説明

絶縁被膜付き電磁鋼板およびその製造方法ならびに積層鉄心

【課題】表面に接着性樹脂を含有する絶縁被膜を有する電磁鋼板であって、積層し加熱加圧した場合に、絶縁被膜同士が十分に接着可能な電磁鋼板を提供する。
【解決手段】絶縁被膜の片面当たりの付着量が1.0〜3.0g/mであり、かつ該絶縁被膜の表面に、厚みが5μm以上、直径が10〜30μmで加熱および/または加圧により接着可能な絶縁性の凸部を、単位面積1mm当たり200〜1500個そなえるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転器や変圧器等に用いる加熱接着型の絶縁被膜付き電磁鋼板およびその製造方法、ならびにその電磁鋼板を用いた積層鉄心に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転器、変圧器等の電気機器に使用する鉄心は、渦電流を減少させるための絶縁被膜を電磁鋼板に被覆し、ついで打ち抜きまたはせん断加工を施して、複数枚の鋼板を積み重ねたのち、溶接、カシメまたは接着剤により固着して製造していた。しかしながら、溶接により電磁鋼板を固着する方法には、鉄心のエッジ部が短絡して絶縁性が低下するという問題や、熱歪みの発生によって鉄心の磁気特性が劣化するという問題があった。また、カシメにより電磁鋼板を固着する方法には、加工歪みの発生によって磁気特性が劣化すると同時に、電磁鋼板の厚みが薄くなった場合、十分なカシメ強度が得られないという問題があった。さらに、接着剤により電磁鋼板を固着する方法には、上述したような磁気特性の劣化の問題はあまりないものの、電磁鋼板の1枚1枚に接着剤を塗布する必要があるため作業性が極めて悪く、また、必ずしも絶縁被膜間での接着力が十分とはならないという問題があった。
【0003】
これに対し、特許文献1には、ガラス転移温度:60℃以上の熱可塑性アクリル樹脂エマルジョンや、エポキシ樹脂ヱマルジョンを主成分とする組成物を塗布し、乾燥して得られた鋼板を、積層し、加熱加圧することで積層鉄心を製造する方法が開示されている。この方法は、接着剤を塗布する工程を省略したものであり、加工歪みの影響を受けにくいだけでなく、コイル状に巻いても鋼板の被膜同士が接着して剥がれなくなる、いわゆるブロッキングの発生が抑制できるという利点を有する。
【0004】
しかしながら、上記方法で製造された電磁鋼板(以下、「従来の加熱接着型電磁鋼板」という)を、加熱加圧して得られた積層鉄心は、接着面積が小さな部分が発生する場合があり、その場合、層間はく離(接着面でのはく離)が生じるという問題があった。
特に、上掲した特許文献1に記載の方法では、鋼板板厚が薄い場合や絶縁被膜の厚みが薄い場合などに、絶縁被膜や鋼板の凹凸の影響を受けやすくなるという問題が顕在化していた。
【0005】
この点、特許文献2には、粒径:0.01〜0.5μmの微粒子重合体を絶縁被膜に分散させることで、絶縁被膜の膜厚を1.5μm程度に薄くしても、十分な接着強度が得られるという技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−208034号公報
【特許文献2】特許第4143090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上掲した特許文献2に開示の技術でも、板厚が薄い場合や表面粗度が大きい場合には、接着していない面積が大きくなりやすく、接着強度が十分とは言えなかった。
上記したメカニズムを、さらに図を用いて説明する。図1に、従来の加熱接着型電磁鋼板を積層して得られる積層鉄心の、接着部分における断面模式図を示す。同図に示したように、実際の板形状は平坦でなく凹凸を有している(図1(a))。従って、絶縁被膜の膜厚が薄くなるに従い、図1(b)、(c)に示したように、加熱融着する部分が限られて、未接着部分が多く残ることになる。その結果、鋼板同士の接着強度は大きく低下することになる。
【0008】
本発明は、上記した現状に鑑み開発されたもので、表面に接着性樹脂を含有する絶縁被膜を有する電磁鋼板であって、それらを積層して加熱加圧した場合に、絶縁被膜同士が十分な接着強度を有する電磁鋼板を提供することを目的とする。特に、鋼板の板厚が0.35mm以下と薄く、接着層の平均付着量が3.0g/m以下と極めて薄い膜厚の絶縁被膜であっても、十分な接着強度を有する絶縁被膜付き電磁鋼板をその有利な製造方法と共に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、上記した課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、絶縁被膜に、所定の大きさの凸部を、所定の個数密度で形成することにより、所期した目的が有利に達成されるとの知見を得た。すなわち、鉄心作製のために鋼板を加熱加圧した場合、上記の凸部が優先的に鋼板表面で融着すると共に押し潰されて拡がるため、未接着部の面積が大幅に減少し、鋼板同士の接着強度が向上することを見出した。
【0010】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.加熱および/または加圧により接着可能な絶縁被膜を有する電磁鋼板であって、該絶縁被膜の片面当たりの付着量が1.0〜3.0g/mであり、かつ該絶縁被膜の表面に、厚みが5μm以上、直径が10〜30μmで加熱および/または加圧により接着可能な絶縁性の凸部を、単位面積1mm当たり200〜1500個そなえることを特徴とする絶縁被膜付き電磁鋼板。
【0011】
2.電磁鋼板の表面に、加熱および/または加圧により接着可能な絶縁ベース被膜を形成し、ついで該絶縁ベース被膜の上に、厚みが5μm以上、直径が10 〜30μmであって、加熱および/または加圧により接着可能な絶縁性の凸部を、単位面積1mm当たり200〜1500個形成することを特徴とする絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法。
【0012】
3.前記凸部を、インクジェット、ディスペンサまたは静電塗装により形成することを特徴とする前記2に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法。
【0013】
4.前記1に記載の電磁鋼板を2枚以上積層して、加熱および/または加圧により接着させた、鉄心占積率が96.0%以上であることを特徴とする積層鉄心。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加熱および/または加圧により接着可能な絶縁被膜を有する電磁鋼板を、積層して加熱加圧した場合に、絶縁被膜同士が十分な接着強度を有する電磁鋼板を提供することができる。特に、本発明に従う電磁鋼板は、鋼板の板厚が薄く、また接着層の平均付着量が3.0g/m以下と極めて薄くても、十分な接着強度を発揮するため、組み上がった鉄心の占積率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の積層鉄心の接着部分における断面模式図である。
【図2】本発明に従う積層鉄心の接着部分における断面模式図である。
【図3】インクジェットによる凸部を形成する要領を示す図である。
【図4】本発明に従う凸部付き絶縁被膜を鋼板の表面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明の絶縁被膜付き電磁鋼板について説明する。
本発明の絶縁被膜付き電磁鋼板は、電磁鋼板の少なくとも一方の表面に絶縁被膜を有する絶縁被膜付き電磁鋼板であって、その絶縁被膜は加熱および/または加圧により接着する性能を有している。
特に、本発明の絶縁被膜上には、図2に示すように、加熱および/または加圧により変形して接着する成分を含み、所定の大きさを有する凸部を所定の個数密度でそなえることを特徴とする。
【0017】
本発明に用いられる電磁鋼板としては、特段の限定はなく、公知のもの、すなわち、無方向性、1方向性、2方向性などいずれの電磁鋼板であっても用いることができる。また、電磁鋼板の鋼板組成は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。さらに、電磁鋼板の板厚は、特に限定されないが、一般的な鋼板の厚みである0.05〜1.0mm程度とするのが好ましい。特に、本発明は、板厚が0.35mm以下の鋼板に適用して有利なものである。
加えて、鋼板の粗度も特に限定はされないが、算術平均粗さRa(JIS B 0601-2001)で、0.1〜1.0μm程度の範囲が好適である。また、厚みがO.35mm以下の薄鋼板では、鋼板表面の粗度が高くなる傾向にあるため、本発明の効果が特に大きくなり、鋼板同士の十分な接着強度を保ちながら、鉄心の占積率を高くすることができる。
【0018】
本発明における絶縁被膜の片面当たりの付着量は1.0〜3.0g/mとする必要がある。というのは、付着量を1.0〜3.0g/mの範囲とすることで、以下に説明する凸部の付着力の増大効果が所期したとおりに発現するからである。好ましくは、1.5〜2.5 g/mである。
【0019】
本発明に用いられる加熱および/または加圧により接着可能な絶縁ベース被膜は、特に限定されず、アクリル系、エポキシ系、フェノール系およびシリコーン系等の接着性樹脂のいずれもが好適に使用でき、これらを1種、または2種以上の接着性樹脂の混合物として用いることができる。なお、アミン系硬化剤、シリカ等の添加物を本発明の効果を損なわない範囲として、絶縁ベース被膜に対し、0.01〜40.0 質量%程度添加することができる。
ここに、上記した絶縁ベース被膜は、ガラス転移温度または軟化温度が60℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度または軟化温度が60℃以上であると、良好な接着強度が得られると共に、鋼板をコイル状に巻き取った場合においても、鋼板同士のブロッキングを抑制する効果がある。
【0020】
本発明では、絶縁被膜の表面に所定の大きさの凸部を所定の個数密度で形成することを特徴とする。本発明における凸部の所定の大きさは、厚みを5μm以上とし、直径を10〜30μmの範囲とする。また、本発明における凸部の所定の個数密度は、単位面積1mm当たり200〜1500個の範囲とする。
【0021】
凸部の厚み:5μm以上
本発明に従う絶縁被膜は、鋼板同士の接着性を高めるために、凸部を有しているが、その厚みは、5μm以上とする。というのは、実際の鋼板表面の凹凸が最大高さ粗さRz(JIS B 0601-2001)でおよそ5μm程度であり、それ以上とする必要があるからである。
一方、凸部の厚みの上限は特に制限はしないが、生産性などの観点から30μm程度とする。好ましくは、5.0〜10.0μmの範囲とする。
【0022】
凸部の直径:10〜30μm
本発明における凸部は、その直径を10〜30μmの範囲とする。というのは、10μmに満たないと、積層する相手側の凸部との接着面積が不十分となるからである。一方、30μmを超えると、占積率が低下するからである。好ましくは、15〜25μmの範囲である。
【0023】
凸部の個数密度:単位面積1mm当たり200〜1500個
本発明における凸部は、その個数密度にも限定があり、単位面積1mm当たり200〜1500個とする。
というのは、200個に満たないと、積層する相手側の凸部との接着面積が不十分となるからである。一方、1500個を超えると、占積率が低下するからである。好ましくは、400〜1200個の範囲とする。
【0024】
また、本発明に従う凸部の成分は、加熱および/または加圧により変形するものであれば、特段の限定はないが、前述した絶縁ベース被膜と同じく、アクリル系、エポキシ系、フェノール系およびシリコーン系等の接着性樹脂が好適に使用でき、これらのうちの1種を用いて、または2種以上を混合して形成する。なお、本発明では、絶縁ベース被膜の成分と凸部の成分は、同じであっても異なっていても問題はない。
【0025】
本発明における絶縁被膜および/または凸部は、その性能を一層向上させるために、防錆剤等の添加剤を含有させることができる。この場合は、絶縁被膜の固形分の100質量部に対して30質量部以下とするのが好ましい。
【0026】
次に、本発明に従う絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法について述べる。
本発明における電磁鋼板の製造方法は、絶縁ベース被膜の上に、厚みが5μm以上、直径が10〜30μmであって、絶縁ベース被膜と同じく加熱および/または加圧により接着可能な絶縁性の凸部を、単位面積1mm当たり200〜1500個形成する工程を有していることに特徴がある。
また、上記の凸部は、インクジェット、ディスペンサまたは静電塗装のいずれかの手段により形成することが有利である。というのは、目標とする形状(厚みと直径)と個数密度の凸部がより安定して得られるからである。また、エンボスロールを用いて、本発明に従う凸部を形成することもできる。
【0027】
本発明の絶縁被膜付き電磁鋼板は、上記した絶縁被膜の表面に凸部を形成する以外の工程は、特に限定せず、常法に従って製造することができる。
ここに、絶縁ベース被膜の形成方法は、エマルジョン、ディスパージョン等の水系の接着性樹脂をロールコーター法、フローコーター法、スプレー塗装、ナイフコーター法等、種々の方法で電磁鋼板に塗布する工程と、一般的に実施されるような熱風式、赤外式、誘導加熱式等の方法で焼付け処理を行う工程が例示される。
【0028】
図3(a)〜(c)に、本発明における凸部を形成するための実施形態を、インクジェットを例にとって示す。
すなわち、凸部が前記した所定の形状および個数密度となるように、
(1) 絶縁ベース被膜を塗布・焼付けた後に、表面にインクジェットで塗布し、第2の乾燥炉によって再度焼付ける(図3(a)参照)、
(2) 絶縁ベース被膜を塗布・焼付けた直後に、表面にインクジェットで塗布し、余熱によって焼付ける(図3(b)参照)、
(3) 絶縁ベース被膜を塗布後、焼付け炉に入る直前に、インクジェットで塗布し、絶縁ベース被膜と同時に焼付ける(図3(c)参照)、
などである。
【0029】
上記の実施形態中、凸部となるインクジェットの塗液の液滴(ドット)直径は、凸部が所定の大きさになれば特に限定されないが、好ましくは10〜30μmの粒子径とする。また、インクジェットにより塗布される塗液としては、絶縁ベース被膜となる塗液と同じ成分ものであっても、異なる成分ものであっても使用することができる。
【0030】
インクジェットによる塗液の塗布パターンとしては、前述した個数密度を満足していれば特に規定されないが、図4に示すような均等パターンが好ましい。その他、ランダムなものや、斜めに配列したものでも構わない。さらに、インクジェットの各ドットが重なっても問題はないが、その場合は、径半分までの重畳が好ましい。なお、重畳した場合でも、径半分までの重畳であれば、それぞれの円を1つとみなす。インクジェットによる塗装時、塗液中に分散体を含有させる場合、分散体の粒径は、ノズル詰まりを防ぐために、体積平均粒径を400nm以下とするのが好ましい。分散体の平均粒径が1μmを越える場合には、塗液がヘッドに詰まる問題が発生しやすいので、インクジェットよりもディスペンサ塗装の方が好ましい。
【0031】
本発明では、上記したインクジェットまたはディスペンサだけでなく、エンボスロールや静電塗装を用いて、絶縁被膜の表面に凸部を形成することができる。その形成条件はそれぞれの方式の常法に従えばよいが、特に、エンボスロールでは、凸部を形成する際に、凸部の厚みが小さくなる(レベリングする)前に硬化し固定することが好ましく、静電塗装においても、凸部を形成する際に、凸部の厚みが小さくなる(レベリングする)前に硬化し固定することが好ましい。
【0032】
本発明に従う電磁鋼板を、積層鉄心とするために積層し加熱加圧した場合、前記した凸部が鋼板表面で効果的に融着するため、絶縁被膜同士の間に隙間を生じることなく、十分に密接して接着することができる。そのため、接着不良による層間はく離を引き起こすおそれがない。
また、本発明に従う電磁鋼板は、鉄心の製造中、絶縁性が低下したり、熱歪みや加工歪みにより磁気特性が劣化するという問題を起こすことがなく、絶縁被膜の形成後にさらに接着剤を塗布する必要がないので、作業性が悪いという問題も発生しない。
【0033】
本発明に従う積層鉄心を製造するに際し、その加熱温度は、用いられる絶縁ベース被膜を組成する樹脂および凸部を組成する樹脂のガラス転移温度以上、または融点における流動性が発現する温度以上であれば特に限定されない。なお、加熱温度は、具体的には100〜500℃程度、より好ましくは150〜300℃程度の範囲である。
【0034】
本発明の積層鉄心の製造における加圧力は、4.90×105〜9.81×106Pa (5〜100kgf/cm2)であることが好ましい。9.81×105〜9.81×106Pa (10〜100kgf/cm2)であることがより好ましい。
また、上記加圧の加圧時間は、10〜10000秒の範囲であることが好ましい。
【0035】
上記した各製造条件以外の積層鉄心の製造条件は常法に従えばよいが、本発明の電磁鋼板を用いることで、本発明の積層鉄心の鉄心占積率を96.0%以上とすることができる。
【実施例1】
【0036】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
幅:150mm、長さ:300mmおよび板厚:0.20mmの電磁鋼板(電気鉄板)に、表1に示すような各種絶縁ベース被膜用樹脂(固形分40質量%)を塗装し、焼付けて冷却した後、インクジェットにより凸部を形成し、再度焼付けた。いずれの焼付け時も到達板温は260℃とし、焼付け後、放冷して、種々の絶縁被膜付き電磁鋼板を得た。
凸部の厚み、直径及び個数密度は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、絶縁被膜の断面と表面を観察する方法により求めた。具体的には、約500〜10000倍の任意の3視野についてSEM観察し、各視野の平均値を求め、それらの平均値をそれぞれ厚み、直径及び個数密度とした。また、絶縁ベース被膜の付着量はインクジェットを施す前の熱アルカリの被膜剥離による重量減少により、絶縁被膜(絶縁ベース被膜と凸部合計)の付着量は熱アルカリの被膜剥離による重量減少よりそれぞれ求めた。
【0037】
上記の絶縁被膜付き電磁鋼板について、以下の評価を行った。
(1)接着強度
2枚の絶縁被膜付き電磁鋼板(幅:20mm×長さ:70mm)を、先端から10mmまでの部分のみで絶縁被膜同士が接着するように、ずらして積層 (ラップ部分、幅:20mm×長さ:10mm) し、ホットプレスを用いて、温度:200℃で圧力:9.81×105Pa、時間:1分の各条件で加熱加圧して接着し、接着強度測定用の試験片を得た。この試験片を用い、引張速度:3mm/minの条件で室温(23 ℃)にて引張試験を行い、破断したときの最大応力を求めて接着強度を評価した。
【0038】
(2)鉄心占積率
上述した接着強度の評価方法と同様に鋼板を接着した後、JIS C 2550:2000に準拠して、鉄心占積率を測定した。なお、板厚:O.23mm未満の鋼板の場合、鉄心占積率を求めるための組み立てるに要する鋼板の枚数について、JIS規格に規定がないため、本試験では36枚の鋼板を積層して試験を実施した。
【0039】
【表1】

【0040】
同表に示したとおり、本発明に従う発明例は、そのいずれもが高い接着強度および鉄心占積率となっている。
これに対し、試験No.1および2は、凸部の個数密度が本発明の範囲より小さいため、また試験No.18〜20は、凸部の厚みが本発明の範囲より小さく、試験No.20はさらに凸部の直径が大きいため、そのいずれもが接着強度に劣っていた。さらに、試験No.21〜26、28は、凸部を有さないため、絶縁被膜の膜厚が薄い場合は接着強度に劣り、絶縁被膜の膜厚が厚い場合は鉄心占積率に劣っていた。試験No.27は凸部の厚みと直径が本発明の範囲より小さいため、接着強度に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱および/または加圧により接着可能な絶縁被膜を有する電磁鋼板であって、該絶縁被膜の片面当たりの付着量が1.0〜3.0g/mであり、かつ該絶縁被膜の表面に、厚みが5μm以上、直径が10〜30μmで加熱および/または加圧により接着可能な絶縁性の凸部を、単位面積1mm当たり200〜1500個そなえることを特徴とする絶縁被膜付き電磁鋼板。
【請求項2】
電磁鋼板の表面に、加熱および/または加圧により接着可能な絶縁ベース被膜を形成し、ついで該絶縁ベース被膜の上に、厚みが5μm以上、直径が10〜30μmであって、加熱および/または加圧により接着可能な絶縁性の凸部を、単位面積1mm当たり200〜1500個形成することを特徴とする絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法。
【請求項3】
前記凸部を、インクジェット、ディスペンサまたは静電塗装により形成することを特徴とする請求項2に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の電磁鋼板を2枚以上積層して、加熱および/または加圧により接着させた、鉄心占積率が96.0%以上であることを特徴とする積層鉄心。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−171111(P2012−171111A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32471(P2011−32471)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】