説明

継手構造およびこれを備えたセグメント

【課題】セグメント等の物品の肉厚を薄くして小型化させることで、コストの低減を図るとともに、簡単な接合構造とすることでセグメント等の物品の組み立て作業の効率を向上させるようにした。
【解決手段】セグメント1は、リング間接合面より軸方向に突出してなる薄肉平板形状の雄型継手10と、雄型継手10を挿入させて相互に係合してなる雌型継手20とを備えている。リング間接合面の周方向両端部には、周方向に二分割された第2雄型継手10B、第2雌型継手20Bが配置され、リング間接合面における周方向両端部の間には、一体形成された第1雄型継手10A、第1雌型継手20Aが配置され、周方向に隣接するセグメントのピース間接合面に位置するそれぞれの二分割された継手10B、20Bと、トンネル軸方向に隣接されるセグメントの一体形成された継手とが相互に係合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシールド工法によって施工されたトンネルに用いられる継手構造およびそれを備えたセグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シールド工法に用いられるセグメントとして、例えば上下水道などの小断面トンネルでは、鋼製(スチール製)セグメントが多く使用されている。スチールセグメントは、円弧板状の鋼製のスキンプレートとその外周側縁部に配置した桁部材とから板状枠体が形成され、その板状枠体の内側には補強用のリブが多数配置されたものである。
さらに、近年では、スチールセグメントの桁部材や補強リブの使用量を減らして円弧板状のスキンプレートを主体にした鋼板状のセグメントが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)
【0003】
特許文献1は、トンネル底盤部において鋼板の内周面にコンクリート覆工体を備えたベースセグメントを設け、そのベースセグメントの上方に鋼板製のセグメントを接合してリング状に構成したものであり、その接合端部にボルト孔を形成させたリブ継手をセグメントの内周面より突設させ、ボルトによってセグメント同士を接合する構造について記載したものである。
特許文献2は、円筒状の鋼板(鋼管)からなり、セグメントの接続端部がトンネル径方向にずれないように規制するとともに、隣接するセグメント同士をボルトによって接合可能とされる規制部材を鋼板の内周面に突設させたセグメントについて記載したものである。
【特許文献1】特開2002−276298号公報
【特許文献2】特許第3154476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の鋼板を外殻板としたセグメントでは、以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1、2の鋼板からなるセグメントでは、継手、桁部材、および補強用リブの数量を少なくすることでセグメントの厚み寸法は鋼板の厚み寸法とほぼ同じにして薄くした構造としているが、ボルト締結用としてボルト孔を有する継手リブが鋼板の内周面から坑内側に突出することから、セグメントの外径寸法、すなわちトンネルの掘削外径は、セグメントの突起部分がトンネルの内空断面を侵さないように設定する必要があった。そのため、セグメント外径の小径化に限度があり、継手や補強部によるトンネル内空部への突出量をさらに小さくすることが求められ、その点で改良の余地が残されていた。
また、特許文献1では、1リングのセグメントにおいてボルト締結による継手を数量を減らした構造としているが、ボルト接合箇所がなくなっていないことから、ボルトによる接合作業が必要であり、その作業に手間と時間がかかるため、さらなる作業効率の向上が求められている。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、セグメント等の物品の肉厚を薄くして小型化させることで、コストの低減を図るようにした継手構造およびこれを備えたセグメントを提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、簡単な接合構造とすることで、セグメント等の物品の組み立て作業の効率を向上させるようにした継手構造およびこれを備えたセグメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る継手構造では、一方の物品の表面に取り付けられた雄型継手と、他方の物品の表面に取り付けられた雄型継手とからなる物品どうしを突き合わせて接合するための物品の継手構造であって、雄型継手は、薄肉板形状をなし、その薄肉板側面に物品の厚さ方向内方に向かうにしたがって薄肉板幅寸法が漸次大きくなる第1テーパ面が形成されてなり、雌型継手は、雄型継手に係合する切欠き形状をなし、その切欠部側面に物品の厚み方向内方に向かうにしたがって切欠部幅寸法が漸次大きくなる第2テーパ面が形成されていることを特徴としている。
また、本発明に係る継手構造を備えたセグメントでは、上述した物品はセグメントであり、雄型継手及び雌型継手は、セグメントの内面側に配置されるとともに、リング間の接合面側に取り付けられていることを特徴としている。
【0007】
本発明では、雄型継手の第1テーパ面と雌型継手の第2テーパ面とが係合されることから、雄型継手が雌型継手から外れてセグメント等の物品の厚み方向外方側に抜け出ることがなく、物品どうしを接合面側で強固に接合することができる。そして、これら雄型継手及び雌型継手が薄肉板形状であるので、物品自体の厚さ寸法を小さくして小型化を図ることができる。例えば物品がセグメントの場合には、セグメントの肉厚を薄くすることで、トンネル内に設置されたセグメントの外径が小さくなり、セグメントのコストを低減することができる。
【0008】
また、本発明に係る継手構造を備えたセグメントでは、雄型継手は、リング間の接合面から突出していてもよい。
【0009】
また、本発明に係る継手構造を備えたセグメントでは、雄型継手は、トンネル周方向の接合面においてその周方向に二分割された形状をなしていてもよい。
また、本発明に係る継手構造を備えたセグメントでは、雌型継手は、トンネル周方向の接合面においてその周方向に二分割された形状をなしていてもよい。
【0010】
本発明では、周方向に隣接する両セグメントのトンネル周方向(ピース間)の接合面同士を当接させた際に、互いの二分割した継手が周方向に連続して接した状態となり、この状態の二つの継手に対して、トンネル軸方向(リング間方向)に隣接するセグメントの二分割されていない一体形成した継手を係合させることで、ピース間で隣接するセグメント同士を接合することができる。このように、リング間接合面に設けられている雄型継手と雌型継手とを相互に係合させることで、リング間とピース間とのセグメント同士の接合を行えることから、セグメントの組み立て作業の効率が向上され、工期の短縮を図ることができる。
【0011】
また、本発明に係る継手構造を備えたセグメントでは、セグメントは、円弧板状に形成された外殻板と、外殻板の内周面に沿って設けられた薄肉板状をなす内側板状部とからなり、雄型継手及び雌型継手は、それぞれ外殻板の内周面側に取り付けられ、内側板状部の内周面と面一となっていることが好ましい。
【0012】
本発明では、雄型継手と雌型継手とが薄肉平板形状をなし、それらの継手を外殻板の内周面に取り付けることで、セグメントの肉厚を薄くすることができる。さらに、雄型継手と雌型継手の内周面と面一となるようにセグメント内周面を形成することで、トンネル周方向にリング状に組み立てられたセグメントの内周面を突起などのない平滑面とすることができる。このように薄肉でしかも内周面を平滑にすることができることから、トンネル内空断面を確実に確保しつつ、セグメントの外径を小さくすることができ、セグメントのコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の継手構造およびそれを備えたセグメントによれば、セグメント等の物品を薄肉として小型化させることができ、例えば物品がセグメントの場合にはセグメントを小径化させることができる。そのため、セグメント自体のコストの低減が図れるうえ、トンネルの掘削断面を小さくすることが可能となり、シールド掘削機を小径化してコストの低減を図ることができ、さらに掘削土量が減って掘削土の処分費を削減することができる。
また、セグメント等の物品どうしの表面に設けられている雄型継手、雌型継手同士を互いに挿入、嵌合するだけで、物品どうしを強固に接合することができる簡単な継手構造となるので、接合作業の簡略化が図れ、物品の組み立て作業の効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の第一の実施の形態による継手構造およびそれを備えたセグメントについて、図1乃至図8に基づいて説明する。
図1は本発明の第一の実施の形態によるセグメントの斜視図、図2はセグメントの接合状態を示す斜視図、図3は図2に示すセグメントの一部破断拡大図、図4は図2に示すセグメントの接合状態を示す展開平面図、図5はセグメントを示す平面図、図6はセグメントの側面図であって、(a)はその雄型継手を示す図、(b)は雌型継手を示す図、図7は後続設備付近におけるセグメントの坑内運搬状態を示す図、図8はシールドジャッキの構成を示す側面図である。
【0015】
図1に示すように、本第一の実施の形態によるセグメント1(物品)は、例えば上下水道や通信線用として使用される比較的小径の断面(例えばトンネル外径で3m以下など)のシールドトンネルなどに適用される薄肉円弧板状をなすセグメントであり、円形断面に掘削されたトンネル内壁面に沿って周方向および軸方向に複数連結して配置して筒状壁体をなすトンネル覆工体を構築するものである。
なお、以下のセグメント1の接合の説明において、トンネル軸方向に隣接されるセグメント同士を「リング間」、トンネル周方向に隣接されるセグメント同士を「ピース間」などとして統一して使用する。
【0016】
セグメント1(1A、1B、1C)は、トンネル内周面に沿って配置されるリング形状をトンネル周方向に3等分に分割させたものである。
そして、図2に示すように、セグメント1A、1B、1Cは、トンネル軸方向の両端部(リング間側の端部、セグメント1の長辺)に、トンネル軸方向に隣接するものどうしを接合するリング間接合面1a、1b(符号1aを第1リング間接合面、符号1bを第2リング間接合面とする)を有している。また、トンネル周方向の両端部(ピース間側の端部、セグメント1の短辺)に、トンネル周方向に隣接するものどうしを接合するピース間接合面1c、1dを有している。そして、隣接するセグメントリング同士におけるピース間接合面1c、1dの位置は、トンネル周方向にセグメント1の長手寸法でほぼ半分の長さ寸法ずつずれた位置となっている。
【0017】
セグメント1A、1B、1Cは、トンネル周方向に沿って湾曲形成されたスキンプレート2(外殻板)と、スキンプレート2の内周面2aに沿って設けられる被覆塗装部3(内側板状部)と、リング間及びピース間のセグメント1、1同士を接合するための雄型継手10、雌型継手20とから概略構成されている。
【0018】
図3に示すように、被覆塗装部3は、スキンプレート2の内周面2aに沿って所定の肉厚で樹脂材料などを被覆塗装することで形成されたものである。具体的には、雄型継手10及び雌型継手20の厚さ寸法と同寸法であって、被覆塗装部3の内周面3aの位置が雄型、雌型継手10、20の内周面10a、20aと面一となるように設けられている。つまり、雄型継手10と雌型継手20はスキンプレート2の内周面2aに取り付けられることで、被覆塗装部の内周面3aと面一になっている。言い換えれば、スキンプレート2と被覆塗装部3とからなるセグメント1の接合面側において、セグメントの表面の内、その内面側に面一状態で露出して取り付けられている。
【0019】
そして、図2に示すように、本第一の実施の形態では、セグメント1の連結すべき一方の第1リング間接合面1a側に雄型継手10が設けられ、連結すべき他方の第2リング間接合面1b側に雌型継手20が設けられている。
【0020】
図4、図5及び図6(a)に示すように、雄型継手10は、第1リング間接合面1aから直交する方向(トンネル軸方向)に突出するとともに、その平面側をセグメント1における内周面或いは外周面側に向けてなる平板形状をなしている。そして、雄型継手10の内周面10aがセグメント1の内周面(被覆塗装部3の内周面3a)と面一の状態、すなわち両内周面10a、3aが連続して平滑面が形成されるように設けられている。
【0021】
また、雄型継手10は、一体形成された第1雄型継手10Aと、第1雄型継手10Aをトンネル周方向に二分割した形状をなす第2雄型継手10Bとからなる。第1雄型継手10Aは、第1リング間接合面1aの周方向略中央に配置され、第2雄型継手10Bは第1リング間接合面1aの周方向両端部(ピース間接合面1c、1dと面一になる位置)に沿って配置されている。そして、雄型継手10は一方の面をスキンプレート2の内周面に固着させるとともに、他方の面をセグメント1の内周面に面一で露出した状態とし、内側板状部3内に埋設されて一体構造となっている。
【0022】
また、雄型継手10(10A、10B)は、先端角部に先端側に向かって幅寸法(セグメントの長手方向に沿う長さ寸法)が先細りするように斜めに面取りしたように形成された先端テーパ部11aと、雄型継手10の側面において厚み方向にセグメント1の内周面から外周面に向かうにしたがって(セグメント1の厚み方向内方に向かうにしたがって)薄肉板幅寸法が漸次大きくなる方向に傾斜する雄側テーパ面11b(第1テーパ面)とが形成されている。
そして、雄型継手10の厚さ寸法は、被覆塗装部3と略同寸法となっている。
【0023】
一方、図3、図4、図5及び図6(b)に示すように、雌型継手20は、セグメント1における第1、第2雄型継手10A、10Bのそれぞれに対向する位置に配置され、それらを挿入させて係合可能とされる第1雌型継手20Aと第2雌型継手20Bとからなる。つまり、雌型継手20は、第2リング間接合面1b位置で開口した切欠き形状をなすとともに、雄型継手10と略同形状の凹部21が形成され、被覆塗装部3と略同じ厚さを有し、一端面をスキンプレート2の内周面2aに固着させるとともに、他端面(内周面20a)が被覆塗装部3の内周面3aと面一の状態、すなわち両内周面20a、3aが連続して平滑面が形成されるように設けられている。
雌型継手20は一方の面をスキンプレート2の内周面2a(図3参照)に固着させるとともに、他方の面をセグメント1の内周面に面一で露出した状態とし、内側板状部3内に埋設されて一体構造となっている。
【0024】
凹部21は、トンネル軸方向に延在する側面に、内周面から外周面に向かうにしたがって(セグメント1の厚み方向内方に向かうにしたがって)凹部21の幅寸法(セグメント1の長手方向に沿う長さ寸法、本発明の切欠部幅寸法に相当する)が大きくなる方向に傾斜してなり、雄型継手10の雄側テーパ面11bに係合する雌側テーパ面21a(第2テーパ面)が形成されている。つまり、雌型継手20に挿入係合された雄型継手10は、それぞれの側面に形成されているテーパ面11b、21a同士が側面から挟むような形で係合した状態となることから、雌型継手20が雄型継手10に比して内周面側に張り出すことなく両者の内周面10a、20aは面一な状態を維持して、雄型継手10が雌型継手20からセグメント1の内側に抜け出ることがないように構成されている。
【0025】
そして、トンネルの軸方向(リング間)に隣接配置されたこれらセグメント1、1の雄型継手10Aと雌型継手20Aを接合させることにより、筒状壁体を構成するセグメントリングが構築されることになる。
【0026】
次に、このような構成によるセグメントの継手構造の作用およびセグメントの接合方法について説明する。
図2及び図4に示すように、先行して組み立てたセグメントリングのセグメント1、1(説明上、符号1A、1Bとする)の雌型継手20A、20Bの凹部21に対して、後行のセグメントリングの組み立て側のセグメント1A´の雄型継手10A、10Bの凸部11を対向させるようにして第1、第2リング間接合面1a、1bの位置を合わせる。
【0027】
さらに、第2リング間接合面1bに第1リング間接合面1aを図2及び図4に示す矢印E方向に近接しつつ、凹部21に凸部11を挿入させて係合し、リング間のセグメント1A´、1A、1B同士を接合させる。このとき雌型継手20の雌側テーパ面21aに雄型継手10の雄側テーパ面11bが案内されて挿入されることになる。なお、雄型継手10には先端テーパ部11aが形成されているので、仮に凹部21に対して凸部11が周方向に若干ずれて挿入されても、先端テーパ部11aに案内されることになり、凹部21に挿入されることになる。
【0028】
さらに具体的には、周方向に隣接する両セグメント1A、1Bのピース間接合面1c、1d同士を当接させた際に、互いの二分割させた第2雌型継手20B、20Bが周方向に連続して接した状態となり、この状態の二つの第2雌型継手20B、20Bに対して、トンネル軸方向に隣接するセグメント1A´の一体形成させた第1雄型継手10A(一体継手)を挿入させて係合させることで、ピース間のセグメント1A、1B同士の接合も行なうことができる。
このように、リング間接合面1a、1b側に設けられている雄型継手10と雌型継手20とを相互に係合させることで、リング間とピース間とのセグメント1、1同士の接合を行えることから、セグメント1の組み立て作業の効率が向上され、工期の短縮を図ることができる。
【0029】
そして、セグメント1A´を組み立てた後、組み立てたセグメント1A´の一方の周方向(ピース間方向)側に隣接されるセグメント1B´(図4参照)を組み立てる。このように、掘削したトンネルの内壁面の同一周上に3つのセグメント1A、1B、1C(図1参照)を順次に接合することで、その部分にリング状のセグメントリング体が構築されることになる。そして、このようなセグメントリング体を掘削方向に連続して接合することで、掘削した部分の内面の全体を複数のセグメント1、1、…で被覆するようになっている。
【0030】
また、雄型継手10の雄側テーパ面11bと雌型継手20の雌側テーパ面21aとが係合されることから、凸部11が凹部21から外れてセグメント1の内周側に抜け出ることがなく、強固な継手構造とすることができる。
そして、上述したように、雄型継手10と雌型継手20とが薄肉平板形状をなし、それらの継手10、20をスキンプレート2の内周面2aに設けることで、セグメント1の肉厚を薄くすることができる。さらに、雄型継手10と雌型継手20の内周面と面一となるようにセグメント内周面を形成することで、トンネル周方向にリング状に組み立てられたセグメント1の内周面を突起などのない平滑面とすることができる。このように薄肉でしかも内周面を平滑にすることができることから、トンネル内空断面を確実に確保しつつ、セグメントの外径を小さくすることができ、セグメント1の製造コストを低減することができる。
【0031】
そして、本セグメント1では、ボルト、ナットを使用する継手のように高精度な位置決めが不要であり、雄型継手10(10A、10B)の凸部11を雌型継手20(20A、20B)の凹部21に挿入するだけの簡易な方法によりリング間およびピース間に隣接されるセグメント1、1同士を接合することができる簡単な継手構造となっている。
【0032】
次に、上述したセグメント1を組み立てる際における坑内の運搬方法と、推進方向について図面に基づいて説明する。
図7に示すように、本セグメント1を坑内で運搬させる方法として、図示しないシールド掘削機の後方に配置される後続設備31の横を通過できるように、セグメント1を立てた状態で運搬台車32に載置させて搬送させる構成としている。このとき、運搬台車32上に図しない固定手段で支持させておく。そして、とくに図示しないが、後続台車31のない軌条のみの区間では、坑内断面の水平方向中央部を通過させることができる。そして、後続台車31の設置区間では、坑内断面の側方を通過するため、運搬するセグメント1が既設のセグメント1の壁面に当たらないように、その既設のセグメント1と運搬するセグメント1の上端部との間にローラ33が設けられている。
このように、本セグメント1では肉厚が薄く、且つ継手などがセグメント1の内周面側に突出していないので、運搬時においても坑内の空間を有効利用することができ、とくに図7に示すような後続台車31の設置区間では、後続台車31の幅寸法を広げることができ、後続台車31上に効率的に設備を配置することができる。
【0033】
また、図8に示すように、本セグメント1を使用した際の図示しないシールド掘削機の推進方法は、そのシールド掘削機の後端に設けられているシールドジャッキ34のジャッキ先端(スプレッダ35)の後端面に切欠溝35aが形成され、その切欠溝35aを組み立てたセグメント1の切羽側端部(すなわち、第2リング間接合面1b)に嵌合させた状態でセグメント1より反力をとってシールドジャッキ34を伸張させる構成により推進する方法となっている。
【0034】
上述のように本第一の実施の形態による継手構造およびそれを備えたセグメントでは、セグメント1を薄肉とすることができ、小径化させることができる。そのため、セグメント自体のコストの低減が図れるうえ、トンネルの掘削断面を小さくすることが可能となり、シールド掘削機を小径化してコストの低減を図ることができ、さらに掘削土量が減って掘削土の処分費を削減することができる。
また、セグメント1のリング間接合面1a、1b側に設けられている雄型継手10、雌型継手20同士を互いに挿入、嵌合するだけで、セグメント1、1どうしを強固に接合することができる簡単な継手構造となるので、接合作業の簡略化が図れ、物品の組み立て作業の効率を向上させることができる。
【0035】
次に、本発明の第二の実施の形態について、図9及び図10に基づいて説明するが、上述の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施の形態と異なる構成について説明する。
図9は本発明の第二の実施の形態によるセグメントの接合状態を示す図であって、図4に対応する図、図10は図9に示すセグメントの平面図である。
図9及び図10に示すように、第二の実施の形態のセグメント4は、上記の第一の実施の形態における雄型継手10、雌型継手20の配置を代えた構成をなしている。すなわち、図5に示す第一の実施の形態では第1リング間接合面1a側に雄型継手10(10A、10B)が配置され、第2リング間接合面1b側に雌型継手20(20A、20B)が配置されているが、図10における第二の実施の形態では。第1、第2リング間接合面4a、4b側ともにそれぞれ周方向に沿って雄型継手10と雌型継手20とが互い違いに配置されている。
【0036】
具体的に本セグメント4では、両リング間接合面4a、4bの周方向両端部に沿ってピース間接合面4c、4dと面一になるように雄型継手10が設けられ、その雄型継手10には上述したようにトンネル周方向に二分割された第2雄型継手10Bが配置されている。そして、両リング間接合面4a、4b側の周方向略中央部には雌型継手20が設けられ、その雌型継手20は一体継手をなす第1雌型継手20Aが配置された構成をなしている。
このような第二の実施の形態による継手構造を有するセグメント4の組み立て方法については、上述した第一の実施の形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0037】
第二の実施の形態では、全てのピース間で隣接されるセグメント4、4同士の接合は、二分割された第2雄型継手10B、10Bを一体形成された第1雌型継手20A内で係合させ、第2雄型継手10B、10Bを第1雌型継手20Aによって保持させた状態となるため、ピース間接合面4c、4d間で隙間が生じることがなく、強固な接合構造とすることができる。
【0038】
以上、本発明による継手構造およびそれを備えたセグメントの第一および第二の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態ではセグメントを物品としているが、セグメントに限定されることはない。物品として、例えば床版、ボックスカルバート、流体輸送管等を対象とすることができる。
また、本実施の形態では被覆塗装部3を設けているが、これに限定されず、他の構成であってもかまわない。例えば、スキンプレート2と同様に円弧板状の鋼板をスキンプレート2の内周面2aに溶接等で接合したものも採用可能であるし、被覆塗装部3(内側板状部)が不要ならば省略することも可能である。
【0039】
そして、本第一及び第二の実施の形態では外殻板として円弧板状をなす鋼板からなるスキンプレート2を使用しているが、鋼板であることに限定されることはなく、例えば所定の強度を有する炭素繊維やグラスファイバー等を円弧板状に加工したものを採用してもかまわない。
また、雄型継手10、雌型継手20の厚み寸法、設置箇所、設置数量や、凸部11、凹部21、雄型、雌型テーパ面11b、21a等の配置、形状に限定されることはなく、トンネル外径寸法、セグメントの外径、大きさ、形状等の条件に応じて任意に設定することができる。そして、セグメント1の分割数についても3分割であることに制限されることはない。
この他、第一及び第二の実施の形態では、雄型継手をセグメントの接合面からトンネル軸方向に突出させて雌型継手をセグメントの内面の範囲に納めて接合面から突出しないようにしたが、これを逆にして雌型継手を突出させて雄型継手を突出させないようにしてもよい。また、突出量を調整して双方を突出させるようにしてもよい。それから、第一及び第二の実施の形態では、セグメントの内面に継手を取り付けるようにしたが、物品によってはその表面の内、内面に取り付けるのに支障があって表面の内外面に取り付けるのに支障がない場合が考えられる。その場合には、物品の外面に取り付けるようにしてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第一の実施の形態によるセグメントの斜視図である。
【図2】セグメントの接合状態を示す斜視図である。
【図3】図2に示すセグメントの一部破断拡大図である。
【図4】図2に示すセグメントの接合状態を示す展開平面図である。
【図5】セグメントを示す平面図である。
【図6】セグメントの側面図であって、(a)はその雄型継手を示す図、(b)は雌型継手を示す図である。
【図7】後続設備付近におけるセグメントの坑内運搬状態を示す図である。
【図8】シールドジャッキの構成を示す側面図である。
【図9】本発明の第二の実施の形態によるセグメントの接合状態を示す図であって、図4に対応する図。
【図10】図9に示すセグメントの平面図である。
【符号の説明】
【0041】
1、4 セグメント(物品)
1a、4a 第1リング間接合面
1b、4b 第2リング間接合面
1c、1d、4c、4d ピース間接合面
2 スキンプレート(外殻板)
3 被覆塗装部(内側板状部)
10 雄型継手
10A 第1雄型継手(一体形成された雄型継手)
10B 第2雄型継手(二分割された雄型継手)
11 凸部
11a 先端テーパ部
11b 雄側テーパ面(第1テーパ面)
20 雌型継手
20A 第1雌型継手(一体形成された雌型継手)
20B 第2雌型継手(二分割された雌型継手)
21 凹部
21a 雌側テーパ面(第2テーパ面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の物品の表面に取り付けられた雄型継手と、他方の物品の表面に取り付けられた雄型継手とからなる物品どうしを突き合わせて接合するための物品の継手構造であって、
前記雄型継手は、薄肉板形状をなし、その薄肉板側面に前記物品の厚さ方向内方に向かうにしたがって薄肉板幅寸法が漸次大きくなる第1テーパ面が形成されてなり、
前記雌型継手は、前記雄型継手に係合する切欠き形状をなし、その切欠部側面に前記物品の厚み方向内方に向かうにしたがって切欠部幅寸法が漸次大きくなる第2テーパ面が形成されていることを特徴とする継手構造。
【請求項2】
請求項1に記載された物品はセグメントであり、
前記雄型継手及び前記雌型継手は、前記セグメントの内面側に配置されるとともに、リング間の接合面側に取り付けられていることを特徴とする継手構造を備えたセグメント。
【請求項3】
前記雄型継手は、リング間の接合面から突出していることを特徴とする請求項2に記載の継手構造を備えたセグメント。
【請求項4】
前記雄型継手は、トンネル周方向の接合面においてその周方向に二分割された形状をなしていることを特徴とする請求項2又は3に記載の継手構造を備えたセグメント。
【請求項5】
前記雌型継手は、トンネル周方向の接合面においてその周方向に二分割された形状をなしていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の継手構造を備えたセグメント。
【請求項6】
前記セグメントは、円弧板状に形成された外殻板と、該外殻板の内周面に沿って設けられた薄肉板状をなす内側板状部とからなり、
前記雄型継手及び前記雌型継手は、それぞれ前記外殻板の内周面側に取り付けられ、前記内側板状部の内周面と面一となっていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の継手構造を備えたセグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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