絹に基づく薬物送達システム
【課題】絹フィブロインに基づく徐放性送達システムの提供。
【解決手段】メタノールと接触、剪断(sheer)応力で処理、電場で処理、圧力で処理、又は塩を接触させることによりコンフォメーションを改変した絹フィブロインに基づく徐放性送達システム。
【解決手段】メタノールと接触、剪断(sheer)応力で処理、電場で処理、圧力で処理、又は塩を接触させることによりコンフォメーションを改変した絹フィブロインに基づく徐放性送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概して、絹に基づく薬物送達システムに関する。特に、本システムは、デバイスから持続性かつ制御可能な速度で治療剤を放出することが可能である。
【0002】
政府支援
本発明はNIHによって支持され、かつ米国の政府がそこへ特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
絹は、この用語が一般的に当技術分野において公知であるように、カイコまたはクモのような生物によって分泌される糸状の繊維産物を意味する。昆虫、すなわち、(i)カイコガ(Bombyx mori)カイコ、および(ii)クモ、典型的にはアメリカジョロウグモ(Nephilia clavipes)の腺から生産される絹は、最も多くの場合研究される材料の形態である;しかしながら、数百から数千もの絹の自然な変種が自然界には存在する。フィブロインは、カイコの2つの絹糸腺によって生産され、かつ分泌される。
【0004】
カイコ絹は、生医学的適用において1,000年以上用いられてきた。カイコのカイコガ種は、絹繊維(「繭糸」として公知)を生産し、およびその繭を構築するために、その繊維を用いる。生産される際、繭糸は、二線維性繊維、またはセリシン(有意な機械的一体性を有する絹フィブロインフィラメント)として公知のゴムのコーティングで取り囲まれる「ブロイン(broin)」を含む。縫合糸を含む、糸または織物を産生するために、絹繊維が収集される場合、複数の繊維は合わせて整列配置され、かつセリシンを部分的に溶解し、次いで再凝固して、セリシンコーティング中に相互に包埋される2つ以上のブロインを有するより大きい絹繊維構造を作製する。
【0005】
フィブロインのような再加工された絹の固有の機械的性質、およびその生体適合性は、絹繊維を、特に生物工学の材料および医学的適用における使用に対して魅力的なものにする。絹は、印象的な機械的性質、生体適合性、および生分解性の理由から、生体材料および組織工学にとって材料選択の重要なセットを提供する(Altman, G. H., et al., Biomaterials 2003, 24, 401-416(非特許文献1);Cappello, J., et al., J. Control. Release 1998, 53, 105-117(非特許文献2);Foo, C. W. P., et al., Adv. Drug Deliver. Rev. 2002, 54, 1131-1143(非特許文献3);Dinerman, A. A., et al., J. Control. Release 2002, 82, 277-287(非特許文献4);Megeed, Z., et al., Adv. Drug Deliver. Rev. 2002, 54, 1075-1091(非特許文献5);Petrini, P., et al., J. Mater. Sci-Mater. M. 2001, 12, 849-853(非特許文献6);Altman, G. H., et al., Biomaterials 2002, 23, 4131-4141(非特許文献7);Panilaitis, B., et al., Biomaterials 2003, 24, 3079-3085(非特許文献8))。例えば、三次元多孔質の絹骨格は、組織工学における使用のために、記載されていた(Meinel et al., Ann Biomed Eng. 2004 Jan;32(1):112-22(非特許文献9);Nazarov, R., et al., Biomacromolecules in press(非特許文献10))。さらに、再生した絹線維性フィルムは、酸素-および薬物-浸透膜、酵素固定のための支持体、および細胞培養のための基質として探索されてきた(Minoura, N., et al., Polymer 1990, 31, 265-269(非特許文献11);Chen, J., et al., Minoura, N., Tanioka, A. 1994, 35, 2853-2856(非特許文献12);Tsukada, M., et al., Polym. Sci. Part B Polym. Physics 1994, 32, 961-968(非特許文献13))。
【0006】
徐放性の望ましさは、製薬分野において長く認識されてきた。徐放性薬物送達システムは、従来の剤形を上回る多くの利点を提供することができる。一般に、徐放性製剤は、従来の迅速な放出剤形と比較して、治療的または予防的反応のより長い期間を提供する。例えば、疼痛の処置において、徐放性製剤は、例えば12〜24時間の期間にわたる比較的一定の鎮痛薬放出速度を維持するのに有用であり、それによって薬物の血清濃度は治療的に有効なレベルで、薬物の従来の剤形によって可能な持続期間より長く残存する。さらに、標準剤形は、典型的に、結果として薬物の不必要に高い血清レベルをもたらし得る最初の高い薬物放出速度を示すが、徐放性製剤は、薬物の血清レベルを、治療的に有効な閾値でまたはそれより僅かに上で維持する助けとなり得る。薬物の血清濃度におけるそのような低い変動はまた、過剰な投薬を阻止するのを助け得る。
【0007】
さらに、徐放性組成物は、送達のカイネティクスを最適化することによって、患者が頻繁でない投与で用量を間違える可能性がより低いように、患者の服薬遵守を高め、特に一日一回の薬剤投与計画が可能な場合;より頻繁でない投与はまた、患者の簡便性を増大する。徐放性製剤は、全体的な保健費用をもまた減少させ得る。徐放性送達システムの原価が、従来の送達システムと関連する費用より高くなり得るにも関わらず、時間のかかる延長された処置の平均費用は、より頻繁でない投薬、増大した治療的利点、減少した副作用、ならびに薬物を調剤および投与し、かつ患者服薬遵守をモニタリングするのに必要とする時間の減少により、低くなり得る。
【0008】
多くのポリマーに基づくシステムが、徐放性の目的を達成するために提案された。これらのシステムは一般に、放出を制御する手段として、ポリマーの分解またはポリマーを介する拡散のいずれかに依存した。
【0009】
徐放性製剤を開発するポリマーに基づく試みは、活性成分を含む様々な生物分解性および非生物分解性ポリマー(例えばポリ(ラクチド-コ-グリコリド))微小粒子の使用を含み(例えばWise et al., Contracgption, 1:227-234 (1973)(非特許文献14);およびHutchinson et al., Biochem. Soc. Trans., 13:520-523 (1985)(非特許文献15)を参照されたい)、かつ活性薬剤、例えばタンパク質を、重合体マイクロスフェアに組み込むことができる様々な技術が公知である(例えば米国特許第4,675,189号(特許文献1)、およびその引用文献を参照されたい)。さらに、様々なマイクロカプセル、微小粒子、およびより大きい徐放性インプラントが、製剤を延長期間にわたり患者に送達するために用いられた。例えばポリ-DL-乳酸、ポリグリコール酸、ポリラクチドのようなポリエステル、および他のコポリマーは、例えば、Kent et al.,米国特許第4,675,189号(特許文献1)、およびHutchinson et al.,米国特許第4,767,628号(特許文献2)に記載されているように、プロゲステロンおよび黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)類似体のような生物学的活性分子を放出するために用いられてきた。
【0010】
残念なことに、現在のポリマーに基づく持続性送達システムの成功は限定されている。これは、大部分において、調製の間の有機溶剤の使用の必要性のためである。インビボで十分に許容される溶剤、すなわち酢酸エチルでさえ、免疫反応またはアナフィラキシー性ショックを引き起こし得る。さらに、全ての有機溶剤は、揮発性でかつ高価な製造工程を必要とする。
【0011】
従って、生体適合性、生物分解性、徐放性薬物送達システムの必要がある。そのような産物は、引張強度、弾性、成形性などの望ましい機械的性質を有し、制御された再吸収を提供し、かつ生理的に許容可能であるべきである。さらに、そのような産物は、様々なインビボの適応症に対して投与の容易性を可能にし、かつ最良のシナリオにおいて安価に製造されるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,675,189号
【特許文献2】米国特許第4,767,628号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Altman, G. H., et al., Biomaterials 2003, 24, 401-416
【非特許文献2】Cappello, J., et al., J. Control. Release 1998, 53, 105-117
【非特許文献3】Foo, C. W. P., et al., Adv. Drug Deliver. Rev. 2002, 54, 1131-1143
【非特許文献4】Dinerman, A. A., et al., J. Control. Release 2002, 82, 277-287
【非特許文献5】Megeed, Z., et al., Adv. Drug Deliver. Rev. 2002, 54, 1075-1091
【非特許文献6】Petrini, P., et al., J. Mater. Sci-Mater. M. 2001, 12, 849-853
【非特許文献7】Altman, G. H., et al., Biomaterials 2002, 23, 4131-4141
【非特許文献8】Panilaitis, B., et al., Biomaterials 2003, 24, 3079-3085
【非特許文献9】Meinel et al., Ann Biomed Eng. 2004 Jan;32(1):112-22
【非特許文献10】Nazarov, R., et al., Biomacromolecules in press
【非特許文献11】Minoura, N., et al., Polymer 1990, 31, 265-269
【非特許文献12】Chen, J., et al., Minoura, N., Tanioka, A. 1994, 35, 2853-2856
【非特許文献13】Tsukada, M., et al., Polym. Sci. Part B Polym. Physics 1994, 32, 961-968
【非特許文献14】Wise et al., Contracgption, 1:227-234 (1973)
【非特許文献15】Hutchinson et al., Biochem. Soc. Trans., 13:520-523 (1985)
【発明の概要】
【0014】
本発明は、絹に基づく新規な徐放性送達システムを提供する。本発明はさらに、そのようなデバイスを生産するための方法を提供する。
【0015】
一つの態様において、治療剤の放出制御のための薬学的製剤を生産する方法が提供される。方法は、絹フィブロイン溶液と治療剤を接触させる段階を含む。治療剤は、例えば、タンパク質、ペプチド、および小分子を含む。好ましい態様において、水性の絹フィブロイン溶液が利用される。
【0016】
次に、治療剤を含む絹フィブロイン製品が形成される。絹フィブロイン製品は、糸、繊維、フィルム、泡、メッシュ、ヒドロゲル、三次元骨格、錠剤充填材料、錠剤コーティング、またはマイクロスフェアであり得る。
【0017】
製品のコンフォメーションは次いで、その結晶化度または液体結晶化度を増大するために改変され、したがって絹フィブロイン製品からの治療剤の放出制御を提供する。
【0018】
本発明の一つの態様において、製品のコンフォメーションは、フィブロイン製品をメタノールと接触させることによって改変される。メタノール濃度は、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、または少なくとも100%である。
【0019】
代替の態様において、フィブロイン製品のコンフォメーションの改変は、製品を剪断(sheer)応力で処理することによって誘導される。剪断応力は、製品を針に通すことによって加えられ得る。
【0020】
フィブロイン製品のコンフォメーションはまた、製品を電場と接触させることにより、圧力を加えることにより、または製品を塩と接触させることによって改変され得る。
【0021】
好ましくは、治療剤は、約10キロダルトン(kDa)に等しいかまたはそれ以上である。より好ましくは、治療剤は約20kDaより大きい。
【0022】
さらなる態様において、複数の絹フィブロイン製品(すなわち層)を有する薬学的製剤が提供される。この態様において、少なくとも一つの層は、少なくとも一つの他の層と異なる誘導されたコンフォメーション変化を有する。絹フィブロイン製品層は、異なる治療剤をそれぞれ含み得、各層が同じかまたは異なる誘導されたコンフォメーション変化を有する。
【0023】
薬学的製剤は生物分解性であり、かつデバイスを特定の細胞または組織型に特異的に標的化するターゲティング薬剤を含み得る。ターゲティング薬剤は、例えば、糖、ペプチド、または脂肪酸であり得る。
【0024】
一つの態様において、絹フィブロイン溶液は、例えばカイコガ由来のような、溶解されたカイコ絹を含む溶液から得られる。または、絹フィブロイン溶液は、例えばアメリカジョロウグモ由来のような、溶解されたクモ絹を含む溶液から得られる。絹フィブロイン溶液はまた、遺伝的に操作された絹を含む溶液から得られ得る。一つの態様において、遺伝的に操作された絹は治療剤を含む。これは、サイトカイン、酵素、または多くのホルモンまたはペプチドに基づく薬物、抗菌物質、および関連する基質を有する融合タンパク質であり得る。
【0025】
上記の方法によって生産される治療剤の放出制御のための薬学的製剤もまた、本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本明細書に組み入れられ、その一部を成す添付の図面は、本発明の態様を例示し、記載と合わせて本発明の目的、利点、および原理を説明するのに役立つ。
【図1】24、48、および130時間後のFD4の薬物放出を示す。
【図2】薬物放出に対するメタノール濃度の影響を示す。最大50%のメタノール濃度による処理は結果として、その後の時点で放出される微量のFD4を伴い、最初の12時間以内に高い突発放出をもたらす。対照的に、90%または100%メタノール溶液による処理は、結果として約200時間にわたる徐放性かつより速い放出をもたらす。
【図3】メタノールの異なる濃度によって処理される絹フィブロイン溶液によるコアのコーティングを示す;(I)コーティングなしのコア;(d)90%メタノール溶液によって処理されたコーティングを有するコア;(c)フィブロインの二つの層を有するコア;および(b)フィブロインの3つの層を有するコア。結果は、治療剤の放出がコアの周囲のコーティングの厚さを介して制御され得ることを示す。
【図4】異なる分子量を有し、かつH2O(4A)またはメタノール(4B)によって処理される絹フィルム由来のFITC-デキストランの放出を示す。
【図5A】それぞれメタノールまたはH2Oによって処理される、絹フィルム由来の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP;5A、5C)およびリゾチーム(Lys、5B、5D)の累積的放出ならびに吸着を示す。
【図5B】それぞれメタノールまたはH2Oによって処理される、絹フィルム由来の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP;5A、5C)およびリゾチーム(Lys、5B、5D)の累積的放出ならびに吸着を示す。
【図5C】それぞれメタノールまたはH2Oによって処理される、絹フィルム由来の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP;5A、5C)およびリゾチーム(Lys、5B、5D)の累積的放出ならびに吸着を示す。
【図5D】それぞれメタノールまたはH2Oによって処理される、絹フィルム由来の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP;5A、5C)およびリゾチーム(Lys、5B、5D)の累積的放出ならびに吸着を示す。
【図6】未変性の絹フィルム(6A、6C)またはメタノールによって処理されるフィルム(6B、6D)のAFM画像を示す。バーの長さ2,5μm(6A、6B)および0.5μm(6B、6D)。
【図7A】未変性の絹フィルムまたはメタノールによって処理されるフィルムの物理化学的性質を示す。(7A)メタノール処理(7B)および未処理(7C)フィルムのFTIR解析ならびにX線ディフラクトグラム(diffractogramm)。メタノール処理(7D)および未処理(7E)フィルム上の経時的な水滴の接触角測定。
【図7B】未変性の絹フィルムまたはメタノールによって処理されるフィルムの物理化学的性質を示す。(7A)メタノール処理(7B)および未処理(7C)フィルムのFTIR解析ならびにX線ディフラクトグラム(diffractogramm)。メタノール処理(7D)および未処理(7E)フィルム上の経時的な水滴の接触角測定。
【図7C】未変性の絹フィルムまたはメタノールによって処理されるフィルムの物理化学的性質を示す。(7A)メタノール処理(7B)および未処理(7C)フィルムのFTIR解析ならびにX線ディフラクトグラム(diffractogramm)。メタノール処理(7D)および未処理(7E)フィルム上の経時的な水滴の接触角測定。
【図7D】未変性の絹フィルムまたはメタノールによって処理されるフィルムの物理化学的性質を示す。(7A)メタノール処理(7B)および未処理(7C)フィルムのFTIR解析ならびにX線ディフラクトグラム(diffractogramm)。メタノール処理(7D)および未処理(7E)フィルム上の経時的な水滴の接触角測定。
【図7E】未変性の絹フィルムまたはメタノールによって処理されるフィルムの物理化学的性質を示す。(7A)メタノール処理(7B)および未処理(7C)フィルムのFTIR解析ならびにX線ディフラクトグラム(diffractogramm)。メタノール処理(7D)および未処理(7E)フィルム上の経時的な水滴の接触角測定。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
絹に基づく薬物送達システムの調製方法が記載される。特に、薬物送達システムは、インビボでの治療剤の制御放出および徐放性を可能にする。一般に、絹フィブロイン溶液は、絹フィブロイン製品を形成するために治療剤と併用される。製品は次いで、そのコンフォメーションを改変するような方法で処理される。コンフォメーションの変化はその結晶化度を増加し、したがって製剤からの治療剤の放出を制御する。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「フィブロイン」は、カイコフィブロイン、および昆虫またはクモ絹タンパク質を含む(Lucas et al., Adv. Proteins Chem 13:107-242 (1958))。好ましくは、フィブロインは、溶解されたカイコ絹またはクモ絹を含む溶液から得られる。カイコ絹タンパク質は、例えば、カイコガから得られ、およびクモ絹はアメリカジョロウグモから得られる。選択的に、本発明の使用に適した絹タンパク質は、細菌、酵母、哺乳動物細胞、トランスジェニック動物またはトランスジェニック植物由来のような遺伝的に操作された絹を含む溶液から得られ得る。例えば、国際公開公報第97/08315号および米国特許第5,245,012号を参照されたい。
【0029】
絹フィブロイン溶液は、当業者に公知の任意の従来の方法によって調製され得る。例えば、カイコガ繭は、約30分間水溶液中で沸騰される。好ましくは、水溶液はおよそ0.02 M Na2CO3である。繭は、例えば水でリンスされ、セリシンタンパク質が抽出され、かつ抽出された絹は塩水溶液に溶解される。この目的に有用な塩は、臭化リチウム、チオシアン酸リチウム、硝酸カルシウム、または絹を可溶化することが可能な他の化学物質を含む。好ましくは、抽出された絹は、9〜12 M LiBr溶液に溶解される。塩は、その結果として、例えば透析法を用いて除去される。
【0030】
必要に応じて、溶液は次いで、例えば、吸湿性のポリマー、例えばPEG、ポリエチレンオキシド、アミロース、またはセリシンに対して透析法を用いて濃縮され得る。
【0031】
好ましくは、PEGは8,000〜10,000 g/molの分子量であり、かつ25〜50%の濃度を有する。好ましくは、slide-a-lyzer透析カセット(Pierce, MW CO 3500)が用いられる。しかしながら、任意の透析システムが用いられてもよい。透析は10〜30%の水性絹溶液の最終濃度をもたらすのに十分な時間である。ほとんどの場合、2〜12時間の透析で十分である。例えば、PCT出願PCT/US/04/11199号を参照されたい。
【0032】
または、絹フィブロイン溶液は有機溶媒を用いて生産され得る。そのような方法は、例えばLi, M., et al., J. Appl. Poly Sci. 2001, 79, 2192-2199;Min, S., et al. Sen'I Gakkaishi 1997, 54, 85-92;Nazarov, R. et al., Biomacromolecules 2004 May-Jun;5(3):718-26に記載される。
【0033】
本発明に従って、絹フィブロイン溶液は少なくとも1つの治療剤を含む。絹フィブロイン溶液は、フィブロイン製品、例えば繊維、メッシュ、骨格を形成する前に、治療剤と接触させられ、またはその形成後に製品に負荷される。形成後に負荷するために、絹集合体は治療剤の親水/疎水分配(例えばJin et al. , Nature.2003 Aug 28;424(6952):1057-61を参照されたい)、および相分離の吸着を制御するために用いられる。材料はまた、絹中に治療剤を封入することによって、βシートへの移行を誘導することによって(例えばメタノール、剪断、塩類、電気)、および次の治療剤を封入している各層を有するものの上に層を添加することによって負荷され得る。この多層アプローチは、各層における選択的負荷を伴うタマネギ様構造を可能にするであろう。
【0034】
本発明の製剤と併用して用いられ得る様々な異なる治療剤は膨大にあり、かつ小分子、タンパク質、ペプチド、および核酸を含む。一般的に、本発明を介して投与され得る治療剤は、非制限的に以下を含む:抗生剤および抗ウイルス剤のような抗感染薬;化学療法剤(すなわち抗癌剤);抗拒絶反応剤;鎮痛剤および鎮痛剤併用;抗炎症剤;ステロイドのようなホルモン;増殖因子(骨形態形成タンパク質(すなわち、BMP1〜7)、骨形態形成様タンパク質(すなわち、GFD-5、GFD-7、およびGFD-8)、上皮細胞増殖因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子(すなわちFGF 1〜9)、血小板由来成長因子(PDGF)、インシュリン様成長因子(IGF-IおよびIGF-II)、形質転換成長因子(すなわちTGF-β-III)、血管内皮増殖因子(VEGF));エンドスタチンのような抗血管新生タンパク質、および他の天然由来または遺伝的に操作されたタンパク質、多糖、糖タンパク質、またはリポタンパク質。増殖因子は、参照として本明細書に組み入れられ、R. G. Landes Companyによって出版される、The Cellular and Molecular Basis of Bone Formation and Repair by Vicki Rosen and R. Scott Thiesに記載される。
【0035】
さらに、本発明の絹に基づくデバイスは、薬理学的材料、ビタミン、鎮静剤、ステロイド、催眠剤、抗生剤、化学療法剤、プロスタグランジン、および放射性薬剤のような任意の型の分子化合物を送達するのに用いられ得る。本発明の送達システムは、上記の材料および以下を非限定的に含むその他の材料を送達するのに適している:タンパク質、ペプチド、ヌクレオチド、炭水化物、単糖、細胞、遺伝子、抗血栓剤、抗代謝剤、増殖因子阻害剤、成長促進剤、抗凝血剤、有糸分裂阻害剤、線維素溶解薬、抗炎症性ステロイド、およびモノクローナル抗体。
【0036】
さらに、本発明の薬学的製剤はターゲティングリガンドもまた有し得る。ターゲティングリガンドは、本発明の製剤による薬学的製剤のインビボおよび/もしくはインビトロにおける、組織ならびに/または受容体への標的化を促進し得る任意の材料または基質を指す。ターゲティングリガンドは、合成、半合成、または天然由来であり得る。ターゲティングリガンドとして作用し得る材料または基質は、例えば、抗体、抗体断片、ホルモン、ホルモン類似体、糖タンパク質、およびレクチンを含むタンパク質、ペプチド、ポリペプチド、アミノ酸、糖、単糖および多糖を含む糖類、炭水化物、ビタミン、ステロイド、ステロイド類似体、ホルモン、コファクター、ならびにヌクレオシド、ヌクレオチド、ヌクレオチド酸構築物、ペプチド核酸(PNA)、アプタマー、およびポリヌクレオチドを含む遺伝物質を含む。本発明における他のターゲティングリガンドは、例えば、サイトカイニン、インテグリン、カドヘリン、免疫グロブリン、およびセレクチンのような細胞接着分子(CAM)を含む。本発明の薬学的製剤はターゲティングリガンド前駆体もまた包含し得る。ターゲティングリガンドの前駆体は、ターゲティングリガンドに変換され得る任意の材料または基質を指す。そのような変換は、例えば前駆体をターゲティングリガンドに固定することを含み得る。例示的なターゲティング前駆体部分は、マレイミド基、オルトピリジルジスルフィドのようなジスルフィド基、ビニルスルフォン基、アジド基、および[agr]-ヨードアセチル基を含む。
【0037】
生物活性材料を含む絹製剤は、1つまたは複数の治療剤を、製品を作成するのに用いられる絹溶液と混合することによって製剤化され得る。または、治療剤は、形成前の絹フィブロイン製品において、好ましくは薬学的に許容される担体でコーティングされ得る。絹材料を溶解しない任意の薬学的担体が用いられ得る。治療剤は、液体、細かく分割された固体、または任意の他の適切な物理的形態として存在し得る。
【0038】
少なくとも1つの治療剤を含む上記の絹フィブロイン溶液は次に、糸、繊維、フィルム、メッシュ、ヒドロゲル、三次元骨格、錠剤充填材料、錠剤コーティング、またはマイクロスフェアに加工される。そのように生成する方法は当業者に周知である。例えば、参照により本明細書に組み入れられるAltman, et al., Biomaterials 24:401, 2003;PCT刊行物、国際公開公報第2004/000915号および国際公開公報2004/001103号;およびPCT出願番号PCT/US/04/11199およびPCT/US04/00255を参照されたい。
【0039】
絹フィルムは、濃縮水性絹フィブロイン溶液を調製し、かつ溶液を鋳造することによって生産され得る。例えば、PCT出願PCT/US/04/11199を参照されたい。フィルムは、アルコールの非存在下で、水または水蒸気と接触され得る。フィルムは次いで、単軸方向もしくは二軸方向に引っ張られるか、または伸展され得る。絹混合フィルムの伸展は、フィルムの分子アライメントを誘導し、かつそれによってフィルムの機械的特性を改善する。
【0040】
望ましい場合、フィルムは、容量で約50〜約99.99パート水性絹タンパク質溶液、および容量で約0.01〜約50パート生体適合性ポリマー、例えばポリエチレンオキシド(PEO)を含む。好ましくは、得られる絹混合フィルムは厚さ約60〜約240 μmであるが、しかしながらより厚い試料は、より大きい容量を用いるか、または複数の層を蓄積することによって、容易に形成され得る。
【0041】
泡は当技術分野で公知の方法から作成され得、例えばその内部でそれぞれ水が溶媒であるか、または窒素もしくは他の気体が発泡剤である、凍結乾燥および気体起泡剤を含む。または、泡は絹フィブロイン溶液を顆粒状の塩と接触させることにより作成される。泡の孔サイズは、例えば絹フィブロインの濃度および顆粒状の塩の粒子サイズを調整することによって制御され得る(例えば、塩粒子の好ましい直径は、約50ミクロン〜約1000ミクロンの間である)。この塩は一価または二価であってもよい。好ましい塩は、NaClおよびKClのような一価である。CaCl2のような二価の塩もまた用いられ得る。濃縮絹フィブロイン溶液を塩と接触させることは、無構造の絹のコンフォメーション変化を、溶液に不溶性であるβシート構造へ誘導するのに十分である。泡の形成後、例えば水に浸すことによって過剰の塩が次いで抽出される。結果として得られる多孔性の泡は次いで乾燥され得、かつその泡は、例えば細胞の足場として、生物医学的適用において用いられ得る。例えば、PCT出願PCT/US/04/11199を参照されたい。
【0042】
一つの態様において、泡はマイクロパターン化泡である。マイクロパターン化泡は、例えば参照により本明細書にその開示が組み入れられる、米国特許第6,423,252号に記載される方法を用いて調製され得る。この方法は、濃縮絹溶液をモールドの表面に接触させる段階であって、モールドが少なくとも1つのその表面上に、泡の少なくとも1つの表面上に配置されかつ統合されるよう決定されたマイクロパターンの三次元陰性配置を含む段階、モールドのマイクロパターン化表面と接触する際、溶液を凍結乾燥する段階、それによって凍結乾燥され、マイクロパターン化された泡を提供する段階、および凍結乾燥され、マイクロパターン化された泡をモールドから除去する段階を含む。本方法に従って調製された泡は、少なくとも1つの表面上に、あらかじめ決定され、かつ設計されたマイクロパターンを含み、このパターンは組織修復、内殖、または再生を容易にするのに効果的である。
【0043】
繊維は、例えば湿式紡糸または電気紡糸を用いて生産される。または、濃縮溶液がゲル様粘度を有するため、繊維は溶液から直接引き出され得る。
【0044】
電気紡糸は当技術分野で公知の任意の方法によって実施され得る(例えば、米国特許第6,110,590号を参照されたい)。好ましくは、1.0 mm内径先端を有するスチールキャピラリチューブが、調整可能な電気的絶縁スタンド上に取り付けられる。好ましくは、キャピラリーチューブは、高い電位で維持され、かつ平行プレート幾何構造に取り付けられる。キャピラリーチューブは、好ましくは絹溶液で充填されたシリンジに接続される。好ましくは、一定の体積流速が、滴下することなく溶液をチューブの先端部で維持するようセットされた、シリンジポンプを用いて維持される。電位、溶液流速、およびキャピラリー先端と収集スクリーンの間の距離が、安定した射出を得るよう調整される。乾燥または湿性繊維が、キャピラリー先端と収集スクリーンの間の距離を変化することによって収集される。
【0045】
絹繊維の収集に適した収集スクリーンは、ワイヤーメッシュ、重合体メッシュ、またはウォーターバスであり得る。またはおよび好ましくは、収集スクリーンはアルミホイルである。アルミホイルは、テフロン液でコーティングされ、絹繊維をはがすのをより容易にし得る。当業者は、それが電場を介して進行するにつれて、繊維溶液を収集する他の方法を容易に選択することが出来るであろう。キャピラリー先端とアルミホイル対極の電位差は、好ましくは、約12 kVまで徐々に増加するが、当業者は適した射出流を達成するよう電位を調整することが可能であるはずである。
【0046】
本発明はさらに、本発明の薬学的製剤を含む、繊維の非網状ネットワークを提供する。繊維はまた、糸および例えば網状または編まれた布を含む布へと形成され得る。
【0047】
本発明のフィブロイン絹製品はまた、生物医学的デバイス(例えばステント)、および絹またはその繊維の断片を含む他の繊維を含む、様々な形状の製品上でコーティングされ得る。
【0048】
絹ヒドロゲルは、当業者に公知の方法によって調製され得る。例えばPCT出願PCT/US/04/11199を参照されたい。濃縮絹フィブロイン溶液のゾルゲル転移は、絹フィブロイン濃度、温度、塩濃度(例えばCaCl2、NaCl、およびKC1)、pH、親水性ポリマーなどの変化によって改変され得る。ゾルゲル転移の前に、濃縮水性絹溶液はモールドまたはフォームに配置され得る。結果として得られるヒドロゲルは次いで、例えばレーザーを用いて任意の形状に切断され得る。
【0049】
本明細書に記載される絹フィブロイン製品は、製造後さらに改変され得る。例えば、骨格は、細胞の望ましい集団に対する受容体または化学誘引物質として機能する生物活性物質のような添加剤でコーティングされ得る。コーティングは、吸着または化学結合を介して適用される。
【0050】
本発明の使用に適した添加剤は、生物学的または薬学的活性化合物を含む。生物学的活性化合物の例としては以下のものが含まれるが、これらに限定されることはない:細胞接着に影響を及ぼすことが公知である公知のインテグリン結合ドメイン、例えば「RGD」インテグリン結合配列またはその変異を含む、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、プロテオグリカン、またはペプチドのような細胞接着性媒介物質(Schaffner P & Dard 2003 Cell Mol Life Sci. Jan;60(1):119-32;Hersel U. et al. 2003 Biomaterials. Nov;24(24):4385-415);生物活性リガンド;および細胞もしくは組織の内部成長(ingrowth)の特定の変化を亢進または除外する物質。増殖または分化を亢進する添加剤の他の例は、骨形態形成タンパク質(BMP)のような骨誘導性物質;サイトカイン、上皮細胞増殖因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン様増殖因子(IGF-IおよびII)、TGF-βのような増殖因子などを含むが、これらに限定されない。本明細書で用いられるように、用語、添加剤はまた、抗体、DNA、RNA、改変RNA/タンパク質複合体、グリコーゲンまたは他の糖、およびアルコールを包含する。
【0051】
生体適合性ポリマーは絹製品に添加され、本発明の工程において複合体マトリックスを生成し得る。
【0052】
本発明において有用な生体適合性ポリマーは、例えばポリエチレンオキシド(PEO)(米国特許第6,302,848号)、ポリエチレングリコール(PEG)(米国特許第6,395,734号)、コラーゲン(米国特許第6,127,143号)、フィブロネクチン(米国特許第5,263,992号)、ケラチン(米国特許第6,379,690号)、ポリアスパラギン酸(米国特許第5,015,476号)、ポリリジン(米国特許第4,806,355号)、アルギナート(米国特許第6,372,244号)、キトサン(米国特許第6,310,188号)、キチン(米国特許第5,093,489号)、ヒアルロン酸(米国特許第387,413号)、ペクチン(米国特許第6,325,810号)、ポリカプロラクトン(米国特許第6,337,198号)、ポリ乳酸(米国特許第6,267,776号)、ポリグリコール酸(米国特許第5,576,881号)、ポリ水酸化アルカノエート(米国特許第6,245,537号)、デキストラン(米国特許第5,902,800号)、およびポリ無水物(米国特許第5,270,419号)を含む。2つまたはそれ以上の生体適合性ポリマーを使用してもよい。
【0053】
治療剤の制御放出のための薬学的製剤を生産する方法における次の段階として、絹フィブロイン製品のコンフォメーションが改変される。誘導されたコンフォメーション変化は、製品の結晶化度を改変し、したがって治療剤の絹フィブロイン製品からの放出速度を改変する。コンフォメーション変化は、フィブロイン製品をメタノールで処理することによって誘導され得る。メタノール濃度は、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、または少なくとも100%である。
【0054】
または、フィブロイン製品のコンフォメーションの改変は、製品を剪断応力で処理することによって誘導され得る。剪断応力は、例えば製品を針に通すことによって加えられ得る。コンフォメーション変化を誘導する他の方法は、製品を電場、塩と接触させる段階、または圧力を加える段階を含む。
【0055】
本発明の絹に基づく薬物送達システムは、絹フィブロイン製品の複数(すなわち層)を含み得、ここで少なくとも1つの絹フィブロイン製品は、少なくとも1つの他の絹フィブロイン製品とは異なる誘導されたコンフォメーション変化を有し得る。例えば、各層はフィブロインの異なる溶液(濃度、薬物)を有し得、かつ異なるコンフォメーション変化を有し得る。これらは様々な配列と組み合わされ、「タマネギ様」構造を作製し得、それによって送達ビヒクルは、結晶化度、厚さ、薬物の濃度、薬物の型などに応じて、各層の放出速度の変化を提供するであろう。本アプローチは、放出プロフィールおよび薬物併用において複数の制御点を作製するよう製剤化するための、スケールアップ、および組み合わせまたは関連したアプローチに非常に適している。
【0056】
さらに、本発明の薬学的製剤からの治療剤の放出は、絹フィブロイン製品の厚さを介して制御され得る。図3に示すように、製品の厚さを増加すると、最初の突発および最初の100時間以内に放出される薬物の量は減少した。しかしながら、経時的な薬物の徐放性は、フィルム数の増加に伴い有意に高くなった。
【0057】
薬物送達複合体もまた包含される。そのような構造のファミリーは、上記のように調製され、次いで様々な量でフィブロインヒドロゲルに分散される。これらの複合体システムは次いで、例えば上記の「タマネギ様」ビヒクルのような送達の様々な様式で用いられる。
【0058】
本発明を用いて生産される材料、例えばヒドロゲル、繊維、フィルム、泡、またはメッシュは、放出制御システムを含む薬物(例えば小分子、タンパク質、または核酸)送達デバイスのような様々な医学的適用に用いられ得る。
【0059】
放出制御は経時的に、放出制御カイネティクスにより投与されるべき用量を可能にする。いくつかの場合、治療剤の送達は治療が必要な部位に、例えば数週間にわたり継続される。例えば数日もしくは数週間、またはより長期にわたる、経時的な制御放出は、最適な処置を得るための、治療剤の継続的な送達を可能にする。制御送達ビヒクルは、それが例えばプロテアーゼによる体液および組織におけるインビボでの分解から、治療剤を保護するため、有利である。
【0060】
薬学的製剤からの制御放出は、例えば約12または24時間より長く、経時的に起こるよう設計され得る。放出の時間は、例えば約12〜24時間;約12〜42時間;または例えば約12〜72時間の期間にわたり起こるように選択され得る。他の態様において、放出は例えば約2〜90日程度、例えば3〜60日で起こり得る。一つの態様において、治療剤は約7〜21日または約3〜10日の期間にわたり、局所的に送達される。他の場合、治療剤は1、2、3週間、またはそれ以上にわたり、制御された用量で投与される。制御放出時間は処置された状態に基づいて選択され得る。例えば、より長い時間は、創傷治癒により効果的であり得、一方より短い送達時間は、いくつかの心血管適用により有用であり得る。
【0061】
インビボにおけるフィブロイド製品からの治療剤の制御放出は、例えば約1 ng〜1 mg/日、例えば約50 ng〜500 pg/日、または一つの態様において、約100 ng/日の量で起こり得る。治療的適用に応じて、例えば、10 ng〜1 mgの治療剤、または他の態様において、約1 μg〜500 μg、もしくは例えば約10 μg〜100 μgを含む、治療剤および担体を含む送達システムが製剤化され得る。
【0062】
絹に基づく薬物送達ビヒクルは、局所的、経口、非経口(静脈内、腹腔内、筋肉内、および皮下注射、ならびに鼻腔内または吸入投与を含む)、および移植を含む当業者に公知の様々な経路で投与され得る。送達は、全身性、部位的、または局所的であり得る。さらに、送達は、例えばCNS送達に対するくも膜下腔内であり得る。例えば、創傷の処置のための薬学的製剤の投与は、経腸的もしくは非経口経路による局所適用、全身性投与、または局所的もしくは部位的注射、または移植によって行われ得る。絹に基づくビヒクルは、当技術分野において、例えばその開示が参照により本明細書に組み込まれる、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」、Mack Publishing Company, Pennsylvania, 1995に記載されるように、投与の異なる経路に対して適切な形状に製剤化され得る。
【0063】
制御放出ビヒクルは、希釈剤、溶剤、緩衝液、可溶化剤、懸濁剤、粘性制御剤、結合剤、潤滑剤、界面活性剤、保存剤、および安定剤のような、当技術分野で利用可能な賦形剤を含み得る。製剤は、増量剤、キレート化剤、および酸化防止剤を含み得る。非経口製剤が用いられる場合、製剤はさらにもしくはまたは、糖、アミノ酸、または電解質を含み得る。
【0064】
賦形剤は、例えばトレハロース、マンニトール、およびポリエチレングリコールのような、約70,000 kD以下の分子量のポリオールを含む。例えば、その開示が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,589,167号を参照されたい。例示的な界面活性剤は、Tweeng界面活性剤のような非イオン性界面活性剤、ポリソルベート(polysorbate)20または80などのようなポリソルベート、およびポロキサマー(poloxamer)184または188のようなポロキサマー、Pluronic(r)ポリオール、および他のエチレン/ポリプロピレンブロックポリマーなどを含む。緩衝液は、Tris、クエン酸、コハク酸、アセテート、またはヒスチジン緩衝液を含む。保存剤は、フェノール、ベンジルアルコール、メタクレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム 、および塩化ベンゼトニウムを含む。他の添加剤は、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、およびゼラチンを含む。安定化剤は、ヘパリン、ペントサンポリスルフェート、および他のヘパリノイド、ならびにマグネシウムおよび亜鉛のような二価陽イオンを含む。
【0065】
本発明の薬学的製剤は、放射線に基づく滅菌法(すなわちγ線)、化学物質に基づく滅菌法(エチレンオキシド)、高圧蒸気殺菌法、または他の適切な手法のような従来の滅菌工程を用いて滅菌され得る。好ましくは、滅菌工程は、52〜55℃の間の温度で、8時間またはそれ以下の時間、エチレンオキシドによって行われるであろう。滅菌後、製剤は、出荷のための適切な殺菌耐湿潤性パッケージ中に包装され得る。
【0066】
特に定める場合を除き、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本発明の実施または検討のために、本明細書に記載したものと同様または同等の方法および材料を用いることができるが、好ましい方法および材料は以下に説明するものである。本明細書において言及した全ての刊行物、特許出願、特許、および他の引用文献は、参照により組み入れられる。さらに、材料、方法、および実施例は、単に説明目的であり、制限する意図はない。矛盾する場合、定義を含む本明細書によって統制される。
【0067】
本発明はさらに、本発明の例示を意図する以下の実施例によって、さらに特徴付けられるであろう。
【実施例】
【0068】
実施例I
材料および方法:絹の調製
絹繭は4等分に切断され、Na2CO3溶液中で1時間、洗浄された。絹は、温水で2回、冷水で20回、洗浄された。絹は、一晩乾燥され、9M LiBrに溶解されて、10%絹フィブロイン溶液となった。溶液は、27,000 gで30分間遠心分離され、上清は、透析カセット(NWCO 3,500)に移され、2日間透析された。絹フィブロイン濃度は、250 mbarおよび45℃での蒸発により5%(水中m/V)に調整された。結果として生じた絹溶液は、150 μl絹フィブロイン溶液対20 μlのFD4溶液の比率で、デキストランに連結したFITCの溶液(4kDaの分子量;FD4;濃度10 mg/ml、Sigma)と混合されるか、または対照群について、FD-4が後で添加された(表1を参照されたい)。さらなる群として、この溶液の部分は、50Hz、2A、10秒間で超音波処理された(Hielscher, UP200H)。170 μlの溶液(FD-4/絹混合物)が、96ウェルプレートの各ウェルへ添加された。対照について、ウェルは、150 μlの絹フィブロイン溶液で満たされた。水を、室温および250mbarで、一晩蒸発させた。20 μlのFD4溶液が、絹フィブロイン溶液のみを入れたウェルへ添加された(後の固体フィルムのインキュベーションに対する、薬物と溶解された絹フィブロインとの混合の効果を分析するために)。さらなるウェルは、絹とインキュベートされなかった(絹フィブロインフィルムそれ自身の可能な蛍光を分析するために)。フィルムは、水、メタノール20%、またはメタノール90%(V/V)のいずれかで、3時間処理された。溶液は、吸引され、薬物放出研究のために300 μl PBSに置き換えられた。全放出媒体は、24時間、48時間、130時間後、新鮮なPBSで置き換えられ、蛍光は、Lumicounter(Packard, 480V, Gain Level, 1, ex. 485nm, em. 530nm)で読み取られた。
【0069】
結果および考察
そのままの絹フィブロインフィルムは蛍光を示さない。MeOH処理無しかまたは20%MeOHでの処理で、放出は、高い最初のバーストおよび24時間後のわずかな時間の放出に特徴付けられるが(群I+0およびI+20)、20%MeOHで処理された場合、より多いFD4が放出された。これは、おそらく、MeOHの存在下におけるFD4の溶解性の低下による。90%MeOHで処理された場合、48時間後および130時間後、有意により多いFD4が放出され、変形的変化を誘導することにより絹ポリマーからの徐放性を得る可能性を実証した(I+90)。群I+0およびI+20での観察と同様に、90%へのMeOH濃度の増加は、結果として、全FD4のより高い封入を生じる。調製されたフィルムのFD4との3時間のインキュベーション(I-90)は、I+0およびI+20と同様に、結果として、高い最初のバーストを生じる。実質的な徐放性の欠如は、おそらく、(アモルファス)絹フィブロインフィルムにおける薬物拡散の妨害による。それゆえに、コンフォメーション変化は、フィルムの表面へ吸収されたFD4に実質的には影響を及ぼさない。本質的には、超音波処理でも処理された群について、同じ結果が得られた。しかしながら、超音波による処理は、非超音波処理群と比較して、薬物放出へ影響を及ぼさない。
【0070】
結論として、薬物(FD4)の徐放性は、コンフォメーション変化が90%MeOHで誘導される場合、絹フィブロインポリマーで得られ得る。超音波処理は、薬物放出に影響を与えない。
【0071】
実施例2
本発明者らは、絹フィブロインに基づいた薬物送達システムを製剤化する可能性を評価した。実験は、水性フィブロイン-薬物溶液から開始し、続いて、水のゆっくりした蒸発が、結果として、懸濁された薬物分子を有する固体フィブロインフィルムを生じた。フィブロインのコンフォメーション変化は、メタノール処理を通して誘導され、結果として結晶化度の増加を生じた。結晶化度は、薬物の放出を支配した。
【0072】
結果および考察
蛍光色素に連結したデキストランは、モデル薬物として選択された。それらは、膨潤ゲル上で薬物分子量の影響の直接的な評価を可能にする。本概要で用いられる用語FD4は、4,000 g/モルの分子量を有するデキストラン(D)に連結したFITC(F)を記載する。第1セットの実験は、水および上昇するメタノール濃度で処理されたフィブロインゲルからのFD4放出を比較した(図2)。
【0073】
図2は、経時的なFD4の放出を示す。最大FD4濃度における差は、異なる濃度のメタノール溶液または水における薬物の異なる溶解度が原因である。しかしながら、放出パターンは異なる。最大50%のメタノール濃度による処理は結果として、その後の時点で放出される微量のFD4を伴い、最初の12時間以内に高い突発放出をもたらす。対照的に、90%または100%メタノール溶液での処理は、結果として、約200時間の徐放性かつより速い放出を生じた。より遅い時点において、時間あたり放出される薬物の量(傾き)は、有意に減少し、観察期間(1,000時間を超える)を通して放出は継続した。剪断応力単独での処理(シリンジ処理、図2)もまた、結晶化度の増加を通してゲル形成を誘導した。
【0074】
用いられる全FD4の30%より多い、高い最初のバーストを制御するために、同一のフィルムが調製され、90%メタノールで処理された(コア)。このコアは、フィブロインの追加の層でコーティングされ、再び、90%メタノール溶液または水で処理された(図3)。
【0075】
図3に示された結果は、放出がコアの周囲のコーティングの厚さにより制御され得ることを示す。フィルムの厚さが増加するにつれて(図3におけるd-b-c)、最初のバーストは低下し、最初の50時間内に放出される薬物の量は、コア(I、図3)と比較して有意に少なく、薬物放出(傾き)は、非コーティング化のものについてよりコーティング化コアについて有意に高かった。特に、2層(c)または3層(b)のフィブロインでコーティングされたコアは、零次カイネティクスに従って、最初の300時間(約12.5日間)、ほぼ直線的放出を有した。コーティングは、メタノール溶液の代わりに水で処理された場合、薬物放出に最少の効果を生じ、コンフォメーション変化を誘導することの重要性を実証した(データ示さず)。
【0076】
これらの発見は、以下の少なくとも2つの結論を可能にする:(i)メタノール溶液で処理される場合の絹フィブロインは、制御された薬物送達システムを作製するために用いられ得る;および(ii)メタノール溶液で処理される絹フィブロインコーティングは、薬物含有コアからの薬物の放出を改変することができる。
【0077】
これは、マイクロスフェアの調製または放出を改変するための錠剤のコーティングを含む多数の適用を可能にする。
【0078】
実施例3
絹フィルムのメタノールへの曝露は、FTIR分析により測定されているように(図7A)、結晶化度における増加を示唆した。この発見は、1540cm-1から1535cm-1へのアミドII結合シフト、β結晶構造における増加に典型的な発見に基づいていた。同様に、追加の肩が、1630cm-1(アミドI)および1265cm-1(アミドIII)においてメタノール処理に応答して現れた。
【0079】
このデータは、X線回折法により確証された(図7Bおよび7C)。フィルム表面の疎水性は、接触角測定により決定されているように、メタノール処理に応答したフィルムの結晶化度変化により有意に影響を及ぼされた(図7Dおよび7E)。メタノール処理されたフィルムについては、時間が経っても接触角の変化は観察されず、水滴への3分間の曝露後に接触角における急速な減少を結果として生じる水処理されたフィルムとは対照的に、これらのフィルムの水不溶性を示した。
【0080】
メタノール処理の前および後の絹フィルムのトポロジーは、原子間力顕微鏡法により評価された(図6)。未処理フィルムとは対照的にメタノールへの曝露は、結果として、より粗い表面(図6Aおよび6B)および球状構造の形成(図6Cおよび6D)を生じた。
【0081】
結論
絹フィルムのメタノール処理は、結果として、結晶化度(βシート)の増加、疎水性の増加、水溶性の減少、および表面トポロジーの変化を生じた。
【0082】
実施例4
異なる分子量を有する蛍光でマークされたデキストランの放出が、メタノール処理の関数として評価された。
【0083】
4 kDaから20 kDaまでのサイズ範囲を有するデキストランの放出は、より大きな分子(40 kDa)の放出が遅延したのに対して、明らかには持続されなかった(図4A)。対照的に、絹フィルムのメタノール処理は、結果として、すべてのデキストランについて、特に10 kDaに等しいかそれを超える分子量について、放出の強い遅延を生じた(図4B)。
【0084】
タンパク質薬物についての薬物送達システムとしての絹フィルムの有効性は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)およびリゾチーム(Lys;図5)を用いて評価され、生物学的効果試験により分析された。天然の絹フィルムからの不連続的放出が、HRPについて観察され、全負荷量の5%の最初のバースト、続いて2日間の遅滞期および3日目から8日目までの連続的放出により特徴付けられた(図5A)。HRP放出は、HRP負荷されたフィルムのメタノールへの曝露後、有意に変化した。最初のバーストは観察されず、HRP放出は、5日目から始まり、その日以降、それは23日目まで連続して放出された(図5A)。天然の絹フィルムからのリゾチーム放出は、HRPと同様であり、約30%の最初のバースト、1日間の遅滞期、および3日目と8日目の間の連続的放出を伴った(図5B)。HRPと対照的に、Lys負荷されかつメタノール処理されたフィルムは、時間が経っても実質的な量を放出しなかった(図5B)。
【0085】
HRPおよびLysの天然のフィルム表面への吸着は、両方のタンパク質について類似したが、Lys負荷フィルムについて、メタノール処理されたフィルムに、見かけ上の、かつ統計学的に有意ではない(p=0.08)差異が観察されたものの、HRP負荷フィルムについては観察されなかった(図5Cおよび5D)。
【0086】
結論
絹フィルムからの薬物放出は、薬物分子量およびメタノールでのフィルム処理の関数であった。生物活性タンパク質の直線的放出を有する徐放性プロフィールが、HRPおよびLysについて観察され、結果として、3日目から8日目までほとんど零次カイネティクスを生じた(水処理されたフィルム)が、一方、実質的により少ないタンパク質薬物活性がメタノール処理において観察された。この活性の減少は、Lysのメタノール感受性と(およびHRPについて、より少ない程度で)相関した。または、結晶性は、薬物負荷フィルムの25℃での飽和Na2SO4溶液の上での24時間の水蒸気処理により誘導され得る(データ示さず)。タンパク質活性(LysまたはHRP)の損失は、予備的知見により確証される仮定から、これらの蒸気条件下では予想されない。
【0087】
(表1)群および処理
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概して、絹に基づく薬物送達システムに関する。特に、本システムは、デバイスから持続性かつ制御可能な速度で治療剤を放出することが可能である。
【0002】
政府支援
本発明はNIHによって支持され、かつ米国の政府がそこへ特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
絹は、この用語が一般的に当技術分野において公知であるように、カイコまたはクモのような生物によって分泌される糸状の繊維産物を意味する。昆虫、すなわち、(i)カイコガ(Bombyx mori)カイコ、および(ii)クモ、典型的にはアメリカジョロウグモ(Nephilia clavipes)の腺から生産される絹は、最も多くの場合研究される材料の形態である;しかしながら、数百から数千もの絹の自然な変種が自然界には存在する。フィブロインは、カイコの2つの絹糸腺によって生産され、かつ分泌される。
【0004】
カイコ絹は、生医学的適用において1,000年以上用いられてきた。カイコのカイコガ種は、絹繊維(「繭糸」として公知)を生産し、およびその繭を構築するために、その繊維を用いる。生産される際、繭糸は、二線維性繊維、またはセリシン(有意な機械的一体性を有する絹フィブロインフィラメント)として公知のゴムのコーティングで取り囲まれる「ブロイン(broin)」を含む。縫合糸を含む、糸または織物を産生するために、絹繊維が収集される場合、複数の繊維は合わせて整列配置され、かつセリシンを部分的に溶解し、次いで再凝固して、セリシンコーティング中に相互に包埋される2つ以上のブロインを有するより大きい絹繊維構造を作製する。
【0005】
フィブロインのような再加工された絹の固有の機械的性質、およびその生体適合性は、絹繊維を、特に生物工学の材料および医学的適用における使用に対して魅力的なものにする。絹は、印象的な機械的性質、生体適合性、および生分解性の理由から、生体材料および組織工学にとって材料選択の重要なセットを提供する(Altman, G. H., et al., Biomaterials 2003, 24, 401-416(非特許文献1);Cappello, J., et al., J. Control. Release 1998, 53, 105-117(非特許文献2);Foo, C. W. P., et al., Adv. Drug Deliver. Rev. 2002, 54, 1131-1143(非特許文献3);Dinerman, A. A., et al., J. Control. Release 2002, 82, 277-287(非特許文献4);Megeed, Z., et al., Adv. Drug Deliver. Rev. 2002, 54, 1075-1091(非特許文献5);Petrini, P., et al., J. Mater. Sci-Mater. M. 2001, 12, 849-853(非特許文献6);Altman, G. H., et al., Biomaterials 2002, 23, 4131-4141(非特許文献7);Panilaitis, B., et al., Biomaterials 2003, 24, 3079-3085(非特許文献8))。例えば、三次元多孔質の絹骨格は、組織工学における使用のために、記載されていた(Meinel et al., Ann Biomed Eng. 2004 Jan;32(1):112-22(非特許文献9);Nazarov, R., et al., Biomacromolecules in press(非特許文献10))。さらに、再生した絹線維性フィルムは、酸素-および薬物-浸透膜、酵素固定のための支持体、および細胞培養のための基質として探索されてきた(Minoura, N., et al., Polymer 1990, 31, 265-269(非特許文献11);Chen, J., et al., Minoura, N., Tanioka, A. 1994, 35, 2853-2856(非特許文献12);Tsukada, M., et al., Polym. Sci. Part B Polym. Physics 1994, 32, 961-968(非特許文献13))。
【0006】
徐放性の望ましさは、製薬分野において長く認識されてきた。徐放性薬物送達システムは、従来の剤形を上回る多くの利点を提供することができる。一般に、徐放性製剤は、従来の迅速な放出剤形と比較して、治療的または予防的反応のより長い期間を提供する。例えば、疼痛の処置において、徐放性製剤は、例えば12〜24時間の期間にわたる比較的一定の鎮痛薬放出速度を維持するのに有用であり、それによって薬物の血清濃度は治療的に有効なレベルで、薬物の従来の剤形によって可能な持続期間より長く残存する。さらに、標準剤形は、典型的に、結果として薬物の不必要に高い血清レベルをもたらし得る最初の高い薬物放出速度を示すが、徐放性製剤は、薬物の血清レベルを、治療的に有効な閾値でまたはそれより僅かに上で維持する助けとなり得る。薬物の血清濃度におけるそのような低い変動はまた、過剰な投薬を阻止するのを助け得る。
【0007】
さらに、徐放性組成物は、送達のカイネティクスを最適化することによって、患者が頻繁でない投与で用量を間違える可能性がより低いように、患者の服薬遵守を高め、特に一日一回の薬剤投与計画が可能な場合;より頻繁でない投与はまた、患者の簡便性を増大する。徐放性製剤は、全体的な保健費用をもまた減少させ得る。徐放性送達システムの原価が、従来の送達システムと関連する費用より高くなり得るにも関わらず、時間のかかる延長された処置の平均費用は、より頻繁でない投薬、増大した治療的利点、減少した副作用、ならびに薬物を調剤および投与し、かつ患者服薬遵守をモニタリングするのに必要とする時間の減少により、低くなり得る。
【0008】
多くのポリマーに基づくシステムが、徐放性の目的を達成するために提案された。これらのシステムは一般に、放出を制御する手段として、ポリマーの分解またはポリマーを介する拡散のいずれかに依存した。
【0009】
徐放性製剤を開発するポリマーに基づく試みは、活性成分を含む様々な生物分解性および非生物分解性ポリマー(例えばポリ(ラクチド-コ-グリコリド))微小粒子の使用を含み(例えばWise et al., Contracgption, 1:227-234 (1973)(非特許文献14);およびHutchinson et al., Biochem. Soc. Trans., 13:520-523 (1985)(非特許文献15)を参照されたい)、かつ活性薬剤、例えばタンパク質を、重合体マイクロスフェアに組み込むことができる様々な技術が公知である(例えば米国特許第4,675,189号(特許文献1)、およびその引用文献を参照されたい)。さらに、様々なマイクロカプセル、微小粒子、およびより大きい徐放性インプラントが、製剤を延長期間にわたり患者に送達するために用いられた。例えばポリ-DL-乳酸、ポリグリコール酸、ポリラクチドのようなポリエステル、および他のコポリマーは、例えば、Kent et al.,米国特許第4,675,189号(特許文献1)、およびHutchinson et al.,米国特許第4,767,628号(特許文献2)に記載されているように、プロゲステロンおよび黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)類似体のような生物学的活性分子を放出するために用いられてきた。
【0010】
残念なことに、現在のポリマーに基づく持続性送達システムの成功は限定されている。これは、大部分において、調製の間の有機溶剤の使用の必要性のためである。インビボで十分に許容される溶剤、すなわち酢酸エチルでさえ、免疫反応またはアナフィラキシー性ショックを引き起こし得る。さらに、全ての有機溶剤は、揮発性でかつ高価な製造工程を必要とする。
【0011】
従って、生体適合性、生物分解性、徐放性薬物送達システムの必要がある。そのような産物は、引張強度、弾性、成形性などの望ましい機械的性質を有し、制御された再吸収を提供し、かつ生理的に許容可能であるべきである。さらに、そのような産物は、様々なインビボの適応症に対して投与の容易性を可能にし、かつ最良のシナリオにおいて安価に製造されるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,675,189号
【特許文献2】米国特許第4,767,628号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Altman, G. H., et al., Biomaterials 2003, 24, 401-416
【非特許文献2】Cappello, J., et al., J. Control. Release 1998, 53, 105-117
【非特許文献3】Foo, C. W. P., et al., Adv. Drug Deliver. Rev. 2002, 54, 1131-1143
【非特許文献4】Dinerman, A. A., et al., J. Control. Release 2002, 82, 277-287
【非特許文献5】Megeed, Z., et al., Adv. Drug Deliver. Rev. 2002, 54, 1075-1091
【非特許文献6】Petrini, P., et al., J. Mater. Sci-Mater. M. 2001, 12, 849-853
【非特許文献7】Altman, G. H., et al., Biomaterials 2002, 23, 4131-4141
【非特許文献8】Panilaitis, B., et al., Biomaterials 2003, 24, 3079-3085
【非特許文献9】Meinel et al., Ann Biomed Eng. 2004 Jan;32(1):112-22
【非特許文献10】Nazarov, R., et al., Biomacromolecules in press
【非特許文献11】Minoura, N., et al., Polymer 1990, 31, 265-269
【非特許文献12】Chen, J., et al., Minoura, N., Tanioka, A. 1994, 35, 2853-2856
【非特許文献13】Tsukada, M., et al., Polym. Sci. Part B Polym. Physics 1994, 32, 961-968
【非特許文献14】Wise et al., Contracgption, 1:227-234 (1973)
【非特許文献15】Hutchinson et al., Biochem. Soc. Trans., 13:520-523 (1985)
【発明の概要】
【0014】
本発明は、絹に基づく新規な徐放性送達システムを提供する。本発明はさらに、そのようなデバイスを生産するための方法を提供する。
【0015】
一つの態様において、治療剤の放出制御のための薬学的製剤を生産する方法が提供される。方法は、絹フィブロイン溶液と治療剤を接触させる段階を含む。治療剤は、例えば、タンパク質、ペプチド、および小分子を含む。好ましい態様において、水性の絹フィブロイン溶液が利用される。
【0016】
次に、治療剤を含む絹フィブロイン製品が形成される。絹フィブロイン製品は、糸、繊維、フィルム、泡、メッシュ、ヒドロゲル、三次元骨格、錠剤充填材料、錠剤コーティング、またはマイクロスフェアであり得る。
【0017】
製品のコンフォメーションは次いで、その結晶化度または液体結晶化度を増大するために改変され、したがって絹フィブロイン製品からの治療剤の放出制御を提供する。
【0018】
本発明の一つの態様において、製品のコンフォメーションは、フィブロイン製品をメタノールと接触させることによって改変される。メタノール濃度は、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、または少なくとも100%である。
【0019】
代替の態様において、フィブロイン製品のコンフォメーションの改変は、製品を剪断(sheer)応力で処理することによって誘導される。剪断応力は、製品を針に通すことによって加えられ得る。
【0020】
フィブロイン製品のコンフォメーションはまた、製品を電場と接触させることにより、圧力を加えることにより、または製品を塩と接触させることによって改変され得る。
【0021】
好ましくは、治療剤は、約10キロダルトン(kDa)に等しいかまたはそれ以上である。より好ましくは、治療剤は約20kDaより大きい。
【0022】
さらなる態様において、複数の絹フィブロイン製品(すなわち層)を有する薬学的製剤が提供される。この態様において、少なくとも一つの層は、少なくとも一つの他の層と異なる誘導されたコンフォメーション変化を有する。絹フィブロイン製品層は、異なる治療剤をそれぞれ含み得、各層が同じかまたは異なる誘導されたコンフォメーション変化を有する。
【0023】
薬学的製剤は生物分解性であり、かつデバイスを特定の細胞または組織型に特異的に標的化するターゲティング薬剤を含み得る。ターゲティング薬剤は、例えば、糖、ペプチド、または脂肪酸であり得る。
【0024】
一つの態様において、絹フィブロイン溶液は、例えばカイコガ由来のような、溶解されたカイコ絹を含む溶液から得られる。または、絹フィブロイン溶液は、例えばアメリカジョロウグモ由来のような、溶解されたクモ絹を含む溶液から得られる。絹フィブロイン溶液はまた、遺伝的に操作された絹を含む溶液から得られ得る。一つの態様において、遺伝的に操作された絹は治療剤を含む。これは、サイトカイン、酵素、または多くのホルモンまたはペプチドに基づく薬物、抗菌物質、および関連する基質を有する融合タンパク質であり得る。
【0025】
上記の方法によって生産される治療剤の放出制御のための薬学的製剤もまた、本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本明細書に組み入れられ、その一部を成す添付の図面は、本発明の態様を例示し、記載と合わせて本発明の目的、利点、および原理を説明するのに役立つ。
【図1】24、48、および130時間後のFD4の薬物放出を示す。
【図2】薬物放出に対するメタノール濃度の影響を示す。最大50%のメタノール濃度による処理は結果として、その後の時点で放出される微量のFD4を伴い、最初の12時間以内に高い突発放出をもたらす。対照的に、90%または100%メタノール溶液による処理は、結果として約200時間にわたる徐放性かつより速い放出をもたらす。
【図3】メタノールの異なる濃度によって処理される絹フィブロイン溶液によるコアのコーティングを示す;(I)コーティングなしのコア;(d)90%メタノール溶液によって処理されたコーティングを有するコア;(c)フィブロインの二つの層を有するコア;および(b)フィブロインの3つの層を有するコア。結果は、治療剤の放出がコアの周囲のコーティングの厚さを介して制御され得ることを示す。
【図4】異なる分子量を有し、かつH2O(4A)またはメタノール(4B)によって処理される絹フィルム由来のFITC-デキストランの放出を示す。
【図5A】それぞれメタノールまたはH2Oによって処理される、絹フィルム由来の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP;5A、5C)およびリゾチーム(Lys、5B、5D)の累積的放出ならびに吸着を示す。
【図5B】それぞれメタノールまたはH2Oによって処理される、絹フィルム由来の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP;5A、5C)およびリゾチーム(Lys、5B、5D)の累積的放出ならびに吸着を示す。
【図5C】それぞれメタノールまたはH2Oによって処理される、絹フィルム由来の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP;5A、5C)およびリゾチーム(Lys、5B、5D)の累積的放出ならびに吸着を示す。
【図5D】それぞれメタノールまたはH2Oによって処理される、絹フィルム由来の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP;5A、5C)およびリゾチーム(Lys、5B、5D)の累積的放出ならびに吸着を示す。
【図6】未変性の絹フィルム(6A、6C)またはメタノールによって処理されるフィルム(6B、6D)のAFM画像を示す。バーの長さ2,5μm(6A、6B)および0.5μm(6B、6D)。
【図7A】未変性の絹フィルムまたはメタノールによって処理されるフィルムの物理化学的性質を示す。(7A)メタノール処理(7B)および未処理(7C)フィルムのFTIR解析ならびにX線ディフラクトグラム(diffractogramm)。メタノール処理(7D)および未処理(7E)フィルム上の経時的な水滴の接触角測定。
【図7B】未変性の絹フィルムまたはメタノールによって処理されるフィルムの物理化学的性質を示す。(7A)メタノール処理(7B)および未処理(7C)フィルムのFTIR解析ならびにX線ディフラクトグラム(diffractogramm)。メタノール処理(7D)および未処理(7E)フィルム上の経時的な水滴の接触角測定。
【図7C】未変性の絹フィルムまたはメタノールによって処理されるフィルムの物理化学的性質を示す。(7A)メタノール処理(7B)および未処理(7C)フィルムのFTIR解析ならびにX線ディフラクトグラム(diffractogramm)。メタノール処理(7D)および未処理(7E)フィルム上の経時的な水滴の接触角測定。
【図7D】未変性の絹フィルムまたはメタノールによって処理されるフィルムの物理化学的性質を示す。(7A)メタノール処理(7B)および未処理(7C)フィルムのFTIR解析ならびにX線ディフラクトグラム(diffractogramm)。メタノール処理(7D)および未処理(7E)フィルム上の経時的な水滴の接触角測定。
【図7E】未変性の絹フィルムまたはメタノールによって処理されるフィルムの物理化学的性質を示す。(7A)メタノール処理(7B)および未処理(7C)フィルムのFTIR解析ならびにX線ディフラクトグラム(diffractogramm)。メタノール処理(7D)および未処理(7E)フィルム上の経時的な水滴の接触角測定。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
絹に基づく薬物送達システムの調製方法が記載される。特に、薬物送達システムは、インビボでの治療剤の制御放出および徐放性を可能にする。一般に、絹フィブロイン溶液は、絹フィブロイン製品を形成するために治療剤と併用される。製品は次いで、そのコンフォメーションを改変するような方法で処理される。コンフォメーションの変化はその結晶化度を増加し、したがって製剤からの治療剤の放出を制御する。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「フィブロイン」は、カイコフィブロイン、および昆虫またはクモ絹タンパク質を含む(Lucas et al., Adv. Proteins Chem 13:107-242 (1958))。好ましくは、フィブロインは、溶解されたカイコ絹またはクモ絹を含む溶液から得られる。カイコ絹タンパク質は、例えば、カイコガから得られ、およびクモ絹はアメリカジョロウグモから得られる。選択的に、本発明の使用に適した絹タンパク質は、細菌、酵母、哺乳動物細胞、トランスジェニック動物またはトランスジェニック植物由来のような遺伝的に操作された絹を含む溶液から得られ得る。例えば、国際公開公報第97/08315号および米国特許第5,245,012号を参照されたい。
【0029】
絹フィブロイン溶液は、当業者に公知の任意の従来の方法によって調製され得る。例えば、カイコガ繭は、約30分間水溶液中で沸騰される。好ましくは、水溶液はおよそ0.02 M Na2CO3である。繭は、例えば水でリンスされ、セリシンタンパク質が抽出され、かつ抽出された絹は塩水溶液に溶解される。この目的に有用な塩は、臭化リチウム、チオシアン酸リチウム、硝酸カルシウム、または絹を可溶化することが可能な他の化学物質を含む。好ましくは、抽出された絹は、9〜12 M LiBr溶液に溶解される。塩は、その結果として、例えば透析法を用いて除去される。
【0030】
必要に応じて、溶液は次いで、例えば、吸湿性のポリマー、例えばPEG、ポリエチレンオキシド、アミロース、またはセリシンに対して透析法を用いて濃縮され得る。
【0031】
好ましくは、PEGは8,000〜10,000 g/molの分子量であり、かつ25〜50%の濃度を有する。好ましくは、slide-a-lyzer透析カセット(Pierce, MW CO 3500)が用いられる。しかしながら、任意の透析システムが用いられてもよい。透析は10〜30%の水性絹溶液の最終濃度をもたらすのに十分な時間である。ほとんどの場合、2〜12時間の透析で十分である。例えば、PCT出願PCT/US/04/11199号を参照されたい。
【0032】
または、絹フィブロイン溶液は有機溶媒を用いて生産され得る。そのような方法は、例えばLi, M., et al., J. Appl. Poly Sci. 2001, 79, 2192-2199;Min, S., et al. Sen'I Gakkaishi 1997, 54, 85-92;Nazarov, R. et al., Biomacromolecules 2004 May-Jun;5(3):718-26に記載される。
【0033】
本発明に従って、絹フィブロイン溶液は少なくとも1つの治療剤を含む。絹フィブロイン溶液は、フィブロイン製品、例えば繊維、メッシュ、骨格を形成する前に、治療剤と接触させられ、またはその形成後に製品に負荷される。形成後に負荷するために、絹集合体は治療剤の親水/疎水分配(例えばJin et al. , Nature.2003 Aug 28;424(6952):1057-61を参照されたい)、および相分離の吸着を制御するために用いられる。材料はまた、絹中に治療剤を封入することによって、βシートへの移行を誘導することによって(例えばメタノール、剪断、塩類、電気)、および次の治療剤を封入している各層を有するものの上に層を添加することによって負荷され得る。この多層アプローチは、各層における選択的負荷を伴うタマネギ様構造を可能にするであろう。
【0034】
本発明の製剤と併用して用いられ得る様々な異なる治療剤は膨大にあり、かつ小分子、タンパク質、ペプチド、および核酸を含む。一般的に、本発明を介して投与され得る治療剤は、非制限的に以下を含む:抗生剤および抗ウイルス剤のような抗感染薬;化学療法剤(すなわち抗癌剤);抗拒絶反応剤;鎮痛剤および鎮痛剤併用;抗炎症剤;ステロイドのようなホルモン;増殖因子(骨形態形成タンパク質(すなわち、BMP1〜7)、骨形態形成様タンパク質(すなわち、GFD-5、GFD-7、およびGFD-8)、上皮細胞増殖因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子(すなわちFGF 1〜9)、血小板由来成長因子(PDGF)、インシュリン様成長因子(IGF-IおよびIGF-II)、形質転換成長因子(すなわちTGF-β-III)、血管内皮増殖因子(VEGF));エンドスタチンのような抗血管新生タンパク質、および他の天然由来または遺伝的に操作されたタンパク質、多糖、糖タンパク質、またはリポタンパク質。増殖因子は、参照として本明細書に組み入れられ、R. G. Landes Companyによって出版される、The Cellular and Molecular Basis of Bone Formation and Repair by Vicki Rosen and R. Scott Thiesに記載される。
【0035】
さらに、本発明の絹に基づくデバイスは、薬理学的材料、ビタミン、鎮静剤、ステロイド、催眠剤、抗生剤、化学療法剤、プロスタグランジン、および放射性薬剤のような任意の型の分子化合物を送達するのに用いられ得る。本発明の送達システムは、上記の材料および以下を非限定的に含むその他の材料を送達するのに適している:タンパク質、ペプチド、ヌクレオチド、炭水化物、単糖、細胞、遺伝子、抗血栓剤、抗代謝剤、増殖因子阻害剤、成長促進剤、抗凝血剤、有糸分裂阻害剤、線維素溶解薬、抗炎症性ステロイド、およびモノクローナル抗体。
【0036】
さらに、本発明の薬学的製剤はターゲティングリガンドもまた有し得る。ターゲティングリガンドは、本発明の製剤による薬学的製剤のインビボおよび/もしくはインビトロにおける、組織ならびに/または受容体への標的化を促進し得る任意の材料または基質を指す。ターゲティングリガンドは、合成、半合成、または天然由来であり得る。ターゲティングリガンドとして作用し得る材料または基質は、例えば、抗体、抗体断片、ホルモン、ホルモン類似体、糖タンパク質、およびレクチンを含むタンパク質、ペプチド、ポリペプチド、アミノ酸、糖、単糖および多糖を含む糖類、炭水化物、ビタミン、ステロイド、ステロイド類似体、ホルモン、コファクター、ならびにヌクレオシド、ヌクレオチド、ヌクレオチド酸構築物、ペプチド核酸(PNA)、アプタマー、およびポリヌクレオチドを含む遺伝物質を含む。本発明における他のターゲティングリガンドは、例えば、サイトカイニン、インテグリン、カドヘリン、免疫グロブリン、およびセレクチンのような細胞接着分子(CAM)を含む。本発明の薬学的製剤はターゲティングリガンド前駆体もまた包含し得る。ターゲティングリガンドの前駆体は、ターゲティングリガンドに変換され得る任意の材料または基質を指す。そのような変換は、例えば前駆体をターゲティングリガンドに固定することを含み得る。例示的なターゲティング前駆体部分は、マレイミド基、オルトピリジルジスルフィドのようなジスルフィド基、ビニルスルフォン基、アジド基、および[agr]-ヨードアセチル基を含む。
【0037】
生物活性材料を含む絹製剤は、1つまたは複数の治療剤を、製品を作成するのに用いられる絹溶液と混合することによって製剤化され得る。または、治療剤は、形成前の絹フィブロイン製品において、好ましくは薬学的に許容される担体でコーティングされ得る。絹材料を溶解しない任意の薬学的担体が用いられ得る。治療剤は、液体、細かく分割された固体、または任意の他の適切な物理的形態として存在し得る。
【0038】
少なくとも1つの治療剤を含む上記の絹フィブロイン溶液は次に、糸、繊維、フィルム、メッシュ、ヒドロゲル、三次元骨格、錠剤充填材料、錠剤コーティング、またはマイクロスフェアに加工される。そのように生成する方法は当業者に周知である。例えば、参照により本明細書に組み入れられるAltman, et al., Biomaterials 24:401, 2003;PCT刊行物、国際公開公報第2004/000915号および国際公開公報2004/001103号;およびPCT出願番号PCT/US/04/11199およびPCT/US04/00255を参照されたい。
【0039】
絹フィルムは、濃縮水性絹フィブロイン溶液を調製し、かつ溶液を鋳造することによって生産され得る。例えば、PCT出願PCT/US/04/11199を参照されたい。フィルムは、アルコールの非存在下で、水または水蒸気と接触され得る。フィルムは次いで、単軸方向もしくは二軸方向に引っ張られるか、または伸展され得る。絹混合フィルムの伸展は、フィルムの分子アライメントを誘導し、かつそれによってフィルムの機械的特性を改善する。
【0040】
望ましい場合、フィルムは、容量で約50〜約99.99パート水性絹タンパク質溶液、および容量で約0.01〜約50パート生体適合性ポリマー、例えばポリエチレンオキシド(PEO)を含む。好ましくは、得られる絹混合フィルムは厚さ約60〜約240 μmであるが、しかしながらより厚い試料は、より大きい容量を用いるか、または複数の層を蓄積することによって、容易に形成され得る。
【0041】
泡は当技術分野で公知の方法から作成され得、例えばその内部でそれぞれ水が溶媒であるか、または窒素もしくは他の気体が発泡剤である、凍結乾燥および気体起泡剤を含む。または、泡は絹フィブロイン溶液を顆粒状の塩と接触させることにより作成される。泡の孔サイズは、例えば絹フィブロインの濃度および顆粒状の塩の粒子サイズを調整することによって制御され得る(例えば、塩粒子の好ましい直径は、約50ミクロン〜約1000ミクロンの間である)。この塩は一価または二価であってもよい。好ましい塩は、NaClおよびKClのような一価である。CaCl2のような二価の塩もまた用いられ得る。濃縮絹フィブロイン溶液を塩と接触させることは、無構造の絹のコンフォメーション変化を、溶液に不溶性であるβシート構造へ誘導するのに十分である。泡の形成後、例えば水に浸すことによって過剰の塩が次いで抽出される。結果として得られる多孔性の泡は次いで乾燥され得、かつその泡は、例えば細胞の足場として、生物医学的適用において用いられ得る。例えば、PCT出願PCT/US/04/11199を参照されたい。
【0042】
一つの態様において、泡はマイクロパターン化泡である。マイクロパターン化泡は、例えば参照により本明細書にその開示が組み入れられる、米国特許第6,423,252号に記載される方法を用いて調製され得る。この方法は、濃縮絹溶液をモールドの表面に接触させる段階であって、モールドが少なくとも1つのその表面上に、泡の少なくとも1つの表面上に配置されかつ統合されるよう決定されたマイクロパターンの三次元陰性配置を含む段階、モールドのマイクロパターン化表面と接触する際、溶液を凍結乾燥する段階、それによって凍結乾燥され、マイクロパターン化された泡を提供する段階、および凍結乾燥され、マイクロパターン化された泡をモールドから除去する段階を含む。本方法に従って調製された泡は、少なくとも1つの表面上に、あらかじめ決定され、かつ設計されたマイクロパターンを含み、このパターンは組織修復、内殖、または再生を容易にするのに効果的である。
【0043】
繊維は、例えば湿式紡糸または電気紡糸を用いて生産される。または、濃縮溶液がゲル様粘度を有するため、繊維は溶液から直接引き出され得る。
【0044】
電気紡糸は当技術分野で公知の任意の方法によって実施され得る(例えば、米国特許第6,110,590号を参照されたい)。好ましくは、1.0 mm内径先端を有するスチールキャピラリチューブが、調整可能な電気的絶縁スタンド上に取り付けられる。好ましくは、キャピラリーチューブは、高い電位で維持され、かつ平行プレート幾何構造に取り付けられる。キャピラリーチューブは、好ましくは絹溶液で充填されたシリンジに接続される。好ましくは、一定の体積流速が、滴下することなく溶液をチューブの先端部で維持するようセットされた、シリンジポンプを用いて維持される。電位、溶液流速、およびキャピラリー先端と収集スクリーンの間の距離が、安定した射出を得るよう調整される。乾燥または湿性繊維が、キャピラリー先端と収集スクリーンの間の距離を変化することによって収集される。
【0045】
絹繊維の収集に適した収集スクリーンは、ワイヤーメッシュ、重合体メッシュ、またはウォーターバスであり得る。またはおよび好ましくは、収集スクリーンはアルミホイルである。アルミホイルは、テフロン液でコーティングされ、絹繊維をはがすのをより容易にし得る。当業者は、それが電場を介して進行するにつれて、繊維溶液を収集する他の方法を容易に選択することが出来るであろう。キャピラリー先端とアルミホイル対極の電位差は、好ましくは、約12 kVまで徐々に増加するが、当業者は適した射出流を達成するよう電位を調整することが可能であるはずである。
【0046】
本発明はさらに、本発明の薬学的製剤を含む、繊維の非網状ネットワークを提供する。繊維はまた、糸および例えば網状または編まれた布を含む布へと形成され得る。
【0047】
本発明のフィブロイン絹製品はまた、生物医学的デバイス(例えばステント)、および絹またはその繊維の断片を含む他の繊維を含む、様々な形状の製品上でコーティングされ得る。
【0048】
絹ヒドロゲルは、当業者に公知の方法によって調製され得る。例えばPCT出願PCT/US/04/11199を参照されたい。濃縮絹フィブロイン溶液のゾルゲル転移は、絹フィブロイン濃度、温度、塩濃度(例えばCaCl2、NaCl、およびKC1)、pH、親水性ポリマーなどの変化によって改変され得る。ゾルゲル転移の前に、濃縮水性絹溶液はモールドまたはフォームに配置され得る。結果として得られるヒドロゲルは次いで、例えばレーザーを用いて任意の形状に切断され得る。
【0049】
本明細書に記載される絹フィブロイン製品は、製造後さらに改変され得る。例えば、骨格は、細胞の望ましい集団に対する受容体または化学誘引物質として機能する生物活性物質のような添加剤でコーティングされ得る。コーティングは、吸着または化学結合を介して適用される。
【0050】
本発明の使用に適した添加剤は、生物学的または薬学的活性化合物を含む。生物学的活性化合物の例としては以下のものが含まれるが、これらに限定されることはない:細胞接着に影響を及ぼすことが公知である公知のインテグリン結合ドメイン、例えば「RGD」インテグリン結合配列またはその変異を含む、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、プロテオグリカン、またはペプチドのような細胞接着性媒介物質(Schaffner P & Dard 2003 Cell Mol Life Sci. Jan;60(1):119-32;Hersel U. et al. 2003 Biomaterials. Nov;24(24):4385-415);生物活性リガンド;および細胞もしくは組織の内部成長(ingrowth)の特定の変化を亢進または除外する物質。増殖または分化を亢進する添加剤の他の例は、骨形態形成タンパク質(BMP)のような骨誘導性物質;サイトカイン、上皮細胞増殖因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン様増殖因子(IGF-IおよびII)、TGF-βのような増殖因子などを含むが、これらに限定されない。本明細書で用いられるように、用語、添加剤はまた、抗体、DNA、RNA、改変RNA/タンパク質複合体、グリコーゲンまたは他の糖、およびアルコールを包含する。
【0051】
生体適合性ポリマーは絹製品に添加され、本発明の工程において複合体マトリックスを生成し得る。
【0052】
本発明において有用な生体適合性ポリマーは、例えばポリエチレンオキシド(PEO)(米国特許第6,302,848号)、ポリエチレングリコール(PEG)(米国特許第6,395,734号)、コラーゲン(米国特許第6,127,143号)、フィブロネクチン(米国特許第5,263,992号)、ケラチン(米国特許第6,379,690号)、ポリアスパラギン酸(米国特許第5,015,476号)、ポリリジン(米国特許第4,806,355号)、アルギナート(米国特許第6,372,244号)、キトサン(米国特許第6,310,188号)、キチン(米国特許第5,093,489号)、ヒアルロン酸(米国特許第387,413号)、ペクチン(米国特許第6,325,810号)、ポリカプロラクトン(米国特許第6,337,198号)、ポリ乳酸(米国特許第6,267,776号)、ポリグリコール酸(米国特許第5,576,881号)、ポリ水酸化アルカノエート(米国特許第6,245,537号)、デキストラン(米国特許第5,902,800号)、およびポリ無水物(米国特許第5,270,419号)を含む。2つまたはそれ以上の生体適合性ポリマーを使用してもよい。
【0053】
治療剤の制御放出のための薬学的製剤を生産する方法における次の段階として、絹フィブロイン製品のコンフォメーションが改変される。誘導されたコンフォメーション変化は、製品の結晶化度を改変し、したがって治療剤の絹フィブロイン製品からの放出速度を改変する。コンフォメーション変化は、フィブロイン製品をメタノールで処理することによって誘導され得る。メタノール濃度は、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、または少なくとも100%である。
【0054】
または、フィブロイン製品のコンフォメーションの改変は、製品を剪断応力で処理することによって誘導され得る。剪断応力は、例えば製品を針に通すことによって加えられ得る。コンフォメーション変化を誘導する他の方法は、製品を電場、塩と接触させる段階、または圧力を加える段階を含む。
【0055】
本発明の絹に基づく薬物送達システムは、絹フィブロイン製品の複数(すなわち層)を含み得、ここで少なくとも1つの絹フィブロイン製品は、少なくとも1つの他の絹フィブロイン製品とは異なる誘導されたコンフォメーション変化を有し得る。例えば、各層はフィブロインの異なる溶液(濃度、薬物)を有し得、かつ異なるコンフォメーション変化を有し得る。これらは様々な配列と組み合わされ、「タマネギ様」構造を作製し得、それによって送達ビヒクルは、結晶化度、厚さ、薬物の濃度、薬物の型などに応じて、各層の放出速度の変化を提供するであろう。本アプローチは、放出プロフィールおよび薬物併用において複数の制御点を作製するよう製剤化するための、スケールアップ、および組み合わせまたは関連したアプローチに非常に適している。
【0056】
さらに、本発明の薬学的製剤からの治療剤の放出は、絹フィブロイン製品の厚さを介して制御され得る。図3に示すように、製品の厚さを増加すると、最初の突発および最初の100時間以内に放出される薬物の量は減少した。しかしながら、経時的な薬物の徐放性は、フィルム数の増加に伴い有意に高くなった。
【0057】
薬物送達複合体もまた包含される。そのような構造のファミリーは、上記のように調製され、次いで様々な量でフィブロインヒドロゲルに分散される。これらの複合体システムは次いで、例えば上記の「タマネギ様」ビヒクルのような送達の様々な様式で用いられる。
【0058】
本発明を用いて生産される材料、例えばヒドロゲル、繊維、フィルム、泡、またはメッシュは、放出制御システムを含む薬物(例えば小分子、タンパク質、または核酸)送達デバイスのような様々な医学的適用に用いられ得る。
【0059】
放出制御は経時的に、放出制御カイネティクスにより投与されるべき用量を可能にする。いくつかの場合、治療剤の送達は治療が必要な部位に、例えば数週間にわたり継続される。例えば数日もしくは数週間、またはより長期にわたる、経時的な制御放出は、最適な処置を得るための、治療剤の継続的な送達を可能にする。制御送達ビヒクルは、それが例えばプロテアーゼによる体液および組織におけるインビボでの分解から、治療剤を保護するため、有利である。
【0060】
薬学的製剤からの制御放出は、例えば約12または24時間より長く、経時的に起こるよう設計され得る。放出の時間は、例えば約12〜24時間;約12〜42時間;または例えば約12〜72時間の期間にわたり起こるように選択され得る。他の態様において、放出は例えば約2〜90日程度、例えば3〜60日で起こり得る。一つの態様において、治療剤は約7〜21日または約3〜10日の期間にわたり、局所的に送達される。他の場合、治療剤は1、2、3週間、またはそれ以上にわたり、制御された用量で投与される。制御放出時間は処置された状態に基づいて選択され得る。例えば、より長い時間は、創傷治癒により効果的であり得、一方より短い送達時間は、いくつかの心血管適用により有用であり得る。
【0061】
インビボにおけるフィブロイド製品からの治療剤の制御放出は、例えば約1 ng〜1 mg/日、例えば約50 ng〜500 pg/日、または一つの態様において、約100 ng/日の量で起こり得る。治療的適用に応じて、例えば、10 ng〜1 mgの治療剤、または他の態様において、約1 μg〜500 μg、もしくは例えば約10 μg〜100 μgを含む、治療剤および担体を含む送達システムが製剤化され得る。
【0062】
絹に基づく薬物送達ビヒクルは、局所的、経口、非経口(静脈内、腹腔内、筋肉内、および皮下注射、ならびに鼻腔内または吸入投与を含む)、および移植を含む当業者に公知の様々な経路で投与され得る。送達は、全身性、部位的、または局所的であり得る。さらに、送達は、例えばCNS送達に対するくも膜下腔内であり得る。例えば、創傷の処置のための薬学的製剤の投与は、経腸的もしくは非経口経路による局所適用、全身性投与、または局所的もしくは部位的注射、または移植によって行われ得る。絹に基づくビヒクルは、当技術分野において、例えばその開示が参照により本明細書に組み込まれる、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」、Mack Publishing Company, Pennsylvania, 1995に記載されるように、投与の異なる経路に対して適切な形状に製剤化され得る。
【0063】
制御放出ビヒクルは、希釈剤、溶剤、緩衝液、可溶化剤、懸濁剤、粘性制御剤、結合剤、潤滑剤、界面活性剤、保存剤、および安定剤のような、当技術分野で利用可能な賦形剤を含み得る。製剤は、増量剤、キレート化剤、および酸化防止剤を含み得る。非経口製剤が用いられる場合、製剤はさらにもしくはまたは、糖、アミノ酸、または電解質を含み得る。
【0064】
賦形剤は、例えばトレハロース、マンニトール、およびポリエチレングリコールのような、約70,000 kD以下の分子量のポリオールを含む。例えば、その開示が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,589,167号を参照されたい。例示的な界面活性剤は、Tweeng界面活性剤のような非イオン性界面活性剤、ポリソルベート(polysorbate)20または80などのようなポリソルベート、およびポロキサマー(poloxamer)184または188のようなポロキサマー、Pluronic(r)ポリオール、および他のエチレン/ポリプロピレンブロックポリマーなどを含む。緩衝液は、Tris、クエン酸、コハク酸、アセテート、またはヒスチジン緩衝液を含む。保存剤は、フェノール、ベンジルアルコール、メタクレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム 、および塩化ベンゼトニウムを含む。他の添加剤は、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、およびゼラチンを含む。安定化剤は、ヘパリン、ペントサンポリスルフェート、および他のヘパリノイド、ならびにマグネシウムおよび亜鉛のような二価陽イオンを含む。
【0065】
本発明の薬学的製剤は、放射線に基づく滅菌法(すなわちγ線)、化学物質に基づく滅菌法(エチレンオキシド)、高圧蒸気殺菌法、または他の適切な手法のような従来の滅菌工程を用いて滅菌され得る。好ましくは、滅菌工程は、52〜55℃の間の温度で、8時間またはそれ以下の時間、エチレンオキシドによって行われるであろう。滅菌後、製剤は、出荷のための適切な殺菌耐湿潤性パッケージ中に包装され得る。
【0066】
特に定める場合を除き、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本発明の実施または検討のために、本明細書に記載したものと同様または同等の方法および材料を用いることができるが、好ましい方法および材料は以下に説明するものである。本明細書において言及した全ての刊行物、特許出願、特許、および他の引用文献は、参照により組み入れられる。さらに、材料、方法、および実施例は、単に説明目的であり、制限する意図はない。矛盾する場合、定義を含む本明細書によって統制される。
【0067】
本発明はさらに、本発明の例示を意図する以下の実施例によって、さらに特徴付けられるであろう。
【実施例】
【0068】
実施例I
材料および方法:絹の調製
絹繭は4等分に切断され、Na2CO3溶液中で1時間、洗浄された。絹は、温水で2回、冷水で20回、洗浄された。絹は、一晩乾燥され、9M LiBrに溶解されて、10%絹フィブロイン溶液となった。溶液は、27,000 gで30分間遠心分離され、上清は、透析カセット(NWCO 3,500)に移され、2日間透析された。絹フィブロイン濃度は、250 mbarおよび45℃での蒸発により5%(水中m/V)に調整された。結果として生じた絹溶液は、150 μl絹フィブロイン溶液対20 μlのFD4溶液の比率で、デキストランに連結したFITCの溶液(4kDaの分子量;FD4;濃度10 mg/ml、Sigma)と混合されるか、または対照群について、FD-4が後で添加された(表1を参照されたい)。さらなる群として、この溶液の部分は、50Hz、2A、10秒間で超音波処理された(Hielscher, UP200H)。170 μlの溶液(FD-4/絹混合物)が、96ウェルプレートの各ウェルへ添加された。対照について、ウェルは、150 μlの絹フィブロイン溶液で満たされた。水を、室温および250mbarで、一晩蒸発させた。20 μlのFD4溶液が、絹フィブロイン溶液のみを入れたウェルへ添加された(後の固体フィルムのインキュベーションに対する、薬物と溶解された絹フィブロインとの混合の効果を分析するために)。さらなるウェルは、絹とインキュベートされなかった(絹フィブロインフィルムそれ自身の可能な蛍光を分析するために)。フィルムは、水、メタノール20%、またはメタノール90%(V/V)のいずれかで、3時間処理された。溶液は、吸引され、薬物放出研究のために300 μl PBSに置き換えられた。全放出媒体は、24時間、48時間、130時間後、新鮮なPBSで置き換えられ、蛍光は、Lumicounter(Packard, 480V, Gain Level, 1, ex. 485nm, em. 530nm)で読み取られた。
【0069】
結果および考察
そのままの絹フィブロインフィルムは蛍光を示さない。MeOH処理無しかまたは20%MeOHでの処理で、放出は、高い最初のバーストおよび24時間後のわずかな時間の放出に特徴付けられるが(群I+0およびI+20)、20%MeOHで処理された場合、より多いFD4が放出された。これは、おそらく、MeOHの存在下におけるFD4の溶解性の低下による。90%MeOHで処理された場合、48時間後および130時間後、有意により多いFD4が放出され、変形的変化を誘導することにより絹ポリマーからの徐放性を得る可能性を実証した(I+90)。群I+0およびI+20での観察と同様に、90%へのMeOH濃度の増加は、結果として、全FD4のより高い封入を生じる。調製されたフィルムのFD4との3時間のインキュベーション(I-90)は、I+0およびI+20と同様に、結果として、高い最初のバーストを生じる。実質的な徐放性の欠如は、おそらく、(アモルファス)絹フィブロインフィルムにおける薬物拡散の妨害による。それゆえに、コンフォメーション変化は、フィルムの表面へ吸収されたFD4に実質的には影響を及ぼさない。本質的には、超音波処理でも処理された群について、同じ結果が得られた。しかしながら、超音波による処理は、非超音波処理群と比較して、薬物放出へ影響を及ぼさない。
【0070】
結論として、薬物(FD4)の徐放性は、コンフォメーション変化が90%MeOHで誘導される場合、絹フィブロインポリマーで得られ得る。超音波処理は、薬物放出に影響を与えない。
【0071】
実施例2
本発明者らは、絹フィブロインに基づいた薬物送達システムを製剤化する可能性を評価した。実験は、水性フィブロイン-薬物溶液から開始し、続いて、水のゆっくりした蒸発が、結果として、懸濁された薬物分子を有する固体フィブロインフィルムを生じた。フィブロインのコンフォメーション変化は、メタノール処理を通して誘導され、結果として結晶化度の増加を生じた。結晶化度は、薬物の放出を支配した。
【0072】
結果および考察
蛍光色素に連結したデキストランは、モデル薬物として選択された。それらは、膨潤ゲル上で薬物分子量の影響の直接的な評価を可能にする。本概要で用いられる用語FD4は、4,000 g/モルの分子量を有するデキストラン(D)に連結したFITC(F)を記載する。第1セットの実験は、水および上昇するメタノール濃度で処理されたフィブロインゲルからのFD4放出を比較した(図2)。
【0073】
図2は、経時的なFD4の放出を示す。最大FD4濃度における差は、異なる濃度のメタノール溶液または水における薬物の異なる溶解度が原因である。しかしながら、放出パターンは異なる。最大50%のメタノール濃度による処理は結果として、その後の時点で放出される微量のFD4を伴い、最初の12時間以内に高い突発放出をもたらす。対照的に、90%または100%メタノール溶液での処理は、結果として、約200時間の徐放性かつより速い放出を生じた。より遅い時点において、時間あたり放出される薬物の量(傾き)は、有意に減少し、観察期間(1,000時間を超える)を通して放出は継続した。剪断応力単独での処理(シリンジ処理、図2)もまた、結晶化度の増加を通してゲル形成を誘導した。
【0074】
用いられる全FD4の30%より多い、高い最初のバーストを制御するために、同一のフィルムが調製され、90%メタノールで処理された(コア)。このコアは、フィブロインの追加の層でコーティングされ、再び、90%メタノール溶液または水で処理された(図3)。
【0075】
図3に示された結果は、放出がコアの周囲のコーティングの厚さにより制御され得ることを示す。フィルムの厚さが増加するにつれて(図3におけるd-b-c)、最初のバーストは低下し、最初の50時間内に放出される薬物の量は、コア(I、図3)と比較して有意に少なく、薬物放出(傾き)は、非コーティング化のものについてよりコーティング化コアについて有意に高かった。特に、2層(c)または3層(b)のフィブロインでコーティングされたコアは、零次カイネティクスに従って、最初の300時間(約12.5日間)、ほぼ直線的放出を有した。コーティングは、メタノール溶液の代わりに水で処理された場合、薬物放出に最少の効果を生じ、コンフォメーション変化を誘導することの重要性を実証した(データ示さず)。
【0076】
これらの発見は、以下の少なくとも2つの結論を可能にする:(i)メタノール溶液で処理される場合の絹フィブロインは、制御された薬物送達システムを作製するために用いられ得る;および(ii)メタノール溶液で処理される絹フィブロインコーティングは、薬物含有コアからの薬物の放出を改変することができる。
【0077】
これは、マイクロスフェアの調製または放出を改変するための錠剤のコーティングを含む多数の適用を可能にする。
【0078】
実施例3
絹フィルムのメタノールへの曝露は、FTIR分析により測定されているように(図7A)、結晶化度における増加を示唆した。この発見は、1540cm-1から1535cm-1へのアミドII結合シフト、β結晶構造における増加に典型的な発見に基づいていた。同様に、追加の肩が、1630cm-1(アミドI)および1265cm-1(アミドIII)においてメタノール処理に応答して現れた。
【0079】
このデータは、X線回折法により確証された(図7Bおよび7C)。フィルム表面の疎水性は、接触角測定により決定されているように、メタノール処理に応答したフィルムの結晶化度変化により有意に影響を及ぼされた(図7Dおよび7E)。メタノール処理されたフィルムについては、時間が経っても接触角の変化は観察されず、水滴への3分間の曝露後に接触角における急速な減少を結果として生じる水処理されたフィルムとは対照的に、これらのフィルムの水不溶性を示した。
【0080】
メタノール処理の前および後の絹フィルムのトポロジーは、原子間力顕微鏡法により評価された(図6)。未処理フィルムとは対照的にメタノールへの曝露は、結果として、より粗い表面(図6Aおよび6B)および球状構造の形成(図6Cおよび6D)を生じた。
【0081】
結論
絹フィルムのメタノール処理は、結果として、結晶化度(βシート)の増加、疎水性の増加、水溶性の減少、および表面トポロジーの変化を生じた。
【0082】
実施例4
異なる分子量を有する蛍光でマークされたデキストランの放出が、メタノール処理の関数として評価された。
【0083】
4 kDaから20 kDaまでのサイズ範囲を有するデキストランの放出は、より大きな分子(40 kDa)の放出が遅延したのに対して、明らかには持続されなかった(図4A)。対照的に、絹フィルムのメタノール処理は、結果として、すべてのデキストランについて、特に10 kDaに等しいかそれを超える分子量について、放出の強い遅延を生じた(図4B)。
【0084】
タンパク質薬物についての薬物送達システムとしての絹フィルムの有効性は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)およびリゾチーム(Lys;図5)を用いて評価され、生物学的効果試験により分析された。天然の絹フィルムからの不連続的放出が、HRPについて観察され、全負荷量の5%の最初のバースト、続いて2日間の遅滞期および3日目から8日目までの連続的放出により特徴付けられた(図5A)。HRP放出は、HRP負荷されたフィルムのメタノールへの曝露後、有意に変化した。最初のバーストは観察されず、HRP放出は、5日目から始まり、その日以降、それは23日目まで連続して放出された(図5A)。天然の絹フィルムからのリゾチーム放出は、HRPと同様であり、約30%の最初のバースト、1日間の遅滞期、および3日目と8日目の間の連続的放出を伴った(図5B)。HRPと対照的に、Lys負荷されかつメタノール処理されたフィルムは、時間が経っても実質的な量を放出しなかった(図5B)。
【0085】
HRPおよびLysの天然のフィルム表面への吸着は、両方のタンパク質について類似したが、Lys負荷フィルムについて、メタノール処理されたフィルムに、見かけ上の、かつ統計学的に有意ではない(p=0.08)差異が観察されたものの、HRP負荷フィルムについては観察されなかった(図5Cおよび5D)。
【0086】
結論
絹フィルムからの薬物放出は、薬物分子量およびメタノールでのフィルム処理の関数であった。生物活性タンパク質の直線的放出を有する徐放性プロフィールが、HRPおよびLysについて観察され、結果として、3日目から8日目までほとんど零次カイネティクスを生じた(水処理されたフィルム)が、一方、実質的により少ないタンパク質薬物活性がメタノール処理において観察された。この活性の減少は、Lysのメタノール感受性と(およびHRPについて、より少ない程度で)相関した。または、結晶性は、薬物負荷フィルムの25℃での飽和Na2SO4溶液の上での24時間の水蒸気処理により誘導され得る(データ示さず)。タンパク質活性(LysまたはHRP)の損失は、予備的知見により確証される仮定から、これらの蒸気条件下では予想されない。
【0087】
(表1)群および処理
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、少なくとも1つの治療剤の放出制御のための薬学的製剤を生産する方法:
a.絹フィブロイン溶液と治療剤を接触させる段階;
b. 治療剤を含む絹フィブロイン製品を形成する段階;および
c.結晶化度または液体結晶化度を増大するために、製品のコンフォメーションを改変し、したがって絹フィブロイン製品からの治療剤の放出を制御する段階。
【請求項2】
治療剤が、タンパク質、ペプチド、核酸、PNA、アプタマー、抗体、および小分子からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
絹フィブロイン溶液が水性絹フィブロインを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
絹フィブロイン溶液が有機溶媒中の絹フィブロインを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
有機溶媒がHFIPである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
絹フィブロイン製品が、糸、繊維、フィルム、泡、メッシュ、ヒドロゲル、三次元骨格、錠剤充填材料、錠剤コーティング、およびマイクロスフェアからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
コンフォメーションの改変が、製品とメタノールを接触させることにより誘導される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
コンフォメーションの改変が、製品を剪断(sheer)応力で処理することにより誘導される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
コンフォメーションの改変が、製品を電場で処理することにより誘導される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
コンフォメーションの改変が、製品を圧力で処理することにより誘導される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
コンフォメーションの改変が、製品と塩を接触させることにより誘導される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
メタノール濃度が少なくとも50%である、請求項7記載の方法。
【請求項13】
メタノール濃度が少なくとも70%である、請求項7記載の方法。
【請求項14】
メタノール濃度が少なくとも90%である、請求項7記載の方法。
【請求項15】
メタノール濃度が少なくとも100%である、請求項7記載の方法。
【請求項16】
剪断応力が、製品を針に通すことにより加えられる、請求項8記載の方法。
【請求項17】
薬学的製剤が、少なくとも2つの層を含み、少なくとも1つの層は、少なくとも1つの他の層とは異なる誘導されたコンフォメーション変化を含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
薬学的製剤が生物分解性である、請求項1記載の方法。
【請求項19】
薬学的製剤が、製剤を特定の細胞または組織型に特異的に標的化するターゲティング薬剤をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
ターゲティング薬剤が、糖、ペプチド、および脂肪酸からなる群より選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
絹フィブロイン溶液が、溶解したカイコ絹を含む溶液より得られる、請求項1記載の方法。
【請求項22】
カイコ絹がカイコガ(Bombyx mori)より得られる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
絹フィブロイン溶液が、溶解したクモ絹を含む溶液より得られる、請求項1記載の方法。
【請求項24】
クモ絹がアメリカジョロウグモ(Nephila clavipes)より得られる、請求項23記載の方法。
【請求項25】
絹フィブロイン溶液が、遺伝的に操作された絹を含む溶液より得られる、請求項1記載の方法。
【請求項26】
遺伝的に操作された絹が治療剤を含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
請求項1記載の方法によって生産された、少なくとも1つの治療剤の放出制御のための薬学的製剤。
【請求項28】
製品のコンフォメーションの改変が誘導される、治療剤を伴う絹フィブロイン製品を含む、少なくとも1つの治療剤の放出制御のための薬学的製剤。
【請求項29】
治療剤が、タンパク質、ペプチド、核酸、PNA、アプタマー、抗体、および小分子からなる群より選択される、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項30】
治療剤が、10キロダルトンに等しいかまたはそれ以上である、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項31】
絹フィブロイン製品が、糸、繊維、フィルム、泡、メッシュ、ヒドロゲル、三次元骨格、錠剤充填材料、錠剤コーティング、およびマイクロスフェアからなる群より選択される、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項32】
コンフォメーションの改変が、製品とメタノールを接触させることにより誘導される、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項33】
コンフォメーションの改変が、製品を剪断応力で処理することにより誘導される、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項34】
コンフォメーションの改変が、製品を電場で処理することにより誘導される、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項35】
コンフォメーションの改変が、製品を圧力で処理することにより誘導される、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項36】
コンフォメーションの改変が、製品と塩を接触させることにより誘導される、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項37】
メタノール濃度が少なくとも50%である、請求項32記載の薬学的製剤。
【請求項38】
メタノール濃度が少なくとも70%である、請求項32記載の薬学的製剤。
【請求項39】
メタノール濃度が少なくとも90%である、請求項32記載の薬学的製剤。
【請求項40】
メタノール濃度が少なくとも100%である、請求項32記載の薬学的製剤。
【請求項41】
剪断応力が、製品を針に通すことにより加えられる、請求項33記載の薬学的製剤。
【請求項42】
薬学的製剤が、複数の絹フィブロイン製品をさらに含み、少なくとも1つの絹フィブロイン製品は、少なくとも1つの他の絹フィブロイン製品とは異なる誘導されたコンフォメーション変化を含む、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項43】
生物分解性である、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項44】
デバイスを特定の細胞または組織型に特異的に標的化するターゲティング薬剤をさらに含む、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項45】
ターゲティング薬剤が、糖、ペプチド、および脂肪酸からなる群より選択される、請求項44記載の薬学的製剤。
【請求項46】
絹フィブロイン製品が、溶解したカイコ絹を含む溶液より得られる、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項47】
カイコ絹がカイコガより得られる、請求項46記載の薬学的製剤。
【請求項48】
絹フィブロイン製品が、溶解したクモ絹を含む溶液より得られる、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項49】
クモ絹がアメリカジョロウグモより得られる、請求項48記載の薬学的製剤。
【請求項50】
絹フィブロイン溶液が、遺伝的に操作された絹を含む溶液より得られる、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項51】
遺伝的に操作された絹が治療剤を含む、請求項50記載の薬学的製剤。
【請求項52】
治療剤が、10キロダルトンに等しいかまたはそれ以上である、請求項1記載の方法。
【請求項1】
以下の段階を含む、少なくとも1つの治療剤の放出制御のための薬学的製剤を生産する方法:
a.絹フィブロイン溶液と治療剤を接触させる段階;
b. 治療剤を含む絹フィブロイン製品を形成する段階;および
c.結晶化度または液体結晶化度を増大するために、製品のコンフォメーションを改変し、したがって絹フィブロイン製品からの治療剤の放出を制御する段階。
【請求項2】
治療剤が、タンパク質、ペプチド、核酸、PNA、アプタマー、抗体、および小分子からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
絹フィブロイン溶液が水性絹フィブロインを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
絹フィブロイン溶液が有機溶媒中の絹フィブロインを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
有機溶媒がHFIPである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
絹フィブロイン製品が、糸、繊維、フィルム、泡、メッシュ、ヒドロゲル、三次元骨格、錠剤充填材料、錠剤コーティング、およびマイクロスフェアからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
コンフォメーションの改変が、製品とメタノールを接触させることにより誘導される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
コンフォメーションの改変が、製品を剪断(sheer)応力で処理することにより誘導される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
コンフォメーションの改変が、製品を電場で処理することにより誘導される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
コンフォメーションの改変が、製品を圧力で処理することにより誘導される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
コンフォメーションの改変が、製品と塩を接触させることにより誘導される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
メタノール濃度が少なくとも50%である、請求項7記載の方法。
【請求項13】
メタノール濃度が少なくとも70%である、請求項7記載の方法。
【請求項14】
メタノール濃度が少なくとも90%である、請求項7記載の方法。
【請求項15】
メタノール濃度が少なくとも100%である、請求項7記載の方法。
【請求項16】
剪断応力が、製品を針に通すことにより加えられる、請求項8記載の方法。
【請求項17】
薬学的製剤が、少なくとも2つの層を含み、少なくとも1つの層は、少なくとも1つの他の層とは異なる誘導されたコンフォメーション変化を含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
薬学的製剤が生物分解性である、請求項1記載の方法。
【請求項19】
薬学的製剤が、製剤を特定の細胞または組織型に特異的に標的化するターゲティング薬剤をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
ターゲティング薬剤が、糖、ペプチド、および脂肪酸からなる群より選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
絹フィブロイン溶液が、溶解したカイコ絹を含む溶液より得られる、請求項1記載の方法。
【請求項22】
カイコ絹がカイコガ(Bombyx mori)より得られる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
絹フィブロイン溶液が、溶解したクモ絹を含む溶液より得られる、請求項1記載の方法。
【請求項24】
クモ絹がアメリカジョロウグモ(Nephila clavipes)より得られる、請求項23記載の方法。
【請求項25】
絹フィブロイン溶液が、遺伝的に操作された絹を含む溶液より得られる、請求項1記載の方法。
【請求項26】
遺伝的に操作された絹が治療剤を含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
請求項1記載の方法によって生産された、少なくとも1つの治療剤の放出制御のための薬学的製剤。
【請求項28】
製品のコンフォメーションの改変が誘導される、治療剤を伴う絹フィブロイン製品を含む、少なくとも1つの治療剤の放出制御のための薬学的製剤。
【請求項29】
治療剤が、タンパク質、ペプチド、核酸、PNA、アプタマー、抗体、および小分子からなる群より選択される、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項30】
治療剤が、10キロダルトンに等しいかまたはそれ以上である、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項31】
絹フィブロイン製品が、糸、繊維、フィルム、泡、メッシュ、ヒドロゲル、三次元骨格、錠剤充填材料、錠剤コーティング、およびマイクロスフェアからなる群より選択される、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項32】
コンフォメーションの改変が、製品とメタノールを接触させることにより誘導される、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項33】
コンフォメーションの改変が、製品を剪断応力で処理することにより誘導される、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項34】
コンフォメーションの改変が、製品を電場で処理することにより誘導される、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項35】
コンフォメーションの改変が、製品を圧力で処理することにより誘導される、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項36】
コンフォメーションの改変が、製品と塩を接触させることにより誘導される、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項37】
メタノール濃度が少なくとも50%である、請求項32記載の薬学的製剤。
【請求項38】
メタノール濃度が少なくとも70%である、請求項32記載の薬学的製剤。
【請求項39】
メタノール濃度が少なくとも90%である、請求項32記載の薬学的製剤。
【請求項40】
メタノール濃度が少なくとも100%である、請求項32記載の薬学的製剤。
【請求項41】
剪断応力が、製品を針に通すことにより加えられる、請求項33記載の薬学的製剤。
【請求項42】
薬学的製剤が、複数の絹フィブロイン製品をさらに含み、少なくとも1つの絹フィブロイン製品は、少なくとも1つの他の絹フィブロイン製品とは異なる誘導されたコンフォメーション変化を含む、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項43】
生物分解性である、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項44】
デバイスを特定の細胞または組織型に特異的に標的化するターゲティング薬剤をさらに含む、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項45】
ターゲティング薬剤が、糖、ペプチド、および脂肪酸からなる群より選択される、請求項44記載の薬学的製剤。
【請求項46】
絹フィブロイン製品が、溶解したカイコ絹を含む溶液より得られる、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項47】
カイコ絹がカイコガより得られる、請求項46記載の薬学的製剤。
【請求項48】
絹フィブロイン製品が、溶解したクモ絹を含む溶液より得られる、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項49】
クモ絹がアメリカジョロウグモより得られる、請求項48記載の薬学的製剤。
【請求項50】
絹フィブロイン溶液が、遺伝的に操作された絹を含む溶液より得られる、請求項28記載の薬学的製剤。
【請求項51】
遺伝的に操作された絹が治療剤を含む、請求項50記載の薬学的製剤。
【請求項52】
治療剤が、10キロダルトンに等しいかまたはそれ以上である、請求項1記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【公開番号】特開2012−144553(P2012−144553A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−58344(P2012−58344)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【分割の表示】特願2007−527800(P2007−527800)の分割
【原出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(303043726)トラスティーズ オブ タフツ カレッジ (26)
【出願人】(507248550)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【分割の表示】特願2007−527800(P2007−527800)の分割
【原出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(303043726)トラスティーズ オブ タフツ カレッジ (26)
【出願人】(507248550)
【Fターム(参考)】
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