説明

綾巻きパッケージおよび綾巻きパッケージ製作法

【課題】綾巻きパッケージであって、プレシジョンワインディングまたはステップ−プレシジョンワインディングで形成されており、巻取の際に形成される各菱形部分が、密に相並んで、または相互間隔を有して平行に巻き上げられた糸区分によって閉塞されて、糸層が形成されるようになっている形式のものを改良して、プレシジョンワインディングまたはステップ−プレシジョンワインディングを有する綾巻きパッケージの構造を改善する。
【解決手段】一部の糸層の幅が、別の一部の糸層の幅と異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、綾巻きパッケージであって、プレシジョンワインディングまたはステップ−プレシジョンワインディングで形成されており、巻取の際に形成される各菱形部分が、密に相並んで、または相互間隔を有して平行に巻き上げられた糸区分によって閉塞されて、糸層が形成されるようになっている形式のものに関する。
【0002】
また本発明は、綾巻きパッケージの製作法であって、綾巻きパッケージに巻き取る糸を、糸ガイドを用いて綾振り運動させ、綾振り運動を、綾巻きパッケージの駆動とは独立して制御し、あや角および巻付幅を特定し、巻取に際して形成される菱形部分を、密に相並んで、または相互間隔を有して平行に巻き上げた糸区分によって閉塞して、糸層を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
綾巻きパッケージは、ランダムワインディング(あや角一定巻き;wilde Wicklung)、プレシジョンワインディング(ワインド数一定巻き)またはステップ−プレシジョンワインディング(Stufen-Praezisionswicklung)で製作することができる。ここで用いた「綾巻きパッケージ」という概念は、綾巻きパッケージの巻き取りを行う間に形成される巻き体を含むものである。
【0004】
ランダムワインディングで綾巻きパッケージを製作する際に、糸綾振り速度と綾巻きパッケージ周速とは、総巻取行程の間、つまり巻取過程の開始から終了まで、互いに決まった比を有している。これによってあや角は一定に維持されるが、これに対して巻取比はパッケージ直径が増加するにつれ減少する。巻取比は、糸あや振り運動の往復ストロークごとのパッケージ回転数を規定する。ランダムワインディングで製作された綾巻きパッケージは、安定した巻糸本体とほぼ均等な密度とを有している。特に巻取比の整数値を通過する場合、いわゆるリボン巻き(Wicklungsbilder)またはパターン形成(Spiegelwicklung;溝付ドラムの溝パターンが巻き体に形成されること)が生じる。このような不都合な作用を回避するために、このためにいわゆるリボン崩し法(Bildstoerungs-Verfahren)が用いられるが、リボン巻きは完全に解消されるとは限らない。
【0005】
プレシジョンワインディングで綾巻きパッケージを製作する場合、あや角でなく、巻取比が総巻取工程にわたって一定である。この場合あや角は、綾巻きパッケージ直径が増加するにつれ減少する。一般的なプレシジョンワインディングの利点によれば、高いドフィング(パッケージ交換)速度および高い巻取密度が得られ、ひいては同じパッケージ容量でランダムワインディングの綾巻きパッケージと比べて大きな糸走行長さが得られる。綾巻きパッケージ直径が増加するにつれ減少するあや角は、短繊維糸からプレシジョンワインディングのパッケージを製作する際に直径を制限する。
【0006】
ステップ−プレシジョンワインディングは、ランダムワインディングとプレシジョンワインディングとの組み合わせを成しており、ここでは両方のワインド形式の利点を利用し、かつ欠点を回避するのが望まれている。プレシジョンワインディングが段階的に行われ、ここではたとえば許容可能な最大あや角が設定され、あや角は1ステップの間に一定の巻取比で小さくなっていく。あや角がまだ許容できる最小値に達すると、あや角は急速に再び開始値に戻される。この場合巻取比は比較的小さな値にされる。これによってほぼ一定のあや角を有する綾巻きパッケージが得られ、この場合巻取比は段階的に減少されている。
【0007】
これら3つの巻取形式で綾巻きパッケージを製作する際の公知の問題は、綾巻きパッケージの側部における密度が比較的高いことである。糸は変向箇所で鋭角に巻き重ねることができず、常にある半径で巻き重ねられるので、綾巻きパッケージの縁の密度が増加し、これは縁の「ふくれ(Aufwoelben)」の原因となる。このような比較的高い密度による「ハード」な縁は、最適なパッケージ密度ならびに後続の綾巻きパッケージの染色プロセスにとっても不都合である。
【0008】
巻付過程に際して糸を綾振りさせるために糸が溝付ドラムによって案内される場合、前述の問題を抑えるために、以前からたとえばドイツ連邦共和国特許第683468号明細書から、溝付ドラムを軸の長手方向に沿って比較的小さな頻度で綾振りさせて、縁における糸巻付を所定の範囲で分配することが公知である。この場合綾振りのストロークは不変である。このような「縁変位;Kantenverlegung」によって、縁領域の密度分布は均等化されるが、パッケージの内側は「ソフト」なままであり、つまり比較的小さな密度を有している。
【0009】
パッケージの密度分布を改善する別の構成は、巻付幅の所望の短縮である。
【0010】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第3505453号明細書から、「ランダムワインディング」で綾巻きパッケージを製作する際に、巻き上げの間に綾振りストロークを増減することが公知である。往復ストロークのあとの綾振りストロークの増減は、ブレッシング(Atmung)と呼ばれる。この場合綾振りストロークは繰り返し両端部で短縮され、最初の値に戻される。ブレッシングによって良好な密度分布が達成される。
【0011】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10021963号明細書には、「ランダムワインディング」における糸の巻き上げの際のいわゆるブレッシングが記載されている。綾振りストロークの長さは周期的に変化され、この場合ブレッシングサイクルの開始に際して、糸は綾巻きパッケージの外側縁部の変向点に置かれる。ブレッシングサイクルの終了後に糸をパッケージの周の同じ位置に置かないようにするために、綾振り糸ガイドの速度および綾振りストロークが制御されて、糸はブレッシングサイクルの終了後に、ブレッシングサイクルの開始時における変向点に対してずらして位置するようになっている。
【0012】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第4310905号明細書には、綾巻きパッケージを製作するための糸巻付が記載されており、ここでは巻付幅はその都度糸が2つの変向点を通走したあとで、つまり綾振り運動の往復ストロークのあとで変更され、新たな変向点が定められる。所望の形式で設定されることに基づいて、綾巻きパッケージの縁における密度集中を解消し、パッケージ内側まで密度分布を均等化するので、理想的な形式で調節して、ほぼ均質な密度分布を有する綾巻きパッケージを製作することができる。
【0013】
比較的高い巻取密度と良好な繰り出し特性とに基づいて、多くの場合綾巻きパッケージを製作する際に「ランダムワインディング」の代わりにプレシジョンワインディングもしくはステップ−プレシジョンワインディングが有利なものとなっている。巻取比の適当な選択によって、このようなワインディング形式の場合に、所望の形式で糸巻き重ねに影響を与えることができる。糸層の良好な外観および綾巻きパッケージの技術的な特性は、総巻取工程にわたって狭い範囲で一定に維持することができるが、このことは「ランダムワインディング」では不可能である。プレシジョンワインディングでも、またステップ−プレシジョンワインディングでも、糸を巻き付ける際に綾巻きパッケージの縁領域で「ランダムワインディング」と同様の問題が生じる。
【0014】
プレシジョンワインディングまたはステップ−プレシジョンワインディングの場合に、「ハード」に膨らんだ縁を回避するために、「ランダムワインディング」によって公知のものと同じ形式で、前述の巻付幅の短縮もしくは一般的な縁変位を行うと、縁変位なしに整然と巻き重ねられた糸層が綾巻きパッケージの縁で互いに入り込むように移動され、パッケージ構造ならびにパッケージの外観がその特徴を失い、ひいてはプレシジョンワインディングの利点を失う。このことはプレシジョンワインディングまたはステップ−プレシジョンワインディングに「ランダムワインディング」の場合に有利な公知のストローク短縮を転用する際の障害となっている。
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許第683468号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許出願公開第3505453号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10021963号明細書
【特許文献4】ドイツ連邦共和国特許出願公開第4310905号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって本発明の課題は、冒頭で述べたような形式の綾巻きパッケージおよび綾巻きパッケージ製作法を改良して、プレシジョンワインディングまたはステップ−プレシジョンワインディングを有する綾巻きパッケージの構造を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題を解決するための本発明の装置によれば、一部の糸層の幅が、別の一部の糸層の幅と異なっている。
【0017】
この課題を解決するための本発明の方法によれば、綾巻きパッケージの巻取に際して菱形開始部分から菱形終了部分に向かって漸次ずらして巻き付けた糸区分が、菱形終了部分に到達して、菱形開始部分に向かう戻しストロークを行う際に、巻付幅の変更を行う。
【発明の効果】
【0018】
本発明のような巻付幅の変化によって、プレシジョンワインディング形式の場合でも「ハード」に膨らんだ縁を回避することができる。これによって綾巻きパッケージの巻取密度、均質性および繰り出し特性は大幅に改善される。プレシジョンワインディングの基本構造は失われない。そのように製作された綾巻きパッケージでは、技術的な利点の他に、整った視覚的印象が得られ、本発明の綾巻きパッケージは、公知の従来技術のものと比べて品質指標で極めて有利なものとなっている。
【0019】
上下に位置する糸層の間の交換頻度にストロークブレッシングの頻度を減少することによって、有利な密度分布は減少されない。むしろプレシジョンワインディングもしくはステップ−プレシジョンワインディングのワインド形式に基づいて、また追加的に、障害とならない糸層の製作によって、綾巻きパッケージの絶対密度が高められ、その均質性が改善されることが明らかとなった。本発明の綾巻きパッケージおよびその製作法では、特徴的な視覚的印象、およびプレシジョンワインディングの有利な技術的特性、たとえば優れた繰り出し特性、良好な外観およびパッケージ密度は制限されずに維持される。
【0020】
糸層をクローズにする(糸目を閉じる)ために、綾巻きパッケージの菱形部分は閉塞(菱形部分に別の糸区分を巻き重ねてこれを埋めること)されているか、もしくはクローズにされている。菱形部分を閉塞したあとで、糸巻き重ねは再び菱形開始部分で行われる。このことは以下に戻しストロークと記載する。直接的に上下に位置する糸層の幅がそれぞれ異なっているか、または各戻しストロークで巻付幅の変化が行われるので、局所的な密度集中が回避される。有利には比較的小さな幅を有する糸層とパッケージ幅を有する糸層とが交互に配置される。これによって密度分布の効果的な最適化が得られる。
【0021】
クローズ型の糸層全体のうちの少なくとも半分がパッケージ幅を有している場合、綾巻きパッケージの安定した正確な縁が形成される。
【0022】
比較的小さな巻付幅がそれぞれ変化付けされる場合、一方では十分な最適化が得られ、他方では制御が簡素化される。
【0023】
各菱形部分を閉塞する際に糸区分が逐次、各菱形部分を戻しストロークの前に完全にクローズにするようにな値でずらされるか、または糸区分が菱形部分の内側で相互間隔を有して巻き重ねられ、後続の戻しストロークのあとで新たな糸区分が形成された隙間に巻き重ねられる場合、綾巻きパッケージの特に高い密度と均質性とが達成される。
【0024】
旋回可能な糸ガイドによって、糸巻付を正確に制御しつつ、運動量の適当な配分と高い綾振り速度とが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に本発明の実施の形態を図示の実施例を用いて詳しく説明する。
【0026】
図1に示した、綾巻きパッケージを製作する巻返部位に設けられた巻取装置1では、綾巻きパッケージ2が、矢印4の方向で回転する摩擦ローラ3によって駆動される。綾巻きパッケージ2は、旋回可能なボビンフレーム5に保持されていて、かつ摩擦ローラ3に載置されている。糸6は矢印7の方向で供給される。糸6は、綾巻きパッケージ2の軸方向で往復運動する糸ガイド8を通走して、綾巻きパッケージ2に巻き上げられる。糸ガイド8の駆動は、綾振り装置9によって行われる。摩擦ローラ3は軸10を介してモータ11によって駆動される。綾振り装置9は作用結合部材12を介してモータ13と結合されている。モータ11もモータ13もマイクロプロセッサ14によって制御される。マイクロプロセッサ14は、綾巻きパッケージ2の現行の直径に依存して糸6の巻付間隔を制御するためのプログラムを有している。綾巻きパッケージ2の現行の直径は、綾巻きパッケージ2に巻き取られた糸長さから求められる。糸長さはセンサ15によって特定され、このセンサ15は摩擦ローラ3の回転数を検出する。センサ16は綾巻きパッケージ2の回転数を検出するために用いられ、このセンサ16は、センサ15と同様にマイクロプロセッサ14に接続されている。測定ヘッド17は走行する糸6の直径を検出し、これもまたマイクロプロセッサ14と接続されている。
【0027】
図2には、旋回可能な糸ガイドを備えた巻返部位を示した。巻返部位の巻取装置18は、ボビンフレーム19を用いて綾巻きパッケージ20を保持する。巻返プロセスの間、被駆動式の綾巻きパッケージ20は表面で押圧ローラ21に載置していて、かつ摩擦作用によって非駆動式の押圧ローラ21を連行する。綾巻きパッケージ20の駆動は、回転数制御可能な駆動装置22を介して行われる。巻返プロセスの間に糸23を綾振りさせるために、綾振り装置24が設けられている。綾振り装置24はフィンガ状に形成された旋回可能な糸ガイド25を備えており、この旋回アーム状の糸ガイド25は、電磁石式の駆動装置によって負荷されて、図2に示したように、糸23を綾巻きパッケージ20の両端面間で綾振りさせる。糸23は、糸ガイド25による巻付の間、ガイド条片26に沿ってスライドする。巻取装置18および綾振り装置24の制御は、線路28,29を介してマイクロプロセッサ27によって行われる。図2に示したような綾振り装置24は、たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第19858548号明細書またはこれに対応する米国特許第6311919号明細書に詳しく記載されている。
【0028】
図2に示した巻取装置18によって、綾巻きパッケージ20の一方の側部30から他方の側部31までの糸6,23の巻付運動、いわゆる綾振りストロークまたは巻付ストロークは可変に制御可能である。
【0029】
図3には、縁変位されないプレシジョンワインディングの糸層を示した。パッケージ軸方向の糸ピッチ、つまり相並んで位置して平行に延びる2本の糸の間隔が、糸の直径よりもはるかに大きいので、この実施例は「オープン(offen)」型のプレシジョンワインディングと呼ばれる。オープン型のプレシジョンワインディングで製作された糸層32を判りやすく図示するために、図3には、この糸層だけを別個に示して、残りの綾巻きパッケージの図示は省略した。図4〜図12においても同じ理由で図3と同様の形式で示した。
【0030】
糸の巻付が以下のように制御されてる場合、つまり糸間隔が糸の直径とほぼ同じに制御されている場合、「クローズ(geschlossen)」型のプレシジョンワインディングと呼ばれる。図4に示した、クローズ型のプレシジョンワインディングで製作された糸層33は、オープン型のプレシジョンワインディングの糸層32と比べて、著しく高い綾巻きパッケージの巻取密度が得られる。
【0031】
ランダムワインディングで行われるように、プレシジョンワインディングにおいて「ハード」な縁を回避するため、もしくは綾振りストロークにわたる綾巻きパッケージの密度を均一化するために、従来慣用の縁変位が用いられると、縁変位なしに整然と巻き重ねられた糸層部分が縁で互いに入り込むようにずらされ、パッケージ構造ひいては視覚的な印象でプレシジョンワインディングの特性が失われる。
【0032】
図5には、オープン型のプレシジョンワインディングの糸層34を示し、また図6には、クローズ型のプレシジョンワインディングを示した。ここではそれぞれ従来の縁変位が行われる。糸層の均一性ひいてはたとえば高いパッケージ密度および均質化は、従来慣用の縁変位によってはっきりと失われている。
【0033】
図7〜図10には、クローズ型のプレシジョンワインディングのクローズ型の糸層形成を示した。選択された巻取比に依存して、パッケージ表面に菱形部分が形成され、この菱形部分は、継続する巻取工程で連続的に閉塞される。糸ピッチが小さく選択されていると、これに応じてこの過程は長くなる。菱形部分を閉塞するための詳しい説明は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10015933号明細書またはこれに対応する米国特許第6848962号明細書に記載されている。パッケージ表面における菱形部分が完全に閉塞されていると、完全なクローズ型の糸層が提供される。巻付ストロークとも呼ばれる綾振りストロークは、このようなクローズ型の糸層が完成されるごとに変化される。このためにたとえば綾振りストロークの変向位置が綾振りストローク中心に向かって、つまり内側に変位される。
【0034】
図11には、綾巻きパッケージのパッケージ表面の縁部領域における糸層の幾つかの実施例を概略的に示した。ここでは最下位の糸層として示した糸層38では、巻付ストロークもしくは綾振りストロークの幅は、パッケージ幅Bspにわたって、綾巻きパッケージの、図11において左側に示した側部39から右側に示した側部40まで延びている。変向位置41,42もしくは最下位の糸層38の糸の巻き重ね位置は、その上位の糸層43に関して変化される。糸層43は、変向位置44,45を備えていて、かつ下位の糸層38よりも小さな幅Bredを有している。糸層43も同様に「クローズ型の糸層」として完成されているので、綾振りストロークが新たに変化付けされて、糸層43に糸層46が巻き重ねられる。糸層46も、糸層38と同様の幅、つまりパッケージ幅Bspを有している。糸層46に糸層47が続いており、糸層47の幅Bredは縮小されている。もちろん糸層47の幅Bredは、糸層43の幅Bredよりも幾分か大きくなっている。さらに糸層47にパッケージ幅Bspを有する糸層48が重ねられ、これが繰り返される。糸層が2層ごとにパッケージ幅Bspを有しており、これに対してこれらの糸層の間に位置する糸層の幅Bredは変化付けされている。
【0035】
図12には、クローズ型の3つの糸層を示した。これらの糸層のうち、最下位のクローズ型の糸層の上に巻き上げられた糸層は、それぞれ比較的小さな幅Bredを有している。図12に示した最上位の糸層の上に巻き上げられる糸層は、ふたたびパッケージ幅Bを有することができる。3つの糸層の、ストローク縮小によって形成される段部を確認できるようにするために、この後続の糸層は図示していない。
【0036】
次に、糸層をクローズにする際の菱形部分の構造化を、図13〜図18につき詳しく説明する。図13には、たとえば図7から判るように、多数の菱形部分のうち1つの菱形部分49を示した。ここではそれぞれ糸6,23の、菱形部分49を形成する糸区分50だけを示した。菱形部分49を形成したあとで、図14に示したように糸区分51が巻き付けられる。糸区分51は隣接する糸区分50に対して巻付間隔vを有していて、かつ糸区分50に対して平行に延びている。次いで別の糸区分51aが、それぞれ前もって巻き重ねられた糸区分51,51aに対して平行かつ巻付間隔vで巻き付けられる。糸6,23は、図13〜18の糸区分において線で示されており、線から糸6,23の中央線の位置が看取できる。線の太さは、寸法的に正確な糸6,23の直径を示したものではない。巻付間隔vは、糸6,23の直径を考慮して選択されており、「オープン」型のプレシジョンワインディングが行われて、それぞれ平行に延びる糸区分50の各間隔が巻付間隔vによって整数で割り切れるようになっている。糸区分50,51以外に別の糸区分51aが次のように巻き重ねられるようになる場合、つまり後続の糸区分51aが糸区分50の上に、または糸区分50を越えて巻き重ねられるようになる場合、菱形部分49はクローズになっている。オープン型のプレシジョンワインディングでクローズ型の糸層が提供される。そこで菱形開始部分に向かう戻しストロークが行われ、巻付過程は、新たな菱形部分を形成しつつ前述のものと同様の形式で継続される。新たなクローズ型の糸層が提供されるまで、新たな菱形部分は閉塞される。新たなクローズ型の糸層は、前もって形成された糸層の上位に巻き重ねられる。戻しストロークに際して、それぞれ綾振り運動の巻付幅の変更が行われる。糸層がオープン型のプレシジョンワインディングで形成される本発明の綾巻きパッケージは、後続の染色プロセスに適したものである。プレシジョンワインディングの基本構造は維持される。
【0037】
糸層形成の選択的な実施例は、図15および図16に示した。この実施例の糸層を形成し始めるに際して、菱形部分49に関して説明したように、先ず糸区分50菱形部分が形成される。図15に示した、糸区分50と隣接する糸区分52aとの間の間隔、ならびに巻き重ねられる後続の各糸区分52aの間の巻付間隔vは、糸6,23の直径を考慮して、「オープン」型のプレシジョンワインディングが行われるように選択されている。最後に巻き重ねられる糸区分52が、隣接する糸区分50から極めて小さな間隔で離間している場合、つまり次の糸区分52aが糸区分50の上に、または糸区分50を越えて巻き重ねられるようになる間隔vで離間している場合、戻しストロークが行われる。戻しストロークに次いで、糸区分52bは、再びそれぞれ巻付間隔vで互いに巻き重ねられる。後続の糸区分52が糸区分50から極めて小さな間隔で離間している場合、つまり次の糸区分52bが糸区分50の上に、または糸区分50を越えて巻き重ねられるようになる間隔で離間している場合、同様に戻しストロークが行われる。戻しストロークに次いでここでは図面を簡単にするために図示していない糸区分が巻き重ねられ、それも最後に巻き重ねられる糸区分が糸区分50から間隔vだけ離間するようになるまで行われる。これによって菱形部分49は再びクローズにされており、戻しストロークで綾振り運動の巻付幅の変更が行われる。オープン型のプレシジョンワインディングの糸層が提供され、次いでこの糸層に次の糸層を巻き重ねることができる。
【0038】
図17および図18には、オープン型のプレシジョンワインディングの糸層のさらに別の選択的な実施例を示した。この実施例の糸層を形成し始めるに際して、先ず菱形部分49で既に説明したように、糸区分50から成る菱形部分が形成される。図17に示した、糸区分50と隣接する糸区分53aとの間の巻付間隔v、ならびに巻き重ねられる後続の糸区分53aの間の巻付間隔vは、糸6,23の直径を鑑みて、「オープン型」のプレシジョンワインディングが行われるように選択されている。糸区分53が糸区分50から極めて小さな間隔で離間している、つまり次の糸区分53aが糸区分50の上に、または糸区分50を越えて巻き重ねられるようになる間隔vで離間している場合、戻しストロークが行われる。戻しストロークに次いで、糸区分53bがそれぞれ糸区分53aの中央に巻き重ねられる。最後に巻き重ねられる糸区分53が糸区分50から僅かな間隔で離間している、つまり次の糸区分53bが糸区分50の上に、または糸区分50を越えて巻き重ねられるようになる場合、戻しストロークが行われる。これによって菱形部分49は再びクローズにされ、戻しストロークに際して綾振り運動の巻付幅の変更が行われる。完成した糸層の上に、次いで次の糸層を巻き重ねることができる。
【0039】
本発明による綾振りストロークの変化によって、本発明による綾巻きパッケージのストローク幅にわたる良好な密度分布が得られる。プレシジョンワインディングの場合でも「ハード」に膨らんだ縁を回避することができる。綾巻きパッケージの巻取密度、均質性および繰り出し特性を改善することができる。
【0040】
本発明は、図示の実施例に制限されるものではない。特に幅Bredに関して綾振りストロークの選択を可変にすることができる。別の構成をした綾振り装置も考えられる。菱形部分の閉塞形式、および戻しストロークの選択(この場合綾振り運動の巻付幅が可変である)について、図示して説明した実施例とは異なるものも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の綾巻きパッケージ製作法を実施するための1巻返部位を概略的に示す側部図である。
【図2】巻返部位の選択的な実施例を概略的に示す平面図である。
【図3】オープン型のプレシジョンワインディングを示す原理図である。
【図4】クローズ型のプレシジョンワインディングを示す原理図である。
【図5】公知の形式の縁変位を有するオープン型のプレシジョンワインディングを示す原理図である。
【図6】公知の形式の縁変位を有するクローズ型のプレシジョンワインディングを示す原理図である。
【図7】クローズ型の糸層の段階的な構造を示す図である。
【図8】クローズ型の糸層の段階的な構造を示す図である。
【図9】クローズ型の糸層の段階的な構造を示す図である。
【図10】クローズ型の糸層の段階的な構造を示す図である。
【図11】綾巻きパッケージの縁領域の一部を概略的に示す断面図である。
【図12】本発明による巻付幅を有するクローズ型の糸層を示す図である。
【図13】閉塞される菱形部分の構造を示す図である。
【図14】閉塞される菱形部分の構造を示す図である。
【図15】閉塞される菱形部分の構造を示す図である。
【図16】閉塞される菱形部分の構造を示す図である。
【図17】閉塞される菱形部分の構造を示す図である。
【図18】閉塞される菱形部分の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 巻取装置、 2 綾巻きパッケージ、 3 摩擦ローラ、 4 矢印、 5ボビンフレーム、 6 糸、 7 矢印、 8 糸ガイド、 9 綾振り装置、 10 軸、 11 モータ、 12 作用結合部材、 13 モータ、 14 マイクロプロセッサ、 15 センサ、 16 センサ、 17 測定ヘッド、 18 巻取装置、 19 ボビンフレーム、 20 綾巻きパッケージ、 21 押圧ローラ、 22 駆動装置、 23 糸、 24 綾振り装置、 25 糸ガイド、 26 ガイド条片、 27 マイクロプロセッサ、 28,29 線路、 30,31 側面、 32,33,34,35,38,43,46,47,48 糸層、 39,40 側面、 41,42,44,45 変向点、 49 菱形部分、 50,51,51a,52,52a,52b,53,53a,53b 糸区分、 Bsp パッケージ幅、 Bred 幅、 v 巻付幅、 v 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
綾巻きパッケージであって、プレシジョンワインディングまたはステップ−プレシジョンワインディングで形成されており、巻取の際に形成される各菱形部分が、密に相並んで、または相互間隔を有して平行に巻き上げられた糸区分によって漸次閉塞されて、糸層が形成されるようになっている形式のものにおいて、
一部の糸層(38,43,46,47)の幅が、別の一部の糸層の幅と異なっていることを特徴とする、綾巻きパッケージ。
【請求項2】
直接的に上下に位置する各糸層の幅が、それぞれ異なっている、請求項1記載の綾巻きパッケージ。
【請求項3】
縮小された幅Bredを有する糸層(43,47)と、パッケージ幅Bspを有する糸層(38,46)とが、交互に配置されている、請求項1または2記載の綾巻きパッケージ。
【請求項4】
請求項1記載の綾巻きパッケージの製作法であって、綾巻きパッケージに巻き取る糸を、糸ガイドを用いて綾振り運動させ、綾振り運動を、綾巻きパッケージの駆動とは独立して制御し、あや角および巻付幅を特定し、巻取に際して形成される菱形部分を、密に相並んで、または相互間隔を有して平行に巻き上げた糸区分によって漸次閉塞して、糸層を形成する方法において、
綾巻きパッケージ(2,20)の巻取に際して菱形開始部分から菱形終了部分に向かって漸次ずらして巻き付けた糸区分(51,51a,52,52a,52b,53,53a,53b)が、菱形終了部分に到達して、菱形開始部分に向かう戻しストロークを行う際に、巻付幅の変更を行うことを特徴とする、綾巻きパッケージ製作法。
【請求項5】
各戻しストロークの際の巻付幅の変更を、菱形開始部分に向かって行う、請求項4記載の方法。
【請求項6】
それぞれ幅の異なる糸層の少なくとも半分を、パッケージ幅Bspで巻き取る、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
縮小した巻付幅を変化付けする、請求項4から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
巻付幅の変更前に、菱形部分(49)を完全に閉塞する、請求項4から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
各菱形部分(49)の閉塞に際して、糸区分(51,51a)が戻しストローク前に各菱形部分(49)を完全にクローズにするように、これらの糸区分(51,51a)を漸次巻き付ける、請求項8記載の方法。
【請求項10】
糸区分(52,52a,53,53a)を菱形部分(49)の内側で相互間隔を有して巻き重ね、後続の戻しストロークのあとで新たな糸区分(52b,53b)を存在する隙間に巻き重ね、複数のストロークを介して初めて菱形部分(49)を完全に閉塞するようにする、請求項8記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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