説明

綾巻きパッケージを製造する繊維機械の巻取り装置のための糸綾振り装置

本発明は、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の巻取り装置のための糸綾振り装置に関する。糸綾振り装置は糸ガイドを有していて、この糸ガイドは作業部の領域で糸ガイドロッドに案内されていて、エンドレス引張手段を介して個別駆動装置に接続されている。本発明により、糸綾振り装置(11)は十分に閉じられたハウジング(23)を有しており、このハウジング(23)の内室(37)は、糸ガイド(25)の綾振り範囲(B)でエンドレス引張手段(30)によってシールされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の形式の、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の巻取り装置のための糸綾振り装置、つまり糸ガイドが設けられており、該糸ガイドが、作業部の領域で糸ガイドロッドに案内されていて、エンドレス引張手段を介して個別駆動装置に接続されている形式のものに関する。
【0002】
繊維パッケージを製造するためには、周知のように、一方では当該の繊維パッケージを回転させ、他方ではパッケージに巻き取られる糸をパッケージ軸に沿って綾振りすることが必要となる。この場合、比較的に迅速な糸の綾振りによって、いわゆる綾巻き層を製造することができる。このような綾巻き層を有する繊維パッケージは、比較的安定したパッケージボディによりすぐれているだけではなく、良好な繰り出し特性の点でもすぐれている。
【0003】
このような綾巻きパッケージの製造に関して、実際には既に様々なシステムで使用されており、これらのシステムについては数多くの特許出願明細書に詳細に説明されている。
【0004】
たとえば、比較的に高い巻取り速度で作動する巻取り機においては、糸綾振り装置としていわゆる「糸案内ドラム」を使用することが広く普及している。このような糸案内ドラムは糸を綾振りするための溝を有していて、それと同時に繊維パッケージを摩擦接続的に駆動する。
【0005】
しかし、このようなそれ自体有利であると判っている糸案内ドラムは、製造の点で比較的高価であり、しかもそのシステムに制約されて「綾角一定巻き(wilde Wicklung)」の巻きパターンでの綾巻きパッケージの製造しか可能にしない。
【0006】
さらに、繊維機械構造においては、綾巻きパッケージの巻成時にいわゆる「反転溝付駆動装置」を使用することが久しく以前より知られている。
【0007】
たとえばドイツ連邦共和国特許第3801980号明細書に記載の、綾巻きパッケージを製造する、糸綾振り装置を備えた繊維機械では、糸ガイドが反転溝付ドラムによって駆動される。このような反転溝付ドラムはたいていオイルまたはグリースで潤滑されているので、反転溝付ドラムはそれぞれ反転溝付ハウジングによって囲まれている。この反転溝付ハウジングはスリットを有していて、このスリットを通じて糸ガイドの連行体もしくは滑子が反転溝付ドラムの溝内に突入している。反転溝付ハウジングの糸ガイドスリットは、糸ガイドに結合された、「シールリップ」とも呼ばれるカバーを用いてシールされている。このシール部材によって、オイルまたはグリースがスリットから漏れ出るか、もしくは繊維ダストがスリット内に侵入することが阻止される。
【0008】
しかし、この反転溝付ドラム駆動装置の大きな欠点は、反転溝付ドラムも製造に比較的コストがかかり、しかもかなりの保守手間を必要とすることにある。
【0009】
したがって、相応に装備された繊維機械の製造コストを下げるために、繊維機械の、相並んで配置された複数の作業部の糸ガイドを1つの反転溝付ドラムによって同時に駆動することが既に提案されている。ドイツ連邦共和国特許出願公開第19536761号明細書に記載の装置では、反転溝付ドラムによって駆動されている1つの糸ガイドが、相応に長いシールリップを介して、隣接している作業部の複数の糸ガイドに結合されていて、これらの糸ガイドを一緒に駆動するようになっている。
【0010】
このような装置にも、反転溝付駆動装置の根本的な欠点がある。すなわち、このような形式の駆動装置は作動中に比較的やかましく、このような装置によって達成可能な綾振り速度は比較的低い。
【0011】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第3734478号明細書に記載の、1つの糸ガイドを有する糸綾振り装置では、糸ガイドが作業部の領域において糸ガイドロッドに案内されていて、エンドレス引張手段を介して個別駆動装置によって駆動される。この場合、個別駆動装置はマイクロプロセッサ制御されたステップモータとして形成されている。
【0012】
しかし、それ自体有利である上記糸綾振り装置における欠点は、この糸綾振り装置が、特に巻取り部において不可避となる繊維ダストもしくは風綿に対して敏感であることである。つまり、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3737478号明細書に記載の糸綾振り装置は、長い期間にわたって整然とした状態で運転できるようにするためには、多大なクリーニング手間を絶えず必要とするわけである。
【0013】
上で述べた公知先行技術から出発して、本発明の根底を成す課題は、特に、糸綾振り装置の整然とした運転のために必要となるクリーニング手間を最小に抑えることができるような、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の巻取り装置のための糸綾振り装置を提供することである。
【0014】
この課題は本発明によれば、請求項1の特徴部に記載の特徴を有する糸綾振り装置、つまり当該糸綾振り装置が、十分に閉じられたハウジングを有しており、該ハウジングの内室が、糸ガイドの綾振り範囲でエンドレス引張手段によってシールされていることを特徴とする糸綾振り装置により解決される。
【0015】
本発明の有利な実施態様は請求項2以下に記載されている。
【0016】
本発明の構成には特に次のような利点がある。つまり、このような構成によって、糸綾振りユニットの内室内に配置された汚れに敏感な構成部分が繊維ダストに対して防護され、ひいては長い運転時間の後でも汚染を免れたままとなることを容易に保証することができる。さらに、内室のシールは糸ガイドのためのエンドレス引張手段によって直接に行われるので、付加的な構成部分は必要とならない。このことは装置の廉価な構造を可能にする。
【0017】
請求項2に記載されているように、本発明の有利な構成では、エンドレス引張手段が複数の変向車によって案内されており、これらの変向車は綾振り範囲に側方で並んで糸綾振りユニットのハウジングの前方の壁区分に対して小さな間隔を置いて位置決めされており、この場合、エンドレス引張手段の外面が、両変向車の間の領域でハウジングの壁区分に沿ってスライドし、これによってシール部を形成するようなる。こうして、ハウジングが糸ガイドの糸綾振り範囲においても常に確実にシールされていて、ひいては糸綾振りユニットの内室がダスト粒子または風綿の侵入に対して防護されていることが確保されている。
【0018】
請求項3に記載されているように、本発明の別の有利な構成では、有利には耐摩耗性のオキサイドセラミックから製造されている(請求項6)糸ガイドが、特別なガイドシューに配置されており、このガイドシュー自体はガイドロッドにスライド式に案内されていて、エンドレス引張手段に位置固定されている。ガイドロッドは完全に、エンドレス引張手段と壁区分とによって形成されたシール部の背後に位置しているので、このガイド部が汚染粒子によって直ちに汚染される危険が生じることなしに、ガイドロッドに十分にグリースを塗布することが可能となる。
【0019】
請求項4に記載されているように、個別電動モータ式の駆動装置は有利にはステップモータとして形成されていて、制御線路を介して、たとえば中央の制御コンピュータに接続されている。このことは、相応する作業ステップの設定によって、個別電動モータ式の駆動装置を純粋にソフトウェアによって、ひいては比較的に容易に制御することができ、たとえば糸ガイドの綾振り幅または綾振り速度を規定し、かつ必要に応じていつでも問題なく変更することができることを意味する。
【0020】
請求項5に記載の有利な構成では、エンドレス引張手段は歯付ベルトとして形成されている。このような歯付ベルトは形状接続的に、つまり嵌合に基づく係合によって駆動されるので、このような構成を用いると、ステップモータの規定された各制御が、綾振り範囲に関しても綾振り幅に関しても綾振り速度に関しても、正確に、つまりスリップなしに変換されることが保証されている。さらに、調節された綾振り範囲または規定された綾振り幅が、運転中に自動的にずれなくなることが保証される。
【0021】
請求項7に記載されているように、本発明による糸綾振り装置は、モジュール構造の構成部分の形の糸ガイドユニットとして形成されている。必要に応じてこの構成部分全体を簡単に交換することができる。つまり、巻取り装置の糸綾振り装置は、必要な場合にはいくつかの少数の固定用ねじを緩めた後に問題なく完全に取り付けかつ取り外すことができる。
【0022】
以下に、本発明を図示の実施例につき詳細に説明する。
【0023】
図1は、巻取り装置の領域に本発明による糸綾振り装置を有する、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業部の側面図であり、
図2は、本発明による糸綾振り装置を閉じられた状態で示す拡大斜視図であり、
図3は、糸綾振り装置の同様の斜視図であるが、ただし糸ガイドユニットの上側のカバーなしに部分的に断面した状態で図示されている。
【0024】
図1には、綾巻きパッケージを製造する繊維機械、つまり本実施例ではオープンエンド・ロータ精紡機の半部が図示されている。この繊維機械は符号1で示されている。このような自体公知のオープンエンド・ロータ精紡機は多数の作業部2を有しており、これらの作業部2にはそれぞれ紡糸ボックス3および巻取り装置4が装備されている。紡糸ボックス3内では、紡績ケンス5内に装入されたスライバ6が紡糸されて糸7を形成し、この糸7は続いて巻取り装置4で綾巻きパッケージ8に巻き上げられる。
【0025】
図示されている、巻取り装置4はこの目的のために、綾巻きパッケージ8を回転可能に保持するためのパッケージフレーム9と、綾巻きパッケージ8を駆動するための巻取りドラム10と、糸綾振り装置11とを有している。この場合、図示の実施例では、巻取りドラム10は電動モータ式の個別駆動装置21を介して駆動可能である。
【0026】
さらに、このようなオープンエンド精紡機1は一般に、完成した綾巻きパッケージ8を取り出すための綾巻きパッケージ搬送装置12を有している。さらに、オープンエンド精紡機1では、ガイドレール13,14ならびに支持レール15に沿って移動可能にサービスユニット16、たとえば綾巻きパッケージ交換器または糸継ぎキャリッジが配置されている。このサービスユニット16の走行装置17は、走行ローラ18もしくは支持車19を有している。サービスユニット16への電気的なエネルギの供給は、ドラグチェーンを介してまたは、図示されているようにスリップコンタクト装置20を介して行われる。このようなサービスユニット16は周知のようにオープンエンド精紡機1の作業部2に沿って移動可能であり、かつ作業部のうちの1つで動作要求が生じると自動的に干渉する。
【0027】
このような動作要求はたとえば、作業部2のいずれか1個所で糸切れが発生した場合、または作業部2のいずれか1個所で綾巻きパッケージが規定の直径に達して空管と交換されなければならない場合に生じる。
【0028】
図2および図3には、それぞれ繊維機械1の多数の作業部2の巻取り装置4の領域に配置されているような本発明による糸綾振り装置11が詳細に示されている。
【0029】
図2には、コンパクトな糸ガイドユニット22として形成された、閉じられた糸綾振り装置11の斜視図が示されている。つまり、糸ガイドユニット22のハウジング23の内室37はカバーエレメント24によって覆われていて、こうして繊維ダストおよび風綿の侵入に対して防護されている。
【0030】
図3には、同じ糸ガイドユニット22が、同様の斜視図で、ただしカバーエレメント24なしに、つまり内室37内に配置された歯付ベルト伝動装置ならびに糸ガイドのためのガイド部が見えるように図示されている。汎用的に耐磨耗性の材料、有利にはオキサイドセラミックから製造されている糸ガイド25は、図面から判るように、ガイドシュー26に固定されている。このガイドシュー26はガイドロッド27にスライド式に案内されている。この場合、ガイドロッド27は、糸ガイドユニット22の側壁28,29に位置固定されている。
【0031】
さらに、ガイドシュー26はエンドレス引張手段、有利には歯付ベルト30の外面40に固定されている。図示されているように、歯付ベルト30は図示の実施例では、少なくとも変向車31,32ならびに駆動車33を介して案内されている。この場合、駆動車33は可逆的な電動モータ式の駆動装置のモータシャフト、つまり有利にはステップモータ34のモータシャフトに相対回転不能に配置されている。このステップモータ34は、制御線路36を介して制御コンピュータ35、たとえば繊維機械の中央コンピュータに接続されており、この中央コンピュータを介して規定されて制御され得るようになっている。
【0032】
択一的な別の実施例において、制御コンピュータ35として当然ながらセクションコンピュータまたは個別の作業部コンピュータを使用することもできる。特に図3から判るように、糸ガイド25の綾振り範囲Bの側方に並んで配置された変向車31,32は、歯付ベルト30の外面40が常にハウジング23の壁区分38,39に接触するか、もしくは壁区分38,39に沿ってスライドするように位置決めされている。
【0033】
つまり、歯付ベルト30は、糸ガイド25の綾振り範囲Bにおいて、壁区分38,39と相まってシール部を形成しており、このシール部は運転中、いつでも糸ガイドユニット22の内室37内への繊維ダストおよび/または風綿の侵入を信頼性良く阻止する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】巻取り装置の領域に本発明による糸綾振り装置を有する、綾巻きパッケージを形成する繊維機械の作業部の側面図である。
【図2】本発明による糸綾振り装置を閉じられた状態で示す拡大斜視図である。
【図3】糸綾振り装置の同様の斜視図であるが、ただし糸ガイドユニットの上側のカバーなしに部分的に断面した状態で図示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
綾巻きパッケージを製造する繊維機械の巻取り装置のための糸綾振り装置であって、糸ガイドが設けられており、該糸ガイドが、作業部の領域で糸ガイドロッドに案内されていて、エンドレス引張手段を介して個別駆動装置に接続されている形式のものにおいて、当該糸綾振り装置(11)が、十分に閉じられたハウジング(23)を有しており、該ハウジング(23)の内室(37)が、糸ガイド(25)の綾振り範囲(B)でエンドレス引張手段(30)によってシールされていることを特徴とする、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の巻取り装置のための糸綾振り装置。
【請求項2】
エンドレス引張手段(30)が、綾振り範囲(B)の側方に並んで配置された変向車(31;32)と、電動モータ式の駆動装置(34)に結合された駆動車(33)とを介して案内されており、前記エンドレス引張手段(30)の外面(40)が、ハウジング(23)の壁区分(38,39)に沿ってスライドする、請求項1記載の糸綾振り装置。
【請求項3】
糸ガイド(25)が、ガイドシュー(26)に配置されており、該ガイドシュー(26)が、一方ではガイドエレメント(27)にスライド式に案内されていて、他方ではエンドレス引張手段(30)に固く接続されている、請求項1または2記載の糸綾振り装置。
【請求項4】
電動モータ式の駆動装置が、規定されて制御可能なステップモータ(34)として形成されており、該ステップモータ(34)が、制御線路(36)を介して制御コンピュータ(35)に接続されている、請求項2記載の糸綾振り装置。
【請求項5】
エンドレス引張手段が、歯付ベルト(30)として形成されている、請求項1記載の糸綾振り装置。
【請求項6】
糸ガイド(25)が、耐磨耗性の材料、有利にはオキサイドセラミックから製造されている、請求項1記載の糸綾振り装置。
【請求項7】
当該糸綾振り装置(11)が、糸ガイドユニット(22)の形のモジュール構造の構成部分として形成されており、該糸ガイドユニット(22)が必要に応じてユニット全体で交換可能である、請求項1記載の糸綾振り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−518645(P2007−518645A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549922(P2006−549922)
【出願日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014784
【国際公開番号】WO2005/070799
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(503420235)ザウラー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (51)
【氏名又は名称原語表記】Saurer GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Landgrafen Str. 45, D−41069 Moenchengladbach, Germany