説明

緊急応答システム

【課題】質問側からの呼び掛けに応答側から応答が得られなかったとき、その理由が質問側で判明できるようにした緊急応答システムを提供すること。
【解決手段】質問機システム8から質問信号を送信し、航空機に搭載された応答機1から質問信号に対する応答信号を質問機システム8に送信するシステムにおいて、質問側の無線機9とは別の第1の無線機9と、応答機1に備えられている無線部2とは別に航空機に備えられた第2の無線機7を備え、応答機1に故障が発生したとき、第2の無線機7と第1の無線機9を介して通信を行い、応答機1に故障が発生したことが質問機システム8に通知され、レーダ卓の表示部10に表示されるようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機に装備されるトランスポンダに係り、特に相手からの呼び掛けに際して自航空機の識別が可能な応答を行なうようにしたトランスポンダに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の航空機が存在している空域では、航空機の存在を確認するだけでは不十分で、相手を識別する必要があり、このためトランスポンダの装備が欠かせない。
このトランスポンダは、航空機に搭載されたとき、当該航空機の識別が他の航空機や地上の航空管制施設により得られるようにするもので、このため、他の航空機や航空管制施設などの質問側からの呼び掛けに応答する際、応答側となった航空機は、自航空機の識別が可能なデータを含む応答をするようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、航空管制の場合、応答側の航空機に応じて個別の管制が必要で、このとき応答側航空機の種別や行先が判れば、方位や飛行コース、速度など個別の指示が可能になり、より一層、的確な管制が行なえることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−10365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のトランスポンダシステムの場合、応答側の航空機、つまりトランスポンダを装備している筈の航空機に対して呼び掛けを行なったにもかかわらず、応答側航空機から応答が得られなかった場合、呼び掛けを行なった側、つまり質問側では、応答側航空機が実際に応答しなかったのか、それとも応答したにもかかわらず、他の要因、例えば電波の伝播状況などにより応答が受信できなかったのか判別できない。
【0006】
また、このとき、応答側航空機のトランスポンダに異常が発生し、このため応答動作を行なったにもかかわらず、応答信号が送信されなかった場合も同様で、この場合も、質問側では、実際に相手が応答しなかったのか、それとも、相手が応答したにもかかわらず、他の要因、例えば電波の伝播状況などにより応答が受信できなかったのか判別できない。
【0007】
ここで、応答側航空機からの応答が質問側で得られなかった場合、その理由が特定できないと航空機の安全な運航が確保できず、当該航空機の識別も、勿論、できない。
しかるに、従来技術では、呼び掛けに応答が得られなかった場合、その理由が判別できないので、航空機の安全な運航の確保に問題があった。
【0008】
応答側から応答が得られないと、当該航空機の性能やペイロード状態が把握できず、従って、航空機の安全な運航に必要な指示を与えるのが困難になってしまう。
本発明の目的は、質問側からの呼び掛けに応答側から応答が得られなかったとき、その理由が質問側で判明できるようにした緊急応答システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、質問機から質問信号を送信し、航空機に搭載された応答機から前記質問信号に対する応答信号を前記質問機に送信するシステムであって、前記質問機で呼び掛けに使用される通信手段とは別に当該質問機に備えられた第1の無線通信手段と、前記応答機に備えられている通信手段とは別に前記航空機に備えられた第2の無線通信手段と、前記応答機に備えられ当該応答機の故障を検出する故障検出手段と、前記故障検出手段により故障が検出されたとき前記第2の通信手段から前記第1の通信手段に故障発生信号を送信する故障発生信号送信手段とを設け、前記第1の通信手段は、前記故障発生信号が受信されたとき、それを前記質問機に供給し、当該質問機は、前記故障発生信号が入力されたとき、当該故障発生信号を送信した航空機については、前記応答機が故障した航空機であるとして表示装置に表示するようにして達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トランスポンダに故障が発生し、質問側からの呼び掛けに際して当該トランスポンダから応答できなかった場合、別の無線通信手段により質問側に故障発生が通知されるようになる。
従って、本発明によれば、呼び掛けに応答側航空機から応答が得られなかった場合、真に相手が応答しなかったのか、或いは応答しようとしたにもかかわらず、故障が発生したため、応答できなかったのかが質問側で判別でき、この結果、航空機の安全運航に大いく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による緊急応答システムの一実施の形態を示すブロック構成図である。
【図2】本発明による緊急応答システムの一実施の形態による動作手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による緊急応答システムについて、図示の実施形態により詳細に説明する。
図1において、上側が航空機などの応答側で、下側は航空交通管制部などの質問側である。
ここで、1は応答機で、いわなるトランスポンダに相当するもの、2は無線部で、応答機1の無線通信機能を担っている部分、3は制御部で、応答機1の制御を受け持っている部分、4は外部I/f部で、応答機1と外部とのインターフェースとなる部分である。
【0013】
また、5は無線機I/f部で、応答機1と第2の無線機(後述)のインターフェースとなる部分、6は外部コンピュータで、外部I/f部4を介して制御部3にアクセスし、動作に必要なデータの設定などに使用されるもの、7は第2の無線機で、無線機2とは別に航空機に搭載されているもの、8は質問機システムで、応答機1と対になり質問信号の送信と応答信号の受信を行なう部分、9は第1の無線機で、質問機システム8の送信機2とは別に質問側に備えられているもの、そして、10は表示部で、航空交通管制部のレーダ卓などにあるものである。
【0014】
次に、この実施形態の動作について説明する。
まず、応答機1は、上記したようにトランスポンダとして機能し、質問機システム8は、同じく応答機1と対になって、応答機1が搭載されている航空機の識別を行なう。
このため応答側航空機にある応答機1と質問側にある質問機システム8は、無線伝送経路Aを介して相互に通信を行ない、通常のトランスポンダを使用したシステムと同じ動作を行なうことになる。
【0015】
このときの無線伝送経路Aによる通信には、1GHz帯のキャリアによるパルス変調波の使用が一般的であり、無線部2を含む応答機1全体の動作は、制御部3の制御のもとで実行されるが、ここで、この実施形態に係る制御部3の場合、これと並行して動作状態のモニタを実行するように構成されている。
これにより制御部3は自己診断を行ない、異常が検出された場合、予め設定してある所定の故障情報と自航空機の識別コードを含むアラーム信号を発生し、無線機I/f部5を介して第2の無線機7に供給する。
【0016】
そこで、第2の無線機7は、アラーム信号が供給されたことにより送信動作に入り、アラーム信号で変調された電波を送信し、無線伝送経路Bを介して第1の無線機9に受信されるようにする。
このとき、応答側の第2の無線機7と質問側の第1の無線機9としては、航空機通信システムとして一般的に装備されている無線通信装置、例えば連絡用の音声通話装置が使用されるが、この場合、HF帯、VHF帯、UHF帯のキャリアによるアナログ変調波(FM、AMなど)、デジタル変調波(FAK、QPSK、QAM、MSK、GMSKなど)の使用が通例である。
【0017】
こうしてアラーム信号が受信されたら、第1の無線機9は、それを解析して故障情報と自航空機情報を質問機システム8に供給する。
そこで、質問機システム8は、その制御下にあるレーダ卓の表示部10に故障情報を供給し、そこに映出されている標識、つまり、このときの呼び掛けの応答側となった航空機を表す標識に、更に所定の態様の表示が施されるように制御する。
【0018】
この結果、レーダ卓の表示部10を見れば、ある航空機が呼び掛けに応答しない理由は、その航空機の応答機1に異常が発生したためであることが一目で判るようになる。
このときの所定の態様の表示とは、特定の色彩を施したり、表示を点滅させたり、故障を表す固有のエラーコードの付与などがあり、任意に選ぶことができるようになっている。
【0019】
図2は、このときの制御部3による処理手順を示したもので、まず、自己診断による異常の検出を待ち(S1)、検出されたらアラーム信号であることを確認する(S2)。
アラーム信号であった場合、それを第2の無線機7に伝達し(S3)、第2の無線機7に故障情報データを送信し(S4)、第1の無線機9を介して故障発生を質問機システム5に通知する(S5)。
【0020】
この結果、上記したように、このときの呼び掛けの応答側となった航空機を表す標識に、更に所定の態様の表示が施されるようになる。
一方、アラーム信号でなければ第2の無線機7には伝達しない(S6)。
従って、ある航空機が呼び掛けに応答しなかったときでも、その航空機の応答機1に異常が発生したのが理由であったときは、そのことが、レーダ卓の表示部10を見ただけで直ちに理解できることになる。
【0021】
このときアラーム信号は、上記した制御部3による自己診断の結果として発生される。
そこで、このときの発生条件の一例について以下に列挙する。なお、この例に限定されることはない。
・ 外部コンピュータ6が故障していた場合。
・ 応答側航空機の識別コートが設定されていなかった場合。
・ 質問信号が正しくデコードされなかった場合。
・ アンテナの定在波比が規格外の場合。
・ 制御バスに異常があった場合。
・ 電源に異常があった場合。
【0022】
従って、この実施形態によれば、応答側航空機の応答機1に故障が発生し、質問側からの呼び掛けに際して応答できなかった場合、第2の無線機7と第1の無線機9により、無線伝送経路Aとは別の無線伝送経路Bを介して、質問側に故障発生が通知されるようになり、この結果、呼び掛けに応答側航空機から応答が得られなかった場合、真に相手が応答しなかったのか、或いは応答しようとしたにもかかわらず、故障が発生したため、応答できなかったのかが質問側で判別でき、この結果、航空機の安全な運航を確保することができる。
【0023】
なお、この実施形態では、第1の無線機9と第2の無線機7として、航空機通信システムとして一般的に装備されている無線通信装置、例えば連絡用の音声通話装置を兼用しているので、その分、構成要素が少なくて済み、コスト面や設置スペース面で有利になるが、しかし、専用の無線機を設けるようにしてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0024】
1 応答機(トランスポンダに相当)
2 無線部(応答機1の無線通信機能を担っている部分)
3 制御部(応答機1の制御を受け持っている部分)
4 外部I/f部(応答機1と外部とのインターフェースとなる部分)
5 無線機I/f部(応答機1と第2の無線機のインターフェース)
6 外部コンピュータ(外部I/f部4を介して制御部3にアクセスし、
動作に必要なデータの設定などに使用される)
7 第2の無線機(無線機2とは別に航空機に搭載されているもの)
8 質問機システム(応答機1と対になり質問信号の送信と応答信号の受
信を行なう部分)
9 第1の無線機(質問機システム8の送信機2とは別に質問側に備えら
れているもの)
10 表示部(航空交通管制部のレーダ卓などにあるもの)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質問機から質問信号を送信し、航空機に搭載された応答機から前記質問信号に対する応答信号を前記質問機に送信するシステムであって、
前記質問機で呼び掛けに使用される通信手段とは別に当該質問機に備えられた第1の無線通信手段と、
前記応答機に備えられている通信手段とは別に前記航空機に備えられた第2の無線通信手段と、
前記応答機に備えられ当該応答機の故障を検出する故障検出手段と、
前記故障検出手段により故障が検出されたとき前記第2の通信手段から前記第1の通信手段に故障発生信号を送信する故障発生信号送信手段と、
を設け、
前記第1の通信手段は、前記故障発生信号が受信されたとき、それを前記質問機に供給し、当該質問機は、前記故障発生信号が入力されたとき、当該故障発生信号を送信した航空機については、前記応答機が故障した航空機であるとして表示装置に表示することを特徴とする緊急応答システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−216962(P2010−216962A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63379(P2009−63379)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】