げられる。上記架橋剤の割合は、本発明に係る絶縁膜形成用組成物に含まれる固形分に対して好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜30質量%である。なお、0質量%とは、その添加剤を含まないことを意味する。
【0019】
本発明に係る絶縁膜形成用組成物は、さらに酸触媒または塩基触媒を含有することができる。その酸触媒または塩基触媒は、ベーク時の架橋反応を促進する目的で添加される。酸触媒として、例えば、p−フェノールスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウム−p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、5−スルホサリチル酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、ピリジニウム−1−ナフタレンスルホン酸、サリチル酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、及びカリックスアレーンスルホン酸が挙げられる。塩基触媒として、例えば、ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、ジエチルアミン、及びトリエチルアミンが挙げられる。本明細書において、“酸触媒”は熱酸発生剤及び光酸発生剤を含み、“塩基触媒”は熱塩基発生剤及び光塩基発生剤を含むものとする。上記酸触媒または塩基触媒の割合は、本発明に係る絶縁膜形成用組成物に含まれる固形分に対して好ましくは0〜15質量%、より好ましくは0〜5質量%である。
【0020】
本発明に係る絶縁膜形成用組成物は、さらに表面調整剤を含有することができる。その表面調整剤は塗布性、レベリング性、フロー性の調整を目的として添加される。表面調整剤として、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン溶液である表面調整剤(商品名:BYK−307、ビックケミー・ジャパン株式会社)、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン溶液である表面調整剤(商品名:BYK−310、ビックケミー・ジャパン株式会社)、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン溶液である表面調整剤(商品名:BYK−322、ビックケミー・ジャパン株式会社)、ポリエステル変性ヒドロキシ基含有ポリジメチルシロキサン溶液である表面調整剤(商品名:BYK−370、ビックケミー・ジャパン株式会社)、パーフルオロアルキル基を含有する表面調整剤(商品名:R−30、DIC株式会社)が挙げられる。上記表面調整剤の割合は、本発明に係る絶縁膜形成用組成物に含まれる固形分に対して好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0.2〜2質量%である。
【0021】
本発明に係る絶縁膜形成組成物は、さらに酸化防止剤及び/又はラジカル捕捉剤(radical scavenger)を含有することができる。酸化防止剤、ラジカル捕捉剤とも、公知の化合物を適用でき、前記ポリマー又はオリゴマーの安定性(特に耐熱性、耐光性)が不十分である場合に、その安定性を向上させることができる。酸化防止剤及び/又はラジカル捕捉剤は、架橋剤と併用しても併用しなくてもよい。上記酸化防止剤またはラジカル捕捉剤の割合は、本発明に係る絶縁膜形成用組成物に含まれる固形分に対して好ましくは0〜15質量%、より好ましくは1〜5質量%である。
【0022】
本発明に係る絶縁膜形成用組成物から形成された絶縁膜が太陽電池に適用される場合、裏面電極及び受光面電極を備えた太陽電池であれば、特定の種類に限定されず、例えば、アモルファスシリコン,多結晶シリコン等を用いたシリコン系太陽電池、GaAs,CIS,CIGS等を用いた化合物半導体系太陽電池太陽電池、有機薄膜太陽電池、及び量子ドット型太陽電池に適用可能である。そして、当該絶縁膜は、裏面電極及び/又は受光面電極を電気的に絶縁するための保護膜として用いられ、具体的には裏面電極及び/又は受光面電極と封止材との間に設けられる。
【0023】
本発明に係る絶縁膜形成用組成物から形成された絶縁膜が薄膜トランジスタに適用される場合、200℃を超えない比較的低温で膜形成可能であるため、特に有機半導体材料を用いた薄膜トランジスタのゲート絶縁膜に好適である。
【0024】
以下、本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は下記合成例及び実施例の記載に限定されるものではない。
【実施例】
【0025】
本明細書に示すポリマーの平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略称する)による測定結果である。使用する装置、条件等は次のとおりである。
GPC装置:HLC−8220GPC(東ソー(株)製)
GPCカラム:Shodex〔登録商標〕KF803L,KF802,KF801(昭和電工(株)製)
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:1.0ml/分
標準試料:ポリスチレン(昭和電工(株)製)
【0026】
本明細書に示すリーク電流、絶縁破壊電圧、誘電率は、水銀プローブ(CVmap3093A(4Dimensions社製))による測定結果である。
【0027】
(合成例1)
窒素置換した反応容器中に、下記式(1):
【化5】


で表される構造単位を有するポリマー(商品名:ECN1299、旭化成エポキシ(株)製)を15.00g、下記式(2):
【化6】


で表される化合物(東京化成工業(株)製)を7.58g、下記式(3):
【化7】


で表される化合物(東京化成工業(株)製)を4.71g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(東京化成工業(株)製)を0.40g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル111gを加え、還流下攪拌した。24時間攪拌後、反応溶液を室温に冷却し、ジエチルエーテル600g中に滴下し、再沈殿させた。得られたポリマーの重量平均分子量5500、数平均分子量3200であった。
【0028】
得られたポリマーは、上記式(1)で表される構造単位を有するポリマーに上記式(2)及び式(3)で表される化合物をグラフトさせた反応生成物である。本合成例では、下記式(A)で表される構造単位を少なくとも有する重合体が得られると推定される。式(1)のエポキシ基と式(2)又は式(3)のカルボキシル基が主に反応するが、式(1)のエポキシ基と式(3)のヒドロキシ基が反応することによって、下記式(A)で表されていない構造単位をさらに有する可能性がある。
【化8】

【0029】
(合成例2)
窒素置換した反応容器中に、前記合成例1で用いた式(1)で表される構造単位を有するポリマー(商品名:ECN1299、旭化成エポキシ(株)製)を15.00g、下記式(4):
【化9】


で表される化合物(東京化成工業(株)製)を10.68g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(東京化成工業(株)製)を0.40g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル104gを加え、還流下攪拌した。24時間攪拌後、反応溶液を室温に冷却し、ジエチルエーテル600g中に滴下し、再沈殿させた。得られたポリマーの重量平均分子量7800、数平均分子量2000であった。
【0030】
得られたポリマーは、上記式(1)で表される構造単位を有するポリマーに上記式(4)で表される化合物をグラフトさせた反応生成物である。本合成例で、式(1)のエポキシ基と式(4)のフェノール性ヒドロキシ基が反応して得られる重合体を下記式(B)に示す。式中のヒドロキシメチル基とヒドロキシ基(式(1)のエポキシ基が開環して生成)がさらに架橋することにより、下記式(B)で表されていない構造単位をさらに有する可能性がある。
【化10】

【0031】
(合成例3)
窒素置換した反応容器中に、前記合成例1で用いた式(1)で表される構造単位を有するポリマー(商品名:ECN1299、旭化成エポキシ(株)製)を15.00g、下記式(5):
【化11】


で表される化合物(東京化成工業(株)製)を13.44g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(東京化成工業(株)製)を0.40g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル115gを加え、還流下攪拌した。24時間攪拌後、反応溶液を室温に冷却し、ジエチルエーテル600g中に滴下し、再沈殿させた。得られたポリマーの重量平均分子量9500、数平均分子量4500であった。
【0032】
得られたポリマーは、上記式(1)で表される構造単位を有するポリマーに上記式(5)で表される化合物をグラフトさせた反応生成物である。本合成例では、下記式(C)で表される構造単位を少なくとも有する重合体が得られると推定される。式(1)のエポキシ基と式(5)のカルボキシル基が主に反応するが、式(1)のエポキシ基と式(5)のヒドロキシ基が反応することによって、下記式(C)で表されていない構造単位をさらに有する可能性がある。
【化12】

【0033】
(合成例4)
窒素置換した反応容器中に、前記合成例1で用いた式(1)で表される構造単位を有するポリマー(商品名:ECN1299、旭化成エポキシ(株)製)を15.00g、下記式(6):
【化13】


で表される化合物(東京化成工業(株)製)を11.81g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(東京化成工業(株)製)を0.40g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル109gを加え、還流下攪拌した。24時間攪拌後、反応溶液を室温に冷却し、ジエチルエーテル600g中に滴下し、再沈殿させた。得られたポリマーの重量平均分子量10200、数平均分子量4300であった。
【0034】
得られたポリマーは、上記式(1)で表される構造単位を有するポリマーに上記式(6)で表される化合物をグラフトさせた反応生成物である。本合成例では、下記式(D)で表される構造単位を少なくとも有する重合体が得られると推定される。式(1)のエポキシ基と式(6)のカルボキシル基が主に反応するが、式(1)のエポキシ基と式(6)のヒドロキシ基が反応することによって、下記式(D)で表されていない構造単位をさらに有する可能性がある。
【化14】

【0035】
<実施例1>
合成例1で得たポリマー50.00gに対し、ブロックイソシアネート架橋剤(商品名:タケネート〔登録商標〕B−882N、三井化学(株)製)5.00g、ポリエステル変性ヒドロキシ基含有ポリジメチルシロキサン溶液である表面調整剤(商品名:BYK−370、ビックケミー・ジャパン株式会社)0.10g、プロピレングリコールモノメチルエーテル222g及びシクロヘキサノン412gを加えた。この溶液をスピナーにより、シリコンウェハ上に塗布した。ホットプレート上、180℃で60分間ベークし、絶縁膜を形成した。膜の荒れは観察されなかった。この膜の架橋度合を確認するため、プロピレングリコールモノメチルエーテルに1分間浸漬し、不溶であることを確認した。そのため、この絶縁膜は塗布による膜形成、短時間硬化が可能である。この組成物の電気特性を測定するために、この溶液をスピナーにより、シリコンウェハ上に塗布した。ホットプレート上、180℃で60分間ベークし、膜厚200nmの絶縁膜を形成した。この膜の電気特性を測定したところ、1MV/cmの電界を加えたときの電流密度は7×10−11A/cm、絶縁破壊電圧は2.3MV/cm以上、比誘電率は3.7であった。
【0036】
<実施例2>
合成例2で得たポリマー50.00gに対し、表面調整剤(商品名:BYK−370、ビックケミー・ジャパン株式会社)0.10g、プロピレングリコールモノメチルエーテル547g及びシクロヘキサノン29gを加えた。この溶液をスピナーにより、シリコンウェハ上に塗布した。ホットプレート上、180℃で60分間ベークし、絶縁膜を形成した。膜の荒れは観察されなかった。この膜の架橋度合を確認するため、プロピレングリコールモノメチルエーテルに1分間浸漬し、不溶であることを確認した。そのため、この絶縁膜は塗布による膜形成、短時間硬化が可能である。この組成物の電気特性を測定するために、この溶液をスピナーにより、シリコンウェハ上に塗布した。ホットプレート上、180℃で60分間ベークし、膜厚200nmの絶縁膜を形成した。この膜の電気特性を測定したところ、1MV/cmの電界を加えたときの電流密度は4×10−9A/cm、絶縁破壊電圧は5.5MV/cm以上、比誘電率は4.4であった。
【0037】
<実施例3>
合成例3で得たポリマー50.00gに対し、CYMEL〔登録商標〕303(ヘキサメトキシメチルメラミン)10.00g、表面調整剤(商品名:BYK−370、ビックケミー・ジャパン株式会社)0.10g、プロピレングリコールモノメチルエーテル559g及びシクロヘキサノン240gを加えた。この溶液をスピナーにより、シリコンウェハ上に塗布した。ホットプレート上、180℃で60分間ベークし、絶縁膜を形成した。膜の荒れは観察されなかった。この膜の架橋度合を確認するため、プロピレングリコールモノメチルエーテルに1分間浸漬し、不溶であることを確認した。そのため、この絶縁膜は塗布による膜形成、短時間硬化が可能である。この組成物の電気特性を測定するために、この溶液をスピナーにより、シリコンウェハ上に塗布した。ホットプレート上、180℃で60分間ベークし、膜厚200nmの絶縁膜を形成した。この膜の電気特性を測定したところ、1MV/cmの電界を加えたときの電流密度は1×10−9A/cm、絶縁破壊電圧は3.4MV/cm以上、比誘電率は4.3であった。
【0038】
<実施例4>
合成例4で得たポリマー50.00gに対し、CYMEL〔登録商標〕303(ヘキサメトキシメチルメラミン)10.00g、表面調整剤(商品名:BYK−370、ビックケミー・ジャパン株式会社)0.10g、プロピレングリコールモノメチルエーテル559g及びシクロヘキサノン240gを加えた。この溶液をスピナーにより、シリコンウェハ上に塗布した。ホットプレート上、180℃で60分間ベークし、絶縁膜を形成した。膜の荒れは観察されなかった。この膜の架橋度合を確認するため、プロピレングリコールモノメチルエーテルに1分間浸漬し、不溶であることを確認した。そのため、この絶縁膜は塗布による膜形成、短時間硬化が可能である。この組成物の電気特性を測定するために、この溶液をスピナーにより、シリコンウェハ上に塗布した。ホットプレート上、180℃で60分間ベークし、膜厚200nmの絶縁膜を形成した。この膜の電気特性を測定したところ、1MV/cmの電界を加えたときの電流密度は3×10−10A/cm、絶縁破壊電圧は3.8MV/cm以上、比誘電率は4.2であった。
【0039】
<比較例1>
合成例1で用いた式(1)で表される構造単位を有するポリマー50.00gに対し、ノルボルネンジカルボン酸(東京化成工業(株)製)37.14g、表面調整剤(商品名:BYK−370、ビックケミー・ジャパン株式会社)0.10g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル1000gを加えた。得られた溶液をスピナーにより、シリコンウェハ上に塗布した。ホットプレート上、180℃で60分間ベークし、絶縁膜を形成した。膜の荒れは観察されなかった。この膜の架橋度合を確認するため、プロピレングリコールモノメチルエーテルに1分間浸漬したところ、膜の溶解が観察された。そのため、本比較例で得られた溶液は、絶縁膜形成用組成物としては不適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基を有する樹脂とヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選択される前記エポキシ基と反応する官能基を有する少なくとも一種の化合物との反応生成物であるポリマー又はオリゴマー、及び溶剤を含む絶縁膜形成用組成物。
【請求項2】
前記エポキシ基と反応する官能基を有する少なくとも一種の化合物は、
式:A−(X)
(式中、Aは芳香族炭化水素を表し、Xはヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基又はカルボキシル基を表し、nは1乃至3の整数を表し、nが2又は3を表す場合Xは同一の基でも異なる基でもよい。)
で表される請求項1に記載の絶縁膜形成用組成物。
【請求項3】
前記エポキシ基と反応する官能基を有する少なくとも一種の化合物は下記式(a)乃至式(e)で表される、請求項2に記載の絶縁膜形成用組成物。
【化1】

【請求項4】
前記ポリマー又はオリゴマーは架橋部位を有する請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の絶縁膜形成用組成物。
【請求項5】
前記ポリマー又はオリゴマーはノボラック樹脂である請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の絶縁膜形成用組成物。
【請求項6】
さらに架橋剤を含有する請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の絶縁膜形成用組成物。
【請求項7】
さらに酸触媒または塩基触媒を含有する請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の絶縁膜形成用組成物。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の絶縁膜形成用組成物を基材上に塗布し、ベークして形成された絶縁膜。
【請求項9】
請求項8に記載の絶縁膜を備えた電子部品。
【請求項10】
請求項8に記載の絶縁膜を裏面電極及び/又は受光面電極の保護膜として備えた太陽電池。
【請求項11】
請求項8に記載の絶縁膜をゲート絶縁膜として備えた薄膜トランジスタ。


【公開番号】特開2013−60477(P2013−60477A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15769(P2010−15769)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】