説明

緊急情報告知システム

【課題】運賃表示を妨げることなく緊急地震速報を迅速に乗客に告知し得る緊急情報告知システムを提供する。
【解決手段】緊急情報告知システム10は、運賃表示装置20、受信装置30、停車表示制御装置41、停車表示押しボタン43、行先表示装置51、乗降中表示装置53、音声合成装置60、増幅装置70、車内スピーカ71、車外スピーカ73等から構成される。これにより、緊急地震速報の放送とほぼ同時に、緊急地震速報の音声アナウンスが路線バス100内に出力されるので、路線バス100の乗務員および乗客に対してリアルタイムに緊急地震速報を告知することができる。また、緊急メッセージが、運賃表Da,Dbの表示をしている液晶表示部26に出力されても、運賃表Da,Dbの一覧のうち、金額表示のある表示領域に緊急メッセージが表示されないため、乗客による支払額の確認等に際して、当該緊急メッセージが邪魔にはならない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗合車両に搭載される緊急情報告知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
路線バスやワンマン運行方式の鉄道等の乗合車両には、例えば、下記特許文献1に開示されるような「運賃表示装置」が搭載されている。この「運賃表示装置」では、2画面構成にした表示装置に、乗車時に整理券発行機から発行される整理券の番号とこれらの番号に対応する各運賃とからなる運賃表を両画面全体に一覧表形式で表示したり、一方の画面に運賃表、他方の画面に運賃表以外の情報コンテンツ等をそれぞれ表示する。これにより、乗客による運賃の確認時間を短くしながら、運賃以外の情報コンテンツをも乗客に提供可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−65622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に開示される「運賃表示装置」によると、他方の画面等に表示される情報コンテンツは、予めメモリに記憶されたコマーシャルやニュース等のデータを所定タイミングで読み出し、運賃表示をしていない画面に表示される。このため、リアルタイム性の要求度が高い情報、例えば、気象庁から1時間ごとに発表されて更新される「台風情報」のように、時々刻々と変化する情報コンテンツについては、オンラインで当該情報を取得し得る構成を採らない限り、提供することが難しい。
【0005】
また、オンラインで情報コンテンツを取得し得る構成を採ったとしても、インターネット等、比較的低コストで利用することのできる汎用のネットワークインフラを介してデータを取得する場合には、通常、データの発信元から複数のネットワークサーバ等を経由して届くため、データの転送経路によってはコンピュータネットワークに特有の遅延時間の問題が生じ得る。
【0006】
例えば、秒単位のリアルタイム性を要求されるような情報(気象庁から発表される緊急地震速報のように極めて緊急性の高い情報等)は、自社専用で設けた地域IP網のように輻輳状態を制御できるネットワークインフラを経由しない限り、価値の高い情報を提供することは難しい。緊急地震速報の例では、乗合車両の路線地域で地震が発生した後に、その地震の発生を「予告」する等、情報鮮度の観点からマイナスイメージを乗客に与えかねないという問題が発生し得る。
【0007】
さらに、乗合車両の場合、次の停留所や駅で降車予定の乗客にとっては、自分の支払額が一番の関心事となり得る状況を考慮すると、極めて緊急性の高い情報と言えどもそれが運賃表示装置に表示されることによって、運賃が全く表示されなくなるというのは、乗客のニーズに十分に応えられなくなり得るという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、運賃表示を妨げることなく緊急地震速報を迅速に乗客に告知し得る緊急情報告知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載された緊急情報告知システムは、乗合車両に搭載される緊急情報告知システムであって、文字情報および図形情報を表示可能に構成され、前記乗合車両内に設置された整理券発行機から発行される整理券の複数の番号とこれらの番号に対応する複数の運賃とを一覧で前記乗合車両の乗客が視認可能に運賃表示をする車内情報表示装置と、放送局から送信される緊急地震速報の音声情報を含む放送波を受信可能に構成され、前記乗合車両の走行経路が含まれる地域または地方に対する前記放送波を受信した場合、前記音声情報を出力する受信装置と、前記受信装置から入力される前記音声情報に基づく音声アナウンスを前記乗合車両の乗務員および前記乗客が聴取可能に前記乗合車両内に出力する車内音声出力装置と、前記車内情報表示装置に表示可能に予め設定されて前記緊急地震速報の音声情報に対応する文字および/または図形からなる緊急地震情報を少なくとも含む複数の所定メッセージを記憶するとともに、これら複数の所定メッセージを選択可能な選択スイッチを有し、この選択スイッチにより選択された前記所定メッセージを出力する緊急情報出力装置と、前記緊急情報出力装置から入力される前記所定メッセージを、(1)前記運賃表示の一覧で金額表示のない表示領域に代えて表示するように、(2)前記運賃表示の一覧表示領域を縮小して空いた表示領域に表示するように、または、(3)前記運賃表示の一覧表示時期と異なる時期に表示するように、前記車内情報表示装置を制御する表示情報制御装置と、を備えることを技術的特徴とする。
【0010】
また、特許請求の範囲の請求項2に記載された緊急情報告知システムは、前記受信装置は、さらに放送局から送信される緊急警報放送の放送波を受信可能かつ受信した緊急警報放送の音声情報を出力可能に構成されている請求項1に記載の緊急情報告知システムであって、前記受信装置が前記緊急警報放送の放送波を受信した場合、前記受信装置から入力される前記緊急警報放送の音声情報に基づく音声アナウンスを少なくとも前記乗務員が聴取可能に出力する乗務員用出力装置を備え、前記緊急情報出力装置は、前記複数の所定メッセージとして、前記緊急警報放送の内容に対応する文字および/または図形からなる緊急警報情報を含むものを記憶するとともに前記選択スイッチにより選択可能であることを技術的特徴とする。
【0011】
さらに、特許請求の範囲の請求項3に記載された緊急情報告知システムは、請求項2に記載の緊急情報告知システムにおいて、前記緊急情報出力装置は、前記受信装置が前記緊急警報放送を受信している間、または前記受信装置が前記緊急警報放送を受信した後の所定時間の間、を除いて前記選択スイッチの操作を電気的に禁止または無効にする警報時選択操作制御部を備えることを技術的特徴とする。
【0012】
さらにまた、特許請求の範囲の請求項4に記載された緊急情報告知システムは、請求項1〜3のいずれか一項に記載の緊急情報告知システムにおいて、前記緊急情報出力装置は、前記受信装置が前記緊急地震速報を受信している間、または前記受信装置が前記緊急地震速報を受信した後の所定時間の間、を除いて前記選択スイッチの操作を電気的に禁止または無効にする速報時選択操作制御部を備えることを技術的特徴とする。
【0013】
また、特許請求の範囲の請求項5に記載された緊急情報告知システムは、請求項1〜4のいずれか一項に記載の緊急情報告知システムにおいて、前記乗合車両は、前記乗合車両外の走行中もしくは停車中の車両の乗員または歩行者に文字情報および図形情報を視認可能に表示する車外情報表示装置を備えており、前記緊急情報出力装置は、前記選択スイッチにより選択された前記所定メッセージを前記車外情報表示装置に出力することを技術的特徴とする。
【0014】
また、特許請求の範囲の請求項6に記載された緊急情報告知システムは、請求項1〜4のいずれか一項に記載の緊急情報告知システムにおいて、前記乗合車両は、前記乗合車両外の走行中もしくは停車中の車両の乗員または歩行者に音声情報に基づく音声アナウンスを聴取可能に出力する車外音声出力装置を備えており、前記緊急情報出力装置は、前記選択スイッチにより選択された前記所定メッセージに基づく音声情報を前記車外音声出力装置に出力することを技術的特徴とする。
【0015】
また、特許請求の範囲の請求項7に記載された緊急情報告知システムは、請求項1〜4のいずれか一項に記載の緊急情報告知システムにおいて、前記乗合車両は、前記走行経路に設定された複数の停留所のうち、現在接近中の最寄り停留所に停車する予定である旨を点灯によって前記乗客に報知する複数の停車予告装置を備えており、前記緊急情報出力装置が前記所定メッセージを前記車内情報表示装置に出力する場合、前記複数の停車予告装置の点消灯を前記乗客が視認可能な点滅周期で制御する点消灯制御装置を備えることを技術的特徴とする。
【0016】
なお、特許請求の範囲に記載の「緊急地震速報」とは、気象庁が、地震の発生直後に震源に近い観測点の地震計で捉えた地震波(主にP波)のデータを解析して震源の位置や地震の規模(マグニチュード)を直ちに推定しこれに基づいて各地における主要動(主にS波)の到達時刻や震度を推定して、主要動が到達する数秒から数十秒前に気象庁から発表される情報のことである。そして、この緊急地震速報を気象庁等から受けた日本放送協会や民間放送局が所定のチャイム音を冒頭に付加して放送する音声放送波が、特許請求の範囲に記載の「緊急地震速報の音声情報を含む放送波」に相当する。
【0017】
また、特許請求の範囲に記載の「緊急警報放送」とは、地震等の大規模災害が発生した場合や津波警報が発表された場合等に日本放送協会や民間放送局が放送するもので、待機状態にあるテレビやラジオに対してスイッチを自動的にオンにするための所定の緊急警報信号が放送波の最初に付加されている放送のことである。この緊急警報信号には、第1種開始信号、第2種開始信号および終了信号があり、第1種開始信号および第2種開始信号を冒頭に付加して放送する音声放送波が、特許請求の範囲に記載の「緊急警報放送の放送波」に相当する。なお、第1種開始信号は、大規模地震の警戒宣言等が発表された場合や災害対策基本法に基づいて地方公共団体の長から避難命令等が発せられた場合等に送信されるもので、第2種開始信号は、津波警報が発表された場合に送信されるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、受信装置は、乗合車両の走行経路が含まれる地域または地方に対する緊急地震速報の音声情報を含む放送波を受信した場合、緊急地震速報の音声情報を出力し、車内音声出力装置は、受信装置から入力される音声情報に基づく音声アナウンスを乗合車両の乗務員および乗客が聴取可能に乗合車両内に出力する。つまり、インターネット等、ネットワークインフラを介することなく、放送局から送信される放送波から緊急地震速報を直接受信しその音声アナウンスを乗合車両の乗務員および乗客が聴取可能に乗合車両内に出力する。これにより、緊急地震速報の放送とほぼ同時に、緊急地震速報の音声アナウンスを乗合車両内に出力するので、コンピュータネットワークを介して緊急地震速報を取得する場合に生じ得る遅延時間もなく、乗合車両の乗務員および乗客に対してリアルタイムに緊急地震速報を告知することができる。したがって、まず最初に音声アナウンスによって、運賃表示を妨げることなく、緊急地震速報を迅速に乗客に告知することができる。
【0019】
また、本発明では、緊急情報出力装置は、緊急地震速報の音声情報に対応する文字および/または図形からなる緊急地震情報を少なくとも含む複数の所定メッセージの中から、選択スイッチにより選択された所定メッセージを出力し、その所定メッセージを入力した表示情報制御装置は、当該所定メッセージを、(1)運賃表示の一覧で金額表示のない表示領域に代えて表示するように、(2)運賃表示の一覧表示領域を縮小して空いた表示領域に表示するように、または、(3)運賃表示の一覧表示時期と異なる時期に表示するように、車内情報表示装置を制御する。つまり、選択スイッチにより選択された所定メッセージが、(1)運賃表示の一覧で金額表示のない表示領域に代えて、(2)運賃表示の一覧表示領域を縮小して空いた表示領域に、または、(3)運賃表示の一覧表示時期と異なる時期に、車内情報表示装置に表示される。これにより、選択スイッチによって選択された所定メッセージが、運賃表示をしている車内情報表示装置に出力されても、運賃表示の一覧のうち、金額表示のある表示領域に所定メッセージが表示されることはないため、乗客による支払額の確認等に際して、当該所定メッセージが邪魔にはならない。したがって、音声アナウンスに続いて車内情報表示装置によっても運賃表示を妨げることなく、緊急地震速報を迅速に乗客に告知することができる。
【0020】
このように本発明では、緊急地震速報の放送とほぼ同時に、初動として、緊急地震速報の音声アナウンスを乗合車両内に出力し、その後、選択スイッチの操作によって所定メッセージが運賃表示を妨げることなく車内情報表示装置に出力する。したがって、運賃表示を妨げることなく緊急地震速報を迅速に乗客に告知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る緊急情報告知システム(以下「本緊急情報告知システム」という。)の構成例を示すシステム構成図である。
【図2】本緊急情報告知システムを適用した路線バスの一例を示す説明図で、屋根、前扉や中扉等の一部を省略して表したものである。
【図3】図1に示す受信装置の外観構成の一例を示す説明図である。
【図4】図1に示す運賃表示装置を構成する液晶表示部による表示例を示す説明図で、表示態様の時間的変化例を図中において前後左右の位置関係により表したものである。
【図5】液晶表示部による表示領域の例を示す説明図で、図5(A)は2画面構成の場合、図5(B)はワイドタイプの1画面構成の場合、である。
【図6】本緊急情報告知システムによる緊急情報告知処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図7(A)は図6に示す緊急地震速報処理、図7(B)は図6に示す緊急警報放送処理、のそれぞれの流れを示すフローチャートである。
【図8】液晶表示部による表示例を示す説明図で、図8(A)は平時表示における運賃表示等の例、図8(B)は緊急時における緊急情報表示の例、である。
【図9】液晶表示部による表示例を示す説明図で、図9(A)は緊急(津波警報)時における緊急情報表示の例、図9(B)は緊急時におけるその他の表示例、である。
【図10】図1に示す行先表示装置による表示例を示す説明図で、図10(A)は平時表示における運賃表示等の例、図10(B)は緊急(津波警報)時における緊急情報表示の例、である。
【図11】本緊急情報告知システムによる他の緊急情報告知処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本緊急情報告知システムについて図を参照して説明する。
[緊急情報告知システム10の概要]
まず、本実施形態に係る緊急情報告知システム10(以下「本システム10」という。)の構成概要と本システム10を適用した路線バス100の例を図1および図2に基づいて説明する。図1には、本システム10の構成例を示すシステム構成図、図2には、屋根、前扉や中扉等の一部を省略して車内を表した路線バス100の例を示す説明図、がそれぞれ図示されている。
【0023】
図1および図2に示すように、本システム10は、運賃表示装置20、受信装置30、停車表示制御装置41、停車表示押しボタン43、行先表示装置51、乗降中表示装置53、音声合成装置60、増幅装置70、車内スピーカ71、車外スピーカ73等から構成されている。本システム10は、運賃表示装置20としての基本機能と、本システムに特有の緊急情報告知機能と、を備えている。
【0024】
基本機能は、整理券の複数の番号とこれらの番号に対応する複数の運賃とを一覧で路線バス100の乗客(以下「乗客」という。)が視認可能に運賃表示装置20によって運賃表示をするものである。運賃表示装置20による運賃表示の例については図4等を参照して後述するが、表示処理等の情報処理については、前述した特許文献1(特開2007−65622号公報)に詳細に説明されているので、説明を省略する。詳しくは、特許文献1を参照されたい。
【0025】
[路線バス100の既存設備機器の構成]
以下、本システムに特有の緊急情報告知機能について説明するが、その前に、本システム10を適用する路線バス100の既存の設備機器について説明する。
図2に示すように、まず路線バス100の内部においては、降車口100b付近に運賃箱107が、また乗車口100a付近に整理券発行機103およびICカードリーダ105が、それぞれ設置されている。前述した整理券はこの整理券発行機103から発行される。運転席100dの上方には、車内アナウンスを発する音声合成装置60が設置されており、これには増幅装置70や図2では省略されている車内スピーカが接続されている。
【0026】
客席100cの近傍の所々には、複数の停車表示押しボタン43が設けられており、ボタン43bが押されるとそれが乗務員(本実施形態では「運転士」を意味する。以下同じ。)にわかるように運転席100dの近傍に設けられた図略の表示灯が点灯し、また複数の停車表示押しボタン43の全ての表示部43aが点灯するように構成されている。また、降車口100bのドア開閉信号等をトリガとして、全点灯している停車表示押しボタン43の表示部43aを全消灯し得るようにも構成されている。
【0027】
これに対し、路線バス100の外部には、行先表示装置51や乗降中表示装置53が設けられている。具体的には、路線バス100の進行方向前後の上部と、乗車口100aおよび降車口100bの間の側方(進行方向左側)と、の合計3箇所に行先表示装置51が設置されている。さらに進行方向左側後部には乗降中表示装置53が設けられている。なお、路線バス100の乗務員(以下「乗務員」という。)によるアナウンスは、構成等は図示されていないが、運転席100d等のマイクによる音声入力を増幅装置70を介して増幅して路線バス100の車内や車外に任意に出力可能に構成されている。
【0028】
[運賃表示装置20の構成]
次に、運賃表示装置20の構成を図1,図2、図4および図5に基づいて説明する。なお、図4には、運賃表示装置20を構成する液晶表示部26による表示例を示す説明図が図示されている。また図5には、液晶表示部26による表示領域の例を示す説明図が図示されている。
【0029】
図2に示すように、路線バス100の車内前方で降車口100bの上方に設けられる運賃表示装置20は、図1に示すように、MPU21、システムメモリ23、データメモリ24、GPU25、液晶表示部26、I/Oインタフェース27等から構成されており、液晶表示部26を除いて薄箱状の筐体内に収容されている。
【0030】
図1に示すように、MPU21は、運賃表示装置20を制御する演算処理装置で、システムバスやデータバス等の信号バス22を介して、システムメモリ23、データメモリ24、GPU25やI/Oインタフェース27等と接続されている。
【0031】
システムメモリ23は、信号バス22に接続されている半導体記憶装置で、MPU21が使用する主記憶空間を構成するものである。本実施形態では、プログラム領域を担うROMとワーク領域やデータ領域に割り当てられるDRAMとにより構成されている。ROMには、システムプログラム(いわゆるOS)23a、運賃表示プログラム23b、緊急情報読出プログラム23c、緊急情報出力プログラム23d、画面表示制御プログラム23e、音声出力制御プログラム23f等が格納されている。
【0032】
データメモリ24も、信号バス22に接続されている半導体記憶装置で、例えば、電気的に消去可能な不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリ等のEEPROM)によりMPU21がアクセス可能な補助記憶空間を構成している。不揮発性メモリは、電源供給の有無にかかわらず記憶したデータを保持し続けるため、本実施形態では、運行情報データ24a、運賃情報データ24b、コンテンツデータ24c、緊急情報データ24d等の各種データを保存している。緊急情報データ24dは、後述する緊急メッセージの集まりである。なお、コンテンツデータとは、情報コンテンツを構成するデータのことをいう。情報コンテンツのことを、以下「コンテンツ」と表現する。
【0033】
GPU(Graphics Processing Unit)25は、画像データの処理を専門に行う画像処理装置で、本実施形態ではMPU21による画面表示制御プログラム23eの実行と協働してこれに伴う所定の画面表示制御を行う。このGPU25には、液晶表示部26に適合した仕様のデュアルポートメモリ(VRAM)25vが接続されており、液晶表示部26に出力される表示データの書き込みや読み出しが行われている。なお、液晶表示部26の画像表示を制御できるものであれば、GPU25に代えて、グラフィックアクセラレータやグラフィックコントローラ等を用いても良い。
【0034】
図4に示すように、液晶表示部26は、薄箱状の筐体のほぼ全面を覆うように構成されており、本実施形態では、左右の2画面表示を可能にする液晶ディスプレィ装置が用いられている。この液晶表示部26は、前述したデュアルポートメモリ25vを介してGPU25に接続されており、本実施形態では、デュアルポートメモリ25vによる表示領域を2分割して左側画面26aと右側画面26bとに割り当て表示制御している。
【0035】
例えば、運賃表示装置20の基本機能である運賃表示をする場合には、MPU21が運賃表示プログラム23bを実行することにより図4に示す整理券番号1〜24について金額を液晶表示部26に表示する。このため、GPU25では、MPU21による画面表示制御プログラム23eの実行と協働して、2つに分割される運賃表Da,Dbのうち、整理券番号1〜4,9〜12,17〜20について金額を表示する運賃表Daを左側画面26aに、また整理券番号5〜8,13〜16,21〜24について金額を表示する右側の運賃表Dbを右側画面26bに、それぞれ表示する。そして、左側の運賃表Daの上方には、次に停車する予定の停留所名として『岐阜市民体育館前』を左側画面26aに表示し、右側の運賃表Dbの上方には、次の停留所に停車する予定である旨の『つぎとまります。』等を右側画面26bに表示する。
【0036】
即ち、図5(A)に示すように、左側画面26aおよび右側画面26bには、それぞれ画面全体αa,αbではなく、画面上方の一部(以下「上部領域」という。)βa,βbを除いた範囲を運賃表示の表示領域として設定し、これらの上部領域βa,βbには他の情報を表示している。図4の例においては、左側画面26aの上部領域βaに『岐阜市民体育館前』(次に停車する予定の停留所名)と表示し、また右側画面26bの上部領域βbには『つぎとまります。』(次の停留所に停車する予定である旨)を表示しており、これらの表示制御は画面表示制御プログラム23eにより行われている。
【0037】
また、図4に示す表示例では具体例が図示されていないが、図5(A)に示すように、画面下方の一部(以下「下部領域」という。)γa,γbについても、他の情報を表示することができ、これらの表示制御も画面表示制御プログラム23eにより行われる。さらに、同図の右側画面26bに示すように、垂直線δvを境界として左右に2分割したり、水平線δhを境界に上下2分割した場合にも、分割された各表示領域(左右上下それぞれの表示領域)ごとに異なるコンテンツ(例えば、コマーシャル、天気予報等)を表示することができ、これらも画面表示制御プログラム23eにより表示制御が行われる。
【0038】
なお、図5(B)に示すように、液晶表示部26に代えて、ワイドタイプの1画面構成の液晶表示部26’が運賃表示装置20’を構成している場合には、液晶表示部26’は横長であることから、例えば、画面全体αに対して垂直線δvを中心に左右を2分割して、左右それぞれの表示領域に異なるコンテンツ(例えば、コマーシャル、天気予報等)を表示するように、画面表示制御プログラム23eにより表示制御を行うことができる。また、図5(A)に示す液晶表示部26と同様に、上部領域や下部領域、さらには水平線δhによる上下2分割しても良い。
【0039】
また、図5(B)に示すように、任意形状(矩形状、多角形状、円形状や楕円形状等)により閉じた領域εを形成し、領域εに領域εの周囲の領域とは異なるコンテンツを表示するように、画面表示制御プログラム23eにより表示制御をしても良い。さらに、このような領域εを全体画面α内で適宜移動させて表示(領域ε’)するように、画面表示制御プログラム23eにより表示制御を行うことができる。また、このような画像表示制御は、図5(A)に示す2画面構成の液晶表示部26の左右それぞれの両画面26a,26bについても、同様に適用することができる。
【0040】
ここで、図4に示す表示例に戻ると、またこの運賃表示プログラム23bでは、右側画面26bについては所定時間ごとに表示内容を変更して表示する。このため、例えば図4に示すように、画面表示制御プログラム23eによって、運賃表Db等を10秒間表示した後、携帯電話の使用を控える旨の表示Caを5秒間表示し、その後、乗り継ぎ情報の表示Cbを5秒間表示した後、さらにICカードのコマーシャル表示Ccを5秒間表示して、その後に運賃表Dbを10秒間再度表示する、等々、複数のコンテンツの表示時期をそれぞれ異なるタイミングに設定してそれを繰り返すことで(Db→Ca→Cb→Cc→Db→Cd→Ce→Cf→Db→Ca→Cb→…)、同じ右側画面26bで様々なコンテンツを乗客に見せることができる。
【0041】
このように、液晶表示部26は左右2画面で構成されていることから、左側画面26aを運賃表Daで固定して表示する一方で(左側画面26aを固定画面)、所定時間ごとに連続して変わるコンテンツCa〜Cfを所定の時間周期で挟んで運賃表Dbを右側画面26bに表示するように(右側画面26bを変動画面)、GPU25による表示制御が行われる。ここで表示される各コンテンツCa〜Cfは、データメモリ24に格納されているコンテンツデータ24cで、運賃表示プログラム23bにより、適宜、データメモリ24から読み出される。なお、運賃表示装置20の設置位置や、固定画面と変動画面を左右逆(左側画面26aを変動画面、右側画面26bを固定画面)に設定しても良い。
【0042】
また、本実施形態では、後述するように、受信装置30から送出されるコマンドを受けて液晶表示部26に表示する緊急メッセージ(所定メッセージ)についても、画面表示制御プログラム23eによって画面表示制御が行われる。
【0043】
例えば、液晶表示部26の右側画面26bに所定時間ごとに表示されるコンテンツCa〜Cfに代えて、後述するような緊急メッセージの内容を表示するように画面表示制御が行われる。また、図5(A)に示すβa,βbやγa,γbの範囲、または図5(B)に示すεやε’の範囲のように、左側画面26aや右側画面26bの一部に緊急メッセージの内容を表示するように画面表示制御が行われる。これにより、運賃表Da,Db等の運賃表示と緊急メッセージとのいずれも液晶表示部26に表示されるため、乗客に緊急メッセージの内容を告知することができる。なお、このような表示例は、特許請求の範囲に記載の「運賃表示の一覧表示時期と異なる時期に表示する」に相当し得るものである。
【0044】
また、通常は、整理券番号の若い(小さい)番号から金額表示が始まることから、例えば、整理券番号の前半1〜24を左側の運賃表Da’、整理券番号の後半25〜48を右側の運賃表Db’、というように、運賃表Da,Dbの構成を変更する。このような運賃表Da’,Db’においては、始発駅を出発してから経由した停留所数が24以下の路線バス100等、運賃表Db’の整理券番号25〜48に対応する金額を表示する必要がない(空白)場合には、その運賃表Db’に代えて、緊急メッセージの内容を固定的に表示するように画面表示制御が行われる。これにより、液晶表示部26の右側画面26bには運賃表Dbに代えて、緊急メッセージが常に表示されるため、乗客が必要とする運賃表示には影響を与えることなく、緊急メッセージを乗客に告知することができる。
【0045】
さらに、緊急メッセージとして表示される内容が、図形やイラストで表現される所定のロゴマークやピクトグラムの場合には(図8(B)参照)、運賃表Da,Dbのうちで整理券番号に対応する料金の表示がないものの当該整理券番号を含めた表示枠の範囲(例えば、図4に示す整理番号13〜16,21〜24)に、このようなロゴマーク等を表示するように画面表示制御が行われる。当該表示枠の範囲(表示領域)の大きさが、ロゴマーク等の表示サイズよりも小さい場合には、その表示領域に合わせて縮小等の変形させたロゴマーク等を表示する。これにより、運賃表Da,Db等の運賃表示に影響を与えることなく、緊急メッセージを表示することができる。なお、このような表示例は、特許請求の範囲に記載の「運賃表示の一覧で金額表示のない表示領域に代えて表示する」に相当し得るものである。
【0046】
また、常時表示される液晶表示部26の左側画面26aの全体に収まるように運賃表Da,Db等の構成を変更した運賃表示を左側画面26aに表示し、運賃表示を行わない右側画面26bに緊急メッセージを表示するように画面表示制御が行われる。これにより、運賃表示のすべてが常に左側画面26aに表示され、また右側画面26bには緊急メッセージが継続的に表示されるため、運賃表Da,Db等の運賃表示に影響を与えることなく、緊急メッセージを表示することができる。
【0047】
また、運賃表Da,Db等の運賃表示を縮小して表示し、それにより空いた表示領域に緊急メッセージを表示するように画面表示制御が行われる。例えば、図5(A)の右側画面26bに示すように、垂直線δvと水平線δhとにより4分割される画面全体αbのうちの一部(例えば左上の領域)を、縮小した運賃表Da,Dbの表示領域とし、その残部(例えば左下と右上下の領域)を緊急メッセージの表示領域とする。これにより、運賃表Da,Db等の運賃表示は小さくなるものの、運賃表示と緊急メッセージのいずれも液晶表示部26に表示されるため、運賃表Da,Db等の運賃表示に影響を与えることなく、緊急メッセージを表示することができる。なお、このような表示例は、特許請求の範囲に記載の「運賃表示の一覧表示領域を縮小して空いた表示領域に表示する」に相当し得るものである。
【0048】
図1に示すように、I/Oインタフェース27は、受信装置30、停車表示制御装置41、行先表示装置51、乗降中表示装置53、音声合成装置60、増幅装置70等の入出力装置とMPU21との間で、シリアル(USB規格等)またはパラレル(IEEE1284規格等)のデータのやり取りを仲介する入出力インタフェース装置で、信号バス22に接続されている。また、図示されていないが、I/Oインタフェース27には、USB規格によるシリアル接続を介してキーボードやマウス等の入力装置を接続することによって、運賃表示装置20のハードウェア設定やソフトウェア設定を可能にしている。
【0049】
このように運賃表示装置20を構成することで、MPU21は、システムプログラム23aの管理の下で、次に説明する受信装置30から送出されるコマンドを受けて、アプリケーションプログラムとしての運賃表示プログラム23b、緊急情報読出プログラム23c、緊急情報出力プログラム23d、画面表示制御プログラム23eや音声出力制御プログラム23fを実行している。
【0050】
なお、本実施形態では、MPU21やシステムメモリ23等をそれぞれ個別の半導体デバイスで構成しているが、特定用途向けIC(ASIC)のように、ワンチップICやハイブリッドIC等で構成しても良い。また、システムメモリ23のROMやデータメモリ24を磁気ディスク記憶装置(HDD)に置き換えても良い。
【0051】
[受信装置30の構成]
続いて、受信装置30の構成を図1〜図3に基づいて説明する。なお、図3には、受信装置30の外観構成の一例を示す説明図が図示されている。
図2および図3に示すように、受信装置30は、路線バス100の運転席100d近傍で乗務員が容易に手の届く範囲内に設けられている。この受信装置30は、矩形箱状のケーシング30aに操作パネル30bや表示部32等を有しており、図1に示すように、制御部31、表示部32、操作部33、設定部34、受信部35、増幅部37、内蔵スピーカ38、外部アンテナ39等から構成されている。
【0052】
制御部31は、受信装置30に関わる制御全般を行う情報処理装置で、例えば、当該制御に必要なメモリ(EEPROM、DRAM等)や入出力インタフェース等を備えたワンチップマイコンにより実現されている。またこの入出力インタフェースには、表示部32、操作部33、設定部34、受信部35および増幅部37がそれぞれ接続されている。本実施形態では、制御部31のEEPROMには、緊急情報告知プログラム31aが格納されており、また所定のハードウェア設定領域には、操作部33および設定部34によって書き換え可能に所定の設定情報が記憶されている。後述するように、この緊急情報告知プログラム31aを制御部31が実行することによって、本システムに特有の緊急情報告知機能が実現される。
【0053】
図1および図3に示すように、表示部32は、例えば、ドット表示タイプの液晶表示装置であり、制御部31に接続されて受信装置30の動作状態や設定状態を表示可能に構成されている。動作状態としては、例えば、受信部35が緊急地震速報を受信した際に表示される『緊急地震速報受信中』や受信部35が緊急警報放送を受信した際に表示される『緊急警報放送受信中』、また受信テスト時に表示される『受信テスト中』等がある。また、設定状態の例としては、受信部35によるり受信周波数の表示『○○.○MHz』(○は数字)や現在選局している放送局の名称や略称等の表示が挙げられる。
【0054】
操作部33は、複数の押しボタンスイッチ(以下「スイッチ」という。)の操作入力に対応した入力情報を制御部31に出力するもので、例えば、図3に示すように、表示部32の近傍に位置する操作パネル30b内の7箇所に設けられる各スイッチ33a〜33gと、その状態保持回路等から構成されている。なお、本実施形態では、これらのスイッチ33a〜33gは、乗務員等により操作されることを想定している。
【0055】
スイッチ33a,33bは、受信部35による受信周波数を設定するために操作するチューニングスイッチで、スイッチ33aを押すことにより周波数が上がり、スイッチ33bを押すことにより周波数が下がるように、制御部31を介して受信部35の周波数制御を可能にしている。このスイッチ33a,33bにより操作されて設定される周波数は、前述したように表示部32に表示される。これにより設定された周波数は、制御部31から受信部35に対して選局データとして出力される。
【0056】
本実施形態では、複数の受信周波数を設定可能に構成しており、例えば、プライマリ局とセカンダリ局の2つの放送局の周波数を設定することができる。設定された2つの周波数は、優先度の高低によりプライマリ局とセカンダリ局とを区別して制御部31から受信部35に対して選局データまたはそれに付随して出力される。
【0057】
例えば、優先度の高いプライマリ局(第1放送局)に緊急地震速報を受信するための周波数(例えば、民間放送局の80.0MHz)を設定し、優先度の低いセカンダリ局(第2放送局)に緊急警報放送を受信するための周波数(例えば、日本放送協会の83.6MHz)を設定することで、後述するように、緊急地震速報を最初に受信した後、緊急警報放送を受信するように、受信の順番を設定することが可能となる。
【0058】
なお、日本放送協会により放送される緊急地震速報が、震源の位置が日本国内のいずれの地域であっても日本国内のすべての地域や地方に放送される場合には、緊急地震速報の周波数に同協会の放送局の周波数を設定すると、その地震による影響が路線バス100の走行経路が含まれる地域や地方には及ぶことなく、緊急地震速報を受けた緊急時の対応をとる必要がないときでも、受信装置30が緊急地震速報を受信する。
【0059】
これに対して、一般的には、民間放送局は、放送エリアが一地方に限られていることから(例えば、岐阜エフエム放送(岐阜エフエム放送株式会社)の場合は岐阜県を中心とした地域)、このような場合には、路線バス100の走行経路が含まれる地域または地方を放送エリアの中心とする民間放送局の周波数を緊急地震速報を受信するための周波数に設定する。これにより、受信装置30が不要な緊急地震速報を受信してしまう問題を解決することができる。
【0060】
また、緊急警報放送については、日本放送協会が災害対策基本法および大規模地震対策特別措置法における「指定公共機関」に指定されいるため、地震が発生した地域や地方に関係なく、同協会は必ず緊急警報放送を放送する。このため、プライマリ局で設定した民間放送局が、緊急警報放送を放送していない場合や放送するか否かが明らかではない場合には、緊急地震速報を受信するための周波数をセカンダリ局として日本放送協会の周波数に設定することで、受信装置30が緊急警報放送を受信する可能性を高められる。
【0061】
スイッチ33cは、選局されている周波数の受信状態を確認するために操作するテストスイッチで、通常は緊急地震速報や緊急警報放送を受信しない限り内蔵スピーカ38に出力しない放送受信音(音声出力)をこのスイッチ33cを押すことによって内蔵スピーカ38に出力するように、制御部31を介して増幅部37の制御を可能にしている。受信周波数が複数設定されている場合には、スイッチ33cを複数回押すことによって、設定された順番に、それぞれの周波数に対応する放送の受信音が出力される。
【0062】
スイッチ33d〜33gは、前述した運賃表示装置20の液晶表示部26に、所定の緊急メッセージ(所定メッセージ)を表示するために操作する緊急メッセージの選択スイッチで、各スイッチ33d〜33gを押すことによって、後述するように、各スイッチ33d〜33gに対応したメッセージ出力コマンド(所定メッセージの識別情報)が制御部31から運賃表示装置20に送出される。
【0063】
なお、スイッチ33d〜33gが設けられる操作パネル30bのそれぞれのメッセージ枠30b’には、各スイッチ33d〜33gに対応する緊急メッセージの名称(メッセージ名称)が予め表示されている。例えば、スイッチ33dのメッセージ枠30b’には『地震速報発表時』と表示する。同様に、例えば、スイッチ33eのメッセージ枠30b’には『津波警報発表時(1)』と表示し、またスイッチ33fのメッセージ枠30b’には『津波警報発表時(2)』と表示する。
【0064】
これにより、スイッチ33dを押すと、例えば、緊急地震速報に関連した表示として、図8(B)に示すようなナマズのロゴマーク(緊急地震速報利用者協議会制定)等を液晶表示部26に表示する場合には、それを乗務員に認識させることができる。また、例えば、津波警報を伝える緊急警報放送に関連した表示として、スイッチ33eを押すと、図9(A)に示すピクトグラム等を車内の運賃表示装置20に表示し、スイッチ33fを押すと、図10(B)に示す警報情報受信メッセージEdを車外の行先表示装置51に表示する場合には、これらの関連付けを乗務員に認識させることができる。
【0065】
また、スイッチ33d〜33gは、その操作によって、乗客に向けた緊急メッセージを運賃表示装置20に表示可能にするものである。そのため、後述するように、受信部35が緊急地震速報や緊急警報放送を受信している間または受信後の所定期間に限って、操作入力を可能にして誤操作を防止している(図6に示す「選択スイッチ入力禁止処理」および「選択スイッチ入力許可処理」)。
【0066】
設定部34は、鍵穴34aに合致する鍵がこの鍵穴34aに挿入されて解錠操作された場合に、その解錠情報を制御部31に出力して制御部31による受信周波数の設定操作やその他のハードウェアの設定操作を可能にするもので、鍵穴34aに鍵が挿入されていない場合や鍵が挿入されていても解錠されていない場合(施錠状態の場合)には、解錠情報を出力することなく、設定操作をロックする。これにより、誤操作による設定変更の防止可能にしている。
【0067】
受信部35は、日本放送協会や民間放送局から送信される緊急地震速報の音声情報を含む放送波を受信可能に構成されている。本実施形態では、アンテナ入力から入った電波のうち、所定の周波数帯(例えば76.0MHz〜90.0MHz)内において予め設定された受信周波数の電波を受信して音声信号(音声信号は、いわゆる「オーディオ信号」のことである、以下同じ。)を復調して出力可能な受信回路と、放送局が緊急地震速報を放送する場合に放送の冒頭に付加する所定のチャイム音をこの音声信号から検出可能なチャイム音検出回路と、放送局が緊急警報放送を放送する場合に放送の冒頭に付加する第1種開始信号および第2種開始信号をこの音声信号から検出可能な開始信号検出回路と、これら2つの検出回路から出力される検出結果を検出情報として制御部31に出力する検出情報出力回路と、から構成されている。
【0068】
チャイム音検出回路は、所定のチャイム音が検出された後、例えば30秒や1分等の所定時間を経過するまでは、緊急警報放送を受信している旨のフラグを検出情報出力回路にほぼ連続して出力する。また、開始信号検出回路は、第1種開始信号および第2種開始信号のいずれかを検出した後、終了信号を検出するまでは、緊急警報放送を受信している旨で第1種、第2種を区別可能なフラグを検出情報出力回路にほぼ連続して出力する。
【0069】
検出情報出力回路は、チャイム音検出回路や開始信号検出回路から入力されたフラグに基づいて、現在受信している警報情報が緊急地震速報、緊急警報放送(第1種)および緊急警報放送(第2種)のいずれによるものであるかを明示した検出情報を生成して制御部31に出力する。なお、この検出情報は、受信中、常時、制御部31に出力される。
【0070】
このように検出情報出力回路から制御部31に出力される検出情報は、後述するように、制御部31による緊急情報告知プログラム31a(緊急情報告知処理)によって、現在受信している放送が緊急地震速報に該当するのか、または緊急警報放送に該当するのか等を判断するために用いられる。
【0071】
なお、本実施形態では、緊急地震速報および緊急警報放送のいずれかを受信した場合と、前述した受信状態を確認するスイッチ33c(テストスイッチ)がオンされた場合と、に限って、次に説明するように増幅部37を機能させる鳴動指示情報が制御部31から増幅部37に出力される。
【0072】
また、本実施形態では、受信部35から出力される音声信号は、制御部31の他に、増幅部37と受信装置30の外部にも出力される(図1に示す*印への出力)。増幅部37に出力される音声信号は、乗務員が聞くためのもので、また受信装置30の外部に出力される音声信号は、後述する増幅装置70を介して乗客や車外に向けた音声アナウンスのためのものである。
【0073】
受信部35により受信される周波数は、前述のように、スイッチ33a,33bによる操作によって設定されたもので、制御部31から出力される選局データによって受信周波数が設定される。本実施形態では、プライマリ局とセカンダリ局の2つの放送局の周波数がスイッチ33a,33bによる操作によって設定されているので、先の例では、制御部31から入力される選局データによる周波数がプライマリ局のものであれば、80.0MHzが設定され、またセカンダリ局のものであれば、83.6MHzが設定される。
【0074】
増幅部37は、受信部35から出力された音声信号を所定利得で増幅して内蔵スピーカ38を鳴動させ得るオーディオアンプで、制御部31から鳴動指示情報が入力されることで機能する。この増幅部37により増幅された放送受信音(音声出力)は、図3に示すように、ケーシング30aに形成されたスピーカ穴30cを介して受信装置30から外部に出力される。またこのスピーカ穴30cの近傍には、回動可能なボリュームツマミ37aが設けられており、この回動位置によって外部から音量調節(利得調整)可能に構成されている。これにより、乗務員は、受信装置30から出力される放送等を自分が聞き易い音量で聞くことができる。
【0075】
外部アンテナ39は、日本放送協会や民間放送局から送信される緊急地震速報の音声情報を含む放送や緊急警報放送の電波を捉えることが可能に構成された空中線で、前述した受信部35のアンテナ入力に接続されている。この外部アンテナ39は、通常、路線バス100の外部に設置されているが、当該車両内に設けても良い。また、受信部35の受信周波数によっては、外部アンテナ39を受信装置30の外部に設けることなく、受信装置30に内蔵するように構成しても良い。
【0076】
[停車表示制御装置41、行先表示装置51等の構成]
次に、停車表示制御装置41、停車表示押しボタン43、行先表示装置51、乗降中表示装置53、音声合成装置60、増幅装置70等の構成概要を図1および図2に基づいて簡単に説明する。
【0077】
図1および図2に示すように停車表示制御装置41は、路線バス100内の複数箇所に設けられている停車表示押しボタン43の点灯表示制御を行う制御装置である。前述したように、停車表示押しボタン43は、そのボタン43bが押されると、次の停留所に路線バス100が停車する予定である旨を乗客に告知するため、複数の停車表示押しボタン43の全ての表示部43aが点灯する。この点灯制御は、停車表示制御装置41により行われている。
【0078】
本実施形態では、このように機能する停車表示制御装置41に対して、さらに、複数の停車表示押しボタン43の全ての表示部43aが所定周期(乗客が点滅状態を視認可能な周期で、例えば0.5秒〜1.5秒の間隔)でほぼ同時期に点滅するように点滅制御可能に構成する。また、運賃表示装置20から停車表示制御装置41に対してこのような点滅制御の開始を指示する点滅制御情報を出力し得るように運賃表示装置20を構成する。これにより、後述する停車表示灯点滅処理によって、複数の停車表示押しボタン43の全ての表示部43aをほぼ同時に点滅させることが可能となる。
【0079】
行先表示装置51および乗降中表示装置53は、例えば、赤、橙、緑の3色で発光可能な多色発光ダイオードをマトリックス状に配置して構成されるLED表示装置で、外部から入力される文字コードや制御コード等に基づいてドット表現可能な文字や図形を表示可能に構成されている。なお、文字コードはテキストデータに含まれる概念である。
【0080】
行先表示装置51は、路線バス100の行き先名称や、主な経由停留所名称を表示するためのものである。また乗降中表示装置53は、路線バス100が停留所に停車中に表示されるもので、当該路線バス100に乗車中または降車中のお客が存在する旨を表示して周囲車両の運転者に注意を促すためのものである。
【0081】
本実施形態では、行先表示装置51や乗降中表示装置53が、前述したように、路線バス100の外部の前方や後方、あるいは乗車口100aと降車口100bとの間の側方に設けられていることから、後述するように、運賃表示装置20による速報情報出力処理(図7;S205)や警報情報出力処理(図7;S305)によって、緊急メッセージを構成する複数の文字コードを、運賃表示装置20から行先表示装置51や乗降中表示装置53に出力することで、路線バス100の車外を走行中もしくは停車中の車両の乗員や歩行者に当該緊急メッセージを視覚的に認識可能にして告知することができる。
【0082】
音声合成装置60は、前述したように、運転席100dの上方に設置されて合成音声により車内アナウンス等の音声信号を発して増幅装置70に出力するもので、予め記憶されているメッセージの他に、例えば、外部から入力されるテキストデータ(文字コード)に基づいて合成音声を生成し得るとともにこの合成した音声信号を外部に出力可能に構成されている。
【0083】
本実施形態では、増幅装置70に接続されて車内スピーカ71や車外スピーカ73に音声アナウンスを出力可能に構成されている。このため、後述する運賃表示装置20による音声出力制御処理(図7;S209,S309)によって、緊急メッセージを構成する複数の文字コードを、運賃表示装置20から音声合成装置60に出力することで、次に説明する増幅装置70等と協働して、路線バス100の車外を走行中もしくは停車中の車両の乗員や歩行者に当該緊急メッセージを聴覚的に認識可能に告知することができる。
【0084】
増幅装置70は、前述したように、運転席100d等のマイクから入力される音声信号を所定利得で増幅して車内スピーカ71や車外スピーカ73を鳴動させ得るオーディオアンプで、運転席100dから図略の切り換えスイッチにより出力先を車内スピーカ71または車外スピーカ73に切り換えられ得るとともに、運賃表示装置20から出力される切換制御コマンドによって、出力先を車外スピーカ73に切り換えられるよう構成されている。
【0085】
なお、本実施形態では、運転席100dの切り換えスイッチは、通常時の出力先として車内スピーカ71を選択しているため(デフォルト設定が車内スピーカ71)、出力先を車外スピーカ73に切り換える切換制御コマンドが運賃表示装置20から入力されない限り、自動的に車内スピーカ71が選択されて路線バス100の車内にのみに音声出力される。
【0086】
また、本実施形態では、受信部35から出力される音声信号は増幅装置70にも出力されるため、受信装置30で受信した放送による受信音や音声アナウンスも音声信号として増幅装置70に入力される(図1に示す*印からの入力)。これにより、運賃表示装置20から出力される切換制御コマンドによって、受信装置30から出力される受信音や音声アナウンスを車内スピーカ71や車外スピーカ73から出力することができる。
【0087】
ここで、運賃表示装置20のシステムメモリ23に格納されている、運賃表示プログラム23b、緊急情報読出プログラム23c、緊急情報出力プログラム23d、画面表示制御プログラム23e、音声出力制御プログラム23fや、受信装置30に格納されている緊急情報告知プログラム31a等のソフトウェアの機能概要を説明する。
【0088】
運賃表示プログラム23bは、運賃表示装置20の基本機能である運賃表示の一覧を、データメモリ24に格納された運行情報データ24aおよび運賃情報データ24bに基づいて生成した後、GPU25を介して液晶表示部26に表示可能な画像データをGPU25に出力するものである。また、図4を参照して説明したように、このような運賃表示の一覧の他に、データメモリ24から読み出したコンテンツデータ24c(コンテンツCa〜Cf)も、GPU25を介して液晶表示部26に表示可能な画像データをGPU25に出力する。なお、この運賃表示プログラム23bは、緊急情報読出プログラム23c等とは別に、例えば、路線バス100の運行路線の選択操作時に自動的に起動される。
【0089】
緊急情報読出プログラム23cは、データメモリ24に格納された緊急情報データ24dをデータメモリ24から読み出すもので、後述する緊急情報告知プログラム31aにより制御部31から運賃表示装置20に送出されるメッセージ出力コマンドよって起動されてMPU21により実行される。
【0090】
緊急情報出力プログラム23dも、MPU21により実行されるもので、緊急情報読出プログラム23cから読み出された緊急情報データ24dを、液晶表示部26、行先表示装置51、乗降中表示装置53や増幅装置70等に出力するために、出力先の出力機器に適合した出力データを生成するものである。
【0091】
画面表示制御プログラム23eも、MPU21により実行されるもので、緊急情報出力プログラム23dにより生成された出力データ(緊急メッセージ)のうち、液晶表示部26、行先表示装置51や乗降中表示装置53等の表示装置に出力されるものを、画像データをGPU25を介して制御可能にGPU25に出力したり、また行先表示装置51や乗降中表示装置53に対して出力するものである。
【0092】
音声出力制御プログラム23fも、MPU21により実行されるもので、緊急情報出力プログラム23dに生成された出力データ(緊急メッセージ)のうち、音声合成装置60や増幅装置70を介して車内スピーカ71や車外スピーカ73等の音響機器に出力されるものを、音声合成装置60等に対して出力し、また増幅装置70の切り換え制御を行うものである。
【0093】
緊急情報告知プログラム31aは、受信装置30の制御部31により実行されることにより緊急情報告知処理を行うもので、本システム10による緊急情報告知機能を実現する。このプログラムは、受信装置30の電源投入とともに起動される。
【0094】
このように運賃表示装置20や受信装置30等からなる本システム10を構成することにより、本システム10は、図6および図7に示すような各制御処理が可能となって、車内スピーカ71等による緊急メッセージの音声アナウンスや、図5〜図10に示すような液晶表示部26等による緊急メッセージの表示が行われる。
【0095】
なお、図6には、運賃表示装置20による緊急情報告知処理の流れを示すフローチャート、図7には、緊急地震速報処理(図7(A))および緊急警報放送処理(図7(B))の流れを示すフローチャート、がそれぞれ図示されている。図8には、液晶表示部26による表示例を示す説明図、図9には、液晶表示部26による表示例を示す説明図、図10には、行先表示装置51による表示例を示す説明図、がそれぞれ図示されている。
【0096】
受信装置30の電源がオンされることにより、制御部31により緊急情報告知プログラム31aが起動されて緊急情報告知処理が開始される。なお、本実施形態では、受信装置30の電源がオンされる場合には、運賃表示装置20は既に起動されており、これから説明する受信装置30から送出されるコマンド待ちの待機状態にあることを想定している。
【0097】
図6に示すように、まずステップS100により所定の初期化処理が行われる。この初期化処理では、例えば、後述する各タイマー用のカウンタのリセットや所定のフラグがクリアされる。また本実施形態では、制御部31から受信部35に対して出力される選局データを、優先度の高いプライマリ局(例えば民間放送局)に設定して受信部35に出力した後、受信部35の受信周波数が安定するのに要する所定時間の経過まで待つ。
【0098】
次のステップS101では、選択スイッチ入力禁止処理が行われる。即ち、スイッチ33d〜33gの操作により、いずれかのスイッチのオン情報が操作部33から入力されてもその入力を禁止や無効にするものである。具体的には、操作部33からの入力を受け付けスイッチ33d〜33gにそれぞれに対応する入力ポートを読み出すときにマスクビットを立てる等してソフトウェア的にマスクしたり、対応する入力ポートの情報を論理ゲート回路等で読み出せないようにハードウェア的に信号制御をする等である。
【0099】
これにより、この処理以降は、選択スイッチ入力許可処理が行われるまで、スイッチ33d〜33gの操作入力が無視されてしまうため、誤ってスイッチ33d等を押した場合でも、各スイッチ33d〜33gに対応したメッセージ出力コマンドが運賃表示装置20に送出されることはなく、誤操作を防止することができる。
【0100】
続くステップS103により緊急地震速報を受信しているか否かの判断処理が行われる。この処理では、受信部35から出力される検出情報に基づいて、現在、受信部35が緊急地震速報を受信しているか否か判断する。緊急地震速報を受信していると判断した場合には(S103;Yes)、ステップS105による選択スイッチ入力許可処理に移行し、緊急地震速報を受信していないと判断した場合には(S103;No)、再度、ステップS103を行い、プライマリ局(本実施形態では民間放送局)によって緊急地震速報を受信するまでステップS103を繰り返して待つ。
【0101】
次のステップS105では、選択スイッチ入力許可処理が行われる。即ち、ステップS101によって無効にされているスイッチ33d〜33gのオン情報を有効にするものである。これにより、スイッチ33d〜33gの操作によってそのオン情報が操作部33から入力されると、それに基づいた情報処理が行われる。またこのステップS105では、ステップS100によりリセットしたタイマー用のカウンタをスタートさせる。このカウンタは、緊急地震速報を受信し始めてからの時間が所定時間を超えているか否かを判断するために用いられる。
【0102】
続くステップS106では、音声出力制御処理が行われる。この処理は、現在、緊急地震速報を受信している受信部35から出力される音声信号を、増幅部37と増幅装置70とに出力するために行うもので、増幅部37を機能させる鳴動指示情報を制御部31から増幅部37に出力する。また、増幅装置70に対しては、受信部35から出力される音声信号を直接、入力する。
【0103】
これにより、受信部35から音声信号が入力された増幅部37および増幅装置70は、所定利得で音声信号を増幅して緊急地震速報による放送受信音を内蔵スピーカ38や車内スピーカ71から出力する。このため、運転席100dの乗務員は内蔵スピーカ38から、また客席100cの乗客は車内スピーカ71から、それぞれ出力される放送受信音によって、緊急地震速報の発表とその内容を耳からの情報として聴覚的に認識することが可能となる。
【0104】
ステップS107では、選択スイッチ入力検出処理が行われる。ステップS106による音声出力制御処理により、乗務員は、緊急地震速報の内容を確認し得る状況にある。このため、乗務員による選択スイッチの操作がされている可能性があることから、選択スイッチが押されてオンされたか否かと、オンされている場合にはどの選択スイッチがオンされたか、をこの処理により検出する。
【0105】
具体的には、操作部33から入力される入力情報に基づいて、スイッチ33d〜33gのうち、いずれのスイッチが操作されたのかを検出する。例えば、スイッチ33dが押されていた場合には、スイッチ33dの入力情報が検出される。この場合には、乗務員は、緊急地震速報を受信したことに起因して、前述したようなナマズのロゴマーク等を液晶表示部26に表示させ、乗客にその旨を伝えることを意図して選択スイッチを操作したことがわかる。
【0106】
続くステップS108では、ステップS107による検出結果に基づいて、選択スイッチの入力があるか否かの判断処理が行われる。選択スイッチの入力があると判断した場合には(S108;Yes)、運賃表示装置20に対してメッセージ出力コマンドを送出するとともにステップS200に処理を移行し、選択スイッチの入力がないと判断した場合には(S108;No)、ステップS109に処理を移行する。
【0107】
ステップS109では、緊急地震速報を受信し始めてから所定時間を経過しているか否かの判断処理が行われる。即ち、通常、緊急地震速報には、緊急警報放送のような終了信号が付加されていないことから、ステップS103による緊急地震速報の受信から一定時間以上経過しているときには、緊急地震速報の放送が終了している可能性がある。このため、前述したように、ステップS105によりカウントを開始したカウンタの値に基づいて、緊急警報放送を受信し始めてからの時間が所定時間を超えているか否かを判断し、所定時間を経過している場合には(S109;Yes)、選択スイッチの入力が未だなくてもステップS111に処理を移行して、次に予想される緊急警報放送の準備をする。なお、ここでの「所定時間」は、緊急地震速報の受信からS波による主要動が到達し得る時間が数秒から数十秒間に想定されていることから、例えば30秒〜1分に設定される。
【0108】
これに対して、ステップS109により、まだ所定時間を経過していないと判断した場合には(S109;No)、緊急地震速報を受信している可能性が高いので、ステップS107に戻って、再度、選択スイッチ入力検出処理を行う。つまり、緊急地震速報の放送を受信し続けている限り、ステップS107,S108,S109を繰り返して、選択スイッチの入力を待つ。
【0109】
なお、緊急地震速報についても、放送の終了を示すチャイム音や終了信号等が放送に付加されている場合には、後述する緊急警報放送の場合と同様に、緊急地震速報の受信が終了しているか否か、または緊急地震速報を受信し始めてから所定時間を経過しているか否かの判断処理を行うようにしても良い(S119)。
【0110】
ステップS200では、緊急地震速報処理が行われる。この処理は、受信装置30が緊急地震速報を受信した場合に受信装置30から送出されるメッセージ出力コマンドを受けた運賃表示装置20において行われる。このため、運賃表示装置20のMPU21により行われる各処理の詳細が図7(A)に図示され、また液晶表示部26による表示例の説明図が図8に図示されているので、ここからは図7(A)および図8を参照しながら説明する。
【0111】
図7(A)に示すように、緊急地震速報処理では、まずステップS201により停車表示灯点滅処理が行われる。この処理は、運賃表示装置20から停車表示制御装置41に対して点滅制御情報を出力するもので、これによって、停車表示制御装置41による点滅制御が開始されて、客席の近傍に設けられた複数の停車表示押しボタン43の全ての表示部43aが乗客の視認可能な周期で点滅する。
【0112】
すると、このような表示部43aの点滅を目撃した乗客の多くは、通常は点滅することのない停車表示押しボタン43の異常に気がつくことから、乗務員の様子をうかがうため、運転席100dの方向、つまり路線バス100の前方に注意を払う。その結果、乗客の視線が運賃表示装置20の液晶表示部26の方向にも向くことになるので、液晶表示部26の両画面26a,26bに注目を集めるキッカケ(切っ掛け)作りをすることができる。
【0113】
次のステップS203では、速報情報読出処理が行われる。この処理は、乗務員によって操作された選択スイッチに対応する緊急メッセージをデータメモリ24の緊急情報データ24dから選択して読み出すもので、前述したステップS107により検出された入力情報に基づいて緊急情報データ24dを検索し、入力情報に関連づけられた緊急メッセージのデータを読み出す。なお、スイッチ33d〜33gの選択スイッチと緊急メッセージとの対応付けは、スイッチ33d〜33gに対応したメッセージ出力コマンド(所定メッセージの識別情報)によりなされているため、これに基づいて緊急メッセージが検索されて読み出される。
【0114】
ここで読み出されるデータには、一般的なファイル形式のテキストデータの他に、画像データ(jpg,avi,mpg,swf等の形式)や音声データ(mp3,wav,wma等の形式)等の各種データ形式のものが含まれる。また、緊急メッセージには、当該緊急メッセージの出力先を指定する出力先情報も付加されている。なお、この処理は、緊急情報読出プログラム23cを実行することにより行われる。
【0115】
先の例では、入力情報からスイッチ33dに関連づけられた緊急情報データ24dを検索して所定の緊急メッセージをデータメモリ24から読み出すことで、図8(B)に示すように、緊急地震速報が受信されたことをイメージさせるナマズのロゴマークEaを表示可能な画像データと、緊急地震速報を受信したため路線バス100を停車させる旨の文字とバスの停車をイメージさせるピクトグラムEbを表示可能な画像データとの2画面仕様の画像データが取得される。また、この2画面仕様の画像データには、出力機器として、2画面構成の液晶表示部26を指定する出力先情報が付加されている。
【0116】
続くステップS205では、速報情報出力処理が行われる。この処理は、ステップS203により読み出された緊急メッセージを、液晶表示部26、行先表示装置51、乗降中表示装置53や増幅装置70等に出力するため、出力先の出力機器に適合した出力データを生成するものである。先の例では、緊急メッセージとして、液晶表示部26を出力機器に指定する出力先情報が付加されていることから、この画像データを2画面構成の液晶表示部26に出力可能にGPU25に対する制御情報等を付加した出力データが生成される。この処理は、緊急情報出力プログラム23dを実行することにより行われる。
【0117】
なお、データメモリ24から読み出された緊急メッセージがテキストデータである場合には、行先表示装置51、乗降中表示装置53および音声合成装置60のうちのいずれか1もしくは2または全てが出力先となり、また音声データである場合には、車内スピーカ71と車外スピーカ73のいずれか一方または双方を指定した増幅装置70が出力先となる。このようにシステム構成上、出力先の出力機器が複数存在する場合には、複数の出力機器のうちいずれの出力機器に出力するのか、または全ての出力機器に出力するのか等は、緊急メッセージに付加された出力先情報に基づいて決定される。
【0118】
続くステップS207では、画面表示制御処理が行われる。この処理は、ステップS205により生成された出力データ(緊急メッセージ)のうち、液晶表示部26、行先表示装置51や乗降中表示装置53等の表示装置に出力されるものを、画像データをGPU25を介して制御可能にGPU25に出力したり、また行先表示装置51や乗降中表示装置53に対して出力するものである。出力先情報による出力先が、液晶表示部26、行先表示装置51や乗降中表示装置53等の表示装置でない場合には、このステップS207による処理をスキップして続くステップS209に処理を移行する。なお、この処理は、画面表示制御プログラム23eを実行することにより行われる。
【0119】
先の例では、ロゴマークEaとピクトグラムEbを表示可能な画像データ(2画面仕様の画像データ)を出力データとしてGPU25に出力することで、それまでの平時には図8(A)に示すような運賃表Da,Dbを表示していた液晶表示部26の両画面26a,26bには、図8(B)に示すようなロゴマークEaとピクトグラムEbとからなる緊急メッセージが液晶表示部26の両画面26a,26bが表示される。これにより、ステップS201の停車表示灯点滅処理により運賃表示装置20の液晶表示部26に視線を向けていた乗客は、液晶表示部26による緊急メッセージによって、緊急地震速報の発表と路線バス100を停車させる旨を目からの視覚情報として認識することが可能となる。
【0120】
次のステップS209では、音声出力制御処理が行われる。この処理は、ステップS205により生成された出力データ(緊急メッセージ)のうち、音声合成装置60や増幅装置70を介して車内スピーカ71や車外スピーカ73等の音響機器に出力されるものを、音声合成装置60等に対して出力し、また増幅装置70の切り換え制御を行うものである。出力先情報による出力先が、車内スピーカ71や車外スピーカ73等の音響機器でない場合には、このステップS209による処理をスキップする。なお、この処理は、音声出力制御プログラム23fを実行することにより行われる。
【0121】
緊急メッセージとして、データメモリ24から読み出された緊急情報データ24dがテキストデータで、出力先情報が出力先を車外スピーカ73に指定している場合には、当該テキストデータを音声合成装置60に出力するとともに、出力先を車外スピーカ73に切り換える切換制御コマンドを増幅装置70に出力する。これにより、テキストデータに基づいて生成された緊急メッセージの音声信号が音声合成装置60から出力されるので、その音声信号が入力された増幅装置70では所定利得で増幅して車外スピーカ73を鳴動させ、相当音量の音声(合成音声)で緊急メッセージがアナウンスされる。
【0122】
これに対し、出力先情報が出力先を車内スピーカ71に指定している場合には、当該テキストデータを音声合成装置60に出力する一方で、増幅装置70には切換制御コマンドを出力しない。これは、前述したように、増幅装置70の出力先は、デフォルトで車内スピーカ71に設定されているためである。これにより、生成された緊急メッセージの合成音声は車内スピーカ71から出力されてアナウンスされる。
【0123】
また、緊急メッセージとして、データメモリ24から読み出された緊急情報データ24dが音声データで、出力先情報が出力先を車外スピーカ73に指定している場合には、当該音声データを増幅装置70に出力するとともに、出力先を車外スピーカ73に切り換える切換制御コマンドを増幅装置70に出力する。これにより、当該音声データによる緊急メッセージの音声信号が入力された増幅装置70では所定利得で増幅して車外スピーカ73を鳴動させ、相当音量の音声(合成音声)で緊急メッセージがアナウンスされる。
【0124】
これに対し、出力先情報が出力先を車内スピーカ71に指定している場合には、既述のデフォルト設定のため、当該音声データを増幅装置70に出力するだけで切換制御コマンドは出力しない。これにより、当該音声データによる緊急メッセージが車内スピーカ71から出力されてアナウンスされる。
【0125】
ステップS209による音声出力制御処理が終了すると、ステップS200による本緊急地震速報処理による情報処理が完了する。これにより、運賃表示装置20のMPU21による情報処理は一旦終了して、受信装置30の制御部31による情報処理に戻る。これにより、図6に示すステップS111に処理を移行するため、ここからは、再び図6を参照しながら説明する。
【0126】
図6に示すように、ステップS111では、選択スイッチ入力禁止処理が行われる。つまり、前述したステップS101と同様に、スイッチ33d〜33gの操作により、いずれかのスイッチのオン情報が操作部33から入力されてもその入力を無効にすることで、この処理以降、選択スイッチ入力許可処理が行われるまで、スイッチ33d〜33gの操作入力が無視されて誤操作を防止する。
【0127】
次のステップS112では、受信準備処理が行われる。この処理は、受信部35の受信周波数をそれまでのプライマリ局からセカンダリ局のものに変更することに伴うものである。この処理では、本実施形態のように、受信部35の受信周波数として、プライマリ局に加えてセカンダリ局(日本放送協会)の周波数も設定している場合、セカンダリ局の周波数を選局データに設定する。
【0128】
そして、受信部35の受信周波数が安定するのに要する所定時間の経過まで待った後、ステップS100によりリセットしたタイマー用のカウンタをスタートさせる。このカウンタは、緊急警報放送を受信することができない時間が所定時間を超えているか否かを判断するために用いられる。なお、受信周波数をプライマリ局から変更する必要がない場合には、このタイマー用のカウンタをスタートさせる処理だけ行われる。
【0129】
続くステップS113では、緊急警報放送を受信しているか否かの判断処理が行われる。この処理では、受信部35から出力される検出情報に基づいて、現在、受信部35が緊急警報放送を受信しているか否か判断する。緊急警報放送を受信していると判断した場合には(S113;Yes)、ステップS115による選択スイッチ入力許可処理に移行し、緊急警報放送を受信していないと判断した場合には(S113;No)、ステップS114に処理を移行する。
【0130】
ステップS114では、ステップS111によりカウントを開始したカウンタの値に基づいて、緊急警報放送を受信することができない時間が所定時間を超えているか否かを判断する。所定時間を経過していない場合には(S114;No)、ステップS113に移行して再度、緊急警報放送を受信しているか否かを判断する。一方、所定時間を経過している場合には(S114;Yes)、ステップS100の初期化処理に移行して、再び緊急地震速報を受信する準備を行う。これにより、セカンダリ局(本実施形態では日本放送協会)によって所定時間内に緊急警報放送を受信するまで、ステップS113,S114を繰り返して待つ。
【0131】
なお、ここでの「所定時間」は、緊急地震速報の受信からS波による主要動が到達し得る時間が数秒から数十秒間に想定されていることや、地震の発生から津波警報等が気象庁から発表されて緊急警報放送が放送されるまでの時間がほぼ5分以内であること、から、例えば1分〜5分または10分程度に設定される。
【0132】
次のステップS115では、選択スイッチ入力許可処理が行われる。即ち、ステップS111によって無効にされているスイッチ33d〜33gのオン情報を有効にするものである。これにより、スイッチ33d〜33gの操作によってそのオン情報が操作部33から入力されると、それに基づいた情報処理が行われる。またこのステップS115では、ステップS100によりリセットしたタイマー用のカウンタをスタートさせる。このカウンタは、緊急警報放送を受信し始めてからの時間が所定時間を超えているか否かを判断するために用いられる。
【0133】
続くステップS116では、音声出力制御処理が行われる。この処理は、現在、緊急警報放送を受信している受信部35から出力される音声信号を増幅部37に出力するために行うもので、増幅部37を機能させる鳴動指示情報を制御部31から増幅部37に出力する。これにより、受信部35から出力された音声信号は増幅部37で増幅されて内蔵スピーカ38から出力されるため、運転席100dの乗務員は内蔵スピーカ38から出力される放送受信音によって、緊急警報の発表とその内容を耳からの聴覚情報として認識することが可能となる。
【0134】
ステップS117では、選択スイッチ入力検出処理が行われる。ステップS116による音声出力制御処理により、乗務員は、緊急警報放送の内容を確認し得る状況にある。このため、乗務員による選択スイッチの操作がされている可能性があることから、選択スイッチが押されてオンされたか否かと、オンされている場合にはどの選択スイッチがオンされたか、をこの処理により検出する。
【0135】
具体的には、操作部33から入力される入力情報に基づいて、スイッチ33d〜33gのうち、いずれのスイッチが操作されたのかを検出する。例えば、緊急警報放送の内容から、津波警報が発表されスイッチ33eが押されていた場合には、スイッチ33eの入力情報が検出される。この場合には、乗務員は、緊急警報放送を受信したことに起因して、図9(A)に示すような津波警報のピクトグラム等を車内の運賃表示装置20に表示させ、乗客にその旨を伝えることを意図して選択スイッチを操作したことがわかる。
【0136】
続くステップS118では、ステップS117による検出結果に基づいて、選択スイッチの入力があるか否かの判断処理が行われる。選択スイッチの入力があると判断した場合には(S118;Yes)、運賃表示装置20に対してメッセージ出力コマンドを送出するとともにステップS300に処理を移行し、選択スイッチの入力がないと判断した場合には(S118;No)、ステップS119に処理を移行する。
【0137】
ステップS119では、緊急警報放送の受信が終了しているか否か、または緊急地震速報を受信し始めてから所定時間を経過しているか否かの判断処理が行われる。ステップS113による緊急警報放送の受信から一定時間以上経過しているときには、緊急警報放送の放送が終了している可能性がある。このため、終了信号を受信した受信部35から出力される検出情報に基づいて、緊急警報放送が終了しているか否かを判断し、既に放送が終了している場合には(S119;Yes)、選択スイッチの入力が未だなくてもステップS100に処理を移行して、再び緊急地震速報を受信する準備を行う。
【0138】
また、受信部35が終了信号を受信していない場合においても、ステップS113による緊急警報放送の受信から一定時間以上経過しているときには、緊急警報放送が終了している可能性がある。このため、前述したように、ステップS115によりカウントを開始したカウンタの値に基づいて、緊急警報放送を受信し始めてからの時間が所定時間を超えているか否かを判断し、所定時間を経過している場合には(S119;Yes)、ステップS100に処理を戻す。なお、ここでの「所定時間」は、緊急警報放送の放送時間に左右されるため、例えば、これまでの放送された緊急警報放送の放送時間に関する統計データに基づいて、放送時間の平均時間や最大時間等が設定される。
【0139】
これに対して、ステップS119により、受信部35から出力される検出情報から緊急警報放送の受信が現在も行われていると判断した場合や所定時間を経過していないと判断した場合には(S119;No)、ステップS117に戻って、再度、選択スイッチ入力検出処理を行う。つまり、緊急警報放送の放送を受信し続けている限り、ステップS117,S118,S119を繰り返して、選択スイッチの入力を待つ。
【0140】
ステップS300では、緊急警報放送処理が行われる。この処理は、受信装置30が緊急警報放送を受信した場合に受信装置30から送出されるメッセージ出力コマンドを受けた運賃表示装置20において行われる。このため、運賃表示装置20のMPU21により行われる各処理の詳細が図7(B)に図示され、また液晶表示部26による表示例の説明図が図9に図示されているので、ここからは図7(B)および図9を参照しながら説明する。
【0141】
図7(B)に示すように、緊急警報放送では、まずステップS301により停車表示灯点滅処理が行われる。この処理は、図7(A)を参照して既に説明したステップS201と同様であるので、説明を省略する。
【0142】
次のステップS303では、警報情報読出処理が行われる。この処理は、乗務員によって操作された選択スイッチに対応する緊急メッセージをデータメモリ24の緊急情報データ24dから選択して読み出すもので、前述したステップS117により検出された入力情報に基づいて緊急情報データ24dを検索し、入力情報に関連づけられた緊急メッセージのデータを読み出す。なお、ここで読み出されるデータは、図7(A)を参照して既に説明したステップS203と同じで各種データ形式のものが含まれ、また緊急メッセージには、出力先情報も付加されている。なお、この処理は、緊急情報読出プログラム23cを実行することにより行われる。
【0143】
先の例では、入力情報からスイッチ33eに関連づけられた緊急情報データ24dを検索して所定の緊急メッセージをデータメモリ24から読み出すことで、図9(A)に示すように、津波警報が受信されたことをイメージさせるピクトグラムFaを表示可能な画像データと、乗客に対する行動指示を説明する緊急対応マニュアルFbを表示可能な画像データとの2画面仕様の画像データが取得される。また、この2画面仕様の画像データには、出力機器として、2画面構成の液晶表示部26を指定する出力先情報が付加されている。
【0144】
また、緊急情報データ24dとして、緊急避難場所等を乗客に案内する画像データ等がスイッチ33eの入力情報に関連づけられている場合には、例えば、図9(B)に示すような緊急避難場所への避難を促す緊急避難場所の案内Fcを表示可能な画像データと、その避難場所の位置情報を示す地図Fdを表示可能な画像データとが、データメモリ24から読み出されて取得される。
【0145】
さらに、他の例として、津波警報が発表されている旨を路線バス100の車外を走行中もしくは停車中の車両の乗員や歩行者にも伝えるため、乗務員がスイッチ33gを押していた場合には、入力情報からスイッチ33gに関連づけられた緊急情報データ24dとして、例えば、図10(B)に示すような『津波警報の受信中』の警報情報受信メッセージEdを行先表示装置51や乗降中表示装置53に表示可能な文字コード(テキストデータ)がデータメモリ24から読み出されて取得される。
【0146】
続くステップS305では、警報情報出力処理が行われる。この処理も、図7(A)を参照して既に説明したステップS205と同様であるので、説明を省略する。なお、先の例では、緊急メッセージとして、液晶表示部26を出力機器に指定する出力先情報が付加されていることから、この画像データを2画面構成の液晶表示部26に出力可能にGPU25に対する制御情報等を付加した出力データが生成される。この処理は、緊急情報出力プログラム23dを実行することにより行われる。
【0147】
続くステップS307では、画面表示制御処理が行われる。この処理も、図7(A)を参照して既に説明したステップS207と同様であるので、説明を省略する。なお、出力先情報による出力先が、液晶表示部26、行先表示装置51や乗降中表示装置53等の表示装置でない場合には、このステップS307による処理をスキップして続くステップS309に処理を移行する。この処理は、画面表示制御プログラム23eを実行することにより行われる。
【0148】
先の例では、ピクトグラムFaと緊急対応マニュアルFbを表示可能な画像データ(2画面仕様の画像データ)を出力データとしてGPU25に出力することで、緊急地震速報の受信により図8(B)に示すようなロゴマークEaとピクトグラムEbとからなる緊急メッセージを表示していた液晶表示部26の両画面26a,26bには、図9(A)に示すような津波警報に関するピクトグラムFaと緊急対応マニュアルFbが表示される。これにより、ステップS301の停車表示灯点滅処理により運賃表示装置20の液晶表示部26に視線を向けていた乗客は、液晶表示部26による緊急メッセージによって、緊急警報の発表と緊急対応マニュアルFbによる行動指示の内容を目からの情報として視覚的に認識することが可能となる。
【0149】
また、緊急避難場所の案内Fcと地図Fdを表示可能な画像データ(2画面仕様の画像データ)を出力データとしてGPU25に出力することで、図9(B)に示すような緊急避難場所に関する案内Fcと地図Fdが表示される。緊急避難場所についての情報を視覚的に認識することが可能となる。
【0150】
なお、緊急避難場所のような場所(位置)に関する画像データについては、当該場所の位置情報やそれに代わるタグ情報等を付加することで、路線バス100の現在位置に最も近い停留所(最寄り停留所)の名称または番号に基づいて、路線バス100の現在位置から地理的または時間的に最も近い場所の画像データを、データメモリ24の緊急情報データ24dから選択できるように構成しても良い。また、路線バス100の位置情報は、路線バス100に搭載されるGPS受信機から得られる緯度・経度の座標情報等でも良い。これにより、路線バス100の現在位置に即した的確な避難情報を乗客に提供することができるので、避難場所等への迅速な移動が可能となる。
【0151】
さらに、他の例として挙げたように、データメモリ24から取得された緊急情報データ24dの文字コード(テキストデータ)に、出力先を行先表示装置51や乗降中表示装置53に指定する出力先情報が付加されていた場合には、当該文字コードを出力データとしてGPU25に出力することで、それまでの平時においては図10(A)に示すような行先表示Dd(同図に示す「□□□□」には具体的な行先名称が表示される)が表示されていた行先表示装置51には、図10(B)に示すような『津波警報 受信中』の警報情報受信メッセージEdが表示される。これにより、路線バス100の周囲を走行や停車する車両の乗員や歩行者にも、緊急警報による緊急メッセージを視覚的に伝えることができる。なお、図10(B)に示す例では、文字による緊急メッセージが表示されているが、ドット表現可能な図形による緊急メッセージも表示され得る(乗降中表示装置53についても同じ)。
【0152】
次のステップS309では、音声出力制御処理が行われる。この処理も、図7(A)を参照して既に説明したステップS207と同様であるので、説明を省略する。なお、出力先情報による出力先が、車内スピーカ71や車外スピーカ73等の音響機器でない場合には、このステップS309による処理をスキップする。この処理は、音声出力制御プログラム23fを実行することにより行われる。
【0153】
例えば、図10(B)に示すような行先表示装置51により表示されている文字コード(テキストデータ)に、出力先として車外スピーカ73を指定する出力先情報も併せて付加されていた場合、つまり緊急メッセージとして、データメモリ24から読み出された緊急情報データ24dがテキストデータで、出力先情報が出力先を車外スピーカ73に指定している場合には、当該テキストデータを音声合成装置60に出力するとともに、出力先を車外スピーカ73に切り換える切換制御コマンドを増幅装置70に出力する。
【0154】
この例では、これにより、文字コードに基づいて生成された緊急メッセージの音声信号が音声合成装置60から増幅装置70を介して車外スピーカ73に出力されるため、車外スピーカ73から相当音量の合成音声で『津波警報の受信中』という内容の緊急メッセージがアナウンスされる。したがって、路線バス100の周囲を走行や停車する車両の乗員や歩行者にも、緊急警報による緊急メッセージを聴覚的に伝えることができる。
【0155】
ステップS309による音声出力制御処理が終了すると、ステップS300による本緊急警報放送処理による情報処理が完了する。これにより、運賃表示装置20のMPU21による情報処理が終了して、受信装置30の制御部31による情報処理に戻る。これにより、図6に示すように、再びステップS100に戻るため、受信装置30では、これまでに説明した各ステップによる情報処理を再度実行する。
【0156】
なお、液晶表示部26や行先表示装置51等の表示装置に表示される緊急メッセージ(図8(B)、図9、図10(B))は、ブリンクするように表示(点滅の繰り返し表示)をしても良い。これにより、より効果的に乗客の注意を促すことができる。
【0157】
上述した緊急情報告知処理(図6)では、スイッチ33d〜33gの入力を許容する「選択スイッチ入力許可処理」(S105,S115)を緊急地震速報受信の確認直後(S103でYes)や緊急警報放送受信の確認直後(S113でYes)に位置させ、またスイッチ33d〜33gの入力を電気的に禁止または無効にする「選択スイッチ入力禁止処理」(S101,S111)を緊急地震速報の受信終了の直後(S109でYes)や、緊急警報放送の受信終了後(S119でYes)初期化処理の直後(S101)に位置させることで、緊急地震速報や緊急警報放送の受信中に限って、スイッチ33d〜33gの入力を可能に構成している。これにより、緊急地震速報や緊急警報放送の受信のいずれも受信していない場合には、誤ってスイッチ33d〜33gを押しても、運賃表示装置20により緊急メッセージの表示や音声アナウンスがされないようにして、誤操作による誤報を防止可能にしている。
【0158】
このような構成では、乗務員がスイッチ33d〜33gを押すタイミングを逃してしまう可能性がある場合には、例えば、緊急地震速報の受信終了(S109でYes)や緊急警報放送の受信終了後(S119でYes)から、所定時間経過後に「選択スイッチ入力禁止処理」(S101,S111)を実行するように、それぞれの受信終了後から所定時間として例えば30秒〜3分間程度ウェイトする一時停止処理を介在させる構成を採っても良い。これにより、乗務員によるスイッチ33d〜33gの操作に時間的な余裕を持たせることができる。
【0159】
また、このようなスイッチ33d〜33gの「選択スイッチ入力禁止処理」が行われている場合であっても、それをハードウェア的に強制解除する機能を運賃表示装置20に設けても良い。例えば、誤操作防止カバー付きの押しボタンスイッチを受信装置30に設けてこれがオンされた場合には、前述した制御部31によるソフトウェア的なマスク処理やハードウェア的に信号制御が無効となるハードウェアまたはソフトウェアの構成を制御部31に付加する。これにより、たとえ緊急地震速報や緊急警報放送が受信されていない状態であっても、この誤操作防止カバー付きの押しボタンスイッチをオンにすることで、スイッチ33d〜33gによる選択スイッチの操作が可能になるため、任意のタイミングで緊急地震速報処理(図7(A))や緊急警報放送処理(図7(B))を運賃表示装置20に実行させることができる。
【0160】
なお、上述した緊急情報告知処理(図6)では、ステップS200に緊急地震速報処理(図7(A))を、またステップS300に緊急警報放送処理(図7(B))を、それぞれ位置させて説明したが、ソフトウェア的に両者の処理内容に差異がなく、同様に処理できる場合には、1本化した緊急情報放送処理としても良い。この場合、例えば、図11に示すように、緊急地震速報および緊急警報放送のいずれをも受信可能な構成にすることで、情報処理の流れをシンプルにすることができる。なお、図11においては、図6に示す各ステップと同様の情報処理を行うステップについては、同一符号を付して説明を省略する。
【0161】
即ち、図11に示すように、ステップS103’により緊急地震速報か緊急警報放送のいずれかを受信しているか否かを判断する。この判断処理は、図6に示すステップS103と同図に示すステップS113とを併合させたものと理解でき、緊急地震速報や緊急警報放送を受信しているか否かの判断は、いずれも受信部35から出力される検出情報に基づいて行われる。
【0162】
そして、いずれかを受信している場合には(S103’;Yes)、ステップS105,S106,S107による各処理を経た後、操作部33から入力される入力情報に基づいて、ステップS108により選択スイッチ(スイッチ33d〜33g)の入力があるか否かを判断する処理が行われ、スイッチ入力がある場合には(S108;Yes)、前述した緊急情報放送処理(S200’)に処理を移行する。
【0163】
ステップS200’では、図7を参照して説明した緊急地震速報処理(S200;図7(A))や緊急警報放送処理(S300;図7(B))と同様の処理が行われる。つまり、図7(A)および図7(B)を参照して説明した各ステップと同様に各情報処理が行われて、図8〜図10に示すような緊急メッセージが、液晶表示部26、行先表示装置51や乗降中表示装置53に表示され、また緊急メッセージが車内スピーカ71や車外スピーカ73からアナウンスされる。
【0164】
以上説明したように、本システム10によると、文字情報および図形情報を表示可能に構成され、路線バス100内に設置された整理券発行機103から発行される整理券の複数の番号とこれらの番号に対応する複数の運賃とを一覧で路線バス100の乗客が視認可能に運賃表Da,Dbを表示する運賃表示装置20と、放送局から送信される緊急地震速報の音声情報を含む放送波を受信可能に構成され、路線バス100の走行経路が含まれる地域または地方に対する放送波を受信した場合、音声情報を出力する受信装置30と、受信装置30から入力される音声情報に基づく音声アナウンスを路線バス100の乗務員および乗客が聴取可能に路線バス100内に出力する音声合成装置60、増幅装置70および車外スピーカ73と、運賃表示装置20に表示可能に予め設定されて緊急地震速報の音声情報に対応する文字および/または図形からなる緊急地震情報を少なくとも含む複数の緊急メッセージ(緊急情報データ24d)を記憶するデータメモリ24と、これら複数の緊急メッセージを選択可能なスイッチ33d〜33gを有し、このスイッチ33d〜33gにより選択された緊急メッセージに対応するメッセージ出力コマンドを出力する制御部31および緊急情報告知プログラム31aと、緊急情報出力装置から入力されるメッセージ出力コマンドにより特定される緊急メッセージを、(1)運賃表Da,Dbの一覧で金額表示のない表示領域に代えて表示するように、(2)運賃表Da,Dbの一覧表示領域を縮小して空いた表示領域に表示するように、または、(3)運賃表Da,Dbの一覧表示時期と異なる時期に表示するように、運賃表示装置20を制御するMPU21、GPU25、緊急情報出力プログラム23dおよび画面表示制御プログラム23eと、を備える。
【0165】
これにより、緊急地震速報の放送とほぼ同時に、緊急地震速報の音声アナウンスが路線バス100内に出力されるので、コンピュータネットワークを介して緊急地震速報を取得する場合に生じ得る遅延時間もなく、路線バス100の乗務員および乗客に対してリアルタイムに緊急地震速報を告知することができる。このため、まず最初に音声アナウンスによって、運賃表示を妨げることなく、緊急地震速報を迅速に乗客に告知することができる。また、緊急メッセージが、運賃表Da,Dbの表示をしている液晶表示部26に出力されても、運賃表Da,Dbの一覧のうち、金額表示のある表示領域に緊急メッセージが表示されることはないため、乗客による支払額の確認等に際して、当該緊急メッセージが邪魔にはならない。
【0166】
したがって、緊急地震速報の放送とほぼ同時に、初動として、緊急地震速報の音声アナウンスを路線バス100内に出力し、その後、受信装置30のスイッチ33d〜33gの操作によって緊急メッセージが運賃表Da,Dbの表示を妨げることなく運賃表示装置20に出力する。よって、音声アナウンスに続いて運賃表示装置20によっても運賃表Da,Dbの表示を妨げることなく、緊急地震速報を迅速に乗客に告知することができる。
【0167】
なお、以上説明した実施形態では、運賃表示装置20と受信装置30とをハードウェアとして、個別に構成したが、例えば、受信装置30は、受信部35、増幅部37および内蔵スピーカ38に加えて、選局(周波数設定)を外部から可能に構成し、制御部31、表示部32、操作部33および設定部34を運賃表示装置20の構成に加えることにより、受信装置30の制御部31で実行する緊急情報告知プログラム31aの機能を運賃表示装置20のMPU21で実行するように構成しても良い。
【0168】
これにより、選択スイッチ(スイッチ33d〜33g)により選択された緊急メッセージに対応するメッセージ出力コマンドを設けることなく、「車内情報表示装置に表示可能に予め設定されて緊急地震速報の音声情報に対応する文字および/または図形からなる緊急地震情報を少なくとも含む複数の所定メッセージを記憶するとともに、これら複数の所定メッセージを選択可能な選択スイッチを有し、この選択スイッチにより選択された前記所定メッセージを出力する緊急情報出力装置」の構成が可能となる。
【0169】
つまり、次の技術的思想が把握できる。
「乗合車両に搭載される緊急情報告知システムであって、
文字情報および図形情報を表示可能に構成され、前記乗合車両内に設置された整理券発行機から発行される整理券の複数の番号とこれらの番号に対応する複数の運賃とを一覧で前記乗合車両の乗客が視認可能に運賃表示をする車内情報表示装置と、
放送局から送信される緊急地震速報の音声情報を含む放送波を受信可能に構成され、前記乗合車両の走行経路が含まれる地域または地方に対する前記放送波を受信した場合、前記音声情報を出力する受信装置と、
前記受信装置から入力される前記音声情報に基づく音声アナウンスを前記乗合車両の乗務員および前記乗客が聴取可能に前記乗合車両内に出力する車内音声出力装置と、
前記車内情報表示装置に表示可能に予め設定されて前記緊急地震速報の音声情報に対応する文字および/または図形からなる緊急地震情報を少なくとも含む複数の所定メッセージを記憶するとともに、これら複数の所定メッセージを選択可能な選択スイッチを有し、この選択スイッチにより選択された前記所定メッセージを出力する緊急情報出力装置と、
前記緊急情報出力装置から入力される前記所定メッセージを、(1)前記運賃表示の一覧で金額表示のない表示領域に代えて表示するように、(2)前記運賃表示の一覧表示領域を縮小して空いた表示領域に表示するように、または、(3)前記運賃表示の一覧表示時期と異なる時期に表示するように、前記車内情報表示装置を制御する表示情報制御装置と、
を備えることを特徴とする緊急情報告知システム。」
【0170】
また、以上説明した実施形態では、受信部35は、日本放送協会や民間放送局から送信される放送波を受信している場合を前提に説明したが、例えば、全国瞬時警報システム(J-ALERT;ジェイアラート)から直接取得した情報に基づいて、路線バスの運行会社から送信される業務無線を受信装置30で受信しても良い。この場合には、前述した所定のチャイム音や、第1種開始信号、第2種開始信号および終了信号を当該業務無線による電波の冒頭に付加する構成を採る。
【0171】
さらに、以上説明した実施形態では、受信装置30として、プライマリ局とセカンダリ局の2つの放送局から放送される電波を受信可能に構成し、またプライマリ局およびセカンダリ局に対応する受信周波数(以下「対応周波数」という。)をそれぞれ1つに固定するように構成したが、例えば、対応周波数を複数設定できるように構成し、かつ走行している路線バス100の現在位置や、受信装置30が受信する電波の状態(電界強度の強弱)等に基づいて、複数設定された対応周波数の中から最適な周波数を選択するように構成しても良い。これにより、例えば、走行路線が平地や山地を含むような場合には、電波が入り易い平野部を走行しているときにはA局をプライマリ局として選択し、山間等でA局の電波が入り難い山間部を走行しているときには、A局よりも電波が届きやすいB局をプライマリ局として選択することが可能となるため、山間部等の電波が届き難い地域を走行路線に持つ路線バスであっても、本システム10を適用することができる。
【0172】
なお、路線バス100の現在位置は、路線バス100の現在位置に最も近い停留所(最寄り停留所)の名称または番号に基づいて路線バス100の走行路線と地図情報(データメモリ24に格納する地図データを参照する)とからおおよその位置情報を得ることができ、位置情報の精度を高める場合には路線バス100に搭載されるGPS受信機から得られる緯度・経度の座標情報等を用いることができる。また、受信中の電波の状態は、受信部35が備える信号強度出力から得られる信号強度情報に基づいて、複数の周波数ごとの信号強度を比較して最も強いものを選択するように構成する。受信可能な放送局に優先度を付ける場合には、その重み付け情報を含めて信号強度を比較することで、電波の強さがほぼ同じ放送局が複数存在した場合に優先度が高い放送局を選択することができる。
【0173】
また、緊急地震速報による地震速報の内容や緊急警報放送による緊急警報の内容が、ディジタル情報として放送波に重畳されている場合には、それらをデコードして得られる地震速報や緊急警報の内容に基づいて、運賃表示装置20のデータメモリ24に格納された緊急情報データ24d(緊急メッセージの集まり)を検索してそれを加工・編集して液晶表示部26等に表示したり、音声合成装置60を介して車内スピーカ71等を鳴動させても良い。また、デコードして得られる地震速報や緊急警報の内容を、直接、液晶表示部26等に表示したり、音声合成装置60を介して車内スピーカ71等を鳴動させても良い。
【0174】
さらに、受信装置30の受信部35から出力される音声信号を、受信部35から直接または制御部31を介して運賃表示装置20が取得し、MPU21がその音声信号を音声データ(mp3,wav,wma等の形式)としてデータメモリ24に記録しても良い。例えば、記録開始処理は図6に示す選択スイッチ入力許可処理(S105,S115)で行い、記録終了処理は選択スイッチ入力禁止処理(S111)や初期化処理(S100)で行うように構成する。これにより、緊急地震速報や緊急警報放送の内容が録音されるため、受信装置30で受信した放送内容を事後的に確認することができる。
【0175】
また、記録(録音)しながら所定時間遅れて再生をする、いわゆるタイムシフト再生を行い得るように、データメモリ24またはその一部を大容量のデュアルポートメモリ等で構成し、その再生出力信号(音声信号)を増幅装置70に入力することで、実際の放送よりも所定時間、遅らせて車内スピーカ71等からアナウンスすることが可能となる。このタイムシフト再生が可能な構成の場合、所定の切り換えスイッチを操作することによりタイムシフト再生ではない通常再生に切り換えられる構成も併せて採ることで、例えば、受信装置30から実際の放送(生放送)を聞いている乗務員が、必要に応じて生放送によるアナウンスを車内スピーカ71から出力するように切り換えることが可能となる。これにより、タイムシフト再生によるアナウンスと生放送によるアナウンスとを適時選択することができる。
【0176】
なお、上述した実施形態では、図6に示すように、緊急警報放送を受信した場合(S103;Yes)、スイッチ33d〜33g(選択スイッチ)の入力を許可した後(S105)、これらのスイッチ33d〜33gの入力があれば(S108;Yes)それに対応した緊急メッセージ(例えば、図8(B)に示すロゴマークEa等)を、液晶表示部26、行先表示装置51や乗降中表示装置53等の各表示装置に表示するように構成したが、スイッチ33d〜33gの入力がなくても、予め設定されたロゴマークEa等の緊急メッセージを液晶表示部26等に表示するように構成しても良い。これにより、受信装置30により緊急地震速報が受信されたときには、乗務員によるスイッチ33d〜33g(選択スイッチ)の入力がなくても、自動的にロゴマークEa等が液晶表示部26等に表示することができる。
【0177】
また、受信部35からの音声信号が受信装置30から入力される運賃表示装置20の構成として、例えば、音声解析技術による音声認識処理が可能なハードウェアやソフトウェアを追加することによって、音声信号に含まれる信号波形等から音声アナウンスの内容を解析してテキストデータに変換することが可能となる。このため、このようなテキストデータに基づいて、上述した液晶表示部26、行先表示装置51や乗降中表示装置53等の各表示装置に、当該アナウンスの内容を文字情報として表示することができる。この場合、内容を表示する文字情報がロールテロップのように流れて表示するように、さらに一定量の文字情報を繰り返して表示するように、GPU25等によって表示制御させることで、多くの文字情報を乗客に確実に提供することができる。
【0178】
さらに、このようなテキストデータに基づいて、当該アナウンスの内容から「ジシン(地震)」、「ツヨイユレ(強い揺れ)」、「ツナミ(津波)」、「ドシャクズレ(土砂崩れ)」や「ナダレ(雪崩)」等の自然災害に関するキーワードを抽出可能に、かつこれらの抽出されたキーワードと予め設定されている緊急メッセージ(例えば、図8(B)や図9(A)や図9(B)に示す表示等)とを関連付け可能に、運賃表示装置20を構成することによって、スイッチ33d〜33g(選択スイッチ)の入力がなくても、当該予め設定された緊急メッセージを液晶表示部26等に表示するように構成しても良い。これにより、受信装置30により緊急地震速報や緊急警報放送が受信されたときには、乗務員によるスイッチ33d〜33g(選択スイッチ)の入力がなくても、図8(B)や図9(A)や図9(B)に示すようなロゴマークEa等を自動的に液晶表示部26等に表示することができる。
【符号の説明】
【0179】
10…緊急情報告知システム
20…運賃表示装置(車内情報表示装置)
21…MPU(緊急情報出力装置、表示情報制御装置)
23…システムメモリ(緊急情報出力装置、表示情報制御装置)
23b…運賃表示プログラム
23c…緊急情報読出プログラム(緊急情報出力装置)
23d…緊急情報出力プログラム(緊急情報出力装置)
23e…画面表示制御プログラム(表示情報制御装置)
23f…音声出力制御プログラム
24…データメモリ(緊急情報出力装置)
24a…運行情報データ
24b…運賃情報データ
24c…コンテンツデータ
24d…緊急情報データ(所定メッセージ、緊急地震情報、緊急警報情報)
25…GPU(緊急情報出力装置、表示情報制御装置)
26…液晶表示部
30…受信装置
31…制御部(受信装置、緊急情報出力装置、速報時選択操作制御部、警報時選択操作制御部)
31a…緊急情報告知プログラム
33d〜33g…スイッチ(選択スイッチ)
35…受信部(受信装置)
37…増幅部(車内音声出力装置、乗務員用出力装置)
38…内蔵スピーカ(車内音声出力装置、乗務員用出力装置)
41…停車表示制御装置(点消灯制御装置)
43…停車表示押しボタン(停車予告装置)
51…行先表示装置(車外情報表示装置)
53…乗降中表示装置(車外情報表示装置)
60…音声合成装置(車内音声出力装置、車外音声出力装置)
70…増幅装置(車内音声出力装置、車外音声出力装置)
71…車内スピーカ(車内音声出力装置)
73…車外スピーカ(車外音声出力装置)
100…路線バス(乗合車両)
103…整理券発行機
Da,Db…運賃表(運賃表示の一覧)
Ea…ロゴマーク(所定メッセージ)
Eb,Fa…ピクトグラム(所定メッセージ)
Ed…警報情報受信メッセージ(所定メッセージ)
Fb…避難対応マニュアル(所定メッセージ)
Fc…避難場所の案内(所定メッセージ)
Fd…避難場所の地図(所定メッセージ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗合車両に搭載される緊急情報告知システムであって、
文字情報および図形情報を表示可能に構成され、前記乗合車両内に設置された整理券発行機から発行される整理券の複数の番号とこれらの番号に対応する複数の運賃とを一覧で前記乗合車両の乗客が視認可能に運賃表示をする車内情報表示装置と、
放送局から送信される緊急地震速報の音声情報を含む放送波を受信可能に構成され、前記乗合車両の走行経路が含まれる地域または地方に対する前記放送波を受信した場合、前記音声情報を出力する受信装置と、
前記受信装置から入力される前記音声情報に基づく音声アナウンスを前記乗合車両の乗務員および前記乗客が聴取可能に前記乗合車両内に出力する車内音声出力装置と、
前記車内情報表示装置に表示可能に予め設定されて前記緊急地震速報の音声情報に対応する文字および/または図形からなる緊急地震情報を少なくとも含む複数の所定メッセージを記憶するとともに、これら複数の所定メッセージを選択可能な選択スイッチを有し、この選択スイッチにより選択された前記所定メッセージを出力する緊急情報出力装置と、
前記緊急情報出力装置から入力される前記所定メッセージを、(1)前記運賃表示の一覧で金額表示のない表示領域に代えて表示するように、(2)前記運賃表示の一覧表示領域を縮小して空いた表示領域に表示するように、または、(3)前記運賃表示の一覧表示時期と異なる時期に表示するように、前記車内情報表示装置を制御する表示情報制御装置と、
を備えることを特徴とする緊急情報告知システム。
【請求項2】
前記受信装置は、さらに放送局から送信される緊急警報放送の放送波を受信可能かつ受信した緊急警報放送の音声情報を出力可能に構成されている請求項1に記載の緊急情報告知システムであって、
前記受信装置が前記緊急警報放送の放送波を受信した場合、前記受信装置から入力される前記緊急警報放送の音声情報に基づく音声アナウンスを少なくとも前記乗務員が聴取可能に出力する乗務員用出力装置を備え、
前記緊急情報出力装置は、前記複数の所定メッセージとして、前記緊急警報放送の内容に対応する文字および/または図形からなる緊急警報情報を含むものを記憶するとともに前記選択スイッチにより選択可能であることを特徴とする緊急情報告知システム。
【請求項3】
前記緊急情報出力装置は、前記受信装置が前記緊急警報放送を受信している間、または前記受信装置が前記緊急警報放送を受信した後の所定時間の間、を除いて前記選択スイッチの操作を電気的に禁止または無効にする警報時選択操作制御部を備えることを特徴とする請求項2に記載の緊急情報告知システム。
【請求項4】
前記緊急情報出力装置は、前記受信装置が前記緊急地震速報を受信している間、または前記受信装置が前記緊急地震速報を受信した後の所定時間の間、を除いて前記選択スイッチの操作を電気的に禁止または無効にする速報時選択操作制御部を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の緊急情報告知システム。
【請求項5】
前記乗合車両は、前記乗合車両外の走行中もしくは停車中の車両の乗員または歩行者に文字情報および図形情報を視認可能に表示する車外情報表示装置を備えており、
前記緊急情報出力装置は、前記選択スイッチにより選択された前記所定メッセージを前記車外情報表示装置に出力することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の緊急情報告知システム。
【請求項6】
前記乗合車両は、前記乗合車両外の走行中もしくは停車中の車両の乗員または歩行者に音声情報に基づく音声アナウンスを聴取可能に出力する車外音声出力装置を備えており、
前記緊急情報出力装置は、前記選択スイッチにより選択された前記所定メッセージに基づく音声情報を前記車外音声出力装置に出力することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の緊急情報告知システム。
【請求項7】
前記乗合車両は、前記走行経路に設定された複数の停留所のうち、現在接近中の最寄り停留所に停車する予定である旨を点灯によって前記乗客に報知する複数の停車予告装置を備えており、
前記緊急情報出力装置が前記所定メッセージを前記車内情報表示装置に出力する場合、前記複数の停車予告装置の点消灯を前記乗客が視認可能な点滅周期で制御する点消灯制御装置を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の緊急情報告知システム。

【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−69130(P2013−69130A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207375(P2011−207375)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000144544)レシップホールディングス株式会社 (179)
【Fターム(参考)】