説明

網試験システム

【課題】ネットワークにおけるエンドツーエンドでの疎通確認試験を効率化する。
【解決手段】網試験システム100は、試験対象のネットワークにおけるエンドポイントとしての複数の試験実行端末20と、そのネットワークを介して試験実行端末20のそれぞれと接続された1つの試験管理端末22を備える。試験管理端末22は、それぞれの試験実行端末20に、他の試験実行端末20に対する疎通確認の実行を指示する。それぞれの試験実行端末20は、試験管理端末22からの指示に応じて、他の試験管理端末22に対する疎通確認を実行する。そして、他の試験実行端末20に対する疎通確認が成功した場合に、それまでの疎通確認の結果を一括して試験管理端末22へ提供する。試験管理端末22はさらに、それぞれの試験実行端末20から提供された疎通確認の結果を集約し、集約した情報を、エンドツーエンドでの疎通確認の結果として試験担当者へ提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、データ処理技術に関し、特にネットワークを試験するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
企業内ネットワークや企業間ネットワーク等、様々な種類および規模のネットワークを構築する際に、エンドツーエンドでの疎通確認試験、言い換えれば、エンドポイント間での疎通確認試験が行われることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−101170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンドツーエンドでの疎通確認試験の対象となるネットワークの規模が大きくなると、疎通確認を行うべきエンドポイントの組み合わせが増大し、試験結果を確認すべき試験担当者の負担の増大を招くことがあった。
【0005】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、ネットワークにおけるエンドツーエンドでの疎通確認試験の効率化を支援するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の網試験システムは、試験対象のネットワークにおけるエンドポイントとしての複数の試験実行装置と、複数の試験実行装置のそれぞれと接続された試験管理装置と、を備える。試験管理装置は、複数の試験実行装置のそれぞれに、他の試験実行装置に対する疎通確認の実行を指示する試験指示部を含む。複数の試験実行装置のそれぞれは、試験管理装置からの指示にしたがって、他の試験実行装置に対する疎通確認を実行する試験実行部と、試験管理装置へ疎通確認の結果を提供する試験結果提供部と、を含む。試験管理装置はさらに、複数の試験実行装置のそれぞれから提供された疎通確認の結果を集約し、集約した情報を、エンドポイント間の疎通確認の結果として試験担当者へ提示する試験結果提示部を含む。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、プログラム、プログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ネットワークにおけるエンドツーエンドでの疎通確認試験の効率化を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態の網試験システムの構成を示す図である。
【図2】図1の試験実行端末の機能構成を示すブロック図である。
【図3】図1の試験管理端末の機能構成を示すブロック図である。
【図4】網試験結果の例を示す図である。
【図5】試験管理端末の動作を示すフローチャートである。
【図6】試験実行端末の動作を示すフローチャートである。
【図7】試験実行端末の動作を示すフローチャートである。
【図8】変形例の網試験システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施の形態の網試験システムの構成を示す。網試験システム100は、試験対象のネットワークである試験対象NW10におけるエンドツーエンドでの疎通確認試験を実行する。この試験対象NW10は、各種ネットワーク機器の組み合わせにより構築されたLAN・WAN・インターネット等を適宜含む中継網16と、現用系ルータ12で総称される現用系ルータ12a、現用系ルータ12b、現用系ルータ12cと、予備系ルータ14で総称される予備系ルータ14a、予備系ルータ14b、予備系ルータ14cとを含む。
【0011】
現用系ルータ12aと予備系ルータ14a、現用系ルータ12bと予備系ルータ14b、現用系ルータ12cと予備系ルータ14cは、それぞれの組み合わせにおいてVRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)により冗長化されている。図1では網試験の開始時にデータ中継処理を実行するルータを現用系ルータ12と称し、ホットスタンバイの状態で待機しているルータを予備系ルータ14と称している。
【0012】
網試験システム100は、試験実行端末20で総称される試験実行端末20a、試験実行端末20b、試験実行端末20cと、試験管理端末22とを備える。試験実行端末20は、試験対象NW10のエンドポイント(すなわちネットワークの終端装置)としての情報処理装置である。試験実行端末20a、試験実行端末20b、試験実行端末20cのそれぞれは互いに異なるLANに設置され、L2SW18で総称されるL2SW18a、L2SW18b、L2SW18cを介して試験対象NW10と接続される。そして、試験管理端末22からの指示に応じて相互に疎通確認を実行する。
【0013】
また、試験実行端末20は、現用系ルータ12および予備系ルータ14と、シリアルケーブル(言い換えればロールオーバーケーブル)を介してコンソール接続される。本実施の形態における試験実行端末20は一般的なPCであることとするが、変形例として、試験対象NW10の試験を実施するための必要最小限の機能を備えた装置であってもよい。この変形例の詳細は後述する。
【0014】
試験管理端末22は、試験担当者により操作される情報処理装置であり、試験対象NW10を介して試験実行端末20a〜試験実行端末20cのそれぞれと接続される。試験管理端末22は、試験対象NW10に対する試験の指示を一元的に発信する試験指示装置として動作し、また、試験対象NW10に対する試験結果を集中管理する試験結果管理装置としても動作する。なお実施の形態では、試験指示装置としての機能と、試験結果管理装置としての機能の両方が試験管理端末22に実装されたこととするが、これらの機能のそれぞれが物理的に別装置に実装されてもよいことはもちろんである。
【0015】
図2は、図1の試験実行端末20aの機能構成を示すブロック図である。試験実行端末20aは、試験結果保持部30と、ログ保持部32と、指示受付部34と、試験実行部36と、試験結果提供部38と、ログ取得部40と、ログ提供部42とを含む。試験実行端末20bおよび試験実行端末20cも、試験実行部36およびログ取得部40の対向装置が異なる点を除き、図2と同じ機能構成である。
【0016】
本明細書のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。例えば、各機能ブロックは、コンピュータプログラムとして記録媒体に格納され、試験実行端末20aのハードディスクにインストールされ、試験実行端末20aのメインメモリに適宜読み出されてCPUにて実行されてもよい。
【0017】
試験結果保持部30は、試験実行端末20aから試験実行端末20bへの疎通確認結果、および試験実行端末20aから試験実行端末20cへの疎通確認結果のそれぞれを保持する記憶領域である。例えば、試験実行端末20aから試験実行端末20bへPINGを実行した結果として、疎通確認に成功したこと、もしくは疎通確認に失敗したことを示す情報を保持する。なお、試験結果保持部30に保持される個々の疎通確認結果のレコードには、試験管理端末22に対して提供済か否かを示す提供済フラグが設定される。
【0018】
ログ保持部32は、現用系ルータ12aおよび予備系ルータ14aのそれぞれにおいて出力されたログ(以下、「ルータログ」とも呼ぶ。)を保持する記憶領域である。本実施の形態のルータログは、その出力元のルータがデータ中継処理を実行中であること(以下、「稼働中」とも呼ぶ。)、スタンバイ状態であること、もしくはVRRPにより現用機と予備機の切替中であることを示すレコードが、ログの出力時刻とともに逐次記録されるものとする。なお、ログ保持部32に保持される個々のルータログのレコードにも上記の提供済フラグが設定される。
【0019】
指示受付部34は、試験管理端末22から、疎通確認試験の実行を指示するデータ(以下、「疎通確認指示」とも呼ぶ。)および、ルータログの取得を指示するデータ(以下、「ログ取得指示」とも呼ぶ。)を受け付ける。疎通確認指示では、エコーリクエストの送信先となる試験実行端末20、すなわち疎通確認先の試験実行端末20を示す情報(例えばIPアドレス)と、試験継続期間(例えば疎通確認を定期的に実施すべき期間や、エコーリクエストを送信すべき回数)が指定される。ログ取得指示では、試験継続期間(例えばルータログの更新を監視すべき期間であり、ルータログに対して新規追加されたレコードを取得すべき期間)が指定される。
【0020】
試験実行部36は、疎通確認指示で指定された他の試験実行端末20に対して疎通確認処理を実行する。具体的には他の試験実行端末20を指定してPINGプログラムを実行することにより、他の試験実行端末20へICMPエコーリクエストを送信する。そしてICMPエコーリプライを受信した場合、疎通確認に成功した旨の情報を疎通確認時刻である現在時刻とともに試験結果保持部30へ格納する。その一方、ICMPエコーリプライを所定期間内に受信しない場合、疎通確認に失敗した旨の情報を現在時刻とともに試験結果保持部30へ格納する。疎通確認結果の格納時点において提供済フラグは「未提供」に設定される。試験実行部36は、疎通確認指示で指定された試験継続期間に亘り、複数回の疎通確認処理を定期的に実行する。
【0021】
試験結果提供部38は、試験結果保持部30に新規格納された疎通確認結果を参照し、その疎通確認結果が「成功」を示す場合、試験結果保持部30に格納されている疎通確認結果のうち提供済フラグが「未提供」の1つ以上の疎通確認結果を一括して試験管理端末22へ送信する。そして、送信した疎通確認結果の提供済フラグを「提供済」へ更新する。その一方、試験結果保持部30に新規格納された疎通確認結果が「失敗」を示す場合、提供済フラグが「未提供」の疎通確認結果の送信をスキップする。
【0022】
ログ取得部40は、ログ取得指示が受け付けられた場合、現用系ルータ12aおよび予備系ルータ14aに対するコンソール接続のセッションを介して、各ルータにおいて出力されるルータログの監視を開始する。そして、ルータログに新規追加されたレコードを、コンソール接続のセッションを介して各ルータから取得してログ保持部32へ格納する。ルータログの格納時点において提供済フラグは「未提供」に設定される。ログ取得部40は、ログ取得指示で指定された試験継続期間に亘り、ルータログの監視を継続する。
【0023】
ログ提供部42は、試験結果保持部30に新規格納された疎通確認結果を参照し、その疎通確認結果が「成功」を示す場合、ログ保持部32に格納されているルータログのうち提供済フラグが「未提供」の1つ以上のルータログを一括して、その出力元のルータの識別情報とともに試験管理端末22へ送信する。そして、送信したルータログの提供済フラグを「提供済」へ更新する。その一方、試験結果保持部30に新規格納された疎通確認結果が「失敗」を示す場合、提供済フラグが「未送信」のルータログの送信をスキップする。
【0024】
図3は、図1の試験管理端末22の機能構成を示すブロック図である。試験管理端末22は、試験指示送信部50と、試験結果保持部52と、ログ保持部54と、試験結果受付部56と、ログ受付部58と、集約処理部60と、試験結果提示部62とを含む。
【0025】
試験指示送信部50は、キーボードやマウス等の入力装置を介して試験担当者が入力した試験対象NW10に対する試験の開始指示を受け付ける。そして、ログ取得指示および疎通確認指示を試験実行端末20a〜試験実行端末20cのそれぞれに対して送信する。例えば、試験指示送信部50はTelnetクライアントとして、試験実行端末20a〜試験実行端末20cそれぞれのTelnetサーバへアクセスして、ログ取得開始のコマンドおよび疎通確認開始のコマンドを実行してもよい。
【0026】
試験結果保持部52は、ある試験実行端末20から他の試験実行端末20への疎通確認の結果を保持する記憶領域である。例えば、試験実行端末20aを確認元とし、試験実行端末20bを確認先とする疎通確認結果、逆に、試験実行端末20bを確認元とし、試験実行端末20aを確認先とする疎通確認結果を保持する。したがって、図1の構成においては、試験結果保持部52は、6種類の試験実行端末20の組み合わせそれぞれの疎通確認結果を一括して保持する。
【0027】
ログ保持部54は、現用系ルータ12a〜現用系ルータ12cと、予備系ルータ14a〜予備系ルータ14cのそれぞれで出力されたログ(以下、「ルータログ」とも呼ぶ。)を保持する記憶領域である。ログ保持部54は、図1の各ルータのログ、すなわち6種類のルータログを一括して保持する。
【0028】
試験結果受付部56は、試験実行端末20a〜試験実行端末20cのそれぞれから送信された疎通確認結果のデータを受け付けて試験結果保持部52へ格納する。ログ受付部58は、試験実行端末20a〜試験実行端末20cのそれぞれから送信されたルータログのデータを受け付けてログ保持部54へ格納する。
【0029】
集約処理部60は、試験結果保持部52に保持された6種類の試験実行端末20の組み合わせそれぞれの疎通確認結果と、ログ保持部54に保持された6種類のルータログとを集約した1つの文書(以下、「網試験結果」とも呼ぶ。)を作成する。網試験結果の作成において、集約処理部60は、疎通確認時刻とログ出力時刻とを基準として、同一時刻の疎通確認結果およびルータログを同一のレコード(行)に対応づける。すなわち、網試験結果は、複数種類の疎通確認結果と、複数種類のルータログとを時系列で対応づけることにより集約した文書であるとも言える。なお、疎通確認時刻のそれぞれとログ出力時刻との間に差異がある場合も、その差異が所定値内(例えば1秒未満)であれば、同一時刻として対応づけてよいことはもちろんである。
【0030】
試験結果提示部62は、試験担当者からの試験結果表示要求に応じて、試験対象NW10のエンドポイント間の疎通確認結果として、集約処理部60において設定された網試験結果のデータをディスプレイに表示させる。
【0031】
図4は、網試験結果の例を示す。同図の疎通確認結果フィールド70は、確認元を試験実行端末20aとし、確認先を試験実行端末20bとする疎通確認結果から、確認元を試験実行端末20cとし、確認先を試験実行端末20bとする疎通確認結果までの、6種類の疎通確認結果が設定される。また同図のルータログフィールド72は、図1の6種類のルータログが設定される。また、同一の疎通確認時刻およびログ出力時刻のデータは、同一のレコード(行)に設定されている。
【0032】
ここで図4は、現用系ルータ12aと予備系ルータ14aの間でVRRPによる切替を発生させ、その前後におけるエンドポイント間の疎通状態を確認するための網試験の結果を示している。試験担当者は、図4の網試験結果により、VRRPにより現用機と予備機の間で正常に切替が行われたことを確認することができる。それとともに、その切替中は現用系ルータ12aを介した通信(すなわち試験実行端末20aからのデータ送信および試験実行端末20aへのデータ送信)はできないものの、予備系ルータ14aへの切替後は通信が正常に復旧していることを容易に確認することができる。
【0033】
以上の構成による動作を以下説明する。
図5は、試験管理端末22の動作を示すフローチャートである。試験担当者により入力された試験対象NW10に対する試験開始指示が検出されると(S10のY)、試験指示送信部50は、ログ取得指示を試験実行端末20へ送信し(S12)、さらに疎通確認指示を試験実行端末20へ送信する(S14)。試験担当者からの試験開始指示が検出されなければ(S10のN)、S12およびS14はスキップされる。
【0034】
試験結果受付部56は、試験実行端末20から疎通確認結果を受け付けると(S16のY)、その疎通確認結果を試験結果保持部52へ格納する(S18)。疎通確認結果を受け付けなければ(S16のN)、S18はスキップされる。ログ受付部58は、試験実行端末20からルータログを受け付けると(S20のY)、そのルータログをログ保持部54へ格納する(S22)。ルータログを受け付けなければ(S20のN)、S22はスキップされる。
【0035】
試験担当者により入力された試験対象NW10に対する試験結果確認要求が検出されると(S24のY)、集約処理部60は、試験結果保持部52に格納された疎通確認結果と、ログ保持部54に格納されたルータログとを集約して網試験結果を作成する(S26)。試験結果提示部62は、集約処理部60による集計処理で作成された網試験結果をディスプレイに表示させることにより、試験対象NW10におけるエンドツーエンドでの疎通確認結果を試験担当者へ提示する(S28)。試験担当者からの試験結果確認要求が検出されなければ(S24のN)、S26およびS28はスキップされる。図5の例では、試験結果確認要求の受け付けをトリガとして集約処理部60が網試験結果を作成することとしたが、集約処理部60は試験担当者からの要求有無にかかわらず、定期的に網試験結果を作成・更新してもよいことはもちろんである。
【0036】
図6は、試験実行端末20の動作を示すフローチャートである。指示受付部34がログ取得指示を受け付けると(S30のY)、ログ取得部40は、ログ取得指示で指定された試験継続期間が未経過の場合(S32のN)、ルータログの更新を検出したとき(S34のY)、新たに記録されたルータログを取得してログ保持部32へ格納する(S36)。ログ提供部42は、試験実行部36における疎通確認結果が成功の場合(S38のY)、ログ保持部32に格納されたそれまで未送信のルータログを一括して試験管理端末22へ送信し(S40)、S32に戻る。ルータログが未更新の場合(S34のN)、もしくは試験実行部36における疎通確認結果が失敗の場合も(S38のN)、S32に戻る。試験継続期間が経過し(S32のY)、もしくはログ取得指示を受け付けない場合(S30のN)、本図のフローを終了する。
【0037】
図7も、試験実行端末20の動作を示すフローチャートである。指示受付部34が疎通確認指示を受け付けると(S50のY)、試験実行部36は、疎通確認指示で指定された試験継続期間が未経過の場合(S52のN)、疎通確認指示で指定された他の試験実行端末20を宛先としてPINGプログラムを実行する。そして、PINGプログラムの実行結果により示される疎通状況、すなわち疎通確認結果を試験結果保持部30へ格納する(S54)。試験結果提供部38は、試験実行部36における疎通確認結果が成功の場合(S56のY)、その疎通確認結果を含むそれまで未送信の疎通確認結果を一括して試験管理端末22へ送信し(S58)、S52へ戻る。試験実行部36における疎通確認結果が失敗の場合も(S56のN)、S52へ戻る。試験継続期間が経過し(S52のY)、もしくは疎通確認指示を受け付けない場合(S50のN)、本図のフローを終了する。
【0038】
本実施の形態の網試験システム100によれば、試験対象NW10のエンドポイントにあたる複数の試験実行端末20に対して、試験管理端末22から一元的に試験開始を指示する。これにより、複数の試験実行端末20のそれぞれが異なるロケーション(例えば異なるLAN)に分散している場合でも、試験担当者は試験管理端末22を操作してそれぞれの試験実行端末20における疎通確認試験を開始させることができ、エンドツーエンドでの疎通確認試験の効率化を実現できる。
【0039】
また網試験システム100によれば、複数の試験実行端末20における疎通確認結果および中継装置(伝送装置)のログを集約した試験結果が試験担当者へ提示されるため、試験対象NW10に対する試験結果が正しいものであったか否かを試験担当者に効率的に確認させることができる。なお、試験実行端末20は中継装置に対して試験対象NW10を介した接続ではなくコンソール接続するため、試験対象NW10の通信状態(例えば試験のために試験対象NW10の一部に障害を発生させた場合)にかかわらず、試験実行端末20は中継装置において新たに出力されたログを即時に取得することができる。また、データ中継処理を未実行のスタンバイ状態の中継装置からもログを取得できる。
【0040】
また網試験システム100によれば、試験管理端末22と試験実行端末20とは試験対象NW10を介して接続されるため、試験対象NW10とは別に試験管理用のネットワークを構築する必要がなく、試験に要するコストを低減できる。また、ある試験実行端末20において収集された疎通確認結果および中継装置のログは、その試験実行端末20から他の試験実行端末20への疎通確認が成功したことを条件として試験管理端末22へ送信される。これにより、試験対象NW10に対する試験結果を確実に試験管理端末22へ提供して、試験担当者に確認させることができる。
【0041】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0042】
第1の変形例を説明する。実施の形態において一部言及したが、試験実行端末20は、ネットワークにおけるエンドツーエンドでの疎通確認試験を実施するための必要最小限の機能を備えた装置であってもよい。具体的には、ICMPパケットの送受機能(すなわちPINGプログラム)、TCP/UDP通信機能、HTTP/FTP等のアプリケーション通信機能、Telnetサーバ機能、syslog/SNMPサーバ機能のみを備える装置であってもよい。このように、ネットワークにおけるエンドツーエンドでの疎通確認試験に必要な機能のみを備えた簡易端末を、サーバやPC等の汎用的な情報処理装置に代えて、ネットワークのエンドポイントとして配置する。これにより、大規模なネットワークの試験において、多数のサーバやPCの事前準備が不要となり、試験のコストや手間を低減できる。
【0043】
第2の変形例を説明する。実施の形態では言及していないが、集約処理部60は、正しい網試験結果として想定される想定試験結果を予め保持する想定試験結果保持部と、実際の網試験結果と想定試験結果とが整合するか否かを判定し、整合する場合に網試験の結果が想定通り(正常)である旨を網試験結果に付加し、不整合の場合に網試験の結果が想定外(異常)である旨を網試験結果に付加する判定部とを含んでもよい。この場合、試験結果提示部62は、網試験結果を、判定部による判定結果(すなわち網試験結果が事前の想定通りであったか否かを示す情報)とともに試験担当者へ提示する。
【0044】
例えば、想定試験結果として、現用系ルータ12aおよび予備系ルータ14aにおいてVRRPによる現用機と予備機の切替が発生している旨のメッセージと、同時刻の(対応する)レコード内にその切替の影響を受ける疎通確認(例えば試験実行端末20aが関わる疎通確認)が失敗していること、切替の前後のレコードでは疎通確認は成功していることが定義されてもよい。この場合、図4の網試験結果と想定試験結果とが整合することとなるため、網試験の結果が想定通り(正常)であった旨が試験担当者へ提示される。この変形例によれば、試験担当者が網試験結果を確認して、正しい結果であったか否かを判断する負担を低減でき、ネットワーク試験を一層効率化させることができる。
【0045】
第3の変形例を説明する。実施の形態においては、試験管理端末22は、試験実行端末20a〜試験実行端末20cのそれぞれと、試験対象NW10を介して接続されることとした。変形例においては、試験管理端末22は、試験実行端末20a〜試験実行端末20cのそれぞれと、試験対象NW10とは異なる経路を介して接続されてもよい。例えば、試験対象NW10に対する試験の実行を指示し、試験結果を収集するための専用の経路を介して接続されてもよい。
【0046】
図8は、第3の変形例における網試験システム100の構成を示す。同図では、試験管理端末22と、試験実行端末20a〜試験実行端末20cのそれぞれが、USB(Universal Serial Bus)インタフェースを備え、USBハブ24を介して接続された構成を示している。この場合、試験管理端末22の試験指示送信部50は、USBハブ24を介して、ログ取得指示および疎通確認指示を試験実行端末20へ送信する。また、試験実行端末20のログ提供部42は、USBハブ24を介して、ルータログを試験管理端末22へ送信する。
【0047】
この変形例によると、試験管理端末22と、試験実行端末20a〜試験実行端末20cとの通信経路と、試験対象NW10とが分離されているため、試験対象NW10の試験による影響を受けずに、試験を指示し、また試験結果を収集することができる。したがって、試験実行端末20のログ提供部42は、ルータログが取得されたタイミングで、疎通確認の成否にかかわらず、そのルータログを試験管理端末22へ提供してもよい。同様に、試験実行端末20の試験結果提供部38は、疎通確認結果が取得されたタイミングで、疎通確認の成否にかかわらず、その疎通確認結果を試験管理端末22へ提供してもよい。これにより、試験管理端末22は、より一層リアルタイムにルータログおよび疎通確認結果を取得して試験担当者へ提示することができる。
【0048】
なお別の構成例として、試験管理端末22と、試験実行端末20a〜試験実行端末20cのそれぞれは、試験対象NW10とは異なるレイヤ2網やレイヤ3網を介して接続されてもよい。この場合、試験管理端末22と、試験実行端末20a〜試験実行端末20cのそれぞれは、USBハブ24に代えて、図示しないL2SWやL3SWを介して接続されてもよい。この場合も上記の効果を奏することはもちろんである。
【0049】
請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0050】
10 試験対象NW、 12 現用系ルータ、 14 予備系ルータ、 20 試験実行端末、 22 試験管理端末、 30 試験結果保持部、 32 ログ保持部、 34 指示受付部、 36 試験実行部、 38 試験結果提供部、 40 ログ取得部、 42 ログ提供部、 50 試験指示送信部、 52 試験結果保持部、 54 ログ保持部、 56 試験結果受付部、 58 ログ受付部、 60 集約処理部、 62 試験結果提示部、 100 網試験システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象のネットワークにおけるエンドポイントとしての複数の試験実行装置と、
前記複数の試験実行装置のそれぞれと接続された試験管理装置と、を備え、
前記試験管理装置は、前記複数の試験実行装置のそれぞれに、他の試験実行装置に対する疎通確認の実行を指示する試験指示部を含み、
前記複数の試験実行装置のそれぞれは、
前記試験管理装置からの指示にしたがって、他の試験実行装置に対する疎通確認を実行する試験実行部と、
前記試験管理装置へ前記疎通確認の結果を提供する試験結果提供部と、を含み、
前記試験管理装置はさらに、前記複数の試験実行装置のそれぞれから提供された疎通確認の結果を集約し、集約した情報を、前記エンドポイント間の疎通確認の結果として試験担当者へ提示する試験結果提示部を含むことを特徴とする網試験システム。
【請求項2】
前記試験管理装置は、前記複数の試験実行装置のそれぞれと、前記試験対象のネットワークとは異なる経路を介して接続されたものであり、
前記試験管理装置の試験指示部は、前記異なる経路を介して、各試験実行装置に前記疎通確認の実行を指示し、
各試験実行装置の試験結果提供部は、前記異なる経路を介して、前記試験管理装置へ前記疎通確認の結果を提供することを特徴とする請求項1に記載の網試験システム。
【請求項3】
前記試験管理装置は、前記複数の試験実行装置のそれぞれと、前記試験対象のネットワークを介して接続されたものであり、
各試験実行装置の試験結果提供部は、前記他の試験実行装置に対する疎通確認が成功した場合に、それまでに前記試験実行部において実行された疎通確認の結果を一括して、前記試験対象のネットワークを介して前記試験管理装置へ提供することを特徴とする請求項1に記載の網試験システム。
【請求項4】
前記試験管理装置の試験結果提示部は、前記複数の試験実行装置のそれぞれから提供された疎通確認の結果を、疎通確認時刻を基準として集約することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の網試験システム。
【請求項5】
前記複数の試験実行装置のそれぞれから他の試験実行装置へ送信された疎通確認用のデータを中継する中継装置にコンソール接続し、そのセッションを介して当該中継装置のログを取得して前記試験管理装置へ提供するログ取得装置をさらに備え、
前記試験管理装置の試験結果提示部は、前記複数の試験実行装置のそれぞれから提供された疎通確認の結果と、前記ログ取得装置から提供された中継装置のログとを対応づけて試験担当者へ提示することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の網試験システム。
【請求項6】
前記中継装置は、現用系の中継装置と予備系の中継装置とを含み、これらの装置により冗長化されたものであり、
前記複数の試験実行装置のそれぞれの試験実行部は、前記現用系の中継装置から前記予備系の中継装置への切替の前後に亘って、疎通確認用のデータを複数回送信し、
前記試験管理装置の試験結果提示部は、前記切替の前後に亘る疎通確認の結果および中継装置のログを、疎通確認時刻およびログ出力時刻を基準として対応づけることにより、前記切替の前後に亘る疎通の成否の推移を試験担当者へ提示することを特徴とする請求項5に記載の網試験システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−142834(P2012−142834A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−475(P2011−475)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)
【Fターム(参考)】