説明

継ぎ目の溶接された36Ni−Fe構造体とその使用法

本発明は、36%Ni−Fe合金スチールから作られた溶接された構造体、及び極低温を必要とする物質と関連した貯蔵タンク、パイプライン、及び他の装置に使用するための該溶接されたスチール構造体の製造法に関する。該溶接されたスチールは、溶接部及びベーススチールの両方において類似の熱膨張係数を有する。

【発明の詳細な説明】
【関連特許願に対する引照】
【0001】
申請なし
【連邦支援研究に関する記述】
【0002】
申請なし
【技術分野】
【0003】
本発明は、溶接されたスチール、並びにそのような溶接されたスチールの貯蔵タンク、パイプライン、及び他の装置への使用法に関する。さらに特に本発明の溶接されたスチールは、溶接部自体を含めて、低熱膨張係数を持つ鉄‐ニッケル合金からなる。そのような溶接されたスチールは、極低温を必要とする物質、例えば液化天然ガス(LNG)の輸送及び/または貯蔵に適当な構造体を作るのに使用できる。
【背景技術】
【0004】
種々の工業、例えば油及びガスの工業においては、物質を気体状態から冷却し且つ液化しうる極低温を必要とする条件で貯蔵及び輸送することが必要である。例えばLNGを極低温を必要とする条件で、例えば約−110から約−170℃の範囲の温度及び約大気圧から約6000kPaの広い範囲の圧力で貯蔵及び輸送するための容器が必要である。更に他の加圧液体、例えば酸素、窒素、ヘリウム、水素、アルゴン、ネオン、フッ素、空気、メタン、エタン、またはプロパンを極低温を必要とする温度で安全且つ経済的に貯蔵し且つ輸送する容器も必要である。
【0005】
極低温を必要とする物質を貯蔵または輸送するための材料を選択することに関してはいくつかの挑戦がなされている。選択する材料は、極低温を必要とする条件下で十分な延性と引っ張り強度を保持しなければならない。延性のある材料は過度な応力の元で変形するから好ましいが、脆い材料は破断してしまう。多くの材料は、温度が低下するにつれて延性から脆い状態へと変化するから極低温を必要とする用途には不適当である。一方、材料は低い熱膨張係数(CTE)も有さねばならない。このCTEは、温度が低下するにつれての材料内部における収縮量を明示するものである。収縮は、極低温を必要とする構造体内部に熱応力を生じさせ、その幾何学的状態を変化させる。それゆえに、より低いCTEはこのような影響を最小にしよう。特に極低温を必要とするパイプ類は、パイプ内における流れの遅延を犠牲にしても高CTEによる熱応力を軽減するためにパイプのループ化がしばしば必要である。
【0006】
一般に金属は、低温における高機械的強度及び延性挙動が故に極低温を必要とする材料にうってつけである。多くの金属は極低温を必要とする条件で脆いけれど、面心立方結晶構造(fcc)を有する金属、例えばアルミニウム、銅、ニッケル、及びこれらの合金は延性である。ニッケルを35−50重量%で含んでなるニッケル‐鉄合金は低CTEのために好適なfcc金属である。時にFeNi36と言及され且つインフィーアロイズ(Imphy Alloys)から商標「インバー(Invar)」として通常販売されている36%Ni−Fe合金は異常に低いCTEを有するが故に好適である。
【0007】
金属の極低温を必要とする構造体への加工も無比の難題を呈する。材料全体に均質な性質を持つ構造体を作ることは望ましいことである。特に極低温を必要とする構造体が均質な機械的強度及び熱膨張性を示すことは望ましい。構造体が均質な機械的強度でないならば、より強い領域で許容される応力においてでさえ、より弱い領域で破断が開始されるであろう。一方、不均質な熱膨張挙動は、極低温を必要とする条件下において付加的な応力
を生じさせる。構造体のある領域がより高いCTEのためにより大きな収縮を示す場合、その高及び低CTE領域間の境界に沿って機械的破断を引き起こしうる付加的な応力を生じさせる。この現象はしばしば「CTE不適合(mismatch)」として言及される。
【0008】
機械的強度及びCTEにおける変化を回避するために、極低温を必要とする金属構造体は、しばしば単一の鋳型またはビレット(billet)から成形されて均質な材料性を獲得する。例えば金属のパイプは、先ずビレットを凡そ1000℃まで加熱し、マンネスマンピアス(Mannesmann Piercing)法を用いてビレットの軸に沿って長い孔を開けることにより、単一のスチールビレットから作ることができる。次いでこの壁厚及び直径は、一連の押出し及び熱または冷サイジング(sizing)法により所望の幾何学的形体に成形される。このような加工は極低温を必要とする構造体に対して均質な機械的強度とCTEを得るのに有効である。しかしながらこれらの用途は経済性及び構造体の大きさを考慮すると限定されてしまう。一般にビレットまたは鋳型を作ることは、高温と長たらしい押出しやサイジングとが必要であるから他の技術よりも経費がかかる。更に、作られた構造体の全寸法は鋳型の容量や加工すべきビレットによって制限される。単一の鋳型またはビレットから極低温を必要とする金属構造体を作ることは、鋳造、鍛造、または他の方法で現在製造できる物体の容積に限界があるので実用的でない。輸送容器も単一の鋳型またはビレットから作られる構造体の寸法に限定されよう。
【0009】
極低温を必要とする金属構造体を単一の鋳型またはビレットから作る別法として、材料を継ぎ目に沿って接合する溶接法で構造体を作ることができる。典型的な溶接法は、あるエネルギー源を継ぎ目に沿って適用し、冷却時に合体し且つしっかりした結合を形成する溶融材料の溜めを形成させることを含む。極低温を必要とする構造体を溶接するには、ガスフレーム、電気アーク、電子線、摩擦及び超音波を含む多くのエネルギー源が使用できる。
【0010】
しばしばベース材料の溶接を補助するために、充填材材料が継ぎ目に沿って付加される。この充填材材料は溶接過程で溶融し且つ合体して、接合の継ぎ目に沿って固化する溶接ビード(weld bead)部分になる。充填材材料の使用は、しばしば溶接体の種々の性質を改善する。例えば充填材材料は、溶接部がベース材料よりも機械的に強くて、機械的破断がその溶接した継ぎ目に沿って起こらないことを保証するように選択することができる。
【0011】
極低温を必要とする構造体に対する溶接技術の使用例は、パイプ類の製造である。パイプは、最初に高速ロール成形ミルを用いて金属プレートを特定の直径、長さ、及び長さ方向の継ぎ目域を有する管形に成形することによって作ることができる。次いでパイプ化に及び極低温を必要とする工業基準で必要とされるごときベース材料よりも機械的に強い充填材金属材料を用い且つタングステン不活性ガス(TIG)溶接としても公知のガスタングステンアーク溶接を利用して、継ぎ目域を溶接してよい。
【0012】
溶接技術は、より大きな構造体の製造を可能にするが故に極低温を必要とする構造体を作るのにしばしば好適であり、ビレットまたは鋳型を作るよりも経済的である。その原材料は、ビレットまたは鋳型を作る代わりに、より低経費の連続キャスティングで作られた金属プレートであってよい。溶接法は、必要ならば複数のプレートを溶接しうる。従って作る構造体の大きさは原材料によって制限されず、いくつかの場合には現場で作り、輸送の制限を回避することができる。更に、溶接法自体は、押出し及び/または熱及び冷加工の別法よりも経済的でありうる。
【0013】
これらの利点にもかかわらず、極低温を必要とする構造体の製造に対する溶接技術の利
用は、本質的に不均質な材料性を生じさせるが故に制限される。普通溶接された継ぎ目は、継ぎ目に沿って異なる微構造を生じさせる。典型的には、ベース金属に適合する充填材材料を使用する溶接はより大きいグレイン寸法(grain size)を生じさせ、これが破断に敏感である機械的により弱い継ぎ目をもたらす。溶接された継ぎ目に沿う破断を避けるためには、しばしば機械的により強い充填材材料を用いて、継ぎ目をベース材料よりも強くする。それにもかかわらず、36%Ni−Fe合金の溶接に使用されるより強い充填材材料は、普通(強度に対する合金付加物のために)ベース材料よりも大きいCTEを有し、これが極低温を必要とする条件下に破断するかもしれないCTE不適合性に帰結する。かくして、改良された継ぎ目の溶接できる36%Ni−Fe合金構造体及びこの製造並びに使用法に対するたゆまぬ必要性が現存している。
【発明の概略】
【0014】
本発明は、構造体の溶接部及びベース材料の両方において類似の熱膨張係数を有する構造体を溶接する方法に関する。更に特に、本発明は36%Ni−Fe合金から構造体、例えば極低温を必要とする液体の輸送、運搬、または貯蔵のような極低温を必要とする用途に使用するためのパイプのような構造体を製造する新規な方法に関する。
【0015】
ある具体例において、構造体の溶接法は、(1)所望の壁厚、長さ、及び継ぎ目域の構造体を成形し、(2)過剰な溶接合金が継ぎ目域において溶接ビード部分として残るように、該構造体をその継ぎ目域に沿って36%Ni−Fe合金で溶接し、(3)継ぎ目域における厚さが構造体の壁厚と凡そ同一であるように溶接ビードを硬化加工(例えば冷加工)し、そして(4)該継ぎ目域を熱処理する、ことを含む。熱処理の完了時には、継ぎ目域内のグレイン(grain)の大きさは構造体の残りのそれと類似である。そのような構造体は極低温を必要とする用途及び条件において有用である。
【0016】
他の具体例において、パイプは、(1)予め決めた管厚及び長さを有する管形体、及び(2)管形体の長さを延長する溶接された継ぎ目、を含む。この管形体と溶接継ぎ目は36%Ni−Fe合金で作られ、実質的に同一のグレイン寸法を有する。このようなパイプは極低温を必要とする用途及び条件において有用である。
【0017】
本発明のこれらの及び他の具体例、特徴及び利点は以下の詳細な記述及び実施例を参照して明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明のより詳細な記述のために、今や添付する図面を参照しよう。
【図1】図1は種々のNi−Fe合金組成物の熱膨張係数のグラフである。
【図2】図2は本発明による加工工程の流れ図である。
【図3】図3a−3bは本発明による異なる溶接接合の透視図である。
【発明の詳細な記述】
【0019】
本発明は、極低温を必要とする条件下に使用するのに適した構造体(例えばパイプ)に成形しうる36%Ni−Fe合金の溶接に関する。36%Ni−Fe合金は、それが極低温を必要とする温度において延性であり且つその組成がNi−Fe合金に対して異常に低いCTE最小値を与えるから極低温を必要とする構造体に用いるのに望ましい。図1を参照すると、一連のNi−Fe合金組成物に対するCTEを示すグラフが提示されている。図1からは、36%Ni−Fe合金に対して−196℃で約1.3x10−6−1という明瞭なCTEの最小値が明らかである。これは典型的なステンレス鋼のCTEの凡そ1/10である。
【0020】
本明細書に使用するごとき36%Ni−Fe合金は、それぞれ全体が本明細書に参考文
献として引用されるASTM F1684またはASTM A333/A333M明細書に定義されている。具体例において、36%Ni−Fe合金は36%のNiを、ASTM明細書に記述される量のFe及び痕跡元素と共に含んでなる。ある具体例において、36%Ni−Fe合金はASTM F1684に記述されているごとき合金UNS No.K93603を含んでなる。ある具体例において、36%Ni−Fe合金はASTM A333/A333Mに記述されるごとき合金グレード11を含んでなる。ある具体例において、36%Ni−Fe合金は表1に記述される1つまたはそれ以上の合金を含んでなる。ある具体例において、36%Ni−Fe合金は図1のプロットで示すようなCTE最小値を有する合金を含んでなる。すべての元素は重量%で表示されている。
【表1】

【表2】

【0021】
出発またはベース材料は、好ましくは連続キャスティング法または技術的に公知の同様の方法によって作られた1つまたはそれ以上のプレートである。具体例において、これらのプレートはASTM F1684またはASTM A333/A333Mの明細書に言及されるように更に特徴付けられる。金属プレートは所望の性質、例えば平滑性、耐腐食性などを達成するために更なる加工に供してもよい。本プレートは好ましくは出発材料内に均一な機械的性質を保証するために実質的に均質なミクロ構造を有する。
【0022】
今や図2を参照すると、本開示による加工工程200を例示する流れ図が提示される。上述したように、最初にプレートを溶接に先立って所望の幾何学的形体210にするために、技術的に公知の種々の金属加工工程に出発材料を供することができる。出発材料は穿孔、旋盤、スレッディング(threading)、切断、研磨または技術的に公知の他の加工を含む種々の技術により機械処理できる。更に出発材料は鍛造、圧延、押出し、回転加工、曲げ、または技術的に公知の他の技術を介して作られていてもよい。例えばプレートは熱または冷圧延に供してパイプを作るための管形にすることもできる。いくつかの具体例において、次いでパイプの端を機械加工技術により先細にしてもよい。
【0023】
所望の幾何学的形体が達成されるや、少なくとも1つの継ぎ目を溶接技術220、例えばシールド金属アーク、ガスタングステンアークまたはタングステン不活性ガス(TIG)、ガス金属アークまたは金属不活性ガス(MIG)、プラズマアーク、電子線、オキシアセチレン、スポット溶接、継ぎ目溶接、射出溶接、フラッシュ溶接、または技術的に公知の他の技術で溶接する。溶接にはいずれの接合法も使用できる。例えば図3aに示すような突合せ接合または図3bに示すようなシングルVプレパレーション(preparation)接合が使用できる。更なる適当な接合種は、コーナー接合、端接合、ダブルVプレパレーション接合、シングルU接合、及びダブルU接合を含む。例えば図3bに示すように、シングルVプレパレーション接合は、継ぎ目の軸に沿う1点で合わさってV形を形成する2つの傾斜した表面を含む。接合の幾何的形体内の空隙は、溶接工程中に付加されて溶接ビードを形成する充填材材料を適応させる。これは将来の冷却による縮小に備えて故意にベース材料よりも厚く作られる。充填材材料は、種々の接合様式で形成される空隙を充填するために正確にまたは実質的に36%Ni−Fe合金ベース材料と同一の組成であるものが使用できる。充填材とベース材料の適合は、CTEが溶接した継ぎ目とベース材料の両方において正確にまたは実質的に同一であることを保証し、CTEの不適合を
回避する。ある具体例においては、36%Ni−Fe合金の充填材材料を使用して、36%Ni−Feプレートから形成されるシングルV接合内においてガスタングステンアーク溶接により溶接ビードを形成させる。
【0024】
溶接した継ぎ目が固化した後、溶接した継ぎ目を冷加工するために、継ぎ目を硬化加工工程230、例えば冷圧延、平らな仕上げ、または技術的に公知の他の方法に供する。理論によって限定されることを意図しないが、硬化加工工程230は断層(dislocation)の密度を増加させ、及び/または続く熱処理または焼鈍工程中にグレイン精錬(refining)で使用するための材料に活性化エネルギーを付加する。金属の降伏機構は断層の動きを含む。断層密度の増加は、断層がおそらく互いに交叉して「ジョッグ(jog)」を形成するから、その動きを妨害する。降伏に対する機作が妨害されるから、溶接した継ぎ目の降伏強度は上昇しよう。ある具体例において、溶接した継ぎ目は、継ぎ目を平らな仕上げで継ぎ目の厚さを減じることにより硬化加工される。平らに仕上げた継ぎ目は、約20−約60%だけ、他に約20、25、30、35、40、45、50、55、または60%だけ厚さを減じてもよい。ある具体例において、継ぎ目は、溶接ビードがベース材料と同様の(例えば凡そまたは実質的に等しい)厚さであるように平らに仕上げられる。
【0025】
溶接した継ぎ目または全体の構造体は、溶接した継ぎ目内のグレイン寸法を、ベース材料と同様の(例えば凡そまたは実質的に等しい)グレイン寸法まで減じるために、加熱処理または焼鈍し工程240に供せられる。ある具体例において、溶接した継ぎ目内の平均グレイン寸法は、ベース材料中の平均グレイン寸法から10%またはそれ以下だけずれる。理論に束縛される意図はないが、グレイン寸法の減少は降伏を可能にする断層の動きを固定するより多くのグレイン境界をもたらし、降伏強度が向上させる。そして、材料を破断するのに必要とされる応力量はグレイン寸法に逆比例するから、材料の極限引張り強度は熱処理工程で増加する。熱処理工程240の完了後、溶接ビードはベース材料の強度に等しいか、それを越える。例えば溶接ビード及びベース材料は、両方ともが適用できる明細書、例えば本明細書に開示されるASTMに記述される最小引張り強度を凌駕しうる。
【0026】
ある具体例において、溶接した継ぎ目自体は局所的加熱に供され、或いは全構造体はグレイン寸法精錬のために、延性挙動を可能にする均一なグレイン構造を達成するために、溶接した継ぎ目または継ぎ目域を結晶化させるために、或いはこれらの組み合わせのために有効な条件で加熱される。適当な熱処理条件は、溶接した継ぎ目及び/または全構造体を、溶接した継ぎ目及び/または継ぎ目域がそのような変化(例えば結晶化、グレイン寸法の精錬/均一性など)を受けさせるのに十分なまたは有効な時間及び温度で加熱することを含む。ある具体例においては、溶接した継ぎ目及び/または全構造体を、そのような変化(例えば結晶化、グレイン寸法の精錬/均一性など)を受けさせるのに十分な時間760−870℃(1400−1600°F)まで加熱する。溶接した継ぎ目または全構造体は、多段熱処理サイクルに供してもよい。
【0027】
熱処理時に、継ぎ目または全構造体は、所望によりブラスティング(blasting)、クリーニング、または酸洗浄を含む種々の中間及び/または仕上げ技術に供してもよい。例えばいくつかの場合、溶接部を超音波で検査することが望ましい。同様に、いくつかの場合、構造体は酸化物の付着物を除去するためにブラスティングまたは化学的酸洗浄に供することができる。製造した構造体には、随時コーティングを施してもよい。
【0028】
完成した溶接継ぎ目はベース材料と同様の組成及びグレイン構造を有するから、本方法は標準的な溶接技術を使用することにより凡そ均一な機械的強度及び熱膨張性の構造体を形成することができる。この構造体の機械的強度は、降伏強度、極限引張り強度及び靭性によって測定されるように、極低温を必要とする条件下に使用するのに十分であろう。
【0029】
極限引張り強度は、標準的な引張り試験技術、例えば全体が本明細書に参考文献として引用されるASTM 標準E8−04、「金属材料の標準的引張り試験法」に記述されている技術で測定しうる。ある具体例において、ベース材料及び構造体の溶接継ぎ目の両方は、室温において58ksiに等しいまたはそれより大きい、他に60ksiに等しいまたはそれより大きい、或いは他に65ksiに等しいまたはそれより大きい極限引張り強度を有する。
【0030】
降伏強度は、標準的な引張り試験技術、例えばASTM 標準E8−04、「金属材料の標準的引張り試験法」に記述されている技術で測定しうる。ある好適な具体例において、ベース材料及び構造体の溶接継ぎ目の両方は、室温において30ksiに等しいまたはそれより大きい、他に33.33ksiに等しいまたはそれより大きい、或いは他に35ksiに等しいまたはそれより大きい降伏強度を有する。
【0031】
本発明は、工業工程で使用するための構造体、例えば低CTEを必要とする構造体、例えば極低温を必要とする条件下に機能するものを作るために使用できる。特に本発明は、限定するわけではないが窒素、酸素、ヘリウム、水素、ネオン、フッ素、アルゴン、メタン、空気、プロパン(LP)、及び天然ガス(LNG)を含む液化ガス類の貯蔵、運搬、及び輸送用の構造体を作るのに適当である。適当なガス液化法及び関連装置並びに構造体の例は、それぞれ全体が本明細書に参考文献として引用される米国特許公開第20030005698号、及び米国特許第7,074,322号、第7,047,764号、第7,127,914号、第6,722,157号、第6,658,8921号、第6,647,744号、第6,250,105号、第6,158,240号、第6,125,653号、第6,070,429号、第6,023,942号、第5,724,833号、第5,651,270号、第5,600,969号、第5,611,216号、第5,473,900号、第4,698,080号、第4,548,629号、第4,430,103号、第4,225,329号、第4,195,979号、及び第4,172,711号に開示されている。
【0032】
本発明を用いて実行しうる構造体は、パイプ設備に通常使用される幾何学的構造体、例えば管形またはエルボウ接合体、或いは貯蔵タンクにおけるそれら、例えば球形または皿型、楕円型または平面型端部を有する円筒形におけるそれらを含む。そのようなパイプ及び貯蔵タンクは、海上設備、例えばプラットフォーム、ドック、及びタンカー船を含む陸上または沖合いでの液化、輸送、貯蔵、または再気化設備に使用できる。選択するいずれかの構造体において、構造体は所望の壁厚、長さ、及び溶接域を含む。本発明は、管形がプレートから容易に作れ、容易に平らにすることができる線状の継ぎ目を含むパイプ系の製造に特に適当である。
【0033】
本発明の好適な具体例を提示し且つ記述してきたが、同業者は本発明の精神または教示から逸脱しないでその改変を行うことができる。本明細書に記述する具体例は、単なる例示であって、限定するものではない。システム及び装置の多くの変形及び改変は可能であるが、本発明の範囲内にある。例えば本発明は特別な幾何学的構造体に限定される意図はなく、極低温を必要とする条件下に機能するいずれかの構造体の製造に使用できる。従って、本発明の保護範囲は本明細書に記述される具体例に限定されず、以下の特許請求の範囲よって限定されるだけである。その範囲は特許請求の範囲の内容のすべての同等物を包含するものである。特に順序が系統だって列挙されてない場合、特許請求の範囲における請求項の列挙は、請求項が特別な順序で行われること、或いはいずれかの請求項が他の請求項の開始前に完結しなければならないことを要求する意図はない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の壁厚、長さ、及び継ぎ目域の、36%Ni−Fe合金ベース材料から作られた構造体を形成し、
過度な溶接強化が継ぎ目域における溶接ビード部分として残るように、該構造体を継ぎ目域に沿って36%Ni−Fe合金充填材で溶接し、
継ぎ目域における厚さが減じられるように該溶接ビードを冷加工し、そして
継ぎ目域にベース材料に凡そ等しいまたはそれより大きい極限引張り強度、降伏強度、または両方を有しせしめるのに有効な条件下に継ぎ目域を熱処理する、
ことを含んでなる構造体の溶接法。
【請求項2】
継ぎ目域及びベース材料が58ksiに等しいまたはそれより大きい極限引張り強度を有する、請求項1の方法。
【請求項3】
継ぎ目域及びベース材料が30ksiに等しいまたはそれより大きい降伏強度を有する、請求項1の方法。
【請求項4】
熱膨張係数がベース材料及び継ぎ目域において凡そ等しい、請求項1の方法。
【請求項5】
グレイン寸法がベース材料及び継ぎ目域において凡そ等しい、請求項1の方法。
【請求項6】
継ぎ目域を結晶化させるのに有効な時間、約1400−約1600°Fの範囲の温度で熱処理を行う、請求項1の方法。
【請求項7】
継ぎ目域における厚さを、冷加工により約20%−約80%の範囲で減じる、請求項1の方法。
【請求項8】
継ぎ目域における厚さが、冷加工の結果構造体の所望の壁厚と実質的に同一である、請求項1の方法。
【請求項9】
タングステン不活性ガス溶接で溶接を行う、請求項1の方法。
【請求項10】
継ぎ目域をシングルVプレパレーション接合から形成する、請求項1の方法。
【請求項11】
構造体の形成が、更に継ぎ目域を作るためのプレートの成形を含んでなる、請求項1の方法。
【請求項12】
構造体が極低温を必要とする用途で評価されるパイプまたは貯蔵タンクである、請求項11の方法。
【請求項13】
所望の壁厚、長さ、及び継ぎ目域の、36%Ni−Fe合金ベース材料から作られた構造体を形成し、
過度な溶接強化が継ぎ目域における溶接ビード部分として残るように、該構造体を継ぎ目域に沿って36%Ni−Fe合金充填材で溶接し、
継ぎ目域における厚さが減じられるように該溶接ビードを冷加工し、そして
継ぎ目域を結晶化させるのに有効な条件下に継ぎ目域を熱処理する、
ことを含んでなる構造体の溶接法。
【請求項14】
結晶化時に、継ぎ目域とベース材料が凡そ同一のグレイン寸法を有する、請求項13の方法。
【請求項15】
構造体及び溶接された継ぎ目域が36%Ni−Feから作られ、そして構造体及び溶接された継ぎ目域が凡そ等しい熱膨張係数を有する、少なくとも1つの溶接された継ぎ目域を持つ構造体。
【請求項16】
構造体及び溶接された継ぎ目域が58ksiに等しいまたはそれより大きい極限引張り強度、30ksiに等しいまたはそれより大きい降伏強度、或いはその両方を有する、請求項15の構造体。
【請求項17】
構造体が極低温を必要とする条件での用途で評価されるパイプまたは貯蔵タンクを含んでなる、請求項15の構造体。
【請求項18】
構造体及び溶接された継ぎ目域が36%Ni−Feから作られ、そして構造体及び溶接された継ぎ目域が凡そ等しいグレイン寸法を有する、少なくとも1つの溶接された継ぎ目域を持つ構造体。
【請求項19】
構造体及び溶接された継ぎ目域が凡そ等しい熱膨張係数を有する、請求項18の構造体。
【請求項20】
構造体及び溶接された継ぎ目域が36%Ni−Fe合金から作られ、そして58ksiに等しいまたはそれより大きい極限引張り強度、30ksiに等しいまたはそれより大きい降伏強度、或いはその両方を有する、少なくとも1つの溶接された継ぎ目域を持つ構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−526667(P2010−526667A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507495(P2010−507495)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/059481
【国際公開番号】WO2008/140873
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(502259425)コノコフイリツプス・カンパニー (11)
【氏名又は名称原語表記】ConocoPhillips Company
【Fターム(参考)】