説明

綾巻きパッケージを製作する繊維機械の作業位置の糸捕集ノズルにおける負圧を制御するための装置

【課題】綾巻きパッケージを製作する繊維機械の作業位置の糸捕集ノズルにおける負圧を制御するための装置であって、糸捕集ノズルが、繊維機械自体の負圧桁に接続されている形式のものを改良して、糸捕集ノズルの経済的で保守の不要な制御を実現するようなものを提供する。
【解決手段】糸捕集ノズル23が、空気分岐体27を介して、繊維機械1の負圧桁32に接続されており、空気分岐体が、糸捕集ノズルのための接続管片35と、閉鎖可能な放圧管片36とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、綾巻きパッケージを製作する繊維機械の作業位置の糸捕集ノズルにおける負圧を制御するための装置であって、糸捕集ノズルが、繊維機械自体の負圧桁に接続されている形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
綾巻きパッケージを製作する繊維機械、たとえば自動綾巻きパッケージ製作機械の作業位置は、様々な糸処理・糸取扱装置を備えている。このような装置によって、一般的に比較的小容量の紡績コップとして提供される複数のボビンは、比較的多くのヤーン材料を有する綾巻きパッケージに巻き返すことができる。糸は、巻返過程の間、同時に場合によっては生じる糸エラーに関して監視され、糸エラーは場合によっては切断除去され、ほとんど同じヤーンの糸撚り繋ぎによって補償される。このために繊維機械の個々の作業位置は、たとえば巻取装置と、巻取パッケージを回動可能に保持するためのボビンフレームと、パッケージ駆動ドラムと、糸綾振り装置とを備えている。さらにそのような作業位置は、通常、下糸センサと、糸緊張装置と、糸切断装置を有する糸クリアラと、糸張力センサと、糸捕集ノズルと、パラフィン処理装置とを備えている。
【0003】
破損した糸または制御された糸クリアラによる切断によって分断された糸を繋ぐために、作業位置は、追加的に糸繋ぎ装置、吸込管ならびにグリッパ管を備えている。この場合吸込管およびグリッパ管は、機械自体の負圧桁に接続されていて、かつ必要な場合、公知のように、綾巻きパッケージもしくはボビンによって受け取られた糸端部を糸繋ぎ装置に向かって搬送する。
【0004】
パラフィン処理装置の領域に、追加的に、負圧桁に接続され、かつ走行する糸に向けられた糸捕集ノズルが配置されている。このような糸捕集ノズルは、巻取プロセスの間常に糸から塵埃粒子および汚染粒子を吸い込むことによって、綾巻きパッケージの品質を改善する。さらに糸捕集ノズルは、糸破断の場合に直ちに糸端部を吸い込んで、いわゆる鼓状巻き(Trommelwickel)の形成を防止する役割を担っている。
【0005】
糸破断または糸切断に続く糸撚り繋ぎ過程の間、もちろん糸捕集ノズルは負圧で負荷しないよう所望される。なぜならばそうでないと、吸込管もしくはグリッパ管によって糸繋ぎ装置の領域に引き戻された、依然として僅かに緊張された糸が誤って糸捕集ノズルに吸い込まれる、というリスクが生じるからである。
【0006】
これに関して既に公知で、たとえばドイツ連邦共和国特許第19528462号明細書に記載されているように、糸捕集ノズルの開口領域に、旋回可能に支承されたフラップが配置されており、フラップは巻取過程の間、糸捕集ノズルの開口の手前に移動される。この公知の装置の欠点によれば、フラップを作動させるために比較的手間の掛かる作動機構が必要である。
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許第19528462号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の課題は、冒頭で述べたような形式の、綾巻きパッケージを製作する繊維機械の作業位置の糸捕集ノズルにおける負圧を制御するための装置を改良して、糸捕集ノズルの経済的で保守の不要な制御を実現するようなものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するための本発明の装置によれば、糸捕集ノズルが、空気分岐体を介して、繊維機械の負圧桁に接続されており、空気分岐体が、糸捕集ノズルのための接続管片と、閉鎖可能な放圧管片とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の装置によれば、簡単で複雑でない構造を有していて、極めて確実に作動するだけでなく、ほとんど保守の必要がない。糸捕集ノズルは、空気分岐体を介して、繊維機械自体の、負圧で負荷された負圧桁に接続されており、空気分岐体は、糸捕集ノズルのための接続管片と、閉鎖可能な放圧管片とを備えている。本発明による空気分岐体によって、一方では、巻き取り過程の間、糸捕集ノズルの開口に常に負圧が生じて、ひいては糸捕集ノズルが常に作動中であるよう保証され、また他方では巻取位置の吸込管が巻取中断時に上糸を受け取るために綾巻きパッケージの領域に旋回され、糸捕集ノズルが放圧管片の解放によって自動的に非作動状態にもたらされるよう保証される。
【0010】
請求項2に記載したように、空気分岐体の放圧管片は、糸捕集ノズルのための接続管片の内法横断面よりも著しく大きな内法横断面を有している。そのような構成の結果として、通常の巻取過程の間、接続管片ひいては糸捕集ノズルの開口に、絶えず比較的大きな負圧が作用しており、このことは走行する糸の除塵にポジティブに作用する。放圧管片が解放されると、直ちに接続管片における負圧は急速に解消されるか、もしくは接続管片における負圧はほぼ完全に消滅する。これによって糸捕集ノズルは事実上非作動状態になる。
【0011】
請求項3および請求項4に記載したように、放圧管片は、通常の巻取過程の間、作業位置の、旋回可能に支承された吸込管によって閉鎖されるようになっている。このために放圧管片の開口は、吸込管の形状に適合されており、吸込管が待機位置で放圧管片をほぼ気密に閉鎖するようになっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1には、綾巻パッケージを製作する繊維機械、たとえばいわゆる自動綾巻パッケージ製作機械1を示した。図示の自動綾巻きパッケージ製作機械1は、エンドフレーム(図示していない)の間に同形の多数の作業位置2を備えている。作業位置2で、公知であって、したがって詳しい説明は省略するが、リング精紡機(図示していない)で生産された、比較的少ないヤーン材料を有する紡績コップ9が大容量の綾巻パッケージ11に巻き返される。完成した綾巻きパッケージ11は、次いで自動式のサービスユニット、たとえば綾巻きパッケージ交換機によって、機械長さの綾巻きパッケージ搬送装置21に引き渡されて、機械端部側に配置されたパッケージ貯蔵ステーションなどに搬送される。
【0013】
一般的にそのような綾巻きパッケージ1は、さらにパッケージ・ボビン搬送システム3の構成をしたロジスティックユニットを備えている。パッケージ・ボビン搬送システム3内で、搬送皿8上を紡績コップもしくは空管34が循環走行する。図1および図2に、ボビン搬送システム3のうち、コップ供給区間4、可逆駆動式の貯蔵区間5、巻取位置2に通じる横搬送区間6ならびにボビン戻し区間7を示した。図示したように、この場合搬送された紡績コッ9は、先ず巻取位置2における横搬送区間6の領域に存在する繰出位置10に位置決めされて、巻き返される。このために個々の作業位置2は、公知であり、したがって単に示唆にとどめるが様々な糸処理・糸取扱装置を備えており、糸処理・糸取扱装置によって、紡績コップ9を大容量の綾巻きパッケージ11に巻き返すことが保証されるだけでなく、糸30を巻き返し過程の間監視して、検出した糸エラーを取り除くことが保証される。
【0014】
公知の糸処理・糸取扱装置の1つは巻取装置であって、これには全体符号24を設けた。巻取装置24は、旋回軸19を中心に可動に支承されたパッケージフレーム18、パッケージ駆動装置26ならびに糸綾振り装置28を備えている。
【0015】
図1に示した実施例では、巻取プロセスの間、綾巻きパッケージ11はたとえば表面で、駆動ドラム26に接触して、駆動ドラム26によって摩擦接続によって連行される。この場合駆動ドラム26の駆動は、公知のように、回転数調整可能で可逆式の駆動装置(図示していない)を介して行われる。綾巻きパッケージ11に乗り上げる際の糸30の綾振りは、糸綾振り装置28によって行われ、糸綾振り装置28は、本実施例では糸ガイドフィンガ29を備えている。そのような糸綾振り装置は公知であり、たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第19858548号明細書に詳しく記載されている。
【0016】
選択的な実施例では、糸綾振り装置28はもちろん糸ガイドドラムとして形成することもできる。公知のように、そのような糸ガイドドラムは、糸30を綾巻きパッケージ11の端面の間で綾振りし、同時に綾巻きパッケージ11を表面に沿って摩擦接続式に駆動する。
【0017】
既に冒頭で述べたように、そのような作業位置2は、追加的に糸繋ぎ装置13、有利にはニューマチック式に作動する撚り繋ぎ装置と、負圧で負荷可能な吸込管12と、同様に負圧で負荷可能なグリッパ管25とを備えている。この場合吸込管12およびグリッパ管25は、機械独自の負圧桁32に接続されており、負圧桁32自体は負圧源33と接続されている。
【0018】
さらに作業位置2は、一般的な形式で下糸センサ22と、糸緊張装置14と、糸切断装置17を有する糸クリアラ15と、糸張力センサ20と、パラフィン処理装置16とを備えている。さらにパラフィン処理装置16の領域に糸捕集ノズル23が位置決めされており、糸捕集ノズル23は空気分岐体27を介して同様に負圧桁32に接続されている。空気分岐体27は、糸捕集ノズル23のための接続管片35ならびに放圧管片36を備えており、放圧管片36は、通常の巻取運転中、吸込管12によって閉鎖されている。
【0019】
図3〜図5から判るように、空気分岐体27は、側方の2つのフランジ37を備えており、フランジ37を介して、空気分岐体27は、ねじ38などによって負圧桁32に固定可能であり、この場合負圧桁32における接続開口39をカバーする。さらに空気分岐体27は、たとえばチューブを介して糸捕集ノズル23と接続されている接続管片35と、吸込管12によって閉鎖可能な放圧管片36とを備えている。図4に示したように、放圧管片36の内法横断面Aは、接続管片35の内法横断面Aよりも相当程度大きくなっている。
【0020】
以下に、本発明による装置の機能形式について説明する。
【0021】
図1に示したように、巻取過程の間、搬送皿8上に配置された紡績コップ9は、1横搬送区間6領域の繰出位置10に位置決めされる。紡績コップ9から繰り出される糸30は、綾巻きパッケージ11に向かう経路上で、とりわけ下糸センサ22と、糸緊張装置14と、糸切断装置17を有する糸クリアラ15と、パラフィン処理装置16とを通過する。
【0022】
糸綾振り装置28によって交錯した姿勢で綾巻きパッケージ11に乗り上げる糸30の糸張力は、糸張力センサ20によって監視される。さらにパラフィン処理装置16の領域で糸走行経路に対して僅かな間隔で配置された、負圧で負荷される糸捕集ノズル23は、常時走行する糸30を吸い込んで、この際に汚染粒子および塵埃粒子を取り除く。
【0023】
たとえば糸破断または制御された糸クリアラによる切断の結果として、1作業位置2に巻取中断が生じると、綾巻きパッケージ11と結合されたいわゆる上糸は、先ず綾巻きパッケージに巻き取られ、綾巻きパッケージは適当な巻取ブレーキによって停止状態に制動される。紡績コップ9と結合されたいわゆる下糸は、原則として糸緊張装置14および/または糸捕集ノズル23に固定されたままであり、次いで負圧で負荷されたグリッパ管25によって受け取られ、糸繋ぎ装置13に向かって搬送される。ほぼ同時に吸込管12は上糸を綾巻きパッケージ11から受け取り、公知のように、上糸を糸繋ぎ装置13の繋ぎ通路に挿入する。つまり巻取中断時に、吸込管12は図1に示した、空気分岐体27の放圧管片36を気密に閉鎖する静止位置から、綾巻パッケージ11に向かって上方旋回して、これによって放圧管片36を解放する。このような放圧管片36の解放によって、空気分岐体27の内側において直ちに圧力特性および流れ特性が著しく変化する。
【0024】
つまりこの時点まで接続管片35ひいては糸捕集ノズル23の開口に存在した負圧は、ほぼ完全になくなる。これによって糸捕集ノズル23は、事実上非作動状態となる。
【0025】
吸込管12もしくはグリッパ管25によって把持され、依然として僅かに緊張された上糸もしくは下糸は、この時点で問題なく処理することができ、しかも糸が糸捕集ノズル23に吸い込まれるリスクは存在しない。
【0026】
糸が巻取装置に確実に固定されると、直ちに吸込管12は静止位置に戻し旋回され、この場合再び放圧管片36を閉鎖する。つまり負圧桁32に生じる負圧は、接続管片35を介して再び完全に糸捕集ノズル23に作用し、走行する糸30を所望の形式で除塵する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】巻取運転中の、空気分岐体を介して負圧桁に接続された糸捕集ノズルを備えた、綾巻きパッケージを製作する繊維機械の1作業位置を示す側面図である。
【図2】図1に示した作業位置の、特に糸捕集ノズル部分を、巻取中断状態で示す側面図である。
【図3】本発明による空気分岐体を示す拡大側面図である。
【図4】図3の空気分岐体を示す正面図である。
【図5】図3の空気分岐体を示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 自動綾巻きパッケージ製作機械、 2 作業位置、 3 パッケージ・ボビン搬送システム、 4 コップ供給区間、 5 貯蔵区間、 6 横搬送区間、 7 ボビン戻し区間、 8 搬送皿、 9 紡績コップ、 10 繰出位置、 11 綾巻きパッケージ、 12 吸込管、 13 糸繋ぎ装置、 14 糸緊張装置、 15 糸クリアラ、 16 パラフィン処理装置、 17 糸切断装置、 18 パッケージフレーム、 19 旋回軸、 20 糸張力センサ、 21 綾巻きパッケージ搬送装置、 23 糸捕集ノズル、 24 巻取装置、 25 グリッパ管、 26 巻取駆動装置、 27 空気分岐体、 28 糸綾振り装置、 29 糸ガイドフィンガ、 30 糸、 32 負圧桁、 33 負圧源、 34 空管、 35 接続管片、 36 放圧管片、 37 フランジ、 38 ねじ、 39 接続開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
綾巻きパッケージを製作する繊維機械の作業位置の糸捕集ノズルにおける負圧を制御するための装置であって、
糸捕集ノズル(23)が、繊維機械自体の負圧桁に接続されている形式のものにおいて、
糸捕集ノズル(23)が、空気分岐体(27)を介して、繊維機械(1)の負圧桁(32)に接続されており、空気分岐体(27)が、糸捕集ノズル(23)のための接続管片(35)と、閉鎖可能な放圧管片(36)とを備えていることを特徴とする、綾巻きパッケージを製作する繊維機械の作業位置の糸捕集ノズルにおける負圧を制御するための装置。
【請求項2】
放圧管片(36)が、接続管片(35)の内法横断面(A)よりも著しく大きな内法横断面(A)を有している、請求項1記載の装置。
【請求項3】
旋回可能に支承された吸込管(12)が設けられており、該吸込管(12)が、放圧管片(36)を、通常の巻取運転中は閉鎖するようになっている、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
放圧管片(36)が、吸込管(12)の形状に適合した空気流入開口(40)を備えており、該空気流入開口(40)が、待機位置に位置決めされた吸込管(12)によってほぼ気密に閉鎖可能になっている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−193333(P2006−193333A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2779(P2006−2779)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(503420235)ザウラー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (51)
【氏名又は名称原語表記】Saurer GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Landgrafen Str. 45, D−41069 Moenchengladbach, Germany
【Fターム(参考)】