説明

緊急事態にプレゼンス情報を自動的に通知する無線ルータ、プログラム及び方法

【課題】災害等の緊急事態の発生時に、ユーザの所在状況を示すプレゼンス情報を速やかに通知することが可能なプレゼンス情報自動通知機能を備えた無線ルータを提供する。
【解決手段】無線を介して移動端末と通信すると共にアクセスネットワークを介してメールサーバと通信する無線ルータは、移動端末のアドレス毎に、連絡先となるメールアドレスを対応付けて記憶した連絡先記憶手段と、移動端末のアドレス毎に、当該移動端末からの受信信号強度の変動値と、該変動値を測定した測定日時とを連絡先記憶手段に記録する受信強度記録手段と、災害等の所定イベントが発生した時を含む所定時間範囲内で、受信信号強度の変動値が所定の変動閾値以上となっている移動端末のアドレスを連絡先記憶手段から抽出する端末移動判定手段と、抽出された移動端末のアドレスに対応付けられたメールアドレスを宛先としたメールをメールサーバへ送信するメール送信手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザのプレゼンス情報を通知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の状況下で、移動端末を所持した他のユーザの所在を、遠隔地から確認したい場合が生じる。特に、災害等の緊急事態の発生時には、家族・友人等の安否を確認するために、その家族等が所持する移動端末の位置情報を受信したい場合が生じる。
【0003】
固定基準局から電波が届かない状況で、周辺の移動端末を親ノードとして測位することによって、移動端末の位置を特定する技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、移動端末は、アドホックネットワーク方式によって通信が可能であり、測位精度を高めるべく、測位誤差の少ないノードを親ノードとして選択する。
【0004】
また、地上移動通信について、マルチビームアンテナの利用により、信号源又は干渉源の位置を特定する技術もある(例えば特許文献2参照)。
【0005】
さらに、携帯端末が緊急災害情報を受信した際、その携帯端末が、予め定められたサーバに対して、緊急災害情報の受信時の位置を自動的に送信する技術もある(例えば特許文献3参照)。この技術によれば、このサーバは、携帯端末毎にこの位置情報を保持し、他の端末から当該携帯端末の位置情報が問い合わされた際に、その位置情報を応答する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−306532号公報
【特許文献2】特開2009−236707号公報
【特許文献3】特開2010−102635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1乃至3に開示されたような従来技術は、移動端末自体の位置を特定するに留まっており、そのユーザの実際の位置までは特定が困難である。
【0008】
すなわち、上述したような従来技術によって、例えば移動端末の位置が社屋等の建物内であることが判明しても、そのユーザが、当該移動端末を携帯して建物内に居るのか、又は、当該移動端末を建物内に置いたまま外出したのかを判断することはできない。そのようなユーザの所在状況を示すプレゼンス情報を知るためには、移動端末の位置情報だけでは不十分である。
【0009】
さらに、災害等の緊急事態の発生時には、家族・友人等の安否を確認するための通信、又は自身の安否を報告するための通信が、その地域に集中し、通信ネットワークが輻輳しがちとなる。この状況下で、特許文献3に開示された従来技術のように、多数の携帯端末からサーバに向けて位置情報を送信すると、この輻輳を助長してしまう。その結果、ユーザの所在を確認すべくサーバに位置情報を照会しても、その応答を速やかに得るのが困難となる。
【0010】
そこで、本発明は、災害等の緊急事態の発生時に、ユーザの所在状況を示すプレゼンス情報を自動的に通知することができる無線ルータ、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、無線を介して移動端末と通信すると共に、アクセスネットワークを介してメールサーバと通信する無線ルータであって、
移動端末のアドレス毎に、連絡先となるメールアドレスを対応付けて記憶した連絡先記憶手段と、
移動端末のアドレス毎に、当該移動端末からの受信信号強度の変動値と、該変動値を測定した測定日時とを連絡先記憶手段に記録する受信強度記録手段と、
所定イベントが発生した時を含む所定時間範囲内で、受信信号強度の変動値が所定の変動閾値以上となっている移動端末のアドレスを、連絡先記憶手段から抽出する端末移動判定手段と、
端末移動判定手段によって抽出された移動端末のアドレスに対応付けられたメールアドレスを宛先としたメールをメールサーバへ送信するメール送信手段と
を有する無線ルータが提供される。
【0012】
この本発明による無線ルータの一実施形態によれば、所定イベントは、通信事業者設備からアクセスネットワークを介して送信された緊急速報メッセージの当該無線ルータによる受信であり、
メール送信手段は、所定イベントの発生時に当該移動端末のユーザが当該無線ルータの通信圏内に所在したことを意味するテキストを含むメールを送信することも好ましい。
【0013】
また、本発明による無線ルータにおける他の実施形態によれば、受信強度記録手段は、当該移動端末からの受信信号強度の変動値が所定の変動閾値以上である場合、該変動値と該変動値を測定した測定日時とをもって、連絡先記憶手段に記録された変動値と測定日時とを更新することも好ましい。
【0014】
さらに、本発明による無線ルータにおける他の実施形態によれば、受信強度記録手段は、移動端末のアドレス毎に、変動値及び測定日時と併せて当該移動端末からの受信信号強度を記録し、
端末移動判定手段は、所定イベントが発生した時を含む所定時間範囲内で、受信信号強度が所定の強度閾値未満となっている移動端末のアドレスを、抽出候補から除外することも好ましい。
【0015】
また、本発明による無線ルータにおける他の実施形態によれば、移動端末のアドレス毎に、ユーザの操作に基づくアプリケーションに対応したプロトコル依存の所定ポート番号を含むデータパケットが送信されたユーザ通信日時を、連絡先記憶手段に記録するユーザ通信記録手段と、
所定イベントが発生した時を含む所定時間範囲内で、所定ポート番号を含むデータパケットが送信されている移動端末のアドレスを、連絡先記憶手段から抽出する端末通信判定手段と
を更に有し、
メール送信手段は、端末通信判定手段によって抽出された移動端末のアドレスに対応付けられたメールアドレスを宛先としたメールをメールサーバへ送信することも好ましい。
【0016】
この端末通信判定手段を有する実施形態において、ユーザ通信記録手段は、当該移動端末から所定ポート番号を含むデータパケットが送信された場合、該データパケットが送信されたユーザ通信日時をもって、連絡先記憶手段に記録されたユーザ通信日時を更新することも好ましい。
【0017】
また、本発明による無線ルータにおける他の実施形態によれば、メール送信手段は、連絡先となるメールアドレスを宛先としたメールの送信が完了しない場合、所定時間経過後、当該メールを再送信することも好ましい。
【0018】
さらに、本発明による無線ルータにおける他の実施形態によれば、連絡先記憶手段は、移動端末のアドレス毎に、当該移動端末を操作するユーザのメールアドレスを更に記憶しており、
メール送信手段は、連絡先となるメールアドレスを宛先としたメールの送信が完了した後、当該ユーザのメールアドレスを宛先として、送信が完了したことを意味するテキストを含むメールをメールサーバへ更に送信することも好ましい。
【0019】
また、本発明による無線ルータにおける他の実施形態によれば、メール送信手段は、連絡先となるメールアドレスを宛先としたメールの送信が完了した後、移動端末のアドレスに向けて、送信が完了したことを意味する制御信号を送信することも好ましい。
【0020】
本発明によれば、さらに、無線を介して移動端末と通信すると共に、アクセスネットワークを介してメールサーバと通信する無線ルータに搭載されたプログラムであって、
移動端末のアドレス毎に、連絡先となるメールアドレスを対応付けて記憶した連絡先記憶手段と、
移動端末のアドレス毎に、当該移動端末からの受信信号強度の変動値と、該変動値を測定した測定日時とを連絡先記憶手段に記録する受信強度記録手段と、
所定イベントが発生した時を含む所定時間範囲内で、受信信号強度の変動値が所定の変動閾値以上となっている移動端末のアドレスを、連絡先記憶手段から抽出する端末移動判定手段と、
端末移動判定手段によって抽出された移動端末のアドレスに対応付けられたメールアドレスを宛先としたメールをメールサーバへ送信するメール送信手段と
してコンピュータを機能させるユーザインタフェース装置用のプログラムが提供される。
【0021】
本発明によれば、さらにまた、無線を介して移動端末と通信すると共に、アクセスネットワークを介してメールサーバと通信する無線ルータにおけるプレゼンス情報通知方法であって、該無線ルータが、
移動端末のアドレス毎に、連絡先となるメールアドレスを対応付けて記憶した連絡先記憶手段と、
移動端末のアドレス毎に、当該移動端末からの受信信号強度の変動値と、該変動値を測定した測定日時とを連絡先記憶手段に記録する受信強度記録手段と
を有し、
所定イベントが発生した時を含む所定時間範囲内で、受信信号強度の変動値が所定の変動閾値以上となっている移動端末のアドレスを、連絡先記憶手段から抽出する第1のステップと、
第1のステップによって抽出された移動端末のアドレスに対応付けられたメールアドレスを宛先としたメールをメールサーバへ送信する第2のステップと
を有するプレゼンス情報通知方法が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の無線ルータ、プログラム及び方法によれば、災害等の緊急事態の発生時に、ユーザの所在状況を示すプレゼンス情報を自動的に通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるモバイルルータを備えたプレゼンス情報自動通知システムのシステム構成図である。
【図2】本発明に係るプレゼンス情報自動通知システムにおける、ユーザのプレゼンス情報を取得する処理のシーケンス図である。
【図3】本発明に係る管理テーブル(連絡先記録部)の構成図である。
【図4】本発明に係るプレゼンス情報自動通知システムにおける、所定イベント発生時にプレゼンス情報を通知する処理のシーケンス図である。
【図5】管理テーブル(連絡先記録部)を用いたユーザ抽出処理のフローチャートである。
【図6】本発明によるモバイルルータの一実施形態における機能構成図である。
【図7】プレゼンス情報通知のための電子メールテキスト例、及びプレゼンス情報通知完了報告のための電子メールテキスト例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0025】
本発明による無線ルータは、一方で無線を介して移動端末と通信すると共に、他方でアクセスネットワークに接続し、無線アクセスポイントとして機能する。この無線ルータは、以下のように機能する。
(1)無線ルータは、所定イベントが発生した時を含む所定時間範囲内で、移動端末からの受信信号強度(RSSI(Received Signal Strength Indicator))の変動値が所定の変動閾値以上となっている移動端末を検索する。そして、その移動端末のユーザに対応した連絡先へ、当該ユーザのプレゼンス情報が自動的に通知される。
(2)また、無線ルータは、所定イベントが発生した時を含む所定時間範囲内で、ユーザの操作に基づくアプリケーションに対応したプロトコル依存の所定ポート番号を含むデータパケットが送信されている移動端末を検索する。そして、その移動端末のユーザに対応した連絡先へ、プレゼンス情報が自動的に通知される。
【0026】
ここで、本発明による無線ルータの多くは、例えば社屋等の建物内に位置し、この建物内に存在する複数の移動端末によって無線LAN(Local Area Network)を介して接続される。無線ルータ1は、アクセスネットワークに有線で接続されるホームルータであってもよいし、アクセスネットワークのアクセスポイントに無線で接続されるモバイルルータであってもよい。以下で説明する実施形態の中では、無線ルータは、携帯可能な小型の「モバイルルータ」であるとして説明する。
【0027】
図1は、本発明によるモバイルルータを備えたプレゼンス情報自動通知システムのシステム構成図である。
【0028】
図1のプレゼンス情報自動通知システムによれば、移動端末2は、無線LAN等の無線ネットワーク6を介して、モバイルルータ1に接続する。モバイルルータ1は、複数の無線端末2とアクセスポイント3との間に介在する。モバイルルータ1は、自身との接続が確立した移動端末2を把握・管理する一方、アクセスネットワーク7を介して、種々のサーバ、例えば外部のインターネット8内に設置されたメールサーバ5と通信する。
【0029】
モバイルルータ1と無線端末2との間は、例えば無線LANによって接続される。また、モバイルルータ1とアクセスポイント3との間は、例えば無線LAN、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、3G(3rd Generation)又はLTE(Long Term Evolutiion)によって接続される。
【0030】
アクセスネットワーク7は、有線又は無線の通信事業者ネットワークであり、ゲートウェイを介して、インターネット8に相互接続される。相手方端末3は、例えば、図1に示したように、インターネット8に相互接続されたアクセスネットワーク9に接続されている。このような構成の下、モバイルルータ1は、例えば、移動端末2と相手方端末3との間におけるメールサーバ5が介在した電子メールの送受信を仲介する。
【0031】
同じく図1によれば、インターネット8内に、サーバ4が設置されている。サーバ4は、例えばwebサーバであって、HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)サーバやメールサーバ(SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)サーバ及びPOP(Post Office Protocol)サーバ)である。これらサーバは、ポート番号に対応したアプリケーションサービスを、要求(Request)に応じて提供する。移動端末2は、所望のサービスに対応したポート番号を宛先ポート番号(Port)に指定し、モバイルルータ1を介して、サーバ4にアクセスする。
【0032】
この際、例えばPort=80である場合、WWW(World Wide Web)の利用が要求されたことになり、サーバ4はHTTPサーバとして機能する。また、Port=25である場合、電子メールの利用が要求されたことになり、サーバ4はSMTPサーバとして機能する。
【0033】
ここで、モバイルルータ1は、移動端末2が発信したデータパケットの中から宛先ポート番号Portをログとして取得する。さらに、モバイルルータ1は、自身との接続が確立されている(無線ネットワーク6に接続された)全ての移動端末2の受信信号強度(RSSI)値を、適宜又は定期的に取得する。
【0034】
図2は、本発明に係るプレゼンス情報自動通知システムにおける、ユーザのプレゼンス情報を取得する処理のシーケンス図である。
【0035】
図2に示したシーケンス(ステップS200乃至ステップS205、及びステップS210乃至ステップS215)によれば、ユーザのプレゼンス情報に基づく管理テーブル(連絡先記憶部)110が、予め作成・更新される。これは、無線ネットワーク6に接続された全ての移動端末について実行される。
【0036】
ここで、管理テーブル110は、移動端末を使用してモバイルルータ1と通信する可能性のある複数のユーザ(及び使用される移動端末のMAC(Media Access Contorol)アドレス)と、災害等の所定イベントが発生した際の連絡先となる電子メールアドレスとを対応付けて、ユーザ(MACアドレス)毎に記憶した連絡先記憶部である。
【0037】
(ポート番号判定)
(S200)移動端末2が、サーバ4に向けてデータパケットを発信する。このデータパケットは、モバイルルータ1を介して、サーバ4へ転送される。このデータパケットのヘッダには、サーバ4におけるアプリケーションサービスに対応した宛先ポート番号Portが含まれる。
【0038】
(S201)モバイルルータ1は、移動端末2から送信されたデータパケットから、宛先ポート番号Portを取得する。
(S202)モバイルルータ1は、取得した宛先ポート番号Portが予め登録された登録ポート番号のうちの1つと一致するか否かを判定する。ここで、登録ポート番号は、ユーザの操作に基づくアプリケーションに対応したプロトコル依存のポート番号である。登録ポート番号として、例えば、Port=80(HTTPによるWWWの利用)、Port=25(SMTPによる電子メールの利用)等を登録することができる。
【0039】
宛先ポート番号Portがこのような登録ポート番号のうちの1つと一致した場合、この発信はまさにユーザによる移動端末2の操作に基づいてなされた、とみなすことができる。これにより、このユーザ通信日時に、ユーザが移動端末2の近傍、すなわちモバイルルータ1の通信圏内に所在した、と判定される。
【0040】
(S203)宛先ポート番号Portが登録ポート番号のうちの1つと一致する場合、モバイルルータ1は、自身の有する管理テーブル110に、データパケットの送信元である移動端末2のMACアドレスと対応付けて、ユーザ通信日時(最新通信日時:データパケットを受信した日付及び時刻)を記録する。ここで、管理テーブル110に、通信日時の記録が当該MACアドレスと対応付けられて既に存在する場合、ユーザ通信日時がこの最新値に更新される。
【0041】
(S204)一方、宛先ポート番号Portが登録ポート番号のいずれとも一致しない場合、管理テーブル110に対する記録・更新はなされない。
(S205)モバイルルータ1は、データパケットをサーバ4に向けて転送する。
【0042】
(RSSI判定)
(S210)モバイルルータ1は、移動端末2から発信された、RSSIを測定するための信号を受信する。この信号は、接続が確立した全ての移動端末から定期的に又は適宜、取得することができる。
(S211)モバイルルータ1は、RSSIを測定しRSSI値を取得する。
【0043】
(S212)モバイルルータ1は、取得したRSSI値を用いて、移動端末毎にRSSIの変動値ΔRSSIを算出する。ここで、変動値ΔRSSIは、後に図3を用いて説明するように、予め設定された基準RSSI値と取得したRSSI値との差の絶対値とされる。
(S213)モバイルルータ1は、変動値ΔRSSIが所定の閾値Δth以上である否かを判定する。
【0044】
(S214)変動値ΔRSSIが所定の閾値Δth以上である場合、モバイルルータ1は、自身の有する管理テーブル110に、対象となる移動端末のMACアドレスと対応付けて、測定日時(RSSI更新日時:RSSIを測定した日付及び時刻)を記録する。また、測定されたRSSI値及び算出された変動値ΔRSSIが併せて記録されることも好ましい。ここで、管理テーブル110に、MACアドレスに対応付けられた測定日時の記録が既に存在する場合、測定日時(更には、RSSI値及び変動値ΔRSSI)がこの最新値に更新される。
(S215)一方、変動値ΔRSSIが所定の閾値Δth未満である場合、管理テーブル110に対する記録・更新はなされない。
【0045】
以上説明したように、モバイルルータ1は、以下の2つの判定を実行する。
(1)ポート番号判定:ステップS200乃至S205
(2)RSSI判定 :ステップS210乃至S215
モバイルルータ1は、これら判定を用いて、災害等の所定イベント発生時にモバイルルータ1の通信圏内(例えば、社屋等の建物内)に所在していたとみなされるユーザを特定することができる。その結果、単に移動端末の所在ではなく、移動端末のユーザの所在状況を示すプレゼンス情報を通知することが可能となる。
【0046】
尚、上記のRSSI判定(2)のみでも、プレゼンス情報の取得は可能である。このRSSI判定(2)に併せて、ポート番号判定(1)を実施することによって、所在している可能性が高いユーザを、より確実に抽出し、特定することができる。
【0047】
図3は、本発明に係る管理テーブル(連絡先記録部)110の構成図である。
【0048】
図3によれば、連絡先記録部としての管理デーブル110には、無線ネットワーク6に接続される(可能性のある)全てのユーザ(移動端末)毎に、以下の項目の欄が設けられている。
(a)ユーザ名、(b)登録ポートへの最新通信日時、(c)RSSI更新日時、
(d)最新RSSI、(e)基準RSSI、(f)最新ΔRSSI、
(g)MACアドレス、(h)連絡先、(i)ユーザとの続柄、
(j)電子メールアドレス
【0049】
ユーザ名(a)は、無線ネットワーク6に接続される(モバイルルータ1と接続が確立する)可能性のある移動端末のユーザ名であり、予め管理テーブル110に登録される。例えば、本社の従業員の各々に所定の移動端末が付与されており、これら移動端末と本社社屋に設置されたモバイルルータとが、本社無線LANを構築している場合、これら従業員の氏名が、予めユーザ名(a)として列挙され登録される。
【0050】
登録ポートへの最新通信日時(b)は、図2に示した管理テーブル110の作成・更新処理シーケンスにおけるステップS203で、移動端末が、登録ポート番号を宛先ポート番号として最近に行った通信の日付及び時刻である。具体的には、モバイルルータ1が登録ポート番号を宛先に含むデータパケットを受信した日時を、この最新通信日時(b)とすることができる。
【0051】
RSSI更新日時(c)は、図2に示した管理テーブル110の作成・更新処理シーケンスにおけるステップS214で、変動値ΔRSSIが所定の変動閾値Δth以上となるRSSI値を取得した最新の日付及び時刻である。具体的には、モバイルルータ1がこのようなRSSIを最近に測定した日時を、RSSI更新日時(c)とすることができる。ここで、変動閾値Δthは、例えば、20dBとすることができる。
【0052】
最新RSSI(d)は、RSSI更新日時(c)に測定されたRSSI値であり、変動値ΔRSSIが所定の閾値Δth以上となるRSSIの最新値である。図3では、最新RSSI(d)は、単位dBmで表示されている。
【0053】
基準RSSI(e)は、管理テーブルに登録された各ユーザが使用する移動端末における、基準となるRSSI値である。図3では、基準RSSI(e)も単位dBmで表示されている。基準RSSI(e)の例として、本社の従業員の各々に付与された移動端末と本社社屋に設置されたモバイルルータ1とが、本社無線LANを構築している場合を考える。ここで、各従業員が通常業務で移動端末を使用する定位置(例えば自身の座席)でこの移動端末を使用した際の、モバイルルータにおけるRSSI値を測定し、この値を基準RSSI(e)とすることができる。又は、所定期間におけるRSSIの平均値を測定し、この平均値を基準RSSI(e)とすることも可能である。いずれにしても、対象となるユーザの各々に対して、予め基準RSSI(e)が決定され、管理テーブル110に記録される。
【0054】
最新ΔRSSI(f)は、最新RSSI(d)から算出された最新の変動値ΔRSSIである。図3では、単位dBで示されている。具体的に、最新ΔRSSI(f)は、次式で算出される。
最新ΔRSSI(dB)=|基準RSSI(dBm)−最新RSSI(dBm)|
【0055】
MACアドレス(g)は、管理テーブル110に登録された各ユーザが使用する移動端末のMACアドレスである。また、連絡先(h)は、災害等の所定イベント発生時に、モバイルルータ1の通信圏内(例えば社屋等の建物内)に所在していると特定されたユーザのプレゼンス情報を通知する宛先である。連絡先(h)として、例えば、ユーザの所在を知らせたい親族、友人、又は仕事で関係する人等の電子メールアドレスを記録しておくことができる。
【0056】
この連絡先(h)は、1つのユーザ名(MACアドレス)に対して、複数(図3のユーザ名:○中△美では2つ)記録されていてもよい。所定イベント発生時には、複数の連絡先のいずれにもプレゼンス情報が通知される。また、各連絡先(h)に併せて、この連絡先の該当者のユーザとの続柄(i)、更にはこの該当者の氏名等、が記録されていてもよい。これらの情報を基にして、プレゼンス情報通知用の電子メールにおけるテキストを、より適切に作成することも可能である。
【0057】
電子メールアドレス(j)は、移動端末を操作するユーザの電子メールアドレスである。モバイルルータ1は、連絡先(h)を宛先とした電子メールの送信が完了した後、この電子メールアドレス(j)を宛先として、送信が完了したことを意味するテキストを含む電子メールをメールサーバ5へ更に送信する。
【0058】
図4は、本発明に係るプレゼンス情報自動通知システムにおける、所定イベント発生時にプレゼンス情報を通知する処理のシーケンス図である。
【0059】
(S41)モバイルルータ1は、災害等の所定イベントが発生したことを検知する。モバイルルータ1による所定イベント発生検知方法として、以下の(1)乃至(3)が挙げられる。
【0060】
(1)緊急地震速報に代表されるような緊急速報メッセージを受信する機能をモバイルルータ1に備えておき、受信した緊急速報メッセージをもって所定イベント発生検知とする。尚、緊急地震速報は、3GPP2(CDMA2000通信方式の標準化プロジェクト)で規格化されたブロードキャストSMS(Short Message Service)を利用して一斉同時配信される緊急地震速報、その他、気象庁又はその許可を受けた事業者によって配信される緊急速報メッセージである。
(2)モバイルルータ1と、アクセスネットワーク7内のアクセスポイントとの通信が、所定時間以上途絶えた場合(且つその後当該通信が復活した場合)に、アクセスポイント又はその周辺地域に災害が発生したとして災害発生検知とする。
(3)モバイルルータ1が振動検出器を備えており、所定以上(例えば震度4以上)の強度を有し所定時間以上(例えば5秒間以上)継続した振動を検出した際に、災害(地震)発生検知とする。
【0061】
尚、モバイルルータ1が熱感知器を備えており、所定温度以上(例えば60℃以上)の熱を所定時間以上(例えば10秒間以上)感知した際に、災害(火災)発生検知とすることも可能である。但し、この場合、ユーザが例えば建物内に所在するとのプレゼンス情報は、ユーザが危険な状態にあり得るとの情報となる。
【0062】
(S42)モバイルルータ1は、所定イベント発生時にモバイルルータ1の通信圏内に所在したとみなされるユーザを、管理テーブル110から抽出・特定する。この管理テーブル110を用いたユーザ抽出処理は、後に、図5のフローチャートを用いて詳細に説明される。尚、ユーザの抽出は、例えば、管理テーブル110の該当するユーザ名(a)又はMACアドレス(g)にフラグが立てられることによっても実施可能である。
【0063】
(S43)モバイルルータ1は、抽出・特定したユーザの連絡先(h)を宛先として、当該ユーザが所定イベント発生時にモバイルルータ1の通信圏内に所在した旨のプレゼンス情報をメールサーバ5に送信する。例えば、移動端末2のユーザの連絡先(h)に相手方端末3の電子メールアドレス(図4では、abc@a1.auone-net.jp)が含まれる場合、モバイルルータ1は、相手方端末3にプレゼンス情報を通知すべく、メールサーバ5に対応する電子メールを送信する。
(S44)メールサーバ5は、モバイルルータ1から受信したプレセンス情報を、相手方端末3に送信する。
【0064】
(S45)モバイルルータ1は、ユーザの連絡先(h)(相手方端末3)を宛先とした電子メールの送信が完了した後、ユーザの電子メールアドレス(j)(図4では、def@ghmail.com)を宛先として、送信が完了したことを意味するテキストを含む電子メールをメールサーバ5へ更に送信する。
(S46)メールサーバ5は、モバイルルータ1から受信したプレセンス情報送信完了通知を、ユーザの電子メールアドレス(j)を宛先として該当する端末に送信する。
【0065】
尚、変更態様として、モバイルルータ1は、ユーザの連絡先(h)を宛先とした電子メールの送信が完了した後、ユーザが使用する移動端末のMACアドレス(g)へ向けて、送信が完了したことを意味する制御信号を送信することも好ましい。
【0066】
(S47)モバイルルータ1は、連絡先(h)を宛先とした電子メールの送信が完了しない場合、所定時間経過後、当該電子メールをメールサーバ5へ再送信する。
(S48)メールサーバ5は、モバイルルータ1から受信したプレセンス情報を、ユーザの連絡先(h)に送信する。
【0067】
以上説明したプレゼンス情報通知処理によれば、無線ネットワーク6内の各移動端末が個別に通知するのではなく、モバイルルータ1が、移動端末を使用するユーザのプレゼンス情報を一斉に通知する。その結果、災害等の緊急事態発生時のネットワーク輻輳を大幅に助長することなく、このプレゼンス情報を速やかに通知することが可能となる。
【0068】
図5は、管理テーブル(連絡先記録部)110を用いたユーザ抽出処理のフローチャートである。
【0069】
図5には、図4のシーケンス図で示した、所定イベント発生検知ステップS41と、ユーザ抽出処理ステップS42と、プレゼンス情報発信ステップS43とが示されている。ここで、ステップS420乃至S427のループ処理が、ユーザ抽出処理ステップS42に対応する。
【0070】
(S420)管理テーブル110に登録されたユーザ(移動端末)の各々に、パラメータi(i=1〜N)が割り当てられる。Nは、登録ユーザの人数であり、移動端末数(クライアント数)となる。次いで、管理テーブル110を用いたユーザ抽出処理ステップが、i=1から順次実行される。
【0071】
(S421)管理テーブル110において、各ユーザ(移動端末)の登録ポートへの最新通信日時(b)が、災害等の所定イベント発生検知(ステップS41)の時Tdisを含む所定時間範囲内の日時となっているか否かが判定される。
【0072】
この所定時間範囲としては、所定イベント発生検知時Tdisよりも所定時間Δt前の時点から現在までの時間が設定される。変更態様として、所定イベント発生検知時Tdisよりも所定時間Δt前の時点から所定イベント発生検知時Tdisまで、を所定時間範囲とすることも可能である。
【0073】
このS421の判定は、所定イベント発生検知時Tdisから所定時間Δt前の時刻(Tdis−Δt)以降に、ユーザが自らの操作で登録ポート番号を宛先ポート番号として通信したか否かの判定となっている。ここで、所定時間Δtは、例えば1時間とすることができる。この場合、所定イベント発生検知時Tdisを、例えば7月14日16時35分とすると、登録ポートへの最新通信日時(b)が7月14日15時35分以降であるか否か、の判定がなされる。
【0074】
例えば、図3の管理テーブル110の△田○夫さんにおいては、登録ポートへの最新通信日時(b)は、7月13日21時02分であるので、所定時間範囲外である。従って、ステップS421で偽の判定がなされる。
【0075】
ステップS421で、真の判定(最新通信日時(b)が時刻(Tdis−Δt)以降)がなされた際、当該ユーザは所定イベント発生時にモバイルルータ1の通信圏内に所在していたと認定され、管理テーブル110において該当するユーザ(移動端末)が抽出される(ステップS424)。
【0076】
尚、この真の判定は、ユーザの操作に基づいて、アプリケーションに対応したプロトコル依存の所定ポート番号を含む通信が、移動端末から送信されたことを意味する。従って、ユーザは、この移動端末を操作すべくこの移動端末近傍に所在していたとみなされる。その結果、ユーザがモバイルルータ1の通信圏内に所在していた、とのプレゼンス情報を得ることができるのである。
【0077】
一方、ステップS421で、偽の判定(最新通信日時(b)が時刻(Tdis−Δt)よりも前)がなされた際、次のステップS422に移行する。
【0078】
(S422)管理テーブル110において、各ユーザ(移動端末)の最新RSSI(d)が、所定の強度閾値Rth以上であるか否かが判定される。この所定の強度閾値Rthは、例えば、移動端末を携帯したユーザがモバイルルータ1の通信圏の境界(例えば社屋等の建物出口付近)に居る際のRSSI値(建物内外を判定する閾値)を基準に決定することができ、例えば、−80dBmに設定可能である。ここで、真の判定(最新RSSI(d)が所定の強度閾値Rth以上)がなされた際、ステップS423に移行する。
【0079】
一方、偽の判定がなされた際、当該ユーザは所定イベント発生時にモバイルルータ1の通信圏外(例えば社屋等の建物外)に出ていたと認定される(ステップS425)。
【0080】
(S423)管理テーブル110において、各ユーザ(移動端末)のRSSI更新日時(c)が、所定イベント発生検知(ステップS41)の時Tdisを含む所定時間範囲内の日時となっているか否かが判定される。ここで、この所定時間範囲として、上述したように、例えば所定イベント発生検知時Tdisよりも所定時間Δt前の時点から現在までの時間が設定される。
【0081】
このS423の判定は、所定イベント発生検知時Tdisから所定時間Δt前の時刻(Tdis−Δt)以降に、RSSIの変動値ΔRSSIが所定の変動閾値Δth以上であったか否かの判定となっている。
【0082】
例えば、図3の管理テーブル110の△田○夫さんでは、RSSI更新日時(c)は、7月14日16時27分であるので、所定時間範囲内である。従って、このステップS423で真の判定がなされる。
【0083】
このようにステップS423で、真の判定(変動値ΔRSSIが所定の変動閾値Δth以上)がなされた際、当該ユーザは所定イベント発生時にモバイルルータ1の通信圏内に所在していたと認定され、管理テーブル110において該当するユーザ(移動端末)が抽出される(ステップS424)。
【0084】
尚、この真の判定は、移動端末からのRSSIの変動値ΔRSSIが所定の変動閾値Δth以上であることを意味する。従って、この移動端末のユーザは、移動端末を携帯しつつ、モバイルルータ1の通信圏内を移動したとみなされる。その結果、ユーザがモバイルルータ1の通信圏内に所在していた、とのプレゼンス情報を得ることができるのである。
【0085】
(S425)一方、偽の判定がなされた際、当該ユーザは所定イベント発生時にモバイルルータ1の通信圏外(例えば社屋等の建物外)に出ていたと認定される。
【0086】
(S426)パラメータiが1だけ増分され、次の登録ユーザに対する所在を確認する処理が準備される。
(S427)以上説明したステップS420からステップS426までの処理を、パラメータiが初期値1から始まってN以下(i≦N)となる範囲で、実行する。一方、i>Nとなった段階で、ユーザ抽出処理ステップ(ステップS420乃至S427)を終了し、ステップS43に移行する。
【0087】
図6は、本発明によるモバイルルータ1の一実施形態における機能構成図である。
【0088】
図6によれば、モバイルルータ1は、無線ネットワークインタフェース101と、アクセスネットワークインタフェース102とを備えている。また、モバイルルータ1は、振動検出器103を備えていることも好ましい。
【0089】
さらに、モバイルルータ1は、管理テーブル(連絡先記憶部)110と、イベント発生検知部111と、受信強度記録部112と、ユーザ通信記録部113と、端末移動判定部114と、端末通信判定部115と、メール送信部116とを有する。尚、これら機能構成部は、モバイルルータ1に搭載されたコンピュータ(プロセッサ・メモリ)を機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0090】
イベント発生検知部111は、災害等の所定のイベントの発生を検知する。具体的に、イベント発生検知部111は、外部から配信される、緊急地震速報に代表されるような緊急速報メッセージを受信すると、端末判定部である端末移動判定部114及び端末通信判定部115に、イベント発生信号を出力する。
【0091】
他のイベント発生検知方法として、イベント発生検知部111は、振動検出部103から、所定以上(例えば震度4以上)の強度を有し所定時間以上(例えば5秒間以上)継続した振動を検出した旨の信号を入力することも好ましい。これにより、イベント発生検知部111は、地震発生を検知したとして、端末判定部である端末移動判定部114及び端末通信判定部115に、イベント(地震)発生信号を出力する。
【0092】
振動検出部103は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いた半導体式の3軸加速度センサとすることができる。振動(地震動)を検出する方式としては、振動による可動電極の固定電極に対する変位を静電容量変動として検出する静電容量型であってもよく、振動によるダイヤフラムの位置変化を複数のピエゾ抵抗素子の出力として検出するピエゾ抵抗型であってもよい。更なる変更態様として、振動検出部103は、モバイルルータ1の外部に設置された地震計等の検出装置であってもよい。
【0093】
受信強度記録部112は、無線ネットワークインタフェース101を介して、各移動端末から発信された信号を受信し、RSSIを測定する。次いで、受信強度記録部112は、測定されたRSSIの変動値ΔRSSIを算出する。その後、受信強度記録部112は、移動端末のMACアドレス毎に、所定の変動閾値Δth以上である変動値ΔRSSI(最新ΔRSSI(f))と、この変動値を測定した測定日時(RSSI更新日時(c))とを管理テーブル110に記録する。また、このRSSI値(最新RSSI(d))が記録されることも好ましい。
【0094】
さらに、受信強度記録部112は、既に管理テーブル110にこれらの値が記録されている場合、算出された変動値ΔRSSI(最新ΔRSSI(f))とその測定日時(RSSI更新日時(c))とをもって、既に記録されている値を更新する。
ここで、
【0095】
ユーザ通信記録部113は、各移動端末が発信したデータパケットを、無線ネットワークインタフェース101を介して受信する。ユーザ通信記録部113は、このデータパケットに含まれる宛先ポート番号が、予め登録された登録ポート番号と一致する場合、移動端末のMACアドレス毎に、このデータパケットが送信されたユーザ通信日時(登録ポートへの最新通信日時(b))を、管理テーブル110に記録する。
【0096】
さらに、ユーザ通信記録部113は、既に管理テーブル110にユーザ通信日時が記録されている場合、登録ポート番号を宛先ポート番号として含む新たにデータパケットが送信されたユーザ通信日時(登録ポートへの最新通信日時(b))をもって、既に記録されているユーザ通信日時を更新する。
【0097】
端末移動判定部114は、イベント発生検知部111からイベント発生信号を入力した際、管理テーブル110を参照・検索する。次いで、端末移動判定部114は、災害等の所定イベント発生時Tdisを含む所定時間範囲を設定する。その後、端末移動判定部114は、この所定時間範囲内で、RSSIの変動値ΔRSSI(最新ΔRSSI(f))が所定の変動閾値Δth以上となっているユーザ(移動端末)を、管理テーブル110から抽出する。さらに、端末移動判定部114は、抽出したユーザ(移動端末)のMACアドレス(g)及び連絡先(h)を、メール送信手段116に出力する。
【0098】
さらに、管理テーブル110で、移動端末のMACアドレス毎に移動端末からのRSSIが記録されている場合、端末移動判定部114は、所定イベント発生時Tdisを含む所定時間範囲内で、RSSIが所定の強度閾値Rth未満となっているユーザ(移動端末)を、抽出候補から除外することも好ましい。
【0099】
端末通信判定部115は、イベント発生検知部111からイベント発生信号を入力した際、管理テーブル110を参照・検索する。次いで、端末通信判定部115は、所定イベント発生時Tdisを含む所定時間範囲を設定する。その後、端末通信判定部115は、この所定時間範囲内で、登録ポート番号を宛先ポート番号として含むデータパケットが送信されているユーザ(移動端末)を、管理テーブル110から抽出する。さらに、端末通信判定部115は、抽出したユーザ(移動端末)のMACアドレス(g)及び連絡先(h)を、メール送信手段116に出力する。
【0100】
メール送信手段116は、端末移動判定部114及び端末通信判定部115から、抽出したユーザ(移動端末)のMACアドレス(g)及び連絡先(h)を入力する。次いで、メール送信手段116は、この連絡先(h)を宛先とした電子メールを、プレゼンス情報通知として、アクセスネットワークインタフェース102を介してメールサーバ5へ送信する。
【0101】
また、メール送信手段116は、連絡先(h)を宛先とした電子メールの送信が完了しない場合、所定時間経過後に、この電子メールをアクセスネットワークインタフェース102を介してメールサーバ5へ再送信する。
【0102】
さらに、メール送信手段116は、連絡先(h)を宛先とした電子メールの送信が完了した後、このユーザの電子メールアドレス(j)を宛先とした電子メールを、プレゼンス情報通知完了報告として、アクセスネットワークインタフェース102を介してメールサーバ5へ更に送信する。
【0103】
尚、変更態様として、メール送信手段116は、連絡先(h)を宛先とした電子メールの送信が完了した後、このユーザの移動端末のMACアドレスに向けて、送信が完了したことを意味する制御信号を、無線ネットワークインタフェース101を介して送信することも好ましい。
【0104】
図7は、プレゼンス情報通知のための電子メールテキスト例、及びプレゼンス情報通知完了報告のための電子メールテキスト例である。
【0105】
図7(A)は、プレゼンス情報通知のための電子メールテキスト例を示している。差出人は、例えば「**株式会社 プレゼンス情報通知システム」であってもよい。この場合、受信者は、この電子メールがプレゼンス情報通知システムからの自動通知であることを認識する。宛先は、管理テーブル110における抽出されたユーザに対応した連絡先(h)となる。
【0106】
この電子メールは、災害等の所定イベントの発生時に、該当する移動端末のユーザがモバイルルータ1の通信圏内(例えば社屋等の建物内)に所在したことを意味するテキストを含む。
【0107】
図7(B)は、プレゼンス情報通知完了報告のための電子メールテキスト例を示している。差出人は、例えば「**株式会社 プレゼンス情報通知システム」であってもよい。この場合、当該ユーザは、この電子メールを受信することによって、プレゼンス情報通知システムによる自動通知動作が実行されたことを認識する。宛先は、管理テーブル110における抽出されたユーザの電子メールアドレス(j)となる。
【0108】
この電子メールは、プレゼンス情報通知が完了したことを意味するテキストを含む。
【0109】
以上、詳細に説明したように、本発明のプレゼンス情報自動通知機能を備えた無線ルータ(モバイルルータ)、プレゼンス情報通知方法及びプログラムによれば、災害等の所定イベントが発生した時を含む所定時間範囲内で、RSSIの変動値ΔRSSIが所定の変動閾値Δth以上であった移動端末のユーザを特定する。尚、この所定時間範囲内で、予め登録された登録ポート番号を宛先ポート番号として通信した移動端末のユーザをも特定することも好ましい。
【0110】
次いで、このように特定されたユーザに対応した連絡先に、当該ユーザのプレゼンス情報を自動通知する。その結果、災害等の所定イベント発生時に、単に移動端末の所在ではなく、ユーザの所在状況を示すプレゼンス情報を通知することができる。
【0111】
更に、各移動端末が個別に通知するのではなく、無線ルータ(モバイルルータ)が通信圏内にある移動端末に係るユーザのプレゼンス情報を一斉に通知する。その結果、災害等の緊急事態発生時のネットワーク輻輳を大幅に助長することなく、このプレゼンス情報を速やかに通知することが可能となる。
【0112】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0113】
1 モバイルルータ(無線ルータ)
101 無線ネットワークインタフェース
102 アクセスネットワークインタフェース
103 振動検出器
110 管理テーブル(連絡先記憶部)
111 イベント発生検知部
112 受信強度記録部
113 ユーザ通信記録部
114 端末移動判定部
115 端末通信判定部
116 メール送信部
2 移動端末
3 相手方端末
4 サーバ
5 メールサーバ
6 無線ネットワーク
7、9 アクセスネットワーク
8 インターネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線を介して移動端末と通信すると共に、アクセスネットワークを介してメールサーバと通信する無線ルータであって、
当該移動端末のアドレス毎に、連絡先となるメールアドレスを対応付けて記憶した連絡先記憶手段と、
当該移動端末のアドレス毎に、当該移動端末からの受信信号強度の変動値と、該変動値を測定した測定日時とを前記連絡先記憶手段に記録する受信強度記録手段と、
所定イベントが発生した時を含む所定時間範囲内で、前記受信信号強度の変動値が所定の変動閾値以上となっている移動端末のアドレスを、前記連絡先記憶手段から抽出する端末移動判定手段と、
前記端末移動判定手段によって抽出された移動端末のアドレスに対応付けられたメールアドレスを宛先としたメールを前記メールサーバへ送信するメール送信手段と
を有することを特徴とする無線ルータ。
【請求項2】
前記所定イベントは、通信事業者設備から前記アクセスネットワークを介して送信された緊急速報メッセージの前記無線ルータによる受信であり、
前記メール送信手段は、前記所定イベントの発生時に当該移動端末のユーザが前記無線ルータの通信圏内に所在したことを意味するテキストを含むメールを送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線ルータ。
【請求項3】
前記受信強度記録手段は、当該移動端末からの受信信号強度の変動値が所定の変動閾値以上である場合、該変動値と該変動値を測定した測定日時とをもって、前記連絡先記憶手段に記録された変動値と測定日時とを更新することを特徴とする請求項1又は2に記載の無線ルータ。
【請求項4】
前記受信強度記録手段は、当該移動端末のアドレス毎に、前記変動値及び前記測定日時と併せて当該移動端末からの受信信号強度を記録し、
前記端末移動判定手段は、所定イベントが発生した時を含む所定時間範囲内で、前記受信信号強度が所定の強度閾値未満となっている当該移動端末のアドレスを、抽出候補から除外する
ことを特徴する請求項1から3のいずれか1項に記載の無線ルータ。
【請求項5】
当該移動端末のアドレス毎に、ユーザの操作に基づくアプリケーションに対応したプロトコル依存の所定ポート番号を含むデータパケットが送信されたユーザ通信日時を、前記連絡先記憶手段に記録するユーザ通信記録手段と、
前記所定イベントが発生した時を含む所定時間範囲内で、前記所定ポート番号を含むデータパケットが送信されている移動端末のアドレスを、前記連絡先記憶手段から抽出する端末通信判定手段と
を更に有し、
前記メール送信手段は、前記端末通信判定手段によって抽出された移動端末のアドレスに対応付けられたメールアドレスを宛先としたメールを前記メールサーバへ送信する
ことを特徴する請求項1から4のいずれか1項に記載の無線ルータ。
【請求項6】
前記ユーザ通信記録手段は、当該移動端末から前記所定ポート番号を含むデータパケットが送信された場合、該データパケットが送信されたユーザ通信日時をもって、前記連絡先記憶手段に記録されたユーザ通信日時を更新することを特徴とする請求項5に記載の無線ルータ。
【請求項7】
前記メール送信手段は、前記連絡先となるメールアドレスを宛先とした前記メールの送信が完了しない場合、所定時間経過後、当該メールを再送信することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の無線ルータ。
【請求項8】
前記連絡先記憶手段は、当該移動端末のアドレス毎に、当該移動端末を操作するユーザのメールアドレスを更に記憶しており、
前記メール送信手段は、前記連絡先となるメールアドレスを宛先とした前記メールの送信が完了した後、当該ユーザのメールアドレスを宛先として、送信が完了したことを意味するテキストを含むメールを前記メールサーバへ更に送信する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の無線ルータ。
【請求項9】
前記メール送信手段は、前記連絡先となるメールアドレスを宛先とした前記メールの送信が完了した後、当該移動端末のアドレスに向けて、送信が完了したことを意味する制御信号を送信することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の無線ルータ。
【請求項10】
無線を介して移動端末と通信すると共に、アクセスネットワークを介してメールサーバと通信する無線ルータに搭載されたプログラムであって、
当該移動端末のアドレス毎に、連絡先となるメールアドレスを対応付けて記憶した連絡先記憶手段と、
当該移動端末のアドレス毎に、当該移動端末からの受信信号強度の変動値と、該変動値を測定した測定日時とを前記連絡先記憶手段に記録する受信強度記録手段と、
所定イベントが発生した時を含む所定時間範囲内で、前記受信信号強度の変動値が所定の変動閾値以上となっている移動端末のアドレスを、前記連絡先記憶手段から抽出する端末移動判定手段と、
前記端末移動判定手段によって抽出された移動端末のアドレスに対応付けられたメールアドレスを宛先としたメールを前記メールサーバへ送信するメール送信手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするユーザインタフェース装置用のプログラム。
【請求項11】
無線を介して移動端末と通信すると共に、アクセスネットワークを介してメールサーバと通信する無線ルータにおけるプレゼンス情報通知方法であって、該無線ルータが、
当該移動端末のアドレス毎に、連絡先となるメールアドレスを対応付けて記憶した連絡先記憶手段と、
当該移動端末のアドレス毎に、当該移動端末からの受信信号強度の変動値と、該変動値を測定した測定日時とを前記連絡先記憶手段に記録する受信強度記録手段と
を有し、
所定イベントが発生した時を含む所定時間範囲内で、前記受信信号強度の変動値が所定の変動閾値以上となっている移動端末のアドレスを、前記連絡先記憶手段から抽出する第1のステップと、
第1のステップによって抽出された移動端末のアドレスに対応付けられたメールアドレスを宛先としたメールを前記メールサーバへ送信する第2のステップと
を有することを特徴とするプレゼンス情報通知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−74605(P2013−74605A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214505(P2011−214505)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【復代理人】
【識別番号】100141313
【弁理士】
【氏名又は名称】辰巳 富彦
【Fターム(参考)】