説明

絹ドープを製造するプロセス

本発明は、ミツバチの絹タンパク質などの、コイルドコイル構造を有する絹タンパク質を含む絹ドープを製造する方法に関する。絹タンパク質を、それらを産生する細胞から得、タンパク質を、それらと界面活性剤またはイオン液体とを接触させることによって可溶化し、絹ドープを製造するためにタンパク質を濃縮する。タンパク質は、パーソナルケア製品、プラスチック、繊維製品および生物医学製品の製造などのさまざまな目的に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミツバチの絹タンパク質などの、コイルドコイル構造を有する絹タンパク質を含む絹ドープを製造する方法に関する。絹ドープは、パーソナルケア製品、プラスチック、繊維製品および生物医学製品の製造などのさまざまな目的に使用できる。
【背景技術】
【0002】
絹は広範囲の昆虫種およびクモ種により産生されるタンパク繊維である。家畜化されたカイコ(Bombyx mori)の絹は、何世紀にもわたって縫合糸の生体材料として使用されてきた。トランスジェニック系においてカイコまたはクモの絹をクローン化または発現させる多数の取り組みにより、それが非常に困難な仕事であることが見出された。これらの絹遺伝子のサイズの大きさおよび高度に繰り返される配列が、特殊化された絹糸腺の外側でのそれらの発現を扱いにくくしており、タンパク質の収量を低くしている。
【0003】
カイコの繭およびクモの巣はもっともよく知られる絹であるが、他の種は、トランスジェニックな産生により適した絹を産生できる。ミツバチの幼虫(Apis mellifera)は、それらがその中でさなぎになる絹の繭を紡ぐ。ミツバチの絹は、4種の小型(それぞれ約30kDa)で繰り返しのない繊維遺伝子によりコードされる(Sutherlandら、2006年)。4種の遺伝子の相同なセットは、マルハナバチ、ブルドックアリ、ツムギアリ、スズメバチおよびニホンミツバチにおいても見出されている(Sutherlandら、2007年; Sezutsuら、2007年; Shiら、2008年;国際公開番号WO 2007/038837)。
【0004】
古典的なX線繊維回折の研究により、ミツバチの絹が、コイルドコイル立体構造、おそらく四量体コイルドコイル構造に組み立てられたα-ヘリックスタンパク質を含有することが実証されており(Atkins、1967年)、4本の鎖は4種の異なる絹タンパク質に対応している可能性が高い。バイオインフォマティクス技術により、各々のミツバチの絹タンパク質配列が60〜68%のコイルドコイルを含有することが予測されている(Sutherlandら、2006年)。
【0005】
絹糸は、ミツバチの幼虫の絹糸腺から手で引き出すことができる。これらの糸は、カイコの絹繊維より強度は低いが伸展性があり、より強靭である(Hepburnら、1979年)。
【0006】
Shiら(2008年)は、ニホンミツバチ(Apis cerana)の絹の組み換えによる生産を近年報告した。4種のニホンミツバチの絹タンパク質は、10〜60mg/リットル醗酵液の収率で、大腸菌(Escherichia coli)において可溶型で発現された。さまざまな実験技術を使用して、低濃度(0.03から0.2wt%)におけるタンパク質の構造および相互作用を特徴付けた。これらは、個々のタンパク質も、または4種のタンパク質の混合物も溶液中で密な三次パッキングを有さないことを、結論として実証した。これらのタンパク質は、モノマーまたはゆるく結びついたダイマーとして存在し、主に小型のα-ヘリックス構造を有するランダムコイル立体構造を有した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開番号WO 2007/038837
【特許文献2】米国特許第5,792,294号
【特許文献3】米国特許第5,939,288号
【特許文献4】米国特許第6,248,570号
【特許文献5】米国特許公開番号20030229212
【特許文献6】米国特許第5,981,718号
【特許文献7】米国特許第5,856,451号
【特許文献8】米国特許第6,303,752号
【特許文献9】米国特許第6,284,246号
【特許文献10】米国特許第6,358,501号
【特許文献11】米国特許第6,280,747号
【特許文献12】米国特許公開番号2004/0170590
【特許文献13】米国特許第6,139,851号
【特許文献14】米国特許第6,013,250号
【特許文献15】米国特許公開番号2004/0170590
【特許文献16】米国特許第6,398,821号
【特許文献17】米国特許第6,129,770号
【特許文献18】米国特許公開番号2005/0161058
【特許文献19】米国特許公開番号2005/0130857
【特許文献20】米国特許第5,643,672号
【特許文献21】米国特許第6,175,053号
【特許文献22】米国特許公開番号2005/0055051
【特許文献23】米国特許公開番号2004/0199241
【特許文献24】米国特許公開番号2005/0089552
【特許文献25】米国特許公開番号2005/0266992
【特許文献26】米国特許公開番号2005/0019297
【特許文献27】米国特許公開番号2004/0005363
【特許文献28】米国特許第6,416,558号
【特許文献29】米国特許第5,232,611号
【特許文献30】特開2004284246号
【特許文献31】米国特許第2005175825号
【特許文献32】米国特許第4,515,737号
【特許文献33】JP47020312
【特許文献34】国際公開番号WO 2005/017004
【特許文献35】特開2000139755号
【特許文献36】国際公開番号WO 2005/045122
【特許文献37】米国特許公開番号2005268443
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J. Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning、John WileyおよびSons (1984年)
【非特許文献2】J.Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989年)
【非特許文献3】T. A. Brown (編)、Essential Molecular Biology: A Practical Approach、Volumes 1および2、IRL Press (1991年)
【非特許文献4】D. M. GloverおよびB. D. Hames (編)、DNA Cloning: A Practical Approach、Volumes 1〜4、IRL Press (1995年および1996年)
【非特許文献5】F. M. Ausubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience (1988年、現在までのすべての最新版を含む)
【非特許文献6】Ed HarlowおよびDavid Lane(編) Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory、(1988年)
【非特許文献7】J. E. Coliganら(編) Current Protocols in Immunology、John Wiley & Sons (現在までのすべての最新版を含む)
【非特許文献8】Ionic Liquids in Synthesis, Wasserscheid, PおよびWeldon, T. (編), Wiley Pub
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
広範囲な製品を製造するために使用できる、組み換え的に発現されるコイルドコイル絹タンパク質から絹ドープを製造するさらなる方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚いたことに本発明者らは、界面活性剤およびイオン液体を、コイルドコイル絹タンパク質を含む絹ドープを製造するプロセスに使用できることを見出した。
【0011】
第1の態様では、本発明は絹ドープを製造する方法であって、
i)1種または複数種の絹タンパク質を産生する細胞を溶解するステップ、
ii)絹タンパク質を、それらと、界面活性剤またはイオン液体とを接触させることによって可溶化するステップ、および
iii)絹ドープを製造するために、絹タンパク質を濃縮するステップ、
を含み、1種または複数種の絹タンパク質が、コイルドコイル構造を含む三次構造を形成できる方法を提供する。
【0012】
一実施形態では、
a)界面活性剤を沈殿させる化合物を加えることによって、溶液中の界面活性剤の量を減少させるステップ、および
b)ステップa)において形成された沈殿から絹タンパク質を含む溶液を分離して、絹ドープを製造するステップ、
によって絹タンパク質を濃縮する。
【0013】
界面活性剤を沈殿させるために使用できる化合物は当分野において公知であり、塩もしくは炭水化物またはそれらの2種以上の組合せを含む。好ましくは、塩はカリウム塩またはナトリウム塩である。ある実施形態において、炭水化物はα-シクロデキストリンである。
【0014】
別の実施形態において、絹タンパク質は、ろ過、より好ましくは膜ろ過およびさらにより好ましくはタンジェンシャルフローろ過により濃縮される。
【0015】
ある実施形態において、上記方法は、絹ドープ中の絹タンパク質の濃度を上昇させるステップをさらに含む。このことは、当分野において公知の任意の方法によって達成できる。例えば、絹ドープを、吸湿性ポリマーを含む溶液などの脱水溶液に対して透析する。吸湿性ポリマーの例は、限定するものではないが、ポリエチレングリコール、アミラーゼおよびセリシンならびにそれらの2種以上の組合せを含む。
【0016】
好ましい実施形態において、絹ドープは少なくとも約0.5%w/vの絹タンパク質を含む。さらなる実施形態において、絹ドープは約0.5%から約15%の絹タンパク質を含む。
【0017】
細胞は任意の細胞型、通常、絹タンパク質をコードし、産生できる外来性ポリヌクレオチドを含む組み換え細胞であってよい。例としては、限定するものではないが、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞もしくは動物細胞またはそれらの2種以上の組合せが挙げられる。好ましい実施形態において、細胞は細菌細胞である。特に好ましい実施形態において、細菌細胞は大腸菌である。
【0018】
好ましい実施形態では、ステップi)は、溶解した細胞から封入体を単離するステップをさらに含む。
【0019】
上記方法は、ステップi)の前に、細胞を培養するステップをさらに含む。
【0020】
好ましい実施形態では、コイルドコイル構造を含む三次構造を形成できる絹タンパク質の一部が、7アミノ酸配列abcdefgの少なくとも10コピーを含み、aおよびdの位置のアミノ酸の少なくとも25%がアラニン残基である。さらに好ましくは、a、dおよびe位のアミノ酸の少なくとも25%がアラニン残基である。
【0021】
さらに好ましい実施形態において、絹タンパク質は、
a)配列番号1から8、17から24、33から40、49から56、65から72、81から88、97または98の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
b)配列番号1から8、17から24、33から40、49から56、65から72、81から88、97または98の任意の1つまたは複数と少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、および
c)a)またはb)の生物学的に活性な断片、
から選択される配列を含む、より好ましくは本質的に該配列からなる、さらにより好ましくは該配列からなる。
【0022】
上記の態様において、細胞から分泌される絹タンパク質ができるだけ少ないことが好ましい。したがって、絹タンパク質は、N末端シグナル配列を含まないことが好ましい。上記の態様に特に有用な絹タンパク質の例は、限定するものではないが、
a)配列番号1、3、5、7、17、19、21、23、33、35、37、39、49、51、53、55、65、67、69、71、81、83、85、87もしくは97の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
b)配列番号1、3、5、7、17、19、21、23、33、35、37、39、49、51、53、55、65、67、69、71、81、83、85、87もしくは97の任意の1つもしくは複数と少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、および
c)a)もしくはb)の生物学的に活性な断片、
から選択される配列を含む、より好ましくは本質的に該配列からなる、さらにより好ましくは該配列からなる絹タンパク質を含む。
【0023】
ある実施形態において、絹タンパク質は、複数の同じ絹タンパク質であっても、または2種以上の異なるタンパク質の組合せであってもよい。好ましい実施形態において、異なる絹タンパク質を使用する場合、4種の異なる絹タンパク質がある。
【0024】
さらなる実施形態において、絹タンパク質は、
a)配列番号1、2、17、18、33、34、49、50、65、66、81もしくは82の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
b)配列番号1、2、17、18、33、34、49、50、65、66、81もしくは82の任意の1つもしくは複数と少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、および
c)a)もしくはb)の生物学的に活性な断片、
を含む、より好ましくは本質的にそれらからなる、さらにより好ましくはそれらからなる第1の絹タンパク質、
d)配列番号3、4、19、20、35、36、51、52、67、68、83もしくは84の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
e)配列番号3、4、19、20、35、36、51、52、67、68、83もしくは84の任意の1つもしくは複数と少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、および
f)c)もしくはd)の生物学的に活性な断片、
を含む、より好ましくは本質的にそれらからなる、さらにより好ましくはそれらからなる第2の絹タンパク質、
g)配列番号5、6、21、22、37、38、53、54、69、70、85もしくは86の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
h)配列番号5、6、21、22、37、38、53、54、69、70、85もしくは86の任意の1つもしくは複数と少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、および
i)g)もしくはh)の生物学的に活性な断片、
を含む、より好ましくは本質的にそれらからなる、さらにより好ましくはそれらからなる第3の絹タンパク質、
j)配列番号7、8、23、24、39、40、55、56、71、72、87もしくは88の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
k)配列番号7、8、23、24、39、40、55、56、71、72、87もしくは88の任意の1つもしくは複数と少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、および
l)j)もしくはk)の生物学的に活性な断片、
を含む、より好ましくは本質的にそれらからなる、さらにより好ましくはそれらからなる第4の絹タンパク質、を含む。より好ましくは、上記の態様に関して、絹タンパク質は、
a)配列番号1、17、33、49、65、もしくは81の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
b)配列番号1、17、33、49、65、もしくは81の任意の1つもしくは複数と少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、および
c)a)もしくはb)の生物学的に活性な断片、
を含む、より好ましくは本質的にそれらからなる、さらにより好ましくはそれらからなる第1の絹タンパク質、
d)配列番号3、19、35、51、67もしくは83の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
e)配列番号3、19、35、51、67もしくは83の任意の1つもしくは複数と少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、および
f)d)もしくはe)の生物学的に活性な断片、
を含む、より好ましくは本質的にそれらからなる、さらにより好ましくはそれらからなる第2の絹タンパク質、
g)配列番号5、21、37、53、69、もしくは85の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
h)配列番号5、21、37、53、69、もしくは85の任意の1つもしくは複数と少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、および
i)g)もしくはh)の生物学的に活性な断片、
を含む、より好ましくは本質的にそれらからなる、さらにより好ましくはそれらからなる第3の絹タンパク質、ならびに/あるいは
j)配列番号7、23、39、55、71もしくは87の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
k)配列番号7、23、39、55、71もしくは87の任意の1つもしくは複数と少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、および
l)j)もしくはk)の生物学的に活性な断片、
を含む、より好ましくは本質的にそれらからなる、さらにより好ましくはそれらからなる第4の絹タンパク質を含む、または本質的にそれからなる。
【0025】
ある実施形態において、第1の絹タンパク質、第2の絹タンパク質、第3の絹タンパク質および/または第4の絹タンパク質は、同じ細胞によって産生される。
【0026】
代替の実施形態において、第1の絹タンパク質、第2の絹タンパク質、第3の絹タンパク質および/または第4の絹タンパク質は、異なる細胞によって産生される。この実施形態において、ステップii)が、ほぼ等モル量の第1の絹タンパク質、第2の絹タンパク質、第3の絹タンパク質および第4の絹タンパク質を含むことが好ましい。
【0027】
ステップiii)を除くそれまでの任意の時点において、本発明に従って処理される絹タンパク質は、独立して、および組み合わせて調製することができる。別々に調製された絹タンパク質は、同じであってもまたは異なっていてもよい。例えば、本明細書において定義された第1の絹タンパク質が第1の細胞において発現され、ステップi)およびii)において定義されたように処理され、本明細書において定義された第2の絹タンパク質が第2の細胞において発現され、ステップi)およびii)において定義されたように処理され、その後、2つの溶液をステップiii)の実施前に組み合わせる。
【0028】
界面活性剤およびイオン液体は、沈殿したタンパク質を可溶化し、後のステップの間のコイルドコイル構造の形成を可能にしながら、絹タンパク質を溶液中に留めることができる。
【0029】
好ましい実施形態において、界面活性剤はアニオン性界面活性剤である。本発明にとって有用なアニオン性界面活性剤の例は、限定するものではないが、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウムおよび他のアルキル硫酸塩、1-オクタンスルホン酸ナトリウム一水和物、ラウロイルサルコシンナトリウム、ナトリウムラウリルエーテル硫酸(SLES)、タウロデオキシコール酸ナトリウム水和物、およびアルキルベンゼンスルホン酸ならびにそれらの2種以上の組合せを含む。好ましい実施形態において、アニオン性界面活性剤はSDSである。
【0030】
一実施形態では、イオン液体は、
i)塩化物、臭化物、ヨウ化物、チオシアネート、アセテート、C1〜C4-アルキル硫酸、メタンスルホン酸、トシレート、C1〜C4-リン酸ジアルキル、硫酸水素およびテトラクロロアルミン酸から選択されるアニオン、ならびに、
ii)1,3-C1〜C4-ジアルキルイミダゾリウム、3-クロロピリジニウム、4-ジメチルアミノピリジニウム、2-エチル-4-アミノピリジニウム、2-メチルピリジニウム、2-エチルピリジニウム、2-エチル-6-メチルピリジニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、ピリジニウム、1-C1〜C4-アルキルイミダゾリウム、1-メチルイミダゾリウム、1,2-ジメチルイミダゾリウム、1-n-ブチル-イミダゾリウム、1,4,5-トリメチルイミダゾリウム、1,4-ジメチルイミダゾリウム、イミダゾリウム、2-メチルイミダゾリウム、1-ブチル-2-メチルイミダゾリウム、4メチルイミダゾリウム、1-(2'-アミノエチル)イミダゾリウム、1-ビニルイミダゾリウム、2-エチルイミダゾリウムおよびベンゾトリアゾリウム
から選択されるカチオンを含む。
【0031】
さらに好ましい実施形態において、上記方法は、少なくとも約0.1g、より好ましくは少なくとも約1g、より好ましくは少なくとも約1.5g、より好ましくは少なくとも約2g、さらにより好ましくは少なくとも約2.5gの絹タンパク質/リットル培養細胞を産出する。
【0032】
一態様では、本発明は絹ドープを製造するための方法であって、
i)細胞培養物から、または無細胞発現系から上清を得、1種または複数種の絹タンパク質を製造するステップ、
ii)絹タンパク質を、それらと、界面活性剤またはイオン液体とを接触させることによって可溶化するステップ、および
iii)絹タンパク質を濃縮して、絹ドープを製造するステップ、
を含み、1種または複数種の絹タンパク質が、コイルドコイル構造を含む三次構造を形成できる方法を提供する。
【0033】
この態様において、絹ドープを製造するために使用される細胞中の絹タンパク質に代わり、細胞から分泌される絹タンパク質を使用する。当業者が認識するであろうように、第1の態様のステップi)および上記の態様のステップi)は、同時に実施しても、または連続して実施してもよい。さらに、任意の対応するステップにおいて、細胞由来の絹タンパク質と、上清とを組み合わせ、その後一緒に処理することもできる。例えば、第1の態様のステップii)および上記の態様のステップii)を別々に実施し、絹タンパク質を、ステップiii)およびiv)を含むさらなる処理のために組み合わせてもよい。
【0034】
上記の態様の特に好ましい実施形態において、ステップi)は、上清由来の絹タンパク質の濃度を上昇させるステップをさらに含む。このことは、当分野において公知の任意の方法、例えば、上清と、絹タンパク質を沈殿させる薬剤、例えば、限定するものではないが、硫酸アンモニウム、トリクロル酢酸、過塩素酸およびアセトンとを接触させることによって達成できる。
【0035】
上記の態様に関して、細胞から分泌される絹タンパク質ができるだけ多いことが好ましい。したがって、絹タンパク質が、N末端シグナル配列を含むことが好ましい。上記の態様にとって特に有用な絹タンパク質の例は、限定するものではないが、
a)配列番号2、4、6、8、18、20、22、24、34、36、38、40、50、52、54、56、66、68、70、72、82、84、86、88または98の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
b)配列番号2、4、6、8、18、20、22、24、34、36、38、40、50、52、54、56、66、68、70、72、82、84、86、88または98の任意の1つまたは複数と少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、および
c)a)またはb)の生物学的に活性な断片、
から選択される配列を含む、より好ましくは本質的に該配列からなる、さらにより好ましくは該配列からなる絹タンパク質を含む。
【0036】
さらなる実施形態において、絹タンパク質は、
a)配列番号2、18、34、50、66、または82の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
b)配列番号2、18、34、50、66、または82の任意の1つまたは複数と少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、および
c)a)またはb)の生物学的に活性な断片、
を含む、より好ましくは本質的にそれらからなる、さらにより好ましくはそれらからなる第1の絹タンパク質、
d)配列番号4、20、36、52、68または84の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
e)配列番号4、20、36、52、68または84の任意の1つまたは複数と少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、および
f)c)またはd)の生物学的に活性な断片、
を含む、より好ましくは本質的にそれらからなる、さらにより好ましくはそれらからなる第2の絹タンパク質、
g)配列番号6、22、38、54、70、または86の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
h)配列番号6、22、38、54、70、または86の任意の1つまたは複数と少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、および
i)g)またはh)の生物学的に活性な断片、
を含む、より好ましくは本質的にそれらからなる、さらにより好ましくはそれらからなる第3の絹タンパク質、ならびに/または
j)配列番号8、24、40、56、72または88の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
k)配列番号8、24、40、56、72または88の任意の1つまたは複数と少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、および
l)j)またはk)の生物学的に活性な断片、
を含む、より好ましくは本質的にそれらからなる、さらにより好ましくはそれらからなる第4の絹タンパク質を含む。
【0037】
さらなる態様において、本発明は、絹繊維を製造する方法であって、本発明の方法によって製造された絹ドープを押し出すステップおよび/または引き出すステップを含む方法を提供する。
【0038】
ある実施形態において、押し出すステップは、絹ドープを、約5μmから約500μmのキャピラリーチューブに通すステップを含む。
【0039】
特に好ましい実施形態において、上記方法は、
i)1種または複数種の絹タンパク質を産生する細胞を溶解し、細胞から封入体を単離するステップ、
ii)封入体の中の絹タンパク質を、それらと、界面活性剤またはイオン液体とを接触させることによって可溶化するステップ、
iii)絹ドープを製造するために、絹タンパク質を濃縮するステップ、
iv)絹ドープ中の絹タンパク質の濃度を、約2%から約10%の絹タンパク質wt(%)、より好ましくは約3%から約6%の絹タンパク質wt(%)に上昇させるステップ、および
v)脱水溶液中に絹ドープを押し出すステップ、
を含む。
【0040】
上記の実施形態に関して、脱水溶液は、アルコール、例えば、メタノールもしくはエタノール、または高濃度の塩、例えば、MgCl2もしくはNaClを含むことが好ましい。これらの条件下で絹繊維を押し出すことは、湿式紡糸として当分野において一般的に知られている。
【0041】
好ましくは、アルコールはメタノールであり、溶液中のメタノールの濃度は約40%から約80%v/v、より好ましくは約50%から約70%v/vである。この実施形態において、絹ドープは本明細書において定義された、単一の型の絹ポリペプチドまたは2種以上の異なる型、例えば4種の異なる型を含むことができる。
【0042】
別の態様において、本発明は絹フィルムを製造する方法を提供し、上記方法は、本発明の方法により製造された絹ドープをキャスティングするステップを含む。
【0043】
別の態様において、本発明は、本発明の方法により製造された絹ドープを提供する。
【0044】
さらなる態様において、本発明は、本発明の方法により製造された絹繊維を提供する。
【0045】
本発明の方法により製造された絹フィルムをさらに提供する。
【0046】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の絹繊維および/または絹フィルムを含む製品を提供する。
【0047】
本発明の一態様の好ましい特色および特徴が、本発明の多くの他の態様に適用できることは明らかであろう。
【0048】
本明細書を通して、「含む(comprise)」という用語または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、述べられた要素、整数値もしくはステップまたは要素、整数値もしくはステップの群を包含することを意味するが、任意の他の要素、整数値もしくはステップまたは要素、整数値もしくはステップの群の排除を意味するものではないと理解するべきである。
【0049】
これ以降、本発明を、以下の限定されない実施例を用い、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】SDSにおいて可溶化された精製封入体のSDS-PAGEの図である。レーンは組み換えタンパク質AmelF1〜4に対応し、スケールはkDaで示したタンパク質重量である。
【図2】天然ミツバチの絹(A)および組み換え型ミツバチの絹(B)の赤外スペクトルのアミドIおよびIIの領域のフーリエセルフデコンボリューションの図である。構造に対するバンドの帰属は、Table 2(表2)に見出される。
【図3】(A)空気中に引き出した組み換え型ミツバチの絹繊維および(B)空気中に引き出し、その後メタノール中に二度引き出した組み換え型ミツバチの絹繊維の交差偏光顕微鏡法の図である。
【図4】(A)メタノールバス内に押し出した組み換え型ミツバチの絹繊維および(B)風乾し、その後メタノールバス中に、2回、2倍の長さに引き出した組み換え型ミツバチの絹繊維または(C)風乾し、その後メタノールバス中に、2回、4倍の長さに引き出した組み換え型ミツバチの絹繊維の交差偏光顕微鏡法の図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
配列表の特徴
配列番号1-本明細書においてXenospira1と呼ばれるミツバチの絹タンパク質(本明細書においてAmelF1とも呼ばれる)(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号2-本明細書においてXenospira1と呼ばれるミツバチの絹タンパク質。
配列番号3-本明細書においてXenospira2と呼ばれるミツバチの絹タンパク質(本明細書においてAmelF2とも呼ばれる)(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号4-本明細書においてXenospira2と呼ばれるミツバチの絹タンパク質。
配列番号5-本明細書においてXenospira3と呼ばれるミツバチの絹タンパク質(本明細書においてAmelF3とも呼ばれる)(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号6-本明細書においてXenospiral3と呼ばれるミツバチの絹タンパク質。
配列番号7-本明細書においてXenospiral4と呼ばれるミツバチの絹タンパク質(本明細書においてAmelF4とも呼ばれる)(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号8-本明細書においてXenospiral4と呼ばれるミツバチの絹タンパク質。
配列番号9-ミツバチの絹タンパク質のXenospira1をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号10-ミツバチの絹タンパク質のXenospira1をコードするヌクレオチド配列。
配列番号11-ミツバチの絹タンパク質のXenospira2をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号12-ミツバチの絹タンパク質のXenospira2をコードするヌクレオチド配列。
配列番号13-ミツバチの絹タンパク質のXenospira3をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号14-ミツバチの絹タンパク質のXenospira3をコードするヌクレオチド配列。
配列番号15-ミツバチの絹タンパク質のXenospira4をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号16-ミツバチの絹タンパク質のXenospira4をコードするヌクレオチド配列。
配列番号17-本明細書においてBBF1と呼ばれるマルハナバチの絹タンパク質(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号18-本明細書においてBBF1と呼ばれるマルハナバチの絹タンパク質。
配列番号19-本明細書においてBBF2と呼ばれるマルハナバチの絹タンパク質(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号20-本明細書においてBBF2と呼ばれるマルハナバチの絹タンパク質。
配列番号21-本明細書においてBBF3と呼ばれるマルハナバチの絹タンパク質(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号22-本明細書においてBBF3と呼ばれるマルハナバチの絹タンパク質。
配列番号23-本明細書においてBBF4と呼ばれるマルハナバチの絹タンパク質(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号24-本明細書においてBBF4と呼ばれるマルハナバチの絹タンパク質。
配列番号25-マルハナバチの絹タンパク質BBF1をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号26-マルハナバチの絹タンパク質BBF1をコードするヌクレオチド配列。
配列番号27-マルハナバチの絹タンパク質BBF2をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号28-マルハナバチの絹タンパク質BBF2をコードするヌクレオチド配列。
配列番号29-マルハナバチの絹タンパク質BBF3をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号30-マルハナバチの絹タンパク質BBF3をコードするヌクレオチド配列。
配列番号31-マルハナバチの絹タンパク質BBF4をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号32-マルハナバチの絹タンパク質BBF4をコードするヌクレオチド配列。
配列番号33-本明細書においてBAF1と呼ばれるブルドックアリの絹タンパク質(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号34-本明細書においてBAF1と呼ばれるブルドックアリの絹タンパク質。
配列番号35-本明細書においてBAF2と呼ばれるブルドックアリの絹タンパク質(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号36-本明細書においてBAF2と呼ばれるブルドックアリの絹タンパク質。
配列番号37-本明細書においてBAF3と呼ばれるブルドックアリの絹タンパク質(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号38-本明細書においてBAF3と呼ばれるブルドックアリの絹タンパク質。
配列番号39-本明細書においてBAF4と呼ばれるブルドックアリの絹タンパク質(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号40-本明細書においてBAF4と呼ばれるブルドックアリの絹タンパク質。
配列番号41-ブルドックアリの絹タンパク質BAF1をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号42-ブルドックアリの絹タンパク質BAF1をコードするヌクレオチド配列。
配列番号43-ブルドックアリの絹タンパク質BAF2をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号44-ブルドックアリの絹タンパク質BAF2をコードするヌクレオチド配列。
配列番号45-ブルドックアリの絹タンパク質BAF3をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号46-ブルドックアリの絹タンパク質BAF3をコードするヌクレオチド配列。
配列番号47-ブルドックアリの絹タンパク質BAF4をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号48-ブルドックアリの絹タンパク質BAF4をコードするヌクレオチド配列。
配列番号49-本明細書においてGAF1と呼ばれるツムギアリの絹タンパク質(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号50-本明細書においてGAF1と呼ばれるツムギアリの絹タンパク質。
配列番号51-本明細書においてGAF2と呼ばれるツムギアリの絹タンパク質(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号52-本明細書においてGAF2と呼ばれるツムギアリの絹タンパク質。
配列番号53-本明細書においてGAF3と呼ばれるツムギアリの絹タンパク質(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号54-本明細書においてGAF3と呼ばれるツムギアリの絹タンパク質。
配列番号55-本明細書においてGAF4と呼ばれるツムギアリの絹タンパク質(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号56-本明細書においてGAF4と呼ばれるツムギアリの絹タンパク質。
配列番号57-ツムギアリの絹タンパク質GAF1をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号58-ツムギアリの絹タンパク質GAF1をコードするヌクレオチド配列。
配列番号59-ツムギアリの絹タンパク質GAF2をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号60-ツムギアリの絹タンパク質GAF2をコードするヌクレオチド配列。
配列番号61-ツムギアリの絹タンパク質GAF3をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号62-ツムギアリの絹タンパク質GAF3をコードするヌクレオチド配列。
配列番号63-ツムギアリの絹タンパク質GAF4をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号64-ツムギアリの絹タンパク質GAF4をコードするヌクレオチド配列。
配列番号65-本明細書においてVssilk3と呼ばれるスズメバチの絹タンパク質(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号66-本明細書においてVssilk3と呼ばれるスズメバチの絹タンパク質。
配列番号67-本明細書においてVssilk4と呼ばれるスズメバチの絹タンパク質(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号68-本明細書においてVssilk4と呼ばれるスズメバチの絹タンパク質。
配列番号69-本明細書においてVssilk2と呼ばれるスズメバチの絹タンパク質(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号70-本明細書においてVssilk2と呼ばれるスズメバチの絹タンパク質。
配列番号71-本明細書においてVssilk1と呼ばれるスズメバチの絹タンパク質(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号72-本明細書においてVssilk1と呼ばれるスズメバチの絹タンパク質。
配列番号73-スズメバチの絹タンパク質Vssilk3をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号74-スズメバチの絹タンパク質Vssilk3をコードするヌクレオチド配列。
配列番号75-スズメバチの絹タンパク質Vssilk4をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号76-スズメバチの絹タンパク質Vssilk4をコードするヌクレオチド配列。
配列番号77-スズメバチの絹タンパク質Vssilk2をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号78-スズメバチの絹タンパク質Vssilk2をコードするヌクレオチド配列。
配列番号79-スズメバチの絹タンパク質Vssilk1をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号80-スズメバチの絹タンパク質Vssilk1をコードするヌクレオチド配列。
配列番号81-絹タンパク質1と呼ばれるニホンミツバチの絹タンパク質(ABS1とも呼ばれる)(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号82-絹タンパク質1と呼ばれるニホンミツバチの絹タンパク質(ABS1とも呼ばれる)。
配列番号83-絹タンパク質2と呼ばれるニホンミツバチの絹タンパク質(ABS2とも呼ばれる)(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号84-絹タンパク質2と呼ばれるニホンミツバチの絹タンパク質(ABS2とも呼ばれる)。
配列番号85-絹タンパク質3と呼ばれるニホンミツバチの絹タンパク質(ABS3とも呼ばれる)(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号86-絹タンパク質3と呼ばれるニホンミツバチの絹タンパク質(ABS3とも呼ばれる)。
配列番号87-絹タンパク質4と呼ばれるニホンミツバチの絹タンパク質(ABS4とも呼ばれる)(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号88-絹タンパク質4と呼ばれるニホンミツバチの絹タンパク質(ABS4とも呼ばれる)。
配列番号89-ニホンミツバチの絹タンパク質ABS1をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号90-ニホンミツバチの絹タンパク質ABS1をコードするヌクレオチド配列。
配列番号91-ニホンミツバチの絹タンパク質ABS2をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号92-ニホンミツバチの絹タンパク質ABS2をコードするヌクレオチド配列。
配列番号93-ニホンミツバチの絹タンパク質ABS3をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号94-ニホンミツバチの絹タンパク質ABS3をコードするヌクレオチド配列。
配列番号95-ニホンミツバチの絹タンパク質ABS4をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号96-ニホンミツバチの絹タンパク質ABS4をコードするヌクレオチド配列。
配列番号97-本明細書においてMalF1と呼ばれるクサカゲロウの絹タンパク質(マイナスのシグナルペプチド)。
配列番号98-本明細書においてMalF1と呼ばれるクサカゲロウの絹タンパク質。
配列番号99-クサカゲロウの絹タンパク質MalF1をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードするマイナス領域)。
配列番号100-クサカゲロウの絹タンパク質MalF1をコードするヌクレオチド配列。
配列番号101から108-オリゴヌクレオチドプライマー。
【0052】
一般的技術および定義
特に明記しない限り、本明細書において使用するすべての技術用語および科学用語は、当業者(細胞培養、分子遺伝学、絹加工、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学および生化学)により通常理解されるものと同じ意味を有すると解釈されるべきである。
【0053】
特に示さない限り、本発明において利用する組み換えタンパク質、細胞培養および免疫学的な技術は、当業者に周知の標準的な手順である。このような技術は、J. Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning、John WileyおよびSons (1984年)、J.Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989年)、T. A. Brown (編)、Essential Molecular Biology: A Practical Approach、Volumes 1および2、IRL Press (1991年)、D. M. GloverおよびB. D. Hames (編)、DNA Cloning: A Practical Approach、Volumes 1〜4、IRL Press (1995年および1996年)およびF. M. Ausubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience (1988年、現在までのすべての最新版を含む)、Ed HarlowおよびDavid Lane(編) Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory、(1988年)、ならびにJ. E. Coliganら(編) Current Protocols in Immunology、John Wiley & Sons (現在までのすべての最新版を含む)などの出典における文献を通して記載され、説明されている。
【0054】
「および/または」という用語、例えば「Xおよび/またはY」は、「XおよびY」または「XまたはY」のいずれかを意味すると理解するべきであり、両方の意味またはいずれかの意味に対する明確な支持を提供すると解釈するべきである。
【0055】
本明細書において使用する場合、「絹タンパク質」および「絹ポリペプチド」という用語は、絹繊維を製造するために使用できる繊維タンパク質/繊維ポリペプチド、および/または繊維タンパク質の複合体を指す。
【0056】
本明細書において使用する場合、「1種または複数種の絹タンパク質」という用語は、本明細書において定義された第1の絹タンパク質、第2の絹タンパク質などの2種以上の異なる型の絹タンパク質を使用する可能性があるプロセスを指す。したがって、この文脈において、1種の絹タンパク質は、絹ドープを製造するために十分な同一の絹タンパク質分子の集団を意味する。
【0057】
本明細書において使用する場合、「コイルドコイル構造を含む三次構造を形成できる」という用語は、適切な条件下で前記構造を形成するタンパク質の能力を指す。例えば、加工して絹繊維を製造する場合、タンパク質が前記構造を形成する。さらに、この用語は、タンパク質全体がコイルドコイル構造を形成できることを意味するものではなく、それらの一部だけがコイルドコイル構造を形成できることを意味する。ある実施形態において、絹タンパク質の約45%から約90%、より好ましくは約55%から約70%およびさらにより好ましくは約60%から約66%が、コイルドコイル構造を含む三次構造を形成できる。
【0058】
本明細書において使用する場合、「絹ドープ」という用語は、絹タンパク質を含む水溶液を指す。好ましくは、絹ドープは、本明細書において定義した絹タンパク質の少なくとも0.05%w/vを含み、より好ましくは少なくとも0.1%w/v、さらにより好ましくは少なくとも0.5%w/vを含む。ある実施形態において、本発明の方法によって製造される絹ドープは、約05%から約15%(wt%)の絹タンパク質を含む。しかし、絹ドープ中の絹タンパク質濃度を上昇させるさらなるステップを実施しない場合、より典型的な収量は、約0.5%から約4%(wt%)の絹タンパク質である。本発明の方法を使用して製造される絹ドープは、繊維形成および/またはフィルムのキャスティングのための押し出しに適している。
【0059】
本明細書において使用する場合、「絹繊維」は、繊維製品などのさまざまな商品に織ることができる、絹タンパク質を含む細糸を指す。
【0060】
本明細書において使用する場合、「界面活性剤溶液の量を減少させる」またはイオン液体の量を減少させることを含むその変形は、界面活性剤またはイオン液体の合計量を低下させることを意味する。ある実施形態において、減少後の界面活性剤またはイオン液体の濃度は、溶液のさらなる濃縮を伴う任意のステップの前に約10mM未満であり、より好ましくは5mM未満であり、さらにより好ましくは1mMである。
【0061】
本明細書において使用する場合、「脱水溶液」は、濃縮される絹ドープより溶液中の水分濃度が低い任意の溶液、好ましくは水溶液である。
【0062】
本明細書において使用する場合、界面活性剤またはイオン液体と接触させる絹タンパク質を指す場合、「可溶化する」という用語は、界面活性剤またはイオン液体を絹タンパク質と会合させ、それらの凝集を防ぐことによってそれらを溶液中に維持することを意味する。これは、細胞中、特に封入体中に見られる絹タンパク質とは対照的である。
【0063】
「シグナルペプチド」、「N末端シグナル配列」という用語およびそれらの変形は、分泌された成熟タンパク質に先行するアミノ末端のタンパク質/ペプチドを指す。シグナルペプチドは、成熟タンパク質から切断され、したがって成熟タンパク質には存在しない。シグナルペプチドは、分泌タンパク質を細胞膜に向け、細胞膜を越えて移行させる機能を有する。シグナルペプチドはシグナル配列とも称され、当分野において周知である。
【0064】
コイルドコイル絹タンパク質
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、一般的に交換可能に使用され、非アミノ酸基の付加によって修飾されても、またはされなくてもよい、一本鎖ポリペプチド鎖を指す。本明細書において使用する場合、「タンパク質」または「ポリペプチド」という用語は、本明細書に記載の絹タンパク質の変異体、突然変異体、修飾体、アナログおよび/または誘導体もまた含む。好ましい実施形態において、本発明において使用する絹タンパク質は、天然のアミノ酸だけから成っている。
【0065】
タンパク質の同一性%は、GAP(NeedlemanおよびWunsch、1970年)分析(GCGプログラム)によって、ギャップクリエーションペナルティ=5およびギャップエクステンションペナルティ=0.3を用いて決定される。問い合わせ配列は少なくとも15アミノ酸長であり、GAP分析は、2つの配列を少なくとも15アミノ酸の領域にわたってアライメントする。より好ましくは、問い合わせ配列は少なくとも50アミノ酸長であり、GAP分析は、2つの配列を少なくとも50アミノ酸の領域にわたってアライメントする。より好ましくは、問い合わせ配列は少なくとも100アミノ酸長であり、GAP分析は、2つの配列を少なくとも100アミノ酸の領域にわたってアライメントする。さらにより好ましくは、問い合わせ配列は少なくとも250アミノ酸長であり、GAP分析は、2つの配列を少なくとも250アミノ酸の領域にわたってアライメントする。さらにより好ましくは、GAP分析は、2つの配列をそれらの全長にわたってアライメントする。
【0066】
本明細書において使用する場合、「生物学的に活性な」断片は、完全長タンパク質の定義された活性、すなわち絹を製造するために使用される能力を維持する、本発明のタンパク質の一部である。生物学的に活性な断片は、それらが定義された活性を維持する限り、任意のサイズであってよい。
【0067】
「本質的にからなる」という用語またはその変形は、定義されたアミノ酸配列が、定義されたものと比較していくつかの、例えば1個、2個、3個または4個のさらなるアミノ酸を有してもよいことを意味する。例えば、定義された配列がかけている場合、N末端メチオニンを付加してもよい。「からなる」という用語またはその変形は、定義された配列と比較した場合、定義された配列が、さらなるアミノ酸または足りないアミノ酸を、特にN末端およびC末端に有さないことを意味する。
【0068】
定義されたタンパク質に関しては、上に提供された同一性%より高い同一性%の数値は、好ましい実施形態を包含するであろうことが理解されると思われる。したがって、適用できる場合、最小の同一性%の数値を考慮して、タンパク質が、関連のある指名された配列番号に対して、少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.1%、より好ましくは少なくとも99.2%、より好ましくは少なくとも99.3%、より好ましくは少なくとも99.4%、より好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.6%、より好ましくは少なくとも99.7%、より好ましくは少なくとも99.8%およびさらにより好ましくは少なくとも99.9%同一であるアミノ酸配列を含むことが好ましい。
【0069】
本明細書に記載の天然の絹タンパク質のアミノ酸配列突然変異体は、適切なヌクレオチド鎖を、絹タンパク質をコードするアミノ酸に導入することによって、または所望のタンパク質のin vitro合成によって調製できる。このような突然変異体は、例えば、アミノ酸配列内の残基の欠失、挿入または置換を含む。最終タンパク質製品が所望の特徴を保有するという条件で、欠失、挿入または置換の組合せを作り、最終構築体に達することができる。
【0070】
突然変異体(改変)タンパク質は、当分野において公知の任意の技術を使用して調製できる。例えば、本発明のポリヌクレオチドを、in vitroの突然変異誘発に供することができる。このようなin vitroの突然変異誘発技術は、ポリヌクレオチドの適切なベクターへのサブクローニング、E. coli XL-I red (Stratagene)などの「突然変異誘発遺伝子」株へのベクターの形質転換および形質転換された細菌の適切な世代数の繁殖を含む。別の実施例において、本発明のポリヌクレオチドは、Harayama (1998年)によって広範囲に記載されたDNAシャッフリング技術に供される。これらのDNAシャッフリング技術は、おそらく本発明の遺伝子に関連する遺伝子、例えば、本明細書において特徴付けられた特定の種以外の膜翅類または脈翅類の種由来の絹遺伝子に加えて、本発明の遺伝子を含むことができる。突然変異された/改変されたDNAに由来する製品は、本明細書に記載の技術を使用して容易にスクリーニングでき、絹タンパク質として使用できるかどうかを決定できる。
【0071】
アミノ酸配列突然変異体の設計において、突然変異部位の位置および突然変異の性質は、修飾される特徴に依存すると思われる。突然変異のための部位は、例えば、(1)まず保存的な選択のアミノ酸で置換し、その後、達成された結果に応じて、より過激な選択のアミノ酸で置換する、(2)標的残基を欠失する、または(3)他の残基を所定の部位に隣接して挿入する、ことによって、個別に、または連続して修飾されてもよい。
【0072】
アミノ酸配列の欠失または挿入は、一般的に約1から15残基、より好ましくは約1から10残基、通常約1から5の連続する残基に及ぶ。
【0073】
置換突然変異体は、そのタンパク質分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去されており、異なる残基がその場所に挿入されている。置換型突然変異誘発のもっとも頻繁に対象となる部位は、機能にとって重要であることが特定された部位を含む。対象となる他の部位は、さまざまな株または種から得られた特定の残基が同一である部位である。これらの位置は、生物活性にとって重要であると思われる。これらの部位、特に、少なくとも3つの同様に保存された他の部位の配列内に収まる部位は、比較的保存された様式で置換されることが好ましい。このような保存的置換を、「例示的置換」の表題の下にTable1(表1)に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
絹タンパク質のコイルドコイル構造は、コンセンサス配列(abcdefg)nによって表される7アミノ酸の繰り返しによって特徴付けられる。好ましい実施形態において、コイルドコイル構造を有するタンパク質の部分は、7アミノ酸配列abcdefgの少なくとも10コピーを含み、aおよびdの位置のアミノ酸の少なくとも25%はアラニン残基である。
【0076】
好ましい実施形態において、コイルドコイル構造を有するタンパク質は、7アミノ酸の少なくとも12の連続するコピー、より好ましくは少なくとも15の連続するコピー、およびさらにより好ましくは少なくとも18の連続するコピーを含む。さらになる実施形態において、コイルドコイル構造を有するタンパク質は、7アミノ酸の少なくとも28の連続するコピーまでを有することができる。通常、7アミノ酸のコピーは、直列に繰り返される。しかし、それらは必ずしも完全に直列な繰り返しである必要はなく、例えば国際公開番号WO 2007/038837の図5および6に示されるように、数個のアミノ酸を、2つの7アミノ酸の間に見出すことができ、またはいくつかの切断型の7アミノ酸を見出すことができる(例えば、国際公開番号WO 2007/038837の図5中のXenospiralを参照されたい)。
【0077】
コイルドコイル構造を有する絹タンパク質を作ることができるアミノ酸置換に関するガイダンスは、国際公開番号WO 2007/038837の図5および6ならびに表6から10に提供される。本明細書に提供される実験データに基づく有用なアミノ酸置換の予測が、国際公開番号WO 2007/038837の表1に提供される例示的置換と多少なりとも対立する場合、実験データに基づく置換を使用することが好ましい。
【0078】
絹タンパク質のコイルドコイル構造は、高含有量のアラニン残基を、特に7アミノ酸のa、dおよびeのアミノ酸位置に有する。しかし、b、c、fおよびgの位置もまた、高頻度でアラニン残基を有する。好ましい実施形態において、7アミノ酸のa、dおよび/またはeの位置にあるアミノ酸の少なくとも15%がアラニン残基であり、より好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、およびさらにより好ましくは少なくとも50%がアラニンである。さらに好ましい実施形態において、7アミノ酸のaおよびdの両方の位置にあるアミノ酸の少なくとも25%がアラニン残基であり、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、およびさらにより好ましくは少なくとも50%がアラニン残基である。さらに、7アミノ酸のb、c、fおよびgの位置にあるアミノ酸の少なくとも15%がアラニン残基であることが好ましく、より好ましくは少なくとも20%、およびさらにより好ましくは少なくとも25%がアラニン残基である。
【0079】
通常、7アミノ酸は、プロリンまたはヒスチジン残基を1つも含まないであろう。さらに、7アミノ酸は、あるとすれば、数個(1または2)のフェニルアラニン、メチオニン、チロシン、システイン、グリシンまたはトリプトファン残基を含む。アラニンを別にすれば、7アミノ酸中の通常(例えば5%を超える、より好ましくは10%を超える)のアミノ酸は(特に、bおよびdの位置に)ロイシン、(特に、b、eおよびfの位置に)セリン、(特にc、eおよびfの位置に)グルタミン酸、(特に、b、c、d、fおよびgの位置に)リジン、およびgの位置にアルギニンを含む。
【0080】
好ましい実施形態において、7アミノ酸は、パターン認識プログラムMARCOIL (DelorenziおよびSpeed. 2002)を使用することによって決定される。
【0081】
本発明の方法に有用なタンパク質(およびポリヌクレオチド)は、多種多様な膜翅類または脈翅類の種から精製(単離)され得る。膜翅類の例は、限定するものではないが、ハチ亜目(ナチ、アリおよびカリバチ)の任意の種を含み、ハチ亜目は以下の昆虫のファミリーを含む;セイボウ科(Chrysididae)(セイボウ)、アリ科(Formicidae)(アリ)、アリバチ科(Mutillidae)(アリバチ)、ベッコウバチ科(Pompilidae)(ベッコウバチ)、ツナバチ科(Scoliidae)、スズメバチ科(Vespidae)(アシナガバチ、トックリバチ、スズメバチ)、イチジクコバチ科(Agaonidae)(イチジクコバチ)、アシブトコバチ科(Chalcididae)(アシブトコバチ(chalcidids))、アリヤドリコバチ科(Eucharitidae)(アリヤドリコバチ(eucharitids))、ナガコバチ科(Eupelmidae)(ナガコバチ(eupelmids))、コガネコバチ科(Pteromalidae)(コガネコバチ(pteromahds))、ヤセバチ科(Evaniidae)(エンサインワスプ(ensign wasps))、コマユバチ科(Braconidae)、ヒメバチ科(Ichneumonidae)(ヒメバチ)、ハキリバチ科(Megachilidae)、ミツバチ科(Apidae)、ミツバチモドキ科(Colletidae)、コハナバチ科(Halictidae)およびケアシハナバチ科(Melittidae)(オイルコレクティングビー(oil collecting bees))。脈翅類の例は、以下の昆虫ファミリーからの種を含む:カマキリモドキ科(Mantispidae)、クサカゲロウ科(Chrysopidae)(クサカゲロウ)、ウスバカゲロウ科(Myrmeleontidae)(アリジゴク)およびツノトンボ科(Ascalaphidae)(ツノトンボ)。このようなさらなるタンパク質(およびポリヌクレオチド)は、マルハナバチ(Bombus terrestris)、ミルメシア・フォルフィカータ(Myrmecia forficate)、オーストラリアツムギアリ(Oecophylla smaragdma)およびマラダ・シグナータ(Mallada signata)由来の絹に対して本明細書に記載の同じ手順を使用して特徴付けることができる。
【0082】
合成中または合成後に、例えば、ビオチン化、ベンジル化、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質切断、抗体分子または他の細胞リガンドとの連結などにより差次的に修飾されるタンパク質もまた、本発明の範囲内に含まれる。これらの修飾は、タンパク質の安定性および/または生理活性を増加させるために機能できる。
【0083】
ポリヌクレオチド
「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書において「核酸」と交換可能に使用される。
【0084】
ポリヌクレオチドの関連において「外来性」という用語は、細胞中または無細胞発現系中に存在する場合、その天然状態と比較して量が改変されたポリヌクレオチドを指す。一実施形態において、細胞は、ポリヌクレオチドを天然には含まない細胞である。しかし、細胞は、コードされたタンパク質の産生量の改変、好ましくは増加をもたらす非内因性ポリヌクレオチドを含む細胞であってもよい。本発明の外来性ポリヌクレオチドは、外来性ポリヌクレオチドが存在するトランスジェニック(組み換え)細胞または無細胞発現系の他の成分から分離されていないポリヌクレオチドおよびこのような細胞または無細胞系において産生され、その後、少なくともいくつかの他の成分から精製されるポリヌクレオチドを含む。
【0085】
ポリヌクレオチドの同一性%は、GAP(NeedlemanおよびWunsch、1970年)分析(GCGプログラム)によって、ギャップクリエーションペナルティ=5およびギャップエクステンションペナルティ=0.3を用いて決定される。特に明記しない限り、問い合わせ配列は少なくとも45ヌクレオチド長であり、GAP分析は、2つの配列を少なくとも45ヌクレオチドの領域にわたってアライメントする。好ましくは、問い合わせ配列は少なくとも150ヌクレオチド長であり、GAP分析は、2つの配列を少なくとも150ヌクレオチドの領域にわたってアライメントする。より好ましくは、問い合わせ配列は少なくとも300ヌクレオチド長であり、GAP分析は、2つの配列を少なくとも300ヌクレオチドの領域にわたってアライメントする。さらにより好ましくは、GAP分析は、2つの配列をそれらの全長にわたってアライメントする。
【0086】
定義されたポリヌクレオチドに関しては、上に提供された同一性%より高い同一性%の数値は、好ましい実施形態を包含するであろうことが理解されると思われる。したがって、適用できる場合、最小の同一性%の数値を考慮して、本発明のポリヌクレオチドが、関連のある、指名された配列番号に対して、少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.1%、より好ましくは少なくとも99.2%、より好ましくは少なくとも99.3%、より好ましくは少なくとも99.4%、より好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.6%、より好ましくは少なくとも99.7%、より好ましくは少なくとも99.8%およびさらにより好ましくは少なくとも99.9%同一である配列を含むことが好ましい。
【0087】
ある実施形態において、本発明にとって有用な絹タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、
a)配列番号9から16、25から32、41から48、57から64、73から80、89から96、99または100の任意の1つで提供されるヌクレオチド配列、
b)配列番号9から16、25から32、41から48、57から64、73から80、89から96、99または100の任意の1つまたは複数と、少なくとも30%同一であるヌクレオチド、ならびに
c)a)またはb)の一部をコードする生物学的に活性な断片、
から選択される配列を含む、より好ましくは本質的に該配列からなる、さらにより好ましくは該配列からなる。
【0088】
細胞から分泌される絹タンパク質ができるだけ少ないことが好ましい場合、コードされる絹タンパク質は、N-末端シグナル配列を含まない。このような絹タンパク質をコードするポリヌクレオチドの例は、
a)配列番号9、11、13、15、25、27、29、31、41、43、45、47、57、59、61、63、73、75、77、79、89、91、93、95または97の任意の1つで提供されるヌクレオチド配列、
b)配列番号9、11、13、15、25、27、29、31、41、43、45、47、57、59、61、63、73、75、77、79、89、91、93、95または97の任意の1つまたは複数と、少なくとも30%同一であるヌクレオチド配列、ならびに
c)a)またはb)の生物学的に活性な断片、
から選択される配列を含む、より好ましくは本質的に該配列からなる、さらにより好ましくは該配列からなるポリヌクレオチドを含む。
【0089】
本発明の他の実施形態は、N末端シグナル配列を有する絹タンパク質の発現および/または本明細書に定義された第1の絹タンパク質、第2の絹タンパク質、第3の絹タンパク質、第4の絹タンパク質の(同じ細胞または異なる細胞における)同時製造による。配列表に提供される配列情報に基づき、当業者は、本発明の各実施形態に関する発現のための代表的ポリヌクレオチドを容易に特定できる。
【0090】
本発明の方法における使用のためのポリヌクレオチドは、天然の分子と比較した場合、ヌクレオチド残基の欠失、挿入または置換である1つまたは複数の突然変異を保有してもよい。突然変異は天然(すなわち、天然源から単離された)または合成(例えば、核酸における部位特異的突然変異誘発の実施による)のどちらであってもよい。
【0091】
本発明における使用のためのポリヌクレオチドは、ストリンジェトな条件下で、本明細書に提供されるヌクレオチド、例えば配列番号9から16、25から32、41から48、57から64、73から80、89から96、99および100の1つまたは複数をコードする絹タンパク質とハイブリダイズすることもできる。「ストリンジェントな条件」などの用語は、本明細書において使用する場合、ハイブリダイゼーション温度およびオリゴヌクレオチドの長さの変動を含む、当分野においてよく知られるパラメーターを指す。核酸ハイブリダイゼーションのパラメーターは、Sambrookら(上記)およびAusubelら(上記)などの方法を収集する文献に見出すことができる。例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、本明細書において使用する場合、ハイブリダイゼーションバッファー(3.5×SSC、0.02%のFicoll、0.02%のポリビニルピロリドン、0.02%のウシ血清アルブミン(BSA)、2.5mMのNaH2PO4(pH7)、0.5%のSDS、2mMのEDTA)中の65℃におけるハイブリダイゼーション、その後の50℃における0.2.×SSC、0.01%BSAによる、1回または複数回の洗浄を指すことができる。
【0092】
核酸構築体
本発明の方法における使用のための細胞は、通常、絹タンパク質をコードする核酸構築体を含むと思われる。構築体は、細胞のゲノムに統合されても、または組み換えベクターなどの染色体外であってもよい。このようなベクターは、非相同ポリヌクレオチド配列、すなわち、絹タンパク質をコードするポリヌクレオチド分子に隣接して天然には見出されることがなく、ポリクレオチド分子が由来する種以外の種に由来することが好ましいポリヌクレオチドを含有する。ベクターは、RNAまたはDNAのどちらであってもよく、原核性または真核性であってもよく、通常、(米国特許第5,792,294号に記載されるような)トランスポゾン、ウイルスまたはプラスミドである。
【0093】
組み換えベクターの1つの型は、発現ベクターと動作可能に連結される絹タンパク質をコードするポリヌクレオチド分子を含む。動作可能に連結されるという句は、宿主細胞内に形質転換された場合、分子が発現できるような様式の、発現ベクター内へのポリヌクレオチド分子の挿入を指す。本明細書において使用する場合、発現ベクターは、宿主細胞を形質転換でき、特定のポリヌクレオチド分子の発現をもたらし得るDNAまたはRNAベクターである。好ましくは、発現ベクターは宿主細胞内で複製も可能である。発現ベクターは、原核性であっても、または真核性であってもよく、通常ウイルスまたはプラスミドである。本発明の発現ベクターは、細菌、真菌、内部寄生虫、節足動物、昆虫、動物および植物の細胞を含む、本発明の組み換え細胞において機能する(すなわち、遺伝子発現を指示する)任意のベクターを含む。本発明の特に好ましい発現ベクターは、植物細胞において遺伝子発現を指示できる。本発明のベクターは、無細胞発現系においてタンパク質の製造のためにさらに使用でき、このような系は当分野において周知である。
【0094】
特に、核酸構築体は、転写調節配列、翻訳調節配列、複製起点などの制御配列および組み換え細胞と適合性であり、ポリヌクレオチド分子の発現を調節する他の制御配列を含有する。転写調節配列は、転写の開始、伸張および終止を調節する配列である。特に重要な転写調節配列は、プロモーター、エンハンサー、オペレーターおよびリプレッサー配列などの転写の開始を調節する配列である。適切な転写調節配列は、本発明の組み換え細胞の少なくとも1つの中で機能できる任意の転写調節配列を含む。さまざまなこのような転写調節配列が、当業者に公知である。好ましい転写調節配列は、細菌、酵母、節足動物、植物または哺乳動物細胞において機能するもの、例えば、限定するものではないが、tac、lac、trp、trc、oxy-pro、omp/lpp、rrnB、バクテリオファージ・ラムダ、バクテリオファージT7、T7lac、バクテリオファージT3、バクテリオファージSP6、バクテリオファージSP01、メタロチオネイン、アルファ接合因子、ピキア(Pichia)アルコールオキシダーゼ、アルファウイルスサブゲノムプロモーター(シンドビスウイルスのサブゲノムプロモーターなど)、抗生物質耐性遺伝子、バキュロウイルス、ヘリオジス・ジー(Heliothis zea)昆虫ウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、アライグマポックスウイルス、他のポックスウイルス、アデノウイルス、サイトメガロウイルス(前初期プロモーターなど)、シミアンウイルス40、レトロウイルス、アクチン、レトロウイルスのロングターミナルリピート、ラウス肉腫ウイルス、ヒートショック、リン酸塩および硝酸塩転写調節配列および原核細胞または真核細胞において遺伝子発現を調節できる他の配列を含む。
【0095】
上に概説したように、本発明のある態様は、通常N末端シグナル配列の存在のため、細胞から分泌される絹タンパク質による。適切なシグナルセグメントの例は、限定するものではないが、組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)、インターフェロン、インターロイキン、成長ホルモン、ウイルス・エンベロープ糖タンパク質シグナルセグメント、ニコチアナ・ネクタリン(Nicotiana nectarin)シグナルペプチド(米国特許第5,939,288号)、タバコ伸張シグナル、大豆オレオシン油体結合タンパク質シグナル、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)液胞塩基性キチナーゼシグナルペプチド、および本明細書において定義された絹ポリペプチドの天然シグナル配列を含む。
【0096】
細胞
本発明の方法の大部分は、本明細書において定義された1種または複数種の、絹タンパク質を産生する細胞の使用による。ポリヌクレオチド分子の細胞への形質転換は、ポリヌクレオチド分子を細胞内へ挿入できる任意の方法によって達成できる。形質転換技術は、限定するものではないが、形質移入、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着およびプロトプラスト融合を含む。組み換え細胞は、単細胞を維持できる、または組織、器官もしくは多細胞生物へ成長できる。形質転換されたポリヌクレオチド分子は、染色体外を維持できる、または発現されるべきそれらの能力が維持されるような様式で、形質転換された(すなわち組み換え)細胞の染色体内の1つまたは複数の部位に統合できる。
【0097】
形質転換に適切な宿主細胞は、本明細書において定義された絹ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにより形質転換できる任意の細胞を含む。宿主細胞は、絹ポリペプチドを内因性に(すなわち天然に)産生できても、または本明細書において定義された少なくとも1種のポリヌクレオチド分子により形質転換された後にこのようなポリペプチドを産生できても、どちらでもよい。宿主細胞は、本明細書において定義された少なくとも1種の絹タンパク質を産生できる任意の細胞であってよく、細菌、真菌(酵母を含む)、寄生生物、節足動物、動物および植物の細胞を含む。宿主細胞の例は、サルモネラ属(Salmonella)、大腸菌属(Escherichia)、バチルス属(Bacillus)、リステリア属(Listeria)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、スポドプテラ属(Spodoptera)、マイコバクテリア属(Mycobacteria)、トリコプルシア属(Tnchoplusia)、BHK(ベビーハムスター腎臓)細胞、MDCK細胞、CRFK細胞、CV-I細胞、COS(例えばCOS-7)細胞およびVero細胞を含む。宿主細胞のさらなる例は、大腸菌K-12誘導体を含む大腸菌;腸チフス菌(Salmonella typhi);弱毒化された株を含むネズミチフス菌(Salmonella typhimurium);スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda);キンウワバ(Trichoplusia ni);および非腫瘍原性マウス筋芽細胞G8細胞(例えば、ATCC CRL 1246)である。さらなる適切な哺乳動物細胞宿主は、他の腎臓細胞系、他の線維芽細胞系(例えば、ヒト、マウスまたはニワトリの胎児線維芽細胞系)、ミエローマ細胞系、チャイニーズハムスターの卵巣細胞、マウスNIH/3T3細胞、LMTK細胞および/またはHeLa細胞を含む。特に好ましい宿主細胞は、細菌細胞である。
【0098】
当業者は、特定の細胞型のための培地、温度および時間などの適切な培養条件を容易に決定できる。例えば、ある実施形態において、細胞は、約30℃から約37℃において、約24時間から約48時間の間培養された大腸菌である。
【0099】
組み換えDNA技術を使用して、例えば、宿主細胞内のポリヌクレオチド分子のコピー数、それらのポリヌクレオチド分子が転写される効率、得られた転写産物が翻訳される効率および翻訳後修飾の効率を操作することによって、形質転換されたポリヌクレオチド分子の発現を改善できる。ポリヌクレオチド分子の発現を増加させるために有用な組み換え技術は、限定するものではないが、ポリヌクレオチド分子と高コピー数のプラスミドの動作可能な連結、ポリヌクレオチド分子の1つまたは複数の宿主細胞染色体内への統合、プラスミドへのベクター安定配列の付加、転写調節シグナルの置換または修飾(例えば、プロモーター、オペレーター、エンハンサー)、翻訳調節シグナルの置換または修飾(例えば、リボソーム結合部位、シャイン・ダルガルノ(Shine-Dalgarno)配列)、宿主細胞のコドン使用頻度に対応するポリヌクレオチド分子の修飾および転写産物を不安定化する配列の欠失を含む。
【0100】
絹ドープの製造
本発明は、その後広範囲な用途に使用できる絹ドープを製造する方法に関する。
【0101】
本発明の態様の1つのステップは、細胞を溶解し、細胞内で産生され、細胞内に含有される絹タンパク質を遊離させるステップに関する。このステップは、当分野において公知の任意の手段によって実施できる。例えば、細胞懸濁液を一般的に遠心分離し、細胞をペレットにし、細胞を、溶解の準備が整っているより濃縮された溶液に再懸濁する。例えば、細胞は、フレンチプレスに通すこと、Polytron(Brinkman Instruments)を使用した均一化、または氷上における超音波処理によって溶解できる。細菌細胞などの細胞を溶解する代替の方法は、当業者に公知である(例えば、Sambrookら、上記、を参照されたい)。さまざまなキットが細胞溶解のために利用可能であり、例えば、Bugbusterキット(Novagen)およびProteaPrepキット(Protea Biosciences, Inc)が、当分野において周知である。
【0102】
本発明者らは、細菌中で発現された本明細書において定義された絹タンパク質が、不溶性の凝集体(「封入体」)を形成することを特定した。好ましい実施形態において、上記方法は、これらの封入体の単離を含む。いくつかのプロトコルは、タンパク質封入体の精製に適している。例えば、封入体の精製は、通常、上記の方法による細菌細胞の破壊による封入体の抽出、分離および/または精製を伴う。ある実施形態において、さらなる処理のために、細胞を溶解し、細胞膜を可溶化し、および封入体を含む不溶性分画を単離する。
【0103】
本発明のある態様は、上清由来の絹タンパク質濃度の増加による。この場合も先と同様に、当分野において公知の任意の方法によって達成できる。一実施形態において、このことは、上清と、絹タンパク質を沈殿させる薬剤、例えば、限定するものではないが、硫酸アンモニウム、トリクロロ酢酸、過塩素酸およびアセトンまたはPlusOne(Amersham Biosciences)もしくはPerfect-Focus(Geno Technology Inc)などの市販の沈殿剤カクテルとを接触させるステップによって達成される。
【0104】
絹ドープを製造するための本発明の任意選択のステップは、絹タンパク質の収量が十分に高くない場合においても好ましいが、絹ドープ中の絹タンパク質の濃度を上昇させるステップを含む。この場合も先と同様に、水溶液中のタンパク質の濃度を上昇させるための、当分野において公知の任意の方法によって達成できる。特に有用な実施形態において、絹ドープは、吸湿性ポリマーを含む溶液などの脱水溶液に対して透析することによって濃縮される。適切な吸湿性ポリマーの例は、限定するものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、アミラーゼおよびセリシンまたはそれらの2種以上の組合せを含む。PEG分子は、分子サイズの範囲において利用可能であり、PEGの選択は、透析用に選択された膜および要求される濃度の率によって決定される。好ましくは、PEGは、約8,000から約10,000g/molの分子量であり、約25%から約50%の濃度を有する。
【0105】
界面活性剤
一実施形態において、本明細書において定義された絹ドープを製造するステップは、界面活性剤の使用を伴う。本発明者らは、SDSなどの界面活性剤が、界面活性剤の濃度が低い場合、本明細書において定義された絹タンパク質を、コイルドコイル構造を形成させながら、溶液中に留まらせることができるという発見に驚かされた。
【0106】
ある実施形態において、界面活性剤はアニオン性界面活性剤である。本発明において有用なアニオン性界面活性剤の例は、限定するものではないが、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラルリル硫酸アンモニウムおよび他のアルキル硫酸塩、1-オクタンスルホン酸ナトリウム一水和物、ラウロイルサルコシンナトリウム、ナトリウムラウリルエーテル硫酸(SLES)、タウロデオキシコール酸ナトリウム水和物およびアルキルベンゼンスルホン酸またはそれらの2種以上の組合せを含む。好ましい実施形態において、アニオン性界面活性剤はSDSである。
【0107】
絹タンパク質の溶解度を増加する、任意の濃度の界面活性剤が使用できる。例えば、少なくとも約0.1%v/vの界面活性剤が使用される。ある実施形態において、約0.1%から約10%v/v、より好ましくは約0.5%から約2%v/vまたは約0.5%から約5%v/vの界面活性剤が使用される。
【0108】
絹ドープを製造するための本発明の方法のさらなるステップは、絹タンパク質の正しいフォールディングを支援するために、界面活性剤を沈殿させる化合物を加えることによって、溶液中の界面活性剤の量を減少させることを含む。界面活性剤と会合し、界面活性剤の溶解度を低下させる任意の化合物が使用できる。例としては、限定するものではないが、塩もしくはα-シクロデキストリンなどの炭水化物、またはそれらの2種以上の組合せが挙げられる。好ましくは、塩は、カリウム塩またはナトリウム塩である。好ましくは、カリウム塩は塩化カリウムであり、ナトリウム塩は酢酸ナトリウムである。溶液中の界面活性剤の量の減少をもたらす任意の濃度の化合物が使用できる。例えば、化合物は、最終濃度約1mMから約1M、より好ましくは約40mMから約100mMまたは約40mMから400mMになるように添加される。
【0109】
絹ドープを製造するための本発明の方法のさらなるステップは、化合物の添加後に形成される沈殿から溶液を分離することを含む。このことは、遠心分離を、例えば16000gで5分間使用し、絹ドープを含む(絹ドープである)上清(溶液)を取り出すなどの、当分野において公知の任意の方法によって達成できる。このステップ後に、絹タンパク質は、溶液中のタンパク質の少なくとも75%を構成することが好ましく、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも99%、およびさらにより好ましくは100%を構成する。
【0110】
イオン液体
一般的に、イオン液体は、完全にイオンから成っており、約100℃未満、好ましくは約85℃未満の温度において液体である化合物として定義できる。本発明において使用する場合、イオン液体は一般的に、1種または複数種のアニオンおよび1種または複数種のカチオンを含む。好ましい実施形態において、イオン液体は、置換基、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、さまざまな芳香族化合物、例えば、(置換または非置換の)フェニル、(置換または非置換の)ベンジル、(置換または非置換の)フェノキシおよび(置換または非置換の)ベンゾキシ、ならびに置換または非置換された、それらの環状部分に1個、2個または3個のヘテロ原子を有するさまざまな複素環芳香族化合物を含むように、1種または複数種の化合物を誘導体化することによって作製された有機カチオンを含む。誘導体化された化合物は、限定するものではないが、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、アザチアゾール、オキソチアゾール、オキサジン、オキサゾリン、オキサザボロール、ジチアゾール、トリアゾール、デレノゾール(delenozoles)、オキサホスホール、ピロール、ボロール、フラン、チオフェン、ホスホロール、ペンタゾール、インドール、インドリン、オキサゾール、イソオキサゾール、イソテトラゾール、テトラゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、チアジアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピラジン、ピリダジン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、ピラン、アノリン(annolines)、フタラジン、キナゾリン、グアニジン、キノキサリン(quinxalines)、コリン系アナログおよびそれらの組合せを含む。塩基性カチオン構造は、1つずつまたは多数が置換されていても、または非置換であってもよい。
【0111】
イオン液体のアニオン部分は、無機部分、有機部分またはそれらの組合せを含むことができる。好ましい実施形態において、アニオン部分は、ハロゲン、リン酸、アルキルリン酸、アルケニルリン酸、bis(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(NTf2)、BF4-、PF6-、AsF6-、NO3-、N(CN)2-、N(SO3CF3)2-、アミノ酸、置換または非置換のカルボラン、過塩素酸、擬ハロゲン、例えば、チオシアネートおよびシアネート、金属塩化物系Lewis酸(例えば、塩化亜鉛および塩化アルミニウム)またはC1〜6のカルボン酸から選択される1つまたは複数の部分を含む。擬ハライドは、1価であり、ハライドと同様の特性を有する。本発明に従って有用な擬ハライドの例は、シアン化物、チオシアネート、シアネート、雷酸およびアジ化物を含む。1個から6個の炭素原子を含有する例示的カルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、乳酸、ピルビン酸などである。
【0112】
さまざまなイオン液体を、本発明に従って調製および使用できる。特に、上記のカチオンおよびアニオンの任意の組合せが使用できる。1種または複数種のカチオン(上記のカチオンなど)と、1種または複数種のアニオン(上記のアニオンなど)とを組み合わせ、本明細書に記載の条件下で液体である材料を形成させれば十分である。例えば、カチオンのイミダゾリウム部分を、アニオンのハロゲン部分と組み合わせ、必要な条件下で液体であり、実質的に、完全にイオン部分から形成されている材料(例えば、1-ブチル-3-メチル-イミダゾリウム塩化物)を形成できる。したがって、本発明が、非常に多様なイオン液体を包含することは明らかである。本発明に従った使用のためのイオン液体の、特定の限定されない例は、1-ブチル-3-メチル-イミダゾリウム塩化物(「BmimCl」);1-アリル-3-メチル-イミダゾリウム塩化物(「AmimCl」):1-エチル-3-メチル-イミダゾリウム塩化物;1-水素-3-メチル-イミダゾリウム塩化物、1-ベンジル-3-メチル-イミダゾリウム塩化物(「BenzylmimCl」)、1-イソプロピル-3-メチル-イミダゾリウム塩化物;1-m-メトキシベンジル-3-メチル-イミダゾリウム塩化物(「MethoxyBenzylmimCl」)、1-m-メチルベンジル-3-メチル-イミダゾリウム塩化物(「MethylBenzylmimCl」);1-ベンジル-3-メチル-イミダゾリウム塩化物および1-メチル-3-ベンジル-イミダゾリウムジシアナミド(「BenzylmimDca」)を含む。
【0113】
本発明は、イオン液体のさまざまな混合物の使用もまた包含する。実際、イオン液体混合物は、粘度などのカスタマイズされた特性を有するイオン液体を提供するために有用であり得る。例えば、BenzylmimClは比較的粘性のあるイオン液体であるが、その粘性はAmimClと混合することによって有意に低下させることができる。イオン液体混合物の粘度は、このように粘性の高い成分と粘性の低い成分との比率を変動することによって調節できる。
【0114】
本発明に従った使用のためのイオン液体は、文献に従って合成できる。好ましくは、使用前にイオン液体は、真空オーブンにおいて(例えば100℃において)、ある期間、例えば約48時間乾燥させる。一実施形態において、イオン液体は、周囲温度において固体(例えば結晶)であるが、温度を上げると(例えば、約30℃を超える、約50℃を超える、約75℃を超える、または約100℃を超える)液体である材料から形成される。一般的に、結晶材料は適切な容器に配置され、過熱により溶解できる(例えば、Ionic Liquids in Synthesis, Wasserscheid, PおよびWeldon, T. (編), Wiley Pub参照されたい)。もちろんイオン液体は、周囲条件において(例えば、およそ20〜25℃の温度において)液体である材料もまた含むことが可能である。
【0115】
ろ過および/またはクロマトグラフィー
可溶化絹タンパク質は濃縮され、電荷、親水性、親和性、溶解度もしくは安定性またはサイズに基づき、界面活性剤、イオン液体および他の細胞成分などの不純物から分離され得る。分離技術の限定されない例は、硫酸アンモニウム沈殿、クロマトグラフィーおよび膜ろ過(タンジェンシャル・フロー膜ろ過を含む)を含む。分離のためにクロマトグラフィーを利用する実施形態において、例示的方法は、イオン交換(カチオン性またはアニオン性)、アフィニティークロマトグラフィー、親水性相互作用、疎水性相互作用、サイズ排除およびゲル透過を含む(米国特許第6,248,570号を参照されたい)。
【0116】
いくつかの実施形態において、分離は膜ろ過によって実施でき、膜ろ過は、限定するものではないが、シングルパス、デッドエンド、ダイレクトフローろ過(DFF)およびクロスフローまたはタンジェンシャルフローろ過(TFF)などの方法を含む。本発明に従って、ろ過は、定義された範囲の細孔径の半透膜を使用して、サイズに従って分子を分離する原理に基づく。ろ過法と膜の型との組合せが分離に使用できることは当業者には公知である。
【0117】
本発明に従って、膜ろ過は、ポリマー膜または無機膜によってもたらされる細胞成分の分離である。当分野において、液体キャリアから除去される材料のサイズによって定義される、膜の4種の一般的に認められたカテゴリーがある。もっとも小さい細孔径からもっとも大きい細孔径までの膜に通す、連続ろ過の方法は、逆浸透(Reverse Osmosis)(RO)、ナノろ過(Nanofiltration)(NF)、限外ろ過(Ultrafiltration)(UF)および精密ろ過(Microfiltration)(MF)である。
【0118】
上述の膜を用いたろ過は、特定の細孔径を有する膜を使用することによって、それらの分子量に従って分子を分離する。例えば、0.001マイクロメートル未満の細孔径を有するRO膜を用いた分離は、200ダルトン未満の分子量を有する分子を分離することを意図する。包括的な0.001〜0.008マイクロメートルの細孔径を有するNF膜を用いたろ過は、包括的な200ダルトンから15キロダルトン(kDa)の分子量を有する分子を分離することを意図する。包括的な0.005〜0.1マイクロメートルの細孔径を有するUF膜を用いたろ過は、包括的な5kDa〜300kDaの分子量を有する分子を分離することを意図する。包括的な0.05〜3.0マイクロメートルの細孔径を有する精密ろ過膜を用いたろ過は、包括的な100kDa〜3000kDaおよびそれ以上の分子量を有する分子を分離することを意図する。
【0119】
本発明に従って、膜ろ過は、膜の細孔径によって決定される、特定の分子量カットオフ(MQWCO)を有する膜を利用することによって、サイズ排除に基づいて他の成分から可溶化絹タンパク質を分離できる。分画分子量(NMWL)または名目分子量カットオフ(NMWCO)とも呼ばれるMWCOは、膜によるろ過のためのキロダルトンサイズの指定である。MWCOは、膜により90%保有される分子の分子量として定義される。例えば、同じ分子量の分子は有意に異なる形状を有し得るので、MWCOは正確な測定基準ではないが、それにもかかわらず有用な測定基準であり、フィルター製造業者によって一般に用いられる。疎水性膜および親水性膜の両方を、本発明において使用できる。このような膜は、平たいシートとしても、またはらせん状にねじれた形状でも使用できる。中空糸もまた使用できる。UF膜の組成物に関して、限定するものではないが、再生セルロース、ポリエーテルスルホン(その固有の疎水性を改変するために修飾されていても、またはされていなくてもよい)、ポリフッ化ビニリデンならびにセラミック集合体および金属酸化物集合体を含む、任意の数の潜在的膜材料が使用できる。多くのポリエーテルスルホンUF膜が、pH範囲0.5〜13および温度範囲最高85℃に耐えることができる。MF膜の材料は、UF膜に使用されるすべて、およびポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびPTFE(TEFLON(登録商標))を含む。
【0120】
いくつかの実施形態において、可溶化絹タンパク質は、膜またはクロマトグラフィーの使用を伴う、先に続く分離および精製ステップに細胞デブリが干渉することを防ぐために、より小さい細胞成分から大型の細胞デブリを分離するためにろ過され得る。これらの実施形態において、透過物は絹タンパク質を含み、回収される。
【0121】
いくつかの実施形態において、膜は、適切なMWCOを有する分離ステップにおいて使用できる。例えば、本発明の方法に使用される典型的な絹タンパク質は、約30kDaのMWを有する。これらの実施形態において、残余分は絹タンパク質を含み、回収され得る。
【0122】
好ましい実施形態において、タンジェンシャルフローろ過は、絹タンパク質の透析ろ過(diafilter)および濃縮の両方のために機能する。TFFにおいて、通常、溶液流はろ過膜に対して平行する。膜を横切る圧力差は、流体およびろ過可能な溶質(その分子量が膜の分子量より小さい、または球状タンパク質などのように挙動する)を生じ、フィルターを通って流れる。HPTFF(高性能タンジェンシャルフローろ過)において、膜は帯電し、したがって、サイズおよび分子の帯電の両方を使用して、混入物質を分離する(米国特許公開番号20030229212を参照されたい)。本発明に従って、透析ろ過は、断続透析ろ過であっても、または連続透析ろ過であっても、どちらでもよい。断続透析ろ過において、溶液は濃縮され、喪失した量は、新しいバッファーによって置き換えられる。連続透析ろ過において、新しいバッファー溶液の流入によって溶液量は維持され、一方、古いバッファー溶液は除去される。いくつかの実施形態において、絹タンパク質の分離および精製は、限外ろ過膜を使用して、タンジェンシャルフローろ過法によって実施され得る。
【0123】
使用
本発明の方法を使用して製造された絹ドープは、多種多様な医学的、軍事的、工業的および商業的な用途に使用できる。絹ドープは、例えば、順に医療用具、例えば、縫合糸、皮膚移植片、細胞成長マトリックス、代替靭帯および外科用メッシュ、ならびに広範囲の工業製品および商業製品、例えば、ケーブル、ロープ、網、釣り糸、生地、防弾チョッキの裏張り、コンテナ用織物、バックパック、ナップザック、かばんもしくはハンドバックのストラップ、接着性結合材料、非接着性結合材料、ストラップ材料、テント用生地、ターポリン、プールカバー、乗り物カバー、フェンシング材料、シーラント、建築材料、耐候性材料、柔軟性仕切り材料、スポーツ用品などの製造、ならびに実際に、伸張強度および弾力性の高さが所望の特性である繊維または織物のほぼすべての使用において使用できる絹繊維を製造するために使用できる。絹ドープは、パーソナルケア製品、例えば、化粧品、スキンケア、ヘアケアおよびヘアカラーのための組成物の製造、ならびに粒子のコーティング、例えば顔料における使用のための用途もさらに有する。
【0124】
絹は、それらの天然の形態で使用でき、または絹はより有益な効果を提供する誘導体を形成するために修飾されてもよい。例えば、絹は、米国特許第5,981,718号および米国特許第5,856,451号に記載のように、アレルギー誘発性を低下させるためにポリマーとコンジュゲートすることによって修飾できる。適切な修飾ポリマーは、限定するものではないが、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸塩、ポリ(ビニルピロリドン)およびデキストランを含む。別の実施例において、絹は、他のタンパク質修飾因子の選択的消化およびスプライシングによって修飾され得る。例えば、絹タンパク質は、約60℃の昇温状態において、酸を用いた処理によってより小さいペプチドユニットに切断され得る。有用な酸は、限定するものではないが、希塩酸、硫酸またはリン酸を含む。あるいは、絹タンパク質の消化は、水酸化ナトリウムなどの塩基を用いた処理によって実施でき、または適切はプロテアーゼを使用する酵素的消化を使用できる。
【0125】
タンパク質は、パーソナルケア製品用の特定の用途において有益である性能上の特徴を提供するためにさらに修飾され得る。パーソナルケア製品における使用のためのタンパク質の修飾は、当分野において周知である。例えば、米国特許第6,303,752号、米国特許第6,284,246号および米国特許第6,358,501号に一般的に使用される方法が記載されている。修飾の例は、限定するものではないが、水-油エマルジョンの強化を促進するためのエトキシル化、脂肪親和性を提供するシロキシル化および石鹸および洗剤組成物との親和性を援助するためのエステル化を含む。さらに、絹タンパク質は、限定するものではないが、アミン、オキシラン、シアネート、カルボン酸エステル、シリコーンコポリオール、シロキサンエステル、四級化されたアミン脂肪族、ウレタン、ポリアクリルアミド、ジカルボン酸エステルおよびハロゲン化エステルを含む、官能基を用いて誘導体化され得る。絹タンパク質は、ジイミンを用いた反応によって、および金属塩を形成することによっても誘導体化され得る。
【0126】
「ポリペプチド」(および「タンパク質」)の上記の定義と一致して、このような誘導体化分子および/または修飾分子もまた、本明細書において広範に「ポリペプチド」および「タンパク質」と称する。
【0127】
絹ドープは、他の繊維型と一緒に紡ぐおよび/または束ねるもしくは編むことができる。例は、限定するものではないが、ポリマー繊維(例えば、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル)、他の植物および動物を供給源とする繊維および絹(例えば、綿、毛、、カイコまたはクモの絹)ならびにガラス繊維を含む。好ましい実施形態は、10%のポリプロピレン繊維と一緒に編んだ絹繊維である。本発明は、医学的、工業的または商業的な用途のための繊維の製造および生産において一般的に求められると思われる、任意の所望の特徴、例えば、外観、柔らかさ、重量、耐久性、防水性、製造品のコストの改善を強化するために、繊維のこのような組合せの製造が容易に実施できることを企図する。
【0128】
パーソナルケア製品
化粧品およびスキンケア組成物は、化粧品として許容可能な媒質中に有効量の絹を含む無水組成物であってよい。これらの組成物の使用は、限定するものではないが、スキンケア、スキンクレンジング、メイクアップおよびしわ取りの製品を含む。化粧品およびスキンケア組成物のための絹の有効量は、組成物の合計重量に対して約10-4から約30重量%、好ましくは約10-3から15重量%の割合として、本明細書において定義される。この割合は、化粧品またはスキンケア組成物の型の機能として変動し得る。化粧品として許容可能な媒質として適切な組成物は、米国特許第6,280,747号に記載されている。例えば、化粧品として許容可能な媒質は、一般的に組成物の合計重量に対して約10重量%から約90重量%の割合で脂肪物質を含有でき、この場合、脂肪相が少なくとも1種の液体、固体または半固体の脂肪物質を含有する。脂肪物質は、限定するものではないが、油、ワックス、ゴムおよびいわゆるペースト状脂肪物質を含む。あるいは、組成物は、油中水エマルジョンまたは水中油エマルジョンなどの安定な分散系の形態であってもよい。さらに、組成物は、限定するものではないが、酸化防止剤、保存剤、充填剤、界面活性剤、UVAおよび/またはUVB日焼け止め剤、香料、増粘剤、湿潤剤およびアニオン性、非イオン性または両性のポリマーならびに染料または顔料を含む、1種または複数種の従来の化粧品または皮膚科の添加物またはアジュバントを含有してもよい。
【0129】
乳化された化粧品および医薬部外品、例えば、クレンジング化粧品(化粧石鹸、洗顔料、シャンプー、リンスなど)、ヘアケア製品(ヘアダイ、頭髪用化粧品など)、基礎化粧品(一般的なクリーム、乳液、シェービングクリーム、コンディショナー、コロン、シェービングローション、整髪油、パックなど)、メイクアップ化粧品(ファンデーション、アイブローペンシル、アイクリーム、アイシャドウ、マスカラなど)、アロマ化粧品(香水など)、日焼け用および日焼け止め化粧品(日焼けクリームおよび日焼け止めクリーム、日焼けローションおよび日焼け止めローション、日焼けオイルおよび日焼け止めオイルなど)、ネイル化粧品(ネイルクリームなど)、アイライン化粧品(アイライナーなど)、リップ化粧品(口紅、リップクリームなど)、オーラルケア製品(練り歯磨きなど)、バス化粧品(バス製品など)などは、本発明の方法により製造された絹を含む乳化材料の使用により製造可能である。
【0130】
化粧品組成物は、マニキュア液などのネイルケアのための製品の形態であってもよい。マニュキア液は、化粧品として許容可能な媒質中に有効量の絹を含む、爪の処理および着色のための組成物として、本明細書において定義される。マニュキア液組成物における使用のための絹の有効量は、マニュキア液の合計重量に対して約10-4から約30重量%の割合として、本明細書において定義される。マニキュア液のための化粧品として許容可能な媒質の成分は、米国特許第6,280,747号に記載されている。マニュキア液は、通常、溶剤および膜形成物質、例えば、セルロース誘導体、ポリビニル誘導体、アクリルポリマーまたはアクリルコポリマー、ビニルコポリマーおよびポリエステルポリマーを含有する。組成物は、有機または無機の顔料をさらに含有することができる。
【0131】
ヘアケア組成物は、限定するものではないが、シャンプー、コンディショナー、ローション、エアロゾル、ゲルおよびムースを含む、化粧品として許容可能な媒質中に有効量の絹を含む、毛髪の処理のための組成物として本明細書において定義される。ヘアケア組成物における使用のための絹の有効量は、組成物の合計重量に対して約10-2から約90重量%の割合として、本明細書において定義される。ヘアケア組成物のための、化粧品として許容可能な媒質の成分は、米国特許公開番号2004/0170590、米国特許第6,280,747号、米国特許第6,139,851号および米国特許第6,013,250号に記載されている。例えば、これらのヘアケア組成物は、水溶液、アルコール溶液または水-アルコール溶液であってよく、アルコールは、好ましくはエタノールまたはイソプロパノールであり、水-アルコール溶液に関しては、合計重量に対して約1から約75重量%の割合である。さらに、ヘアケア組成物は、上記の通り、1種または複数種の従来の化粧品または皮膚科の添加物またはアジュバントを含有してもよい。
【0132】
ヘアカラーリング組成物は、化粧品として許容可能な媒質中に有効量の絹を含む、毛髪の着色、染色または脱色のための組成物として、本明細書において定義される。ヘアカラーリング組成物における使用のための絹の有効量は、組成物の合計重量に対して約10-4から約60重量%の割合として、本明細書において定義される。ヘアカラーリング組成物のための、化粧品として許容可能な媒質の成分は、米国特許公開番号2004/0170590、米国特許第6,398,821号および米国特許第6,129,770号に記載されている。例えば、ヘアカラーリング組成物は、無機の過酸素系染料酸化剤および酸化可能なカラーリング剤の混合物を一般的に含有する。過酸素系染料酸化剤は、もっとも一般的には過酸化水素である。酸化型ヘアカラーリング剤は、第1の中間体(例えば、p-フェニレンジアミン、p-アミノフェノール、p-ジアミノピリジン、ヒドロキシインドール、アミノインドール、アミノチミジンまたはシアノフェノール)と、第2の中間体(例えば、フェノール、レソルシノール、m-アミノフェノール、m-フェニレンジアミン、ナフトール、ピラゾロン、ヒドロキシインドール、カテコールまたはピラゾール)の酸化型カップリングによって形成される。さらに、ヘアカラーリング組成物は、酸化性酸、捕捉剤、安定剤、増粘剤、バッファー担体、界面活性剤、溶剤、酸化防止剤、ポリマー、非酸化型染料およびコンディショナーを含有してもよい。
【0133】
絹はさらに、化粧品およびコーティング用組成物における使用のための粒子の分散性を改善するために、顔料および化粧品粒子をコーティングするためにも使用できる。化粧品粒子は、化粧品組成物中に使用される顔料または不活性粒子などの微粒子材料として、本明細書において定義される。適切な顔料および化粧品粒子は、限定するものではないが、無機着色顔料、有機顔料および不活性粒子を含む。無機着色顔料は、限定するものではないが、二酸化チタン、酸化亜鉛、鉄の酸化物、マグネシウム、コバルトおよびアルミニウムを含む。有機顔料は、限定するものではないが、D&CレッドNo.36、D&CオレンジNo.17、D&CレッドNo.7、11、31および34のカルシウムレーク、D&CレッドNo.12のバリウムレーク、D&CレッドNo.13のストロンチウムレーク、FD&CイエローNo.5のアルミニウムレークおよびカーボンブラック粒子を含む。不活性粒子は、限定するものではないが、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、マイカ、タルク、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、粉末状Nylon(商標)、全フッ素化アルカンおよび他の不活性プラスチックを含む。
【0134】
絹は、デンタルフロスにもまた使用できる(例えば、米国特許公開番号2005/0161058を参照されたい)。フロスは、モノフィラメント糸またはマルチフィラメント糸であってよく、繊維は、ねじれていても、またはねじれていなくてもよい。デンタルフロスは、個体としてパッキングされても、または任意の所望の長さに一片を切断するためのカッターと一緒に、ロールでパッキングされてもよい。デンタルフロスは、フィラメント以外の、限定するものではないが、ストリップおよびシートなどのさまざまな形状で提供されてもよい。フロスは、限定するものではないが、ワックス、フロス用のポリテトラフルオロエチレンモノフィラメント糸などの異なる材料でコーティングされてもよい。
【0135】
絹は、石鹸にも使用することができる(例えば、米国特許公開番号2005/0130857を参照されたい)。
【0136】
顔料および化粧品粒子のコーティング
顔料および化粧品粒子のコーティングにおける使用のための絹の有効量は、粒子の乾燥重量に対して約10-4から約50重量%、好ましくは約0.25から約15重量%の割合として、本明細書において定義される。使用される絹の最適量は、コーティングされる顔料または化粧品粒子の型に依存する。例えば、無機着色顔料に使用される絹の量は、好ましくは約0.01%重量および20%重量の間である。有機顔料の場合、絹の好ましい量は、約1重量%から約15重量%の間であり、一方、不活性粒子に関しては、好ましい量は、約0.25重量%から約3重量%の間である。コーティングされた顔料および粒子の調製方法は、米国特許第5,643,672号に記載されている。これらの方法は、回転ドラムにかけながら、または混合しながら、絹の水溶液を粒子に加えるステップ、絹と粒子とのスラリーを形成し、乾燥させるステップ、絹の溶液を粒子状にスプレー乾燥させるステップ、または絹と粒子とのスラリーを凍結乾燥するステップを含む。これらのコーティングされた顔料および化粧品粒子は、化粧品処方、塗料、インクなどに使用することができる。
【0137】
生物医学
絹は、創傷治癒を促進するための包帯上のコーティングとして使用できる。この用途のために、包帯材料は、有効量の絹でコーティングされる。創傷治癒用包帯の目的に関して、有効量の絹は、包帯材料の重量に対して約10-4から約30重量%の割合として、本明細書において定義される。コーティングされる材料は、任意の、柔らかく、生物学的に不活性な、多孔質の布または繊維であってよい。例としては、限定するものではないが、綿、絹、レーヨン、アセテート、アクリル、ポリエチレン、ポリエステルおよびそれらの組合せが挙げられる。布または繊維のコーティングは、当分野において公知の多くの方法によって達成され得る。例えば、コーティングされる材料を、絹をコーティングする水溶液に浸漬してもよい。あるいは、絹を含有する溶液を、スプレーガンを使用して、コーティングされる材料の表面にスプレーしてもよい。さらに、絹を含有する溶液を、ローラーコートプリンティングプロセスを使用して表面にコーティングしてもよい。創傷用の包帯は、限定するものではないが、殺菌剤、例えば、ヨウ素、ヨウ化カリウム、ポピドンヨード、アクリノール、過酸化水素、塩化ベンザルコニウムおよびクロルヒキシジン;回復促進剤、例えば、アラントイン、塩酸ジブカインおよびマレイン酸クロロフェニルアミン(chlorophenylamine malate)ならびに血管収縮剤、例えば塩酸ナファゾリン;収れん剤、例えば酸化亜鉛;痂皮生成剤、例えばホウ酸、を含む他の添加物を含んでもよい。
【0138】
絹ドープはさらに、創傷被覆材料としてのフィルムの形態でも使用できる。創傷被覆材料としての、アモルファスフィルムの形態での絹の使用は、米国特許第6,175,053号に記載されている。アモルファスフィルムは、有効量の絹を含有する、結晶化度10%未満の、高密度かつ無孔のフィルムを含む。創傷ケアのためのフィルムに関して、有効量の絹は、約1から99重量%の間として本明細書において定義される。フィルムは、限定するものではないが、セリシンなどの他のタンパク質ならびに上記の殺菌剤、回復促進剤、血管収縮剤、収れん剤および痂皮生成剤を含む他の成分も含有してよい。セリシンなどの他のタンパク質は、組成物の約1から99重量%を含んでよい。上記の他の原料の量は、好ましくは合計で組成物の約30重量%、より好ましくは、約0.5から20重量%である。創傷被覆フィルムは、上述の材料を水溶液中に溶解し、ろ過または遠心分離によって不溶性物質を除去し、アクリルプレートなどの滑らかな固体表面上に溶液をキャスティングし、その後乾燥させることによって調製できる。
【0139】
絹ドープは、縫合糸の製造のためにも使用できる(例えば、米国特許公開番号2005/0055051を参照されたい)。このような縫合糸は、分子量のきわめて高い繊維および絹繊維で作られた編み込みのジャケットの特色をなすことができる。ポリエチレンは強度を提供する。ポリエステル繊維は、高分子量のポリエチレンと一緒に織って、縛り付けの特性の改善を提供できる。絹は、縫合糸の認識および特定を改善するために、対比色を備えることができる。絹はさらに、他の繊維より組織適合に優れ、縫合糸の端と周囲組織の間の有害な相互作用に対する懸念なく、結び目の近くで先端をカットできる。高強度の縫合糸の取り扱い特性は、さまざまな材料を使用して縫合糸をコーティングすることによってもさらに強化できる。縫合糸は、Ethibond No. 5縫合糸の強度を有利に有し、No. 2縫合糸の直径、感触および縛る能力をさらに有する。結果として、この縫合糸は、回旋筋腱板の修復、アキレス腱の修復、膝蓋腱の修復、ACL/PCLの再建、股関節および肩の再建手順ならびに縫合糸アンカーに使用された縫合糸または縫合糸アンカーと一緒の縫合糸の交換などの、大部分の整形外科手順にとって理想的である。縫合糸は、非コーティングであっても、紐の潤滑性、結び目の安全性または耐摩耗性を改善するために、例えば、ワックス(蜜蝋、石油蝋、ポリエチレン蝋など)、シリコーン(Dow Corningシリコーン油202Aなど)、シリコーンゴム、PBA(ポリブチレート酸)、エチルセルロース(Filodel)または他のコーティングを用いてコーティングされてもよい。
【0140】
絹ドープはさらに、ステントの製造にも使用できる(例えば、米国特許公開番号2004/0199241を参照されたい)。例えば、腔内ステントおよびグラフトを含むステントグラフトが提供され、このステントグラフトは絹を含む。絹は、ステントグラフトを受けた宿主において反応を誘導し、この反応が絹ステントグラフトと、絹ステントグラフトの絹に隣接する宿主の組織との接着の強化をもたらすことができる。任意のさまざま手段、例えば、絹をグラフトに編みこむことによって、または絹をグラフトに接着させる(例えば、接着剤を用いて、または縫合糸を用いて)ことによって、絹をグラフトに結合させることができる。絹は、糸、紐、シート、粉末などの形態であってよい。ステントグラフト上の絹の位置に関しては、絹は、ステントの外側にだけ結合できる、および/またはステントグラグトの遠位領域を宿主の隣接した組織に固定する支援をするために、絹は、ステントグラグトの遠位領域と結合できる。所望の処置の部位および特性に依存して、広範囲のステントグラフトを本発明の関連において利用することができる。ステントグラフトは、例えば、分岐グラフトもしくはチューブグラフト(tube grafts)、円柱形もしくは先細(tapered)、自己拡張型もしくはバルーン拡張型、単体もしくはモジュール式などであってよい。
【0141】
絹に加えて、ステントグラフトは、絹の一部または全部にコーティングを含有でき、コーティングがステントグラフトの宿主への挿入において分解する場合、その結果コーティングは絹と宿主との接触を遅らせる。適切なコーティングは、限定するものではないが、ゼラチン、分解性ポリエステル(例えば、PLGA、PLA、MePEG-PLGA、PLGA-PEG-PLGAおよびそれらのコポリマーまたはブレンド)、セルロースおよびセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)、多糖類(例えば、ヒアルロン酸、デキストラン、硫酸デキストラン、キトサン)、脂質、脂肪酸、糖エステル、核酸エステル、ポリ無水物、ポリオルトエステル、およびポリビニルアルコール(PVA)を含む。絹含有ステントグラフトは、生物学的に活性な薬剤(薬物)を含有でき、この薬剤は、ステントグラフトから放出され、その後細胞反応(例えば、細胞内または細胞外のマトリックスの沈着)および/またはステントグラフトが挿入された宿主における線維化反応の強化を誘導する。
【0142】
絹ドープは、ex vivoで靭帯および腱を生産するマトリックスの製造にも使用できる(例えば米国特許公開番号2005/0089552を参照されたい)。絹繊維系マトリックスを、骨髄乾湿細胞(BMSC)などの多能性細胞に播種することができる。生物工学によって作られた靭帯または腱は、適用された機械力に向かう細胞配向および/またはマトリックスの波上構造(crimp)パターンによって、ならびにこのような機械力が適用された場合、機械力または刺激によって生まれる機械負荷の軸に沿った、I型コラーゲン、III型コラーゲンおよびフィブロネクチンタンパク質を含む靭帯および腱特異的マーカーの産生によってもまた、有利に特徴づけられる。好ましい実施形態において、靭帯または腱は、らせん状に組織化された線維束の存在によって特徴付けられる。生産され得る靭帯または腱のいくつかの例は、前十字靭帯、後十字靭帯、回旋筋腱板腱、肘および膝の内側側副靭帯、手の屈筋腱、足首の外側靭帯ならびに顎または側頭下顎骨の接合部の腱および靭帯を含む。本発明の方法によって生産され得る他の組織は、軟骨(関節および半月板の両方)、骨、筋肉、皮膚および血管を含む。
【0143】
絹ドープは、ヒドロゲルの製造にも使用できる(例えば、米国特許公開番号2005/0266992を参照されたい)。絹フィブロインヒドロゲルは、再生医療の足場、細胞培養の基質、創傷およびやけどの被覆材、軟組織の代替、骨充填材および医薬的または生物学的に活性な化合物の支持体としてのそれらの使用を可能にする、開気孔構造によって特徴付けることができる。
【0144】
絹ドープは、皮膚科学的組成物の製造にも使用できる(例えば、米国特許公開番号2005/0019297を参照されたい)。さらに、ドープは、徐放性組成物の製造にも使用できる(例えば、米国特許公開番号2004/0005363を参照されたい)。
【0145】
繊維製品
絹ドープは、繊維製品におけるその後の使用のために、繊維表面用のコーティングを製造するために使用することもできる。このことにより、繊維上にタンパク質フィルムの単層が提供され、滑らかな仕上がりをもたらす。米国特許第6,416,558号および米国特許第5,232,611号は、繊維に対する仕上げコーティングの添加を記載している。これらの開示に記載の方法は、繊維を多様に仕上げる例を提供し、優れた感触および滑らかな表面を提供する。この適用のために、繊維は有効量の絹を用いてコーティングされる。繊維製品における使用のための繊維コーティングの目的のために、有効量の絹は、繊維材料の重量に対して約1から約99重量%の割合として本明細書において定義される。繊維材料は、限定するものではないが、綿、ポリエステル、例えば、レーヨンおよびLycra(商標)、ナイロン、毛ならびに天然の絹を含む他の天然繊維の織物繊維を含む。繊維上に絹を適用するための適切な組成物は、共溶媒、例えば、エタノール、イソプロパノール、ヘキサフルオラノール(hexafluoranols)、イソチオチアノウラネート(isothiocyanouranates)および溶液またはミクロエマルジョンを形成するために水と混合できる他の極性溶媒を含むことができる。絹含有溶液は繊維上にスプレーすることができ、または繊維を溶液に浸漬することができる。必ずしも必要ではないが、コーティングされた材料の気流乾燥が好ましい。別のプロトコルは、絹組成物の織り繊維への適用である。この適用の理想的な実施形態は、ストッキングなどの伸縮可能な織物をコーティングするための絹の使用である。
【0146】
複合材料
絹繊維を、ポリウレタン、他の樹脂または熱可塑性充填剤に加え、パネルボードおよび他の建築材料または木およびパーティクルボードに取って代わる成形家具およびベンチトップとして作製できる。複合材料はさらに、ビルおよび自動車の建造、特にルーフトップおよびドアパネルに使用できる。絹繊維は樹脂を再強化し、材料をより強くし、他のパーティクルボードおよび複合材料と同等または非常に強い、軽量の建造物を可能にする。絹繊維を単離し、合成の複合形成樹脂に加え、または植物由来タンパク質、デンプンおよび油と組み合わせて使用し、生物学に基づく複合材料を製造できる。このような材料の製造に関するプロセスは、特開2004284246号、米国特許第2005175825号、米国特許第4,515,737号、JP47020312および国際公開番号WO 2005/017004に記載されている。
【0147】
紙添加物
絹の繊維特性は、製紙に強度および良質の質感を加えることができる。絹の紙は、綿パルプに絹糸をまだらにすることによって作られ、非常に滑らかなハンドメイドの紙を作製し、ギフトのラッピング、ノートのカバー、キャリーバッグに使用される。絹ドープから紙製品を製造するプロセスは、全般に特開2000139755号に記載されている。
【0148】
先端材料
本発明の絹ドープから製造される絹は、かなりの靭性を有し、濡れた場合、これらの特性の維持において他の絹の中でも目立つ(Hepburnら、1979年)。
【0149】
衣料繊維工業における実質的成長分野は、テクニカルテキスタイルおよびインテリジェントテキスタイルである。健康的、高価値の機能、環境にやさしいおよび個人向けの繊維製品に対する需要が高まっている。本発明の繊維などの、濡れた場合にも特性、特にそれらの強度および伸展性が変わらない繊維は、スポーツウェアーおよびレジャーウェアーならびに作業着および防護服のための機能性衣料にとって有用である。
【0150】
武器および監視の技術における発達は、個人の保護装置および戦場に関連するシステムおよび構造において技術革新を促している。長期被爆に対する材料の耐久性、重い衣服および外部環境からの保護などの従来の要求のほかに、本発明の絹ドープから製造される絹繊維製品は、弾道発射、火および化学物質に抵抗するための加工ができる。このような材料の製造のためのプロセスは、国際公開番号WO 2005/045122および米国特許公開番号2005268443に記載されている。
【実施例】
【0151】
実施例1−ミツバチの絹タンパク質の組み換え型製造および精製
組み換え型発現構築体を作製するために、シグナルペプチドを含まない4種のミツバチの絹遺伝子配列(Genbank受託番号: FJ235088、FJ235089、FJ235090、FJ235091)を、以下のオリゴヌクレオチドプライマーセットを使用して、Sutherlandら(2006年)に記載のcDNAクローンからPCRによって増幅した。:
AmelF1: GGAATT CTC ATG AGT TTG GAG GGG CCG GGC AAC TCG (配列番号101)およびCGGC GGATCC TTA TTA AAA TAC GTT GCT CTT CAA GT (配列番号102);
AmelF2: GGAATT CTC ATG AGC CGC GTG ATT AAT CAC GAG TCC CTG (配列番号103)およびCGGC GGATCC TTA TTA TTC CAA CTT TGC TAC ATG TAT TTT C (配列番号104);
AmelF3: GGAATT CCC ATG GGC GTC GAG GAA TTC AAG TCC TCG (配列番号105)およびCGGC AGATCT TTA TTA AAA TTT TTT ATC CTC AAT A (配列番号106);
AmelF4: GGAATT CCC ATG GCA AGG GAA GAG GTG GAG ACA CGG (配列番号107)およびCGGC GGATCC TTA TTA CTT CAC CTC CCA TTC TTC ATT C (配列番号108)
(クローニング制限酵素部位に下線を引き、太字で示し、cDNA配列が一致する配列をイタリックで示す)。
【0152】
PCR増幅産物を、pET14b発現ベクター(Novagen)の制限酵素部位(AmelF1およびAmelF2: BspH1およびBam HI ; AmelF3: Nco1およびBgl II; AmelF4: Nco1およびBam HI)にクローニングし、発現前にDNAシーケンシングによって配列を確認した。
【0153】
構築体を、Rosetta 2(DE3)コンピテント細胞(Novagen)に形質転換し、絹タンパク質を、振とうフラスコにおいて、50mLのovernight expressインスタントTB培地(Novagen)中で初期発現させた。4種のミツバチの絹タンパク質、AmelF1〜4を、20℃において可溶型ならびに30℃および37℃において不溶型で、大腸菌細胞において合成した。SDS-PAGE(図1)後の相対的なタンパク質バンド強度によって判断したタンパク質のもっとも高い収量は、≧30°Cの温度において長期間(24〜36時間)発現を実施した場合に、封入体から回収されたタンパク質により得られた。質量分析法により確認されたタンパク質の同一性を用いた定量的ゲルバンド強度分析により、封入体から回収されたタンパク質が、本質的に純粋な(>95%)絹タンパク質であることが示された。その後の分析で封入体から可溶化されたタンパク質が、天然様構造に自己組織化したことが見出された。したがって、その後のすべての発現を、組み換え型タンパク質が封入体から回収されるような条件下で実施した。
【0154】
タンパク質の収量を増加させるために、大規模な回分流加醗酵プロセスを開発し、AmelF3に対して最適化した。醗酵を、2リットルのBiostat B培養容器(Sartorius Stedim、Melsungen、Germany)において最小培地(開始容量1.6リットル)を使用して実施した。グルコースを初期炭素源として使用し、IPTGを用いて絹タンパク質の発現を誘導後、グリセロール供給に切り替えた。初期培地は、: KH2PO4、13.3g; (NH4)2HPO4、4gおよびクエン酸1.7g(/リットル)を含有した。培地のpHは、2MのNaOHを使用して最終値7.0に調節した。以下の成分を別々に滅菌し、その後加えた(/リットル最終培地): 40mlの50%(w/v)グルコース、5mlの1M MgSO4; 130μlの0.1Mチアミン塩酸塩; 1mlの100mg/mlのアンピシリンおよびビオチン0.2g; CuSO4 5H2O、2.0g; NaI、0.08g; MnSO4.H2O、3.0g; Na2MoO4.2H2O、0.2g;ホウ酸、0.02g; CoCl2.6H2O、0.5g;ZnCl2、7.0g; FeSO4.7H2O、22.0g; CaSO4.2H2O、0.5gおよびH2SO4、1ml(/リットル溶液)を含有する5mlのビタミン/微量金属溶液。
【0155】
4種の株の醗酵接種材料を、醗酵槽で使用した同じ培地中で、37℃において20時間培養した。ひとたび接種材料を醗酵容器に移したら、培地のpHを、10%(w/v)NH4OHまたは10%(w/v)H3PO4を加えることで7.0に調整し、調節した。温度を37℃に調節し、溶存酸素(DO)濃度を、撹拌速度を最大1100rpmに操作し、必要に応じて純酸素を用いて空気供給を増強することによって40%の空気飽和を超えるように維持した。
【0156】
培養液が、600nmにおける光学密度の値(OD600nm)がおよそ20(接種後約10時間)まで成長した時、IPTGを最終濃度1mMになるように加えた。DO(接種後約12時間)の急激な上昇によって示されるように、グルコースがすべて消費されるまで、醗酵槽を回分様式で動作させた。グリセロール流加回分段階において、400mlの62%(v/v)グリセロール溶液を、50ml/時の速度で醗酵槽に供給した。培養液を24時間成長させ、その後、細胞を、遠心分離によって収穫し、-80℃において保存した。これらの条件下で、醗酵体のOD600nmの値が34であり、可溶化後の精製組み換えAmelF3の収量はおよそ2.5グラム/醗酵体リットルであった。同じ醗酵条件を使用して、他のミツバチの絹タンパク質を発現させた。絹タンパク質AmelF1、2および4を発現する株を、OD600nmの値がそれぞれ30、67および57まで成長させた。可溶化後の精製組み換えタンパク質AmelF1、2および4の収量は、それぞれおよそ0.2、1.5および1.9グラム/醗酵体リットルであった。
【0157】
最適化された流加回分醗酵システムからの2.5g/L精製タンパク質の収量は、任意の組み換え絹タンパク質に関して報告された圧倒的にもっとも高い発現レベルである。この高い収量に寄与した因子は、ミツバチフィブロイン遺伝子のサイズおよび特性ならびに絹タンパク質の構造特性を含む。十分研究されたクモのしおり糸の絹およびカイコの繭の絹をコードする遺伝子の大型のサイズ(>10kbp)および高度に繰り返される特性とは対照的に、ミツバチの絹遺伝子は小型(およそ1kbp)であり、それらのDNA配列中の繰り返しははるかに少ない(Sutherlandら、2006年)。より小さいサイズおよび繰り返しレベルの減少は、成熟前翻訳終止および高度に繰り返すヌクレオチド配列のトランスジェニック発現によりもたらされる切断を含む、遺伝的不安定性を、ミツバチ遺伝子が受けにくいことを意味する。
【0158】
可溶性または封入体の調製のための製造業者のプロトコルに従って、BugBuster Master Mix (Novagen)を用いて繰り返し処理した後で、封入体中の絹タンパク質を、大腸菌細胞から精製した。タンパク質溶液を、4〜12%の勾配をかけたSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)(Invitrogen)によって分析した。組み換え絹タンパク質の同定を、先に記載の(Sutherlandら、2006年)タンデム型質量分析によって確認した。
【0159】
封入体中の絹タンパク質を、3%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)において、60℃で2時間インキュベートして可溶化した。溶液中のタンパク質濃度を、QuantiPro BCAアッセイキット(Sigma)を使用して測定した。必要に応じて、個々の4種の組み換えミツバチの絹タンパク質の溶液を、等モルの比で混合した。過剰なSDSを、KDSの沈殿を起こす5g/L KCl溶液に対して透析することによって、タンパク質溶液から除去した。16000gで5分間の遠心分離によって、沈殿を除去した。
【0160】
実施例2−フーリエ変換赤外分光法(FTIR)
フーリエ変換赤外分光法を使用して、天然および組み換えのミツバチの絹のタンパク質構造を比較した。天然のミツバチの絹シートを市販の巣箱から入手し、ワックスを除去するためにクロロホルム中で広範囲にわたって洗浄し、水溶性の混入物を除去するために温水で広範囲にわたって洗浄した。個々の4種の組み換えミツバチの絹タンパク質の溶液を等モルの比で混合し、フィルムにキャスティングし乾燥させた。これらの試料からの赤外線スペクトルを、i-シリーズイメージング赤外線顕微鏡アクセサリを備えたPerkin-Elmer System 2000フーリエ変換分光器を使用して、透過様式で得た。スペクトルを、Spectrumソフトウェア(version 5.3.1)を使用して回収し、分解能4cm-1において回収した平均256スキャンを表した。回収後のデータ操作および分析を、Grams/AIソフトウェアv5.05を使用して実施した。個々の絹のスペクトルに関するアミドI領域のデコンボリューションを、図2に示す。結果の要約および成分の二次構造の割り当てをTable 2(表2)に表す。
【0161】
【表2】

【0162】
FTIRの結果は、天然のミツバチの絹がおよそ65%のコイルドコイル構造を含有することを示唆しており、これは、配列に基づく先の予測に一致している(Sutherlandら、2006年)。組み換え型の絹のスペクトルは、天然の絹のスペクトルと非常に似ており、組み換え型の絹は59%のコイルドコイル構造を含有することが推定される。
【0163】
実施例3−乾式紡糸
封入体を3% SDS中で可溶化し、全般に0.5〜2wt%の間のタンパク質、最大3wt%のタンパク質の可溶性ミツバチフィブロリン溶液を得た。過剰なSDSを、KCl沈殿によって絹タンパク質溶液から除去した。カリウム沈殿は、最大95%、例えば70〜80%のSDSを除去するが(沈殿の秤量による)、<10%のタンパク質も除去した(溶液中のタンパク質濃度の測定による)。絹溶液を、蜂蜜様の粘度(ほぼ10〜15wt%のタンパク質)が得られるまで、20wt%ポリエチレングリコール(PEG、MW 8000、Sigma)またはSlide-A-Lyzer濃縮溶液(Pierce)に対して長期透析によって濃縮した。濃縮された絹ドープの液滴を1対のピンセットの先端の間に空中浮遊させ、ピンセットを広げ、細い糸を形成させた(図3A)。これらの単一に引き出した糸は空気中で安定であるが、水に溶解した。繊維をその後90%メタノール、10%水のバスに浸し、2回、およそ2倍の長さまで引き出し、風乾させた(図3B)。2倍引き出した(double-drawn)糸は、水に可溶ではなかった。単一に引き出した(single-drawn)繊維および2倍に引き出した繊維を、偏光レンズを備えた光学顕微鏡によって、およびZeiss EVO LS 15環境制御形走査電子顕微鏡によって確認した。
【0164】
ESEMによって画像化された組み換え型絹糸(非掲載)は、断面が円形であり、長さに沿って直径がほぼ均一であった。単一に引き出した繊維は、表面に付着した、塩の結晶であると思われる小体を有したが、2倍に引き出した繊維は滑らかな表面を有した。偏光顕微鏡は、単一に引き出した繊維が複屈折ではないが、2倍に引き出した繊維は強度に複屈折であることを示した(図3)。
【0165】
単一に引き出した繊維および2倍に引き出した繊維ならびに組み換え型絹フィルムを、Australian SynchrotronのSAXS/WAXSビームラインにおいて、広角X線散乱によって分析した。0.886Åの波長および0. 558mのカメラ長は、およそ0.07から1.4Å-1のq-レンジ(range)を提供し、これをベヘン酸銀の標準を使用して較正した。フィルムおよび単一に引き出した繊維に関するWAXSのパターンは、SDS結晶からの強いシグナルによって優位に立ったが、これは2倍に引き出した繊維では検出不可能であった。したがって、本発明者らは、2倍に引き出した糸が、<0.1%のSDS結晶/単一に引き出した糸において見出された単位長さを含有することを計算した。組み換え型絹からのタンパク質の走査パターンは、強いSDS回折が技術の感度を制限したか、または非常に細い2倍に引き出した繊維の場合、シグナル対ノイズの比が低いかのどちらかのために分析できなかった。
【0166】
組み換え型ミツバチの絹糸の強度および拡張性を、Instron Tensile Tester model 4501において、2.5mm/分の速度で測定した。試験は、21℃および65%相対湿度において空気中で実施した。試験の前に、個々の繊維をプラスチックフレーム中の3mmのスロットを横切るように配置し、エポキシ接着剤を用いて固定した。個々の繊維のゲージの長さ(L0)および直径を、光学顕微鏡において測定した。Table 3(表3)は、組み換え型絹繊維の機械的特性と、ミツバチの絹糸腺から引き出した天然繊維の特性とを比較する。
【0167】
【表3】

【0168】
実施例4−湿式紡糸
絹タンパク質を、通常実施例1のように調製した。SDS可溶化後のタンパク質の濃度は、大抵の場合ほぼ3%絹タンパク質であった。タンパク質溶液が低い濃度を有した場合、それらを、20wt%ポリエチレングリコール(PEG、MW 8000、Sigma)またはSlide-A-Lyzer濃縮溶液(Pierce)に対して長期透析によって、溶液が3〜6%絹タンパク質であるまで濃縮した。
【0169】
AmelF1〜4の当モル混合物またはAmelF3単独のどちらかの濃縮された溶液を、10cm、100μmのキャピラリーチューブを通して、10m/分の速度で、細く連続した糸の形成を起こすメタノール溶液(50〜90%メタノール)中に押し出した。糸を空気中で乾燥させ偏光レンズを有する光学顕微鏡によって検査した。糸は、有意な複屈折を示し、糸の中のタンパク質が双方向で並んでいることを示した(図4A)。風乾された繊維を、90%メタノール、10%水のバスに浸し、およそ2倍の長さ(図4B)または4倍の長さ(図4C)に2回引き出し、風乾した。組み換え型のミツバチの絹糸の強度および伸展性を、Instron Tensile Tester model 4501において、2.5mm/分の速度で測定した。試験は、21℃および65%相対湿度において空気中で実施した。試験の前に、個々の繊維をプラスチックフレーム中の3mmのスロットを横切るように配置し、エポキシ接着剤を用いて固定した。個々の繊維のゲージの長さ(L0)および直径を、光学顕微鏡において測定した。
【0170】
Tables 4(表4)および5 (表5)は、引き出さない組み換え型絹繊維の機械特性を記載する。引き出すことによって、強く、水に不溶性の高度に複屈折である糸がもたらされた。
【0171】
【表4】

【0172】
【表5】

【0173】
実施例5−円形偏光二色性(CD)
AmelF3のミツバチの絹タンパク質を、大腸菌の封入体内で発現させた。AmelF3封入体を、同等の乾燥重量の界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を使用してフォールディングを展開し、2〜4%単量体タンパク質溶液を作製した。動的光散乱(DLS)により、100mMのNaClで10倍に希釈されたタンパク質-界面活性剤溶液中の粒子の流体力学的直径が9.2+/-0.1nmと測定された(ピークが粒子体積の98.2%を含有)。同じ実験条件下でタンパク質を含まない3%SDS溶液中のSDSミセルの直径は、5.5+/-0.2nmの単一のピークであった。SDS-タンパク質溶液中にSDSミセルは検出されず、SDSの大部分がタンパク質と結合したことが確認される。
【0174】
タンパク質を、KClを使用してSDSを除去することによって、再フォールディングさせた。ドデシル硫酸カリウムは、SDSより有意に溶解度が低く、溶液外に沈殿し、遠心分離により除去できる。タンパク質溶液を水に対して透析し、塩レベルを低下させ、その後、PEG8000に対して透析することによって濃縮し、3〜4%のタンパク質および0.2〜0.4%のSDS濃度をもたらした。AmelF3溶液を、100 mMのNaClで10倍に希釈した場合(生理学的塩レベルと同等)、粒子直径は、20.3+/-0.7nmに増加し(ピークが粒子体積の86.8%を含有)、AmelF3のコイルドコイルに対して計算されたおよその粒子径と一致している。
【0175】
路長0.01mmのサンドイッチ石英セル(Nova Biotech、El Cajon、CA)に保持されたミツバチAmelF3溶液(0.12%)のCDスペクトルを、温度調節器を有するAVIV Model 410分光光度計(AVIV Biomedical、Inc、Lakewood、NJ)を使用して収集した。すべての試料を、260nmから180nmまで1nmのバンド幅で、25℃においてスキャンし、結果は、4回の繰り返し実験から平均した。AmelF3溶液のCDスペクトルは、220および209nmにおいて強いスペクトル最小値を示し、220nm/209nm比である1.02がコイルドコイル構造を裏付けていた。1またはそれ以上の220nm/209nm比がコイルドコイルの指標であるのに対して、0.86未満の比は孤立したヘリックスの指標である。DLS測定値は、AmelF3溶液に再びSDSを加えた後、流体力学的直径が元の単量体溶液において観察されたサイズに縮小したことを示し、大部分のSDSの除去が、タンパク質を、天然様絹タンパク質の立体構造にフォールディングさせるための必要条件であることが確認された。AmelF3タンパク質とは対照的に、ニホンミツバチ(Apis cerana)由来の相同タンパク質のHisタグを付けた組み換え型は、同等の濃度において、単量体および主としてランダムコイルのままであった(Shiら、2008年)。この結果は、低レベルのSDSの存在下で調製した場合、AmelF3単独では、天然様絹分子構造をとるためにフォールディングされることを示す。
【0176】
特定の実施形態において示されるように、広範に記載した本発明の精神または範囲を逸脱することなく、多数の変形および/または改良が本発明に実施できることは当業者に明らかであると思われる。したがって、本実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。
【0177】
本出願は、2009年8月26日出願の米国出願番号61/237,156および2010年3月19日出願の米国特許出願番号61/315,812の優先権を主張し、これらの双方のその全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0178】
本明細書において述べられた、および/または参照された全文献は、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0179】
本明細書に含まれている文献、条例、材料、装置、記事などの任意の考察は、単に本発明の構成を提供する目的である。これらの事柄のいくつかまたはすべてが先行技術に基づく部分を形成する、または本出願の個々の請求の優先日の前に存在したかのように、本発明に関連する分野における一般的な知見であったことの承認であると解釈するべきではない。
(参考文献)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絹ドープを製造する方法であって、
i)1種または複数種の絹タンパク質を産生する細胞を溶解するステップ、
ii)絹タンパク質を、それらと、界面活性剤またはイオン液体とを接触させることによって可溶化するステップ、および
iii)絹ドープを製造するために、絹タンパク質を濃縮するステップ、
を含み、1種または複数種の絹タンパク質が、コイルドコイル構造を含む三次構造を形成できる方法。
【請求項2】
a)界面活性剤を沈殿させる化合物を加えることによって、溶液中の界面活性剤の量を減少させるステップ、および
b)ステップa)において形成された沈殿から絹タンパク質を含む溶液を分離して、絹ドープを製造するステップ、
によって絹タンパク質を濃縮する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
界面活性剤を沈殿させる化合物が、塩もしくは炭水化物またはそれら2種以上の組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
塩がカリウム塩またはナトリウム塩である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
絹タンパク質が、ろ過によって濃縮される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
絹タンパク質が、膜ろ過によって濃縮される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
膜ろ過が、タンジェンシャルフローろ過である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
絹ドープ中の絹タンパク質の濃度を上昇させるステップをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
絹ドープを、脱水溶液に対して透析するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
脱水溶液が吸湿性ポリマーを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
吸湿性ポリマーが、ポリエチレングリコール、アミラーゼおよびセリシンまたはそれらの2種以上の組合せからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
絹ドープが、少なくとも約0.5%w/vの絹タンパク質を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
絹ドープが、約0.5%から約15%w/vの絹タンパク質を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
細胞が、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞もしくは動物細胞またはそれらの2種以上の組合せである、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
細胞が細菌細胞である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップi)が、溶解した細胞から封入体を単離するステップをさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ステップi)の前に、細胞を培養するステップをさらに含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
コイルドコイル構造を含む三次構造を形成できる絹タンパク質の一部が、7アミノ酸配列abcdefgの少なくとも10コピーを含み、aおよびdの位置のアミノ酸の少なくとも25%がアラニン残基である、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
絹タンパク質が、
a)配列番号1、3、5、7、17、19、21、23、33、35、37、39、49、51、53、55、65、67、69、71、81、83、85、87または97の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
b)配列番号1、3、5、7、17、19、21、23、33、35、37、39、49、51、53、55、65、67、69、71、81、83、85、87または97の任意の1つまたは複数と少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、および
c)a)またはb)の生物学的に活性な断片、
から選択される配列を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
絹タンパク質が、
a)配列番号1、17、33、49、65もしくは81の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
b)配列番号1、17、33、49、65もしくは81の任意の1つもしくは複数と少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、および
c)a)もしくはb)の生物学的に活性な断片、
を含む第1の絹タンパク質、
d)配列番号3、19、35、51、67もしくは83の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
e)配列番号3、19、35、51、67もしくは83の任意の1つもしくは複数と少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、および
f)d)もしくはe)の生物学的に活性な断片、
を含む第2の絹タンパク質、
g)配列番号5、21、37、53、69もしくは85の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
h)配列番号5、21、37、53、69もしくは85の任意の1つもしくは複数と少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、および
i)g)もしくはh)の生物学的に活性な断片、
を含む第3の絹タンパク質、ならびに/あるいは
j)配列番号7、23、39、55、71もしくは87の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
k)配列番号7、23、39、55、71もしくは87の任意の1つもしくは複数と少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、および
l)j)もしくはk)の生物学的に活性な断片、
を含む第4の絹タンパク質、
を含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
第1の絹タンパク質、第2の絹タンパク質、第3の絹タンパク質および/または第4の絹タンパク質が、同じ細胞によって産生される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第1の絹タンパク質、第2の絹タンパク質、第3の絹タンパク質および/または第4の絹タンパク質が、異なる細胞によって産生される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
ステップii)が、ほぼ等モル量の第1の絹タンパク質、第2の絹タンパク質、第3の絹タンパク質および第4の絹タンパク質を含む、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
界面活性剤が、アニオン性界面活性剤である請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
アニオン性界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウムもしくは他のアルキル硫酸塩、1-オクタンスルホン酸ナトリウム一水和物、ラウロイルサルコシンナトリウム、ナトリウムラウリルエーテル硫酸(SLES)、タウロデオキシコール酸ナトリウム水和物、アルキルベンゼンスルホン酸またはそれらの2種以上の組合せを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
イオン液体が、
i)塩化物、臭化物、ヨウ化物、チオシアネート、アセテート、C1〜C4-アルキル硫酸、メタンスルホン酸、トシレート、C1〜C4-リン酸ジアルキル、硫酸水素およびテトラクロロアルミン酸から選択されるアニオン、ならびに、
ii)1,3-C1〜C4-ジアルキルイミダゾリウム、3-クロロピリジニウム、4-ジメチルアミノピリジニウム、2-エチル-4-アミノピリジニウム、2-メチルピリジニウム、2-エチルピリジニウム、2-エチル-6-メチルピリジニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、ピリジニウム、1-C1〜C4-アルキルイミダゾリウム、1-メチルイミダゾリウム、1,2-ジメチルイミダゾリウム、1-n-ブチル-イミダゾリウム、1,4,5-トリメチルイミダゾリウム、1,4-ジメチルイミダゾリウム、イミダゾリウム、2-メチルイミダゾリウム、1-ブチル-2-メチルイミダゾリウム、4-メチルイミダゾリウム、1-(2'-アミノエチル)イミダゾリウム、1-ビニルイミダゾリウム、2-エチルイミダゾリウムおよびベンゾトリアゾリウムから選択されるカチオン、
を含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
絹ドープを製造するための方法であって、
i)細胞培養物から、または無細胞発現系から上清を得、1種または複数種の絹タンパク質を製造するステップ、
ii)絹タンパク質を、それらと、界面活性剤またはイオン液体とを接触させることによって可溶化するステップ、および
iii)絹タンパク質を濃縮して、絹ドープを製造するステップ、
を含み、1種または複数種の絹タンパク質が、コイルドコイル構造を含む三次構造を形成できる方法。
【請求項28】
ステップi)が、上清由来の絹タンパク質の濃度を上昇させるステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
絹タンパク質の濃度を、上清と、絹タンパク質を沈殿させる薬剤とを接触させることによって上昇させる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
絹繊維を製造するための方法であって、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法によって製造された絹ドープを押し出す、および/または引き出すステップを含む方法。
【請求項31】
押し出すステップが、絹ドープを、約5μmから約500μmのキャピラリーチューブに通すステップを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
絹ドープが、アルコールを含む溶液内に押し出される、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
アルコールがメタノールであり、溶液中のメタノール濃度が約40%から約80%v/vである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
絹フィルムを製造する方法であって、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法によって製造される絹ドープをキャスティングするステップを含む方法。
【請求項35】
請求項1から29のいずれか一項に記載の方法によって製造された絹ドープ。
【請求項36】
請求項30から33のいずれか一項に記載の方法によって製造された絹繊維。
【請求項37】
請求項34に記載の方法によって製造された絹フィルム。
【請求項38】
請求項36に記載の絹繊維および/または請求項37に記載の絹フィルムを含む製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−502438(P2013−502438A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525816(P2012−525816)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001095
【国際公開番号】WO2011/022771
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(305039998)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション (92)
【Fターム(参考)】