説明

網膜直接表示装置

【目的】 高画質の映像信号の画質劣化を防止し、高い解像度の映像表示を行う。
【構成】 映像信号INが可視光変換装置20で可視光のレーザビームS20に変換される。網膜投影装置30では、二次元走査部31によってレーザビームS20を水平及び垂直方向に偏向し、両眼の瞳孔11を通して網膜13上に直接ラスタ走査を行う。この際、赤外線レーザ41から出射された赤外線レーザビームS41を、ビームスプリッタ42,43を通して眼球10へ送り、その眼球10からの反射光を光電変換装置44で電気信号に変換し、その電気信号から画像処理装置45で視線情報の抽出を行い、その視線情報に基づき視線追尾制御装置46により、網膜投影装置30から出射されるレーザビームS30の出射方向を瞳孔11の移動に追尾させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、映像信号を可視光のレーザビームに変換し、そのレーザビームを水平及び垂直に偏向し、両眼の瞳孔を通して網膜上にラスタ走査を行って映像表示を行う網膜直接表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、このような分野の技術としては、例えば次のような文献等に記載されるものがあった。
文献;特開平3−214872号公報図2は、前記文献に記載された従来の眼鏡型網膜直接表示装置の一構成例を示す概略の構成図である。この眼鏡型網膜直接表示装置は、タングステンランプ及びミラーからなる点光源1と、該点光源1で照射される映像板2と、該映像板2とほぼ一体的に配置された短焦点の接眼レンズ3とを備え、それらが眼鏡型のフレームに取付けられている。映像板2は、例えば、カラーフィルタを有する透過型の液晶板で構成され、液晶テレビジョンに採用されているような表示駆動回路から供給される映像信号で駆動されるようになっている。この種の眼鏡型網膜直接表示装置では、点光源1から出射された光が映像板2を通過し、接眼レンズ3によって眼球10の表面の瞳孔11に焦点が結ばれる。この瞳孔11に焦点が結ばれた映像板2の実像は、水晶体12で反転されて網膜13上に結像される。映像観賞者が、接眼レンズ3の焦点に瞳孔11が位置するように眼鏡型網膜直接表示装置を装着すると、個人の視度(近眼、遠視眼)に関係なく、映像信号で駆動される映像板2の像のみを鮮明に感知することが可能になる。しかも、眼球10に入射される映像光線は、視野角が約60°にすることも可能になるから、大画面を近くで見るような迫力ある画面としてみることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の眼鏡型網膜直接表示装置では、次のような課題があった。従来の網膜直接表示装置では、映像信号をディスプレイの一種である映像板2によって可視像に変換し、その可視像を網膜13上に結像することによって該可視像を見る構造になっている。そのため、高画質の映像信号が入力されても、それを映像板2によって可視像に変換する際に、該映像板2の構造に起因して画質が劣化し、高い解像度を得ることが困難であった。しかも、映像板2を必要とするため、装置の小型化及び低コスト化に限界があり、未だ技術的に充分満足のゆく網膜直接表示装置を得ることが困難であった。本発明は、前記従来技術が持っていた課題として、解像度の劣化、及び装置の小型化や低コスト化に限界があるといった点について解決した高解像度の網膜直接表示装置を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、前記課題を解決するために、網膜直接表示装置を少なくとも、映像信号を可視光のレーザビームに変換する可視光変換手段と、二次元走査手段で前記レーザビームを水平及び垂直に偏向し、両眼の瞳孔を通して網膜上にラスタ走査を行う網膜投影手段と、前記瞳孔の移動方向を検出し、その検出結果に基づき前記網膜投影手段のレーザビーム出射方向を該瞳孔の移動に追尾させる視線追尾手段とで、構成している。第2の発明では、第1の発明の可視光変換手段、網膜投影手段、及び視線追尾手段を、人体から所定距離離れた所に設置する構造にしている。第3の発明では、第1の発明の可視光変換手段、網膜投影手段、及び視線追尾手段を、眼鏡型フレームに取付けた構成にしている。
【0005】
【作用】第1の発明によれば、以上のように網膜直接表示装置を構成したので、映像信号が入力されると、その映像信号が可視光変換手段で可視光のレーザビームに変換され、網膜投影手段へ送られる。網膜投影手段では、入力されたレーザビームを二次元走査手段で水平及び垂直方向に偏向し、両眼の瞳孔を通して網膜上に直接ラスタ走査を行う。この際、視線追尾手段により、瞳孔の移動方向が検出され、網膜投影手段のレーザビーム出射方向が該瞳孔の移動に追従するように制御される。第2の発明によれば、網膜直接表示装置から所定距離離れた映像観賞者に対し、網膜投影手段から出射されるレーザビームによって該観賞者の両眼の網膜上に直接ラスタ走査が行われる。第3の発明によれば、眼鏡型フレームに取付けた網膜投影手段から出射されるレーザビームは、両眼の網膜上に直接ラスタ走査される。従って、前記課題を解決できるのである。
【0006】
【実施例】
第1の実施例図1は、本発明の第1の実施例を示す投影型網膜直接表示装置の構成ブロック図である。この投影型網膜直接表示装置は、映像観賞者から所定距離離れた所に設置される装置であり、赤(R)、緑(G)及び青(B)の三原色からなる映像信号INを可視光のレーザビームS20に変換する可視光変換手段である可視光変換装置20を有し、その出力側に網膜投影手段である網膜投影装置30が接続されている。網膜投影装置30は、映像信号IN中の同期信号に基づきレーザビームS20を水平及び垂直方向に走査する二次元走査手段である二次元走査部31を有し、該二次元走査部31で偏向されたレーザビームS30を両目の眼球10へ投影し、その眼球10の瞳孔11及び水晶体12を通して網膜13上にラスタ走査を行う機能を有している。網膜投影装置30には、両眼の瞳孔11の移動方向を検出し、その検出結果に基づき網膜投影装置30のレーザビーム出射方向を該瞳孔11の移動に追尾させる視線追尾手段が設けられている。視線追尾手段は、赤外線レーザ41、ビームスプリッタ42,43、光電変換装置44、画像処理装置45、及び視線追尾制御装置46で構成されている。赤外線レーザ41は、赤外線レーザビームS41を出射する光源であり、その出力側にハーフミラー等で構成された2つのビームスプリッタ42,43が設けられている。2つのビームスプリッタ42,43は、レーザビームS30の光路上に配置され、その一方のビームスプリッタ42が、赤外線レーザビームS41を入射してそれを眼球10方向へ反射する機能を有している。他方のビームスプリッタ43は、眼球10から反射された赤外線レーザビームS41を入射し、それを光電変換装置44へ反射する機能を有している。光電変換装置44は、ビームスプリッタ43で反射された赤外線レーザビームS41を電気信号に変換する装置であり、その出力側に画像処理装置45を介して視線追尾制御装置46が接続されている。画像処理装置45は、光電変換装置44の出力信号から視線情報の抽出を行う装置であり、中央処理装置(以下、CPUという)等で構成されている。視線追尾制御装置46は、画像処理装置45で抽出された視線情報に基づき、瞳孔11の移動方向に網膜投影装置30のレーザビーム出射方向を追尾させる機能を有している。
【0007】図3は、図1中の網膜投影装置30における二次元走査部31の概略の構成図である。この二次元走査部31は、音響光学式光偏向器で構成されるもので、例えば、水平方向に配置され水平走査を行う音響光学式光偏向器32と、紙面に対して垂直方向に配置され垂直走査を行う音響光学式光偏向器33とを備えている。水平走査用の光偏向器32では、モリブデン酸鉛、TeO2 等の音響光学媒質32aの一端に、ZnOやLiNbO3 等の圧電材料からなるトランスジューサ32bが張付けられ、該音響光学媒質32aの他端に、超音波吸収層32cが設けられている。この光偏向器32は、音響光学媒質32a中を伝搬する超音波によって生ずる屈折率の粗密(回折格子)で光が回折される音響光学効果を利用し、トランスジューサ32bに印加される信号RF1の電圧あるいは周波数を変えることにより、入射されたレーザビームS20の回折方向を変化させて水平走査を行うようになっている。他の光偏向器33は、光偏向器32と同一の構成であり、信号RF2の電圧あるいは周波数を変えることによって回折方向を変化させ、垂直走査を行うようになっている。水平走査用の光偏向器32の出力側には、λ/4(但し、λは波長)波長板34が設けられ、その波長板34の出力側に光偏向器33が設けられている。この光偏向器33の出力側には、対物レンズ35が設けられ、該対物レンズ35から出射されるレーザビームS30によって網膜13上を水平方向及び垂直方向に走査するようになっている。図4は、図1の網膜直接表示装置の使用状態の例を示す図である。キャビネット100内には図1の網膜直接表示装置が設けられると共にスピーカ等の音響装置も設けられ、さらに該キャビネット100の外側に初期設定用のミラー110が取付けられている。キャビネット100内に設けられた網膜直接表示装置は、その網膜投影装置30から交差法によって2本のレーザビームS30−1,S30−2が交差状態で出射され、該キャビネット100前の所定位置に腰掛けた観賞者200の両方の眼球10−1,10−2に入射するようになっている。
【0008】次に、動作を説明する。図4に示すように、観賞者200がテレビジョンやビデオ等の映像を観賞する場合、キャビネット100上に設けられたミラー110を見ながら自分の顔が見えるような所定位置に座ることにより、投影距離の初期設定が行われる。テレビジョンやビデオ等の音響信号は、キャビネット100内に設けられた音響機器によって音声に変換されて出力される。テレビジョンやビデオ等の映像信号INは、キャビネット100内に設けられた図1の網膜直接表示装置の可視光変換装置20により、例えばR,G,Bの三原色のレーザビームS20に変換されて網膜投影装置30へ送られる。網膜投影装置30の二次元走査部31において、映像信号IN中の同期信号(RF1,RF2)に基づき、図3の光偏向器32,33によってレーザビームS20の水平及び垂直走査が行われ、該網膜投影装置30から交差する2本のレーザビームS30−1,S30−2が出射される。2本のレーザビームS30−1,S30−2は、観賞者200の両方の眼球10−1,10−2の瞳孔11及び水晶体12を通って網膜13上に照射される。この2本のレーザビームS30−1,S30−2が両眼の網膜13上に直接、水平方向及び垂直方向に走査されるので、目の残像効果によって観賞者200は、網膜投影装置30から出射される映像を楽しむことができる。
【0009】この際、キャビネット100内に設けられた網膜直接表示装置の赤外線レーザ41から出射された赤外線レーザビームS41は、ビームスプリッタ42で反射されて両方の眼球10−1,10−2へ送られてくる。送られてきた赤外線レーザビームS41は、眼球10−1,10−2で反射し、キャビネット100内のビームスプリッタ43へ送られる。ビームスプリッタ43へ送られたレーザビームは、該ビームスプリッタ43で反射され、光電変換装置44で電気信号に変換されて画像処理装置45へ送られる。画像処理装置45では、光電変換装置44の出力信号に基づき、画像処理によって観賞者200の視線情報を抽出し、視線追尾制御装置46へ送る。視線追尾制御装置46では、画像処理装置45で抽出された視線情報に基づき、網膜投影装置30のレーザビーム出射方向を制御する。そのため、映像観賞中に観賞者200の眼球10−1,10−2の瞳孔11が移動した場合、その瞳孔11の移動に追従して網膜投影装置30から出射されるレーザビームS30−1,S30−2も移動する。従って、網膜投影装置30から出射されるレーザビームS30−1,S30−2により、観賞者200の眼球10−1,10−2の瞳孔11及び水晶体12を通して網膜13上にラスタ走査が行われることになる。以上のように、この第1の実施例では、高画質の映像信号INが可視光変換装置20によってレーザビームS20に変換され、そのレーザビームS20を用いて網膜投影装置30によって直接、網膜13上にラスタ走査が行われるので、従来の映像板を用いたものに比べて画質劣化が少なく、高い解像度を得ることができる。しかも、従来の映像板に代えて両眼の網膜13上に直接ラスタ走査を行う構成であるため、従来の映像板を省略することによって装置の小型化及び低コスト化が可能となる。また、赤外線レーザ41から出射される赤外線レーザビームS41を用いて視線追尾を行うようになっているので、視線追尾精度を向上できる。
【0010】第2の実施例図5は、本発明の第2の実施例を示す投影型網膜直接表示装置の構成ブロック図であり、第1の実施例を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。この網膜直接表示装置では、第1の実施例の赤外線レーザ41及びビームスプリッタ42を省略し、網膜投影装置30から出射されるレーザビームS30を用いて瞳孔11の視線追尾を行うようになっている点のみが異なっている。即ち、本実施例では、直接網膜13上にラスタ走査を行うために、網膜投影装置30からレーザビームS30が出射されると、そのレーザビームS30の眼球10からの反射レーザビームをビームスプリッタ43で反射し、光電変換装置44で電気信号に変換する。変換された電気信号は、画像処理装置45で視線情報が抽出され、その抽出された視線情報に基づき視線追尾制御装置46によって網膜投影装置30のレーザビーム出射方向が制御され、瞳孔11の移動に追尾する。この第2の実施例では、第1の実施例とほぼ同様の作用、効果が得られる上に、赤外線レーザ41を省略し、網膜投影装置30から出射されるレーザビームS30の反射レーザビームを用いて視線追尾を行うようになっているので、その視線追尾手段の構成を簡単化できる。
【0011】第3の実施例図6(a),(b)は、本発明の第3の実施例を示すもので、図1の二次元走査部31の他の構成例を示す図であり、同図(a)は斜視図、及び(b)は側面図である。図1の二次元走査部31は、図6に示すように、水平走査用と垂直走査用の2つの電気光学式光偏向器36を用いて構成してもよい。電気光学式光偏向器36は、電気光学結晶に電界を印加することで屈折率を変化させて入射光の偏向を行うもである。この光偏向器36では、例えば、電気光学係数(効果)の大きな材料(KH2 PO4 (KDP)、LiNbO3 等)で作られた2つのプリズム36a,36bが接合され、それらの各プリズム36a,36bに変調電圧Eが印加されるようになっている。このような光偏向器36では、変調電圧Eによってプリズム36a,36bに電界を印加すると、屈折率が変化するので、該変調電圧Eを変えることによって入射されたレーザビームS20の出射方向の偏向が行える。このような光偏向器36を水平走査用と垂直走査用に2個従続接続すれば、図1の可視光変換装置20から出射されたレーザビームS20の水平及び垂直方向の偏向が行える。
【0012】第4の実施例図7は、本発明の第4の実施例を示す網膜直接表示装置における視線追尾手段の他の構成例を示す図であり、第1の実施例を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。この視線追尾手段では、図1の赤外線レーザ41から出射される赤外線レーザビームS41を右目用と左目用の赤外線レーザビームS41−1,S41−2に分岐するハーフミラー等のビームスプリッタ42−1,42−2を有している。これらのビームスプリッタ42−1,42−2の光路上には、反射用のハーフミラー等のビームスプリッタ43−1,43−2がそれぞれ配置され、それらの反射光路側に図1の光電変換装置44が設けられている。ビームスプリッタ42−1,42−2からの赤外線レーザビームS41−1,41−2を反射するために、眼鏡50が用いられる。眼鏡50は、右レンズ51及び左レンズ52を有している。これらのレンズ51,52の中央部には、図1の網膜投影装置30から出射されるレーザビームS30(S30−1,S30−2)を透過するための透明部51a,52aが形成され、さらにそれらの透明部51a,52aの周辺部に、反射部51b,52bが形成されている。このような構成の視線追尾手段では、半導体レーザ41から赤外線レーザビームS41が出射されると、それがビームスプリッタ42−1,42−2で右目の赤外線レーザビームS41−1と左目の赤外線レーザビームS41−2とに分岐される。右目の赤外線レーザビームS41−1は、ビームスプリッタ43−1を通して観賞者200が装着した眼鏡50の右レンズ51へ送られ、さらに左目の赤外線レーザビームS41−2が、ビームスプリッタ43−2を通して右レンズ52へ送られる。右目の赤外線レーザビームS41−1は、右レンズ51の反射部51bで反射され、ビームスプリッタ43−1で反射されて光電変換装置44へ送られる。左目の赤外線レーザビームS41−2も、左レンズ52の反射部52bで反射され、ビームスプリッタ43−2で反射されて光電変換装置44へ送られる。光電変換装置44において、ビームスプリッタ43−1,43−2からの反射赤外線レーザビームが電気信号に変換され、その電気信号が図1の画像処理装置45で視線情報が抽出された後、その視線情報に基づいて視線追尾制御装置46で網膜投影装置30のレーザビーム出射方向が観賞者200の顔の移動方向に追尾する。そのため、図1の網膜投影装置30から出射されたレーザビームS30が、右目側と左目側とに分岐され、ビームスプリッタ42−1,43−1と42−2,43−2とをそれぞれ通過し、眼鏡50の右レンズ51及び左レンズ52の透明部51a,52aを透過して両眼の網膜13上にラスタ走査が行われ、映像の観賞が可能となる。本実施例では、眼鏡50を用いて赤外線レーザS41から出射された赤外線レーザビームS41を該眼鏡50の反射部51b,52bで反射させ、その反射光を光電変換装置44で電気信号に変換するようにしているので、眼鏡50からの的確な反射光が得られ、精度のよい視線追尾が行える。
【0013】第5の実施例図8は、本発明の第5の実施例を示す網膜直接表示装置における視線追尾手段の他の構成例を示す図である。この視線追尾手段では、図1の赤外線レーザ41及びビームスプリッタ42,43に代えて、あるいは図7の赤外線レーザ41、ビームスプリッタ42−1,42−2,43−1,43−2及び眼鏡50に代えて、観賞者200が装着する眼鏡型フレーム60に、例えば赤外線を出射する発光素子61を設けている。本実施例では、観賞者200が眼鏡型フレーム60を装着すると、その眼鏡型フレーム60に設けられた発光素子61から赤外線S61が出射されるので、その赤外線S61を例えば図1の光電変換装置44で電気信号に変換し、その電気信号を用いて観賞者200の顔の移動に追従した視線追尾が行われる。このような眼鏡型フレーム60を用いた視線追尾手段では、図1あるいは図7の赤外線レーザ41及びビームスプリッタ42,42−1,42−2,43,43−1,43−2を省略できるので、回路構成がより簡単になる。
【0014】なお、本発明は、上記実施例に限定されず、種々の変形が可能である。その変形例としては、例えば次のようなものがある。
(a) 図1及び図5の可視光変換装置20では、カラー表示のためにR,G,Bの三原色のレーザビームS20に変換するようにしているが、白黒表示の場合には白黒を表示する1種類のレーザビームS20に変換すればよい。このような白黒表示の場合、網膜投影装置30の構成が白黒の投影のみを行う構成にすればよいため、装置構成がより簡単になる。
(b) 図1または図5の二次元走査部31は、例えばレーザプリンタに用いられるポリゴンミラーを用いた機械式光偏向器等を用いて構成してもよい。
(c) 図4では、キャビネット100から交差した2本のレーザビームS30−1,S30−2が出射するようになっているが、そのレーザビームS30−1,S30−2を平行に観賞者200に向けて出射する構成にしてもよい。また、キャビネット100に設けたミラー110を用いて観賞者200の位置の初期設定を行うようにしているが、他の方法を用いて初期設定をするようにしてもよい。
【0015】(d) 視線追尾手段は、上記実施例以外の構成にしてもよい。例えば、図7の眼鏡50のレンズ51,52を他の反射構造に変えて瞳孔11の動きを検出し、その瞳孔11の動きに網膜投影装置30のレーザビーム出射方向がより的確に追尾できるような構成にしてもよい。また、観賞者200の顔面をビデオカメラ等によって撮影し、その顔面画像をメモリに蓄積した後、CPU等の画像処理手段を用いて瞳孔11の移動を検出することにより、視線追尾を行う構成にしてもよい。
(e) 図1あるいは図5の赤外線レーザ41、ビームスプリッタ42,43、光電変換装置44、画像処理装置45、及び視線追尾制御装置46を、網膜投影装置30内に設けてもよい。
(f) 上記実施例では、例えば図4に示すように網膜直接表示装置をキャビネット100内に収納した投影型構造について説明したが、これらの網膜直接表示装置を例えば図8のような眼鏡型フレーム60に取付けて眼鏡型構造にしてもよい。このような眼鏡型構造にすれば、網膜投影装置30から眼球10の瞳孔11までの距離が短くなるため、視線追尾手段の視線追尾精度を向上できると共に該手段の構成をより簡単化できる。
(g) 上記実施例では、網膜13上にレーザビームS30を直接ラスタ走査して平面画像の映像表示を行うようにしているが、それを立体表示の構成に適用することも可能である。
【0016】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、第1の発明によれば、映像信号を可視光変換手段で可視光のレーザビームに変換し、そのレーザビームを両眼の瞳孔を通して網膜上に直接ラスタ走査を行うことにより、映像表示を行うようにしたので、視線追尾手段によって精度の良い視線追尾が行え、高画質の映像信号の画質を劣化することなく、高い解像度の映像表示が可能となる。しかも、従来のような映像板を用いる必要がないので、その省略に伴う装置の小型化及び低コスト化が可能となる。第2の発明によれば、網膜直接表示装置を人体から所定距離離れた所に設置する構成にしたので、通常のテレビジョン観賞等よりも大画面でより迫力のある映像観賞が可能となる。第3の発明によれば、網膜直接表示装置を眼鏡型フレームに取付けた構成にしたので、網膜投影手段と両眼までの距離が短くなり、小さな機器で、大画面テレビジョンを見ているかのような映像の観賞が可能となる。しかも、網膜投影手段から両眼までの距離が短くなるので、視線追尾手段の視線追尾精度をより向上できると共に、該視線追尾手段の構成をより簡単化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示す投影型網膜直接表示装置の構成ブロック図である。
【図2】従来の眼鏡型網膜直接表示装置の概略の構成図である。
【図3】図1中の網膜投影装置の二次元走査部を示す構成図である。
【図4】図1の網膜直接表示装置の使用状態を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施例を示す投影型網膜直接表示装置の構成ブロック図である。
【図6】本発明の第3の実施例を示す網膜直接表示装置における二次元走査部の構成図である。
【図7】本発明の第4の実施例を示す網膜直接表示装置における視線追尾装置の構成図である。
【図8】本発明の第5の実施例を示す網膜直接表示装置における視線追尾装置の構成図である。
【符号の説明】
20 可視光変換装置
30 網膜投影装置
31 二次元走査部
32,33,36 光偏向器
41 赤外線レーザ
42,42−1,42−2,43,43−1,43−2 ビームスプリッタ
44 光電変換装置
45 画像処理装置
46 視線追尾制御装置
10 眼球
11 瞳孔
12 水晶体
13 網膜
50 眼鏡
51 右レンズ
52 左レンズ
51a,52a 透明部
51b,52b 反射部
60 眼鏡型フレーム
61 発光素子
100 キャビネット
110 ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 映像信号を可視光のレーザビームに変換する可視光変換手段と、二次元走査手段で前記レーザビームを水平及び垂直に偏向し、両眼の瞳孔を通して網膜上にラスタ走査を行う網膜投影手段と、前記瞳孔の移動方向を検出し、その検出結果に基づき前記網膜投影手段のレーザビーム出射方向を該瞳孔の移動に追尾させる視線追尾手段とを、備えたことを特徴とする網膜直接表示装置。
【請求項2】 前記可視光変換手段、網膜投影手段、及び視線追尾手段を、人体から所定距離離れた所に設置する構成にしたことを特徴とする請求項1記載の網膜直接表示装置。
【請求項3】 前記可視光変換手段、網膜投影手段、及び視線追尾手段を、眼鏡型フレームに取付けた構成にしたことを特徴とする請求項1記載の網膜直接表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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