緊急時指揮支援サーバ、緊急時のシナリオ最適化方法、コンピュータプログラム
【課題】シナリオの最適化の検証を容易に可能な緊急時指揮支援システムを提供する。
【解決手段】クライアント端末3との間でデータの送受信が可能な緊急時指揮支援サーバ2である。緊急時指揮支援サーバ2は、クライアント端末3の利用者に処理を行わせるための指示が規定されたシナリオを記憶する緊急対応シナリオライブラリ242と、指示を順次クライアント端末3に表示させるとともに、当該指示に対する処理への利用者の確信度をクライアント端末3から順次受け付けて、確信度を指示毎に緊急対応履歴DB243に記憶させ、確信度を定量的に表す確信度値の累積値が所定の条件を満たす場合に、確信度値により確信度が低いと判断された指示の一覧をクライアント端末3に表示させて、クライアント端末3から一覧に表示された指示の修正が依頼されると、シナリオの当該指示の修正を行う緊急対応シナリオ実行エンジン22と、を備える。
【解決手段】クライアント端末3との間でデータの送受信が可能な緊急時指揮支援サーバ2である。緊急時指揮支援サーバ2は、クライアント端末3の利用者に処理を行わせるための指示が規定されたシナリオを記憶する緊急対応シナリオライブラリ242と、指示を順次クライアント端末3に表示させるとともに、当該指示に対する処理への利用者の確信度をクライアント端末3から順次受け付けて、確信度を指示毎に緊急対応履歴DB243に記憶させ、確信度を定量的に表す確信度値の累積値が所定の条件を満たす場合に、確信度値により確信度が低いと判断された指示の一覧をクライアント端末3に表示させて、クライアント端末3から一覧に表示された指示の修正が依頼されると、シナリオの当該指示の修正を行う緊急対応シナリオ実行エンジン22と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震や火災等の災害に対して企業や行政体が危機管理対応を行う際に、必要なワークフローに沿ったシナリオの策定を容易かつ効率的に行い、実際の対応の意思決定判断を支援するための緊急時指揮支援技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークフローに応じて各々が役割を持つ複数の利用者に、適切なタイミングで必要な指示や情報を提示したり、判断を求めたりする緊急時指揮支援システムが提案されている。特許文献1〜3には、このような従来の緊急時指揮支援システムについての技術が開示されている。また、本出願人もAgADIS(登録商標)、NoKeos(登録商標)といった緊急時指揮支援システムを従来から提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−334078号公報
【特許文献2】特開平11−15875号公報
【特許文献3】特開2002−259887号公報
【0004】
緊急時指揮支援システムでは、災害の発生した現場や各方面から収集された情報等を用いて、ワークフローに応じて予め規定されたシナリオに沿って、対応方針が決定される。「シナリオ」は、緊急時の対応や行動が規定されており、事前に想定される事態の推移に応じて、緊急対応に必要な対応方針、マニュアル、経験・ノウハウ等と時間の概念を組み合わせて作成されている。
【0005】
緊急時指揮支援システムでは、実際の災害発生時を想定して、想定外のシナリオが発生したり、途中の判断が間違った場合に対応するために、シナリオの修正を可能にする必要がある。また、実際の訓練を通じてシナリオを検証して、シナリオの最適化を行うといった使い方が求められる。
【0006】
シナリオの修正には、下記のような3通りの手法がある。
1つ目の手法は、シナリオに沿った処理の実行途中における修正や誤りを考慮して、シナリオを作成する手法である。この手法では、既に入力した情報が正しいか否かを確認して、間違っている場合には該当するシナリオを再度実行するなどの修正対応を行うことまでをシナリオに組み込んでおく。これにより、きめ細かな修正対応行動の記述が可能になる。しかし、シナリオ毎に確認処理を記述することが必要となり、シナリオ作成に手間がかかる。
2つ目の手法は、シナリオの制御を該当の修正箇所まで無理やり移し、そこから再実行する手法である。この手法では、修正の必要な入力箇所にシナリオの制御を無理やり移してからシナリオを再実行する。この手法は、シナリオの制御の変更のみであるために、実現が容易である。しかし、場合によっては既に実施済みの処理と矛盾する指示が行われる可能性があり、利用者に混乱を招く可能性が高い。
3つ目の手法は、修正を行いたいタイミングで、その場でシナリオを作り直す手法である。この手法では、シナリオにない状況に柔軟に対応できる。しかし、緊急時での作業のために的確なシナリオ修正ができない可能性があり、場合によっては既に実施済みの処理と矛盾する指示が行われることも考えられ、利用者に混乱を招く可能性が高い。
【0007】
シナリオの分析については、下記のような2通りの手法がある。
1つ目の手法は、シナリオに含まれる各項目の中で実行に要した時間が長い処理を抽出しておき、各利用者がそのときの状況を思い出して分析する手法である。この手法では、所要時間により定量的な評価ができるために、時間軸方向のボトルネックの抽出が可能である。しかし、緊急時における作業のため、記憶が曖昧になっており、正しい分析ができない可能性が高い。また、改善が必要な所要時間の短い項目について、分析漏れの可能性がある。
2つ目の手法は、シナリオに含まれる各項目の中で実行に要した時間が長い処理を抽出しておき、各利用者が対応時にメモを残して、そのメモを見ながらそのときの状況を利用者自身が思い出す、若しくは他者が判断して分析する手法である。この手法では、所要時間により定量的な評価ができるために、時間軸方向でのボトルネックの抽出が可能である。また、メモを見ることで所要時間以外の情報が得られ、そのときの状況を分析しやすくなる。しかし、メモの書き方には個人差があり、他者が評価する場合に正しく理解されるかどうか不確定な部分がある。更に、メモの内容が定量化されていないために、改善が必要な項目を自動的に抽出することができず、1つ1つのメモの内容を呼んで判断する必要がある。また、1つ目の手法と同様に、改善が必要な所要時間の短い項目について、分析漏れの可能性がある。
【0008】
実際の災害発生時等の緊急時には、迅速に状況判断する必要のある緊急性の高い項目が多く、利用者は確信が低い処理についても、シナリオに沿って処理を進めていく必要が生じる。
訓練時や実際の緊急時における対応では、一度下した判断を元に作業が進行していくため、処理に対する自信を表す確信度の低い判断が続いた場合に利用者が不安を抱き、的確な判断ができなくなるといった悪循環が生じたり、判断自体の修正や指示の修正をしたい場合に対応できないという問題点があった。
また、訓練や実際の緊急時での対応履歴を振り返って分析する場合、対応項目によっての所要時間も異なることから、単に所要時間が長いだけではその部分の対応状況に問題があったのかどうか判断できないという問題点があった。同様に、シナリオを検証する場合にも、単に所要時間が長いだけではその部分のシナリオの改善が必要なのか、利用者の能力に依存するのか、そもそも時間を要する作業であったのかが判断できないという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明では、上記の問題に鑑み、修正すべきシナリオが進行しつつある状況を早急に察知して、速やかに修正することを可能とするとともに、シナリオの最適化の検証を容易に可能な緊急時指揮支援技術を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために、緊急時指揮支援サーバ、緊急時のシナリオ最適化方法、及びコンピュータプログラムを提供する。
【0011】
本発明の緊急時指揮支援サーバは、1以上のクライアント端末との間でデータの送受信が可能な緊急時指揮支援サーバである。この緊急時指揮支援サーバは、前記1以上のクライアント端末の各々の利用者に処理を行わせるための指示が規定されたシナリオを記憶する第1記憶手段と、前記指示を順次所定のクライアント端末に表示させるとともに、当該指示に対する処理への前記利用者の確信度を当該クライアント端末から順次受け付けて、前記確信度を指示毎に所定の第2記憶手段に記憶させ、前記確信度を定量的に表す確信度値の累積値が所定の条件を満たす場合に、前記確信度値により確信度が低いと判断された指示の一覧を前記クライアント端末に表示させて、このクライアント端末から前記一覧に表示された指示の修正が依頼されると、前記シナリオの当該指示の修正を行うシナリオ実行手段と、を備える。
【0012】
本発明の緊急時指揮支援サーバは、指示毎に確信度を付与して、確信度が一定の条件に達したときにシナリオの速やかな修正を行うことを可能にしている。そのために、適切なシナリオの進行を管理することができる。また、入力された確信度と時間の関係から、訓練時に、シナリオのボトルネックとなる点を抽出することが可能となり、より効果的なシナリオ作成を行うことができる。
【0013】
前記シナリオ実行手段は、いずれか一人の利用者のクライアント端末に、前記一覧を、指示された処理を行った利用者名とともに表示させ、当該クライアント端末から前記一覧に表示された指示の修正が依頼される場合に、当該指示を行った利用者のクライアント端末に修正内容の入力を依頼するメッセージを送信して、このクライアント端末から修正内容が入力されると前記シナリオの当該指示の修正を行うように構成されていてもよい。このような構成では、いずれか一人の利用者(例えば統括責任者)がシナリオ全体の進行を把握して修正の有無を判断するために、シナリオ通りに適正に対応が行われているかが容易に判断できる。
他に、前記シナリオ実行手段は、第2記憶手段に前記確信度を利用者毎に記憶させておき、前記確信度値の累積値を利用者毎に算出して、算出した累積値が前記所定の条件を満たす場合に、当該利用者のクライアント端末に、前記確信度値により確信度が低いと判断された指示のうち当該利用者が処理した指示の一覧を表示させるように構成されていてもよい。このような構成では、利用者毎に、直接シナリオの修正依頼を受け付けることが可能になり、利用者が、自身の処理について早期に対応することができる。
【0014】
本発明の緊急時のシナリオ最適化方法は、1以上のクライアント端末との間でデータの送受信が可能であり、前記1以上のクライアント端末の各々の利用者に処理を実行させるための指示が規定されたシナリオを記憶する緊急時指揮支援サーバにより実行される方法である。この方法は、前記指示を順次所定のクライアント端末に表示させる段階と、前記指示に対する処理への前記利用者の確信度を当該クライアント端末から順次受け付けて、前記確信度を指示毎に所定の記憶手段に記憶させる段階と、前記確信度を定量的に表す確信度値の累積値が所定の条件を満たす場合に、前記確信度値により確信度が低いと判断された指示の一覧を前記クライアント端末に表示させる段階と、前記クライアント端末から前記一覧に表示された指示の修正が依頼される場合に、前記シナリオの当該指示の修正を行う段階と、を含む。
【0015】
本発明のコンピュータプログラムは、1以上のクライアント端末との間でデータの送受信が可能であり、前記1以上のクライアント端末の各々の利用者に処理を行わせるための指示が規定されたシナリオを記憶するコンピュータに、前記指示を順次所定のクライアント端末に表示させる処理、前記指示に対する処理への前記利用者の確信度を当該クライアント端末から順次受け付けて、前記確信度を指示毎に所定の記憶手段に記憶させる処理、前記確信度を定量的に表す確信度値の累積値が所定の条件を満たす場合に、前記確信度値により確信度が低いと判断された指示の一覧を前記クライアント端末に表示させる処理、前記クライアント端末から前記一覧に表示された指示の修正が依頼される場合に、前記シナリオの当該指示の修正を行う処理、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、指示に対する回答に確信度を付与して、確信度を定量的に表す確信度値の累積値が所定の条件に達することでクライアント端末からの修正依頼を受け付けるために、シナリオの修正を早期に行うことができる。また、シナリオの最適化の検証が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の緊急時指揮支援システムの全体構成図である。
【図2】緊急対応リポジトリに格納される雛形の例示図である。
【図3】緊急対応シナリオの例示図であり、図3(a)はシナリオ概要テーブル、図3(b)は担当情報テーブル、図3(c)は大項目テーブル、図3(d)は累積確信度上限テーブル、図3(e)はノード情報テーブルを表す。
【図4】緊急対応履歴の例示図であり、図4(a)はノード履歴テーブル、図4(b)は確信度履歴テーブルを表す。
【図5】緊急対応シナリオの処理フローチャートであり、図5(a)はメインの処理、図5(b)は状況確認処理のを表す。
【図6a】緊急時指揮支援サーバにおいて実行される処理のフローチャートである。
【図6b】緊急時指揮支援サーバにおいて実行される処理のフローチャートである。
【図7】本部のクライアント端末に表示される画面の例示図である。
【図8】図6aのフローチャートによる一連の処理を表す図である。
【図9】図6aのフローチャートによる一連の処理を表す図である。
【図10】図6aのフローチャートによる一連の処理を表す図である。
【図11】確認ノードリストの例示図である。
【図12】ノード履歴テーブルの例示図である。
【図13】修正対象と取消対象処理の一覧の例示図である。
【図14】修正時の一連の処理を表す図である。
【図15】修正時の一連の処理を表す図である。
【図16】図6bのフローチャートによる一連の処理を表す図である。
【図17】修正候補の一覧の例示図である。
【図18】修正時の一連の処理を表す図である。
【図19】修正時の一連の処理を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の緊急時指揮支援システムの全体構成図である。
緊急時指揮支援システム1は、緊急時指揮支援サーバ2及び1以上のクライアント端末3がネットワークLを介して接続されて構成される。ネットワークLは、緊急時指揮支援サーバ2とクライアント端末3との間でデータの送受信が可能であれば、公衆回線、LAN(Local Area Network)のような構内回線、或いはこれらを組み合わせたもの等どのような構成でもよく、また、有線、無線を問わない。
【0019】
クライアント端末3は、利用者毎に設けられておりネットワークLを介して、緊急時指揮支援サーバ2との間でデータの送受信を行う。この実施形態では、クライアント端末3が、本部、消火班、救護班の各利用者に対して設けられている。クライアント端末3は、緊急時指揮支援サーバ2から送られてくるデータを表示するためのディスプレイ及び利用者によるデータの入力を可能にするためのキーボード、マウスなどの入力装置が接続された、パーソナルコンピュータやPDA、携帯電話機等の情報処理装置である。クライアント端末3は、シナリオの策定時には策定用のデータを入力するためのシナリオ編集用端末として用いられ、緊急対応時にはシナリオの実行に伴って緊急時指揮支援サーバ2からの様々な情報を利用者に提供するとともに利用者からの入力を緊急時指揮支援サーバ2に送信するための緊急対応支援用端末として用いられ、緊急対応計画分析時には履歴分析用端末として用いられる。
【0020】
緊急時指揮支援サーバ2は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及び本発明のコンピュータプログラムを記憶する記憶装置を備えており、起動時に、コンピュータプログラムを実行するようになっている。緊急時指揮支援サーバ2は、大容量記憶装置が内蔵或いは外付けされている。緊急時指揮支援サーバ2は、上記のようなハードウェア構成でコンピュータプログラムを実行することで、緊急対応時のシナリオ(緊急対応シナリオ)の策定を行うための緊急対応シナリオエディタ部21、緊急対応シナリオを実行するための緊急対応シナリオ実行エンジン22、緊急対応シナリオの実行結果を分析するための緊急対応履歴分析部23を形成するとともに、大容量記憶装置にデータベース24を構築する。
データベース24は、緊急対応シナリオ作成を容易にするための一般的な緊急対応計画の雛形を格納する緊急対応リポジトリ241と、策定した緊急対応シナリオを蓄積するための緊急対応シナリオライブラリ242と、報告書の作成及び対応履歴の分析を行うために緊急対応履歴を記録する緊急対応履歴データベース(以下、DBを記す。)243とを含んでいる。
【0021】
図2は、緊急対応リポジトリ241に格納される雛形の例示図である。緊急対応リポジトリ241は、緊急時のワークフローに応じて規定された緊急対応シナリオを作成するための処理の雛形を、大分類、中分類、小分類で分けられる分類毎に記憶している。これらの雛形を利用して、利用者が緊急対応時に実施する具体的な作業を洗い出し、作業手順を決めて、対応の項目及び回答タイプなどの基本的な事項について設定して、緊急対応シナリオを作成する。
【0022】
図3(a)〜(e)は、緊急対応シナリオの例示図である。緊急対応シナリオは、図3(a)に示すシナリオ概要テーブル、図3(b)に示す担当情報テーブル、図3(c)に示す大項目テーブル、図3(d)に示す累積確信度上限テーブル、及び図3(e)に示すノード情報テーブル、の5つのテーブルから構成される。
シナリオ概要テーブルには、緊急対応シナリオのシナリオ名、バージョン、作成日、編集日、作成者が記録される。
担当情報テーブルには、利用者(担当者)の所属と、利用者が使用するクライアント端末3のアカウントとして例えばクライアント端末3のIPアドレスと、が記録される。緊急時指揮支援サーバ2は、アカウントによりクライアント端末3を識別可能になっており、データを送受信する場合に、アカウントにより送受信先のクライアント端末3が特定可能になっている。
大項目テーブルには、この緊急対応シナリオで実行される一連の作業をまとめた大項目の項目名が記録される。大項目を記録することで、緊急対応シナリオをいくつかの意味のあるまとまりに整理することができる。項目名を、例えば小項目まで1つ1つ羅列したものでは、シナリオ作成時、実行時、分析時のすべてにおいて状況の把握がしにくいためである。
累積確信度上限テーブルには、緊急対応シナリオ全体における累積確信度の上限値が記録される。例えば、処理に対する利用者の自信を表す確信度を定量化した値と個数の組み合わせで算出される累積値の上限値を設定しておき、上限値を超えた場合には利用者への確認なしに、この先の処理へは進めなくする。
【0023】
ノード情報テーブルには、利用者により緊急対応シナリオに沿って実行される具体的な処理の単位をノードとし、その内容がノード情報として記録される。ノード情報には、対応の項目及び回答タイプなど基本的な事項についてそれぞれ設定されている。1つ1つのノード情報には項目IDが振られ、属する大項目名、メッセージの種別(質問、作業指示、参考情報等)、実施する利用者(担当)、表示されるメッセージ、回答タイプ、回答タイプ毎の次のフローの遷移先の項目ID、確信度制限の有無、取消制限の可否、取消処理の有無が記録される。
確信度制限は、累積確信度上限テーブルに累積確信度の上限値が設定されている場合に、「あり」と表示され、設定されていない場合に「なし」と表示される。確信度制限が「あり」の場合には、累積確信度の上限値をノード情報に設定できる
取消制限は、フローの取消処理の可否を設定する。例えば、フローの取消が不可の場合には、ユーザへの確認なしにこのノードから先へはフローを進めない。
取消処理は、ノード状態や回答内容等の修正により既に実行されたノードの取消を行う場合に用いられ、ここに設定された処理が実行される。設定がない場合には、関係する利用者へ取消通知と修正内容、修正者、取消ノード一覧(メッセージノードのみ)を表示する。
【0024】
図4は、緊急対応履歴の例示図である。緊急対応履歴は、図4(a)に示すノード履歴テーブルと、図4(b)に示す確信度履歴テーブルの2つのテーブルから構成される。
ノード履歴テーブルは、緊急対応シナリオのノード情報毎の履歴を記録する。各ノード情報の項目IDは、元となる緊急対応シナリオの項目IDと同じであり、それぞれに利用者(実施者)が実行した際の確信度の高低、確信度メモが記録される。メッセージの表示開始時刻、実行終了時刻、メッセージに回答した利用者も自動的に記録される。質問や作業指示に対しては、回答が記録される。また、メッセージの表示状態が回答待ちの場合には「待」、回答済みの場合には「済」が記録される。遡り禁止フラグは、初期値は「許可」であるが、取消制限が「否」と設定されたノード情報を通過した場合に、そのノード情報よりも前のノード情報に「禁止」が設定される。修正メモは、実行中に確信度やフローの遡り処理を実行した場合に、修正を実施した利用者により修正した理由が記入されて、履歴として記録される。取消時刻には、フローの遡り処理を実行した場合に、その処理時刻が記録される。
確信度履歴テーブルでは、累積確信度を計算するために各利用者の確信度の累積結果を格納する。確信度は、「度数」によって確信度値として定量化されており、各確信度の度数と回数との積をすべて加算した値が累積確信度になる。累積確信度は、全利用者、利用者毎について算出可能である。
【0025】
累積確信度は、本実施形態では、確信度の度数に回数を乗じたものの平均としている。この場合、回答全体での確信度の低い回答の割合で判断することとなる。別の方法として、確信度の低い回答の回数により判断することも可能である。これは、直接、確信度の低い回答の回数に上限を設定する。その場合に確信度テーブルは、さらに、確信度の度数ごとに、上限とする回数を設定する。
【0026】
<処理手順>
このような緊急時指揮支援システム1では、緊急時の指揮に用いられる緊急対応シナリオの作成、緊急対応シナリオによる訓練時や実際の緊急時の対応指示、緊急対応シナリオの分析処理が行われる。
【0027】
・緊急対応シナリオの作成
緊急対応シナリオの作成は、クライアント端末3からの指示に応じて、緊急時指揮支援サーバ2の緊急対応シナリオエディタ部21により実行される。緊急対応シナリオエディタ部21は、シナリオ編集用端末として機能するクライアント端末3から、シナリオ作成要求を受信することで緊急対応シナリオの作成を開始する。シナリオ作成の際には、緊急対応シナリオエディタ部21により、クライアント端末3のディスプレイにシナリオ作成を支援するための作成画面が表示される。シナリオ編集用端末として機能するクライアント端末3は、本部、消火班、救護班のいずれのものでもよいが、通常は本部のクライアント端末3を用いる。
【0028】
利用者は、緊急対応リポジトリ241の雛形を参考としながら、少なくとも、ノード情報に示される処理を行う利用者の所属(担当)及び次に遷移すべきノード情報を表す遷移情報を含む必要事項を入力する。これらの入力事項により緊急対応シナリオが作成されて、緊急対応シナリオライブラリ242に登録される。この際、複数のノード情報のつながりを1つの雛形として緊急対応リポジトリ241に登録しておき、これを編集する事としてもよい。
作成された緊急対応シナリオは、表形式或いはフローチャート形式でクライアント端末3により印刷可能である。印刷物は、緊急対応マニュアルとして利用することができる。
【0029】
・緊急対応シナリオによる訓練時や実際の緊急時の対応指示
このようにして作成された緊急対応シナリオを用いて、訓練或いは実際の緊急時の対応指示が行われる。
この場合、緊急対応シナリオ実行エンジン22は、緊急対応シナリオライブラリ242から読み出した緊急対応シナリオのノード情報テーブルに記録された各メッセージをノード情報順に読み出して、処理を実行することになる利用者のクライアント端末3に表示させる。また、緊急対応シナリオ実行エンジン22は、対応状況をクライアント端末3から受け取って、緊急対応履歴243のノード履歴テーブルの該当する項目IDに関連付けて記録する。
【0030】
訓練或いは実際の緊急時の対応指示が行われるには、クライアント端末3において、各利用者が作業を時系列で把握しやすいように、緊急対応シナリオを図5のようなフローチャートの形式で表現することもできる。図5(a)は、メインの処理のフローチャートであり、シナリオ全体の処理の流れを表している。図5(b)は、状況確認処理のフローチャートである。状況確認処理は、図3(e)の項目ID1−1〜1−4で示されており、図5(b)では、各項目IDで示される処理が誰に対する指示かが視覚的にわかるようになっている。図5(c)が、現場対応処理のフローチャートである。現場対応処理は、図3(e)の項目ID2−1〜2−6で示されており、図5(c)では、各項目IDで示される処理が誰対する指示かが視覚的にわかるようになっている。
【0031】
訓練或いは実際の緊急時の対応では、緊急対応シナリオに沿って、メッセージの読み出し処理、回答処理、確信度判定処理、修正処理が行われる。図6(a)、(b)はこれらの処理を含む緊急時指揮支援サーバ2において実行される処理のフローチャートであり、図3の緊急対応シナリオを実行する場合を示す。図6(a)の一連の処理は図8〜図10で表され、図6(b)の一連の処理は図16で表される。
【0032】
緊急時指揮支援サーバ2は、緊急対応シナリオ実行エンジン22により緊急対応シナリオライブラリ242の「火災対応」の緊急対応シナリオから項目IDの順にメッセージを読み出して、該当する利用者のクライアント端末3に、図7のような画面を表示させる。図7は、本部のクライアント端末3に表示される画面の例示図である。画面には、緊急対応シナリオのシナリオ名等のシナリオ情報、利用者についての利用者情報の他に、作業指示、利用者への質問、参考情報等のメッセージが表示される。また、質問への回答の入力を可能にする。これにより利用者毎に質問、作業指示、参考情報が提供される(ステップS10)。また、緊急時指揮支援サーバ2は、緊急対応シナリオ実行エンジン22によりメッセージを読み出すと、ノード履歴テーブルに、通知したメッセージの項目ID、メッセージの表示開始日時、メッセージの表示状態「待」を記録する。
なお、読み出した緊急対応シナリオのノード情報が項目ID10−1になると、処理は終了する。
【0033】
利用者は、クライアント端末3により表示されたメッセージに応じた対応を行う。例えば、図7の画面において、利用者が作業指示に対応して回答「はい」ボタンを押下し、確信度及び確信度メモを入力する。クライアント端末3は、これらの入力内容を、利用者名及び対応する項目IDとともに緊急時指揮支援サーバ2に送信する。緊急時指揮支援サーバ2は、緊急対応シナリオ実行エンジン22により、クライアント端末3から送信されたこれらの入力内容を受信して(ステップS20)、ノード履歴テーブルの対応する項目IDに記録する。また、取消処理が禁止となっている場合、遡りフラグを不許可として記録するとともに、ノード情報を遡って、すべての遡りフラグを不許可に変更する(ステップS30)。
【0034】
ノード履歴テーブルへの記録後に、緊急対応シナリオ実行エンジン22は、累積確信度が閾値を超えていないか確認する。まず、緊急対応シナリオライブラリ242から累積確信度上限(閾値)を、緊急対応履歴243から確信度履歴テーブルを、それぞれ読み出す。累積確信度は、例えば式(1)で表され、確信度履歴テーブルの確信度の度数に回数を乗じたものの平均として算出される(ステップS40)。算出した結果と閾値との大小関係により判定が行われる。回答されたノードの利用者毎及び全体のノードを対象として、各ノードへの回答がある度に判定を行う。
累積確信度=Σ(度数×回数)/Σ(回数) …(1)
【0035】
累積確信度の判定により、累積確信度が閾値以下と判定される場合には、ステップ10に戻り、次の指示が利用者に提示される(ステップS50:閾値以下)。以上の一連の処理は、図8に示される。
【0036】
累積確信度の判定により、累積確信度が閾値を超えると判定される場合には、2通りの処理パタンある。
1つは、実行中の緊急対応シナリオ全体の累積確信度が累積値を超えた場合に、緊急対応シナリオの実行の統括責任者に対して確信度が低い回答の一覧を表示して、統括責任者が各利用者に確認を行う処理である(図6(a))。この実施形態において統括責任者は、本部の利用者である。この処理は図9、図10に示される。
もう1つは利用者毎に累積確信度の判定を行い、累積確信度が閾値を超えた利用者に対してのみ、緊急時指揮支援サーバ2から直接確認を行う処理である(図6(b))。この処理は図16に示される。
【0037】
図6(a)、図9、及び図10により、ステップS50で累積確信度が閾値を超過して、シナリオの統括責任者が確認処理をする場合について説明する。これは、緊急対応シナリオ全体の進行を把握して確認すべきか否かを判断するため、ノード全体を対象とし、緊急対応シナリオに沿って適正に対応が行われているかを判断することを目的とする。
消火班に対する作業指示である項目ID2−2のノードのメッセージ「本部からの指示に従い、消火活動を開始してください。」に対して、消火班のクライアント端末3から回答及びメッセージに対する確信度の低い判断が入力され、次いで確信度判定処理における累積確信度が閾値を超える場合を例に、ステップS51〜ステップS56の処理を説明する。ここで、累積確信度の計算は、全利用者についての値を合計して閾値と比較する。
【0038】
確信度判定処理において、累積確信度が閾値を超えたと判断された場合(ステップS50:閾値を超過)、緊急対応シナリオ実行エンジン22はノード履歴テーブルの遡りフラグが許可されたノードのうち、確信度が低いノード情報を抽出して、確認ノードリストを作成する。確認ノードリストは、所定の確信度以下のノード情報を抽出して作成してもよく(例えば図4(b)において確信度の度数を所定値と比較して抽出する。)、すべてのノード情報を抽出して、確信度の低い順(度数の比較)にソートして作成してもよい。図11は、図4(a)のノード履歴テーブルから作成された確認ノードリストの例示図である。緊急対応シナリオ実行エンジン22は、本部のクライアント端末3に対して、「現在実行中のシナリオの累積確信度が閾値を超えました。」等のメッセージを通知するとともに、作成した確認ノードリストを送信して、クライアント端末3に表示させる。表示に当たっては、本部の利用者が前後の処理関係を把握しやすくするため、フローチャートとともに提示してもよい(ステップS51、S52)。
【0039】
本部の利用者がクライアント端末3に提示された確認ノードリストの中から、確認が必要とされたノード(例えば項目ID1−3)を選択すると、選択されたノードの項目IDが緊急時指揮支援サーバ2の緊急対応シナリオ実行エンジン22に通知される。
緊急対応シナリオ実行エンジン22は、通知された項目IDのノード情報から、ノードに回答した利用者のクライアント端末3(この実施形態では消火班のクライアント端末3)に対して、内容確認依頼メッセージを通知する。これにより利用者へ確認依頼を行う(ステップS53)。
【0040】
消火班の利用者は、クライアント端末3で内容確認依頼メッセージを確認して、本部からの問い合わせに対して確認を行う。ここでは、利用者により、「確認内容の変更」、「確信度の変更」、「保留」のいずれかの処理が選択される。
「保留」が選択された場合は、次に確信度の低いノードが選択され、同様の処理が行われる。
「確信度の変更」が行われた場合、履歴に対して確信度が変更され、緊急時指揮支援サーバ2において再度、確信度判定処理が行われる。その結果、確信度が閾値を超えないと判断される場合は、緊急時指揮支援サーバ2は、同様に、確信度の低いノードの一覧を抽出して、本部のクライアント端末3に表示させる。
「発煙筒が発見され火災ではなかった」等の確認内容の変更が行われた場合は、少なくともノードID、修正内容、及びメモを含む修正メッセージを作成して、消火班のクライアント端末2から緊急時指揮支援サーバ2の緊急対応シナリオ実行エンジン22に送信する。
ステップS52、S53の処理は、確認ノードリストのすべてのノードに対して行われる。すべてのノードについてのステップS52、S53の処理が終了すると、ステップS54へ移る。
【0041】
緊急時指揮支援サーバ2は、修正メッセージの有無により、シナリオの修正の有無を判断する。修正メッセージを受信しない場合には、シナリオの修正が無いと判断して(ステップS54:無)、ステップS10の処理に移る。
緊急時指揮支援サーバ2は、修正メッセージを受信すると、シナリオの修正があると判断する(ステップS54:有)。
【0042】
緊急時指揮支援サーバ2は、修正メッセージを受信して、緊急対応シナリオ実行エンジン22により該ノードIDに対応する履歴(項目ID1−3)「火災は発生していましたか?」の回答を「はい」から「いいえ」に変更して、「発煙筒が発見された。火災ではなかったことを確認した。回答を「はい」から「いいえ」に変更する。」という内容の修正メモを記述する。ノード履歴テーブルには図12の例示図のように該当IDのメッセージに修正メモと取り消されたメッセージに取消日時を記録する(ステップS55)。
【0043】
緊急対応シナリオ実行エンジン22は、ノード情報を修正すると、修正したノード情報以降の既に実行済みのノード情報を緊急対応履歴から抽出し、抽出されたノード情報を対応したクライアント端末3に、「本部にて修正が実行されました。『発煙筒が発見された。火災ではなかったことを確認した。回答を「はい」から「いいえ」に変更する。』とのことです。」という内容のメッセージと取消処理一覧表を表示する。図13は、修正対象と取消対象処理の一覧の例示図である。
【0044】
緊急対応シナリオ実行エンジン22は、修正したノード情報の次のノード情報を読み出し、該当する利用者のクライアント端末3の画面にメッセージを表示して、ステップS10に処理が戻る(ステップS56)。なお、ユーザが前後の処理関係を把握しやすくするために、上記の処理の際に、図14、図15のような修正時の一連の処理を表すフローチャートを該当するクライアント端末3に表示してもよい。
【0045】
確信度が一定の閾値を超え、上記のように確認が行われている場合、同一の緊急対応シナリオであっても、同時に複数の利用者のクライアント端末3に、メッセージが送信される場合がある。その場合、各利用者からメッセージが返ってきたとしても、次のノード情報の読み出しを一時的に停止させ、緊急対応シナリオ全体の進行を、一定の確信度を上回るまで停止させてもよい。
さらに、緊急対応シナリオ全体に対して確信度判定処理を行う場合は、各利用者から回答が返された都度ではなく、次のメッセージを読み出した際に、該メッセージのノード情報の取消制限の有無を判定し、取消制限が「有」となった場合にのみ、実行するようにしてもよい。こうすることで、効率的に緊急対応シナリオの進行を正しい方向に修正することができる。
【0046】
図6(b)及び図16により、ステップS50で累積確信度が閾値を超過して、累積確信度が閾値を超えた利用者に対してのみ、緊急時指揮支援サーバ2から直接確認を行う場合の処理について説明する。この処理では、局所的に極端に確信度が低い場合に、早期に確認すべき事項を検出することが可能である。緊急時指揮支援サーバ2は、修正有無を確認し、確信度の低い質問メッセージの“回答”を変更し、フローが変更となる処理について示す。
【0047】
消火班に対する作業指示のノード情報(項目ID2−2)のメッセージ「本部からの指示に従い、消火活動を開始してください。」に対する確信度判定処理の結果、消火班の累積確信度が閾値を超えたと判定されると、緊急対応シナリオ実行エンジン22は、消火班のクライアント端末3に対して、「確信度の低い回答が続いていますが、このままシナリオの実行を継続しますか?継続する場合は“はい”を、遡って修正したい場合は“いいえ”を選択してください。」といった内容の確認メッセージを消火班のクライアント端末3に通知して表示させる(ステップS61)。
【0048】
消火班の利用者は、この通知に対して“はい”又は“いいえ”のいずれかを選択して、緊急対応シナリオ実行エンジン22に回答する。この回答により、緊急対応シナリオ実行エンジン22は、当該利用者がシナリオの実行を継続するか否かを判断する(ステップS62)。
【0049】
緊急対応シナリオ実行エンジン22は、消火班のクライアント端末3から、“はい”の回答を受け取ると、次のノード情報を読み出して、緊急対応シナリオの継続して実行する(ステップS62:継続、ステップS10)。
緊急対応シナリオ実行エンジン22は、消火班のクライアント端末3から、“いいえ”の回答を受け取ると、続いて消火班のクライアント端末3から、修正依頼メッセージを受け取る(ステップS62:継続せず修正)。緊急対応シナリオ実行エンジン22は、修正依頼メッセージを受信すると、消火班の確信度の低い実施済みノードを修正候補として抽出して、消火班のクライアント端末3に表示させる(ステップS63)。図17は、修正候補の一覧の例示図である。
消火班の利用者はクライアント端末3により、提示された一覧の中から、修正すべきノードを選択する。
【0050】
以下、図6(a)と同様に、ノードの修正が行われると、シナリオ実行エンジンは修正されたノード以降の実行済みノードを抽出し、該ノードを対応した担当者にその旨、通知を行う(ステップS64〜67)。なお、ユーザが前後の処理関係を把握しやすくするために、上記の処理の際に、図18、図19のような修正時の一連の処理を表すフローチャートを該当するクライアント端末3に表示してもよい。
【0051】
・緊急対応シナリオの分析処理
緊急対応シナリオの分析処理は、以下のように行われる。
分析処理では、ボトルネックとなっているノード情報を抽出し、当該ノード情報におけるメッセージ内容を検討して、ノード情報を複数に分割したり、また、対応する利用者を変更する等の編集を行う。具体的には緊急対応履歴分析部23が、緊急対応履歴243からノード履歴テーブルを読み出して種々の分析を行い、具体的な見直しの候補となるノード情報の選定を行う。
【0052】
緊急対応シナリオの分析を行う利用者は、履歴分析用端末として機能するクライアント端末3を用いて緊急時指揮支援サーバ2にアクセスして、シナリオ作成分析処理を開始する。履歴分析用端末として機能するクライアント端末3は、本部、消火班、救護班のいずれのものでもよいが、通常は本部のクライアント端末3を用いる。
緊急対応履歴分析部23は、ノード履歴テーブルから過去に実行されたノード情報を読み出し、表示時間と終了時間から求められる対応時間及び入力された確信度から、対応時間が長く且つ確信度が低いノード情報を抽出する。
【0053】
利用者は抽出されたノード情報に対し、ノード情報の指示事項の変更やノード情報の分割、削除等のノード情報の編集を行う。ここで、各ノード情報を対応時間と確信度の2軸を持つグラフ上に表示させ、利用者に選択させてもよい。
また、編集対象となるノード情報の抽出には、種々の方法が考えられる。例えば、複数回の訓練時に取得された緊急対応履歴から、確信度判定処理によって、修正されたノード情報のうち、特に変更の多いノード情報を抽出したり、変更によって多くの取消となったノード情報の数を元に抽出してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…緊急時指揮支援システム、2…緊急時指揮支援サーバ、3…クライアント端末、21…緊急対応シナリオエディタ部、22…緊急対応シナリオ実行エンジン、23、緊急対応履歴分析部、24…データベース、241…緊急対応リポジトリ、242…緊急対応シナリオライブラリ、243…緊急対応履歴データベース、L…ネットワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震や火災等の災害に対して企業や行政体が危機管理対応を行う際に、必要なワークフローに沿ったシナリオの策定を容易かつ効率的に行い、実際の対応の意思決定判断を支援するための緊急時指揮支援技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークフローに応じて各々が役割を持つ複数の利用者に、適切なタイミングで必要な指示や情報を提示したり、判断を求めたりする緊急時指揮支援システムが提案されている。特許文献1〜3には、このような従来の緊急時指揮支援システムについての技術が開示されている。また、本出願人もAgADIS(登録商標)、NoKeos(登録商標)といった緊急時指揮支援システムを従来から提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−334078号公報
【特許文献2】特開平11−15875号公報
【特許文献3】特開2002−259887号公報
【0004】
緊急時指揮支援システムでは、災害の発生した現場や各方面から収集された情報等を用いて、ワークフローに応じて予め規定されたシナリオに沿って、対応方針が決定される。「シナリオ」は、緊急時の対応や行動が規定されており、事前に想定される事態の推移に応じて、緊急対応に必要な対応方針、マニュアル、経験・ノウハウ等と時間の概念を組み合わせて作成されている。
【0005】
緊急時指揮支援システムでは、実際の災害発生時を想定して、想定外のシナリオが発生したり、途中の判断が間違った場合に対応するために、シナリオの修正を可能にする必要がある。また、実際の訓練を通じてシナリオを検証して、シナリオの最適化を行うといった使い方が求められる。
【0006】
シナリオの修正には、下記のような3通りの手法がある。
1つ目の手法は、シナリオに沿った処理の実行途中における修正や誤りを考慮して、シナリオを作成する手法である。この手法では、既に入力した情報が正しいか否かを確認して、間違っている場合には該当するシナリオを再度実行するなどの修正対応を行うことまでをシナリオに組み込んでおく。これにより、きめ細かな修正対応行動の記述が可能になる。しかし、シナリオ毎に確認処理を記述することが必要となり、シナリオ作成に手間がかかる。
2つ目の手法は、シナリオの制御を該当の修正箇所まで無理やり移し、そこから再実行する手法である。この手法では、修正の必要な入力箇所にシナリオの制御を無理やり移してからシナリオを再実行する。この手法は、シナリオの制御の変更のみであるために、実現が容易である。しかし、場合によっては既に実施済みの処理と矛盾する指示が行われる可能性があり、利用者に混乱を招く可能性が高い。
3つ目の手法は、修正を行いたいタイミングで、その場でシナリオを作り直す手法である。この手法では、シナリオにない状況に柔軟に対応できる。しかし、緊急時での作業のために的確なシナリオ修正ができない可能性があり、場合によっては既に実施済みの処理と矛盾する指示が行われることも考えられ、利用者に混乱を招く可能性が高い。
【0007】
シナリオの分析については、下記のような2通りの手法がある。
1つ目の手法は、シナリオに含まれる各項目の中で実行に要した時間が長い処理を抽出しておき、各利用者がそのときの状況を思い出して分析する手法である。この手法では、所要時間により定量的な評価ができるために、時間軸方向のボトルネックの抽出が可能である。しかし、緊急時における作業のため、記憶が曖昧になっており、正しい分析ができない可能性が高い。また、改善が必要な所要時間の短い項目について、分析漏れの可能性がある。
2つ目の手法は、シナリオに含まれる各項目の中で実行に要した時間が長い処理を抽出しておき、各利用者が対応時にメモを残して、そのメモを見ながらそのときの状況を利用者自身が思い出す、若しくは他者が判断して分析する手法である。この手法では、所要時間により定量的な評価ができるために、時間軸方向でのボトルネックの抽出が可能である。また、メモを見ることで所要時間以外の情報が得られ、そのときの状況を分析しやすくなる。しかし、メモの書き方には個人差があり、他者が評価する場合に正しく理解されるかどうか不確定な部分がある。更に、メモの内容が定量化されていないために、改善が必要な項目を自動的に抽出することができず、1つ1つのメモの内容を呼んで判断する必要がある。また、1つ目の手法と同様に、改善が必要な所要時間の短い項目について、分析漏れの可能性がある。
【0008】
実際の災害発生時等の緊急時には、迅速に状況判断する必要のある緊急性の高い項目が多く、利用者は確信が低い処理についても、シナリオに沿って処理を進めていく必要が生じる。
訓練時や実際の緊急時における対応では、一度下した判断を元に作業が進行していくため、処理に対する自信を表す確信度の低い判断が続いた場合に利用者が不安を抱き、的確な判断ができなくなるといった悪循環が生じたり、判断自体の修正や指示の修正をしたい場合に対応できないという問題点があった。
また、訓練や実際の緊急時での対応履歴を振り返って分析する場合、対応項目によっての所要時間も異なることから、単に所要時間が長いだけではその部分の対応状況に問題があったのかどうか判断できないという問題点があった。同様に、シナリオを検証する場合にも、単に所要時間が長いだけではその部分のシナリオの改善が必要なのか、利用者の能力に依存するのか、そもそも時間を要する作業であったのかが判断できないという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明では、上記の問題に鑑み、修正すべきシナリオが進行しつつある状況を早急に察知して、速やかに修正することを可能とするとともに、シナリオの最適化の検証を容易に可能な緊急時指揮支援技術を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために、緊急時指揮支援サーバ、緊急時のシナリオ最適化方法、及びコンピュータプログラムを提供する。
【0011】
本発明の緊急時指揮支援サーバは、1以上のクライアント端末との間でデータの送受信が可能な緊急時指揮支援サーバである。この緊急時指揮支援サーバは、前記1以上のクライアント端末の各々の利用者に処理を行わせるための指示が規定されたシナリオを記憶する第1記憶手段と、前記指示を順次所定のクライアント端末に表示させるとともに、当該指示に対する処理への前記利用者の確信度を当該クライアント端末から順次受け付けて、前記確信度を指示毎に所定の第2記憶手段に記憶させ、前記確信度を定量的に表す確信度値の累積値が所定の条件を満たす場合に、前記確信度値により確信度が低いと判断された指示の一覧を前記クライアント端末に表示させて、このクライアント端末から前記一覧に表示された指示の修正が依頼されると、前記シナリオの当該指示の修正を行うシナリオ実行手段と、を備える。
【0012】
本発明の緊急時指揮支援サーバは、指示毎に確信度を付与して、確信度が一定の条件に達したときにシナリオの速やかな修正を行うことを可能にしている。そのために、適切なシナリオの進行を管理することができる。また、入力された確信度と時間の関係から、訓練時に、シナリオのボトルネックとなる点を抽出することが可能となり、より効果的なシナリオ作成を行うことができる。
【0013】
前記シナリオ実行手段は、いずれか一人の利用者のクライアント端末に、前記一覧を、指示された処理を行った利用者名とともに表示させ、当該クライアント端末から前記一覧に表示された指示の修正が依頼される場合に、当該指示を行った利用者のクライアント端末に修正内容の入力を依頼するメッセージを送信して、このクライアント端末から修正内容が入力されると前記シナリオの当該指示の修正を行うように構成されていてもよい。このような構成では、いずれか一人の利用者(例えば統括責任者)がシナリオ全体の進行を把握して修正の有無を判断するために、シナリオ通りに適正に対応が行われているかが容易に判断できる。
他に、前記シナリオ実行手段は、第2記憶手段に前記確信度を利用者毎に記憶させておき、前記確信度値の累積値を利用者毎に算出して、算出した累積値が前記所定の条件を満たす場合に、当該利用者のクライアント端末に、前記確信度値により確信度が低いと判断された指示のうち当該利用者が処理した指示の一覧を表示させるように構成されていてもよい。このような構成では、利用者毎に、直接シナリオの修正依頼を受け付けることが可能になり、利用者が、自身の処理について早期に対応することができる。
【0014】
本発明の緊急時のシナリオ最適化方法は、1以上のクライアント端末との間でデータの送受信が可能であり、前記1以上のクライアント端末の各々の利用者に処理を実行させるための指示が規定されたシナリオを記憶する緊急時指揮支援サーバにより実行される方法である。この方法は、前記指示を順次所定のクライアント端末に表示させる段階と、前記指示に対する処理への前記利用者の確信度を当該クライアント端末から順次受け付けて、前記確信度を指示毎に所定の記憶手段に記憶させる段階と、前記確信度を定量的に表す確信度値の累積値が所定の条件を満たす場合に、前記確信度値により確信度が低いと判断された指示の一覧を前記クライアント端末に表示させる段階と、前記クライアント端末から前記一覧に表示された指示の修正が依頼される場合に、前記シナリオの当該指示の修正を行う段階と、を含む。
【0015】
本発明のコンピュータプログラムは、1以上のクライアント端末との間でデータの送受信が可能であり、前記1以上のクライアント端末の各々の利用者に処理を行わせるための指示が規定されたシナリオを記憶するコンピュータに、前記指示を順次所定のクライアント端末に表示させる処理、前記指示に対する処理への前記利用者の確信度を当該クライアント端末から順次受け付けて、前記確信度を指示毎に所定の記憶手段に記憶させる処理、前記確信度を定量的に表す確信度値の累積値が所定の条件を満たす場合に、前記確信度値により確信度が低いと判断された指示の一覧を前記クライアント端末に表示させる処理、前記クライアント端末から前記一覧に表示された指示の修正が依頼される場合に、前記シナリオの当該指示の修正を行う処理、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、指示に対する回答に確信度を付与して、確信度を定量的に表す確信度値の累積値が所定の条件に達することでクライアント端末からの修正依頼を受け付けるために、シナリオの修正を早期に行うことができる。また、シナリオの最適化の検証が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の緊急時指揮支援システムの全体構成図である。
【図2】緊急対応リポジトリに格納される雛形の例示図である。
【図3】緊急対応シナリオの例示図であり、図3(a)はシナリオ概要テーブル、図3(b)は担当情報テーブル、図3(c)は大項目テーブル、図3(d)は累積確信度上限テーブル、図3(e)はノード情報テーブルを表す。
【図4】緊急対応履歴の例示図であり、図4(a)はノード履歴テーブル、図4(b)は確信度履歴テーブルを表す。
【図5】緊急対応シナリオの処理フローチャートであり、図5(a)はメインの処理、図5(b)は状況確認処理のを表す。
【図6a】緊急時指揮支援サーバにおいて実行される処理のフローチャートである。
【図6b】緊急時指揮支援サーバにおいて実行される処理のフローチャートである。
【図7】本部のクライアント端末に表示される画面の例示図である。
【図8】図6aのフローチャートによる一連の処理を表す図である。
【図9】図6aのフローチャートによる一連の処理を表す図である。
【図10】図6aのフローチャートによる一連の処理を表す図である。
【図11】確認ノードリストの例示図である。
【図12】ノード履歴テーブルの例示図である。
【図13】修正対象と取消対象処理の一覧の例示図である。
【図14】修正時の一連の処理を表す図である。
【図15】修正時の一連の処理を表す図である。
【図16】図6bのフローチャートによる一連の処理を表す図である。
【図17】修正候補の一覧の例示図である。
【図18】修正時の一連の処理を表す図である。
【図19】修正時の一連の処理を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の緊急時指揮支援システムの全体構成図である。
緊急時指揮支援システム1は、緊急時指揮支援サーバ2及び1以上のクライアント端末3がネットワークLを介して接続されて構成される。ネットワークLは、緊急時指揮支援サーバ2とクライアント端末3との間でデータの送受信が可能であれば、公衆回線、LAN(Local Area Network)のような構内回線、或いはこれらを組み合わせたもの等どのような構成でもよく、また、有線、無線を問わない。
【0019】
クライアント端末3は、利用者毎に設けられておりネットワークLを介して、緊急時指揮支援サーバ2との間でデータの送受信を行う。この実施形態では、クライアント端末3が、本部、消火班、救護班の各利用者に対して設けられている。クライアント端末3は、緊急時指揮支援サーバ2から送られてくるデータを表示するためのディスプレイ及び利用者によるデータの入力を可能にするためのキーボード、マウスなどの入力装置が接続された、パーソナルコンピュータやPDA、携帯電話機等の情報処理装置である。クライアント端末3は、シナリオの策定時には策定用のデータを入力するためのシナリオ編集用端末として用いられ、緊急対応時にはシナリオの実行に伴って緊急時指揮支援サーバ2からの様々な情報を利用者に提供するとともに利用者からの入力を緊急時指揮支援サーバ2に送信するための緊急対応支援用端末として用いられ、緊急対応計画分析時には履歴分析用端末として用いられる。
【0020】
緊急時指揮支援サーバ2は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及び本発明のコンピュータプログラムを記憶する記憶装置を備えており、起動時に、コンピュータプログラムを実行するようになっている。緊急時指揮支援サーバ2は、大容量記憶装置が内蔵或いは外付けされている。緊急時指揮支援サーバ2は、上記のようなハードウェア構成でコンピュータプログラムを実行することで、緊急対応時のシナリオ(緊急対応シナリオ)の策定を行うための緊急対応シナリオエディタ部21、緊急対応シナリオを実行するための緊急対応シナリオ実行エンジン22、緊急対応シナリオの実行結果を分析するための緊急対応履歴分析部23を形成するとともに、大容量記憶装置にデータベース24を構築する。
データベース24は、緊急対応シナリオ作成を容易にするための一般的な緊急対応計画の雛形を格納する緊急対応リポジトリ241と、策定した緊急対応シナリオを蓄積するための緊急対応シナリオライブラリ242と、報告書の作成及び対応履歴の分析を行うために緊急対応履歴を記録する緊急対応履歴データベース(以下、DBを記す。)243とを含んでいる。
【0021】
図2は、緊急対応リポジトリ241に格納される雛形の例示図である。緊急対応リポジトリ241は、緊急時のワークフローに応じて規定された緊急対応シナリオを作成するための処理の雛形を、大分類、中分類、小分類で分けられる分類毎に記憶している。これらの雛形を利用して、利用者が緊急対応時に実施する具体的な作業を洗い出し、作業手順を決めて、対応の項目及び回答タイプなどの基本的な事項について設定して、緊急対応シナリオを作成する。
【0022】
図3(a)〜(e)は、緊急対応シナリオの例示図である。緊急対応シナリオは、図3(a)に示すシナリオ概要テーブル、図3(b)に示す担当情報テーブル、図3(c)に示す大項目テーブル、図3(d)に示す累積確信度上限テーブル、及び図3(e)に示すノード情報テーブル、の5つのテーブルから構成される。
シナリオ概要テーブルには、緊急対応シナリオのシナリオ名、バージョン、作成日、編集日、作成者が記録される。
担当情報テーブルには、利用者(担当者)の所属と、利用者が使用するクライアント端末3のアカウントとして例えばクライアント端末3のIPアドレスと、が記録される。緊急時指揮支援サーバ2は、アカウントによりクライアント端末3を識別可能になっており、データを送受信する場合に、アカウントにより送受信先のクライアント端末3が特定可能になっている。
大項目テーブルには、この緊急対応シナリオで実行される一連の作業をまとめた大項目の項目名が記録される。大項目を記録することで、緊急対応シナリオをいくつかの意味のあるまとまりに整理することができる。項目名を、例えば小項目まで1つ1つ羅列したものでは、シナリオ作成時、実行時、分析時のすべてにおいて状況の把握がしにくいためである。
累積確信度上限テーブルには、緊急対応シナリオ全体における累積確信度の上限値が記録される。例えば、処理に対する利用者の自信を表す確信度を定量化した値と個数の組み合わせで算出される累積値の上限値を設定しておき、上限値を超えた場合には利用者への確認なしに、この先の処理へは進めなくする。
【0023】
ノード情報テーブルには、利用者により緊急対応シナリオに沿って実行される具体的な処理の単位をノードとし、その内容がノード情報として記録される。ノード情報には、対応の項目及び回答タイプなど基本的な事項についてそれぞれ設定されている。1つ1つのノード情報には項目IDが振られ、属する大項目名、メッセージの種別(質問、作業指示、参考情報等)、実施する利用者(担当)、表示されるメッセージ、回答タイプ、回答タイプ毎の次のフローの遷移先の項目ID、確信度制限の有無、取消制限の可否、取消処理の有無が記録される。
確信度制限は、累積確信度上限テーブルに累積確信度の上限値が設定されている場合に、「あり」と表示され、設定されていない場合に「なし」と表示される。確信度制限が「あり」の場合には、累積確信度の上限値をノード情報に設定できる
取消制限は、フローの取消処理の可否を設定する。例えば、フローの取消が不可の場合には、ユーザへの確認なしにこのノードから先へはフローを進めない。
取消処理は、ノード状態や回答内容等の修正により既に実行されたノードの取消を行う場合に用いられ、ここに設定された処理が実行される。設定がない場合には、関係する利用者へ取消通知と修正内容、修正者、取消ノード一覧(メッセージノードのみ)を表示する。
【0024】
図4は、緊急対応履歴の例示図である。緊急対応履歴は、図4(a)に示すノード履歴テーブルと、図4(b)に示す確信度履歴テーブルの2つのテーブルから構成される。
ノード履歴テーブルは、緊急対応シナリオのノード情報毎の履歴を記録する。各ノード情報の項目IDは、元となる緊急対応シナリオの項目IDと同じであり、それぞれに利用者(実施者)が実行した際の確信度の高低、確信度メモが記録される。メッセージの表示開始時刻、実行終了時刻、メッセージに回答した利用者も自動的に記録される。質問や作業指示に対しては、回答が記録される。また、メッセージの表示状態が回答待ちの場合には「待」、回答済みの場合には「済」が記録される。遡り禁止フラグは、初期値は「許可」であるが、取消制限が「否」と設定されたノード情報を通過した場合に、そのノード情報よりも前のノード情報に「禁止」が設定される。修正メモは、実行中に確信度やフローの遡り処理を実行した場合に、修正を実施した利用者により修正した理由が記入されて、履歴として記録される。取消時刻には、フローの遡り処理を実行した場合に、その処理時刻が記録される。
確信度履歴テーブルでは、累積確信度を計算するために各利用者の確信度の累積結果を格納する。確信度は、「度数」によって確信度値として定量化されており、各確信度の度数と回数との積をすべて加算した値が累積確信度になる。累積確信度は、全利用者、利用者毎について算出可能である。
【0025】
累積確信度は、本実施形態では、確信度の度数に回数を乗じたものの平均としている。この場合、回答全体での確信度の低い回答の割合で判断することとなる。別の方法として、確信度の低い回答の回数により判断することも可能である。これは、直接、確信度の低い回答の回数に上限を設定する。その場合に確信度テーブルは、さらに、確信度の度数ごとに、上限とする回数を設定する。
【0026】
<処理手順>
このような緊急時指揮支援システム1では、緊急時の指揮に用いられる緊急対応シナリオの作成、緊急対応シナリオによる訓練時や実際の緊急時の対応指示、緊急対応シナリオの分析処理が行われる。
【0027】
・緊急対応シナリオの作成
緊急対応シナリオの作成は、クライアント端末3からの指示に応じて、緊急時指揮支援サーバ2の緊急対応シナリオエディタ部21により実行される。緊急対応シナリオエディタ部21は、シナリオ編集用端末として機能するクライアント端末3から、シナリオ作成要求を受信することで緊急対応シナリオの作成を開始する。シナリオ作成の際には、緊急対応シナリオエディタ部21により、クライアント端末3のディスプレイにシナリオ作成を支援するための作成画面が表示される。シナリオ編集用端末として機能するクライアント端末3は、本部、消火班、救護班のいずれのものでもよいが、通常は本部のクライアント端末3を用いる。
【0028】
利用者は、緊急対応リポジトリ241の雛形を参考としながら、少なくとも、ノード情報に示される処理を行う利用者の所属(担当)及び次に遷移すべきノード情報を表す遷移情報を含む必要事項を入力する。これらの入力事項により緊急対応シナリオが作成されて、緊急対応シナリオライブラリ242に登録される。この際、複数のノード情報のつながりを1つの雛形として緊急対応リポジトリ241に登録しておき、これを編集する事としてもよい。
作成された緊急対応シナリオは、表形式或いはフローチャート形式でクライアント端末3により印刷可能である。印刷物は、緊急対応マニュアルとして利用することができる。
【0029】
・緊急対応シナリオによる訓練時や実際の緊急時の対応指示
このようにして作成された緊急対応シナリオを用いて、訓練或いは実際の緊急時の対応指示が行われる。
この場合、緊急対応シナリオ実行エンジン22は、緊急対応シナリオライブラリ242から読み出した緊急対応シナリオのノード情報テーブルに記録された各メッセージをノード情報順に読み出して、処理を実行することになる利用者のクライアント端末3に表示させる。また、緊急対応シナリオ実行エンジン22は、対応状況をクライアント端末3から受け取って、緊急対応履歴243のノード履歴テーブルの該当する項目IDに関連付けて記録する。
【0030】
訓練或いは実際の緊急時の対応指示が行われるには、クライアント端末3において、各利用者が作業を時系列で把握しやすいように、緊急対応シナリオを図5のようなフローチャートの形式で表現することもできる。図5(a)は、メインの処理のフローチャートであり、シナリオ全体の処理の流れを表している。図5(b)は、状況確認処理のフローチャートである。状況確認処理は、図3(e)の項目ID1−1〜1−4で示されており、図5(b)では、各項目IDで示される処理が誰に対する指示かが視覚的にわかるようになっている。図5(c)が、現場対応処理のフローチャートである。現場対応処理は、図3(e)の項目ID2−1〜2−6で示されており、図5(c)では、各項目IDで示される処理が誰対する指示かが視覚的にわかるようになっている。
【0031】
訓練或いは実際の緊急時の対応では、緊急対応シナリオに沿って、メッセージの読み出し処理、回答処理、確信度判定処理、修正処理が行われる。図6(a)、(b)はこれらの処理を含む緊急時指揮支援サーバ2において実行される処理のフローチャートであり、図3の緊急対応シナリオを実行する場合を示す。図6(a)の一連の処理は図8〜図10で表され、図6(b)の一連の処理は図16で表される。
【0032】
緊急時指揮支援サーバ2は、緊急対応シナリオ実行エンジン22により緊急対応シナリオライブラリ242の「火災対応」の緊急対応シナリオから項目IDの順にメッセージを読み出して、該当する利用者のクライアント端末3に、図7のような画面を表示させる。図7は、本部のクライアント端末3に表示される画面の例示図である。画面には、緊急対応シナリオのシナリオ名等のシナリオ情報、利用者についての利用者情報の他に、作業指示、利用者への質問、参考情報等のメッセージが表示される。また、質問への回答の入力を可能にする。これにより利用者毎に質問、作業指示、参考情報が提供される(ステップS10)。また、緊急時指揮支援サーバ2は、緊急対応シナリオ実行エンジン22によりメッセージを読み出すと、ノード履歴テーブルに、通知したメッセージの項目ID、メッセージの表示開始日時、メッセージの表示状態「待」を記録する。
なお、読み出した緊急対応シナリオのノード情報が項目ID10−1になると、処理は終了する。
【0033】
利用者は、クライアント端末3により表示されたメッセージに応じた対応を行う。例えば、図7の画面において、利用者が作業指示に対応して回答「はい」ボタンを押下し、確信度及び確信度メモを入力する。クライアント端末3は、これらの入力内容を、利用者名及び対応する項目IDとともに緊急時指揮支援サーバ2に送信する。緊急時指揮支援サーバ2は、緊急対応シナリオ実行エンジン22により、クライアント端末3から送信されたこれらの入力内容を受信して(ステップS20)、ノード履歴テーブルの対応する項目IDに記録する。また、取消処理が禁止となっている場合、遡りフラグを不許可として記録するとともに、ノード情報を遡って、すべての遡りフラグを不許可に変更する(ステップS30)。
【0034】
ノード履歴テーブルへの記録後に、緊急対応シナリオ実行エンジン22は、累積確信度が閾値を超えていないか確認する。まず、緊急対応シナリオライブラリ242から累積確信度上限(閾値)を、緊急対応履歴243から確信度履歴テーブルを、それぞれ読み出す。累積確信度は、例えば式(1)で表され、確信度履歴テーブルの確信度の度数に回数を乗じたものの平均として算出される(ステップS40)。算出した結果と閾値との大小関係により判定が行われる。回答されたノードの利用者毎及び全体のノードを対象として、各ノードへの回答がある度に判定を行う。
累積確信度=Σ(度数×回数)/Σ(回数) …(1)
【0035】
累積確信度の判定により、累積確信度が閾値以下と判定される場合には、ステップ10に戻り、次の指示が利用者に提示される(ステップS50:閾値以下)。以上の一連の処理は、図8に示される。
【0036】
累積確信度の判定により、累積確信度が閾値を超えると判定される場合には、2通りの処理パタンある。
1つは、実行中の緊急対応シナリオ全体の累積確信度が累積値を超えた場合に、緊急対応シナリオの実行の統括責任者に対して確信度が低い回答の一覧を表示して、統括責任者が各利用者に確認を行う処理である(図6(a))。この実施形態において統括責任者は、本部の利用者である。この処理は図9、図10に示される。
もう1つは利用者毎に累積確信度の判定を行い、累積確信度が閾値を超えた利用者に対してのみ、緊急時指揮支援サーバ2から直接確認を行う処理である(図6(b))。この処理は図16に示される。
【0037】
図6(a)、図9、及び図10により、ステップS50で累積確信度が閾値を超過して、シナリオの統括責任者が確認処理をする場合について説明する。これは、緊急対応シナリオ全体の進行を把握して確認すべきか否かを判断するため、ノード全体を対象とし、緊急対応シナリオに沿って適正に対応が行われているかを判断することを目的とする。
消火班に対する作業指示である項目ID2−2のノードのメッセージ「本部からの指示に従い、消火活動を開始してください。」に対して、消火班のクライアント端末3から回答及びメッセージに対する確信度の低い判断が入力され、次いで確信度判定処理における累積確信度が閾値を超える場合を例に、ステップS51〜ステップS56の処理を説明する。ここで、累積確信度の計算は、全利用者についての値を合計して閾値と比較する。
【0038】
確信度判定処理において、累積確信度が閾値を超えたと判断された場合(ステップS50:閾値を超過)、緊急対応シナリオ実行エンジン22はノード履歴テーブルの遡りフラグが許可されたノードのうち、確信度が低いノード情報を抽出して、確認ノードリストを作成する。確認ノードリストは、所定の確信度以下のノード情報を抽出して作成してもよく(例えば図4(b)において確信度の度数を所定値と比較して抽出する。)、すべてのノード情報を抽出して、確信度の低い順(度数の比較)にソートして作成してもよい。図11は、図4(a)のノード履歴テーブルから作成された確認ノードリストの例示図である。緊急対応シナリオ実行エンジン22は、本部のクライアント端末3に対して、「現在実行中のシナリオの累積確信度が閾値を超えました。」等のメッセージを通知するとともに、作成した確認ノードリストを送信して、クライアント端末3に表示させる。表示に当たっては、本部の利用者が前後の処理関係を把握しやすくするため、フローチャートとともに提示してもよい(ステップS51、S52)。
【0039】
本部の利用者がクライアント端末3に提示された確認ノードリストの中から、確認が必要とされたノード(例えば項目ID1−3)を選択すると、選択されたノードの項目IDが緊急時指揮支援サーバ2の緊急対応シナリオ実行エンジン22に通知される。
緊急対応シナリオ実行エンジン22は、通知された項目IDのノード情報から、ノードに回答した利用者のクライアント端末3(この実施形態では消火班のクライアント端末3)に対して、内容確認依頼メッセージを通知する。これにより利用者へ確認依頼を行う(ステップS53)。
【0040】
消火班の利用者は、クライアント端末3で内容確認依頼メッセージを確認して、本部からの問い合わせに対して確認を行う。ここでは、利用者により、「確認内容の変更」、「確信度の変更」、「保留」のいずれかの処理が選択される。
「保留」が選択された場合は、次に確信度の低いノードが選択され、同様の処理が行われる。
「確信度の変更」が行われた場合、履歴に対して確信度が変更され、緊急時指揮支援サーバ2において再度、確信度判定処理が行われる。その結果、確信度が閾値を超えないと判断される場合は、緊急時指揮支援サーバ2は、同様に、確信度の低いノードの一覧を抽出して、本部のクライアント端末3に表示させる。
「発煙筒が発見され火災ではなかった」等の確認内容の変更が行われた場合は、少なくともノードID、修正内容、及びメモを含む修正メッセージを作成して、消火班のクライアント端末2から緊急時指揮支援サーバ2の緊急対応シナリオ実行エンジン22に送信する。
ステップS52、S53の処理は、確認ノードリストのすべてのノードに対して行われる。すべてのノードについてのステップS52、S53の処理が終了すると、ステップS54へ移る。
【0041】
緊急時指揮支援サーバ2は、修正メッセージの有無により、シナリオの修正の有無を判断する。修正メッセージを受信しない場合には、シナリオの修正が無いと判断して(ステップS54:無)、ステップS10の処理に移る。
緊急時指揮支援サーバ2は、修正メッセージを受信すると、シナリオの修正があると判断する(ステップS54:有)。
【0042】
緊急時指揮支援サーバ2は、修正メッセージを受信して、緊急対応シナリオ実行エンジン22により該ノードIDに対応する履歴(項目ID1−3)「火災は発生していましたか?」の回答を「はい」から「いいえ」に変更して、「発煙筒が発見された。火災ではなかったことを確認した。回答を「はい」から「いいえ」に変更する。」という内容の修正メモを記述する。ノード履歴テーブルには図12の例示図のように該当IDのメッセージに修正メモと取り消されたメッセージに取消日時を記録する(ステップS55)。
【0043】
緊急対応シナリオ実行エンジン22は、ノード情報を修正すると、修正したノード情報以降の既に実行済みのノード情報を緊急対応履歴から抽出し、抽出されたノード情報を対応したクライアント端末3に、「本部にて修正が実行されました。『発煙筒が発見された。火災ではなかったことを確認した。回答を「はい」から「いいえ」に変更する。』とのことです。」という内容のメッセージと取消処理一覧表を表示する。図13は、修正対象と取消対象処理の一覧の例示図である。
【0044】
緊急対応シナリオ実行エンジン22は、修正したノード情報の次のノード情報を読み出し、該当する利用者のクライアント端末3の画面にメッセージを表示して、ステップS10に処理が戻る(ステップS56)。なお、ユーザが前後の処理関係を把握しやすくするために、上記の処理の際に、図14、図15のような修正時の一連の処理を表すフローチャートを該当するクライアント端末3に表示してもよい。
【0045】
確信度が一定の閾値を超え、上記のように確認が行われている場合、同一の緊急対応シナリオであっても、同時に複数の利用者のクライアント端末3に、メッセージが送信される場合がある。その場合、各利用者からメッセージが返ってきたとしても、次のノード情報の読み出しを一時的に停止させ、緊急対応シナリオ全体の進行を、一定の確信度を上回るまで停止させてもよい。
さらに、緊急対応シナリオ全体に対して確信度判定処理を行う場合は、各利用者から回答が返された都度ではなく、次のメッセージを読み出した際に、該メッセージのノード情報の取消制限の有無を判定し、取消制限が「有」となった場合にのみ、実行するようにしてもよい。こうすることで、効率的に緊急対応シナリオの進行を正しい方向に修正することができる。
【0046】
図6(b)及び図16により、ステップS50で累積確信度が閾値を超過して、累積確信度が閾値を超えた利用者に対してのみ、緊急時指揮支援サーバ2から直接確認を行う場合の処理について説明する。この処理では、局所的に極端に確信度が低い場合に、早期に確認すべき事項を検出することが可能である。緊急時指揮支援サーバ2は、修正有無を確認し、確信度の低い質問メッセージの“回答”を変更し、フローが変更となる処理について示す。
【0047】
消火班に対する作業指示のノード情報(項目ID2−2)のメッセージ「本部からの指示に従い、消火活動を開始してください。」に対する確信度判定処理の結果、消火班の累積確信度が閾値を超えたと判定されると、緊急対応シナリオ実行エンジン22は、消火班のクライアント端末3に対して、「確信度の低い回答が続いていますが、このままシナリオの実行を継続しますか?継続する場合は“はい”を、遡って修正したい場合は“いいえ”を選択してください。」といった内容の確認メッセージを消火班のクライアント端末3に通知して表示させる(ステップS61)。
【0048】
消火班の利用者は、この通知に対して“はい”又は“いいえ”のいずれかを選択して、緊急対応シナリオ実行エンジン22に回答する。この回答により、緊急対応シナリオ実行エンジン22は、当該利用者がシナリオの実行を継続するか否かを判断する(ステップS62)。
【0049】
緊急対応シナリオ実行エンジン22は、消火班のクライアント端末3から、“はい”の回答を受け取ると、次のノード情報を読み出して、緊急対応シナリオの継続して実行する(ステップS62:継続、ステップS10)。
緊急対応シナリオ実行エンジン22は、消火班のクライアント端末3から、“いいえ”の回答を受け取ると、続いて消火班のクライアント端末3から、修正依頼メッセージを受け取る(ステップS62:継続せず修正)。緊急対応シナリオ実行エンジン22は、修正依頼メッセージを受信すると、消火班の確信度の低い実施済みノードを修正候補として抽出して、消火班のクライアント端末3に表示させる(ステップS63)。図17は、修正候補の一覧の例示図である。
消火班の利用者はクライアント端末3により、提示された一覧の中から、修正すべきノードを選択する。
【0050】
以下、図6(a)と同様に、ノードの修正が行われると、シナリオ実行エンジンは修正されたノード以降の実行済みノードを抽出し、該ノードを対応した担当者にその旨、通知を行う(ステップS64〜67)。なお、ユーザが前後の処理関係を把握しやすくするために、上記の処理の際に、図18、図19のような修正時の一連の処理を表すフローチャートを該当するクライアント端末3に表示してもよい。
【0051】
・緊急対応シナリオの分析処理
緊急対応シナリオの分析処理は、以下のように行われる。
分析処理では、ボトルネックとなっているノード情報を抽出し、当該ノード情報におけるメッセージ内容を検討して、ノード情報を複数に分割したり、また、対応する利用者を変更する等の編集を行う。具体的には緊急対応履歴分析部23が、緊急対応履歴243からノード履歴テーブルを読み出して種々の分析を行い、具体的な見直しの候補となるノード情報の選定を行う。
【0052】
緊急対応シナリオの分析を行う利用者は、履歴分析用端末として機能するクライアント端末3を用いて緊急時指揮支援サーバ2にアクセスして、シナリオ作成分析処理を開始する。履歴分析用端末として機能するクライアント端末3は、本部、消火班、救護班のいずれのものでもよいが、通常は本部のクライアント端末3を用いる。
緊急対応履歴分析部23は、ノード履歴テーブルから過去に実行されたノード情報を読み出し、表示時間と終了時間から求められる対応時間及び入力された確信度から、対応時間が長く且つ確信度が低いノード情報を抽出する。
【0053】
利用者は抽出されたノード情報に対し、ノード情報の指示事項の変更やノード情報の分割、削除等のノード情報の編集を行う。ここで、各ノード情報を対応時間と確信度の2軸を持つグラフ上に表示させ、利用者に選択させてもよい。
また、編集対象となるノード情報の抽出には、種々の方法が考えられる。例えば、複数回の訓練時に取得された緊急対応履歴から、確信度判定処理によって、修正されたノード情報のうち、特に変更の多いノード情報を抽出したり、変更によって多くの取消となったノード情報の数を元に抽出してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…緊急時指揮支援システム、2…緊急時指揮支援サーバ、3…クライアント端末、21…緊急対応シナリオエディタ部、22…緊急対応シナリオ実行エンジン、23、緊急対応履歴分析部、24…データベース、241…緊急対応リポジトリ、242…緊急対応シナリオライブラリ、243…緊急対応履歴データベース、L…ネットワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のクライアント端末との間でデータの送受信が可能な緊急時指揮支援サーバであって、
前記1以上のクライアント端末の各々の利用者に処理を行わせるための指示が規定されたシナリオを記憶する第1記憶手段と、
前記指示を順次所定のクライアント端末に表示させるとともに、当該指示に対する処理への前記利用者の確信度を当該クライアント端末から順次受け付けて、前記確信度を指示毎に所定の第2記憶手段に記憶させ、前記確信度を定量的に表す確信度値の累積値が所定の条件を満たす場合に、前記確信度値により確信度が低いと判断された指示の一覧を前記クライアント端末に表示させて、このクライアント端末から前記一覧に表示された指示の修正が依頼されると、前記シナリオの当該指示の修正を行うシナリオ実行手段と、を備える、
緊急時指揮支援サーバ。
【請求項2】
前記シナリオ実行手段は、
いずれか一人の利用者のクライアント端末に、前記一覧を、指示された処理を行った利用者名とともに表示させ、当該クライアント端末から前記一覧に表示された指示の修正が依頼される場合に、当該指示を行った利用者のクライアント端末に修正内容の入力を依頼するメッセージを送信して、このクライアント端末から修正内容が入力されると前記シナリオの当該指示の修正を行う、
請求項1記載の緊急時指揮支援サーバ。
【請求項3】
前記シナリオ実行手段は、
第2記憶手段に前記確信度を利用者毎に記憶させておき、前記確信度値の累積値を利用者毎に算出して、算出した累積値が前記所定の条件を満たす場合に、当該利用者のクライアント端末に、前記確信度値により確信度が低いと判断された指示のうち当該利用者が処理した指示の一覧を表示させる、
請求項1記載の緊急時指揮支援サーバ。
【請求項4】
1以上のクライアント端末との間でデータの送受信が可能であり、前記1以上のクライアント端末の各々の利用者に処理を実行させるための指示が規定されたシナリオを記憶する緊急時指揮支援サーバにより実行される方法であって、
前記指示を順次所定のクライアント端末に表示させる段階と、
前記指示に対する処理への前記利用者の確信度を当該クライアント端末から順次受け付けて、前記確信度を指示毎に所定の記憶手段に記憶させる段階と、
前記確信度を定量的に表す確信度値の累積値が所定の条件を満たす場合に、前記確信度値により確信度が低いと判断された指示の一覧を前記クライアント端末に表示させる段階と、
前記クライアント端末から前記一覧に表示された指示の修正が依頼される場合に、前記シナリオの当該指示の修正を行う段階と、を含む、
緊急時のシナリオ最適化方法。
【請求項5】
1以上のクライアント端末との間でデータの送受信が可能であり、前記1以上のクライアント端末の各々の利用者に処理を行わせるための指示が規定されたシナリオを記憶するコンピュータに、
前記指示を順次所定のクライアント端末に表示させる処理、
前記指示に対する処理への前記利用者の確信度を当該クライアント端末から順次受け付けて、前記確信度を指示毎に所定の記憶手段に記憶させる処理、
前記確信度を定量的に表す確信度値の累積値が所定の条件を満たす場合に、前記確信度値により確信度が低いと判断された指示の一覧を前記クライアント端末に表示させる処理、
前記クライアント端末から前記一覧に表示された指示の修正が依頼される場合に、前記シナリオの当該指示の修正を行う処理、
を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項1】
1以上のクライアント端末との間でデータの送受信が可能な緊急時指揮支援サーバであって、
前記1以上のクライアント端末の各々の利用者に処理を行わせるための指示が規定されたシナリオを記憶する第1記憶手段と、
前記指示を順次所定のクライアント端末に表示させるとともに、当該指示に対する処理への前記利用者の確信度を当該クライアント端末から順次受け付けて、前記確信度を指示毎に所定の第2記憶手段に記憶させ、前記確信度を定量的に表す確信度値の累積値が所定の条件を満たす場合に、前記確信度値により確信度が低いと判断された指示の一覧を前記クライアント端末に表示させて、このクライアント端末から前記一覧に表示された指示の修正が依頼されると、前記シナリオの当該指示の修正を行うシナリオ実行手段と、を備える、
緊急時指揮支援サーバ。
【請求項2】
前記シナリオ実行手段は、
いずれか一人の利用者のクライアント端末に、前記一覧を、指示された処理を行った利用者名とともに表示させ、当該クライアント端末から前記一覧に表示された指示の修正が依頼される場合に、当該指示を行った利用者のクライアント端末に修正内容の入力を依頼するメッセージを送信して、このクライアント端末から修正内容が入力されると前記シナリオの当該指示の修正を行う、
請求項1記載の緊急時指揮支援サーバ。
【請求項3】
前記シナリオ実行手段は、
第2記憶手段に前記確信度を利用者毎に記憶させておき、前記確信度値の累積値を利用者毎に算出して、算出した累積値が前記所定の条件を満たす場合に、当該利用者のクライアント端末に、前記確信度値により確信度が低いと判断された指示のうち当該利用者が処理した指示の一覧を表示させる、
請求項1記載の緊急時指揮支援サーバ。
【請求項4】
1以上のクライアント端末との間でデータの送受信が可能であり、前記1以上のクライアント端末の各々の利用者に処理を実行させるための指示が規定されたシナリオを記憶する緊急時指揮支援サーバにより実行される方法であって、
前記指示を順次所定のクライアント端末に表示させる段階と、
前記指示に対する処理への前記利用者の確信度を当該クライアント端末から順次受け付けて、前記確信度を指示毎に所定の記憶手段に記憶させる段階と、
前記確信度を定量的に表す確信度値の累積値が所定の条件を満たす場合に、前記確信度値により確信度が低いと判断された指示の一覧を前記クライアント端末に表示させる段階と、
前記クライアント端末から前記一覧に表示された指示の修正が依頼される場合に、前記シナリオの当該指示の修正を行う段階と、を含む、
緊急時のシナリオ最適化方法。
【請求項5】
1以上のクライアント端末との間でデータの送受信が可能であり、前記1以上のクライアント端末の各々の利用者に処理を行わせるための指示が規定されたシナリオを記憶するコンピュータに、
前記指示を順次所定のクライアント端末に表示させる処理、
前記指示に対する処理への前記利用者の確信度を当該クライアント端末から順次受け付けて、前記確信度を指示毎に所定の記憶手段に記憶させる処理、
前記確信度を定量的に表す確信度値の累積値が所定の条件を満たす場合に、前記確信度値により確信度が低いと判断された指示の一覧を前記クライアント端末に表示させる処理、
前記クライアント端末から前記一覧に表示された指示の修正が依頼される場合に、前記シナリオの当該指示の修正を行う処理、
を実行させるためのコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−204712(P2010−204712A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46383(P2009−46383)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000102728)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (438)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000102728)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (438)
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