説明

綴じ具及びファイル

【課題】一の綴じリングだけを操作しても他の綴じリングの係合部同士を係合させることができる綴じ具及びこの綴じ具を備えたファイルを提供する。
【解決手段】複数の綴じリング3、5を有する綴じ具Gにおいて、綴じリング3、5は、前記一の綴じリング3付近に設けられた弾性付勢手段Dにより開方向に付勢されており、綴じリング3、5を構成する第一、第二のリング構成部材31、32、51、52を支持する連結板11、12をねじり変形させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書類等を綴じるための綴じ具及びその綴じ具が適用されたファイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の綴じ具として、相互に突き合わせた第一、第二の連結板をカバー内に収容してなるベースと、前記第一の連結板に支持された第一のリング構成部材及び前記第二の連結板に支持された第二のリング構成部材をそれぞれ備えてなる一対の綴じリングとを具備してなるものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
かかる綴じ具における綴じリングは、対をなす綴じリング間に配設した板バネ等によって均等な力で開方向に弾性付勢されている。そして、この弾性付勢力に抗して開位置にある綴じリングを閉じる方向に操作することによって各綴じリングの第一のリング構成部材と第二のリング構成部材の先端に設けられた係合部同士が係合してそれら綴じリングが閉位置に保持されるようになっている。
【0004】
すなわち、前記両綴じリングにおける各第一のリング構成部材の先端には外向きの係合部が設けられているとともに、第二のリング構成部材の先端には内向きの係合部が設けられており、前記両方の綴じリングを閉じる方向にそれぞれ操作して前記第一のリング構成部材と第二のリング構成部材の先端同士を突き合わせることにより前記外向きの係合部と内向きの係合部とが部材の弾性変形を利用して係合し、それら両綴じリングが閉位置に保持されるようになっている。また、前記外向きの係合部を有した第一のリング構成部材同士を相寄る方向に弾性変位させることにより、それら係合部同士の係合を解除することができるようになっている。
【0005】
ところで、このような構成のものにおいては、一方の綴じリングにのみに閉じ方向の操作力を付与することによって、他方の綴じリングをも同時に閉じようと試みることも少なくない。しかしながら、このような使い方をすると同操作力が他方の綴じリングに確実に伝わらないことがあり、他方の綴じリングの係合部同士が適切に係合しないこともあるという不具合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4244884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、一の綴じリングだけを操作しても他の綴じリングの係合部同士をも係合させることができる綴じ具及びその綴じ具を備えたファイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は次の構成をなすものである。
【0009】
請求項1に係る構成は、相互に突き合わせた第一、第二の連結板をカバー内に収容してなるベースと、前記第一の連結板に支持された第一のリング構成部材及び前記第二の連結板に支持された第二のリング構成部材をそれぞれ備えてなる複数の綴じリングとを具備してなり、開位置にあるこれら綴じリングのうちの一の綴じリングに加えられる閉方向の操作力により他の綴じリングをも閉じることができるようにした綴じ具であって、前記各綴じリングは、前記カバー内に設けられた弾性付勢手段により開方向に付勢されているとともにその付勢力に抗して閉じられた状態で前記第一、第二のリング構成部材の先端に設けられた係合部同士が係合して閉位置に保持されるものであり、前記第一、第二の連結板の一方又は両方がねじり変形されたものであり、前記開位置において、前記他の綴じリングにおける第一のリング構成部材の先端部と第二のリング構成部材の先端部との離間距離が、前記一の綴じリングにおける第一のリング構成部材の先端部と第二のリング構成部材の先端部との離間距離よりも短く設定されているものである。
【0010】
請求項2に係る構成は、請求項1記載の構成において、前記第一、第二の連結板が金属製のものである。
【0011】
請求項3に係る構成は、請求項1又は2何れか記載の構成において、前記第一、第二の連結板の両方がねじり変形されたものである。
【0012】
請求項4に係る構成は、請求項1、2又は3何れか記載の構成において、前記第一、第二の連結板における前記他の綴じリングの第一、第二のリング構成部材を支持している部分近傍の少なくとも一方の上面が、前記第一、第二の連結板における前記一の綴じリングの第一、第二のリング構成部材を支持している部分近傍の上面よりも内側に向くように形成されているものである。
【0013】
請求項5に係る構成は、請求項1、2、3又は4何れか記載の構成において、前記弾性付勢手段が、前記カバーの両側縁部における前記一の綴じリング付近に位置する部位を前記連結板の下面に弾性的に圧接させたものである。
【0014】
請求項6に係る構成は、表紙に、前記請求項1、2、3、4又は5何れか記載の綴じ具を備えてなるファイルである。
【0015】
請求項7に係る構成は、使用方向が明確に設定された表紙に前記請求項1、2、3、4又は5何れか記載の綴じ具を、一の綴じリングが他の綴じリングよりも手前側に位置するように取付けたファイルである。
【0016】
ここで「使用方向」とは、利用者・使用者からみた使用方向を意味する。また、「手前」とは、利用者・使用者からみた概念である。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、一の綴じリングだけを操作しても他の綴じリングの係合部同士を係合させることができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態を示す斜視図。
【図2】同実施形態における綴じ具の平面図。
【図3】図2におけるX−X線断面図。
【図4】図2におけるY−Y線断面図。
【図5】同実施形態における綴じ具の平面図。
【図6】図5におけるA矢視図。
【図7】図6におけるB矢視図。
【図8】図5におけるV−V線断面図。
【図9】図5におけるW−W線断面図。
【図10】第一の連結板及び第一のリング構成部材を示す正面図。
【図11】図10におけるC矢視図。
【図12】図11におけるD矢視図。
【図13】第二の連結板及び第二のリング構成部材を示す正面図。
【図14】図13におけるE矢視図。
【図15】図14におけるF矢視図。
【図16】本実施形態における作用説明図。
【図17】本実施形態における作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図17を参照して説明する。
【0020】
本実施形態は、本発明をファイルF及びそのファイルFの裏表紙H3に取付けられた綴じ具Gに適用した場合のものである。
【0021】
ファイルFは、表表紙H1、背表紙H2及び裏表紙H3とを有した表紙Hを備えたものである。このファイルFは表紙Hに施された図示しない印刷やシール等によりその使用方向が明確に設定されている。
【0022】
綴じ具Gは、相互に突き合わせた第一、第二の連結板11、12をカバー13内に収容してなるベース1と、第一の連結板11に支持された第一のリング構成部材31、51及び第二の連結板12に支持された第二のリング構成部材32、52をそれぞれ備えてなる複数すなわち2つの綴じリング3、5とを具備してなり、これら綴じリング3、5のうちの一の綴じリング3に加えられる閉方向の操作力により他の綴じリング5をも閉じることができるようにしたものである。
【0023】
換言すれば、本実施形態における綴じ具Gは、一の綴じリング3と他の綴じリング5の2つの綴じリング3、5によって主として2穴の用紙(図示せず)を綴じることができるようにしたものである。以下、各部について説明する。
【0024】
ベース1は、薄肉ステンレス材等により作られたカバー13と、このカバー13の内部に収容された第一、第二の連結板11、12とを具備してなる。
【0025】
カバー13は、長手方向両端部に表紙Hに取り付けるための取付孔131を有したもので、内部に相互に突き合わせた第一、第二の連結板11、12を反転可能に収容するための空間sを形成しうる形状、具体的には横断面において略扁平アーチ状をなしている。カバー13の両側縁部132は、内部に収容した第一、第二の連結板11、12が離脱しないように内方に折り返されている。すなわち、内縁部111、121同士を相互に突き合わせた第一の連結板11と第二の連結板12とが、カバー1の両内側面133間に突っ張った状態で収容されており、このカバー1の弾性変形を利用して、第一、第二の連結板11、12が、図8及び図9に示すように綴じリング3、5が閉じた状態の姿勢である下方突出姿勢(K)と、図3及び図4に示すように綴じリング3、5が開いた状態の姿勢である上方突出姿勢(J)との間で反転動作し得るようになっている。
【0026】
なお、第一、第二の連結板11、12の内縁部すなわち突き合わせ端縁111、121には噛み合わせ用の突起t1、t2、t3、t4が設けられている。この実施形態においては、一の綴じリング3付近における第一の連結板11の端縁111に突設された突起t1と第二の連結板12の端縁121に突設された突起t2とによって二つの連結板11、12の厚み方向の位置ずれを規制し、両連結板11、12の噛み合わせを確保している。また、他の綴じリング5付近における第一の連結板11の端縁111に突設された突起t3と第二の連結板12の端縁121に突設された突起t4とによっても両連結板11、12の噛み合わせを確保している。一の綴じリング3付近における両突起t1、t2間、及び、他の綴じリング5付近における両突起t3、t4間は、両連結板11、12の長手方向に離間させて設けてあり、綴じリング3、5における第一、第二のリング構成部材31、32、51、52の係合部311、321、511、521同士の係合動作に必要な両連結板11、12のたわみを許容している。
【0027】
また、この実施形態においては、各綴じリング3、5は、カバー13内にあり、一の綴じリング3付近に設けられた弾性付勢手段Dにより開方向に付勢されている。具体的には、カバー13の両側縁部132における一の綴じリング3付近に位置する部位(図7にて網掛けする部位であり、以下当該部位を「弾性付勢部」という。)を第一、第二の連結板11、12の下面112、122に弾性的に圧接させており、この弾性付勢部Dの弾性圧接力により両連結板11、12を上方に弾性付勢、より具体的には第一の連結板11の内縁部111側と第二の連結板12の内縁部121側を上方に向けて弾性付勢している。
【0028】
カバー13における綴じリング3、5に対応する位置には、リング挿通窓134と第一、第二の連結板11、12の上動を所定位置で係止する係止部135が設けられている。
【0029】
第一の連結板11は、一端部で一の綴じリング3の第一のリング構成部材31を支持するとともに他端部で他の綴じリング5の第一のリング構成部材51を支持するもので、具体的には概ね短冊状をなしている。この第一の連結板11は金属製のものである。この第一の連結板11は、プレス等の適宜の方法によりねじり変形されている。より具体的に言えば、第一の連結板11がねじり変形されていることにより、第一の連結板11における他の綴じリング5の第一のリング構成部材51を支持している部分P2近傍の上面11bが、一の綴じリング3の第一のリング構成部材31を支持している部分P1近傍の上面11aよりも内側を向くように形成されている。すなわち、第一の連結板11がねじり変形されたものであるため、図10に示すように、第一の連結板11における第一のリング構成部材31を支持している部分P1近傍の仮想中心線c1と、第一の連結板11における第一のリング構成部材51を支持している部分P2近傍の仮想中心線c2とが正面視において交差するように設定されている。なお、各仮想中心線c1、c2は、第一の連結板11における支持部分P1、P2の厚み方向中央部分を示している。本実施形態においては、各仮想中心線c1、c2の交差する角度αは約5度に設定されている。
【0030】
第一の連結板11は、図7、図11及び図12において、二点鎖線で示されている部分が折曲変形されており(以下、当該部分を「折曲部分」という)、全体としてねじれ形状をなしている。この折曲部分は、内縁部111から外側縁113側に斜め方向に延びる第一の折曲部分f1とこの第一の折曲部分f1と連続して外側縁113の内側に外側縁113と略平行に延びて一方の側端縁にまで至る第二の折曲部分f2とを主体に構成されている。換言すれば、第一の連結板11は、第一の折曲部分f1と第二の折曲部分f2を境界にして、一方側の上面が向く方向と他方側の上面の向く方向とを異ならせている。
【0031】
第二の連結板12は、一端部で一の綴じリング3の第二のリング構成部材32を支持するとともに他端部で他の綴じリング5の第二のリング構成部材52を支持するもので、具体的には概ね短冊状をなしている。この第二の連結板12は金属製のものである。この第二の連結板12は、プレス等の適宜の手段によりねじり変形されている。より具体的に言えば、第二の連結板12がねじり変形されていることにより、第二の連結板12における他の綴じリング5の第二のリング構成部材52を支持している部分P4近傍の上面12bが、一の綴じリング3の第二のリング構成部材32を支持している部分P3近傍の上面12aよりも内側を向くように形成されている。すなわち、第二の連結板12がねじり変形されたものであるため、図13に示すように、第二の連結板12における第二のリング構成部材32を支持している部分P3近傍の仮想中心線c3と、第二の連結板12における第二のリング構成部材52を支持している部分P4近傍の仮想中心線c4とが正面視において交差するように設定されている。なお、各仮想中心線c3、c4は、第二の連結板12における支持部分P3、P4の厚み方向中央部分を示している。本実施形態においては、各仮想中心線c3、c4の交差する角度βは約5度に設定されている。
【0032】
第二の連結板12は、図7、図14及び図15において、二点鎖線で示されている部分が折曲変形されており(以下、当該部分を「折曲部分」という)、全体としてねじれ形状をなしている。この折曲部分は、内縁部121から外側縁123側に斜め方向に延びる第一の折曲部分f3とこの第一の折曲部分f3と連続して外側縁123の内側に外側縁113と略平行に延びて一方の側端縁にまで至る第二の折曲部分f4とを主体に構成されている。換言すれば、第一の連結板12は、第一の折曲部分f3と第二の折曲部分f4を境界にして、一方側の上面が向く方向と他方側の上面の向く方向とを異ならせている。
【0033】
しかして、本実施形態では、図2に示すように、各綴じリング3、5が開いた状態である開位置において、他の綴じリング5における第一のリング構成部材51の先端部51sと第二のリング構成部材52の先端部52sとの離間距離w2が、一の綴じリング3における第一のリング構成部材31の先端部31sと第二のリング構成部材32の先端部32sとの離間距離w1よりも短く設定されている。
【0034】
各綴じリング3、5は、一の綴じリング3付近に設けられた弾性付勢部Dにより開方向に付勢されているとともにその付勢力に抗して閉じられた状態で第一、第二のリング構成部材31、51、32、52の先端に設けられた係合部311、511、321、521同士が係合して閉位置に保持されるものである。詳述すれば、各綴じリング3、5は、第一の連結板11の端部に基端部312、512をかしめ付けた第一のリング構成部材31、51と、第二の連結板12の端部に基端部322、522をかしめ付けた第二のリング構成部材32、52とを具備してなる。なお、各綴じリング3、5における第一のリング構成部材31、51の基端部312、512は、第一の連結板11に支持される部分P1、P2の上面11a、11bに対してそれぞれ略同じ角度で取り付けられているとともに、各綴じリング3、5における第二のリング構成部材32、52の基端部322、522は、第二の連結板12に支持される部分P3、P4の上面12a、12bに対してそれぞれ略同じ角度で取り付けられている。より具体的に言えば、図10に示すように、各綴じリング3、5における第一のリング構成部材31、51の基端部312、512近傍の軸線31j、51jが、第一の連結板11に支持される部分P1、P2の上面11a、11bに対してそれぞれ略垂直すなわち略90度の角度になるように設定され、前記第一のリング構成部材31、51は取り付けられているとともに、図13に示すように、各綴じリング3、5における第二のリング構成部材32、52の基端部322、522近傍の軸線32j、52jが、第二の連結板12に支持される部分P3、P4の上面12a、12bに対してそれぞれ略垂直すなわち略90度の角度になるように設定され、前記第二のリング構成部材32、52は取り付けられている。
【0035】
綴じリング3、5は、いわゆるDリングと称される構成をなすものである。第一のリング構成部材31、51は全体が湾曲した形状をなしており、第二のリング構成部材32、52は略直線状に形成された直線部323、523と湾曲形状に形成された湾曲部324、524とを備えた形状をなしている。
【0036】
第一のリング構成部材31、51の先端部には外向きの係合部311、511が設けられているとともに第二のリング構成部材32、52の先端部には内向きの係合部321、521が設けられ、第一のリング構成部材31、51の先端部と第二のリング構成部材32、52の先端部とを突き合わせることにより外向きの係合部311、511と内向きの係合部321、521とが係合して各綴じリング3、5が閉位置に保持されるようになっている。
【0037】
具体的に、外向きの係合部311、511は、外側すなわち綴じ具Gの長手方向における外方側に向けて突出する突起311a、511aと突起311a、511aに連続して設けられ外側に開放された凹部311b、511bとを備えたものである。内向きの係合部321、521は、内側すなわち綴じ具Gの長手方向における内方側に突出する突起321a、521aと突起321a、521aに連続して設けられ内側に開放された凹部321b、521bとを備えたものである。
【0038】
各第一、第二のリング構成部材31、51、32、52の先端同士が係合する状態においては、外向きの係合部311、511の突起311a、511aが内向きの係合部321、521の凹部321b、521bに嵌るとともに、内向きの係合部321、521の突起321a、521aが外向きの係合部311、511の凹部311b、511bに嵌るようになっており、両突起311a、511a、321a、521aの突き合わせ側端部には係合時に第一のリング構成部材31、51と第二のリング構成部材32、52とを離間させるための案内傾斜面311c、511c、321c、521cが形成されている。
【0039】
一の綴じリング3における第一のリング構成部材31に設けられた外向きの係合部311と他の綴じリング5における第一のリング構成部材51に設けられた外向きの係合部511とは互いに背反する方向を向いている。また、一の綴じリング3における第二のリング構成部材32に設けられた内向きの係合部321と他の綴じリング5における第二のリング構成部材52に設けられた内向きの係合部521とは互いに対面する方向を向いている。そのため、一の綴じリング3における第一のリング構成部材31と、他の綴じリング5における第一のリング構成部材51をそれぞれ相寄る方向に移動させることにより、係合部311、511、321、521同士の係合が解除されるようになっている。
【0040】
以上のようにしてなる綴じ具Gを、ファイルFの裏表紙H3における綴じ元側端縁部分に取付けている。すなわち、2つの綴じリング3、5の内、一の綴じリング3がファイルの使用者からみて手前側に位置するようにしてファイルFに取付けられており、その取付けはカバー13に設けた取付孔131に挿通されたリベット136により行われている。この取付け状態では、直線部323、523を有した第二のリング構成部材32、52が第一のリング構成部材31、51よりも右側に位置するようになっている。
【0041】
このような構成のものであれば、第一、第二のリング構成部材31、51、32、52の係合部311、511、321、521同士の係合が解除されている状態では、弾性付勢手段すなわちカバー13の弾性付勢部Dの働きにより第一、第二の連結板11、12が上方に弾性付勢されているため、これら両連結板11、12は上方突出姿勢Jにまで反転することになり、綴じリング3、5は、図2〜図4及び図16に示すように開いた状態である開位置に維持される。この開いた状態から、図16に示すように一の綴じリング3を構成している第一、第二のリング構成部材31、32を相寄る方向に操作すると、第一、第二の連結板11、12により相互に連結されている両綴じリング3、5が弾性付勢部Dの付勢力に抗して閉じ方向に作動し、最終的に図17に示すように各綴じリング3、5の第一のリング構成部材31、51の外向きの係合部311、511と第二のリング構成部材32、52の内向きの係合部321、521とが係合する。そのため、両綴じリング3、5は、係合後においては第一、第二のリング構成部材31、32から手を離しても閉状態に維持される。
【0042】
第一のリング構成部材31、51の外向きの係合部311、511と第二のリング構成部材32、52の内向きの係合部321、521とが係合する際の作動を詳述すれば、次の通りである。
【0043】
各綴じリング3、5が開位置にある状態から、一の綴じリング3を構成している第一、第二のリング構成部材31、32に対し、手指によって閉方向の操作力を与えると、第一、第二の連結板11、12により相互に連結されている両綴じリング3、5が弾性付勢部Dの付勢力に抗して閉じ方向に作動し、他の綴じリング5の第一、第二のリング構成部材51、52の先端部51s、52s同士が、一の綴じリング3の第一、第二のリング構成部材31、32の先端部31s、32s同士が当接するよりも先に当接する。すなわち、手指によって閉方向の操作力が直接的に与えられる一の綴じリング3から離れて位置している綴じリングである他の綴じリング5の第一、第二のリング構成部材51、52の先端部51s、52s同士は、一の綴じリング3の第一、第二のリング構成部材31、32の先端部31s、32s同士が当接して押し合う前に先んじて、閉じ方向に押し合いを行うことになる。
【0044】
次いで、第一のリング構成部材31、51の先端部と第二のリング構成部材32、52の先端部とがそれぞれ突き合った段階では、外向きの係合部311、511の案内傾斜面311c、511cと内向きの係合部321、521の案内傾斜面321c、521cとが当接する。その状態からさらに両リング構成部材31、51、32、52に閉じ方向の操作力が付与されると、案内傾斜面311c、511c、321c、521cの案内作用により外向きの係合部311、511を有している第一のリング構成部材31、51が一時的に内側に弾性変位するとともに内向きの係合部321、521を有している第二のリング構成部材32、52が一時的に外側に弾性変位することになる。そして、外向きの係合部311、511及び内向きの係合部321、521の突起311a、511a、321a、521a同士が相互に乗り越えた段階で、外向きの係合部311、511の突起311a、511aが内向きの係合部321、521の凹部321b、521bに嵌り込むとともに、内向きの係合部321、521の突起321a、521aが外向きの係合部311、511の凹部311b、511bに嵌り込み、係合が完了する。その結果、一の綴じリング3から手を離しても両綴じリング3、5は閉状態に保持される。
【0045】
以上の係合動作は、第一、第二のリング構成部材31、51、32、52を支持している第一、第二の連結板11、12の厚み方向の一時的なたわみを利用して行われる。すなわち、第一のリング構成部材31、51に設けられた外向きの係合部311、511の案内傾斜面311c、511cと、第二のリング構成部材32、52に設けられた内向きの係合部321、521の案内傾斜面321c、521cとを当接させた状態で一の綴じリング3における両リング構成部材31、32をさらに閉じ方向に操作した場合、案内傾斜面311c、511c、321c、521cの案内作用により二つの第一のリング構成部材31、51は相寄る方向に倒れるとともに二つの第二のリング構成部材32、52は相離れる方向に倒れる動作が惹き起こされる。二つの第一のリング構成部材31、51が相寄る方向へ傾倒する動作は、これら両第一のリング構成部材31、51を支持している第一の連結板11が下方にたわむことによって、すなわち第一の連結板11の長手方向中央部が下方に変位する方向にたわむことによって惹起される。二つの第二のリング構成部材32、52が相離れる方向へ傾倒する動作は、これら両第二のリング構成部材32、52を支持している第二の連結板12が上方にたわむことによって、すなわち第二の連結板12の長手方向中央部が上方に変位する方向にたわむことによって惹起される。
【0046】
そして、本実施形態における綴じ具Gでは、各連結板11、12をねじり変形させているので、以上の動作がより軽快かつ円滑に行われる。すなわち、両連結板11、12をねじり変形させて、各連結板11、12における他の綴じリング5の第一、第二のリング構成部材51、52を支持している部分P2、P4近傍の上面11b、12bが、各連結板11、12における一の綴じリング3の第一、第二のリング構成部材51、52を支持している部分P1、P3近傍の上面11a、12aよりも内側を向くように形成されているので、他の綴じリング5における第一のリング構成部材51の先端部51sと第二のリング構成部材52の先端部52sとの離間距離w2が、一の綴じリング3における第一のリング構成部材31の先端部31sと第二のリング構成部材32の先端部32sとの離間距離w1よりも短く設定することができ、従来のものと比べて、他の綴じリング5におけるリング構成部材51、52同士を係合させる際により大きな力を与えることになる。そのため、一の綴じリング3を閉じる方向に操作することによって他方の綴じリング5のリング構成部材32、52同士をより確実に係合させることができる。したがって、前述のように他の綴じリング5側における第一、第二のリング構成部材32、52の係合部321、521同士の係合を従来のものよりも大きな力で行うことができ、従来の不具合をより確実に抑制又は防止することができる。換言すれば、本実施形態の構成によれば、使用者の手前に位置する一の綴じリング3を摘んで閉じ方向に操作するだけで、他の綴じリング5に対して一の綴じリング3に与えた操作力をより確実に伝達することができ、他の綴じリング5を従動させて当該他の綴じリング5におけるリング構成部材32、52の係合部321、521同士を円滑、確実に係合させることができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る綴じ具Gは、第一、第二の連結板11、12の両方がねじり変形されたものであり、開位置において、他の綴じリング5における第一のリング構成部材51の先端部51sと第二のリング構成部材52の先端部52sとの離間距離w2が、一の綴じリング3における第一のリング構成部材31の先端部31sと第二のリング構成部材32の先端部32sとの離間距離w1よりも短く設定されているため、一の綴じリング3だけを手指によってつまむように閉じ操作した場合でも、他の綴じリング5の係合部511、521同士が係合するのに必要な移動距離を確保することができるとともに、他の綴じリング5の係合部511、521同士の係合に必要な操作力を確保することができ、所期の目的、すなわち一の綴じリング3だけを操作しても他の綴じリング5の係合部511、521同士をも係合させることができる綴じ具Gを提供するという目的を達成することができる。
【0048】
第一、第二の連結板11、12が金属製のものであるので、塑性変形を比較的容易に行うことができるとともに、コンパクトな大きさあっても弾性付勢力や強度にも優れたものとなっている。
【0049】
第一、第二の連結板11、12がそれぞれねじり変形されたものであるため、一方のみを変形させるものと比較して、少ない変形で所期の目的を実現することができる。
【0050】
第一、第二の連結板11、12における他の綴じリング5の第一、第二のリング構成部材51、52を支持している部分P2、P4近傍の上面11b、12bが、第一、第二の連結板11、12における一の綴じリング3の第一、第二のリング構成部材31、32を支持している部分P1、P3近傍の上面11a、12aよりも内側に向くように形成されているので、開位置において、他の綴じリング5における第一のリング構成部材51の先端部51sと第二のリング構成部材52の先端部52sとの離間距離w2が、一の綴じリング3における第一のリング構成部材31の先端部31sと第二のリング構成部材32の先端部32sとの離間距離w1よりも短く設定される構造を比較的容易に実現することができる。すなわち、各綴じリング3、5における第一のリング構成部材31、51の基端部312、512は、第一の連結板11に支持される部分P1、P2の上面11a、11bに対してそれぞれ略同じ角度で取り付けることができるとともに、各綴じリング3、5における第二のリング構成部材32、52の基端部322、522は、第二の連結板12に支持される部分P3、P4の上面12a、12bに対してそれぞれ略同じ角度で取り付けることができるため、各綴じリング3、5の第一、第二の連結板11、12への取り付けを、極めて微妙な角度調整を要すること無く、統一的・共通的に行うことができ、製品の安定に寄与するものとなる。しかも、本実施形態では、その角度を略垂直、すなわち、略90度にしているので、各綴じリング3、5の各連結板11、12への取り付けを好適に行うことができるだけでなく、取り付けの精度にも優れたものとなっている。
【0051】
また、本実施形態に係るファイルFは、前述した綴じ具Gを取り付けてなるものであり、片手操作によって綴じ具Gの閉じ操作を確実に行うことができる利用者にとって使い勝手の良好なファイルFを実現することができる。
【0052】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0053】
本実施形態では、第一、第二の連結板の両方がねじり変形されたものについて説明したが、これに限定されるものではなく、第一、第二の連結板の一方のみがねじり変形されたものであってもよい。
【0054】
弾性付勢手段は、本実施形態のものに限定されるものではなく、例えば、カバーの両側縁部間にバネを架設し、そのバネの作用端を連結板の下面に弾性的に圧接させたものであってもよい。
【0055】
本実施形態では、一の綴じリング及び他の綴じリングがそれぞれ1つである場合の綴じ具について説明したが、一の綴じリング及び他の綴じリングはそれぞれ複数あってもよい。
【0056】
綴じリングの形状は本実施形態に限定されず、閉状態においてループをなすものであれば良い。例えば、丸型(O型)リングやオーバルリング等種々のものが考えられる。
【0057】
各リング構成部材の係合部の形状や向きも適宜設定することができるものであり、本実施形態に示す態様に限定されるものではない。
【0058】
ファイルの使用方向は明確に定められたものでなくても良く、また、綴じリングの取り付け方向も限定されるものではない。なお、本実施形態で示すように、使用方向が定められた表紙に、一の綴じリングが操作者の手前に位置するようにして綴じ具を取り付けたものであると、閉じ操作をするべき一の綴じリングに対して使用者を自然に誘導することができる。なお、閉じ操作をするべき一の綴じリングを使用者に認識させるため、綴じ具や表紙の所定部位に標識を設けることも考えられる。標識には、印刷による案内やシール貼り付け等による案内等、種々のものが考えられる。
【0059】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…ベース
3…綴じリング(一の綴じリング)
5…綴じリング(他の綴じリング)
11…連結板(第一の連結板)
11a…上面
11b…上面
12…連結板(第二の連結板)
12a…上面
12b…上面
13…カバー
31…リング構成部材(第一のリング構成部材)
31s…先端部
32…リング構成部材(第二のリング構成部材)
32s…先端部
51…リング構成部材(第一のリング構成部材)
51s…先端部
52…リング構成部材(第二のリング構成部材)
52s…先端部
D…弾性付勢手段(弾性付勢部)
F…ファイル
G…綴じ具
H…表紙
P1…(支持)部分
P2…(支持)部分
P3…(支持)部分
P4…(支持)部分
w1…離間距離
w2…離間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に突き合わせた第一、第二の連結板をカバー内に収容してなるベースと、
前記第一の連結板に支持された第一のリング構成部材及び前記第二の連結板に支持された第二のリング構成部材をそれぞれ備えてなる複数の綴じリングとを具備してなり、開位置にあるこれら綴じリングのうちの一の綴じリングに加えられる閉方向の操作力により他の綴じリングをも閉じることができるようにした綴じ具であって、
前記各綴じリングは、前記カバー内に設けられた弾性付勢手段により開方向に付勢されているとともにその付勢力に抗して閉じられた状態で前記第一、第二のリング構成部材の先端に設けられた係合部同士が係合して閉位置に保持されるものであり、
前記第一、第二の連結板の一方又は両方がねじり変形されたものであり、前記開位置において、前記他の綴じリングにおける第一のリング構成部材の先端部と第二のリング構成部材の先端部との離間距離が、前記一の綴じリングにおける第一のリング構成部材の先端部と第二のリング構成部材の先端部との離間距離よりも短く設定されていることを特徴とする綴じ具。
【請求項2】
前記第一、第二の連結板が金属製のものである請求項1記載の綴じ具。
【請求項3】
前記第一、第二の連結板の両方がねじり変形されたものである請求項1又は2何れか記載の綴じ具。
【請求項4】
前記第一、第二の連結板における前記他の綴じリングの第一、第二のリング構成部材を支持している部分近傍の少なくとも一方の上面が、前記第一、第二の連結板における前記一の綴じリングの第一、第二のリング構成部材を支持している部分近傍の上面よりも内側に向くように形成されている請求項1、2又は3何れか記載の綴じ具。
【請求項5】
前記弾性付勢手段が、前記カバーの両側縁部における前記一の綴じリング付近に位置する部位を前記連結板の下面に弾性的に圧接させたものである請求項1、2、3又は4何れか記載の綴じ具。
【請求項6】
表紙に、前記請求項1、2、3、4又は5何れか記載の綴じ具を備えてなるファイル。
【請求項7】
使用方向が明確に設定された表紙に前記請求項1、2、3、4又は5何れか記載の綴じ具を、一の綴じリングが他の綴じリングよりも手前側に位置するように取付けたことを特徴とするファイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−187839(P2012−187839A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53858(P2011−53858)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】