説明

綿棒

【課題】合繊繊維を用いた製品を実用化するものであって、きわめて制電性、吸水性に優れた、清掃性能を有する綿棒を提供する。
【解決手段】繊維長60mm以下の複合繊維からなる綿球を軸体の少なくとも一端に有してなる綿棒であって、この複合繊維が、繊維形成性樹脂を鞘部とし、ポリエーテルブロックアミド共重合物を芯部としてなり、芯部と鞘部の面積比率が5/95〜95/5であり、芯部の表面への露出角度が5〜90°である偏心複合繊維である綿棒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制電性、吸水性に優れた綿棒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリアミド繊維やポリエステル繊維は、糸強度、耐摩耗性、耐酸性等に優れた特性
を有することから衣料用途、産業資材用途等に幅広く使用されており、近年、工業用綿棒
にも用いられるようになっている(特許文献1等参照)。
【0003】
【特許文献1】実開平5−28328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、特にポリアミド繊維は合成繊維の中では
吸水性の高い繊維であるが、天然繊維の方が吸水性に優れており、衣料分野に限らず、シ
リコンウェハー、IC回路基板と言った工業分野での微細部分の清掃や、水、アルコール
、アセトン、ヘキサンなど溶媒を吸収する用途には天然繊維の綿が使用されることが多い

本発明の目的は、合繊繊維を用いた製品を実用化するものであって、きわめて制電性、吸
水性に優れた、清掃性能を有する綿棒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的は、繊維長60mm以下の複合繊維からなる綿球を軸体の少なくとも一端に
有してなる綿棒であって、この複合繊維が、繊維形成性樹脂を鞘部とし、ポリエーテルブ
ロックアミド共重合物を芯部としてなり、芯部と鞘部の面積比率が5/95〜95/5で
あり、繊維横断面において、芯部の表面への露出角度が5〜90°である偏心複合繊維で
あることを特徴とする綿棒によって達成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、芯成分が一部表面に露出した偏心型の芯鞘型複合繊維において、芯及び鞘成
分の組み合わせ、及びその構成比率、並びに、芯部の表面への露出度を特定することによ
り、制電性、吸水性に優れた複合繊維を用いてなる実用性ある清掃用に適した綿棒の提供
を可能としたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る複合繊維は、繊維形成性樹脂を鞘部とし、ポリエーテルブロックアミド共重
合物を芯部とする偏心複合繊維である。
【0008】
本発明に係る複合繊維の芯部に使用するポリエーテルブロックアミド共重合物は、例えば
、(1)ジアミン末端を有するポリアミド単位とジカルボン酸基末端を有するポリオキシ
アルキレン単位、(2)ジカルボン酸基末端を有するポリアミド単位とポリエーテルジオ
ール、(3)ジカルボン酸基末端を有するポリアミド単位とジアミン末端を有するポリオ
キシアルキレン単位(α位とω位に2つの水酸基を有するポリオキシアルキレンのシアノ
エチル化および水素化によって得られる)のように、反応性末端基を有するポリアミド単
位と反応性末端基を有するポリエーテル単位との共重縮合で得られる共重合物である。本
発明においては、(2)であることが好ましく、下記一般式にて表される。
HO−(CO−PA−CO−O−PE−O)−H
(式中、PAはポリアミド単位(ハードセグメント)、PEはポリエーテル単位(ソフト
セグメント)、nは繰り返し単位を示す。)
また、ポリアミド単位としては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12等が、ポリ
エーテル単位としては、ポリエチレングリコール、ポリテトラエチレングリコール等が好
適に用いられる。
市販されているものとしては、ぺバックス(Pebax)(登録商標)(アルケマ社製)
等が挙げられ、中でも、ぺバックス(Pebax) MV1074、MH1657を用い
ると特に良好な制電性が得られる。
【0009】
次に、本発明に係る複合繊維の鞘部を構成する繊維形成性樹脂は、溶融紡糸可能な繊維形
成性樹脂であればよく、このような樹脂の具体例としては、ナイロン6やナイロン66等
のポリアミド、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリエチレ
ンナフタレート、全芳香族ポリエステル、ポリ乳酸等のポリエステル、ポリエチレンやポ
リプロピレン等のポリオレフィン等、又はこれらを主成分とする重合体、更にはポリフェ
ニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等の耐熱性熱可塑性重合体が挙げられ
、中でも、ポリアミド(特に、ナイロン6)、ポリエステル(特に、ポリエチレンテレフ
タレートやポリ乳酸)を使用するのが好ましい。
【0010】
上記複合繊維の繊維横断面形状について以下に述べる。
本発明に係る偏心複合繊維は、複数の樹脂が組合わされた繊維の横断面において繊維形成
性樹脂とポリエーテルブロックアミド共重合物との重心が異なっている繊維をいう。
【0011】
また、ポリエーテルブロックアミド共重合物からなる芯部分が複数あってもよく、その
場合繊維全体として偏心していればよい。
【0012】
本発明において、露出角度とは、繊維横断面の中央点を中心とし、その中心から表面の露
出部端までの直線を2本引き、この間の角度を測定した値であり、露出部が複数ある場合
には、全露出部の角度を足し合わせた値である。
ポリエーテルブロックアミド共重合物の表面への露出角度は5〜90°であることが必要
であり、5〜80°であることが好ましい。露出角度がこの範囲であれば、吸水性、吸湿
性に優れる。
【0013】
複合繊維の芯部と鞘部の面積比率(断面積の比率)は、95/5〜5/95であることが
必要である。また、紡糸の生産性や後加工性等の点から、90/10以下であるのが好ま
しい。更に、制電性、吸水性の点においては、芯部と鞘部の面積比率(断面積の比率)が
10/90以上であるのが好ましく、特に20/80以上であるのが好ましい。
【0014】
本発明に係る複合繊維の太さ(総繊度)は、好ましくは1〜150dtex、より好まし
くは10〜100dtexである。1dtex未満では、紡糸が難しく、綿棒を構成する
表層部の繊維の絡み合いが悪く、ワイピング性能が劣る傾向にある。逆に150dtex
を越えると、綿球を形成し難く、加熱処理しても表面に毛羽が立ってしまう傾向にある。
【0015】
本発明の複合繊維は、通常のコンジュゲート型複合紡糸装置を用いることにより、製造
することができる。通常の速度500〜1500m/分程度で紡糸し、ついで延伸熱処理
する方法、またスピンドロー法等の高速紡糸法により製造することが可能である。
【0016】
上記の複合繊維は、連続長繊維のフィラメント形状で集束し、機械的に所望の長さ60
以下に切断し、ステープル・ファイバーの形でカード工程へ供給する。
【0017】
本発明に係る複合繊維の繊維長は60mm以下とする。60mmを超えると、綿球を形成
させ、加熱せしめた成形機中で処理する時、表面に毛羽が立ち、綿球を構成する表層部の
繊維が絡み合いが悪く、ワイピング性が低下してしまう。
【0018】
カード工程は、通常使用される梳綿機を用いて行い、スライバーを得る。得られたスラ
イバーは、更に単数又は複数本併合状態で練条機へ供給され、所定のドラフト作用を受け
て所望重量のスライバーに仕上げられる。
【0019】
本発明においては、練条工程終了後のスライバーのU%が10.0%以下、ネップ数(
ケ/g)が8.0以下であることが好ましい。例えば、カード工程終了直後のスライバー
のU%を5.0%以下に、ネップ数(ケ/g)を8.0以下にすることにより、練条工程
終了後のスライバーのU%を10.0%以下に、ネップ数(ケ/g)を8.0以下にし得
る。
【0020】
前記スライバーを用いて綿棒を製造する方法は、例えば、次のような方法が挙げられる。
すなわち、通常の捲き付け装置を使用して1mmφの紙、プラスチック等からなる軸体の
一端又は両端に捲き付け綿球を形成させ、次いで110〜200℃に加熱せしめた成形機
中で2〜20秒間処理することにより、表面に毛羽がなく、綿球を構成する表層部の繊維
が絡み合ったワイピング性能の高い、制電性、吸水性に優れた綿棒を得ることができる。
このようにして得られる綿棒は、バインダー類を一切使用しないで綿棒の綿球形成時の毛
羽立ちをおさえ、使用時の繊維の脱落を防ぐことができる。すなわち、綿棒を構成してい
る合成繊維の特徴である熱可塑性を最大限に活用し、綿球形成後に、所望の温度、所望の
時間、加熱成形することにより極めてクリーンでワイピング性能の高い清掃用に適した綿
棒が得られる。
【実施例】
【0021】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は実施例のみに限定されるも
のではない。
【0022】
(実施例1)
芯成分として、ポリエーテルブロックアミド共重合物(アルケマ社製 ぺバックスMV1
074)、鞘成分としてポリアミド(ナイロン6、三菱化学社製)を用い、面積比率1:
2で溶融紡糸し、次いで、延伸処理することにより、78dtex/24f延伸糸(露出
角度55°)を得た。得られた延伸糸を機械的に切断して繊維長38mmのステープルと
なし、カード工程の原繊として用いた。
梳綿機としてはカバリーフィダー付きの綿用フラットカードを使用し、シリンダー180
r・p・m、ドッファー5r・p・m、トップとシリンダー間のゲージを12/1000
インチに設定し、4g/mのカードスライバーとして紡出した。
従来、紡績糸生産用の繊維は紡績各工程でのドラフト機構上38mm程度の繊維長が必要
とされる。本実施例においては、繊維長を38mmにすることにより、通常の紡績糸生産
工程にておいても、カードでの繊維絡みを回避し、更に、ドッファー回転の低速化とスラ
イバー単位重量を抑えることによりネップの発生を防止し、所望の高品位カードスライバ
ーを得た。
【0023】
上記過程により製造したカードスライバーを練条機へ3本同時に供給し、紡速50m/m
inで12倍のドラフトを施して1g/mの斑の少ない均整なスライバーを得た。同スラ
イバーはU%が8.0%、ネップ数が6.0(ケ/g)であり、通常使用される合成繊維
性スライバーと同程度の品質であった。
【0024】
次いで、上記スライバーを用い、捲き付け装置を使用して1mmφの紙からなる軸体の両
端部に捲き付け綿球体を形成させ、140℃に加熱せしめた成形機中で3秒間処理するこ
とにより、綿棒を製造した。
得られた綿棒は、従来の綿製品に比較して、格段に吸水性能、制電性能が向上し、IC回
路基盤や、液晶、プラズマ基板、シリコンウェハーの製造プロセスにおいて、溶剤として
水、アルコール、アセトン、ヘキサンなどの溶媒吸収及び静電性能を抑制する用途に極め
て優れていた。
【0025】
上記得られた実施例品と、比較例品として市販されている天然綿からなる綿棒とを、以下
の方法により、各評価を行った。
【0026】
<吸水性1>
綿棒100本を水温25℃、30分間に浸し、30分後の重量増加量を測定し、最初の重
量に対する重量増加量を%で示した。その結果を表1に示す。
実施例の綿棒の吸水量は比較例の綿棒の4.2倍であり、優れた吸水性を示した。
【0027】
【表1】

【0028】
<吸水性2>
綿棒100本を水温25℃、60秒間浸し、60秒後の重量増加量を測定し、最初の重量
に対する重量増加量を%で示した。その結果を表2に示す。
60秒後の実施例の綿棒の吸水量は比較例の綿棒の7倍であり、極めて優れた吸水性を示
した。
【0029】
【表2】

【0030】
<制電性(摩擦耐電圧)>
実施例及び比較例おいて、スライバーで不織布を作成し、JIS L−1094−199
7 摩擦帯減衰測定法にて測定した。
摩擦帯電圧測定:エレクトロ スタティックテスター
摩擦布:羊毛
摩擦方向:縦方向、横方向
温湿度:20℃×33%RH
【0031】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の綿棒は、シリコンウェハー、IC回路基板と言った工業分野での微細部分の清
掃に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維長60mm以下の複合繊維からなる綿球を軸体の少なくとも一端に有してなる綿棒で
あって、この複合繊維が、繊維形成性樹脂を鞘部とし、ポリエーテルブロックアミド共重
合物を芯部としてなり、芯部と鞘部の面積比率が5/95〜95/5であり、繊維横断面
において、芯部の表面への露出角度が5〜90°である偏心複合繊維であることを特徴と
する綿棒。

【公開番号】特開2010−84302(P2010−84302A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257163(P2008−257163)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(305037123)KBセーレン株式会社 (97)
【Fターム(参考)】