説明

絶縁電線

【課題】モーターや変圧器などのコイル用として高い圧力下でも潤滑性能が良く、占積率が高く、巻線加工性が良好で、耐絶縁性の優れた絶縁電線を提供する。
【解決手段】金属導体上に、絶縁塗料層が形成され、当該絶縁塗料層にポリアミドイミド樹脂塗料に安定化イソシアネート化合物、ワックスおよび酸化防止剤を混合した自己潤滑層が最外層に塗布、焼き付けされた絶縁電線2であって、前記絶縁塗料層に前記自己潤滑層が形成された樹脂被覆層は、下記(1)式で表される動的硬度DHが0.6以上であることを特徴とする絶縁電線2。(1)DH=3.8584×P/(D×D)(式中、P(mN)は、稜角115°の三角すい圧子を樹脂被覆層表面に押し込む荷重、D(μm)は三角すい圧子の樹脂被覆層表面への浸入深さを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーターや変圧器などのコイル用として好適な、巻線加工性に優れた絶縁電線に係る。
【背景技術】
【0002】
電気絶縁物で被覆された絶縁電線は各種の電気機器に組み込まれたコイルの用途に大量に使用されている。それはモーターや変圧器に代表される電気機器に特に多く使用されている。近年、これらの機器の小型化及び高性能化が進展し、絶縁電線を非常に狭い部分へ押しこんで使用する様な使い方が多く見られるようになった。具体的には、ステータースロット中に何本の電線が入れられるかで、そのモーターなどの回転機の性能が決定するといっても過言ではなく、その結果、ステータースロット断面積に対する導体の断面積の比率(占積率)が近年非常に高くなってきている。
ステータースロットの内部に、丸断面の電線を細密充填した場合、デッドスペースとなる空隙と絶縁皮膜の断面積が問題となる。このため、ユーザーでは、丸断面の電線が変形するほど、ステータースロットへの電線の押し込みをおこない、少しでも占積率の向上を行おうとしているが、やはり絶縁皮膜の断面積を少なくすることは、その電気的な性能(絶縁破壊など)を犠牲にするため、行われなかった。
【0003】
以上の結果から、占積率を向上させる手段として、ごく最近では導体の断面形状が四角型(正方形や長方形)に類似した平角線を使用することが試みられている。平角線の使用は、占積率の向上には劇的な効果を示すが、平角導体上に絶縁皮膜を均一に塗布する事が難しく、特に断面積の小さい絶縁電線には絶縁皮膜の厚さの制御が難しいことから、あまり普及していない。
【0004】
この巻線加工性能を電線皮膜に付与する方法は各種の方法が考えられている。それは、皮膜に潤滑性を付与して摩擦係数を下げコイル加工時の外傷を少なくする方法や、皮膜と電気導体間の密着性を向上させてその皮膜が導体から剥離する事を防止して電気絶縁性能を保持させる方法などである。
潤滑性能を付与させる方法は、電線の表面にワックスなどの潤滑剤を塗布する方法や絶縁皮膜中に潤滑剤を添加して、電線の製造時にその潤滑剤を電線表面にブリードアウトさせて潤滑性能を付与させる方法が旧来採られており、その実施例は多い。
【0005】
これらの従来からおこなわれている手段として、まず絶縁皮膜の表面の摩擦係数を小さくする方法については、絶縁電線表面にワックス、油、界面活性剤、固体潤滑剤などを塗布することが知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。また、水に乳化可能な鑞と水に乳化可能で加熱により固化する樹脂からなる減摩剤を塗布焼き付けして使用することが公知である(例えば、特許文献5参照)。さらには、絶縁塗料自体にポリエチレン微粉末を添加し潤滑化をはかること等が(例えば、特許文献6、7参照)、また、ワックス成分および架橋材を配合すること等が提案されている(例えば、特許文献8参照)。
以上の方法は、絶縁電線の表面潤滑性を向上させ、結果として電線の表面すべりによって巻線加工性を向上させようと考えられたものである。
【0006】
【特許文献1】特開昭55−80208号公報
【特許文献2】特開昭56−15511号公報
【特許文献3】特開昭58−186107号公報
【特許文献4】特開昭61−269808号公報
【特許文献5】特開昭62−200605号公報
【特許文献6】特開昭63−119109号公報
【特許文献7】特開昭63−29412号公報
【特許文献8】特開平09−45143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、潤滑成分を添加する手法では、その潤滑成分によって自己潤滑性能(摩擦係数)の向上は見られるが、さらに占積率が高くなった場合の高い圧力下での潤滑性能の向上は見られない。
本発明の目的は、モーターや変圧器などのコイル用として高い圧力下でも潤滑性能が良く、占積率が高く、巻線加工性が良好で、耐絶縁性の優れた絶縁電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決するものとして、絶縁電線の最外層に自己潤滑層を形成し、それを含む樹脂被覆層の動的硬度(DH)が0.6以上であるものを見出した。
すなわち、本発明は、
(1)金属導体上に、絶縁塗料層が形成され、当該絶縁塗料層にポリアミドイミド樹脂塗料に安定化イソシアネート化合物、ワックスおよび酸化防止剤を混合した自己潤滑層が最外層に塗布、焼き付けされた絶縁電線であって、前記絶縁塗料層に前記自己潤滑層が形成された樹脂被覆層は、下記(1)式で表される動的硬度DHが0.6以上であることを特徴とする絶縁電線。
【0009】
DH=3.8584×P/(D×D) (1)式
(式中、P(mN)は、稜角115°の三角すい圧子を樹脂被覆層表面に押し込む荷重、D(μm)は三角すい圧子の樹脂被覆層表面への浸入深さを表す。)
【0010】
(2)前記ワックスがポリエチレンワックスであることを特徴とする(1)記載の絶縁電線、
(3)前記ポリアミドイミド樹脂塗料にさらに錫触媒が、ポリアミドイミド樹脂100質量部に対し、0.05〜5.0質量部混合されていることを特徴とする(1)または(2)記載の絶縁電線、および、
(4)前記錫触媒がジブチル錫ジラウリレートであることを特徴とする請求項3記載の絶縁電線、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の絶縁電線では、低荷重下での静摩擦係数および高荷重下での静摩擦係数が向上(即ち、高荷重下でも静摩擦係数が増加しない)するため、高占積率での巻線加工性の向上に大きく寄与することができ、高占積率での耐絶縁性にも優れた効果を有し、外観も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の絶縁電線について詳細に説明する。
本発明の絶縁電線の構成は、金属導体上に、内層となる絶縁塗料層が形成され、その絶縁塗料層に最外層に自己潤滑層が塗布・焼き付けられ形成されたものである。
金属導体上に形成する絶縁塗料層は、絶縁電線の絶縁塗料として一般に使用されているものであればどのようなものでも良く、例えば、ポリエステル、耐熱変性ポリエステル、ポリウレタン、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等の絶縁塗料が挙げられる。そして絶縁塗料層は、これらの絶縁塗料が単独で形成されていてもよく、また複数の絶縁塗料層を組み合わせて形成してもよい。なかでも、耐熱性ポリエステル、ポリアミドイミドが好ましい。
【0013】
本発明で最外層の絶縁性の自己潤滑層である皮膜を形成するために用いられる塗料は、ポリアミドイミド樹脂塗料である。
そのベース樹脂であるポリアミドイミドについては、特に制限はなく、常法により、例えば極性溶媒中でトリカルボン酸無水物とジイソシアネート類を直接反応させて得たもの、あるいは、極性溶媒中でトリカルボン酸無水物にジアミン類を先に反応させて、まずイミド結合を導入し、ついでジイソシアネート類でアミド化して得たものを用いることができる。
【0014】
この塗料のベース樹脂の調製に用いるトリカルボン酸無水物としては、通常、トリメリット酸無水物を用いる。この場合、トリカルボン酸無水物の一部量をテトラカルボン酸無水物に置き換えて反応させてもよい。
このときのテトラカルボン酸無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などが用いられる。また、トリカルボン酸無水物の一部量を他の酸または酸無水物、例えばトリメリット酸、イソフタル酸、テレフタル酸などに置き換えてもよい。
【0015】
一方、トリカルボン酸無水物と反応させるジイソシアネート類としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類が挙げられ、ジアミン類としてはm−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン等の芳香族ジアミン類が挙げられる。
また、イミド化にはN,N’−ジメチルホルムアミドを用いてもよい。また、極性溶媒としては好ましくはN−メチル−2−ピロリドンを用いることができる。また、市販のポリアミドイミド溶液としてHI405、HI406(商品名、日立化成工業(株))がある。
【0016】
本発明の最外層に自己潤滑層を形成するポリアミドイミド樹脂塗料は、ポリアミドイミド樹脂塗料に、潤滑成分としてワックス、酸化防止剤および安定化イソシアネート化合物を添加したものである。
ここで、ワックスとしては、天然ワックス、脂肪酸エステルワックス、脂肪酸アマイドワックス、ポリオレフィンワックス何れかに属するものであれば特に制約なく、1種を単独で使用しても良く、これらの複数種を併用したりすることも可能である。
天然ワックスとしては、カルナバワックス、ラノリンワックス、ミツロウ、モンタンワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、セレシン、鯨ロウ等が挙げられる。
ポリオレフィンワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス等が挙げられる。
【0017】
これらの中でも、ポリエチレンワックスが好適に使用される。ここで使用されるポリエチレンの分子量は1000〜10000、密度0.90〜1.00、好ましくは分子量2000〜8000、密度0.92〜0.99のものである。また、これらのポリエチレンは分子中の一部が酸化変性された酸化型ポリエチレンでも良い。
このようなポリエチレンとしては、ハイワックス800P、400P、200P、720P、410P、420P、320P、210P、220P、110P、405MP、310P、320MP、210MP、220MP、4051E、4052E、4202E、1105A、2203A(いずれも商品名、三井化学(株))、サンワックス131P、151P、161P、165P、171P、E310、E330、E250P、LEL250、LEL800、LEL400P(いずれも商品名、三洋化成(株))、AC6、AC7、AC8、AC9、AC15、AC16、AC617、AC715、AC725、AC725、AC735、AC307、AC316、AC325、AC330、AC392、AC395(いずれも商品名、アライドシグナル(株))、等が挙げられる。
【0018】
これらのワックスの混合量は、ベースポリアミドイミド樹脂100質量部に対して、0.5〜10.0質量部、好ましくは1.0〜5.0質量部の範囲内である。その理由は、0.5質量部未満では、十分な潤滑性の向上が見られず、また10.0質量部を超えて多量であると、焼き付けて得られる電線表面の外観が低下するなどの問題が生じるためである。
【0019】
酸化防止剤としては、塗布焼き付けし、自己潤滑性の絶縁皮膜を形成させる際に、潤滑成分であるポリエチレンの酸化あるいは分解を抑制するものであり、例えば、ヒンダートフェノール系、アミン系、硫黄系、トリアゾール系の酸化防止剤のものがある。
このような酸化防止剤としては、IRGANOX245、IRGANOX259、IRGANOX565、IRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1098、IRGANOX1222、IRGANOX1330、IRGANOX1425、IRGANOX3114、IRGANOX5057、IRGANOX1520、IRGANOX1135、IRGANOXMD1135、IRGANOX PS800FL(いずれも商品名、チバガイキー(株))、ノクラック200、ノクラックNS-5、ノクラックNS-6、ノクラックNS-30、ノクラックPBK(いずれも商品名、大内新興化学工業(株))等が挙げられる。
【0020】
これら酸化防止剤の混合量は、ベースポリアミドイミド樹脂100質量部に対して、0.5〜10.0質量部、好ましくは1.0〜5.0質量部の範囲内である。その理由は、0.5質量部未満では、ポリエチレンに対する十分な酸化防止能が得られず、ワックスの酸化劣化による潤滑性が低下し、また10.0質量部を超えて多量であると、焼き付けて得られる電線表面の外観が低下するなどの問題が生じるためである。
【0021】
安定化イソシアネート化合物としては、マスキング剤で安定化されており、トリメチロールプロパンとジフェニルメタンジイソシアネートを反応させ、ジフェニルメタンジイソシアネートの片方の末端基をフェノール、ε−カプロラクタムなどのマスキング剤で安定化させた高分子量のポリイソシアネートや、ジフェニルメタンジイソシアネートの末端基をフェノール、ε−カプロラクタムなどのマスキング剤で安定化させた低分子量のものなどが代表的なものであるが、これに限るものではない。
安定化イソシアネート化合物の混合量は、ポリアミドイミド樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部、好ましくは1.0〜10.0質量部の範囲内である。その混合量が0.1質量部未満では電線表面の動的硬度を高める効果が小さく、20質量部を超えると、耐摩耗性が低下する。
【0022】
さらに、本発明の自己潤滑層を形成するポリアミドイミド樹脂塗料には、錫触媒を添加するのが好ましい。
錫触媒としては、ジブチル錫ジラウリレート、オクチル酸錫等が挙げられる。これらの錫触媒の混合量はベースポリアミドイミド樹脂100質量部に対して、0.05〜5.0質量部、好ましくは0.1〜3.0質量部の範囲内である。混合量が0.05質量部未満では、架橋硬化に対する十分な触媒能が得られず、また10質量部を超えて多量であると、ワニス増粘やワニスの安定性が低下するなどの問題が生じるためである。
【0023】
また、本発明の自己潤滑層を形成するポリアミドイミド樹脂塗料には、一般的に使用される各種の添加剤、例えば、難燃(助)剤、金属不活性剤、着色剤、無機フィラーなどを本発明の目的を損なわない範囲で適宜混合することができる。
【0024】
本発明に用いる金属導体は、銅、ニッケルメッキ銅、アルミニウム、金、金メッキ銅、銀等電線用の導体として使用できるいかなるものであっても良い。金属導体には、内層となる公知の絶縁塗料を塗布した後、400〜600℃で焼き付けを行う。内層となる絶縁塗料層の厚さは金属導体のサイズ等によって異なるが、10〜50μmが好ましい。次いで、その外層に前述した自己潤滑層を形成するポリアミドイミド樹脂塗料を塗布した後、400〜600℃で焼き付けを行い、2〜6μm厚の絶縁性の自己潤滑層を形成する。
【0025】
本発明の絶縁電線では、内層の絶縁塗料層と最外層に形成された自己潤滑層とを含む樹脂被覆層は、その動的硬度(DH)が0.6以上、好ましくは0.7以上であることが必要である。
この動的硬度(DH)は、次の(1)式で表される。
【0026】
DH=3.8584×P/(D×D) (1)式
(式中、P(mN)は、稜角115°の三角すい圧子を樹脂被覆層表面に押し込む荷重、D(μm)は三角すい圧子の樹脂被覆層表面への浸入深さを表す。)
【0027】
この数式(1)で表される動的硬度は、絶縁電線の樹脂被覆層の変形のし易さを示す指標となるものである。この絶縁電線の樹脂被覆層の動的硬度が低すぎると、樹脂被覆層の変形が大きくなり、高荷重下での潤滑性能が低下する。また、あまり高くても樹脂被覆層の可とう性が失われるので、その動的硬度は1.3程度までが好ましい。
【実施例】
【0028】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
[実施例1〜2および比較例1〜3]
ポリアミドイミド塗料であるHI406(商品名、日立化成工業(株))100質量部に、ポリエチレンワックス、酸化防止剤(商品名「イルガノックス1098」、チバ・ガイキー(株))、ジブチル錫ジラウリレート、安定化イソシアネート(商品名「ミリオネートMS−50」、日本ポリウレタン(株))を表1に示す量(数値は質量部である)添加し、十分に攪拌混合させて実施例1〜2および比較例1〜3の自己潤滑性の絶縁塗料を調製した。ただし、比較例1、2には安定化イソシアネートを混合せず、また、比較例2には錫触媒を混合していない。
導体径1.0mmの銅線上に、内層にトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(THEIC)変性ポリエステル絶縁塗料(商品名「Isone1200」、米国スケネクタディインターナショナル(株))を数回塗布・焼き付けし、内層の絶縁塗料層の皮膜厚32μmとした。さらにその上に、前記各自己潤滑性の絶縁塗料を塗布・焼き付けし、最外層の自己潤滑層の皮膜厚3μmとし、厚み35μmの絶縁樹脂被覆層を有する実施例1〜2及び比較例1〜3の各絶縁電線を製造した。
【0029】
こうして得られた、実施例1〜2及び比較例1〜3の各絶縁電線の特性を試験した。
静摩擦係数は次のように求めた。図1に示すように、水平な台に絶縁電線2を2本張り、絶縁電線2を底に2本張った荷重1をその上にのせ、台の絶縁電線2と荷重の絶縁電線2が垂直方向に接触するようにする。荷重1が動き始めたときの重り4の荷重Fを測定し、式:静摩擦係数=F/W〔式中、Fは荷重を水平方向に引っ張るときに要する力(kgW)であり、Wは荷重1の質量(kg)である〕から静摩擦係数を計算した。
荷重1を1kgまたは3kgにして、それぞれの重り4の荷重を測定した。
絶縁電線の樹脂被覆層の動的硬度は、島津ダイナミック微小硬度計(島津製作所製)を用い、三角錐圧子(稜角115°)を樹脂被覆層上に負荷速度0.0145g/secで押し込み、荷重1gfに達した時の圧子の浸入深さを測定し、その値から上記(1)式により算出した。
得られたこれらの試験結果を表1に示した。
【0030】
【表1】

【0031】
上記の結果から、比較例1〜3では動的硬度が低く、高荷重の静摩擦係数が低荷重の場合に比べ大きく増加している。これに対して、本発明の実施例1、2は、動的硬度が高く、高荷重下の静摩擦係数が低荷重の場合に比べ同じかむしろ減少しているので、高荷重下でも潤滑性が良く、高占積率での巻線加工性が良好であることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、静摩擦係数を求めるのに用いた測定器の概略図である。
【符号の説明】
【0033】
1 荷重
2 絶縁電線
3 滑車
4 重り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属導体上に、絶縁塗料層が形成され、当該絶縁塗料層にポリアミドイミド樹脂塗料に安定化イソシアネート化合物、ワックスおよび酸化防止剤を混合した自己潤滑層が最外層に塗布、焼き付けされた絶縁電線であって、前記絶縁塗料層に前記自己潤滑層が形成された樹脂被覆層は、下記(1)式で表される動的硬度DHが0.6以上であることを特徴とする絶縁電線。
DH=3.8584×P/(D×D) (1)式
(式中、P(mN)は、稜角115°の三角すい圧子を樹脂被覆層表面に押し込む荷重、D(μm)は三角すい圧子の樹脂被覆層表面への浸入深さを表す。)
【請求項2】
前記ワックスがポリエチレンワックスであることを特徴とする請求項1記載の絶縁電線。
【請求項3】
前記ポリアミドイミド樹脂塗料にさらに錫触媒が、ポリアミドイミド樹脂100質量部に対し、0.05〜5.0質量部混合されていることを特徴とする請求項1または2記載の絶縁電線。
【請求項4】
前記錫触媒がジブチル錫ジラウリレートであることを特徴とする請求項3記載の絶縁電線。

【図1】
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【公開番号】特開2008−16397(P2008−16397A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188669(P2006−188669)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】