説明

緊急放送用ラジオ受信機

【課題】本発明は、ラジオ放送を用いて緊急放送を確実に伝達することができるとともに誤作動のない信頼性の高い緊急放送用ラジオ受信機を提供することを目的とするものである。
【解決手段】緊急放送用ラジオ受信機は、受信部13に受信されたラジオ放送信号に含まれるDTMF信号を検出した後次のDTMF信号が所定の時間内に検出された場合に検出されたDTMF信号を保存する信号処理部12、複数のDTMF信号の所定の組み合せに対応して表示する災害情報を記憶する記憶部11、検出された複数のDTMF信号が所定の組み合せであるか否か判定する判定部101、DTMF信号が所定の組み合せである場合に対応する災害情報を液晶表示パネル3及びLED表示器4に表示する表示処理部102、DTMF信号が所定の組み合せである場合にスピーカ2から音声出力を行う出力処理部103を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災又は災害に関する緊急放送を報知することができる緊急放送用ラジオ受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
国内では、地震、津波、台風、集中豪雨といった自然災害が毎年のように発生しているが、こうした災害に備えるために防災又は災害に関する情報を対象地域の住民に正確かつ迅速に提供することが要請されている。
【0003】
こうした防災又は災害に関する情報の提供は、テレビジョン放送、ラジオ放送、防災行政無線を通して対象地域の住民に伝達されるようになっているが、深夜の時間帯では、受信機の電源が切られていると情報が伝達されずに災害への対応が遅れてしまう、といった課題がある。また、集中豪雨のように局所的に発生する災害の場合には、広域放送で情報提供することは、関係ない地域にも緊急性の高い情報が頻繁に提供されるようになってしまい、災害情報に対する住民の認識が低下していざという時の対応が遅れてしまうデメリットがある。
【0004】
そのため、近年国内各地で開設されているコミュニティFM放送を利用して災害情報を提供することが提案されている。例えば、特許文献1では、緊急放送を行う際に投入されるスイッチの動作に対応して所定のDTMF信号(Dual−Tone Multi−Frequency)を形成してFM放送信号に含ませて放送し、FM放送受信機においてFM放送に含まれる所定のDTMF信号を検出すると、自動的に電源をオンして大音量で出力するようにした点が記載されている。また、特許文献2では、災害の発生により、緊急放送であることを示すDTMF信号及びEWS信号の少なくとも一方がFM放送の放送信号に含まれていた場合に受信機の電源を自動的にオンして緊急放送メッセージを大音量で出力する点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3118188号公報
【特許文献2】特開2009−232247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献では、FM放送を用いて緊急放送を放送する前にDTMF信号を流してFM放送受信機を自動的に電源オンして大音量で放送されるように調整するようにしているが、緊急放送の内容は放送を通じて音声で伝達されるのみで、聞き逃すおそれがあり、また聴覚障害のある住民に対して直接伝達することができない、といった課題がある。
【0007】
また、FM放送に特定のDTMF信号を流して緊急放送を放送する実験をしたところ、DTMF信号を流していないにもかかわらずFM放送受信機で緊急放送を放送する誤作動が発生することがあった。こうした誤作動の原因を分析したところ、FM放送から受信する信号にDTMF信号に類似する信号が存在することが確認された。緊急放送が誤って放送されることは、社会的な混乱を招くとともに緊急放送の信頼性を損なうことになるので、誤作動は必ず回避するようにしなければならない。
【0008】
そこで、本発明は、ラジオ放送を用いて緊急放送を確実に伝達することができるとともに誤作動のない信頼性の高い緊急放送用ラジオ受信機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る緊急放送用ラジオ受信機は、ラジオ放送信号を受信する受信部と、緊急放送に関する災害情報を表示する表示部と、受信したラジオ放送信号及び当該ラジオ放送信号に含まれる緊急放送信号に基づいて音声出力する出力部とを備えた緊急放送用ラジオ受信機であって、前記受信部に受信されたラジオ放送信号に含まれるDTMF信号を検出して当該DTMF信号の検出後に次のDTMF信号が所定の時間内に検出された場合に検出されたDTMF信号を保存する信号処理部と、複数のDTMF信号の所定の組み合せに対応して表示する災害情報を記憶する記憶部と、保存された複数のDTMF信号が所定の組み合せであるか否か判定する判定部と、DTMF信号が所定の組み合せであると判定された場合に当該組み合せに対応する災害情報を前記表示部に表示する表示処理部と、DTMF信号が所定の組み合せであると判定された場合に前記出力部から音声出力を行う出力処理部とを備えている。さらに、災害情報を表示する際の判定に用いるDTMF信号の組み合せは、ラジオ放送信号において発現頻度が低く互いに異なるDTMF信号の組み合せである。さらに、前記表示処理部は、DTMF信号が特定の組み合せであると前記判定部が判定した場合に前記表示部への表示を停止する。さらに、前記信号処理部は、10秒以内に次のDTMF信号が検出された場合に検出されたDTMF信号を保存する。さらに、地域情報を設定する設定部を備えており、前記表示処理部は、設定された地域情報に基づいて前記表示部に当該地域情報を表示するとともに当該地域情報に関連するDTMF信号の組み合せに対応する情報を表示する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記のような構成を備えることで、ラジオ放送信号に含まれるDTMF信号を検出した後次のDTMF信号を所定の時間内に検出した場合に検出したDTMF信号を保存して緊急放送信号の組み合せであるか判定するようにしているので、誤作動を生じることなく緊急放送を確実に伝達することができる。
【0011】
また、複数のDTMF信号の所定の組み合せに対応して緊急放送に関する情報を表示するようにしているので、緊急放送を聞き逃した場合にも表示部に表示された情報により緊急放送の内容を視認することができ、迅速かつ確実に災害情報を伝達することが可能となる。また、聴覚障害のある住民も緊急放送の内容を確認することができるため、避難等が必要な場合でも遅れることなく対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施形態に関する外観斜視図である。
【図2】緊急放送用ラジオ受信機の制御処理に関するブロック構成図である。
【図3】DTMF信号の組み合せ及び表示文字の対応関係を示す表である。
【図4】DTMF信号に関する周波数の組み合せを示す表である。
【図5】緊急放送の内容を示す表示状態に関する説明図である。
【図6】FM放送信号及びAM放送信号に含まれるDTMF信号の検出結果を示す円グラフである。
【図7】DTMF類似信号の検出間隔を分析した結果を示すリストである。
【図8】DTMF信号の検出処理に関する処理フローである。
【図9】割り込み処理に関する処理フローである。
【図10】緊急放送処理に関する処理フローである。
【図11】DTMF信号の組み合せ及びLED表示の対応関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて詳しく説明する。図1は、本発明に係る実施形態に関する外観斜視図である。携帯型の緊急放送用ラジオ受信機1は、前面に音声を出力するスピーカ2、時刻、周波数等の設定の表示や緊急放送の内容を文字表示する液晶表示パネル3、複数の異なる色を発光するLED素子を備え緊急放送の内容を光の色で表示するLED表示器4、緊急放送があることを報知するサイレン5が設けられている。また、緊急放送用ラジオ受信機1の上面には、AM放送又はFM放送のダイヤル選局用ツマミ6及び音量調整用ツマミ7が設けられており、側面には、照明用のLEDライト8及び手回し用ハンドルを備えた手動の発電器9が設けられている。
【0014】
図示されていないが、緊急放送用ラジオ受信機1の背面には、商用電源に接続するコンセント及び電源コード、携帯電話充電用プラグが収納されている。また、緊急放送用ラジオ受信機1は、蓄電池を内蔵しており、商用電源接続時や発電器9による発電時には、蓄電池が充電されるようになっている。
【0015】
緊急放送用ラジオ受信機1は、こうした構成を備えているので、住宅内で使用する場合にはダイヤル選局用ツマミ6及び音量調整用ツマミ7を操作して通常のラジオ受信機として使用することができ、災害が発生した場合には緊急放送を受信して確実にその内容を伝達するとともに避難する際には持ち出して避難所で緊急放送を聞くことができる。停電や屋外での使用の場合にも発電器により蓄電池に充電しながら継続使用が可能で、携帯電話への充電にも使用することができる。
【0016】
図2は、緊急放送用ラジオ受信機1の制御処理に関するブロック構成図である。制御部10は、緊急放送に関連する制御処理全般を行い、検出されたDTMF信号の組み合せを判定する判定部101、判定されたDTMF信号の組み合せに基づいて液晶表示パネル3及びLED表示器4の表示制御を行う表示処理部102、DTMF信号の検出に基づいてスピーカ2の音声出力及びサイレン5の出力を制御する出力処理部103を備えている。
【0017】
記憶部11は、4つのDTMF信号の組み合せに対応した文字情報のテーブルを記憶している。この例では、図3に示すように、検出された4つのDTMF信号の組み合せに対応して、液晶表示パネル3の1行目に表示する地域名及び2行目に表示する災害情報並びにLED表示器4の表示素子L1〜L4が記憶されている。表示する地域名については、設定部15で設定されたデータに対応して決められている。
【0018】
信号処理部12は、ラジオ放送信号を受信する受信部13からの受信信号に含まれるDTMF信号を検出し、DTMF信号を検出後に所定時間内に次のDTMF信号を検出した場合に検出したDTMF信号を保存する。そして、4つのDTMF信号が保存された場合にその組み合せのデータを制御部10に送信する。DTMF信号は、図4に示すように、CCITT(国際電信電話諮問委員会)の勧告により2つの組み合せで定められており、電話機のプッシュボタンに対応して音声帯域内の4周波数で構成される高群及び低群からそれぞれ選択された2つの周波数を組み合せて1つのDTMF信号とされている。そして、DTMF信号は、高群及び低群のそれぞれ4種類の周波数の組み合せに対応して0〜9までの数字と*、#、A〜Dまでの記号の計16種類の符号が付与されている。こうしたDTMF信号を複数組み合わせることで、個別に識別可能な多数の信号を作成することができる。信号処理部12においてDTMF信号を保存する場合には、対応する符号に変換して保存するようにすればよい。
【0019】
受信部13は、AM放送を受信するAMモード、FM放送を受信するFMモード又は緊急放送を放送する特定周波数にセットするOFFモードのいずれかに設定可能となっている。緊急放送用ラジオ受信機1の電源をオンした状態では、ダイヤル選局用ツマミ6によりAMモード又はFMモードで選局された通常のラジオ放送信号を受信するが、電源がオフされた状態ではOFFモードで特定周波数のラジオ放送信号を受信するようにセットされる。ここで、特定周波数のラジオ放送信号はAM放送でもFM放送のいずれでもよい。
【0020】
接続回路14は、受信部13とスピーカ2との間に設けられ、出力処理部103からの制御信号に基づいて受信部13で受信したラジオ放送信号をスピーカ2で音声出力又は出力停止する。
【0021】
設定部15は、緊急放送用ラジオ受信機1を使用する地域を設定する。例えば、ディップスイッチにように手動で複数の設定データを設定できる素子を用いて設定すればよい。この例では、図3に示すように、地域Aで使用する場合には設定データS1に設定し、地域Bで使用する場合には設定データS2に設定し、地域Cで使用する場合には設定データS3に設定する。
【0022】
判定部101では、信号処理部12から送信された4つのDTMF信号の組み合せが設定部15で設定された設定データに対応するDTMF信号の組み合せであるか否か判定し、設定データに対応するDTMF信号の所定の組み合せである場合に表示処理部102及び出力処理部103に組み合せのデータに基づく制御を行わせるようにしている。
【0023】
例えば、図3に示すように、設定部15の設定データがS1の場合には、信号処理部12から送信されたDTMF信号の組み合せが1015、1016、1017又は1018のいずれかに該当すると判定したときに液晶表示パネル3の表示処理を行う。例えば、DTMF信号の組み合せが1015の場合には、図5に示すように、液晶表示パネル3に「チイキA」及び「オオアメ」を表示し、LED表示器4の表示素子L1を点灯するように表示制御する。表示素子L1〜L4は、それぞれ青、黄、緑、白といった色を発光するLEDを有し、液晶表示パネル3に表示した災害情報に対応して異なる色が点灯するようになっている。
【0024】
出力処理部103は、DTMF信号の組み合せが設定部15の設定データに該当する組み合せであると判定された場合に、接続回路14を接続状態とするとともに受信部13がAMモード又はFMモードの場合には緊急放送を放送する特定周波数の放送を受信するように切り換えて緊急放送が自動的にスピーカ2から出力されるように制御する。また、サイレン5をオンしてサイレン音を出力するように制御する。
【0025】
また、図3に示すように、受信したDTMF信号の組み合せが0000といった特定の組み合せであると判定された場合には、表示処理部102は災害情報の表示を停止するとともに出力処理部103はサイレン5の出力を停止し、通常のラジオ放送による音声出力を行うようにする。
【0026】
上述したDTMF信号の4つの組み合せを設定する場合、通常のラジオ放送信号に含まれるDTMF信号に類似する信号(以下「DTMF類似信号」という。)による誤動作を避ける必要がある。本発明者らによる調査によれば、ラジオ放送信号に含まれる人間の声に対応する信号にはDTMF信号に類似する場合が多く、そのためDTMF類似信号が頻繁に検出されることがわかった。図6は、23日間にわたってFM放送信号及びAM放送信号を受信しながらDTMF信号を検出した結果を示す円グラフである。図6(a)は、FM放送信号における検出結果を示し、図6(b)は、AM放送信号における検出結果を示している。そして、円グラフでは、DTMF類似信号の検出数での各符号毎の割合を表示している。この調査結果をみると、検出されるDTMF信号には、符号によりバラツキがあり、発現頻度は高いもので18.5%あり、低いものは0.3%であった。また、放送の内容や種別による発現頻度にはあまり差は認められず、曜日による差もあまりなかった。
【0027】
したがって、通常のラジオ放送信号において発現頻度の低いDTMF信号を用いて組み合せることで、DTMF類似信号による誤動作を回避することができる。例えば、上述した調査結果によれば、「D370」の組み合せの発現頻度は、1日当りの受信数を考慮して約519年に一度の誤動作を起こす可能性があることになり、こうした発現頻度の低い組み合せのDTMF信号を緊急放送開始信号に用いることで、DTMF類似信号による誤動作をほぼなくすことが可能となる。
【0028】
また、上述した調査結果において、DTMF類似信号の検出間隔を分析した結果を図7に示す。図7に示すリストでは、1つのDTMF類似信号が検出されてから次のDTMF類似信号が検出されるまでの経過時間(秒)を検出信号毎に示している。この分析結果をみると、DTMF類似信号の検出間隔は、平均2分程度であるが、同じ検出信号が連続して検出される場合には検出間隔が短く、検出信号が異なる場合には検出間隔が長くなる傾向が読み取れる。したがって、DTMF信号の組み合せでは、互いに異なるDTMF信号を組み合せて設定し、所定時間以内(例えば10秒以内)に次のDTMF信号が検出される間隔で緊急放送開始信号を作成してラジオ放送信号とともに放送すれば、DTMF類似信号による誤動作を確実に回避することができる。
【0029】
以上説明した緊急放送用ラジオ受信機を使用する場合、まず、行政機関において防災行政無線により緊急放送が報知されると、その緊急放送に関する音声情報、地域情報及び災害情報が専用回線を介してラジオ放送局に送信される。ラジオ放送局では、緊急放送に関する情報を受信すると、緊急放送に関する地域情報及び災害情報に基づいて上述した複数のDTMF信号の組み合せを作成する。そして、作成したDTMF信号を緊急放送開始信号として用い、特定の組み合せ(例えば0000)からなるDTMF信号を緊急放送停止信号として用いて、緊急放送開始信号と緊急放送停止信号の間に緊急放送の音声情報を挿入した一連の緊急放送信号を作成し、割り込み処理により通常のAM放送又はFM放送のいずれかのラジオ放送信号に組み込んで放送する。
【0030】
図8は、緊急放送信号として放送されるDTMF信号の検出処理に関する処理フローである。まず、緊急放送信号を受信するために、使用地域の設定データ等を入力する初期設定を行い(S100)、検出のための割り込み処理のタイミングを設定する(S101)。割り込み処理のタイミングは、例えば、0.125秒、0.25秒、0.5秒、1秒といった検出間隔で割り込み処理を行うように設定すればよい。そして、割り込み処理の回数をカウントすることで、検出間隔を所定時間に設定することができ、所定時間内にDTMF信号の検出の有無を判定することが可能となる。
【0031】
割り込み処理の設定後、緊急放送開始信号となるDTMF信号が送信されたかチェックし(S102)、DTMF信号の送信が検出された場合(S102−YES)にDTMF信号の入力回数Nが4未満であるかチェックする(S103)。DTMF信号の送信が検出されない場合(S102−NO)には、繰り返し送信の有無について検出を行う。入力回数Nが4未満の場合(S103−YES)には、検出されたDTMF信号を保存し(S104)、入力回数Nに1を加算するカウントアップを行う(S105)。そして、割り込み回数Wをリセットし(S106)、タイムアウトが許可されているかチェックする(S107)。タイムアウトが許可されていない場合(S107−NO)には、ステップS102に戻り、DTMF信号の送信があるかチェックする。
【0032】
ステップS107でタイムアウトが許可されている場合(S107−YES)には、後述する緊急放送処理に進む。また、ステップS103で入力回数Nが4以上である場合(S103−NO)にも緊急放送処理に進む。後述する緊急放送処理が終了すると、入力回数Nをリセットして(S108)ステップS102に戻り、DTMF信号の送信があるかチェックする。
【0033】
図9は、割り込み処理に関する処理フローである。まず、設定されたタイミングで割り込み処理が行われて(S200)、図8に示す検出処理が行われるようになるが、割り込み処理が行われると割り込み回数Wに1を加算するカウントアップが行われる(S201)。そして、割り込み回数Wが所定の回数T以上であるかチェックし(S202)、所定の回数以上である場合(S202−YES)にタイムアウトを許可する設定を行い(S203)、終了する。ステップS202において割り込み回数Wが所定の回数Tより小さい場合には、タイムアウトを許可する設定を行うことなく終了する。
【0034】
以上の処理を行うことで、割り込み処理を行う毎にDTMF信号の検出が行われ、DTMF信号が検出された場合には、DTMF信号を保存していき、入力回数Nが4以上−すなわち4つのDTMF信号が保存された場合に緊急放送処理に進むようになる。そして、DTMF信号を検出してから次のDTMF信号を検出するまでの間に割り込み回数Wが所定の回数T以上となる場合には、割り込み処理の設定タイミングと所定の回数Tで設定された時間内にDTMF信号が検出されなかったものとしてタイムアウトを許可するように設定する。タイムアウトの許可が設定されると、不完全な組み合せのDTMF信号で緊急放送処理に進むことになり、設定データとは一致しないから緊急放送処理を行うことなく終了する。こうして、緊急放送信号として放送されたDTMF信号の組み合せのみが確実に検出されるようになる。
【0035】
図10は、緊急放送処理に関する処理フローである。まず、上述した検出処理において保存されたDTMF信号があるかチェックし(S300)、保存されたDTMF信号がない場合(S300−NO)にはそのまま終了する。保存されたDTMF信号がある場合(S300−YES)には、初期設定された使用地域に関する設定データを読み出して(S301)、保存されたDTMF信号の組み合せが設定データに対応するDTMF信号の組み合せであるか否かチェックする(S302)。設定データに対応しない組み合せである場合(S302−NO)には、その使用地域とは異なる地域に関する緊急放送であるので、以後の緊急放送処理を行うことなく終了する。
【0036】
設定データに対応する組み合せである場合(S302−YES)には、組み合せに対応する文字表示処理及びLED表示処理を行う(S303)。文字表示処理では、設定データに対応する地域名及び緊急放送に対応する災害情報を読み出して液晶表示パネル3に表示する。LED表示処理では、検出された組み合せに対応するLED表示器4の表示素子を点灯処理する。
【0037】
同時に、サイレン5の出力処理を行ってサイレン音を鳴らす(S304)。そして、ラジオ受信機の電源がオンしているか否かチェックして(S305)、電源がオンの場合には、緊急放送が流れる特定周波数の放送に自動的に切り換えるように選局処理を行う(S306)。電源がオフの場合には、OFFモードで緊急放送が流れる特定周波数の放送に予め選局されているので、スピーカの音声出力処理を行うことで(S307)、確実に緊急放送を音声出力することができる。その際に、液晶表示パネル3への文字表示及びLED表示器4の点灯処理が行われるので、視覚及び聴覚により緊急放送の内容を伝達することができる。また、サイレン音を鳴らすことにより離れた場所に居る住民に対しても緊急放送があることを報知して、その内容を確実に伝達することが可能となる。
【0038】
次に、緊急放送停止信号となるDTMF信号が送信されたかチェックし(S308)、複数のDTMF信号の送信が検出された場合に検出された複数のDTMF信号が記憶部11に登録された停止信号を示す特定の組み合せと一致するか否かチェックする(S309)。この例では0000の組み合せのDTMF信号が検出された場合に、液晶表示パネル3の文字表示を非表示処理し、LED表示器4の点灯した表示素子を消灯処理する(S310)。また、サイレン5の出力処理を停止し、サイレン音を止めて(S311)緊急放送処理を終了する。
【0039】
この場合、文字表示処理及びLED表示処理は表示したままにしてもよい。また、サイレン音は手動で停止する停止ボタンを設けるようにしてもよい。なお、スピーカの音声出力処理はそのまま続行して、使用者に対して次の緊急放送に備えるよう注意喚起するようにする。
【0040】
以上説明した例では、液晶表示パネル3及び複数の表示素子を用いたLED表示器4を用いているが、複数の色を発光することのできるLED表示器を2つ用いて表示処理を行うようにしてもよい。例えば、図11に示すように、2つのLED表示器のうち1つを地域情報の識別用に用い、もう1つを災害情報の識別用に用いることで、視覚的に緊急放送の内容を正確に伝達することができる。この例では、地域Aの場合赤色、地域Bの場合緑色、地域Cの場合青色に発光するように1つのLED表示器を表示制御する。もう1つのLED表示器については、大雨の場合青色、強風の場合黄色、地震の場合緑色、その他の災害の場合白色に発光するように表示制御する。
【0041】
こうした災害情報及び地域情報については、DTMF信号の組み合せによりきめ細かく設定することが可能で、地域毎の防災対策に合わせて必要に応じて設定すればよい。
【符号の説明】
【0042】
1 緊急放送用ラジオ受信機
2 スピーカ
3 液晶表示パネル
4 LED表示器
5 サイレン
10 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジオ放送信号を受信する受信部と、緊急放送に関する災害情報を表示する表示部と、受信したラジオ放送信号及び当該ラジオ放送信号に含まれる緊急放送信号に基づいて音声出力する出力部とを備えた緊急放送用ラジオ受信機であって、前記受信部に受信されたラジオ放送信号に含まれるDTMF信号を検出して当該DTMF信号の検出後に次のDTMF信号が所定の時間内に検出された場合に検出されたDTMF信号を保存する信号処理部と、複数のDTMF信号の所定の組み合せに対応して表示する災害情報を記憶する記憶部と、保存された複数のDTMF信号が所定の組み合せであるか否か判定する判定部と、DTMF信号が所定の組み合せであると判定された場合に当該組み合せに対応する災害情報を前記表示部に表示する表示処理部と、DTMF信号が所定の組み合せであると判定された場合に前記出力部から音声出力を行う出力処理部とを備えている緊急放送用ラジオ受信機。
【請求項2】
災害情報を表示する際の判定に用いるDTMF信号の組み合せは、ラジオ放送信号において発現頻度が低く互いに異なるDTMF信号の組み合せである請求項1に記載の緊急放送用ラジオ受信機。
【請求項3】
前記表示処理部は、DTMF信号が特定の組み合せであると前記判定部が判定した場合に前記表示部への表示を停止する請求項1又は2に記載の緊急放送用ラジオ受信機。
【請求項4】
前記信号処理部は、10秒以内に次のDTMF信号が検出された場合に検出されたDTMF信号を保存する請求項1から3のいずれかに記載の緊急放送用ラジオ受信機。
【請求項5】
地域情報を設定する設定部を備えており、前記表示処理部は、設定された地域情報に基づいて前記表示部に当該地域情報を表示するとともに当該地域情報に関連するDTMF信号の組み合せに対応する情報を表示する請求項1から4のいずれかに記載の緊急放送用ラジオ受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−182686(P2012−182686A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44581(P2011−44581)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(506087163)タイヨー電子株式会社 (10)
【Fターム(参考)】