説明

緊急車両情報報知システム

【課題】緊急時における緊急車両の円滑な走行を支援すると共に、一般車両の運転者における緊急車両の状況把握を容易にすることが可能な緊急車両情報報知システムを提供する。
【解決手段】管理サーバが緊急車両用車載器から受信した情報に基づいて少なくとも該当する緊急車両V1の通行予定ルートを把握する手順S21と、前記管理サーバが一般車両用車載器から受信した情報に基づいて少なくとも該当する一般車両V21,V22,V23の現在位置を把握する手順S23と、前記管理サーバが前記緊急車両の通行予定ルートと一般車両の現在位置とを比較し、緊急車両の通行予定ルート上、もしくはその近傍に存在している一般車両に対して、少なくとも緊急車両の通過に関する緊急情報を報知する手順S26とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急時における緊急車両の円滑な走行を支援するために利用可能な緊急車両情報報知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、救急車、消防車、パトカーのような緊急車両は、緊急時には一刻も早く目的地に到着する必要がある。従って、緊急時に緊急車両が走行している時には、緊急車両の通路近傍に存在する緊急車両以外の一般車両は、緊急車両の走行の妨げにならないように、通路を空けなければならない。
【0003】
緊急時に走行する緊急車両は、サイレンを鳴動させたり、赤色灯を回転させながら走行する。従って、一般車両の運転者は通常はサイレンの鳴動音や赤色灯の光により緊急車両の接近や通過を認識することができる。しかし、例えば一般車両が見通しの悪い交差点の近傍などを走行している時や、運転者が大音量で音楽を聴いている時には、緊急車両に接近するまで、一般車両の運転者が緊急車両に気づかない場合があり、意図せずに緊急車両の走行を妨げてしまうことがある。
【0004】
緊急車両の円滑な走行を支援するための従来技術が、例えば特許文献1および特許文献2に開示されている。
【0005】
特許文献1には、緊急車両の前方を走行する一般車両を迅速かつ円滑に退避させる緊急車両接近通報システムが開示されている。具体的には、緊急車両に搭載した送信機から無線信号として緊急車両接近情報及び位置情報を発信する。この無線信号を道路側の設備に設けられた専用の受信機で受信し、受信した情報に基づき道路情報放送設備を経由して、ビーコンの送信アンテナから緊急車両接近情報(メッセージ情報)を送信する。ビーコンから送信された情報を、一般車両に搭載された車載器で受信し、運転者に音声、文字、図形により通報する。また、緊急車両上の送信機が、位置情報として現在位置及び目的位置を発信することを開示している。
【0006】
特許文献2には、安全に交差点を通過するための情報を運転者に提供可能な車輌通行支援装置が開示されている。具体的には、緊急車両に搭載した車載器から運行支援処理機に対して目的地及び車輌進行方向の情報を送信する。各交差点の信号機にそれぞれ独立した運行支援処理機を接続する。運行支援処理機は、緊急車両から受信した情報を公衆回線網を経由して交通管制センタに送る。交通管制センタでは、目的地及び車輌進行方向の情報を元に経路情報を作成する。また、交通管制センタでは、緊急車輌が通過する経路上にある信号機に信号機割込み処理を実施するための制御信号を作成し、該当する信号機に接続された運行支援処理機を選択して、制御信号を送る。また、交通管制センタでは、緊急車輌の各交差点到達予測時間及び緊急車輌を優先させるオフセットの計算を実施して緊急車輌の優先制御を行うことを示唆している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−15399号公報
【特許文献2】特開2001−184592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、緊急車両が走行する場合に、該当するビーコンからの信号を受信可能な全ての一般車両が緊急車両接近情報を受信することになる。つまり、該当する一般車両が緊急車両に接近しているか否かとは無関係に緊急車両接近情報を受信することになり、一般車両の運転者側では緊急車両に注意すべきかどうかの判断が難しい。また、もしも緊急車両に近い位置のビーコンだけが緊急車両接近情報を送信する場合には、緊急車両に実際に接近しない限り、一般車両の運転者側では緊急車両の存在を把握できない。
【0009】
また、特許文献2に開示された技術を利用すれば、緊急車輌が通過する経路上にある特定の信号機から、一般車両に対して情報を送ることができる。しかし、この場合には、一般車両が該当する特定の信号機に接近しない限り情報を取得できないので、一般車両の運転者は緊急車輌が接近する前に事前に状況を把握することができない。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、緊急時における緊急車両の円滑な走行を支援すると共に、一般車両の運転者における緊急車両の状況把握を容易にすることが可能な緊急車両情報報知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明に係る緊急車両情報報知システムは、下記(1)〜(5)を特徴としている。
(1) 緊急車両上に搭載可能な緊急車両用車載器と、一般車両上に搭載可能な少なくとも1つの一般車両用車載器と、前記緊急車両用車載器および一般車両用車載器との間で無線通信可能な管理サーバとを備え、
前記管理サーバは、前記緊急車両用車載器から受信した情報に基づいて、少なくとも該当する緊急車両の通行予定ルートを把握し、
前記管理サーバは、前記一般車両用車載器から受信した情報に基づいて、少なくとも該当する一般車両の現在位置を把握し、
前記管理サーバは、前記緊急車両の通行予定ルートと一般車両の現在位置とを比較し、緊急車両の通行予定ルート上、もしくはその近傍に存在している一般車両に対して、少なくとも緊急車両の通過に関する緊急情報を報知する
こと。
(2) 上記(1)に記載の緊急車両情報報知システムであって、
前記緊急車両用車載器は、指定された目的地に対して適切な通行予定ルートの情報を生成するナビゲーション装置と連動し、特定の条件が満たされた時に、生成された通行予定ルートの情報を前記管理サーバに送信する
こと。
(3) 上記(2)に記載の緊急車両情報報知システムであって、
前記緊急車両用車載器は、前記通行予定ルートに含まれる代表的な地点毎に、通過予定時間を予測し、通過予定時間の情報を前記管理サーバに送信する
こと。
(4) 上記(1)に記載の緊急車両情報報知システムであって、
前記緊急車両用車載器は、該当する緊急車両のサイレンが鳴動中か否かを識別し、サイレンが鳴動中の場合に限り、生成された通行予定ルートの情報を前記管理サーバに送信する
こと。
(5) 上記(1)に記載の緊急車両情報報知システムであって、
前記管理サーバは、前記一般車両用車載器から情報を繰り返し受信して、把握している一般車両の現在位置を逐次更新し、各々の一般車両の最新の位置情報に基づいて前記緊急情報の報知対象となる一般車両を特定する
こと。
【0012】
上記(1)の構成の緊急車両情報報知システムによれば、緊急車両の通行予定ルート上もしくはその近傍に存在している一般車両のみに限定して緊急情報を報知することができる。従って、緊急車両の通行の妨げとなる可能性が低い一般車両に対して緊急情報が報知されるのを避けることができる。また、緊急車両の通行予定ルートを考慮するので、緊急車両の通行の妨げとなる可能性が高い一般車両に対しては、緊急車両に接近する前に事前に緊急情報を報知することができる。
上記(2)の構成の緊急車両情報報知システムによれば、緊急車両のナビゲーション装置が通行予定ルートの情報を生成するタイミングに合わせて、緊急情報の報知を適切なタイミングで開始することができる。
上記(3)の構成の緊急車両情報報知システムによれば、前記管理サーバや一般車両側において、各地点での緊急車両の通過予定時間を把握できる。従って、一般車両の運転者に対してより適切な報知を行うことが可能になる。
上記(4)の構成の緊急車両情報報知システムによれば、緊急車両のサイレンが鳴動中でない時には、一般車両に対して緊急情報が報知されない。つまり、緊急車両が走行中であったとしても、実際に緊急の状態でなければ、無意味な緊急情報の報知を防止できる。
上記(5)の構成の緊急車両情報報知システムによれば、各々の一般車両が進路変更などを行った場合であっても、緊急車両の通行の妨げとなる可能性が高い一般車両のみに対して、適切に緊急情報を報知できる。
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明に係る緊急車両情報報知方法は、下記(6)を特徴としている。
(6) 緊急車両上に搭載可能な緊急車両用車載器と、一般車両上に搭載可能な少なくとも1つの一般車両用車載器と、前記緊急車両用車載器および一般車両用車載器との間で無線通信可能な管理サーバとで構成される緊急車両情報報知システムを制御するための緊急車両情報報知方法であって、
前記管理サーバが前記緊急車両用車載器から受信した情報に基づいて少なくとも該当する緊急車両の通行予定ルートを把握する手順と、
前記管理サーバが前記一般車両用車載器から受信した情報に基づいて少なくとも該当する一般車両の現在位置を把握する手順と、
前記管理サーバが前記緊急車両の通行予定ルートと一般車両の現在位置とを比較し、緊急車両の通行予定ルート上、もしくはその近傍に存在している一般車両に対して、少なくとも緊急車両の通過に関する緊急情報を報知するする手順と
を含むこと。
【0014】
上記(6)の構成の緊急車両情報報知方法によれば、緊急車両の通行予定ルート上もしくはその近傍に存在している一般車両のみに限定して緊急情報を報知することができる。従って、緊急車両の通行の妨げとなる可能性が低い一般車両に対して緊急情報が報知されるのを避けることができる。また、緊急車両の通行予定ルートを考慮するので、緊急車両の通行の妨げとなる可能性が高い一般車両に対しては、緊急車両に接近する前に事前に緊急情報を報知することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の緊急車両情報報知システムによれば、緊急時における緊急車両の円滑な走行を支援すると共に、一般車両の運転者における緊急車両の状況把握を容易にすることが可能である。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施形態における緊急車両情報報知システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】図2は、緊急車両用車載器の構成例を示すブロック図である。
【図3】図3は、緊急車両用車載器の主要な動作を示すフローチャートである。
【図4】図4は、管理サーバの主要な動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の緊急車両情報報知システム及び緊急車両情報報知方法に関する具体的な実施の形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0019】
<システム全体の構成>
本実施形態における緊急車両情報報知システムの構成例が図1に示されている。図1に示した緊急車両情報報知システムは、緊急車両用車載器100、管理サーバ200、無線通信設備210、220および一般車両用車載器300により構成されている。
【0020】
緊急車両用車載器100は、例えば救急車、消防車、パトカーなどの緊急車両に搭載した状態で使用される。一般車両用車載器300は、緊急車両以外の一般車両にそれぞれ搭載した状態で使用される。緊急車両用車載器100および一般車両用車載器300は、それぞれ所定の無線通信機能を搭載している。
【0021】
管理サーバ200は、無線通信設備210を経由して各緊急車両上の緊急車両用車載器100との間でデータ通信を行うことができる。また、無線通信設備220を経由して一般車両上の一般車両用車載器300との間でデータ通信を行うことができる。
【0022】
無線通信設備210及び220の具体例としては、携帯電話等の移動体通信サービスを提供する通信事業者の所有する通信網や、道路上もしくはその近傍の各地点に設置される電波ビーコン、光ビーコンなどの通信設備を利用することが想定される。
【0023】
従って、管理サーバ200は緊急車両用車載器100から取得した情報に基づいて各緊急車両の状況を把握することができ、一般車両用車載器300から取得した情報に基づいて各一般車両の状況も把握することができる。一般車両用車載器300は、管理サーバ200から受信した情報に基づいて、緊急車両の通行予定ルート等を把握し、一般車両の運転者に報知することができる。システムの動作の詳細については後で説明する。
【0024】
なお、一般車両用車載器300については、通信機能や受信した情報を運転者に報知する機能を搭載している装置であれば良く、様々な機器を一般車両用車載器300として利用できる。例えば、一般車両上に固定的に設置されるカーナビゲーション装置、ETC車載器のような専用の車載器でも良いし、運転者が携帯可能な携帯電話端末、携帯型音楽プレーヤなどの装置に一般車両用車載器300の機能を組み込んでも良い。
【0025】
<緊急車両用車載器の構成>
図1に示した緊急車両用車載器100の具体的な構成例が図2に示されている。図2に示す緊急車両用車載器100は、テレマティクス車載端末として機能するように、無線通信機能を搭載している。
【0026】
図2に示す例では、緊急車両用車載器100の本体に、制御部110、通信モジュール111、GPSモジュール112、シリアル通信インタフェース113、表示部114、電源部115、速度インタフェース116、回転インタフェース117、デジタル入力インタフェース118、CAN通信インタフェース119、およびメモリ120が備わっている。
【0027】
制御部110は、マイクロコンピュータにより構成されている。このマイクロコンピュータは、予め組み込まれているプログラムを実行することにより、この緊急車両用車載器に必要とされる機能を実現するための制御を行う。制御部110の具体的な動作については後で説明する。
【0028】
通信モジュール111は、緊急車両に搭載された通信アンテナ11と接続されており、通信アンテナ11を利用して無線通信を行うための機能を有している。具体的には、例えば移動体通信サービスを提供する通信設備の無線基地局との間でデータ通信を行い、この無線基地局を経由して図1に示した管理サーバ200との間で通信する。
【0029】
GPSモジュール112は、緊急車両に搭載されたGPSアンテナ12と接続されている。GPSモジュール112は、GPSアンテナ12により受信される複数のGPS(Global Positioning System)衛星からの電波に基づき、計算を行って緊急車両の現在位置を把握することができる。
【0030】
シリアル通信インタフェース113は、RS−232C規格に対応した通信インタフェースであり、緊急車両用車載器100とETC車載器13との間でデータ通信を行うために利用される。ETC(電子料金収受:Electronic Toll Collection)車載器13は、高速道路の料金所等に設置されるETC通信設備との間でデータ通信を行い、通行料金の決済等に関するデータのやりとりを行うことができる。
【0031】
表示部114は、複数の発光ダイオード(LED)表示器を備えており、緊急車両用車載器100の動作状態などを運転者に知らせるために利用される。
【0032】
電源部115は、緊急車両のバッテリーなどが含まれる車両電源14と接続されている。すなわち、緊急車両のエンジンキーの状態に連動して、車両電源14から電力が供給されると、電源部115は緊急車両用車載器100の各部に所定の電力を供給する。
【0033】
速度インタフェース116は、緊急車両に備わっている速度センサ15と接続されている。この速度センサ15は、緊急車両の変速機の出力軸が所定量回動する毎に車速パルスを出力する。速度インタフェース116は、速度センサ15から出力される車速パルスの信号を制御部110の処理に適した信号に変換する。
【0034】
回転インタフェース117は、緊急車両に備わっているエンジン回転センサ16と接続されている。このエンジン回転センサ16は、緊急車両のエンジンの出力軸が所定量回動する毎に回転パルスを出力する。回転インタフェース117は、エンジン回転センサ16から出力される回転パルスの信号を制御部110の処理に適した信号に変換する。
【0035】
デジタル入力インタフェース118は、5つの独立したチャネルのデジタル入力を備えている。デジタル入力インタフェース118は車両側装置17と接続される。車両側装置17の代表例として、この緊急車両に搭載されたカーナビゲーション装置や、この緊急車両に備わっているサイレン装置がある。
【0036】
カーナビゲーション装置は、この緊急車両が走行を開始する前に、指定された目的地に従って、通行予定ルートを自動的に生成し、通行予定ルート、ルート上の各地点の通行予測時間、目的地などの情報をナビ(NAVI)信号として緊急車両用車載器100に出力することができる。サイレン装置は、緊急車両の運転者の操作に応じてサイレン鳴動動作のオンオフが切り替わり、サイレン鳴動動作のオンオフを表すサイレン信号を緊急車両用車載器100に出力することができる。
【0037】
CAN通信インタフェース119は、CAN(Controller Area Network)規格に対応した通信機能を提供するためのインタフェースである。このCAN通信インタフェース119には、スイッチユニット(SWU2)18を接続することができる。
【0038】
メモリ120は、制御部110のマイクロコンピュータからのアクセスによりデータの書き込み及び読み出しを自在に行うことができる。制御部110は様々なデータを一時的に保持するためにメモリ120を利用する。
【0039】
<緊急車両用車載器の動作>
緊急車両用車載器100の主要な動作が図3に示されている。図3に示す動作は、制御部110のマイクロコンピュータの制御により実現する。図3に示す動作について以下に説明する。
【0040】
ステップS11では、制御部110は車両側装置17からデジタル入力インタフェース118を介して入力されるサイレン信号の状態を参照し、サイレンが鳴動状態か否かを識別する。サイレンが鳴動状態である時には、この緊急車両が緊急状態であるとみなし次のステップS12に進む。
【0041】
ステップS12では、制御部110は車両側装置17として接続されたカーナビゲーション装置からデジタル入力インタフェース118を介して入力されるナビ(NAVI)信号を参照し、緊急車両(自車両)の通行予定ルートが確定したか否かを識別する。
【0042】
車両側装置17として接続されるカーナビゲーション装置は、一般的なカーナビゲーション装置の場合と同様に、運転者が目的地を入力し、ルート探索を指示すると、この入力操作に応答して現在位置から目的地までの適切な通行予定ルートを表す情報を自動的に生成する。この情報の生成が完了すると、通行予定ルートが確定し、制御部110の処理はステップS13に進む。
【0043】
ステップS13では、制御部110は車両側装置17であるカーナビゲーション装置から、カーナビゲーション装置が生成したナビ情報を取得する。このナビ情報には、目的地、通行予定ルート、通行予測時間が含まれている。通行予測時間は、通行予定ルート上の複数の地点のそれぞれをこの緊急車両が通過する時刻(又は現在時刻に対する相対時間)の予測値である。
【0044】
ステップS14では、制御部110はステップS13で取得したナビ情報、すなわち目的地、通行予定ルート、通行予測時間の各情報を通信モジュール111及び通信アンテナ11を利用して、管理サーバ200宛てに送信する。
【0045】
<管理サーバの動作>
図1に示した管理サーバ200の主要な動作が図4に示されている。図4に示す動作は、管理サーバ200のコンピュータが所定のプログラムを実行することにより実現される。なお、図4においては管理サーバ200が緊急車両V1に搭載された緊急車両用車載器100と通信可能な状態であり、複数の一般車両V21、V22、V23のそれぞれに搭載されている一般車両用車載器300と管理サーバ200との間でも通信可能な状態を想定している。
【0046】
ステップS21では、管理サーバ200は緊急車両V1に搭載された緊急車両用車載器100から情報を受信したか否かを識別する。緊急車両用車載器100の制御部110が図3に示したステップS14を実行すると、管理サーバ200側では緊急車両用車載器100から送信された情報の受信がステップS21で検出される。緊急車両用車載器100から情報を受信すると、次のステップS22に進む。
【0047】
ステップS22では、一般車両から情報を取得するための予め定めた条件を満たすか否かを識別する。例えば、一定時間が経過したか否か、あるいは緊急車両が一定の距離を走行したか否かを識別することが想定される。この条件を満たす度に、次のステップS23に進む。
【0048】
ステップS23では、管理サーバ200はそれ自身との間で通信可能な状態の一般車両V21、V22、V23のそれぞれに搭載された一般車両用車載器300との間で無線通信を行う。この通信により、各一般車両の現在位置を表す位置情報を管理サーバ200が取得する。
【0049】
なお、管理サーバ200と一般車両V21、V22、V23の各々との間の通信については、一般車両用車載器300側で一定時間を経過する毎に、あるいは一般車両が一定の距離を走行したことを検出する毎に、自発的に一般車両用車載器300から管理サーバ200に位置データを送信しても良いし、管理サーバ200のポーリング制御により、順番に位置データを取得しても良い。
【0050】
ステップS24では、管理サーバ200は、ステップS21で受信した緊急車両V1の通行予定ルートと、ステップS23で取得した一般車両V21、V22、V23の各々の現在位置とを比較する。すなわち、緊急車両V1がこれから走行する予定の道路上、もしくはその近傍に一般車両V21、V22、V23の各々が存在するか否かを識別する。
【0051】
ステップS25では、管理サーバ200は、通信可能な一般車両V21、V22、V23の各々の現在位置について、緊急車両走行ルート上か否かを識別し、緊急車両走行ルート上の一般車両については次のステップS26を実行する。
【0052】
ステップS26では、管理サーバ200は該当する一般車両の一般車両用車載器300に対して、緊急車両通過予定情報を通知する。この緊急車両通過予定情報は、これを受信した一般車両が道路上で緊急車両と遭遇する可能性が高いことを表す情報であり、更に、該当する緊急車両の目的地や、通行予定ルートや、ルート上の地点毎の通行予測時間の情報も含まれている。
【0053】
<情報の通知の具体例>
図4に示した例では、複数の一般車両V21、V22、V23の中で、一般車両V22のみが、緊急車両V1の通行予定ルート上もしくはその近傍に存在している場合を想定している。従って、この場合は管理サーバ200は一般車両V22のみに緊急車両通過予定情報を通知する。
【0054】
この緊急車両通過予定情報を受信した一般車両V22上の一般車両用車載器300は、自車が道路上で緊急車両と遭遇する可能性が高いことを認識し、これを自車の運転者に通知する。また、受信した緊急車両通過予定情報を利用して、緊急車両の目的地や、通行予定ルートや、ルート上の地点毎の通行予測時間を表示して自車の運転者に知らせることもできる。
【0055】
従って、緊急車両V1と遭遇する可能性の高い一般車両V22の運転者は、実際に緊急車両V1に接近する前であっても、事前に緊急車両との遭遇に関する状況を把握することができる。また、緊急車両V1と遭遇する可能性が低い一般車両V21、V23の運転者は、自車が緊急車両通過予定情報を受信しないので、緊急車両とは遭遇しないと考えることができ、格別な注意を払うことなく通常の走行を続けることができる。
【0056】
その結果、緊急車両が接近する前であっても、他の一般車両の運転者は緊急車両の走行を妨げないように事前の注意を怠らなくなり、緊急車両は安全且つ迅速に目的地まで移動することが可能になる。
【0057】
<変形例>
図3に示した動作例では、緊急車両がサイレン鳴動状態で通行ルートが確定した時にのみ、通行予定ルート等の情報を緊急車両用車載器100から管理サーバ200に送信している。これ以外に、例えば緊急車両の現在位置が所定距離移動した時や、緊急車両が交差点を曲がった時に、緊急車両の現在位置を管理サーバ200に通知することが考えられる。これにより、管理サーバ200は緊急車両の実際の位置を把握することができるので、通行予定ルートの中で既に緊急車両が通過した範囲は過去のデータとして無視することもできる。また、位置情報の他に、緊急車両の実際の車速を表す速度情報を緊急車両用車載器100から管理サーバ200に送信しても良い。
【符号の説明】
【0058】
11 通信アンテナ
12 GPSアンテナ
13 ETC車載器
14 車両電源
15 速度センサ
16 エンジン回転センサ
17 車両側装置
18 スイッチユニット
100 緊急車両用車載器
110 制御部
111 通信モジュール
112 GPSモジュール
113 シリアル通信インタフェース
114 表示部
115 電源部
116 速度インタフェース
117 回転インタフェース
118 デジタル入力インタフェース
119 CAN通信インタフェース
120 メモリ
200 管理サーバ
210,220 無線通信設備
300 一般車両用車載器
V1 緊急車両
V21,V22,V23 一般車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急車両上に搭載可能な緊急車両用車載器と、一般車両上に搭載可能な少なくとも1つの一般車両用車載器と、前記緊急車両用車載器および一般車両用車載器との間で無線通信可能な管理サーバとを備え、
前記管理サーバは、前記緊急車両用車載器から受信した情報に基づいて、少なくとも該当する緊急車両の通行予定ルートを把握し、
前記管理サーバは、前記一般車両用車載器から受信した情報に基づいて、少なくとも該当する一般車両の現在位置を把握し、
前記管理サーバは、前記緊急車両の通行予定ルートと一般車両の現在位置とを比較し、緊急車両の通行予定ルート上、もしくはその近傍に存在している一般車両に対して、少なくとも緊急車両の通過に関する緊急情報を報知する
ことを特徴とする緊急車両情報報知システム。
【請求項2】
前記緊急車両用車載器は、指定された目的地に対して適切な通行予定ルートの情報を生成するナビゲーション装置と連動し、特定の条件が満たされた時に、生成された通行予定ルートの情報を前記管理サーバに送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の緊急車両情報報知システム。
【請求項3】
前記緊急車両用車載器は、該当する緊急車両のサイレンが鳴動中か否かを識別し、サイレンが鳴動中の場合に限り、生成された通行予定ルートの情報を前記管理サーバに送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の緊急車両情報報知システム。
【請求項4】
前記管理サーバは、前記一般車両用車載器から情報を繰り返し受信して、把握している一般車両の現在位置を逐次更新し、各々の一般車両の最新の位置情報に基づいて前記緊急情報の報知対象となる一般車両を特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の緊急車両情報報知システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−61728(P2013−61728A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198561(P2011−198561)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(501418498)矢崎エナジーシステム株式会社 (79)
【Fターム(参考)】