緊急車両認知支援装置
【課題】 運転者の認知レベルが低下した場合に、緊急車両の接近認知をタイムリーかつ的確に支援できる緊急車両認知支援装置を提供する。
【解決手段】 運転者の緊急車両接近に対する注意集中度を、生体情報に基づいて特定される精神活性度と精神愉快度との組合せに基づいて特定する。また、カーナビゲーションシステム16が地図上に特定する現在走行路に係る、車両現在位置よりも前方に位置する走行予定路の線形情報を取得する。注意集中度が一定レベルまで低下した場合に、緊急車両の認知支援ないし運転誘導の内容を走行予定路の線形に応じて決定し、出力する。
【解決手段】 運転者の緊急車両接近に対する注意集中度を、生体情報に基づいて特定される精神活性度と精神愉快度との組合せに基づいて特定する。また、カーナビゲーションシステム16が地図上に特定する現在走行路に係る、車両現在位置よりも前方に位置する走行予定路の線形情報を取得する。注意集中度が一定レベルまで低下した場合に、緊急車両の認知支援ないし運転誘導の内容を走行予定路の線形に応じて決定し、出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、緊急車両認知支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】実開平6 − 44640号公報
【特許文献2】特開平6 −328980号公報
【特許文献3】特開2000−172988号公報
【特許文献4】特開2002−117484号公報
【特許文献5】特開2005−100097号公報
【特許文献6】特開2008− 52341号公報
【特許文献7】特開平11 − 48886号公報
【特許文献8】特開2004−355272号公報
【特許文献9】特開2004−168085号公報
【特許文献10】特開2004− 42777号公報
【特許文献11】特開2002− 59796号公報
【特許文献12】特開2005− 9883号公報
【0003】
消防車、救急車、パトカーなどの緊急車両は、道路交通法上その緊急走行時には優先走行権があり、一般車はこれを支援するため、緊急車両接近時には自車を路肩に寄せて徐行または停止して緊急車両に走行路を譲る義務がある。自動車の運転手は緊急車両の接近を、緊急車両の発するサイレン音や赤色灯の点燈により認知するが、この認知を支援するために種々の方式が提案されている(特許文献1〜8)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記先行技術においては、緊急車両の認知が何らかの外部要因(例えば、車両の密閉化や遮音性の向上、オーディオの大音量化、死角発生による視認困難化等)により阻害される状況を想定し、こうした外部視認阻害要因に対向する認知支援手段の構築に重点が置かれていた。しかし、運転者側の肉体的ないし精神的要因による認知レベルに関しては何ら考慮が払われておらず、常時一律な認知支援が行なわれていたのでメリハリに欠ける難点がある。例えば、運転者の認知レベル十分高く、既に緊急車両の接近に気付いている場合にも、認知支援のための何らかの報知出力がなされ、煩わしく感じられる場合がある。また、こうした一律な報知出力が継続すると、報知出力に対する運転者の注意も薄れ、やがては無視するようになるので、認知レベルが低下して本当に支援が必要となるシーンで、支援効果が芳しくなくなる問題がある。
【0005】
本発明の課題は、運転者の認知レベルが低下した場合に、緊急車両の接近認知をタイムリーかつ的確に支援できる緊急車両認知支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の緊急車両認知支援装置は、自車に対する緊急車両の接近を検出する緊急車両接近検出手段と、自車の運転者の生体情報を検出する生体情報検出手段と、生体情報に基づいて運転者の緊急車両に対する認知可能度を特定する認知可能度特定手段と、緊急車両の接近が検出され、かつ、特定された認知可能度が予め定められたレベルよりも低下した場合に、緊急車両の接近に対する当該場合に特有の認知支援出力を行なう認知支援出力手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
上記本発明の構成によると、緊急車両の接近に対する運転者の生体的な認知可能度をその都度特定し、該認知可能度が一定レベル未満に低下した場合に、特有の認知支援出力を行なうようにした。これにより、運転者の認知レベルが低下した場合に、緊急車両の接近認知をタイムリーかつ的確に支援することができる。
【0008】
なお、本発明においても、緊急車両の認知が何らかの外部要因(例えば、車両の密閉化や遮音性の向上、オーディオの大音量化、死角発生による視認困難化等)により阻害される状況では、運転者の認知可能度が特に低下していない場合にあっても、従来と同様の認知支援出力(例えば、車外音をマイク等によりサンプリングし、サイレン音等を抽出して、車室内のスピーカーから該サイレン音(あるいはこれに代用される合成音)を出力するなど)を、バックグラウンド認知支援出力として実施することがもちろんである。ただし、この場合も、運転者の認知可能度が前述のごとく低下した場合には、バックグラウンド認知支援出力とは異なる特有の認知支援出力を行なうことになる。
【0009】
当然、この場合の認知支援出力は、緊急車両接近に対する認知覚醒度を高め、運転者の認知可能度の低下を補うことができる出力内容とする必要がある。認知支援出力手段は、具体的には、音声、光、画像、振動ないしそれらの2以上の組合せにより、緊急車両の接近を報知する出力を行なうものとして構成できる。例えば、音声出力の場合は音量を上げたり周波数レベルを上げた甲高い音声出力とし、光や画像の場合は輝度を上げたり点滅動作を加えるなど、さらには振動の場合は振動振幅を増加させるなど、聴覚的、視覚的ないし触覚的な刺激効果を高めた出力とすることが有効である。また、バックグラウンド認知支援出力では休止している出力源(例えば振動源:運転者用シート及びアクセルペダルの少なくともいずれかに取り付けられた振動発生装置を含むものとして構成できる)を、上記認知可能度低下時の支援出力では稼動させる態様も有効である。
【0010】
認知可能度特定手段は、認知可能度の一つとして、緊急車両に対する注意集中度を生体情報に基づいて特定する注意集中度特定手段を有し、認知支援出力手段は、少なくとも注意集中度が予め定められたレベルよりも低下したときに、緊急車両の接近に対する認知支援出力を行なうように構成することができる。運転者の注意集中度が低下した場合に、特有の認知支援出力を行なうことで運転者を的確に覚醒させることができ、緊急車両の接近認知効果を高めることができる。
【0011】
注意集中度特定手段は、生体情報に基づいて運転者の精神活性度を特定する精神活性度特定手段と、生体情報に基づいて運転者の精神愉快度を特定する精神愉快度特定手段とを有し、注意集中度を精神活性度と精神愉快度との組合せに基づいて特定するように構成できる。ラッセル・メーラビアンが提唱する感情平面の概念によれば、特定の感情状態のいずれにも偏らない中庸の精神状態、すなわちニュートラル状態を基準として、精神の活性度と愉快度とは、いずれも、正と負の2状態(活性度であれば活性/不活性、愉快度であれば愉快/不愉快)を定義できる。そして、精神活性度(覚醒度)を縦軸に、愉快度を横軸に定めた感情平面上の4つの象限に、人間の「喜」「怒」「哀」「楽」の4つの感情状態、具体的には、盛り上がり状態(「喜」に対応、精神活性度:正/愉快度:正)、怒り・興奮状態(「怒」に対応、精神活性度:正/愉快度:負)、落胆・倦怠状態(「哀」に対応、精神活性度小/不愉快)、癒し・リラックス状態(「楽」に対応、精神活性度:負/愉快度:正))を対応付けることができる。
【0012】
そして、生体情報に基づいて運転者の精神活性度と精神愉快度とをそれぞれ特定し、それら活性度と愉快度との値の組を上記感情平面上にプロットすれば、プロット点が感情平面のどの象限に属するかにより運転者の感情種別を特定でき、原点からプロット点までの距離により感情の強さを特定できる。換言すれば、感情平面の原点近傍のエリアは、前述の中庸の精神状態(ニュートラル状態)を表わすものであり、各象限にてこのニュートラル状態から遠ざかるにつれ、個々の象限に特徴的な感情ひいては欲求により強く支配された状態へと推移する。運転者の精神状態が余計な感情にとらわれて波立っている場合、つまり、ニュートラル状態から遠い精神状態では、その感情発生の要因と直接関係のない外的刺激に対しては認知が鈍感になるのは経験則から明らかであり、逆にニュートラル状態に近ければ認知感度は高くなる。従って、精神活性度と精神愉快度との組合せで表現される感情平面上のプロット点の原点からの距離が大きいほど注意集中度は低くなり、逆に小さいほど注意集中度は高くなる。つまり、精神活性度と精神愉快度との組合せにより、運転者の注意集中度を定量的に特定することができる。
【0013】
この場合、注意集中度特定手段は、精神活性度と精神愉快度との少なくともいずれかが、予め定められた中立範囲を逸脱した場合に注意集中度が低下したと判定するように構成できる。例えば、精神活性度と精神愉快度との組合せで表現される感情平面上のプロット点の原点からの距離が、一定レベルを超えて大きくなった場合に、緊急車両に対する認知に支障をきたすレベルに注意集中度が下がったと判定し、特有の認知支援出力を行なうことで、運転者の注意力低下を補って緊急車両の接近を的確に認知させることができ、緊急車両の通行円滑化に寄与することができる。
【0014】
生体情報検出手段は、自動車の座席に着座する運転者の心臓又は肺のエコー測定を行なうエコー測定ユニットを含み、注意集中度特定手段は、該エコー測定結果に基づいて注意集中度を特定するものとして構成できる。心臓及び肺は鼓動ないし呼吸に伴なう動きが顕著であり、超音波を検出プローブとして入射することにより、その動きによりドップラー効果を生じた形で反射波を生ずる。そして、心臓及び肺は精神状態を反映して挙動を明瞭かつ速やかに変化させるので、上記反射波を解析することにより精神状態をリアルタイムにて精度よく検出することができる。該エコー測定ユニットは、座席の背もたれ部に埋設される測定用超音波送信部と反射超音波受信部とを有し、運転者のエコー測定を行なうように構成できる。運転者の背中に直接当たる背もたれ部において、心臓ないし肺に臨む位置に測定用超音波送信部と反射超音波受信部とを設けることでエコー測定を高精度に実施することができる。
【0015】
心臓ないし肺のエコー測定により、運転者の心拍数、呼吸数及び血流速度の少なくともいずれかを特定することが可能であり、注意集中度特定手段は、その特定結果に基づいて運転者の精神状態を検出することができる。心鼓動に伴い、心臓エコー波形には周波数ドップラーシフトが生ずる。心筋の膨張ないし収縮方向の変位が最大となるとき心筋の移動速度は最小となってドップラーシフトは最小となり、心筋が中立位置を通過するときドップラーシフトは最大となるから、心臓エコー波形を周波数時間変化波形に変換すれば、例えば、その周期から心拍数を、振幅から鼓動の強さを読み取ることができる。同様に、肺エコー波形を周波数時間変化波形に変換することにより、その周期から呼吸数を、振幅から呼吸の深さを読み取ることができる。また、心臓内を運動する血流も心臓エコー波形に対するドップラーシフト要因となり、入力する超音波ビームの波長を調整することにより、心臓エコー波形から血流速度を算出することも可能である。
【0016】
注意集中度特定手段は、心臓又は肺を測定対象とした測定用超音波送信部と反射超音波受信部とからなる第一エコー測定部と、該測定対象以外の人体部分を測定対象とした測定用超音波送信部と反射超音波受信部とからなる第二エコー測定部と、第一エコー測定部の反射超音波受信部出力波形と、第二エコー測定部の反射超音波受信部出力波形との差分波形を演算・出力する差分演算部とを有し、該差分波形に基づいて心拍数、呼吸数及び血流速度の少なくともいずれかを特定するものとして構成することができる。人体外から超音波を入射して心臓ないし肺に到達させ、その反射波から心臓ないし肺の運動を反映したドップラーシフトを観測することができるが、運転者の姿勢変化、運転者人体に作用する車両振動や、上記臓器以外の人体組織内の血流など、心臓ないし肺の運動以外にもドップラーシフト要因は存在し誤差要因となりうる。そこで、心臓や肺を測定対象とした第一エコー測定部の反射超音波受信部出力波形から、測定対象以外の人体部分(つまり、心臓や肺から外れた位置にある人体部分)を測定対象とした第二エコー測定部の反射超音波受信部出力波形を減算することで、上記心臓ないし肺の運動以外のドップラーシフト要因を効果的に排除することができる。
【0017】
なお、エコー測定結果が示す心拍数や呼吸数は、精神活性度の特定は容易であるが、同じ活性な状態でも愉快側に傾いているのか(つまり、機嫌がよいのか)、あるいは不愉快側に傾いているの(つまり、不機嫌なのか)を正確に判定するのは困難である。そこで、愉注意集中度特定手段は、エコー測定ユニットの測定結果に基づいて精神活性度を特定する一方、該エコー測定ユニットとは別に設けられた精神愉快度特定手段により精神愉快度を特定し、精神状態を精神活性度と精神愉快度との組合せに基づいて特定するように構成できる。精神愉快度特定手段は、例えば、運転者の表情及び姿勢の少なくともいずれかに基づいて精神愉快度を検出するものとできる。
【0018】
生体情報検出手段は、生体情報として運転者の視線方向を特定する視線方向特定手段を有するものとして構成できる。この場合、自車に対する緊急車両の接近方向を検出する緊急車両接近方向検出手段を設けておき、認知可能度特定手段を、認知可能度の一つとして、運転者の視線方向と緊急車両の接近方向との一致度を特定するものとして構成する。認知支援出力手段は、一致度が予め定められた許容範囲を逸脱することを条件として、緊急車両の接近に対する認知支援出力を行なうように構成する。運転者の視線方向が緊急車両の接近方向と一致していなければ、該緊急車両を認知できていない蓋然性が高く、この場合に支援出力を行なうことで緊急車両の接近を的確に認知させることができ、緊急車両の通行円滑化に寄与することができる。
【0019】
また、前述の注意集中度と関連させた場合、注意集中度が低下していても、運転者の視線方向が緊急車両の接近方向と一致していれば、緊急車両を不可避的に視覚認知できる可能性が高い。そこで、認知可能度特定手段を、前述のごとく、認知可能度の一つとして、緊急車両に対する注意集中度を生体情報に基づいて特定する注意集中度特定手段も有するものとして構成し、認知支援出力手段は、注意集中度が予め定められたレベルよりも低下し、かつ、一致度が予め定められた許容範囲を逸脱した場合に、緊急車両の接近に対する認知支援出力を行なうようにすれば、認知支援出力を行なうタイミングの的確性をより向上できる。
【0020】
次に、緊急車両の接近ならびにその方向を検出する緊急車両接近方向検出手段を設ける場合、本発明の緊急車両認知支援装置は、自車の走行路形状を推定する走行路形状推定手段と、推定された走行路形状と緊急車両の接近方向とに応じて運転誘導内容を決定する運転誘導内容決定手段と、決定された運転誘導内容を出力する運転誘導出力手段と、を有するものとして構成できる。緊急車両に走行路を譲るためには、走行中の道路のどこで緊急車両と遭遇するか、具体的には緊急車両と遭遇したときの走行路形状がどのようなものであるかに応じて、走行路を譲るための適正な運転内容も変化する。しかし、熟練者を除けば、緊急車両と遭遇したときに咄嗟の運転対応をとれないこともありえる。そこで、推定された走行路形状と緊急車両の接近方向とに応じて(適切な)運転誘導内容を決定し、これを出力することで、熟練したドライバーでなくとも、緊急車両の通行を優先させるための、走行路形状に応じた最適の運転対応に適切に導くことができる。
【0021】
緊急車両接近方向検出手段は、緊急車両の位置情報を車外情報源から無線取得する緊急車両位置情報無線取得手段と、自車の現在位置を取得する現在位置取得手段とを有し、緊急車両位置情報と自車の現在位置情報とに基づいて緊急車両の接近方向を特定するものとして構成できる。この手法は、例えば、VICS等による緊急車両のGPS位置情報(特許文献3,5)、車車間通信(特許文献4,8)、交差点に設置された静止監視カメラからの緊急車両撮影情報(特許文献6)などを緊急車両の位置情報として無線取得し、これに基づいて自車に対する緊急車両の接近把握を行なう。無線通信が正常に実行でき、取得情報のリアルタイム性が担保されてさえいれば、緊急車両の接近方向に係る情報を比較的高精度に特定でき、走行路形状と緊急車両接近方向に応じた運転誘導を適切に実行できる。
【0022】
しかしながら、上記方式の場合、緊急車両のGPS位置情報の無線配信が遅れたり、あるいは通信途絶が発生したり、さらには、無線配信の対象地域外を走行中の場合は、緊急車両の接近検知が実行できず、適切な接近認知支援出力や運転誘導が不能となる場合がある。また、緊急車両へのGPS搭載や、交差点等への緊急車両検出装置の配設、無線通信網の整備など、インフラ構築に多大なコストを要する問題もある。
【0023】
そこで、これを解決する方法として、車両上の異なる位置に、緊急車両が発するサイレン音を各々検出する複数のマイクロフォンを設け、それら複数のマイクロフォンによるサイレン音の検出状態に基づいて、緊急車両の接近方向を特定する接近方向特定手段を設ける方式を採用可能である。緊急車両が発するサイレン音は出力音の種類や周波数帯が比較的限られており、マイクロフォンによる検出波形を周波数解析する周知の手法により、比較的簡単かつ正確に検出・特定することができる(特許文献1,7)。しかしながら、単一のマイクロフォンでは、検出されるサイレン音成分の音量により接近レベルは特定できても、接近方向の情報までは得ることができない。そこで、車両上の異なる位置にマイクロフォンを設置し、各マイクロフォンで抽出されるサイレン音の音量や位相の差に基づいて、緊急車両の接近方向を特定することが可能となる。
【0024】
なお、車両上に設けられたカメラの撮影画像に基づいて緊急車両の接近方向を特定する方式を採用することも可能であるが、緊急車両を正確に特定するためには、かなり複雑な画像解析を行なう必要があるし、例えばパトライトの点灯検出は緊急車両を特定する上で有効であるが、緊急車両以外のパトライトを誤認しやすい問題もある。従って、緊急車両の特定精度に関しては、上記複数のマイクロフォンによりサイレン音検出する方式を採用するほうがより有利であるともいえる。なお、複数のマイクロフォンによりサイレン音検出する方式に、カメラの撮影画像に基づいて緊急車両の接近方向を特定する方式を補助的に組み合わせることで、緊急車両の接近方向の特定精度をさらに向上させることが可能である。
【0025】
走行路形状推定手段は、車両に搭載されたカーナビゲーションシステムから走行路形状情報を取得するものとして構成できる。地図データを搭載したカーナビゲーションシステムにより、緊急車両接近時の走行路形状を、車外通信に頼ることなる自律的に取得できる。特に、複数のマイクロフォンによるサイレン音の検出状態に基づいて、緊急車両の接近方向を特定する方式と組み合わせれば、緊急車両のGPS位置情報を無線取得する方式のような配信遅れや通信途絶の影響を全く受けずにすみ、さらには、地域によらずどこでも緊急車両の接近検知を確実に実行でき、接近認知支援出力や運転誘導を安価にかつ安定して実施できる。
【0026】
走行路形状推定手段がカーナビゲーションシステムから取得する走行路形状情報は、具体的には、カーナビゲーションシステムが地図上に特定する現在走行路に係る、車両現在位置よりも前方に位置する走行予定路の線形情報とすることができる。運転誘導内容決定手段は、走行予定路が道なり形状であるか交差点形状であるかを区別した形で運転誘導内容を決定するように構成できる。道なり形状の場合は道路横方向(左右いずれか)から緊急車両が接近してくることはありえず、車々間通信やサイレン音による接近方向特定の誤差や、情報の配信遅れ等により横方向からの緊急車両接近を誤って検出してしまった場合にも、その可能性を排除することができる。他方、交差点形状であれば、該交差点にちょうど差し係るタイミングで、見通しの悪い左右(横)いずれかの方向から緊急車両が急接近してくることは逆に多々発生する可能性があり、接近方向特定手段により横方向からの緊急車両接近が特定された場合に、接近認知支援出力や運転誘導の処理強化を意識的に図ることが可能となる。
【0027】
運転誘導出力手段は、運転誘導内容を音声、画像又はそれらの組合せにより出力するように構成することができる。特に、前方を注視している運転者に対しては、音声による運転誘導が有効であり、ヘッドアップディスプレイ等を利用した運転注視方向への画像出力(例えば「徐行」や「一旦停止」等の文字出力)を行なうことも、これに準じて有効である(もちろん、両者を組み合わせてもよい)。
【0028】
以下、本発明にて採用可能な、具体的な運転誘導形態について説明する。
(1)緊急車両の接近方向が自車後方であった場合は、運転誘導内容決定手段は、道なり路及び交差点形状のいずれにおいても(つまり、走行予定路の形状によらず)、道路端寄せ(路片寄せ)又はレーン変更を運転誘導内容として決定する。これにより、後続の緊急車両に進路を譲ることができる。
【0029】
(2)走行予定路が道なり形状であって、緊急車両の接近方向が自車前方であった場合に、運転誘導内容決定手段は徐行運転を運転誘導内容として決定する。追い越し等のために、緊急車両が自車レーン側にはみ出して走行してきた場合等においても、徐行誘導することで的確に対応することができる。
【0030】
(3)走行予定路が交差点形状であって、緊急車両の接近方向が自車横方向であった場合に、運転誘導内容決定手段は、交差点内への進入を制限する運転誘導内容を決定する。交差点内には信号が赤であっても緊急車両が進入してくるため、当該交差点に向けて自車が進行中のとき、横方向から接近する緊急車両が検知された場合は、交差点内への進入を制限する誘導を行なうことで、緊急車両は交差点内へ円滑に進入することができる。
【0031】
(4)走行予定路が交差点形状であって、緊急車両の接近方向が自車前方であった場合に、運転誘導内容決定手段は、緊急車両が右折するか否かを推定するとともに、右折すると推定された場合に交差点内への進入を制限する運転誘導内容を決定する。交差点を右折しようとする緊急車両は、交差点に入ってくる直進一般対向車に優先して右折することができる。従って、前方から接近する緊急車両が検出され、かつ、(例えば自車に搭載された前方撮影カメラにより対向車両のウインカー点灯を検出する等の公知の技術により)、該緊急車両の右折が検出された場合は、交差点内への進入を制限する誘導を行なうことで、緊急車両は交差点内を円滑に右折することができる。他方、緊急車両が右折しないと推定された場合には、運転誘導内容決定手段は、緊急車両の急な右折や右折待ちの一般車追い越し等に備えて、交差点内の徐行運転を運転誘導内容として決定するように構成しておくとよい。
【0032】
なお、(3)、(4)いずれの場合も、交差点内への進入を制限する運転誘導内容は、交差点手前での一旦停止とすることが望ましい(ただし、一旦停止が困難な状況下では、交差点に進入してからの一旦停止誘導や、徐行誘導を行なうことももちろん可能である)。
【0033】
また、運転誘導内容決定手段が交差点内への進入を制限する運転誘導内容を決定した場合に、自車の走行を抑制する走行抑制手段を設けておくと、緊急車両を優先させる状況下で交差点内に高速で進入してしまう不具合をより確実に予防することができる。特に、自動車に前述の電子エンジン制御装置が搭載されている場合、走行抑制手段は、アクセルペダルの踏下量に応じたエンジン出力を通常時よりも制限するエンジン出力制限手段を有するものとして構成できる。これにより、アクセルペダルを大きく踏み込んでもエンジン出力は通常時よりも小さくなり、加速が鈍るので上記不具合を効果的に抑制できる。
【0034】
電子スロットル制御装置を搭載した自動車の場合、上記のエンジン出力制限手段は、アクセルペダルの踏下に応じたスロットルバルブの開度増加を通常時よりも制限するスロットルバルブ制限手段を有するものとして構成できる。また、電子燃焼噴射制御装置が搭載されている場合は、燃焼噴射を中断ないし抑制する燃焼噴射制限手段を有するものとして構成できる。
【0035】
運転誘導内容決定手段が交差点内への進入を制限する運転誘導内容を決定した場合に、自動車の制動を支援する制動支援手段が設けておくこともできる。エンジン出力を制限しても、既に車速が一定以上に上がってしまった場合は、如何に制動を早く行なうかが緊急車両との干渉回避を行なう上での鍵となる。従って、上記のような制動支援手段を設けることで、緊急車両との干渉を効果的に防止又は抑制できる。制動支援手段は、例えば制動支援時において、ブレーキペダルの踏下反力を通常時よりも増加させる踏下反力制御手段と、ブレーキペダルの踏下量に対するブレーキ圧の増加率を通常時よりも増加させるブレーキ圧制御手段とを有するものとして構成することができる。制動支援時において、ブレーキペダルの踏下量に対するブレーキ圧の増加率を通常時よりも増加させつつ、ブレーキペダルの踏下反力を通常時よりも増加させると、ブレーキ踏下力がほぼ同等であれば、制動支援を特に行なわない場合と比較して、少ない踏下量でほぼ同等の制動効果が得られる。ところが、運転者は、ブレーキペダルの踏下反力が普段よりも大きい分、急ブレーキのために踏み込み量が不足していると感じてさらにブレーキペダルを踏み込もうとする。その結果、制動効果が増強され、緊急車両との干渉回避ないし抑制をより確実に行なうことができる。もちろん、アクセルペダルの踏下量に応じたエンジン出力を通常時よりも制限する処理と併用すれば、さらに効果的であることはいうまでもない。
【0036】
上記のような認知支援出力や運転誘導により、運転者に緊急車両を優先させるための自発的な運転操作(以下、緊急車両優先運転操作ともいう)を促すことができる。なお、緊急車両優先運転操作を失念している状態で運転者が認知支援出力を受けると、アクセルペダルから足を離す→ブレーキペダルを踏み込む、という一連の動作流れにて緊急車両接近回避操作を行なおうとする。このとき、
A:ブレーキペダルを踏み込む。
B:ブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏み込む。
の2つの可能性がある。後者に対応するためには、アクセルペダルの踏下量に応じたエンジン出力を通常時よりも制限する処理を併用することが効果的であり、前者においても、ブレーキペダルの踏下反力を通常時よりも増加させ、かつ、ブレーキペダルの踏下量に対するブレーキ圧の増加率を通常時よりも増加させる処理を併用すると効果的である。
【0037】
上記のような走行抑制処理や制動支援処理は、注意集中度が十分高い場合に発動すると、運転者による操作との競合により、却って効果が損なわれることもありえる。従って、注意集中度が低下し、運転者による自律的なアクセル操作あるいはブレーキ操作に何らかの支障が生ずることが予想される場合に限って発動することが望ましいといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態を示す緊急車両認知支援装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。該緊急車両認知支援装置1の制御主体をなすのはECU2である。ECU2は、CPU3、RAM4、ROM5及び入出力インターフェース6とを内部バスにて接続したマイクロプロセッサを主体に構成されている。
【0039】
入出力インターフェース6には、発進設定方向特定手段ひいてはシフトポジション検出手段をなすシフトポジションセンサ7、アクセルペダル51の踏下量(踏下角度)を検出するアクセルセンサ8、ブレーキペダル61の踏下量(踏下角度)を検出するブレーキセンサ9、運転席に着座する運転者の顔を撮影する顔カメラ10及び該顔の両眼付近を拡大撮影し瞳孔位置により視線方向を特定するための視線カメラ11が接続されている(ただし、視線カメラ11は省略してもよい)。アクセルセンサ8は、アクセルペダルの踏下角度を検出する角度センサとして構成されている。また、ブレーキセンサ9もブレーキペダルの踏下角度を検出する角度センサとして構成されている(なお、ブレーキ踏下の有無のみを検出すればよい場合には、テールランプ駆動等に使用するブレーキスイッチを流用してもよい)。
【0040】
また、入出力インターフェース6には、エコー測定ユニット12、姿勢測定ユニット13、外部ステレオカメラ14、外部ステレオマイク15及びカーナビゲーションシステム16が接続されている。外部ステレオカメラ11(11L,11R)及び外部ステレオマイク15(15L,15R)の組は、図3に示す自動車のフロントバンパFBPと、図4に示すリアバンパRBPに、それぞれ左右1対にて都合4個ずつ取り付けられている。
【0041】
さらに、入出力インターフェース6には、電子スロットル制御装置21(ドライバー21d)と燃料噴射制御装置25(ドライバー21d)とが接続されている。電子スロットル制御装置21は、アクセルセンサ8によるアクセルペダル踏下量(アクセル位置)を参照したECU2からの開度指示値により、スロットルバルブ23が指示開度となるように、その駆動モータ22を作動させる。燃料噴射制御装置25は、ECU2からの指示により、燃料噴射装置のソレノイド噴射バルブ26の開度を調整する。
【0042】
さらに、入出力インターフェース6には、緊急車両(消防車、救急車、パトカーなど)の接近に対する認知支援出力を行なう認知支援出力手段として次のような種々のデバイスが対応するドライバーを介して接続されている。
・アクセルペダル振動部53(ドライバー51d):アクセルペダル51に乗っている運転者の足に向け振動を出力する。アクセルペダルに通常では有り得ないような振動を与え、咄嗟にペダルから足を離させる効果を有する。偏心式加振装置などの周知の振動発生器で構成される。このアクセルペダル振動部53の振動はアクセルペダル51に伝達されるが、電子スロットル制御装置21に受け渡されるアクセルセンサ8の角度出力に対しては不感となるように、その周波数ならびに振幅が設定される(アクセルセンサ8の角度出力に振動変位が重畳される場合は、フィルタリング等によりこれを除去してもよい。
【0043】
・ブレーキ反力モータ62(ドライバー62d):ブレーキペダル61の旋回軸に取り付けられ、ブレーキペダル61に対し踏下方向と逆向きの反力を発生させる。
・シートバイブレータ71(ドライバー71d):運転席シート72に埋設され、緊急車両接近認知を促すための振動出力を行なう。偏心式加振装置や圧電式加振装置などの周知の振動発生器で構成される。
【0044】
・メータ81M及びモニタ110(ドライバー81d)、ミラー内表示装置82(ドライバー82d)、ヘッドアップディスプレイ83(ドライバー83d):緊急車両の認知を促すための表示を行なうことで、注意を喚起する。なお、モニタ110はカーナビゲーションシステム16の表示出力部に兼用される。
【0045】
インナーミラーとアウターミラーは、例えばハーフミラーとし、ミラー裏面よりLED等により表示を行なう。または、透明ELディスプレイをミラー表面に重畳させ、表示を行なってもよい。フロントウィンドウでは、ヘッドアップディスプレイ(透明ELディスプレイでもよい)により緊急車両の認知支援表示を行なう。また、メータ81Mの場合、緊急車両の接近をアイコン表示したり、文字盤や画面全体を赤系統の警告色で点滅させたりすることで、緊急車両接近に対する注意喚起を行なう。メータ81MのバックライトがフルカラーLEDで構成されている場合は、その出力で警告色点灯出力を行なうこともできる。
【0046】
・スピーカー91(ドライバー91d):緊急車両接近認知を促すための音声出力を行なう。
・匂い発生器93(ドライバー93d):危険を感じ、動作を止める香りを発生する。一瞬に、集中できる匂いを発生する。この場合、空気の流れに乗って香りは伝達されることから、空気砲または気流コントロールとセットで考慮するとよい。
【0047】
ROM5には、緊急車両認知支援装置1の主制御プログラム5mと、該主制御プログラム5mが使用する種々のエンジンが格納されている。
・活性度特定エンジン5a:エコー測定ユニット12の測定結果に基づき、運転者の精神活性度を特定する(精神活性度特定手段)。
・愉快度特定エンジン5b:顔カメラ10が検出する運転者の表情、視線カメラ11が検出する運転者の視線、及び姿勢測定ユニット13が検出する運転者の姿勢に基づいて精神愉快度を検出する(精神愉快度特定手段)。
【0048】
・視線特定エンジン5c:視線カメラ11が撮影する運転者の両眼の画像から、周知のアルゴリズムにより視線方向、具体的には車両周囲のどのエリアに視線が向いているかを特定する(視線方向検出手段)。視線カメラ11を省略する場合は、該エンジンは不要である。
・緊急車両特定エンジン5d:外部ステレオマイク15及び外部ステレオカメラ11の検出信号に基づいて、自車に接近する緊急車両と、その接近方向を特定する(緊急車両接近検出手段、緊急車両接近方向検出手段)。
【0049】
・認知ミス判定エンジン5e:活性度特定エンジン5aと愉快度特定エンジン5bとが特定する運転者の精神活性度と精神愉快度とに基づいて、運転者の注意集中度を算出する。そして、緊急車両特定エンジン5dが緊急車両の接近(及びその方向)を検知したとき、運転者の視線方向も考慮して、緊急車両接近に対する認知ミスが発生しているかどうかを判定する。
・認知支援出力制御エンジン5e:緊急車両接近に対する認知ミスが発生したと判定された場合に、前述の種々の認知支援出力手段に対し認知支援出力指令を行なう。
・運転誘導制御エンジン5g:カーナビゲーションシステム16から地図上の走行路形状と車両現在位置とを取得して、現在位置前方の走行予定路の線形を特定するとともに、特定された走行予定路が道なり形状であるか交差点形状であるかを区別し、さらに、緊急車両特定エンジン5dが特定する緊急車両の接近方向に応じて個別に運転誘導内容を決定する(運転誘導内容決定手段)。そして、該誘導内容を、スピーカー91から音声出力させる制御と、モニタ110、ミラー内表示装置82、あるいはヘッドアップディスプレイ83等の表示部に表示出力させる制御指令を行なう。
【0050】
図2は、カーナビゲーションシステム16の構成例を示すブロック図である。該カーナビゲーションシステム16は、位置検出器101、地図データ入力器106、操作スイッチ群107、リモートコントロール(以下リモコンと称する)センサ111、音声案内等のための音声合成回路124、音声出力用のスピーカー115、不揮発メモリであるフラッシュメモリ109、LCD等からなるモニタ110、これらの接続された主制御部をなす情報系ECU51及び主記憶装置をなすHDD(ハードディスク装置)121等を備えるものである。
【0051】
位置検出器101は、周知の地磁気センサ102、ジャイロスコープ103、距離センサ104、および衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPSのためのGPS受信機105を有している。これらのセンサ等102,103,104,105は各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては前述したうちの一部のセンサで構成してもよく、さらに、ステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサ等を用いてもよい。
【0052】
操作スイッチ群107は、メカニカルなスイッチ等を使用できるが、本実施形態では、モニタ110と一体になったタッチパネル122を併用しており、モニタ110上に表示されるボタン画像に対応するタッチパネル領域を指で触れることにより、操作状態を認識できるようにしている(いわゆるソフトボタン)。これら操作スイッチ群107によって、種々の指示を入力することが可能である。
【0053】
操作スイッチ群107の他に、音声認識ユニット130を用いて種々の指示を入力することも可能である。これは、音声認識ユニット130に接続される前述のマイク131(図2参照)から音声を入力することによって、その音声信号を周知の音声認識技術により音声認識処理して、その結果に応じた操作コマンドに変換するものである。
【0054】
情報系ECU51は、CPU181、ROM182、RAM183、前述のフラッシュメモリ109、入出力インターフェース184がバス515により接続されたマイコンハードウェアを主体とするものである。入出力インターフェース184には、位置検出器101、地図データ入力器106、操作スイッチ群107、車車間通信部108及びVICS受信部109が接続されている。
【0055】
HDD121はインターフェース129fを介してバス接続されている。また、地図やナビ操作画面を表示する描画情報に基づいて、モニタ110に画像出力する機能を担う描画LSI187と、描画処理用のグラフィックメモリ187Mとが同様にバス接続され、前述のモニタ110がこれに接続されている。CPU181は、フラッシュメモリ109に記憶されたナビソフトウェア109a(被提供情報収集手段)およびデータにより、目的地検索や経路案内に係る制御を行なう。また、HDD121へのデータの読み書きの制御はCPU181によって行なわれる。
【0056】
HDD121には、道路データを含む地図データ21mと、目的地データや目的地の案内情報からなるナビデータ21pとが記憶されている。また、出力履歴データ21dとコンテンツデータ21uも記憶されている。これらのデータは、操作スイッチ群107の操作あるいは音声入力によって内容の書き換えが可能である。また、外部情報入出力装置(地図データ入力器)106を用いて記憶媒体120からデータを読み込んでHDD121の内容を更新することも可能である。なお、本実施形態では、通信インターフェース126を介して、情報系ECU51が車内ネットワークをなすシリアル通信バス127に接続され、ボデー系ECUやエンジン制御ECU(図示せず)などの、車内の他の制御装置との間でデータの遣り取りを行なうようになっている。また、シリアル通信バス127にはインターネット1170に接続するための無線送受信部を有した通信ECU190(無線アクセス手段)が接続されており、更新用の地図データや、その他の情報を受信できるようになっている。
【0057】
車車間通信部108は、自車の周囲に存在する他車両と直接通信を行ない、周囲車両情報(車両位置、走行方向、車種(具体的には、緊急車両であるか否か)、車両サイズ、速度、ブレーキ、アクセルなど)の送受信を行なうように構成されている。また、VICS受信部109は、図示しないVICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)センタから道路交通情報やFM多重放送を受信するための装置であり、本発明では、緊急車両の位置情報(あるいは走行方向)を取得することを目的とする。
【0058】
モニタ110(被提供情報出力手段)はカラー液晶表示器により構成されており、その画面には位置検出器101から入力された車両の現在位置マークと、HDD121から入力された地図データ21mと、さらに地図上に表示する誘導経路等付加データとを重ね合わせて表示する。また、前述のごとくタッチパネル122が重ね合わされており、必要に応じて、目的地設定、表示設定、種々の機能呼び出し、画面切替操作等のための機能ボタンも表示する。
【0059】
カーナビゲーションシステム16は、情報系ECU51のCPU181によりナビプログラム21pが起動される。運転者は、操作スイッチ群107の操作あるいはマイク131からの音声入力によって、目的地データベース21dから所望の目的地を選択する。例えば、モニタ110上に表示されるメニューから目的地経路をモニタ110に表示させるための経路案内処理を選択した場合、次のような処理を実施する。即ち、運転者がモニタ110上の地図あるいは目的地選択画面に基づいて目的地を入力すると、GPS受信機105から得られる衛星のデータに基づき車両の現在位置が求められ、該現在位置から目的地までの最適な経路を求める処理が行われる。そして、モニタ110上の道路地図に誘導経路を重ねて表示し、運転者に適切な経路を案内する。このような自動的に最適な経路を設定する手法は、ダイクストラ法等の手法が知られている。また、モニタ110およびスピーカー115の少なくとも一方によって、操作時のガイダンスや動作状態に応じたメッセージの報知を行なう。なお、経路案内を行なわない場合は、地図上の走行路を特定し、周知のマップマッチング処理により該走行路上に自車の現在位置を表示・更新する処理を行なう。
【0060】
以下、緊急車両認知支援装置1の制御の流れをフローチャートを用いて説明する。図18は、主制御プログラム5m(図1)の処理の流れを示すものである。まず、S100では、車両使用状況に係る現在シーンを推定する。図19は、該シーン推定処理の流れを示すものであり、S201では、運転席に人が着座したかどうかを顔カメラ10(図1)により撮影判定する。また、S202では、イグニッションスイッチの操作状態を参照し、車両の現在操作状態を特定する。そして、S203で、現在操作状態が運転状態であるか否かを判定し、運転状態であれば現在シーンを運転シーンとして特定する。
【0061】
図18に戻り、S101で現在シーンが運転シーンであればS102に進み、緊急車両特定処理となる。図20は、その詳細を示すものである。まず、S401では、外部ステレオマイク15の入力波形を規定時間(例えば0.1秒〜1秒)だけサンプリングし、さらにS402でフーリエ変換処理を行なって波形スペクトルプロファイルを得る。図3及び図4に示すように、外部ステレオマイク15は、車両の前左右に1対(15FR,15FL)及び後左右に1対(15RR,15RL)の計4つが設けられているが、緊急車両の接近によりサイレン音が入力されると、車両に対する音源の接近方向により音量や位相は異なるものの、各マイクとも共通の特徴を有した入力波形となる。この段階では、緊急車両の接近方向は不明であり、どのマイクの入力音量が最大化も不明であるから、S403では、個別のマイク入力波のスペクトラムを保存しつつ、上記4つのスペクトラムを加算合成して合成入力波スペクトルを演算する。
【0062】
そして、種々の参照サイレン音のスペクトルデータを図1のROM5等に予め記憶しておき、入力波スペクトルをそれら参照スペクトルデータと照合する。図5に示すように、参照サイレン音のスペクトル(以下、参照スペクトルという)には、個々のスペクトルの主要素波成分を特徴付ける複数の周波数ピークが特徴点として存在し、入力波スペクトル中において、参照スペクトルの各特徴点と同じ周波数域に、それぞれ対応する特徴点が存在するか否か(S405)、かつ、各特徴点間のピーク高さ比が一致するか否か(S405)により、入力波にサイレン音の成分が存在しているかどうか、つまり、参照サイレン音のそれかとスペクトルが一致したか否か、を判定する(S406)。一致と判定された場合はS407に進み、各マイクの入力波スペクトルにおいて、予め定められた代表特徴点(例えば、特徴点を示す複数の周波数ピークの打ち、最も強度の高いもの)のピーク高さを演算する。そして、S408にて、少なくともいずれかのマイクの入力スペクトルにおいて、その代表特徴点ピーク高さが予め定められた閾値(規定レベル)を超えていれば、緊急車両が接近中であると判定してS409に進む。それ以外の場合は処理を終了する。
【0063】
S409では、各マイクの入力波スペクトルの代表特徴点ピーク高さをそれぞれ演算し、S410その結果からサイレン音の音源方向(つまり、緊急車両の接近方向)を特定する。図6に示すように、前右、前左、後右、後左の各マイクの代表特徴点ピーク高さを、それぞれIFR,IFL,IRR,IRLとする。車両の走行方向を基準として、前後方向をY、左右方向をXと定めれば、緊急車両の接近方向に応じて各代表特徴点ピーク高さIFR,IFL,IRR,IRL間には次のような関係が成立すると考えられる。
(A)Y方向真正面からサイレン音が近づいてくる場合:IFR=IFL(>IRR,IRL)
(B)Y方向真後ろからサイレン音が近づいてくる場合:IRR=IRL(>IFR,IFL)
(C)X方向真右からサイレン音が近づいてくる場合:IFR=IRR(>IFL,IRL)
(D)X方向真右からサイレン音が近づいてくる場合:IFL=IRL(>IFR,IRR)
【0064】
そこで、図6に示すように、X−Y平面上にて自車位置をその原点に合わせ、各代表特徴点ピーク高さを、(1)〜(4)の関係を満足する次の4つの音量ベクトルに対応させる。
SFR=(IFR,IFR)
SFL=(−IFL,IFL)
SRL=(−IRL,−IRL)
SRR=(IRR,−IRR)
すると、サイレン音(緊急車両)の推定接近方向は、上記4つの音量ベクトルのベクトル和SNの方向、すなわち、
SN=SFR+SFL+SRL+SRR
=(IFR−IFL−IRLIRR,IFR+IFL−IRLIRR)≡(INX,INY)
の方向として求めることができる。原点周りに動径がX軸と一致する角度を0゜として定義すれば、緊急車両の接近方向を示す角度θは、
θ=Tan−1(INY/INX) ‥(1)
として演算される。この場合、IFR,IFL,IRR,IRLの最大のものがどれであるかにより特定でき、図6のX−Y座標平面の第1/第2象限にSNが位置する場合(つまり、INY>0の場合)は、(1)式の演算結果をθの値としてそのまま用い、第3/第4象限にSNが位置する場合(つまり、INY<0の場合)は、(1)式の演算結果に180゜を加算した値をθの値として用いる。
【0065】
なお、緊急車両が接近中であることをより精密に判定するために、一定のサンプリング時間間隔をおいて2回ないしそれ以上、入力波をサンプリングして上記と同様のスペクトル解析を行なうこともできる。この場合、それぞれ同一のサイレン音が検出され、かつ、代表特徴点ピーク高さが、後でサンプリングされるものほど高くなる場合に、緊急車両が接近中であると特定する。
【0066】
また、マイクの数及び配設位置は図3及び図4に例示したものに限定されず、例えば、車両前後の各車幅方向中央位置、及び車両左右側面の車長方向中央位置に配設してもよいし、これらと図3,4に例示した態様とを組合せ、6個ないし8個のマイクを配設することも可能である。この場合も、個々のマイクのスペクトル上で特定される代表特徴点ピーク高さを、X−Y平面上の音量ベクトルに置き換え、該音量ベクトルのベクトル和を演算することにより、サイレン音の音源方向を特定できる。
【0067】
さらに、車両周囲の三次元撮影を行なう外部ステレオカメラ14により、自動車の前後に存在する緊急車両の接近方向(距離を特定してもよい)を画像情報から特定するようにしてもよいステレオカメラ14を用いた緊急車両特の定方法は、特許文献9〜12に開示されている技術を流用すれば実現可能である。このとき、緊急車両の接近方向を特定する主体はあくまで外部ステレオマイク15とし、外部ステレオマイク15による方向特定の精度が十分に確保できなかった場合に、補助的にステレオカメラ14を用いることも可能である。
【0068】
また、車両現在位置よりも前方に位置する走行予定路の線形情報をカーナビゲーションシステム16から取得し、これを参照することで、緊急車両の接近方向の特定精度をより向上できる場合がある。例えは、図25に示すように、走行予定路が道なり形状の場合は、道路横方向(左右いずれか)から緊急車両が接近してくることはありえない。従って、横方向からのサイレン音が検出されたとき、走行予定路が道なり形状であれば、緊急車両非接近と修正判定することができる。他方、図24に示すように、走行予定路が交差点形状であれば、該交差点にちょうど差し係るタイミングで、見通しの悪い左右(横)いずれかの方向から緊急車両が接近してくることは逆に多々発生する可能性がある。従って、一定未満の弱レベルでサイレン音が検出されたときも、カーナビゲーションシステム16からの情報により交差点へ接近中であることが特定され、かつ、サイレン音の検出方向が斜め前方向であれば、該交差点へ接近中の緊急車両のサイレン音を検出している可能性が高く、緊急車両接近と修正判定することができる。
【0069】
図18に戻り、S103で緊急車両接近中であればS104に進み、運転者がこれを認知可能な状態になっているか否かを判定する処理を行なう。その詳細を図21に示す。S301では、運手者の視線方向を視線カメラ11の撮影結果に基づいて特定する。図13に示すように、フロントウィンドウFW上及びサイドウィンドウSW上の領域を見込む向きに視線方向EDが現れていれば、運転者の視線が車両の前方エリアと側方(左右)エリアに向けられていると判定できる。他方、バックミラーBMを見込む向きに視線方向EDが現れていれば、運転者の視線が車両の直後方に向けられていると判定できる。さらに、サイドミラーSMを見込む向きに視線方向EDが現れていれば、運転者の視線が車両の左右斜め後方に向けられていると判定できる。
【0070】
S302では、運転者が図13の特定エリア(方向)を注視するに伴い視線方向EDの位置変動が一定レベル未満となる特定エリア視線滞在時間を計測し、該滞在時間が一定時間以上となる視線方向EDを、運転者の現在の注視方向として特定する。S303では、運転者の精神状態、具体的には注意集中度を特定する。前述のごとく、運転者の精神活性度と精神愉快度とをそれぞれ生体情報に基づいて特定し、その精神活性度と精神愉快度と組合せに基づいて注意集中度が特定されることとなる。
【0071】
本実施形態では、運転者の精神活性度は、図1のエコー測定ユニット12を用いた臓器(心臓ないし肺)のエコー測定により特定する。図7に示すように、エコー測定ユニット12は座席に着座する運転者の心臓Hのエコー測定を行なう。エコー測定波形(測定結果)は、図1の活性度特定エンジン5aの実行により解析され、その解析結果に基づいて精神活性度が検出される。心臓は鼓動に伴なう動きが顕著であり、超音波を検出プローブとして入射することにより、その動きによりドップラー効果を生じた形で反射波を生ずる。そして、心臓は精神活性度を反映して挙動を明瞭かつ速やかに変化させるので、上記反射波を解析することにより精神活性度をリアルタイムにて精度よく検出することができる。
【0072】
図7に示すように、エコー測定ユニット12は、座席の背もたれ部150に埋設される測定用超音波送信部1070,1080と反射超音波受信部1090,1100とを有する。超音波送信部は周知の超音波トランスジューサで構成される。また、反射超音波受信部は一般的なマイクを使用することも可能であるが、音響特性の整合を考慮すれば、測定用超音波送信部と同種の超音波トランスジューサを使用することが望ましい。
【0073】
具体的には、心臓Hを測定対象とした測定用超音波送信部1070と反射超音波受信部1090とからなる第一エコー測定部と、心臓H(及び肺)から外れた人体部分(この実施形態では横隔膜よりも下側の脊椎付近)を測定対象とした測定用超音波送信部1080と反射超音波受信部1100とからなる第二エコー測定部と、第一エコー測定部の反射超音波受信部1090の出力波形と、第二エコー測定部の反射超音波受信部1100の出力波形との差分波形を演算・出力する差分演算部と1040,1050,1060とを有する。
【0074】
人体外から超音波を入射して心臓H(あるいは肺)に到達させれば、その反射波から心臓H(あるいは肺)の運動を反映したドップラーシフトを観測することができる。しかし、運転者の姿勢変化、運転者人体に作用する車両振動や、上記臓器以外の人体組織内の血流など、心臓ないし肺の運動以外にもドップラーシフト要因は存在し誤差要因となりうる。そこで、心臓H(あるいは肺)を測定対象とした第一エコー測定部の反射超音波受信部1090の出力波形から、心臓H(あるいは肺)から外れた位置にある人体部分を測定対象とした第二エコー測定部の反射超音波受信部1100の出力波形を減算することで、上記心臓H(あるいは肺)の運動以外のドップラーシフト要因を効果的に排除することができる。具体的には、差分演算部において、第一エコー測定部の反射超音波受信部1090の出力波形と第二エコー測定部の反射超音波受信部1100の出力波形とのどちらかが反転増幅部1040で反転され、また、両出力波形のどちらかが位相器1050で位相調整され(この実施形態では、第一エコー測定部の反射超音波受信部1090の出力が反転増幅部1040に入力され、第二エコー測定部の反射超音波受信部1100の出力が位相器1050に入力され、加算器1060にて合成される。なお、加算器1060を差動増幅器にて置き換えれば反転増幅部1040は不要である。また、位相器1050の位相シフト量は、例えば、加算器1060の出力波形の積分振幅が最小化されるようにフィードバック制御される。
【0075】
なお、図4では、第一エコー測定部をなす測定用超音波送信部1070と反射超音波受信部1090との組を、心臓を見込む位置に設けられたものを1つのみ描いているが、例えば、肺を見込む位置に別の第一エコー測定部を設けてもよい。この肺を見込む第一エコー測定部は呼吸に伴なう肺の動きを検出するものとなる。また、運転者毎に心臓や肺の位置は異なるので、心臓や肺の動きを検出するためのエコー測定位置を最適化するために、各々、心臓ないし肺に対応した複数箇所に第一エコー測定部を分散して設けてもよい。これら複数の第一エコー測定部は、測定用超音波送信部の駆動源となるアンプ102を共用する形で制御ユニット1010からの指令に従い、スイッチ1030により適宜切り替えて使用される。
【0076】
心臓ないし肺のエコー測定により、運転者の心拍数、呼吸数及び血流速度の少なくともいずれかを特定することが可能であり、CPU181は、精神活性度分析ソフトウェア109eは、その特定結果に基づいて運転者の精神活性度を特定する。例えば、心鼓動の場合、反射超音波波形である心臓エコー波形には該心鼓動に由来した周波数ドップラーシフトが生ずる。心筋の膨張ないし収縮方向の変位が最大となるとき心筋の移動速度は最小となってドップラーシフトは最小となり、心筋が中立位置を通過するときドップラーシフトは最大となるから、心臓エコー波形を周波数時間変化波形に変換すれば、その周期から心拍数を、振幅から鼓動の強さを読み取ることができる。同様に、肺エコー波形を周波数時間変化波形に変換することにより、その周期から呼吸数を、振幅から呼吸の深さが演算される。図4の構成では、制御ユニット1010内のDSP等を主体に構成された波形演算部が、加算器1060からの入力波形を周波数時間変化波形にリアルタイム変換するとともに、該周波数時間変化波形のピーク解析により心拍数と鼓動の強さ、ないし呼吸数と呼吸の深さを演算し、CPU181側に演算結果を送信するようになっている。
【0077】
なお、心臓内を運動する血流も心臓エコー波形に対するドップラーシフト要因となる。入力する超音波ビームの波長を調整することにより、心臓エコー波形から血流速度を算出することも可能である。例えば、心鼓動の検出を行なう場合は、心臓の外表面とこれに接する人体組織との音響インピーダンス差にて反射が最大化されるように超音波ビームの波長を調整し、血流速度を算出する場合は、心室内壁面とこれに接する血液との音響インピーダンス差にて反射が最大化されるように超音波ビームの波長を調整すればよい。
【0078】
図8は、エコー測定の流れを示すものである。S601では、超音波の照射時間を設定する。照射時間は、例えば測定する心拍数または呼吸数の一周期分以上の時間が確保されていればよい(例えば、2〜5秒)。その後、S602で特定した測定用超音波送信部1070が動作するようにスイッチ1030(図4)を切り替えた後、超音波を発射する。そして、S603でエコー波形を測定する。S604では経過時間を判断し、S601で設定済の測定時間が経過したかを判断し、経過していればS605に進み、同じ処理が次に起動されるタイミング(例えば1〜60秒)を設定して終了する。
【0079】
怒った(不愉快方向)り、逆に陽気に盛り上がたり(愉快方向)して活性度が高ければ、心拍数Hと呼吸数Bとはいずれも上昇する傾向にあり、逆に疲れ・倦怠や落胆状態(不愉快方向)となっていたり、のんびり癒されてリラックスしている状態(愉快方向)では、心拍数Hと呼吸数Bとはいずれも低下傾向となる。従って、精神活性度Jは、心臓エコー測定により得られる運転者の心拍数H(あるいは血流速度)、あるいは肺エコー測定により得られる運転者の呼吸数Bに基づいて特定できる。
【0080】
本実施形態では、平常時に0となり、平常時よりも高い場合に正の値、同じく低い場合に負の値となるように活性度Jを定めている。例えば、平常時の心拍数及び呼吸数を予め測定しておき、その値をそれぞれHm及びBmとすれば、J=(H−Hm)/Hm、あるいはB=(B−Bm)/Bmとして算出できる。本実施形態では心拍数及び呼吸数の双方を用い、具体的には心拍数と呼吸数との積の平方根の形で活性度Jを算出している。
【0081】
次に、愉快度Iについては、心拍数や呼吸数のみでは、愉快側に傾いているのかあるいは不愉快側に傾いているのかが必ずしも正確に判定できない場合が多い。そこで、愉快度Iを、エコー測定以外の生体パラメータにより別途特定するようにしている。例えば、同じ活性度の高い状態でも、イライラしたり怒ったりしているときは運転者の姿勢が頻繁に変化するようになる一方、視線方向の変化は逆に減少し、いわゆる「目が据わった」状態になる。また、顔の表情には怒りの表情が顕著に表れる。視線と表情については顔カメラ521が撮影する顔画像から特定でき、姿勢については、姿勢測定ユニット13(図3)により特定できる。
【0082】
図9は、表情変化解析処理のフローチャートの一例を示すものであり、SS151で変化カウンタNをリセットし、SS152でサンプリングタイミングが到来すればSS153に進み、顔画像を撮影する。顔画像は表情特定が可能な正面画像が得られるまで繰り返す(SS154→SS153)。正面画像が得られたら、マスター画像(記憶装置535内)と順次比較することにより、表情種別を特定する(SS155)。特定された表情種別が「不愉快」なら、愉快度Iを「−1」にセットする(SS156→SS157)。特定された表情種別が「安定」なら、愉快度Iに「0」をセットする(SS158→SS159)。特定された表情種別が「不愉快」なら、愉快度Iに「+1」をセットする(SS160→SS161)。以上の処理を、定められたサンプリング期間が満了するまで繰り返す(SS164→SS152)。サンプリング期間が満了すればSS165へ進み、愉快度Iの平均値I(整数化する)を算出する。
【0083】
また、本実施形態では、図10に示すように姿勢測定ユニット13を、シートの座部及び背もたれ部に複数分散埋設された着座センサ520A,520B,520Cの検知出力に基づいて、着座した運転者(運転者)の姿勢変化を波形検出するように構成している。着座センサは、いずれも着座圧力を検出する圧力センサで構成され、具体的には、正面を向いて着座した運転者の背中の中心に基準センサ520Aが配置される。残部のセンサは、それよりもシート左側に偏って配置された左側センサ520Bと、シート右側に偏って配置された右側センサ520Cとからなる。基準センサ520Aの出力は、差動アンプ603及び604にて、それぞれ右側センサ520Cの出力及び左側センサ520Bの出力との差分が演算され、さらにそれらの差分出力同士が、姿勢信号出力用の差動アンプ605に入力される。その、姿勢信号出力Vout(第二種生体状態パラメータ)は、運転者が正面を向いて着座しているときほぼ基準値(ここではゼロV)となり、姿勢が右に偏ると右側センサ520Cの出力が増加し、左側センサ520Cの出力が減少するので負側にシフトし、姿勢が左に偏るとその逆となって正側にシフトする。なお、右側センサ520C及び左側センサ520Bは、いずれも加算器601,602により、座部側のセンサ出力と背もたれ側のセンサ出力との加算値として出力されているが、残部センサ出力と背もたれセンサ出力の差分値を出力するようにしてもよい(このようにすると、運転者が前のめりになったとき背もたれセンサ側の出力が減少し、その差分値が増大するので、より大きな姿勢の崩れとして検出することができる)。
【0084】
次に、図11は、姿勢信号波形解析処理のフローチャートの一例を示すものであり、サンプリングルーチンでは、一定時間間隔で定められたサンプリングタイミングが到来する毎に、図34を用いて説明した姿勢信号値(Vout)をサンプリングし、波形記録するSS201,SS202)。そして、波形解析ルーチンでは、SS203にて直近の一定期間にサンプリングされた姿勢信号値を波形として取得し、SS204で該波形に周知の高速フーリエ変換処理を行なって周波数スペクトラムを求め、SS205で、そのスペクトラムの中心周波数(あるいはピーク周波数)fを演算する。また、SS206では、波形を一定数の区間に分割し、SS207で区間別の姿勢信号平均値を演算する。そして、SS259では、区間毎に、平均姿勢信号値を波形中心線として、積分振幅を演算し、その平均値を波形振幅の代表値Aとして決定する。
【0085】
視線の場合とは逆に、感情が不愉快側に傾いていれば姿勢変化の振幅Aは比較的大きくなり、変動(つまり周波数f)が激しくなる。逆に愉快側に傾いていれば姿勢変化の振幅Aは小さくなり、変動(つまり周波数f)は緩やかとなる。前述のごとく、平常時に0となり、平常時よりも高い場合に正の値、同じく低い場合に負の値となるように愉快度Iを定める。例えば、平常時の姿勢変化の振幅A及び周波数fを予め測定しておき、その値をそれぞれAm及びfmとすれば、J=−(A−Am)/Am、あるいはJ=−(f−fm)/fmとして算出できる。本実施形態では、振幅A及び周波数fの愉快度Iを算出している(SS209)。
【0086】
上記3通りの方法による愉快度Iはそれぞれ単独で用いてもよいが、本実施形態では、愉快度特定の精度を高めるため、複数の異なる方法で特定された愉快度の平均値(例えば相乗平均)を使用する。また、愉快度特定に際しては、上記以外にも、感情に応じて身体に生ずるノンバーバルな身振りや手振りなどを参照することができる。
【0087】
ラッセル・メーラビアンが提唱する感情平面の概念によれば、図12に示すように、特定の感情状態のいずれにも偏らない中庸の精神状態、すなわちニュートラル状態を基準として、精神の活性度Jと愉快度Iとは、いずれも、正と負の2状態(活性度Jであれば活性/不活性、愉快度Iであれば愉快/不愉快)を定義できる。そして、精神活性度(覚醒度)Jを縦軸に、愉快度Iを横軸に定めた感情平面上の4つの象限に、人間の「喜」「怒」「哀」「楽」の4つの感情状態、具体的には、盛り上がり状態(「喜」に対応、精神活性度:正/愉快度:正)、怒り・興奮状態(「怒」に対応、精神活性度:正/愉快度:負)、落胆・倦怠状態(「哀」に対応、精神活性度小/不愉快)、癒し・リラックス状態(「楽」に対応、精神活性度:負/愉快度:正))を対応付けることができる。
【0088】
上記のごとく、運転者の精神活性度Jと精神愉快度Iとがそれぞれ特定できれば、それら活性度Jと愉快度Iとの値の組を図12の感情平面上にプロットできる。そして、プロット点Qが感情平面のどの象限に属するかにより運転者の感情種別を特定でき、原点Oからプロット点Qまでの距離により感情の強さを特定できる。換言すれば、感情平面の原点近傍のエリアは、前述の中庸の精神状態(ニュートラル状態)を表わすものであり、各象限にてこのニュートラル状態から遠ざかるにつれ、個々の象限に特徴的な感情ひいては欲求により強く支配された状態へと推移する。
【0089】
運転者の精神状態が余計な感情にとらわれて波立っている場合、つまり、ニュートラル状態から遠い精神状態では、その感情発生の要因と直接関係のない外的刺激、つまり緊急車両の接近に対しては認知が鈍感になるのは経験則から明らかであり、逆にニュートラル状態に近ければ認知感度は高くなる。従って、精神活性度Jと精神愉快度Iとの組合せで表現される感情平面上のプロット点Qの原点Oからの距離が大きいほど注意集中度は低くなり、逆に小さいほど注意集中度は高くなる。そして、プロット点Qの原点Oからの距離が一定半径内、つまり、図12に「集中」と表示されたニュートラル領域に属していれば、緊急車両の接近を十分認知できる注意集中状態にあると判定できる。一方、プロット点Q’の原点Oからの距離が閾半径を超えて大きくなった場合は、緊急車両に対する認知に支障をきたす不注意状態と判定できる。最も簡単な方式としては、閾半径を一段階とし、集中/不注意の2レベルにて判定を行なう形であるが、図12に示すように、上記閾半径を複数段階に設定し、例えば、後述の認知支援出力を段階的に増強できるように、不注意度のレベルをさらに細分化することももちろん可能である。
【0090】
図20に戻り、S304では、緊急車両の接近方向周辺の一定領域内に運転者の注視方向が入っていれば緊急車両への注意があり、逆に入っていなければ緊急車両への注意がないと判断する一方、上記の注意集中度が集中領域に入っていれば緊急車両認識への注意集中レベルが高く、入っていなければ注意集中レベルが低いと判断する。そして、図17に示すように、両判断結果の組合せにより、緊急車両への認知状況は4つのパターンに分かれる。
パターン1:緊急車両への視線があり(緊急車両認識への)注意集中レベルも高い。認知支援の必要性がほとんどない。
パターン2:緊急車両への視線があり注意集中レベルが低い。しかし、視覚的には緊急車両を捕らえられている可能性が十分にあるため、認知支援の必要性はパターン1に準じて低い。
パターン3:注意集中レベルは高いが、緊急車両の接近方向から注視方向が外れており、咄嗟の対応にはやや不安があり、認知支援を行なう。
パターン4:緊急車両への視線もなく注意集中レベルも低い。緊急車両の接近にはほとんど無頓着な状態であり、認知支援が不可欠であるとともに、状況に応じた運転誘導も行なう。
【0091】
図18に戻り、S105で、上記の判定結果が認知支援を要求する場合(パターン3又は4)はS106に進み、緊急車両の認知支援出力ないし運転誘導出力を行なう。認知支援出力として最も簡単なものは、図22に示すように、緊急車両が接近してくることを、モニタ100Nに報知メッセージを文字表示したり、あるいは図23に示すように音声出力する方式である。音声出力の場合は、報知メッセージ(「緊急車両です」)の出力に先立って、アラーム音(「POON」)を出力すれば注意を促す効果が高められる。
【0092】
また、上記の報知メッセージ出力を主体とした基本認知支援出力に対し、以下のものから選ばれる1ないし2以上の強調認知支援出力を組み合わせて実施することも効果的である。
・緊急車両接近時は徐行を促すことが効果的だから、図1のアクセルペダル振動部53によりアクセルペダル51に乗っている運転者の足に向け振動を出力する。アクセルペダルに通常では有り得ないような振動を与え、咄嗟にペダルから足を離させる効果を有する。
・運転席シート72に埋設されたシートバイブレータ71(ドライバー71d)に、緊急車両接近認知を促すための振動出力を行なわせる。
・メータ81M、ミラー内表示装置82、ヘッドアップディスプレイ83の少なくともいずれかに、赤や黄色などの警告色の光を出力させ、注意を喚起する。また、バックミラーとサイドミラーを、例えばハーフミラーとし、ミラー裏面よりLED等により警告点灯表示を行なう。透明ELディスプレイをミラー表面に重畳させ、表示を行なってもよい。フロントウィンドウでは、ヘッドアップディスプレイ(透明ELディスプレイでもよい)により緊急車両の認知支援表示を行なう。また、メータ81Mの場合、緊急車両の接近をアイコン表示したり、文字盤や画面全体を赤系統の警告色で点滅させることで、緊急車両接近に対する注意喚起を行なう。メータ81MのバックライトがフルカラーLEDで構成されている場合は、その出力で警告色点灯出力を行なうこともできる。
・匂い発生器93から、危険を感じ、動作を止める香りを発生する。一瞬に、集中できる匂いを発生する。この場合、空気の流れに乗って香りは伝達されることから、空気砲または気流コントロールとセットで考慮するとよい。
【0093】
ここで重要な点は、図20のS304で、緊急車両に対する認知可能度が比較的高く、認知支援出力が特に必要でないと判定された場合(パターン1又は2)は、緊急車両の接近中であっても認知支援出力を敢えて行なわないか、仮に行なっても、具体的には、認知支援レベルの低い定常的な処理(バックグラウンド認知支援出力)とすることで、S304で緊急車両の認知レベルが低いと判定された場合を受けてS106で実行される特有の認知支援出力がより目立つように、メリハリを持たせることが肝要である。バックグラウンド認知支援出力としては次のようなものがある。
・図1のマイク15で取り込んだ車外音に緊急車両のサイレン音が含まれていた場合、これを増幅してスピーカー91から車内に出力する。また、車外音の増幅出力に代え、合成サイレン音をスピーカー91から出力するようにしてもよい。
・S106で実行される特有の認知支援出力にて、基本認知支援出力と併用されていた前述の強調認知支援出力を、バックグラウンド認知支援出力においては休止する。
【0094】
次に、認知支援出力と合わせて実行可能な、運転誘導出力処理の実例について説明する。前述のごとく、カーナビゲーションシステム16からは、車両現在位置よりも前方に位置する走行予定路の線形情報を取得できる。そして、この走行予定路が、道なり形状であるか交差点形状であるかを区別した形で運転誘導内容を定めることができる。運転誘導は、図26〜図30に示すように、基本的にはスピーカー91から誘導メッセージを音声出力することにより行なうが、ヘッドアップディスプレイHUDを利用した文字画像出力を併用してもよい。
【0095】
以下、運転誘導の具体的な処理流れについて図31のフローチャートを用いて説明する。該処理は、図18のS106にて実施されるものである。S501では、走行予定路が道なり形状か交差点形状かを判定する。道なり形状の場合はS502に進み、既に特定されている緊急車両の接近方向が前方か後方かを判定する(横方向の場合は、図示はしていないが処理を終了する)。前方の場合はS503に進み、図26のごとく、前方からの緊急車両の接近報知メッセージを出力する。なお、徐行を促す運転誘導メッセージを出力してもよい。
【0096】
次に、S502において、緊急車両の接近方向が後方の場合はS504に進み、前方を撮影するカメラ15の撮影画像か、カーナビゲーションシステム16の地図情報を参照することにより、走行中の道路のレーン数を周知の方法にて特定する。レーン数が2以上のときはS505に進み、接近中の緊急車両の走行レーンが、自車の走行レーンと同じかどうかを判定する。自車の走行レーンと同じでなければS503に進み、後方からの緊急車両の接近報知メッセージの出力のみを行なう(認知支援出力:徐行を促す運転誘導メッセージを出力してもよい)。一方、自車の走行レーンと同じであった場合は、図27に示すように、後方からの緊急車両の接近報知メッセージを出力するとともに、レーン変更により緊急車両に進路を譲る運転誘導メッセージを出力する。
【0097】
次に、S504にてレーン数が1のときはS507に進み、図28に示すように、後方からの緊急車両の接近報知メッセージを出力するとともに、路肩側への幅寄せ(左側通行の場合は左端寄せ、右側通行の場合は右端寄せ)により、緊急車両に進路を譲る運転誘導メッセージを出力する。
【0098】
S501に戻り、走行予定路が交差点形状の場合はS509に進み、既に特定されている緊急車両の接近方向が前方、後方及び横方向のいずれであるかを判定する。前方の場合はS510に進み、図25に示すように、対向車両として接近してくる緊急車両ABのウインカーWKの点灯を、カメラ15の撮影画像等から特定する。そのウインカーWKの点灯から、緊急車両ABが右折してくると判定された場合はS511に進み、図29のごとく、前方からの緊急車両が右折してくる内容の接近報知メッセージを出力するとともに(認知支援出力)、交差点への進入禁止あるいは一旦停止を促す運転誘導メッセージを出力する。他方、緊急車両が右折しないと判定された場合はS513に進み、徐行運転を促す運転誘導メッセージを出力する。
【0099】
次に、S509において、緊急車両の接近方向が後方の場合はS514に進み、走行中の道路のレーン数を周知の方法にて特定する。該S514以下、S515、S516、S517及びS518の処理は、S504、S505、S503、S506及びS507の各処理と同じである。
【0100】
そして、S509において、緊急車両の接近方向が横方向(左右)の場合はS519に進み、図30のごとく、右(左)から緊急車両が交差点内に入る内容の接近報知メッセージを出力するとともに(認知支援出力)、交差点への進入禁止あるいは一旦停止を促す運転誘導メッセージを出力する。
【0101】
なお、S511あるいはS511のごとく、交差点内への進入を制限する運転誘導内容を行なった場合、これに引き続いて、自車の加速(走行)を抑制する走行抑制制御、あるいは制動を支援する制動支援制御を行なうことができる(S512、S520)。
【0102】
走行抑制制御は、例えば次のようにして実施できる。まず、図1の電子スロットル制御装置21は、アクセルセンサ8によるアクセルペダル踏下量(アクセル位置)に応じた開度指示値を受け、スロットルバルブ23が指示開度となるように、駆動モータ22を作動制御する。図14に示すように、アクセル位置に応じてスロットル開度は破線のように変化するが、走行抑制処理時には、実線で示すごとく、アクセル位置に応じたスロットル開度の増加率を上記通常時よりも縮小し、アクセルを踏み込んでもスロットルバルブが大きく開かないようにする。なお、図14では、走行抑制処理時においても微動発進は可能となるよう、アクセルペダルを踏み込んだとき、通常時よりは小さい開度にてスロットルバルブが開くように制御しているが、自動車が全く進まなくなるように、走行抑制処理時においてはアクセルペダルの踏下量と無関係にスロットルバルブの開度がゼロとなるように制御してもよい。
【0103】
また、燃料噴射制御装置25による走行抑制制御を行なうことも可能である。具体的には、走行抑制制御時には、ソレノイド噴射バルブの開度を通常時よりも縮小し、アクセルを踏み込んだときの燃料噴射を禁止又は噴射量を低くする。なお、緊急車両接近予防時に走行抑制手段として機能させるのは、電子スロットル制御装置21と燃料噴射制御装置25との双方としても良いし、電子スロットル制御装置21のみ、あるいは燃料噴射制御装置25のみとすることも可能である。
【0104】
次に、制動支援制御は、例えば次のようにして実施できる。すなわち、ブレーキペダル61に対する踏下反力は、通常時はペダルバックアップスプリング61sにより発生するが、緊急車両接近予防時にはブレーキ反力モータ62を作動させ、ブレーキペダル61の踏下反力を通常時よりも増加させる(踏下反力制御手段)。また、これと合わせ、ECU2は、ブレーキペダル61の踏下量に対するブレーキ圧の増加率を通常時よりも増加させるよう、ブレーキ圧指示値を変更する(ブレーキ圧制御手段)。
【0105】
ブレーキペダル61の踏下量に対するブレーキ圧の増加率を通常時よりも増加させつつ、ブレーキペダル61の踏下反力を通常時よりも増加させると、ブレーキ踏下力がほぼ同等であれば、制動支援を特に行なわない場合と比較して、少ない踏下量で通常時に近い制動効果が得られる。ところが、ブレーキペダル61の踏下反力が普段より大きくなっているので踏み込み不足の違和感を生じ、運転者はブレーキペダル61をさらに踏み込もうとする。その結果、ブレーキ圧が上昇し制動支援効果が得られる。
【0106】
理解を容易にするために、図15に示すように、ブレーキ位置θ1,θ2,‥に対して、ブレーキ圧指示値が通常時はπ1,π2,‥となるように設定されているところ、制動支援時には、同じブレーキθ1,θ2,‥に対して、ブレーキ圧指示値が通常時の2倍の2π1,2π2,‥に設定されているとする。また、ブレーキ位置θ1,θ2,‥に対するブレーキ反力の値も通常時の2倍になっているとする(つまり、制動支援時のブレーキ圧指示値の拡大倍率がブレーキ反力の拡大倍率と等しくなっている)。
【0107】
図16に示すごとく、ある踏力f0でブレーキペダルを踏下した場合の、通常時(つまり、ブレーキ反力モータ62による反力増加なし:実線)のブレーキ位置をθAとし、このときのブレーキ圧指示値をπ0とする。他方、上記のパラメータ設定で制動支援を行なう場合、反力が増加しているので破線のごとく踏力fに対するブレーキ位置θの増加率が半分に縮小し、他方、ブレーキ位置θに対するブレーキ圧の増加率は倍に拡大している。従って、同じ踏力f0でのブレーキ位置は半分のθBとなるが、ブレーキ圧の増加率拡大により相殺され、ブレーキ圧指示値は同じπ0となる。しかし、運転者は、普段と同じ力でブレーキペダルを踏んでいるのにペダルが下がらず、これを踏み込み不足と感じする。そこで、いつもの踏み込み量に近づくよう踏力をf1に増加させる(一点鎖線)。その結果、ブレーキ位置はθBからθCに増加し、ブレーキ圧指示値もπ1に増加する。
【0108】
なお、制動支援処理として、反力拡大処理を行なわず、ブレーキ位置に対するブレーキ圧指示値の拡大のみを行なうことも可能である。しかし、この場合は制動支援時において通常の踏下力でブレーキ圧が急激に増大することになり、過剰制動につながる懸念もある。他方、上記のように反力拡大処理を行なえば、通常の踏下力ではブレーキの効きにそれほど変化が生じず、踏み込み不足を感じてそこからブレーキを増し踏みする形になるので、制動力も段階的に増加し、過剰制動を抑制できる利点がある。
【0109】
なお、上記の運転誘導出力、走行抑制処理及び制動支援処理は、その少なくともいずれかを省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の緊急車両認知支援装置に係る一実施例の電気的構成を示すブロック図。
【図2】図1の緊急車両認知支援装置に組み込まれたカーナビゲーションシステムの電気的構成を示すブロック図。
【図3】フロントバンパのセンサ取付形態を示す斜視図。
【図4】リアバンパのセンサ取付形態を示す斜視図。
【図5】不注意により緊急車両と衝突するシーンの一例を示す図。
【図6】マイクの音量から緊急車両の接近方向を計算する原理説明図。
【図7】エコー測定ユニットの構成例を示す簡易ブロック図。
【図8】エコー測定ユニットの設定処理の流れを示すフローチャート。
【図9】精神愉快度を特定するための表情変化解析処理例を示すフローチャート。
【図10】姿勢測定ユニットの一例を示す回路図。
【図11】精神愉快度を特定するための姿勢変化解析処理例を示すフローチャート。
【図12】感情平面を用いて注意集中判定を行なう原理説明図。
【図13】車両前方及び車両側方の視線特定状況を説明する図。
【図14】スロットル開度制限により走行抑制を行なう事例を示す説明図。
【図15】制動支援処理の第一の説明図。
【図16】同じく第二の説明図。
【図17】視線と注意集中度とによる緊急車両認知状況の類型パターンを説明する図。
【図18】緊急車両認知支援装置の主処理の流れを示すフローチャート。
【図19】シーン推定処理の流れを示すフローチャート。
【図20】緊急車両特定処理の流れを示すフローチャート。
【図21】状態推定処理の流れを示すフローチャート。
【図22】表示による認知支援出力の一例を示す図。
【図23】音声による認知支援出力の一例を示す図。
【図24】道なり路走行時の緊急車両との遭遇形態を示す模式図。
【図25】交差点接近時の緊急車両との遭遇形態を示す模式図。
【図26】音声のみによる運転誘導出力の一例を示す図。
【図27】表示と音声とを組み合わせた運転誘導出力の第一例を示す図。
【図28】同じく第二例を示す図。
【図29】同じく第三例を示す図。
【図30】同じく第四例を示す図。
【図31】走行路形状に応じて運転誘導出力内容を決定する処理の流れを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0111】
1 緊急車両認知支援装置
2 ECU(認知可能度特定手段、注意集中度特定手段、運転誘導内容決定手段)
10 顔カメラ(生体情報検出手段、精神愉快度特定手段)
11 視線カメラ(視線方向検出手段)
12 エコー測定ユニット(注意集中度特定手段、エコー測定装置)
13 姿勢測定ユニット(精神愉快度特定手段)
14 外部ステレオカメラ(緊急車両接近検出手段、緊急車両接近方向検出手段)
15 外部ステレオマイク(緊急車両接近検出手段、緊急車両接近方向検出手段)
16 カーナビゲーションシステム(走行路形状推定手段)
21 電子スロットル制御装置(走行抑制手段)
23 スロットルバルブ
51 アクセルペダル
53 アクセルペダル振動部(認知支援出力手段)
61 ブレーキペダル
62 ブレーキ反力モータ(制動支援手段、踏下反力制御手段)
71 シートバイブレータ(認知支援出力手段)
91 スピーカー(認知支援出力手段)
93 匂い発生器(認知支援出力手段)
110 モニタ(認知支援出力手段)
MC 自車
AB 緊急車両
【技術分野】
【0001】
この発明は、緊急車両認知支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】実開平6 − 44640号公報
【特許文献2】特開平6 −328980号公報
【特許文献3】特開2000−172988号公報
【特許文献4】特開2002−117484号公報
【特許文献5】特開2005−100097号公報
【特許文献6】特開2008− 52341号公報
【特許文献7】特開平11 − 48886号公報
【特許文献8】特開2004−355272号公報
【特許文献9】特開2004−168085号公報
【特許文献10】特開2004− 42777号公報
【特許文献11】特開2002− 59796号公報
【特許文献12】特開2005− 9883号公報
【0003】
消防車、救急車、パトカーなどの緊急車両は、道路交通法上その緊急走行時には優先走行権があり、一般車はこれを支援するため、緊急車両接近時には自車を路肩に寄せて徐行または停止して緊急車両に走行路を譲る義務がある。自動車の運転手は緊急車両の接近を、緊急車両の発するサイレン音や赤色灯の点燈により認知するが、この認知を支援するために種々の方式が提案されている(特許文献1〜8)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記先行技術においては、緊急車両の認知が何らかの外部要因(例えば、車両の密閉化や遮音性の向上、オーディオの大音量化、死角発生による視認困難化等)により阻害される状況を想定し、こうした外部視認阻害要因に対向する認知支援手段の構築に重点が置かれていた。しかし、運転者側の肉体的ないし精神的要因による認知レベルに関しては何ら考慮が払われておらず、常時一律な認知支援が行なわれていたのでメリハリに欠ける難点がある。例えば、運転者の認知レベル十分高く、既に緊急車両の接近に気付いている場合にも、認知支援のための何らかの報知出力がなされ、煩わしく感じられる場合がある。また、こうした一律な報知出力が継続すると、報知出力に対する運転者の注意も薄れ、やがては無視するようになるので、認知レベルが低下して本当に支援が必要となるシーンで、支援効果が芳しくなくなる問題がある。
【0005】
本発明の課題は、運転者の認知レベルが低下した場合に、緊急車両の接近認知をタイムリーかつ的確に支援できる緊急車両認知支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の緊急車両認知支援装置は、自車に対する緊急車両の接近を検出する緊急車両接近検出手段と、自車の運転者の生体情報を検出する生体情報検出手段と、生体情報に基づいて運転者の緊急車両に対する認知可能度を特定する認知可能度特定手段と、緊急車両の接近が検出され、かつ、特定された認知可能度が予め定められたレベルよりも低下した場合に、緊急車両の接近に対する当該場合に特有の認知支援出力を行なう認知支援出力手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
上記本発明の構成によると、緊急車両の接近に対する運転者の生体的な認知可能度をその都度特定し、該認知可能度が一定レベル未満に低下した場合に、特有の認知支援出力を行なうようにした。これにより、運転者の認知レベルが低下した場合に、緊急車両の接近認知をタイムリーかつ的確に支援することができる。
【0008】
なお、本発明においても、緊急車両の認知が何らかの外部要因(例えば、車両の密閉化や遮音性の向上、オーディオの大音量化、死角発生による視認困難化等)により阻害される状況では、運転者の認知可能度が特に低下していない場合にあっても、従来と同様の認知支援出力(例えば、車外音をマイク等によりサンプリングし、サイレン音等を抽出して、車室内のスピーカーから該サイレン音(あるいはこれに代用される合成音)を出力するなど)を、バックグラウンド認知支援出力として実施することがもちろんである。ただし、この場合も、運転者の認知可能度が前述のごとく低下した場合には、バックグラウンド認知支援出力とは異なる特有の認知支援出力を行なうことになる。
【0009】
当然、この場合の認知支援出力は、緊急車両接近に対する認知覚醒度を高め、運転者の認知可能度の低下を補うことができる出力内容とする必要がある。認知支援出力手段は、具体的には、音声、光、画像、振動ないしそれらの2以上の組合せにより、緊急車両の接近を報知する出力を行なうものとして構成できる。例えば、音声出力の場合は音量を上げたり周波数レベルを上げた甲高い音声出力とし、光や画像の場合は輝度を上げたり点滅動作を加えるなど、さらには振動の場合は振動振幅を増加させるなど、聴覚的、視覚的ないし触覚的な刺激効果を高めた出力とすることが有効である。また、バックグラウンド認知支援出力では休止している出力源(例えば振動源:運転者用シート及びアクセルペダルの少なくともいずれかに取り付けられた振動発生装置を含むものとして構成できる)を、上記認知可能度低下時の支援出力では稼動させる態様も有効である。
【0010】
認知可能度特定手段は、認知可能度の一つとして、緊急車両に対する注意集中度を生体情報に基づいて特定する注意集中度特定手段を有し、認知支援出力手段は、少なくとも注意集中度が予め定められたレベルよりも低下したときに、緊急車両の接近に対する認知支援出力を行なうように構成することができる。運転者の注意集中度が低下した場合に、特有の認知支援出力を行なうことで運転者を的確に覚醒させることができ、緊急車両の接近認知効果を高めることができる。
【0011】
注意集中度特定手段は、生体情報に基づいて運転者の精神活性度を特定する精神活性度特定手段と、生体情報に基づいて運転者の精神愉快度を特定する精神愉快度特定手段とを有し、注意集中度を精神活性度と精神愉快度との組合せに基づいて特定するように構成できる。ラッセル・メーラビアンが提唱する感情平面の概念によれば、特定の感情状態のいずれにも偏らない中庸の精神状態、すなわちニュートラル状態を基準として、精神の活性度と愉快度とは、いずれも、正と負の2状態(活性度であれば活性/不活性、愉快度であれば愉快/不愉快)を定義できる。そして、精神活性度(覚醒度)を縦軸に、愉快度を横軸に定めた感情平面上の4つの象限に、人間の「喜」「怒」「哀」「楽」の4つの感情状態、具体的には、盛り上がり状態(「喜」に対応、精神活性度:正/愉快度:正)、怒り・興奮状態(「怒」に対応、精神活性度:正/愉快度:負)、落胆・倦怠状態(「哀」に対応、精神活性度小/不愉快)、癒し・リラックス状態(「楽」に対応、精神活性度:負/愉快度:正))を対応付けることができる。
【0012】
そして、生体情報に基づいて運転者の精神活性度と精神愉快度とをそれぞれ特定し、それら活性度と愉快度との値の組を上記感情平面上にプロットすれば、プロット点が感情平面のどの象限に属するかにより運転者の感情種別を特定でき、原点からプロット点までの距離により感情の強さを特定できる。換言すれば、感情平面の原点近傍のエリアは、前述の中庸の精神状態(ニュートラル状態)を表わすものであり、各象限にてこのニュートラル状態から遠ざかるにつれ、個々の象限に特徴的な感情ひいては欲求により強く支配された状態へと推移する。運転者の精神状態が余計な感情にとらわれて波立っている場合、つまり、ニュートラル状態から遠い精神状態では、その感情発生の要因と直接関係のない外的刺激に対しては認知が鈍感になるのは経験則から明らかであり、逆にニュートラル状態に近ければ認知感度は高くなる。従って、精神活性度と精神愉快度との組合せで表現される感情平面上のプロット点の原点からの距離が大きいほど注意集中度は低くなり、逆に小さいほど注意集中度は高くなる。つまり、精神活性度と精神愉快度との組合せにより、運転者の注意集中度を定量的に特定することができる。
【0013】
この場合、注意集中度特定手段は、精神活性度と精神愉快度との少なくともいずれかが、予め定められた中立範囲を逸脱した場合に注意集中度が低下したと判定するように構成できる。例えば、精神活性度と精神愉快度との組合せで表現される感情平面上のプロット点の原点からの距離が、一定レベルを超えて大きくなった場合に、緊急車両に対する認知に支障をきたすレベルに注意集中度が下がったと判定し、特有の認知支援出力を行なうことで、運転者の注意力低下を補って緊急車両の接近を的確に認知させることができ、緊急車両の通行円滑化に寄与することができる。
【0014】
生体情報検出手段は、自動車の座席に着座する運転者の心臓又は肺のエコー測定を行なうエコー測定ユニットを含み、注意集中度特定手段は、該エコー測定結果に基づいて注意集中度を特定するものとして構成できる。心臓及び肺は鼓動ないし呼吸に伴なう動きが顕著であり、超音波を検出プローブとして入射することにより、その動きによりドップラー効果を生じた形で反射波を生ずる。そして、心臓及び肺は精神状態を反映して挙動を明瞭かつ速やかに変化させるので、上記反射波を解析することにより精神状態をリアルタイムにて精度よく検出することができる。該エコー測定ユニットは、座席の背もたれ部に埋設される測定用超音波送信部と反射超音波受信部とを有し、運転者のエコー測定を行なうように構成できる。運転者の背中に直接当たる背もたれ部において、心臓ないし肺に臨む位置に測定用超音波送信部と反射超音波受信部とを設けることでエコー測定を高精度に実施することができる。
【0015】
心臓ないし肺のエコー測定により、運転者の心拍数、呼吸数及び血流速度の少なくともいずれかを特定することが可能であり、注意集中度特定手段は、その特定結果に基づいて運転者の精神状態を検出することができる。心鼓動に伴い、心臓エコー波形には周波数ドップラーシフトが生ずる。心筋の膨張ないし収縮方向の変位が最大となるとき心筋の移動速度は最小となってドップラーシフトは最小となり、心筋が中立位置を通過するときドップラーシフトは最大となるから、心臓エコー波形を周波数時間変化波形に変換すれば、例えば、その周期から心拍数を、振幅から鼓動の強さを読み取ることができる。同様に、肺エコー波形を周波数時間変化波形に変換することにより、その周期から呼吸数を、振幅から呼吸の深さを読み取ることができる。また、心臓内を運動する血流も心臓エコー波形に対するドップラーシフト要因となり、入力する超音波ビームの波長を調整することにより、心臓エコー波形から血流速度を算出することも可能である。
【0016】
注意集中度特定手段は、心臓又は肺を測定対象とした測定用超音波送信部と反射超音波受信部とからなる第一エコー測定部と、該測定対象以外の人体部分を測定対象とした測定用超音波送信部と反射超音波受信部とからなる第二エコー測定部と、第一エコー測定部の反射超音波受信部出力波形と、第二エコー測定部の反射超音波受信部出力波形との差分波形を演算・出力する差分演算部とを有し、該差分波形に基づいて心拍数、呼吸数及び血流速度の少なくともいずれかを特定するものとして構成することができる。人体外から超音波を入射して心臓ないし肺に到達させ、その反射波から心臓ないし肺の運動を反映したドップラーシフトを観測することができるが、運転者の姿勢変化、運転者人体に作用する車両振動や、上記臓器以外の人体組織内の血流など、心臓ないし肺の運動以外にもドップラーシフト要因は存在し誤差要因となりうる。そこで、心臓や肺を測定対象とした第一エコー測定部の反射超音波受信部出力波形から、測定対象以外の人体部分(つまり、心臓や肺から外れた位置にある人体部分)を測定対象とした第二エコー測定部の反射超音波受信部出力波形を減算することで、上記心臓ないし肺の運動以外のドップラーシフト要因を効果的に排除することができる。
【0017】
なお、エコー測定結果が示す心拍数や呼吸数は、精神活性度の特定は容易であるが、同じ活性な状態でも愉快側に傾いているのか(つまり、機嫌がよいのか)、あるいは不愉快側に傾いているの(つまり、不機嫌なのか)を正確に判定するのは困難である。そこで、愉注意集中度特定手段は、エコー測定ユニットの測定結果に基づいて精神活性度を特定する一方、該エコー測定ユニットとは別に設けられた精神愉快度特定手段により精神愉快度を特定し、精神状態を精神活性度と精神愉快度との組合せに基づいて特定するように構成できる。精神愉快度特定手段は、例えば、運転者の表情及び姿勢の少なくともいずれかに基づいて精神愉快度を検出するものとできる。
【0018】
生体情報検出手段は、生体情報として運転者の視線方向を特定する視線方向特定手段を有するものとして構成できる。この場合、自車に対する緊急車両の接近方向を検出する緊急車両接近方向検出手段を設けておき、認知可能度特定手段を、認知可能度の一つとして、運転者の視線方向と緊急車両の接近方向との一致度を特定するものとして構成する。認知支援出力手段は、一致度が予め定められた許容範囲を逸脱することを条件として、緊急車両の接近に対する認知支援出力を行なうように構成する。運転者の視線方向が緊急車両の接近方向と一致していなければ、該緊急車両を認知できていない蓋然性が高く、この場合に支援出力を行なうことで緊急車両の接近を的確に認知させることができ、緊急車両の通行円滑化に寄与することができる。
【0019】
また、前述の注意集中度と関連させた場合、注意集中度が低下していても、運転者の視線方向が緊急車両の接近方向と一致していれば、緊急車両を不可避的に視覚認知できる可能性が高い。そこで、認知可能度特定手段を、前述のごとく、認知可能度の一つとして、緊急車両に対する注意集中度を生体情報に基づいて特定する注意集中度特定手段も有するものとして構成し、認知支援出力手段は、注意集中度が予め定められたレベルよりも低下し、かつ、一致度が予め定められた許容範囲を逸脱した場合に、緊急車両の接近に対する認知支援出力を行なうようにすれば、認知支援出力を行なうタイミングの的確性をより向上できる。
【0020】
次に、緊急車両の接近ならびにその方向を検出する緊急車両接近方向検出手段を設ける場合、本発明の緊急車両認知支援装置は、自車の走行路形状を推定する走行路形状推定手段と、推定された走行路形状と緊急車両の接近方向とに応じて運転誘導内容を決定する運転誘導内容決定手段と、決定された運転誘導内容を出力する運転誘導出力手段と、を有するものとして構成できる。緊急車両に走行路を譲るためには、走行中の道路のどこで緊急車両と遭遇するか、具体的には緊急車両と遭遇したときの走行路形状がどのようなものであるかに応じて、走行路を譲るための適正な運転内容も変化する。しかし、熟練者を除けば、緊急車両と遭遇したときに咄嗟の運転対応をとれないこともありえる。そこで、推定された走行路形状と緊急車両の接近方向とに応じて(適切な)運転誘導内容を決定し、これを出力することで、熟練したドライバーでなくとも、緊急車両の通行を優先させるための、走行路形状に応じた最適の運転対応に適切に導くことができる。
【0021】
緊急車両接近方向検出手段は、緊急車両の位置情報を車外情報源から無線取得する緊急車両位置情報無線取得手段と、自車の現在位置を取得する現在位置取得手段とを有し、緊急車両位置情報と自車の現在位置情報とに基づいて緊急車両の接近方向を特定するものとして構成できる。この手法は、例えば、VICS等による緊急車両のGPS位置情報(特許文献3,5)、車車間通信(特許文献4,8)、交差点に設置された静止監視カメラからの緊急車両撮影情報(特許文献6)などを緊急車両の位置情報として無線取得し、これに基づいて自車に対する緊急車両の接近把握を行なう。無線通信が正常に実行でき、取得情報のリアルタイム性が担保されてさえいれば、緊急車両の接近方向に係る情報を比較的高精度に特定でき、走行路形状と緊急車両接近方向に応じた運転誘導を適切に実行できる。
【0022】
しかしながら、上記方式の場合、緊急車両のGPS位置情報の無線配信が遅れたり、あるいは通信途絶が発生したり、さらには、無線配信の対象地域外を走行中の場合は、緊急車両の接近検知が実行できず、適切な接近認知支援出力や運転誘導が不能となる場合がある。また、緊急車両へのGPS搭載や、交差点等への緊急車両検出装置の配設、無線通信網の整備など、インフラ構築に多大なコストを要する問題もある。
【0023】
そこで、これを解決する方法として、車両上の異なる位置に、緊急車両が発するサイレン音を各々検出する複数のマイクロフォンを設け、それら複数のマイクロフォンによるサイレン音の検出状態に基づいて、緊急車両の接近方向を特定する接近方向特定手段を設ける方式を採用可能である。緊急車両が発するサイレン音は出力音の種類や周波数帯が比較的限られており、マイクロフォンによる検出波形を周波数解析する周知の手法により、比較的簡単かつ正確に検出・特定することができる(特許文献1,7)。しかしながら、単一のマイクロフォンでは、検出されるサイレン音成分の音量により接近レベルは特定できても、接近方向の情報までは得ることができない。そこで、車両上の異なる位置にマイクロフォンを設置し、各マイクロフォンで抽出されるサイレン音の音量や位相の差に基づいて、緊急車両の接近方向を特定することが可能となる。
【0024】
なお、車両上に設けられたカメラの撮影画像に基づいて緊急車両の接近方向を特定する方式を採用することも可能であるが、緊急車両を正確に特定するためには、かなり複雑な画像解析を行なう必要があるし、例えばパトライトの点灯検出は緊急車両を特定する上で有効であるが、緊急車両以外のパトライトを誤認しやすい問題もある。従って、緊急車両の特定精度に関しては、上記複数のマイクロフォンによりサイレン音検出する方式を採用するほうがより有利であるともいえる。なお、複数のマイクロフォンによりサイレン音検出する方式に、カメラの撮影画像に基づいて緊急車両の接近方向を特定する方式を補助的に組み合わせることで、緊急車両の接近方向の特定精度をさらに向上させることが可能である。
【0025】
走行路形状推定手段は、車両に搭載されたカーナビゲーションシステムから走行路形状情報を取得するものとして構成できる。地図データを搭載したカーナビゲーションシステムにより、緊急車両接近時の走行路形状を、車外通信に頼ることなる自律的に取得できる。特に、複数のマイクロフォンによるサイレン音の検出状態に基づいて、緊急車両の接近方向を特定する方式と組み合わせれば、緊急車両のGPS位置情報を無線取得する方式のような配信遅れや通信途絶の影響を全く受けずにすみ、さらには、地域によらずどこでも緊急車両の接近検知を確実に実行でき、接近認知支援出力や運転誘導を安価にかつ安定して実施できる。
【0026】
走行路形状推定手段がカーナビゲーションシステムから取得する走行路形状情報は、具体的には、カーナビゲーションシステムが地図上に特定する現在走行路に係る、車両現在位置よりも前方に位置する走行予定路の線形情報とすることができる。運転誘導内容決定手段は、走行予定路が道なり形状であるか交差点形状であるかを区別した形で運転誘導内容を決定するように構成できる。道なり形状の場合は道路横方向(左右いずれか)から緊急車両が接近してくることはありえず、車々間通信やサイレン音による接近方向特定の誤差や、情報の配信遅れ等により横方向からの緊急車両接近を誤って検出してしまった場合にも、その可能性を排除することができる。他方、交差点形状であれば、該交差点にちょうど差し係るタイミングで、見通しの悪い左右(横)いずれかの方向から緊急車両が急接近してくることは逆に多々発生する可能性があり、接近方向特定手段により横方向からの緊急車両接近が特定された場合に、接近認知支援出力や運転誘導の処理強化を意識的に図ることが可能となる。
【0027】
運転誘導出力手段は、運転誘導内容を音声、画像又はそれらの組合せにより出力するように構成することができる。特に、前方を注視している運転者に対しては、音声による運転誘導が有効であり、ヘッドアップディスプレイ等を利用した運転注視方向への画像出力(例えば「徐行」や「一旦停止」等の文字出力)を行なうことも、これに準じて有効である(もちろん、両者を組み合わせてもよい)。
【0028】
以下、本発明にて採用可能な、具体的な運転誘導形態について説明する。
(1)緊急車両の接近方向が自車後方であった場合は、運転誘導内容決定手段は、道なり路及び交差点形状のいずれにおいても(つまり、走行予定路の形状によらず)、道路端寄せ(路片寄せ)又はレーン変更を運転誘導内容として決定する。これにより、後続の緊急車両に進路を譲ることができる。
【0029】
(2)走行予定路が道なり形状であって、緊急車両の接近方向が自車前方であった場合に、運転誘導内容決定手段は徐行運転を運転誘導内容として決定する。追い越し等のために、緊急車両が自車レーン側にはみ出して走行してきた場合等においても、徐行誘導することで的確に対応することができる。
【0030】
(3)走行予定路が交差点形状であって、緊急車両の接近方向が自車横方向であった場合に、運転誘導内容決定手段は、交差点内への進入を制限する運転誘導内容を決定する。交差点内には信号が赤であっても緊急車両が進入してくるため、当該交差点に向けて自車が進行中のとき、横方向から接近する緊急車両が検知された場合は、交差点内への進入を制限する誘導を行なうことで、緊急車両は交差点内へ円滑に進入することができる。
【0031】
(4)走行予定路が交差点形状であって、緊急車両の接近方向が自車前方であった場合に、運転誘導内容決定手段は、緊急車両が右折するか否かを推定するとともに、右折すると推定された場合に交差点内への進入を制限する運転誘導内容を決定する。交差点を右折しようとする緊急車両は、交差点に入ってくる直進一般対向車に優先して右折することができる。従って、前方から接近する緊急車両が検出され、かつ、(例えば自車に搭載された前方撮影カメラにより対向車両のウインカー点灯を検出する等の公知の技術により)、該緊急車両の右折が検出された場合は、交差点内への進入を制限する誘導を行なうことで、緊急車両は交差点内を円滑に右折することができる。他方、緊急車両が右折しないと推定された場合には、運転誘導内容決定手段は、緊急車両の急な右折や右折待ちの一般車追い越し等に備えて、交差点内の徐行運転を運転誘導内容として決定するように構成しておくとよい。
【0032】
なお、(3)、(4)いずれの場合も、交差点内への進入を制限する運転誘導内容は、交差点手前での一旦停止とすることが望ましい(ただし、一旦停止が困難な状況下では、交差点に進入してからの一旦停止誘導や、徐行誘導を行なうことももちろん可能である)。
【0033】
また、運転誘導内容決定手段が交差点内への進入を制限する運転誘導内容を決定した場合に、自車の走行を抑制する走行抑制手段を設けておくと、緊急車両を優先させる状況下で交差点内に高速で進入してしまう不具合をより確実に予防することができる。特に、自動車に前述の電子エンジン制御装置が搭載されている場合、走行抑制手段は、アクセルペダルの踏下量に応じたエンジン出力を通常時よりも制限するエンジン出力制限手段を有するものとして構成できる。これにより、アクセルペダルを大きく踏み込んでもエンジン出力は通常時よりも小さくなり、加速が鈍るので上記不具合を効果的に抑制できる。
【0034】
電子スロットル制御装置を搭載した自動車の場合、上記のエンジン出力制限手段は、アクセルペダルの踏下に応じたスロットルバルブの開度増加を通常時よりも制限するスロットルバルブ制限手段を有するものとして構成できる。また、電子燃焼噴射制御装置が搭載されている場合は、燃焼噴射を中断ないし抑制する燃焼噴射制限手段を有するものとして構成できる。
【0035】
運転誘導内容決定手段が交差点内への進入を制限する運転誘導内容を決定した場合に、自動車の制動を支援する制動支援手段が設けておくこともできる。エンジン出力を制限しても、既に車速が一定以上に上がってしまった場合は、如何に制動を早く行なうかが緊急車両との干渉回避を行なう上での鍵となる。従って、上記のような制動支援手段を設けることで、緊急車両との干渉を効果的に防止又は抑制できる。制動支援手段は、例えば制動支援時において、ブレーキペダルの踏下反力を通常時よりも増加させる踏下反力制御手段と、ブレーキペダルの踏下量に対するブレーキ圧の増加率を通常時よりも増加させるブレーキ圧制御手段とを有するものとして構成することができる。制動支援時において、ブレーキペダルの踏下量に対するブレーキ圧の増加率を通常時よりも増加させつつ、ブレーキペダルの踏下反力を通常時よりも増加させると、ブレーキ踏下力がほぼ同等であれば、制動支援を特に行なわない場合と比較して、少ない踏下量でほぼ同等の制動効果が得られる。ところが、運転者は、ブレーキペダルの踏下反力が普段よりも大きい分、急ブレーキのために踏み込み量が不足していると感じてさらにブレーキペダルを踏み込もうとする。その結果、制動効果が増強され、緊急車両との干渉回避ないし抑制をより確実に行なうことができる。もちろん、アクセルペダルの踏下量に応じたエンジン出力を通常時よりも制限する処理と併用すれば、さらに効果的であることはいうまでもない。
【0036】
上記のような認知支援出力や運転誘導により、運転者に緊急車両を優先させるための自発的な運転操作(以下、緊急車両優先運転操作ともいう)を促すことができる。なお、緊急車両優先運転操作を失念している状態で運転者が認知支援出力を受けると、アクセルペダルから足を離す→ブレーキペダルを踏み込む、という一連の動作流れにて緊急車両接近回避操作を行なおうとする。このとき、
A:ブレーキペダルを踏み込む。
B:ブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏み込む。
の2つの可能性がある。後者に対応するためには、アクセルペダルの踏下量に応じたエンジン出力を通常時よりも制限する処理を併用することが効果的であり、前者においても、ブレーキペダルの踏下反力を通常時よりも増加させ、かつ、ブレーキペダルの踏下量に対するブレーキ圧の増加率を通常時よりも増加させる処理を併用すると効果的である。
【0037】
上記のような走行抑制処理や制動支援処理は、注意集中度が十分高い場合に発動すると、運転者による操作との競合により、却って効果が損なわれることもありえる。従って、注意集中度が低下し、運転者による自律的なアクセル操作あるいはブレーキ操作に何らかの支障が生ずることが予想される場合に限って発動することが望ましいといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態を示す緊急車両認知支援装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。該緊急車両認知支援装置1の制御主体をなすのはECU2である。ECU2は、CPU3、RAM4、ROM5及び入出力インターフェース6とを内部バスにて接続したマイクロプロセッサを主体に構成されている。
【0039】
入出力インターフェース6には、発進設定方向特定手段ひいてはシフトポジション検出手段をなすシフトポジションセンサ7、アクセルペダル51の踏下量(踏下角度)を検出するアクセルセンサ8、ブレーキペダル61の踏下量(踏下角度)を検出するブレーキセンサ9、運転席に着座する運転者の顔を撮影する顔カメラ10及び該顔の両眼付近を拡大撮影し瞳孔位置により視線方向を特定するための視線カメラ11が接続されている(ただし、視線カメラ11は省略してもよい)。アクセルセンサ8は、アクセルペダルの踏下角度を検出する角度センサとして構成されている。また、ブレーキセンサ9もブレーキペダルの踏下角度を検出する角度センサとして構成されている(なお、ブレーキ踏下の有無のみを検出すればよい場合には、テールランプ駆動等に使用するブレーキスイッチを流用してもよい)。
【0040】
また、入出力インターフェース6には、エコー測定ユニット12、姿勢測定ユニット13、外部ステレオカメラ14、外部ステレオマイク15及びカーナビゲーションシステム16が接続されている。外部ステレオカメラ11(11L,11R)及び外部ステレオマイク15(15L,15R)の組は、図3に示す自動車のフロントバンパFBPと、図4に示すリアバンパRBPに、それぞれ左右1対にて都合4個ずつ取り付けられている。
【0041】
さらに、入出力インターフェース6には、電子スロットル制御装置21(ドライバー21d)と燃料噴射制御装置25(ドライバー21d)とが接続されている。電子スロットル制御装置21は、アクセルセンサ8によるアクセルペダル踏下量(アクセル位置)を参照したECU2からの開度指示値により、スロットルバルブ23が指示開度となるように、その駆動モータ22を作動させる。燃料噴射制御装置25は、ECU2からの指示により、燃料噴射装置のソレノイド噴射バルブ26の開度を調整する。
【0042】
さらに、入出力インターフェース6には、緊急車両(消防車、救急車、パトカーなど)の接近に対する認知支援出力を行なう認知支援出力手段として次のような種々のデバイスが対応するドライバーを介して接続されている。
・アクセルペダル振動部53(ドライバー51d):アクセルペダル51に乗っている運転者の足に向け振動を出力する。アクセルペダルに通常では有り得ないような振動を与え、咄嗟にペダルから足を離させる効果を有する。偏心式加振装置などの周知の振動発生器で構成される。このアクセルペダル振動部53の振動はアクセルペダル51に伝達されるが、電子スロットル制御装置21に受け渡されるアクセルセンサ8の角度出力に対しては不感となるように、その周波数ならびに振幅が設定される(アクセルセンサ8の角度出力に振動変位が重畳される場合は、フィルタリング等によりこれを除去してもよい。
【0043】
・ブレーキ反力モータ62(ドライバー62d):ブレーキペダル61の旋回軸に取り付けられ、ブレーキペダル61に対し踏下方向と逆向きの反力を発生させる。
・シートバイブレータ71(ドライバー71d):運転席シート72に埋設され、緊急車両接近認知を促すための振動出力を行なう。偏心式加振装置や圧電式加振装置などの周知の振動発生器で構成される。
【0044】
・メータ81M及びモニタ110(ドライバー81d)、ミラー内表示装置82(ドライバー82d)、ヘッドアップディスプレイ83(ドライバー83d):緊急車両の認知を促すための表示を行なうことで、注意を喚起する。なお、モニタ110はカーナビゲーションシステム16の表示出力部に兼用される。
【0045】
インナーミラーとアウターミラーは、例えばハーフミラーとし、ミラー裏面よりLED等により表示を行なう。または、透明ELディスプレイをミラー表面に重畳させ、表示を行なってもよい。フロントウィンドウでは、ヘッドアップディスプレイ(透明ELディスプレイでもよい)により緊急車両の認知支援表示を行なう。また、メータ81Mの場合、緊急車両の接近をアイコン表示したり、文字盤や画面全体を赤系統の警告色で点滅させたりすることで、緊急車両接近に対する注意喚起を行なう。メータ81MのバックライトがフルカラーLEDで構成されている場合は、その出力で警告色点灯出力を行なうこともできる。
【0046】
・スピーカー91(ドライバー91d):緊急車両接近認知を促すための音声出力を行なう。
・匂い発生器93(ドライバー93d):危険を感じ、動作を止める香りを発生する。一瞬に、集中できる匂いを発生する。この場合、空気の流れに乗って香りは伝達されることから、空気砲または気流コントロールとセットで考慮するとよい。
【0047】
ROM5には、緊急車両認知支援装置1の主制御プログラム5mと、該主制御プログラム5mが使用する種々のエンジンが格納されている。
・活性度特定エンジン5a:エコー測定ユニット12の測定結果に基づき、運転者の精神活性度を特定する(精神活性度特定手段)。
・愉快度特定エンジン5b:顔カメラ10が検出する運転者の表情、視線カメラ11が検出する運転者の視線、及び姿勢測定ユニット13が検出する運転者の姿勢に基づいて精神愉快度を検出する(精神愉快度特定手段)。
【0048】
・視線特定エンジン5c:視線カメラ11が撮影する運転者の両眼の画像から、周知のアルゴリズムにより視線方向、具体的には車両周囲のどのエリアに視線が向いているかを特定する(視線方向検出手段)。視線カメラ11を省略する場合は、該エンジンは不要である。
・緊急車両特定エンジン5d:外部ステレオマイク15及び外部ステレオカメラ11の検出信号に基づいて、自車に接近する緊急車両と、その接近方向を特定する(緊急車両接近検出手段、緊急車両接近方向検出手段)。
【0049】
・認知ミス判定エンジン5e:活性度特定エンジン5aと愉快度特定エンジン5bとが特定する運転者の精神活性度と精神愉快度とに基づいて、運転者の注意集中度を算出する。そして、緊急車両特定エンジン5dが緊急車両の接近(及びその方向)を検知したとき、運転者の視線方向も考慮して、緊急車両接近に対する認知ミスが発生しているかどうかを判定する。
・認知支援出力制御エンジン5e:緊急車両接近に対する認知ミスが発生したと判定された場合に、前述の種々の認知支援出力手段に対し認知支援出力指令を行なう。
・運転誘導制御エンジン5g:カーナビゲーションシステム16から地図上の走行路形状と車両現在位置とを取得して、現在位置前方の走行予定路の線形を特定するとともに、特定された走行予定路が道なり形状であるか交差点形状であるかを区別し、さらに、緊急車両特定エンジン5dが特定する緊急車両の接近方向に応じて個別に運転誘導内容を決定する(運転誘導内容決定手段)。そして、該誘導内容を、スピーカー91から音声出力させる制御と、モニタ110、ミラー内表示装置82、あるいはヘッドアップディスプレイ83等の表示部に表示出力させる制御指令を行なう。
【0050】
図2は、カーナビゲーションシステム16の構成例を示すブロック図である。該カーナビゲーションシステム16は、位置検出器101、地図データ入力器106、操作スイッチ群107、リモートコントロール(以下リモコンと称する)センサ111、音声案内等のための音声合成回路124、音声出力用のスピーカー115、不揮発メモリであるフラッシュメモリ109、LCD等からなるモニタ110、これらの接続された主制御部をなす情報系ECU51及び主記憶装置をなすHDD(ハードディスク装置)121等を備えるものである。
【0051】
位置検出器101は、周知の地磁気センサ102、ジャイロスコープ103、距離センサ104、および衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPSのためのGPS受信機105を有している。これらのセンサ等102,103,104,105は各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては前述したうちの一部のセンサで構成してもよく、さらに、ステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサ等を用いてもよい。
【0052】
操作スイッチ群107は、メカニカルなスイッチ等を使用できるが、本実施形態では、モニタ110と一体になったタッチパネル122を併用しており、モニタ110上に表示されるボタン画像に対応するタッチパネル領域を指で触れることにより、操作状態を認識できるようにしている(いわゆるソフトボタン)。これら操作スイッチ群107によって、種々の指示を入力することが可能である。
【0053】
操作スイッチ群107の他に、音声認識ユニット130を用いて種々の指示を入力することも可能である。これは、音声認識ユニット130に接続される前述のマイク131(図2参照)から音声を入力することによって、その音声信号を周知の音声認識技術により音声認識処理して、その結果に応じた操作コマンドに変換するものである。
【0054】
情報系ECU51は、CPU181、ROM182、RAM183、前述のフラッシュメモリ109、入出力インターフェース184がバス515により接続されたマイコンハードウェアを主体とするものである。入出力インターフェース184には、位置検出器101、地図データ入力器106、操作スイッチ群107、車車間通信部108及びVICS受信部109が接続されている。
【0055】
HDD121はインターフェース129fを介してバス接続されている。また、地図やナビ操作画面を表示する描画情報に基づいて、モニタ110に画像出力する機能を担う描画LSI187と、描画処理用のグラフィックメモリ187Mとが同様にバス接続され、前述のモニタ110がこれに接続されている。CPU181は、フラッシュメモリ109に記憶されたナビソフトウェア109a(被提供情報収集手段)およびデータにより、目的地検索や経路案内に係る制御を行なう。また、HDD121へのデータの読み書きの制御はCPU181によって行なわれる。
【0056】
HDD121には、道路データを含む地図データ21mと、目的地データや目的地の案内情報からなるナビデータ21pとが記憶されている。また、出力履歴データ21dとコンテンツデータ21uも記憶されている。これらのデータは、操作スイッチ群107の操作あるいは音声入力によって内容の書き換えが可能である。また、外部情報入出力装置(地図データ入力器)106を用いて記憶媒体120からデータを読み込んでHDD121の内容を更新することも可能である。なお、本実施形態では、通信インターフェース126を介して、情報系ECU51が車内ネットワークをなすシリアル通信バス127に接続され、ボデー系ECUやエンジン制御ECU(図示せず)などの、車内の他の制御装置との間でデータの遣り取りを行なうようになっている。また、シリアル通信バス127にはインターネット1170に接続するための無線送受信部を有した通信ECU190(無線アクセス手段)が接続されており、更新用の地図データや、その他の情報を受信できるようになっている。
【0057】
車車間通信部108は、自車の周囲に存在する他車両と直接通信を行ない、周囲車両情報(車両位置、走行方向、車種(具体的には、緊急車両であるか否か)、車両サイズ、速度、ブレーキ、アクセルなど)の送受信を行なうように構成されている。また、VICS受信部109は、図示しないVICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)センタから道路交通情報やFM多重放送を受信するための装置であり、本発明では、緊急車両の位置情報(あるいは走行方向)を取得することを目的とする。
【0058】
モニタ110(被提供情報出力手段)はカラー液晶表示器により構成されており、その画面には位置検出器101から入力された車両の現在位置マークと、HDD121から入力された地図データ21mと、さらに地図上に表示する誘導経路等付加データとを重ね合わせて表示する。また、前述のごとくタッチパネル122が重ね合わされており、必要に応じて、目的地設定、表示設定、種々の機能呼び出し、画面切替操作等のための機能ボタンも表示する。
【0059】
カーナビゲーションシステム16は、情報系ECU51のCPU181によりナビプログラム21pが起動される。運転者は、操作スイッチ群107の操作あるいはマイク131からの音声入力によって、目的地データベース21dから所望の目的地を選択する。例えば、モニタ110上に表示されるメニューから目的地経路をモニタ110に表示させるための経路案内処理を選択した場合、次のような処理を実施する。即ち、運転者がモニタ110上の地図あるいは目的地選択画面に基づいて目的地を入力すると、GPS受信機105から得られる衛星のデータに基づき車両の現在位置が求められ、該現在位置から目的地までの最適な経路を求める処理が行われる。そして、モニタ110上の道路地図に誘導経路を重ねて表示し、運転者に適切な経路を案内する。このような自動的に最適な経路を設定する手法は、ダイクストラ法等の手法が知られている。また、モニタ110およびスピーカー115の少なくとも一方によって、操作時のガイダンスや動作状態に応じたメッセージの報知を行なう。なお、経路案内を行なわない場合は、地図上の走行路を特定し、周知のマップマッチング処理により該走行路上に自車の現在位置を表示・更新する処理を行なう。
【0060】
以下、緊急車両認知支援装置1の制御の流れをフローチャートを用いて説明する。図18は、主制御プログラム5m(図1)の処理の流れを示すものである。まず、S100では、車両使用状況に係る現在シーンを推定する。図19は、該シーン推定処理の流れを示すものであり、S201では、運転席に人が着座したかどうかを顔カメラ10(図1)により撮影判定する。また、S202では、イグニッションスイッチの操作状態を参照し、車両の現在操作状態を特定する。そして、S203で、現在操作状態が運転状態であるか否かを判定し、運転状態であれば現在シーンを運転シーンとして特定する。
【0061】
図18に戻り、S101で現在シーンが運転シーンであればS102に進み、緊急車両特定処理となる。図20は、その詳細を示すものである。まず、S401では、外部ステレオマイク15の入力波形を規定時間(例えば0.1秒〜1秒)だけサンプリングし、さらにS402でフーリエ変換処理を行なって波形スペクトルプロファイルを得る。図3及び図4に示すように、外部ステレオマイク15は、車両の前左右に1対(15FR,15FL)及び後左右に1対(15RR,15RL)の計4つが設けられているが、緊急車両の接近によりサイレン音が入力されると、車両に対する音源の接近方向により音量や位相は異なるものの、各マイクとも共通の特徴を有した入力波形となる。この段階では、緊急車両の接近方向は不明であり、どのマイクの入力音量が最大化も不明であるから、S403では、個別のマイク入力波のスペクトラムを保存しつつ、上記4つのスペクトラムを加算合成して合成入力波スペクトルを演算する。
【0062】
そして、種々の参照サイレン音のスペクトルデータを図1のROM5等に予め記憶しておき、入力波スペクトルをそれら参照スペクトルデータと照合する。図5に示すように、参照サイレン音のスペクトル(以下、参照スペクトルという)には、個々のスペクトルの主要素波成分を特徴付ける複数の周波数ピークが特徴点として存在し、入力波スペクトル中において、参照スペクトルの各特徴点と同じ周波数域に、それぞれ対応する特徴点が存在するか否か(S405)、かつ、各特徴点間のピーク高さ比が一致するか否か(S405)により、入力波にサイレン音の成分が存在しているかどうか、つまり、参照サイレン音のそれかとスペクトルが一致したか否か、を判定する(S406)。一致と判定された場合はS407に進み、各マイクの入力波スペクトルにおいて、予め定められた代表特徴点(例えば、特徴点を示す複数の周波数ピークの打ち、最も強度の高いもの)のピーク高さを演算する。そして、S408にて、少なくともいずれかのマイクの入力スペクトルにおいて、その代表特徴点ピーク高さが予め定められた閾値(規定レベル)を超えていれば、緊急車両が接近中であると判定してS409に進む。それ以外の場合は処理を終了する。
【0063】
S409では、各マイクの入力波スペクトルの代表特徴点ピーク高さをそれぞれ演算し、S410その結果からサイレン音の音源方向(つまり、緊急車両の接近方向)を特定する。図6に示すように、前右、前左、後右、後左の各マイクの代表特徴点ピーク高さを、それぞれIFR,IFL,IRR,IRLとする。車両の走行方向を基準として、前後方向をY、左右方向をXと定めれば、緊急車両の接近方向に応じて各代表特徴点ピーク高さIFR,IFL,IRR,IRL間には次のような関係が成立すると考えられる。
(A)Y方向真正面からサイレン音が近づいてくる場合:IFR=IFL(>IRR,IRL)
(B)Y方向真後ろからサイレン音が近づいてくる場合:IRR=IRL(>IFR,IFL)
(C)X方向真右からサイレン音が近づいてくる場合:IFR=IRR(>IFL,IRL)
(D)X方向真右からサイレン音が近づいてくる場合:IFL=IRL(>IFR,IRR)
【0064】
そこで、図6に示すように、X−Y平面上にて自車位置をその原点に合わせ、各代表特徴点ピーク高さを、(1)〜(4)の関係を満足する次の4つの音量ベクトルに対応させる。
SFR=(IFR,IFR)
SFL=(−IFL,IFL)
SRL=(−IRL,−IRL)
SRR=(IRR,−IRR)
すると、サイレン音(緊急車両)の推定接近方向は、上記4つの音量ベクトルのベクトル和SNの方向、すなわち、
SN=SFR+SFL+SRL+SRR
=(IFR−IFL−IRLIRR,IFR+IFL−IRLIRR)≡(INX,INY)
の方向として求めることができる。原点周りに動径がX軸と一致する角度を0゜として定義すれば、緊急車両の接近方向を示す角度θは、
θ=Tan−1(INY/INX) ‥(1)
として演算される。この場合、IFR,IFL,IRR,IRLの最大のものがどれであるかにより特定でき、図6のX−Y座標平面の第1/第2象限にSNが位置する場合(つまり、INY>0の場合)は、(1)式の演算結果をθの値としてそのまま用い、第3/第4象限にSNが位置する場合(つまり、INY<0の場合)は、(1)式の演算結果に180゜を加算した値をθの値として用いる。
【0065】
なお、緊急車両が接近中であることをより精密に判定するために、一定のサンプリング時間間隔をおいて2回ないしそれ以上、入力波をサンプリングして上記と同様のスペクトル解析を行なうこともできる。この場合、それぞれ同一のサイレン音が検出され、かつ、代表特徴点ピーク高さが、後でサンプリングされるものほど高くなる場合に、緊急車両が接近中であると特定する。
【0066】
また、マイクの数及び配設位置は図3及び図4に例示したものに限定されず、例えば、車両前後の各車幅方向中央位置、及び車両左右側面の車長方向中央位置に配設してもよいし、これらと図3,4に例示した態様とを組合せ、6個ないし8個のマイクを配設することも可能である。この場合も、個々のマイクのスペクトル上で特定される代表特徴点ピーク高さを、X−Y平面上の音量ベクトルに置き換え、該音量ベクトルのベクトル和を演算することにより、サイレン音の音源方向を特定できる。
【0067】
さらに、車両周囲の三次元撮影を行なう外部ステレオカメラ14により、自動車の前後に存在する緊急車両の接近方向(距離を特定してもよい)を画像情報から特定するようにしてもよいステレオカメラ14を用いた緊急車両特の定方法は、特許文献9〜12に開示されている技術を流用すれば実現可能である。このとき、緊急車両の接近方向を特定する主体はあくまで外部ステレオマイク15とし、外部ステレオマイク15による方向特定の精度が十分に確保できなかった場合に、補助的にステレオカメラ14を用いることも可能である。
【0068】
また、車両現在位置よりも前方に位置する走行予定路の線形情報をカーナビゲーションシステム16から取得し、これを参照することで、緊急車両の接近方向の特定精度をより向上できる場合がある。例えは、図25に示すように、走行予定路が道なり形状の場合は、道路横方向(左右いずれか)から緊急車両が接近してくることはありえない。従って、横方向からのサイレン音が検出されたとき、走行予定路が道なり形状であれば、緊急車両非接近と修正判定することができる。他方、図24に示すように、走行予定路が交差点形状であれば、該交差点にちょうど差し係るタイミングで、見通しの悪い左右(横)いずれかの方向から緊急車両が接近してくることは逆に多々発生する可能性がある。従って、一定未満の弱レベルでサイレン音が検出されたときも、カーナビゲーションシステム16からの情報により交差点へ接近中であることが特定され、かつ、サイレン音の検出方向が斜め前方向であれば、該交差点へ接近中の緊急車両のサイレン音を検出している可能性が高く、緊急車両接近と修正判定することができる。
【0069】
図18に戻り、S103で緊急車両接近中であればS104に進み、運転者がこれを認知可能な状態になっているか否かを判定する処理を行なう。その詳細を図21に示す。S301では、運手者の視線方向を視線カメラ11の撮影結果に基づいて特定する。図13に示すように、フロントウィンドウFW上及びサイドウィンドウSW上の領域を見込む向きに視線方向EDが現れていれば、運転者の視線が車両の前方エリアと側方(左右)エリアに向けられていると判定できる。他方、バックミラーBMを見込む向きに視線方向EDが現れていれば、運転者の視線が車両の直後方に向けられていると判定できる。さらに、サイドミラーSMを見込む向きに視線方向EDが現れていれば、運転者の視線が車両の左右斜め後方に向けられていると判定できる。
【0070】
S302では、運転者が図13の特定エリア(方向)を注視するに伴い視線方向EDの位置変動が一定レベル未満となる特定エリア視線滞在時間を計測し、該滞在時間が一定時間以上となる視線方向EDを、運転者の現在の注視方向として特定する。S303では、運転者の精神状態、具体的には注意集中度を特定する。前述のごとく、運転者の精神活性度と精神愉快度とをそれぞれ生体情報に基づいて特定し、その精神活性度と精神愉快度と組合せに基づいて注意集中度が特定されることとなる。
【0071】
本実施形態では、運転者の精神活性度は、図1のエコー測定ユニット12を用いた臓器(心臓ないし肺)のエコー測定により特定する。図7に示すように、エコー測定ユニット12は座席に着座する運転者の心臓Hのエコー測定を行なう。エコー測定波形(測定結果)は、図1の活性度特定エンジン5aの実行により解析され、その解析結果に基づいて精神活性度が検出される。心臓は鼓動に伴なう動きが顕著であり、超音波を検出プローブとして入射することにより、その動きによりドップラー効果を生じた形で反射波を生ずる。そして、心臓は精神活性度を反映して挙動を明瞭かつ速やかに変化させるので、上記反射波を解析することにより精神活性度をリアルタイムにて精度よく検出することができる。
【0072】
図7に示すように、エコー測定ユニット12は、座席の背もたれ部150に埋設される測定用超音波送信部1070,1080と反射超音波受信部1090,1100とを有する。超音波送信部は周知の超音波トランスジューサで構成される。また、反射超音波受信部は一般的なマイクを使用することも可能であるが、音響特性の整合を考慮すれば、測定用超音波送信部と同種の超音波トランスジューサを使用することが望ましい。
【0073】
具体的には、心臓Hを測定対象とした測定用超音波送信部1070と反射超音波受信部1090とからなる第一エコー測定部と、心臓H(及び肺)から外れた人体部分(この実施形態では横隔膜よりも下側の脊椎付近)を測定対象とした測定用超音波送信部1080と反射超音波受信部1100とからなる第二エコー測定部と、第一エコー測定部の反射超音波受信部1090の出力波形と、第二エコー測定部の反射超音波受信部1100の出力波形との差分波形を演算・出力する差分演算部と1040,1050,1060とを有する。
【0074】
人体外から超音波を入射して心臓H(あるいは肺)に到達させれば、その反射波から心臓H(あるいは肺)の運動を反映したドップラーシフトを観測することができる。しかし、運転者の姿勢変化、運転者人体に作用する車両振動や、上記臓器以外の人体組織内の血流など、心臓ないし肺の運動以外にもドップラーシフト要因は存在し誤差要因となりうる。そこで、心臓H(あるいは肺)を測定対象とした第一エコー測定部の反射超音波受信部1090の出力波形から、心臓H(あるいは肺)から外れた位置にある人体部分を測定対象とした第二エコー測定部の反射超音波受信部1100の出力波形を減算することで、上記心臓H(あるいは肺)の運動以外のドップラーシフト要因を効果的に排除することができる。具体的には、差分演算部において、第一エコー測定部の反射超音波受信部1090の出力波形と第二エコー測定部の反射超音波受信部1100の出力波形とのどちらかが反転増幅部1040で反転され、また、両出力波形のどちらかが位相器1050で位相調整され(この実施形態では、第一エコー測定部の反射超音波受信部1090の出力が反転増幅部1040に入力され、第二エコー測定部の反射超音波受信部1100の出力が位相器1050に入力され、加算器1060にて合成される。なお、加算器1060を差動増幅器にて置き換えれば反転増幅部1040は不要である。また、位相器1050の位相シフト量は、例えば、加算器1060の出力波形の積分振幅が最小化されるようにフィードバック制御される。
【0075】
なお、図4では、第一エコー測定部をなす測定用超音波送信部1070と反射超音波受信部1090との組を、心臓を見込む位置に設けられたものを1つのみ描いているが、例えば、肺を見込む位置に別の第一エコー測定部を設けてもよい。この肺を見込む第一エコー測定部は呼吸に伴なう肺の動きを検出するものとなる。また、運転者毎に心臓や肺の位置は異なるので、心臓や肺の動きを検出するためのエコー測定位置を最適化するために、各々、心臓ないし肺に対応した複数箇所に第一エコー測定部を分散して設けてもよい。これら複数の第一エコー測定部は、測定用超音波送信部の駆動源となるアンプ102を共用する形で制御ユニット1010からの指令に従い、スイッチ1030により適宜切り替えて使用される。
【0076】
心臓ないし肺のエコー測定により、運転者の心拍数、呼吸数及び血流速度の少なくともいずれかを特定することが可能であり、CPU181は、精神活性度分析ソフトウェア109eは、その特定結果に基づいて運転者の精神活性度を特定する。例えば、心鼓動の場合、反射超音波波形である心臓エコー波形には該心鼓動に由来した周波数ドップラーシフトが生ずる。心筋の膨張ないし収縮方向の変位が最大となるとき心筋の移動速度は最小となってドップラーシフトは最小となり、心筋が中立位置を通過するときドップラーシフトは最大となるから、心臓エコー波形を周波数時間変化波形に変換すれば、その周期から心拍数を、振幅から鼓動の強さを読み取ることができる。同様に、肺エコー波形を周波数時間変化波形に変換することにより、その周期から呼吸数を、振幅から呼吸の深さが演算される。図4の構成では、制御ユニット1010内のDSP等を主体に構成された波形演算部が、加算器1060からの入力波形を周波数時間変化波形にリアルタイム変換するとともに、該周波数時間変化波形のピーク解析により心拍数と鼓動の強さ、ないし呼吸数と呼吸の深さを演算し、CPU181側に演算結果を送信するようになっている。
【0077】
なお、心臓内を運動する血流も心臓エコー波形に対するドップラーシフト要因となる。入力する超音波ビームの波長を調整することにより、心臓エコー波形から血流速度を算出することも可能である。例えば、心鼓動の検出を行なう場合は、心臓の外表面とこれに接する人体組織との音響インピーダンス差にて反射が最大化されるように超音波ビームの波長を調整し、血流速度を算出する場合は、心室内壁面とこれに接する血液との音響インピーダンス差にて反射が最大化されるように超音波ビームの波長を調整すればよい。
【0078】
図8は、エコー測定の流れを示すものである。S601では、超音波の照射時間を設定する。照射時間は、例えば測定する心拍数または呼吸数の一周期分以上の時間が確保されていればよい(例えば、2〜5秒)。その後、S602で特定した測定用超音波送信部1070が動作するようにスイッチ1030(図4)を切り替えた後、超音波を発射する。そして、S603でエコー波形を測定する。S604では経過時間を判断し、S601で設定済の測定時間が経過したかを判断し、経過していればS605に進み、同じ処理が次に起動されるタイミング(例えば1〜60秒)を設定して終了する。
【0079】
怒った(不愉快方向)り、逆に陽気に盛り上がたり(愉快方向)して活性度が高ければ、心拍数Hと呼吸数Bとはいずれも上昇する傾向にあり、逆に疲れ・倦怠や落胆状態(不愉快方向)となっていたり、のんびり癒されてリラックスしている状態(愉快方向)では、心拍数Hと呼吸数Bとはいずれも低下傾向となる。従って、精神活性度Jは、心臓エコー測定により得られる運転者の心拍数H(あるいは血流速度)、あるいは肺エコー測定により得られる運転者の呼吸数Bに基づいて特定できる。
【0080】
本実施形態では、平常時に0となり、平常時よりも高い場合に正の値、同じく低い場合に負の値となるように活性度Jを定めている。例えば、平常時の心拍数及び呼吸数を予め測定しておき、その値をそれぞれHm及びBmとすれば、J=(H−Hm)/Hm、あるいはB=(B−Bm)/Bmとして算出できる。本実施形態では心拍数及び呼吸数の双方を用い、具体的には心拍数と呼吸数との積の平方根の形で活性度Jを算出している。
【0081】
次に、愉快度Iについては、心拍数や呼吸数のみでは、愉快側に傾いているのかあるいは不愉快側に傾いているのかが必ずしも正確に判定できない場合が多い。そこで、愉快度Iを、エコー測定以外の生体パラメータにより別途特定するようにしている。例えば、同じ活性度の高い状態でも、イライラしたり怒ったりしているときは運転者の姿勢が頻繁に変化するようになる一方、視線方向の変化は逆に減少し、いわゆる「目が据わった」状態になる。また、顔の表情には怒りの表情が顕著に表れる。視線と表情については顔カメラ521が撮影する顔画像から特定でき、姿勢については、姿勢測定ユニット13(図3)により特定できる。
【0082】
図9は、表情変化解析処理のフローチャートの一例を示すものであり、SS151で変化カウンタNをリセットし、SS152でサンプリングタイミングが到来すればSS153に進み、顔画像を撮影する。顔画像は表情特定が可能な正面画像が得られるまで繰り返す(SS154→SS153)。正面画像が得られたら、マスター画像(記憶装置535内)と順次比較することにより、表情種別を特定する(SS155)。特定された表情種別が「不愉快」なら、愉快度Iを「−1」にセットする(SS156→SS157)。特定された表情種別が「安定」なら、愉快度Iに「0」をセットする(SS158→SS159)。特定された表情種別が「不愉快」なら、愉快度Iに「+1」をセットする(SS160→SS161)。以上の処理を、定められたサンプリング期間が満了するまで繰り返す(SS164→SS152)。サンプリング期間が満了すればSS165へ進み、愉快度Iの平均値I(整数化する)を算出する。
【0083】
また、本実施形態では、図10に示すように姿勢測定ユニット13を、シートの座部及び背もたれ部に複数分散埋設された着座センサ520A,520B,520Cの検知出力に基づいて、着座した運転者(運転者)の姿勢変化を波形検出するように構成している。着座センサは、いずれも着座圧力を検出する圧力センサで構成され、具体的には、正面を向いて着座した運転者の背中の中心に基準センサ520Aが配置される。残部のセンサは、それよりもシート左側に偏って配置された左側センサ520Bと、シート右側に偏って配置された右側センサ520Cとからなる。基準センサ520Aの出力は、差動アンプ603及び604にて、それぞれ右側センサ520Cの出力及び左側センサ520Bの出力との差分が演算され、さらにそれらの差分出力同士が、姿勢信号出力用の差動アンプ605に入力される。その、姿勢信号出力Vout(第二種生体状態パラメータ)は、運転者が正面を向いて着座しているときほぼ基準値(ここではゼロV)となり、姿勢が右に偏ると右側センサ520Cの出力が増加し、左側センサ520Cの出力が減少するので負側にシフトし、姿勢が左に偏るとその逆となって正側にシフトする。なお、右側センサ520C及び左側センサ520Bは、いずれも加算器601,602により、座部側のセンサ出力と背もたれ側のセンサ出力との加算値として出力されているが、残部センサ出力と背もたれセンサ出力の差分値を出力するようにしてもよい(このようにすると、運転者が前のめりになったとき背もたれセンサ側の出力が減少し、その差分値が増大するので、より大きな姿勢の崩れとして検出することができる)。
【0084】
次に、図11は、姿勢信号波形解析処理のフローチャートの一例を示すものであり、サンプリングルーチンでは、一定時間間隔で定められたサンプリングタイミングが到来する毎に、図34を用いて説明した姿勢信号値(Vout)をサンプリングし、波形記録するSS201,SS202)。そして、波形解析ルーチンでは、SS203にて直近の一定期間にサンプリングされた姿勢信号値を波形として取得し、SS204で該波形に周知の高速フーリエ変換処理を行なって周波数スペクトラムを求め、SS205で、そのスペクトラムの中心周波数(あるいはピーク周波数)fを演算する。また、SS206では、波形を一定数の区間に分割し、SS207で区間別の姿勢信号平均値を演算する。そして、SS259では、区間毎に、平均姿勢信号値を波形中心線として、積分振幅を演算し、その平均値を波形振幅の代表値Aとして決定する。
【0085】
視線の場合とは逆に、感情が不愉快側に傾いていれば姿勢変化の振幅Aは比較的大きくなり、変動(つまり周波数f)が激しくなる。逆に愉快側に傾いていれば姿勢変化の振幅Aは小さくなり、変動(つまり周波数f)は緩やかとなる。前述のごとく、平常時に0となり、平常時よりも高い場合に正の値、同じく低い場合に負の値となるように愉快度Iを定める。例えば、平常時の姿勢変化の振幅A及び周波数fを予め測定しておき、その値をそれぞれAm及びfmとすれば、J=−(A−Am)/Am、あるいはJ=−(f−fm)/fmとして算出できる。本実施形態では、振幅A及び周波数fの愉快度Iを算出している(SS209)。
【0086】
上記3通りの方法による愉快度Iはそれぞれ単独で用いてもよいが、本実施形態では、愉快度特定の精度を高めるため、複数の異なる方法で特定された愉快度の平均値(例えば相乗平均)を使用する。また、愉快度特定に際しては、上記以外にも、感情に応じて身体に生ずるノンバーバルな身振りや手振りなどを参照することができる。
【0087】
ラッセル・メーラビアンが提唱する感情平面の概念によれば、図12に示すように、特定の感情状態のいずれにも偏らない中庸の精神状態、すなわちニュートラル状態を基準として、精神の活性度Jと愉快度Iとは、いずれも、正と負の2状態(活性度Jであれば活性/不活性、愉快度Iであれば愉快/不愉快)を定義できる。そして、精神活性度(覚醒度)Jを縦軸に、愉快度Iを横軸に定めた感情平面上の4つの象限に、人間の「喜」「怒」「哀」「楽」の4つの感情状態、具体的には、盛り上がり状態(「喜」に対応、精神活性度:正/愉快度:正)、怒り・興奮状態(「怒」に対応、精神活性度:正/愉快度:負)、落胆・倦怠状態(「哀」に対応、精神活性度小/不愉快)、癒し・リラックス状態(「楽」に対応、精神活性度:負/愉快度:正))を対応付けることができる。
【0088】
上記のごとく、運転者の精神活性度Jと精神愉快度Iとがそれぞれ特定できれば、それら活性度Jと愉快度Iとの値の組を図12の感情平面上にプロットできる。そして、プロット点Qが感情平面のどの象限に属するかにより運転者の感情種別を特定でき、原点Oからプロット点Qまでの距離により感情の強さを特定できる。換言すれば、感情平面の原点近傍のエリアは、前述の中庸の精神状態(ニュートラル状態)を表わすものであり、各象限にてこのニュートラル状態から遠ざかるにつれ、個々の象限に特徴的な感情ひいては欲求により強く支配された状態へと推移する。
【0089】
運転者の精神状態が余計な感情にとらわれて波立っている場合、つまり、ニュートラル状態から遠い精神状態では、その感情発生の要因と直接関係のない外的刺激、つまり緊急車両の接近に対しては認知が鈍感になるのは経験則から明らかであり、逆にニュートラル状態に近ければ認知感度は高くなる。従って、精神活性度Jと精神愉快度Iとの組合せで表現される感情平面上のプロット点Qの原点Oからの距離が大きいほど注意集中度は低くなり、逆に小さいほど注意集中度は高くなる。そして、プロット点Qの原点Oからの距離が一定半径内、つまり、図12に「集中」と表示されたニュートラル領域に属していれば、緊急車両の接近を十分認知できる注意集中状態にあると判定できる。一方、プロット点Q’の原点Oからの距離が閾半径を超えて大きくなった場合は、緊急車両に対する認知に支障をきたす不注意状態と判定できる。最も簡単な方式としては、閾半径を一段階とし、集中/不注意の2レベルにて判定を行なう形であるが、図12に示すように、上記閾半径を複数段階に設定し、例えば、後述の認知支援出力を段階的に増強できるように、不注意度のレベルをさらに細分化することももちろん可能である。
【0090】
図20に戻り、S304では、緊急車両の接近方向周辺の一定領域内に運転者の注視方向が入っていれば緊急車両への注意があり、逆に入っていなければ緊急車両への注意がないと判断する一方、上記の注意集中度が集中領域に入っていれば緊急車両認識への注意集中レベルが高く、入っていなければ注意集中レベルが低いと判断する。そして、図17に示すように、両判断結果の組合せにより、緊急車両への認知状況は4つのパターンに分かれる。
パターン1:緊急車両への視線があり(緊急車両認識への)注意集中レベルも高い。認知支援の必要性がほとんどない。
パターン2:緊急車両への視線があり注意集中レベルが低い。しかし、視覚的には緊急車両を捕らえられている可能性が十分にあるため、認知支援の必要性はパターン1に準じて低い。
パターン3:注意集中レベルは高いが、緊急車両の接近方向から注視方向が外れており、咄嗟の対応にはやや不安があり、認知支援を行なう。
パターン4:緊急車両への視線もなく注意集中レベルも低い。緊急車両の接近にはほとんど無頓着な状態であり、認知支援が不可欠であるとともに、状況に応じた運転誘導も行なう。
【0091】
図18に戻り、S105で、上記の判定結果が認知支援を要求する場合(パターン3又は4)はS106に進み、緊急車両の認知支援出力ないし運転誘導出力を行なう。認知支援出力として最も簡単なものは、図22に示すように、緊急車両が接近してくることを、モニタ100Nに報知メッセージを文字表示したり、あるいは図23に示すように音声出力する方式である。音声出力の場合は、報知メッセージ(「緊急車両です」)の出力に先立って、アラーム音(「POON」)を出力すれば注意を促す効果が高められる。
【0092】
また、上記の報知メッセージ出力を主体とした基本認知支援出力に対し、以下のものから選ばれる1ないし2以上の強調認知支援出力を組み合わせて実施することも効果的である。
・緊急車両接近時は徐行を促すことが効果的だから、図1のアクセルペダル振動部53によりアクセルペダル51に乗っている運転者の足に向け振動を出力する。アクセルペダルに通常では有り得ないような振動を与え、咄嗟にペダルから足を離させる効果を有する。
・運転席シート72に埋設されたシートバイブレータ71(ドライバー71d)に、緊急車両接近認知を促すための振動出力を行なわせる。
・メータ81M、ミラー内表示装置82、ヘッドアップディスプレイ83の少なくともいずれかに、赤や黄色などの警告色の光を出力させ、注意を喚起する。また、バックミラーとサイドミラーを、例えばハーフミラーとし、ミラー裏面よりLED等により警告点灯表示を行なう。透明ELディスプレイをミラー表面に重畳させ、表示を行なってもよい。フロントウィンドウでは、ヘッドアップディスプレイ(透明ELディスプレイでもよい)により緊急車両の認知支援表示を行なう。また、メータ81Mの場合、緊急車両の接近をアイコン表示したり、文字盤や画面全体を赤系統の警告色で点滅させることで、緊急車両接近に対する注意喚起を行なう。メータ81MのバックライトがフルカラーLEDで構成されている場合は、その出力で警告色点灯出力を行なうこともできる。
・匂い発生器93から、危険を感じ、動作を止める香りを発生する。一瞬に、集中できる匂いを発生する。この場合、空気の流れに乗って香りは伝達されることから、空気砲または気流コントロールとセットで考慮するとよい。
【0093】
ここで重要な点は、図20のS304で、緊急車両に対する認知可能度が比較的高く、認知支援出力が特に必要でないと判定された場合(パターン1又は2)は、緊急車両の接近中であっても認知支援出力を敢えて行なわないか、仮に行なっても、具体的には、認知支援レベルの低い定常的な処理(バックグラウンド認知支援出力)とすることで、S304で緊急車両の認知レベルが低いと判定された場合を受けてS106で実行される特有の認知支援出力がより目立つように、メリハリを持たせることが肝要である。バックグラウンド認知支援出力としては次のようなものがある。
・図1のマイク15で取り込んだ車外音に緊急車両のサイレン音が含まれていた場合、これを増幅してスピーカー91から車内に出力する。また、車外音の増幅出力に代え、合成サイレン音をスピーカー91から出力するようにしてもよい。
・S106で実行される特有の認知支援出力にて、基本認知支援出力と併用されていた前述の強調認知支援出力を、バックグラウンド認知支援出力においては休止する。
【0094】
次に、認知支援出力と合わせて実行可能な、運転誘導出力処理の実例について説明する。前述のごとく、カーナビゲーションシステム16からは、車両現在位置よりも前方に位置する走行予定路の線形情報を取得できる。そして、この走行予定路が、道なり形状であるか交差点形状であるかを区別した形で運転誘導内容を定めることができる。運転誘導は、図26〜図30に示すように、基本的にはスピーカー91から誘導メッセージを音声出力することにより行なうが、ヘッドアップディスプレイHUDを利用した文字画像出力を併用してもよい。
【0095】
以下、運転誘導の具体的な処理流れについて図31のフローチャートを用いて説明する。該処理は、図18のS106にて実施されるものである。S501では、走行予定路が道なり形状か交差点形状かを判定する。道なり形状の場合はS502に進み、既に特定されている緊急車両の接近方向が前方か後方かを判定する(横方向の場合は、図示はしていないが処理を終了する)。前方の場合はS503に進み、図26のごとく、前方からの緊急車両の接近報知メッセージを出力する。なお、徐行を促す運転誘導メッセージを出力してもよい。
【0096】
次に、S502において、緊急車両の接近方向が後方の場合はS504に進み、前方を撮影するカメラ15の撮影画像か、カーナビゲーションシステム16の地図情報を参照することにより、走行中の道路のレーン数を周知の方法にて特定する。レーン数が2以上のときはS505に進み、接近中の緊急車両の走行レーンが、自車の走行レーンと同じかどうかを判定する。自車の走行レーンと同じでなければS503に進み、後方からの緊急車両の接近報知メッセージの出力のみを行なう(認知支援出力:徐行を促す運転誘導メッセージを出力してもよい)。一方、自車の走行レーンと同じであった場合は、図27に示すように、後方からの緊急車両の接近報知メッセージを出力するとともに、レーン変更により緊急車両に進路を譲る運転誘導メッセージを出力する。
【0097】
次に、S504にてレーン数が1のときはS507に進み、図28に示すように、後方からの緊急車両の接近報知メッセージを出力するとともに、路肩側への幅寄せ(左側通行の場合は左端寄せ、右側通行の場合は右端寄せ)により、緊急車両に進路を譲る運転誘導メッセージを出力する。
【0098】
S501に戻り、走行予定路が交差点形状の場合はS509に進み、既に特定されている緊急車両の接近方向が前方、後方及び横方向のいずれであるかを判定する。前方の場合はS510に進み、図25に示すように、対向車両として接近してくる緊急車両ABのウインカーWKの点灯を、カメラ15の撮影画像等から特定する。そのウインカーWKの点灯から、緊急車両ABが右折してくると判定された場合はS511に進み、図29のごとく、前方からの緊急車両が右折してくる内容の接近報知メッセージを出力するとともに(認知支援出力)、交差点への進入禁止あるいは一旦停止を促す運転誘導メッセージを出力する。他方、緊急車両が右折しないと判定された場合はS513に進み、徐行運転を促す運転誘導メッセージを出力する。
【0099】
次に、S509において、緊急車両の接近方向が後方の場合はS514に進み、走行中の道路のレーン数を周知の方法にて特定する。該S514以下、S515、S516、S517及びS518の処理は、S504、S505、S503、S506及びS507の各処理と同じである。
【0100】
そして、S509において、緊急車両の接近方向が横方向(左右)の場合はS519に進み、図30のごとく、右(左)から緊急車両が交差点内に入る内容の接近報知メッセージを出力するとともに(認知支援出力)、交差点への進入禁止あるいは一旦停止を促す運転誘導メッセージを出力する。
【0101】
なお、S511あるいはS511のごとく、交差点内への進入を制限する運転誘導内容を行なった場合、これに引き続いて、自車の加速(走行)を抑制する走行抑制制御、あるいは制動を支援する制動支援制御を行なうことができる(S512、S520)。
【0102】
走行抑制制御は、例えば次のようにして実施できる。まず、図1の電子スロットル制御装置21は、アクセルセンサ8によるアクセルペダル踏下量(アクセル位置)に応じた開度指示値を受け、スロットルバルブ23が指示開度となるように、駆動モータ22を作動制御する。図14に示すように、アクセル位置に応じてスロットル開度は破線のように変化するが、走行抑制処理時には、実線で示すごとく、アクセル位置に応じたスロットル開度の増加率を上記通常時よりも縮小し、アクセルを踏み込んでもスロットルバルブが大きく開かないようにする。なお、図14では、走行抑制処理時においても微動発進は可能となるよう、アクセルペダルを踏み込んだとき、通常時よりは小さい開度にてスロットルバルブが開くように制御しているが、自動車が全く進まなくなるように、走行抑制処理時においてはアクセルペダルの踏下量と無関係にスロットルバルブの開度がゼロとなるように制御してもよい。
【0103】
また、燃料噴射制御装置25による走行抑制制御を行なうことも可能である。具体的には、走行抑制制御時には、ソレノイド噴射バルブの開度を通常時よりも縮小し、アクセルを踏み込んだときの燃料噴射を禁止又は噴射量を低くする。なお、緊急車両接近予防時に走行抑制手段として機能させるのは、電子スロットル制御装置21と燃料噴射制御装置25との双方としても良いし、電子スロットル制御装置21のみ、あるいは燃料噴射制御装置25のみとすることも可能である。
【0104】
次に、制動支援制御は、例えば次のようにして実施できる。すなわち、ブレーキペダル61に対する踏下反力は、通常時はペダルバックアップスプリング61sにより発生するが、緊急車両接近予防時にはブレーキ反力モータ62を作動させ、ブレーキペダル61の踏下反力を通常時よりも増加させる(踏下反力制御手段)。また、これと合わせ、ECU2は、ブレーキペダル61の踏下量に対するブレーキ圧の増加率を通常時よりも増加させるよう、ブレーキ圧指示値を変更する(ブレーキ圧制御手段)。
【0105】
ブレーキペダル61の踏下量に対するブレーキ圧の増加率を通常時よりも増加させつつ、ブレーキペダル61の踏下反力を通常時よりも増加させると、ブレーキ踏下力がほぼ同等であれば、制動支援を特に行なわない場合と比較して、少ない踏下量で通常時に近い制動効果が得られる。ところが、ブレーキペダル61の踏下反力が普段より大きくなっているので踏み込み不足の違和感を生じ、運転者はブレーキペダル61をさらに踏み込もうとする。その結果、ブレーキ圧が上昇し制動支援効果が得られる。
【0106】
理解を容易にするために、図15に示すように、ブレーキ位置θ1,θ2,‥に対して、ブレーキ圧指示値が通常時はπ1,π2,‥となるように設定されているところ、制動支援時には、同じブレーキθ1,θ2,‥に対して、ブレーキ圧指示値が通常時の2倍の2π1,2π2,‥に設定されているとする。また、ブレーキ位置θ1,θ2,‥に対するブレーキ反力の値も通常時の2倍になっているとする(つまり、制動支援時のブレーキ圧指示値の拡大倍率がブレーキ反力の拡大倍率と等しくなっている)。
【0107】
図16に示すごとく、ある踏力f0でブレーキペダルを踏下した場合の、通常時(つまり、ブレーキ反力モータ62による反力増加なし:実線)のブレーキ位置をθAとし、このときのブレーキ圧指示値をπ0とする。他方、上記のパラメータ設定で制動支援を行なう場合、反力が増加しているので破線のごとく踏力fに対するブレーキ位置θの増加率が半分に縮小し、他方、ブレーキ位置θに対するブレーキ圧の増加率は倍に拡大している。従って、同じ踏力f0でのブレーキ位置は半分のθBとなるが、ブレーキ圧の増加率拡大により相殺され、ブレーキ圧指示値は同じπ0となる。しかし、運転者は、普段と同じ力でブレーキペダルを踏んでいるのにペダルが下がらず、これを踏み込み不足と感じする。そこで、いつもの踏み込み量に近づくよう踏力をf1に増加させる(一点鎖線)。その結果、ブレーキ位置はθBからθCに増加し、ブレーキ圧指示値もπ1に増加する。
【0108】
なお、制動支援処理として、反力拡大処理を行なわず、ブレーキ位置に対するブレーキ圧指示値の拡大のみを行なうことも可能である。しかし、この場合は制動支援時において通常の踏下力でブレーキ圧が急激に増大することになり、過剰制動につながる懸念もある。他方、上記のように反力拡大処理を行なえば、通常の踏下力ではブレーキの効きにそれほど変化が生じず、踏み込み不足を感じてそこからブレーキを増し踏みする形になるので、制動力も段階的に増加し、過剰制動を抑制できる利点がある。
【0109】
なお、上記の運転誘導出力、走行抑制処理及び制動支援処理は、その少なくともいずれかを省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の緊急車両認知支援装置に係る一実施例の電気的構成を示すブロック図。
【図2】図1の緊急車両認知支援装置に組み込まれたカーナビゲーションシステムの電気的構成を示すブロック図。
【図3】フロントバンパのセンサ取付形態を示す斜視図。
【図4】リアバンパのセンサ取付形態を示す斜視図。
【図5】不注意により緊急車両と衝突するシーンの一例を示す図。
【図6】マイクの音量から緊急車両の接近方向を計算する原理説明図。
【図7】エコー測定ユニットの構成例を示す簡易ブロック図。
【図8】エコー測定ユニットの設定処理の流れを示すフローチャート。
【図9】精神愉快度を特定するための表情変化解析処理例を示すフローチャート。
【図10】姿勢測定ユニットの一例を示す回路図。
【図11】精神愉快度を特定するための姿勢変化解析処理例を示すフローチャート。
【図12】感情平面を用いて注意集中判定を行なう原理説明図。
【図13】車両前方及び車両側方の視線特定状況を説明する図。
【図14】スロットル開度制限により走行抑制を行なう事例を示す説明図。
【図15】制動支援処理の第一の説明図。
【図16】同じく第二の説明図。
【図17】視線と注意集中度とによる緊急車両認知状況の類型パターンを説明する図。
【図18】緊急車両認知支援装置の主処理の流れを示すフローチャート。
【図19】シーン推定処理の流れを示すフローチャート。
【図20】緊急車両特定処理の流れを示すフローチャート。
【図21】状態推定処理の流れを示すフローチャート。
【図22】表示による認知支援出力の一例を示す図。
【図23】音声による認知支援出力の一例を示す図。
【図24】道なり路走行時の緊急車両との遭遇形態を示す模式図。
【図25】交差点接近時の緊急車両との遭遇形態を示す模式図。
【図26】音声のみによる運転誘導出力の一例を示す図。
【図27】表示と音声とを組み合わせた運転誘導出力の第一例を示す図。
【図28】同じく第二例を示す図。
【図29】同じく第三例を示す図。
【図30】同じく第四例を示す図。
【図31】走行路形状に応じて運転誘導出力内容を決定する処理の流れを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0111】
1 緊急車両認知支援装置
2 ECU(認知可能度特定手段、注意集中度特定手段、運転誘導内容決定手段)
10 顔カメラ(生体情報検出手段、精神愉快度特定手段)
11 視線カメラ(視線方向検出手段)
12 エコー測定ユニット(注意集中度特定手段、エコー測定装置)
13 姿勢測定ユニット(精神愉快度特定手段)
14 外部ステレオカメラ(緊急車両接近検出手段、緊急車両接近方向検出手段)
15 外部ステレオマイク(緊急車両接近検出手段、緊急車両接近方向検出手段)
16 カーナビゲーションシステム(走行路形状推定手段)
21 電子スロットル制御装置(走行抑制手段)
23 スロットルバルブ
51 アクセルペダル
53 アクセルペダル振動部(認知支援出力手段)
61 ブレーキペダル
62 ブレーキ反力モータ(制動支援手段、踏下反力制御手段)
71 シートバイブレータ(認知支援出力手段)
91 スピーカー(認知支援出力手段)
93 匂い発生器(認知支援出力手段)
110 モニタ(認知支援出力手段)
MC 自車
AB 緊急車両
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車に対する緊急車両の接近を検出する緊急車両接近検出手段と、
前記自車の運転者の生体情報を検出する生体情報検出手段と、
前記生体情報に基づいて前記運転者の前記緊急車両に対する認知可能度を特定する認知可能度特定手段と、
前記緊急車両の接近が検出され、かつ、特定された前記認知可能度が予め定められたレベルよりも低下した場合に、前記緊急車両の接近に対する当該場合に特有の認知支援出力を行なう認知支援出力手段と、
を有することを特徴とする緊急車両認知支援装置。
【請求項2】
前記認知可能度特定手段は、前記認知可能度の一つとして、前記緊急車両に対する注意集中度を前記生体情報に基づいて特定する注意集中度特定手段を有し、
前記認知支援出力手段は、少なくとも前記注意集中度が予め定められたレベルよりも低下したときに、前記緊急車両の接近に対する認知支援出力を行なう請求項1記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項3】
前記注意集中度特定手段は、前記生体情報に基づいて前記運転者の精神活性度を特定する精神活性度特定手段と、前記生体情報に基づいて前記運転者の精神愉快度を特定する精神愉快度特定手段とを有し、前記注意集中度を前記精神活性度と前記精神愉快度との組合せに基づいて特定する請求項1記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項4】
前記注意集中度特定手段は、前記精神活性度と前記精神愉快度との少なくともいずれかが、予め定められた中立範囲を逸脱した場合に前記注意集中度が低下したと判定する請求項3記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項5】
前記生体情報検出手段は、前記自動車の座席に着座する前記運転者の心臓又は肺のエコー測定を行なうエコー測定ユニットを含み、前記注意集中度特定手段は、該エコー測定結果に基づいて前記注意集中度を特定するものである請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項6】
前記エコー測定ユニットは前記座席の背もたれ部に埋設されるエコー測定用の超音波送信部と反射超音波受信部とを有する請求項5記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項7】
前記注意集中度特定手段は、前記エコー測定により前記運転者の心拍数、呼吸数及び血流速度の少なくともいずれかを特定し、その特定結果に基づいて前記注意集中度を特定するものである請求項6記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項8】
前記注意集中度特定手段は、心臓又は肺を測定対象とした測定用超音波送信部と反射超音波受信部とからなる第一エコー測定部と、該測定対象以外の人体部分を測定対象とした測定用超音波送信部と反射超音波受信部とからなる第二エコー測定部と、前記第一エコー測定部の反射超音波受信部出力波形と、前記第二エコー測定部の反射超音波受信部出力波形との差分波形を演算・出力する差分演算部とを有し、該差分波形に基づいて前記心拍数、呼吸数及び血流速度の少なくともいずれかを特定するものである請求項7に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項9】
前記注意集中度特定手段は、前記エコー測定ユニットの測定結果に基づいて前記運転者の精神活性度を特定する精神活性度手段と、該エコー測定ユニットとは別に設けられた前記運転者の精神愉快度を特定する精神愉快度特定手段とを備え、前記注意集中度を前記精神活性度と前記精神愉快度との組合せに基づいて特定する請求項5ないし請求項8のいずれか1項に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項10】
前記精神愉快度特定手段は、前記運転者の表情及び姿勢のいずれかに基づいて精神愉快度を検出するものである請求項9記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項11】
前記生体情報検出手段は、前記生体情報として前記運転者の視線方向を特定する視線方向特定手段を有し、
また、自車に対する前記緊急車両の接近方向を検出する緊急車両接近方向検出手段を備え、
前記認知可能度特定手段は、前記認知可能度の一つとして、前記運転者の視線方向と前記緊急車両の接近方向との一致度を特定するものであり、
前記認知支援出力手段は、前記一致度が予め定められた許容範囲を逸脱することを条件として、前記緊急車両の接近に対する認知支援出力を行なう請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項12】
前記認知可能度特定手段は、前記認知可能度の一つとして、前記緊急車両に対する注意集中度を前記生体情報に基づいて特定する注意集中度特定手段を有し、
前記認知支援出力手段は、前記注意集中度が予め定められたレベルよりも低下し、かつ、前記一致度が予め定められた許容範囲を逸脱した場合に、前記緊急車両の接近に対する認知支援出力を行なう請求項11記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項13】
前記認知支援出力手段は、音声、光、画像、振動ないしそれらの2以上の組合せにより、前記緊急車両の接近を報知する出力を行なう請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項14】
前記緊急車両の接近ならびにその方向を検出する緊急車両接近方向検出手段と、
前記自車の走行路形状を推定する走行路形状推定手段と、
推定された前記走行路形状と前記緊急車両の接近方向とに応じて運転誘導内容を決定する運転誘導内容決定手段と、
決定された前記運転誘導内容を出力する運転誘導出力手段と、
を有する請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項15】
前記緊急車両接近方向検出手段は、
車両上の異なる位置に設けられ、前記緊急車両が発するサイレン音を各々検出する複数のマイクロフォンと、
それら複数のマイクロフォンによる前記サイレン音の検出状態に基づいて、前記緊急車両の接近方向を特定する接近方向特定手段とを有する請求項14記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項16】
前記緊急車両接近方向検出手段は、
前記緊急車両の位置情報を車外情報源から無線取得する緊急車両位置情報無線取得手段と、
前記自車の現在位置を取得する現在位置取得手段とを有し、
前記緊急車両位置情報と前記自車の現在位置情報とに基づいて前記緊急車両の接近方向を特定する請求項14又は請求項15に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項17】
前記走行路形状推定手段は、前記車両に搭載されたカーナビゲーションシステムから走行路形状情報を取得する請求項14ないし請求項16のいずれか1項に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項18】
前記走行路形状推定手段が前記カーナビゲーションシステムから取得する走行路形状情報は、前記カーナビゲーションシステムが地図上に特定する現在走行路に係る、車両現在位置よりも前方に位置する走行予定路の線形情報であり、
前記運転誘導内容決定手段は、前記走行予定路が道なり形状であるか交差点形状であるかを区別した形で前記運転誘導内容を決定する請求項17記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項19】
前記走行予定路の形状によらず、前記緊急車両の接近方向が自車後方であった場合に、前記運転誘導内容決定手段は、道路端寄せ又はレーン変更を前記運転誘導内容として決定する請求項18記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項20】
前記走行予定路が道なり形状であって、前記緊急車両の接近方向が自車前方であった場合に、前記運転誘導内容決定手段は徐行運転を前記運転誘導内容として決定する請求項18記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項21】
前記走行予定路が交差点形状であって、前記緊急車両の接近方向が自車横方向であった場合に、前記運転誘導内容決定手段は、前記交差点内への進入を制限する運転誘導内容を決定する請求項18記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項22】
前記走行予定路が交差点形状であって、前記緊急車両の接近方向が自車前方であった場合に、前記運転誘導内容決定手段は、前記緊急車両が右折するか否かを推定するとともに、右折すると推定された場合に前記交差点内への進入を制限する運転誘導内容を決定する請求項18記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項23】
前記運転誘導内容決定手段は、前記緊急車両が右折しないと推定された場合に、前記交差点内の徐行運転を運転誘導内容として決定する請求項18記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項24】
前記運転誘導内容決定手段は、前記交差点手前での一旦停止を前記運転誘導内容として決定する請求項22又は請求項23に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項25】
前記運転誘導出力手段は、前記運転誘導内容を音声、画像又はそれらの組合せにより出力するものである請求項14ないし請求項24のいずれか1項に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項26】
前記運転誘導内容決定手段が交差点内への進入を制限する運転誘導内容を決定した場合に、前記自車の走行を抑制する走行抑制手段が設けられている請求項18ないし請求項25のいずれか1項に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項27】
前記自動車は、前記アクセルペダルの踏下位置を検出するアクセルペダル踏下位置検出手段と、検出された踏下位置に応じてエンジン出力を電子制御するエンジン出力制御手段とを備えた電子エンジン制御装置を有するものであり、
前記走行抑制手段は、前記アクセルペダルの踏下量に応じたエンジン出力を通常時よりも制限するエンジン出力制限手段を有する請求項26記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項28】
前記運転誘導内容決定手段が交差点内への進入を制限する運転誘導内容を決定した場合に、前記自動車の制動を支援する制動支援手段が設けられている請求項18ないし請求項27のいずれか1項に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項29】
前記制動支援手段は、制動支援時において、前記ブレーキペダルの踏下反力を通常時よりも増加させる踏下反力制御手段と、前記ブレーキペダルの踏下量に対するブレーキ圧の増加率を通常時よりも増加させるブレーキ圧制御手段とを有する請求項28に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項1】
自車に対する緊急車両の接近を検出する緊急車両接近検出手段と、
前記自車の運転者の生体情報を検出する生体情報検出手段と、
前記生体情報に基づいて前記運転者の前記緊急車両に対する認知可能度を特定する認知可能度特定手段と、
前記緊急車両の接近が検出され、かつ、特定された前記認知可能度が予め定められたレベルよりも低下した場合に、前記緊急車両の接近に対する当該場合に特有の認知支援出力を行なう認知支援出力手段と、
を有することを特徴とする緊急車両認知支援装置。
【請求項2】
前記認知可能度特定手段は、前記認知可能度の一つとして、前記緊急車両に対する注意集中度を前記生体情報に基づいて特定する注意集中度特定手段を有し、
前記認知支援出力手段は、少なくとも前記注意集中度が予め定められたレベルよりも低下したときに、前記緊急車両の接近に対する認知支援出力を行なう請求項1記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項3】
前記注意集中度特定手段は、前記生体情報に基づいて前記運転者の精神活性度を特定する精神活性度特定手段と、前記生体情報に基づいて前記運転者の精神愉快度を特定する精神愉快度特定手段とを有し、前記注意集中度を前記精神活性度と前記精神愉快度との組合せに基づいて特定する請求項1記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項4】
前記注意集中度特定手段は、前記精神活性度と前記精神愉快度との少なくともいずれかが、予め定められた中立範囲を逸脱した場合に前記注意集中度が低下したと判定する請求項3記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項5】
前記生体情報検出手段は、前記自動車の座席に着座する前記運転者の心臓又は肺のエコー測定を行なうエコー測定ユニットを含み、前記注意集中度特定手段は、該エコー測定結果に基づいて前記注意集中度を特定するものである請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項6】
前記エコー測定ユニットは前記座席の背もたれ部に埋設されるエコー測定用の超音波送信部と反射超音波受信部とを有する請求項5記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項7】
前記注意集中度特定手段は、前記エコー測定により前記運転者の心拍数、呼吸数及び血流速度の少なくともいずれかを特定し、その特定結果に基づいて前記注意集中度を特定するものである請求項6記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項8】
前記注意集中度特定手段は、心臓又は肺を測定対象とした測定用超音波送信部と反射超音波受信部とからなる第一エコー測定部と、該測定対象以外の人体部分を測定対象とした測定用超音波送信部と反射超音波受信部とからなる第二エコー測定部と、前記第一エコー測定部の反射超音波受信部出力波形と、前記第二エコー測定部の反射超音波受信部出力波形との差分波形を演算・出力する差分演算部とを有し、該差分波形に基づいて前記心拍数、呼吸数及び血流速度の少なくともいずれかを特定するものである請求項7に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項9】
前記注意集中度特定手段は、前記エコー測定ユニットの測定結果に基づいて前記運転者の精神活性度を特定する精神活性度手段と、該エコー測定ユニットとは別に設けられた前記運転者の精神愉快度を特定する精神愉快度特定手段とを備え、前記注意集中度を前記精神活性度と前記精神愉快度との組合せに基づいて特定する請求項5ないし請求項8のいずれか1項に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項10】
前記精神愉快度特定手段は、前記運転者の表情及び姿勢のいずれかに基づいて精神愉快度を検出するものである請求項9記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項11】
前記生体情報検出手段は、前記生体情報として前記運転者の視線方向を特定する視線方向特定手段を有し、
また、自車に対する前記緊急車両の接近方向を検出する緊急車両接近方向検出手段を備え、
前記認知可能度特定手段は、前記認知可能度の一つとして、前記運転者の視線方向と前記緊急車両の接近方向との一致度を特定するものであり、
前記認知支援出力手段は、前記一致度が予め定められた許容範囲を逸脱することを条件として、前記緊急車両の接近に対する認知支援出力を行なう請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項12】
前記認知可能度特定手段は、前記認知可能度の一つとして、前記緊急車両に対する注意集中度を前記生体情報に基づいて特定する注意集中度特定手段を有し、
前記認知支援出力手段は、前記注意集中度が予め定められたレベルよりも低下し、かつ、前記一致度が予め定められた許容範囲を逸脱した場合に、前記緊急車両の接近に対する認知支援出力を行なう請求項11記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項13】
前記認知支援出力手段は、音声、光、画像、振動ないしそれらの2以上の組合せにより、前記緊急車両の接近を報知する出力を行なう請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項14】
前記緊急車両の接近ならびにその方向を検出する緊急車両接近方向検出手段と、
前記自車の走行路形状を推定する走行路形状推定手段と、
推定された前記走行路形状と前記緊急車両の接近方向とに応じて運転誘導内容を決定する運転誘導内容決定手段と、
決定された前記運転誘導内容を出力する運転誘導出力手段と、
を有する請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項15】
前記緊急車両接近方向検出手段は、
車両上の異なる位置に設けられ、前記緊急車両が発するサイレン音を各々検出する複数のマイクロフォンと、
それら複数のマイクロフォンによる前記サイレン音の検出状態に基づいて、前記緊急車両の接近方向を特定する接近方向特定手段とを有する請求項14記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項16】
前記緊急車両接近方向検出手段は、
前記緊急車両の位置情報を車外情報源から無線取得する緊急車両位置情報無線取得手段と、
前記自車の現在位置を取得する現在位置取得手段とを有し、
前記緊急車両位置情報と前記自車の現在位置情報とに基づいて前記緊急車両の接近方向を特定する請求項14又は請求項15に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項17】
前記走行路形状推定手段は、前記車両に搭載されたカーナビゲーションシステムから走行路形状情報を取得する請求項14ないし請求項16のいずれか1項に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項18】
前記走行路形状推定手段が前記カーナビゲーションシステムから取得する走行路形状情報は、前記カーナビゲーションシステムが地図上に特定する現在走行路に係る、車両現在位置よりも前方に位置する走行予定路の線形情報であり、
前記運転誘導内容決定手段は、前記走行予定路が道なり形状であるか交差点形状であるかを区別した形で前記運転誘導内容を決定する請求項17記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項19】
前記走行予定路の形状によらず、前記緊急車両の接近方向が自車後方であった場合に、前記運転誘導内容決定手段は、道路端寄せ又はレーン変更を前記運転誘導内容として決定する請求項18記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項20】
前記走行予定路が道なり形状であって、前記緊急車両の接近方向が自車前方であった場合に、前記運転誘導内容決定手段は徐行運転を前記運転誘導内容として決定する請求項18記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項21】
前記走行予定路が交差点形状であって、前記緊急車両の接近方向が自車横方向であった場合に、前記運転誘導内容決定手段は、前記交差点内への進入を制限する運転誘導内容を決定する請求項18記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項22】
前記走行予定路が交差点形状であって、前記緊急車両の接近方向が自車前方であった場合に、前記運転誘導内容決定手段は、前記緊急車両が右折するか否かを推定するとともに、右折すると推定された場合に前記交差点内への進入を制限する運転誘導内容を決定する請求項18記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項23】
前記運転誘導内容決定手段は、前記緊急車両が右折しないと推定された場合に、前記交差点内の徐行運転を運転誘導内容として決定する請求項18記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項24】
前記運転誘導内容決定手段は、前記交差点手前での一旦停止を前記運転誘導内容として決定する請求項22又は請求項23に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項25】
前記運転誘導出力手段は、前記運転誘導内容を音声、画像又はそれらの組合せにより出力するものである請求項14ないし請求項24のいずれか1項に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項26】
前記運転誘導内容決定手段が交差点内への進入を制限する運転誘導内容を決定した場合に、前記自車の走行を抑制する走行抑制手段が設けられている請求項18ないし請求項25のいずれか1項に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項27】
前記自動車は、前記アクセルペダルの踏下位置を検出するアクセルペダル踏下位置検出手段と、検出された踏下位置に応じてエンジン出力を電子制御するエンジン出力制御手段とを備えた電子エンジン制御装置を有するものであり、
前記走行抑制手段は、前記アクセルペダルの踏下量に応じたエンジン出力を通常時よりも制限するエンジン出力制限手段を有する請求項26記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項28】
前記運転誘導内容決定手段が交差点内への進入を制限する運転誘導内容を決定した場合に、前記自動車の制動を支援する制動支援手段が設けられている請求項18ないし請求項27のいずれか1項に記載の緊急車両認知支援装置。
【請求項29】
前記制動支援手段は、制動支援時において、前記ブレーキペダルの踏下反力を通常時よりも増加させる踏下反力制御手段と、前記ブレーキペダルの踏下量に対するブレーキ圧の増加率を通常時よりも増加させるブレーキ圧制御手段とを有する請求項28に記載の緊急車両認知支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
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【図20】
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【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2010−67164(P2010−67164A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234949(P2008−234949)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
2.パトライト
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
2.パトライト
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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