説明

緊急用特殊車

【課題】 機器の操作性を向上すると共に、無線通信機能により種々のネットワークから提供されるサービスを利用可能にした緊急用特殊車を提供する。
【解決手段】 回転灯6、サイレン7、シャッター12、クレーン13等の複数の機器を搭載した緊急用特殊車において、機器に配線を介して接続されたシーケンサー21と、該シーケンサー21に対して配線を介して接続された無線通信機能を有するルーター22と、該ルーター22に対して通信可能な無線通信機能を有するタブレット型コンピューター23とを備え、該タブレット型コンピューター23とシーケンサー21との間の通信をルーター22を介して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン等の機器を搭載した救助工作車等の緊急用特殊車に関し、更に詳しくは、機器の操作性を向上すると共に、無線通信機能により種々のネットワークから提供されるサービスを利用可能にした緊急用特殊車に関する。
【背景技術】
【0002】
救助工作車は、火災現場や事故現場等において救助活動を行うに際して必要とされる様々な機器を搭載した車両である(例えば、特許文献1参照)。代表的な機器としては、例えば、クレーンが挙げられるが、工具を収容するための格納庫のシャッターやサイレン等も救助工作車に搭載される機器である。
【0003】
通常、救助工作車に代表される緊急用特殊車においては、上述した機器の操作パネルが運転台に設置されており、その操作パネルのスイッチや計器に各機器が配線を介して接続されている。そのため、全ての機器の管理を運転台で行うことができるという利点はあるものの、運転台の外では機器の管理を行うことができず、必ずしも的確な操作ができないという欠点もある。これに対して、火災現場や事故現場等においては、迅速な救助活動が要求され、機器の操作性を向上することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−100796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、機器の操作性を向上すると共に、無線通信機能により種々のネットワークから提供されるサービスを利用可能にした緊急用特殊車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の緊急用特殊車は、複数の機器を搭載した緊急用特殊車において、前記機器に配線を介して接続されたシーケンサーと、該シーケンサーに配線を介して接続された無線通信機能を有するルーターと、該ルーターに対して通信可能な無線通信機能を有するタブレット型コンピューターとを備え、該タブレット型コンピューターと前記シーケンサーとの間の通信を前記ルーターを介して行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、緊急用特殊車において、無線通信機能を有するルーターをシーケンサーに接続し、タブレット型コンピューターとシーケンサーとの間の通信をルーターを介して行うようにした制御システムを採用しているので、無線通信が届く範囲においてタブレット型コンピューターを移動させることができる。そのため、緊急用特殊車に搭載された複数の機器の管理を運転台において行うことができ、必要であれば、これら機器の管理を運転台の外でも行うことができる。これにより、機器の操作性を向上することができる。
【0008】
また、上記ルーターは外部との無線通信が可能であるため、その無線通信機能に基づいてインターネット等の種々のネットワークから提供されるサービスをタブレット型コンピューターにおいて利用することができる。
【0009】
本発明において、タブレット型コンピューターから入力された指令信号をルーターを介してシーケンサーに伝達し、該シーケンサーからの制御信号に基づいて任意の機器を動作させる一方で、機器の状態を示す外部入力信号をシーケンサーに取り込み、その外部入力信号をルーターを介してタブレット型コンピューターに伝達し、機器の状態をタブレット型コンピューターに表示可能にすることが好ましい。これにより、機器の状態を正確に把握し、その操作を的確に行うことが可能になる。
【0010】
また、車輛の状態を示す外部入力信号をシーケンサーに取り込み、その外部入力信号をルーターを介してタブレット型コンピューターに伝達し、予め設定された車輛の状態に関する条件と予め設定された機器の状態に関する条件を同時に満たす場合に、タブレット型コンピューターに警告画面を優先的に表示することが好ましい。これにより、車輛の状態と機器の状態との関係に起因する危険な状態を迅速に察知することができる。
【0011】
本発明においては、ルーターに対して通信可能な無線通信機能を有するワンセグチューナーセットを備え、該ワンセグチューナーセットで受信されたテレビ放送をルーターを介してタブレット型コンピューターに伝送し、そのテレビ放送をタブレット型コンピューターに表示可能にすることが好ましい。これにより、テレビ放送の情報を救助活動に利用することが可能になる。
【0012】
本発明において、運転台のダッシュボードにルーターを設置すると共に、タブレット型コンピューターをルーターと隣接する位置に着脱自在に固定する固定具を設けることが好ましい。このようにダッシュボードに設置されたルーターと隣接する位置にタブレット型コンピューターを固定するための固定具を設けることにより、良好な受信状態を確保することができる。
【0013】
本発明の緊急用特殊車には、種々の機器を搭載することが可能であるが、その機器として少なくともシャッター、クレーン、サイレン及び回転灯を含むことが好ましい。また、緊急用特殊車は、救助工作車、消防車、救急車等の車両を包含するものであるが、特に救助工作車であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態からなる救助工作車を示す側面図である。
【図2】図1の救助工作車に設置された警報装置を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態からなる救助工作車における機器の制御システムを示す構成図である。
【図4】本発明の実施形態からなる救助工作車におけるタブレット型コンピュータの表示画面を例示する説明図である。
【図5】本発明の実施形態からなる救助工作車におけるルーター及びタブレット型コンピュータの配置構造を例示する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施形態からなる救助工作車を示し、図2はその救助工作車に設置された警報装置ユニットを示すものである。
【0016】
図1に示すように、この救助工作車は、車体1の前後に複数本のタイヤ2を備え、車体1の前部に運転台3を配置し、車体1の後部に工具類を収納するために格納庫4を配置した構造になっている。
【0017】
運転台3の上部には警報装置ユニット5が搭載されている。警報装置ユニット5は回転灯6及びサイレン7を備え、これらを一体的に構成したものである。
【0018】
一方、格納庫4の上部には梯子11が搭載されている。格納庫4の両側部にはそれぞれ電動式の複数のシャッター12が設置されており、これらシャッター12が上下方向に開閉するようになっている。更に、格納庫4の後方にはクレーン13が設置されている。また、他の機器として、運転台3の前部にはウインチ16が設置され、格納庫4の上部には照明装置17が設置されている。
【0019】
上述した回転灯6、サイレン7、シャッター12、クレーン13、ウインチ16、照明装置17等の機器は車体1に搭載されたシーケンサに接続されている。
【0020】
図3は本発明の実施形態からなる救助工作車における機器の制御システムを示すものである。図3に示すように、この制御システムは、回転灯6、サイレン7、シャッター12、クレーン13等の機器に配線を介して接続されたシーケンサー21と、該シーケンサー21に対してLAN回線を介して接続された無線通信機能を有するルーター22と、該ルーター22に対して通信可能な無線通信機能を有するタブレット型コンピューター23と、ルーター22に対して通信可能な無線通信機能を有するワンセグチューナーセット24とを備えている。シーケンサー21は直流安定化電源25を介してバッテリー電源26(DC24V)に接続されている。また、ルーター22、タブレット型コンピューター23及びワンセグチューナーセット24は車体1に搭載された発電機27(AC100V)に接続されている。
【0021】
シーケンサー21は、指令信号(例えば、ON/OFF)に応じて、特定の機器の動作(例えば、ON/OFF)を制御するように制御内容がプログラムされている。より具体的には、シーケンサー21は、回転灯6、サイレン7、シャッター12の動作を制御する。シーケンス制御用のプログラムは予めシーケンサー21のCPUに書き込まれている。また、シーケンサー21は、回転灯6、サイレン7、シャッター12、クレーン13からなる各機器の状態を示す外部入力信号を取り込み、その外部入力信号をルーター22を介してタブレット型コンピューター23に伝達するようになっている。更に、シーケンサー21は、車輛の状態を示す外部入力信号を取り込み、その外部入力信号をルーター22を介してタブレット型コンピューター23に伝達するようになっている。
【0022】
ルーター22は、ネットワーク間を相互接続するための通信機器を構成している。タブレット型コンピューター23は、タッチパネル式の表示/入力部23aを備え、操作画面において、表示/入力部23aに操作キーA〜Hや警告表示キーW〜Zを含む多数のキーを表示し、各キーへの接触により入力動作を認識するようになっている。タブレット型コンピューター23は蓄電池を内蔵しており、外部電源との接続が解除された状態でも使用可能になっている。このようなタブレット型コンピューター23としては、iPad(登録商標)等のモバイル端末を用いることができる。ワンセグチューナーセット24は地上デジタルテレビ放送(携帯電話・移動体端末向けの1セグメント部分受信サービス)を受信する機能を有している。これらルーター22、タブレット型コンピューター23及びワンセグチューナーセット24はいずれも無線通信器間の相互接続性がWi−Fi(登録商標)に認定されたものであることが望ましい。また、ルーター22はインターネットへの接続を可能にするためにデジタル携帯電話方式(3G)の通信機能も備えている。
【0023】
上述した制御システムにおいては、タブレット型コンピューター23とシーケンサー21との間の通信はルーター22を介して行われる。つまり、タブレット型コンピューター23から入力された指令信号は無線通信によりルーター22を介してシーケンサー21に伝達される。これにより、シーケンサー21からの制御信号に基づいて回転灯6、サイレン7、シャッター12等の機器の各々が所望の動作を行うようになっている。
【0024】
また、上述した制御システムにおいては、回転灯6、サイレン7、シャッター12、クレーン13等の機器の状態を示す外部入力信号がシーケンサー21に入力され、その外部入力信号がルーター22を介してタブレット型コンピューター23に伝達され、その機器の作動状態がタブレット型コンピューター23に表示される。
【0025】
ここで、ルーター22とタブレット型コンピューター23との間の無線通信が許容される範囲においてタブレット型コンピューター23を移動させることができる。そのため、救助工作車に搭載された複数の機器の管理を運転台3において行うことができ、必要であれば、これら機器の管理を運転台3の外でも行うことができる。その結果、機器の操作性が改善されるので、火災現場や事故現場等において、より迅速な救助活動を行うことが可能になる。
【0026】
更に、ルーター22は外部との無線通信が可能であるため、その無線通信機能に基づいて種々のネットワークから提供されるサービスをタブレット型コンピューター23において利用することができる。例えば、ルーター22を介してインターネットに接続した場合、インターネット上の情報を活用することができる。より具体的には、インターネットを通じて、GPS衛星を利用したカーナビゲーション機能、消防司令室との連絡、ヘルプデスクとの連絡等を実施することが考えられる。また、他のタブレット型コンピュータや携帯電話等のモバイル端末から無線通信によりルーター22にアクセスすることで、それらモバイル端末の画像データをインターネットを通じて第三者に送信することもできる。つまり、救助工作車に搭載されたルーター22をアクセスポイントとして活用することができる。
【0027】
上述した制御システムにおいては、各機器の状態を示す外部入力信号と共に車輛の状態を示す外部入力信号がシーケンサー21に取り込まれ、これら外部入力信号がルーター22を介してタブレット型コンピューター23に伝達されているが、予め設定された車輛の状態に関する条件と予め設定された機器の状態に関する条件を同時に満たす場合には、タブレット型コンピューター23に警告画面を優先的に表示するようになっている。これにより、車輛の状態と機器の状態との関係に起因する危険な状態を迅速に察知することができる。例えば、シャッター12が開放された状態でサイドブレーキが解除された場合、クレーン13が収納されない状態でサイドブレーキが解除された場合において、タブレット型コンピューター23に警告画面を表示することにより、危険な状態を迅速に察知することができる。
【0028】
また、上記救助工作車は、ルーター22に対して通信可能な無線通信機能を有するワンセグチューナーセット24を備え、ワンセグチューナーセット24で受信されたテレビ放送をルーター22を介してタブレット型コンピューター23に伝送し、そのテレビ放送をタブレット型コンピューター23に表示可能にしているので、テレビ放送の情報を救助活動に利用することも可能である。
【0029】
図4は本発明の実施形態からなる救助工作車におけるタブレット型コンピュータの表示画面を例示するものである。図4に示すように、タブレット型コンピュータ23は基本的に表示/入力部23aにホーム画面S1を表示し、そのホーム画面S1のアイコンをタッチすることで下位の階層の画面に移行するようになっている。例えば、ホーム画面S1から操作画面S10を選択し、個別機器の操作画面S11や計器画面S12等に進むことができる。また、ホーム画面S1から取扱説明書用アプリケーションS20を選択し、取扱説明書閲覧画面S21,22等に進むことができる。更に、ホーム画面S1からナビゲーション画面S30やテレビ画面S40に進むことも可能である。勿論、各画面から上位の階層の画面に戻ることも可能である。なお、機器について何らかの警告が発せられた際には、その警告画面は随時表示される。
【0030】
図5は本発明の実施形態からなる救助工作車におけるルーター及びタブレット型コンピュータの配置構造を例示するものである。図5において、運転台3のダッシュボード14にはルーター22が設置されている。このダッシュボード14にはタブレット型コンピューター23を固定するための固定具15が設けられている。固定具15はタブレット型コンピューター23を着脱自在に固定できる構造を有し、タブレット型コンピューター23をルーター22と隣接する位置に固定するようになっている。
【0031】
このような配置構造を採用した場合、機器の管理を運転台3の中で行う際には、タブレット型コンピューター23を固定具15によりルーター22と隣接する位置に固定するようにし、機器の管理を運転台3の外で行う際には、タブレット型コンピューター23を固定具15から取り外せば良い。これにより、機器の操作性を更に向上することができる。図5はルーター22及びタブレット型コンピュータ23の配置構造を例示するものであるが、他の配置構造を採用可能であることは言うまでもない。
【0032】
上述した実施形態では、機器として回転灯6、サイレン7、シャッター12、クレーン13等を搭載した救助工作車について説明したが、本発明では上記以外の機器を搭載することも可能であり、また、上記機器の一部を削除することも可能である。上記以外の機器としては、ウインチ、照明機材、昇降装置等を挙げることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 車体
2 タイヤ
3 運転台
4 格納庫
5 警報装置ユニット
6 回転灯
7 サイレン
12 シャッター
13 クレーン
14 ダッシュボード
15 固定具
16 ウインチ
17 照明装置
21 シーケンサー
22 ルーター
23 タブレット型コンピューター
23a 表示/入力部
24 ワンセグチューナーセット
25 直流安定化電源
26 バッテリー電源
27 発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機器を搭載した緊急用特殊車において、前記機器に配線を介して接続されたシーケンサーと、該シーケンサーに配線を介して接続された無線通信機能を有するルーターと、該ルーターに対して通信可能な無線通信機能を有するタブレット型コンピューターとを備え、該タブレット型コンピューターと前記シーケンサーとの間の通信を前記ルーターを介して行うことを特徴とする緊急用特殊車。
【請求項2】
前記タブレット型コンピューターから入力された指令信号を前記ルーターを介して前記シーケンサーに伝達し、該シーケンサーからの制御信号に基づいて任意の機器を動作させる一方で、前記機器の状態を示す外部入力信号を前記シーケンサーに取り込み、前記外部入力信号をルーターを介してタブレット型コンピューターに伝達し、前記機器の状態をタブレット型コンピューターに表示可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の緊急用特殊車。
【請求項3】
車輛の状態を示す外部入力信号を前記シーケンサーに取り込み、前記外部入力信号をルーターを介してタブレット型コンピューターに伝達し、予め設定された車輛の状態に関する条件と予め設定された前記機器の状態に関する条件を同時に満たす場合に、前記タブレット型コンピューターに警告画面を優先的に表示するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の緊急用特殊車。
【請求項4】
前記ルーターに対して通信可能な無線通信機能を有するワンセグチューナーセットを備え、該ワンセグチューナーセットで受信されたテレビ放送を前記ルーターを介して前記タブレット型コンピューターに伝送し、前記テレビ放送を前記タブレット型コンピューターに表示可能にしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緊急用特殊車。
【請求項5】
運転台のダッシュボードに前記ルーターを設置すると共に、前記タブレット型コンピューターを前記ルーターと隣接する位置に着脱自在に固定する固定具を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の緊急用特殊車。
【請求項6】
前記機器が少なくともシャッター、クレーン、サイレン及び回転灯を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の緊急用特殊車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−43463(P2013−43463A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180401(P2011−180401)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000215822)帝国繊維株式会社 (24)
【Fターム(参考)】