説明

緊急通報システム

【課題】
緊急通報システムであって、スピーカを検査する時に、スピーカから音声を出力して、音声が出力されているかを検査していた。しかし、この検査方法では、スピーカから音声が出力される為、署所内にいる隊員の業務に支障になったり、署所近隣の住民に迷惑を掛けたりするおそれがあった。
【解決手段】
本発明は、上記問題を解決する為に、スピーカから音声を出力せずにスピーカを検査する緊急通報システムを提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防などの本部と署所からなる緊急通報システムにおいて、署所に設置されているスピーカの検査を行うもので、検査員が各署所に出向くことなく、本部から署所のスピーカを検査することができるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、署所のスピーカを検査する方法としては、検査員が検査する各署所に出向き、本部からの指令通りにスピーカから音声が出力されているかを確認していた。しかし、この方法では、検査する度に検査員が署所まで出向く必要があり、移動時間と手間がかかる問題があった。そこで、検査員が各署所に出向かなくても、署所のスピーカを検査することができる方法が、特開2006−254115号公報に開示されている。この先行技術では、検査していないスピーカをマイクの代わりに使用し、検査しているスピーカから出力されている音声をマイク代わりのスピーカが拾うことで、音声が出力されているかを本部側でも確認することが出来る。これにより、検査員が各署所に出向く必要がなくなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006―254115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特開2006−254115号公報に開示されているシステムでは、スピーカを検査する時に、音声をスピーカから出力する。このように音声を出力して検査する場合、署所にいる隊員の業務に支障を与えたり、署所近隣の住民に対して騒音などの迷惑を掛けたりするおそれがあった。
【0005】
また、署所での実際の緊急通報の運用では、複数のスピーカから同時に音声出力されることが多い。この為、先行技術の検査方法で実際の運用状態を考慮した検査を行うと、各スピーカの音声を個別に拾うことが出来ないため個々のスピーカの検査が不可能であるという問題があった。
【0006】
本発明は、本部からの遠隔操作で、署所にあるスピーカから音声を出力せずに検査することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する為に、本部装置と、同本部装置と通信回線で接続された署所端末装置からなる緊急通報システムにおいて、前記本部装置は記憶手段と、指令出力手段とを備え、前記署所端末装置は送受信手段と、スピーカと、インピーダンス計測手段とを備え、前記本部装置は前記記憶手段にあらかじめ記憶させた前記署所端末装置のスピーカを検査するための検査用音声信号を、前記指令出力手段を介して前記署所端末装置に送信し、前記署所端末装置は前記送受信手段を介して受信した前記検査用音声信号に基づいて前記インピーダンス計測手段を用いて前記スピーカのインピーダンスを計測し、同インピーダンスが所定の値以下であるか否かを検出することで前記スピーカの検査を行うことを特徴とする緊急通報システムである。
【0008】
前記署所端末装置は複数のスピーカを備え、前記本部装置は前記複数のスピーカから少なくとも二台のスピーカを指定して同時に検査を行うことを特徴とする緊急通報システムである。
【0009】
前記署所端末装置は音声検出手段を備え、前記送受信手段を介して受信した前記検査用音声信号の信号レベルを計測し、同信号レベルが所定の値以上であるか否かを検出することで前記本部装置から前記スピーカまでの信号線の検査を行うことを特徴とする緊急通報システムである。
【0010】
前記署所端末装置は第一切替え手段と、第二切替え手段と、制御手段を備え、前記本部装置は前記検査用音声信号を送信する前に、前記署所端末装置を検査モードに切替える為の状態切替え信号を、前記指令出力手段を介して前記署所端末装置に送信し、前記状態切替え信号を受信した前記署所端末装置は前記制御手段を介して、前記送受信手段と前記音声検出手段を接続させるように前記第一切替え手段を制御し、また、前記スピーカと前記インピーダンス計測手段を接続させるように前記第二切替え手段を制御することで、前記署所端末装置を検査モードに切替えることを特徴とする緊急通報システムである。
【発明の効果】
【0011】
このような緊急通報システムを用いることで、署所のスピーカを検査する時にスピーカから音声を出力しないため、署所にいる隊員の業務に支障を与えたり、署所近隣の住民に対する騒音などの迷惑を掛けたりするおそれがなくなる。また、実際の運用状態を考慮して、複数のスピーカを同時に検査することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の緊急通報システム構成図である。
【図2】本発明の署所端末装置の構成図である。
【図3】本発明の緊急通報システムの検査フロー図である。
【図4】本発明のインピーダンス検出部の回路図である。
【図5】従来の署所端末装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、本部と署所からなる緊急通報システムであって、署所のスピーカを検査する時にスピーカから音声を出力しないことで、署所にいる隊員の業務に支障を与えたり、署所近隣の住民に対する騒音などの迷惑を掛けたりすることをなくし、また、実際の運用状態を考慮して、複数のスピーカを同時に検査することを目的としたものである。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施の形態における緊急通報システムに関し、消防システムを例として、図1を基に説明する。図1は、緊急通報システムの構成図であり、指令出力部1とメンテナンス部2と記憶部9とを備えた消防本部装置15を備え、緊急通報を受付け、出動指令を出力する消防本部と、緊急車両や隊員が待機し、スピーカ4と送受信部14と信号処理部16を少なくとも備えた署所端末装置3を備え、消防本部からの出動指令を放送する署所から構成される。図2は、本発明に関する署所端末装置3の構成図であり、消防本部装置15が送信した検査用音声信号を受信し、受信した検査用音声信号を署所端末装置3内の各部で処理する構成を示している。この署所端末装置3には、消防本部装置15が送信した検査用音声信号を検出する音声検出部7と、スピーカ4の断線などを確認するインピーダンス検出部8と、通常運用モードと検査モードを切り替えるスイッチ6、スイッチ12と、各部を制御する制御部5とが設けられている。これにより、消防本部装置15から署所端末装置3のスピーカ4を検査する時に、消防本部装置15が状態切替え信号を送信することで署所端末装置3を検査モードに切り替えて、署所端末装置3の音声回線とスピーカ4の断線を検査している。以下に、本発明の各手段について説明する。
【0015】
スピーカ4は、署所内に出動指令などを音声で出力するものである。
【0016】
音声検出手段は、音声検出部7より構成され、消防本部装置15より送信された検査用音声信号のレベルを計測し、その信号のレベルが所定の値以上であるか確認することで、消防本部装置15から送信された検査用音声信号を受信できているか否かを判断する。
【0017】
第一切替え手段は、図2に示されているスイッチ6で構成され、送受信手段の出力先をスピーカ4と音声検出部7のいずれかに切替えるためのスイッチである。署所端末装置3が通常運用モード時ではスピーカ4に、検査モード時では音声検出部7に送受信手段の出力先を切替える。
【0018】
インピーダンス検出手段は、インピーダンス検出部8より構成され、スピーカ4が断線しているか否か、また署所端末装置3内の信号線に特性の劣化などの異常が無いかなどを検査するためのものである。検査方法は、図4に示しているように、スピーカ4と直列に抵抗(R)をつなぎ、その抵抗両端の電圧(V1)と、スピーカ4両端の電圧(V2)を計測する。この時、インピーダンス検出部8は信号線を通じて電圧計の電圧を取得し、以下の演算処理を行ってスピーカ4のインピーダンスを求める。スピーカ4のインピーダンスの求め方は、抵抗(R)とその抵抗両端の電圧(V1)から電流Iを求め、その電流Iとスピーカ4両端の電圧(V2)からスピーカ4のインピーダンスZ(Z=V2/I)を求めるが、本願発明はこの方法に限定したものではない。
【0019】
第二切替え手段は、図2に示されているスイッチ12で構成され、スピーカ4の接続先を音声増幅部11とインピーダンス検出部8のいずれかに切替えるためのスイッチである。署所端末装置3が通常運用モード時では音声増幅部11に、検査モード時ではインピーダンス検出部8にスピーカ4の接続先を切替える。
【0020】
また、スイッチ13は、指定されたスピーカ4だけに音声を出力させるためのスイッチで、音声を出力させる時は閉じ、音声を出力させない時は開いている。
【0021】
記憶手段は、消防本部装置15にある記憶部9で構成され、状態切替え信号と、検査対象のスピーカを指定する検査対象指定信号を含む検査用音声信号を記憶したHDDなどの記録媒体で構成されている。
【0022】
制御手段は、制御部5より構成され、本発明による署所端末装置3の所定の機能を総合的に制御するためのソフトウェアを記録したHDDのような記録媒体や、そのソフトウェアを処理するためのCPUやマイコンなどの処理装置を備え、これと接続された各部の制御を行っている。例えば、署所端末装置3を通常運用モードから検査モードに切り替えるために、スイッチ6を制御して、送受信手段の出力先を音声検出部に切替えることで、署所端末装置3を検査モードに切替える制御を行う。
【0023】
指令出力手段は、図1の指令出力部1で構成され、緊急通報を消防本部から各署所に出力したり、記憶手段に記憶されている状態切替え信号と検査用音声信号を各署所に出力したりする。
【0024】
次に、本発明の実施の形態における動作について図3を基に説明する。
【0025】
図3に示すように、初め、消防本部装置15にあるメンテナンス部2が、署所の検査を開始する為に、署所端末装置3を検査モードに切替える状態切替え信号を記憶部9から読み出し、指令出力部1と、署所端末装置3に送信する。状態切替え信号を受信した指令出力部1は記憶部9から検査用音声信号を読出する。一方、図2のように署所端末装置3内の送受信部14が状態切替え信号を受信し、制御部5に出力する。そして、制御部5はスイッチ6を制御して、送受信部14の音声信号の出力先が音声検出部7に接続されるように切替える。また、制御部5はスイッチ12を制御して、スピーカ4とインピーダンス検出部8が接続されるように切替える。これで、署所端末装置3が検査モードに切替わり、切替わり完了の応答信号を消防本部装置15に送信する。
【0026】
署所端末装置3が検査モードに切替わった切替わり完了の応答信号を受信した後、指令出力部1は記憶部9から取得した検査用音声信号を署所端末装置3に送信する。受信した署所端末装置3は検査用音声信号に含まれる検査対象指定信号に基づいて制御部5を介し、検査対象のスピーカと接続されるスイッチ13を制御し、スイッチ13を閉じる。例えば、スピーカ1を検査する場合は、スピーカ1に接続されるスイッチ13を閉じ、スピーカ2とスピーカ3を同時に検査する場合は、スピーカ2とスピーカ3各々に接続されるスイッチ13を閉じる。図2に示しているように、署所端末装置3内の送受信部14が検査用音声信号を受信し、DA変換部10に出力する。DA変換部10はデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換する。そして、このアナログ音声信号を音声増幅部11で増幅し、この増幅したアナログ音声信号を署所端末装置3内の音声検出部7が受信する。この音声検出部7は受信したアナログ音声信号のレベルを計測し、測定したアナログ音声信号が、規定値以上のレベルであった場合、音声検出部7は“音声検出部7までの回路は正常である”と判断する。もし、アナログ音声信号のレベルが、規定値以上でなかった場合は、音声検出部7は“音声検出部7までの回路に問題がある”と判断する。
【0027】
また、上記音声検出部7による測定と同時に、インピーダンス検出部8はスピーカのインピーダンスを計測する。計測して得られたインピーダンスが、規定値以上の場合は、インピーダンス検出部8は“スピーカ4は断線している”と判断する。もし、計測して得られたインピーダンスが、規定値よりも小さかった場合は、インピーダンス検出部8は“スピーカ4は正常である”と判断する。
【0028】
上記の音声検出部7と、インピーダンス検出部8による測定結果を検査結果として送受信部14が消防本部に送信する。また、他のスピーカ4も上記と同様に検査をする。さらに、実際の運用では、複数のスピーカ4を同時に作動させる為、検査時でも指定された複数のスピーカ4を同時に検査することが望ましい。この場合、複数のスピーカ4の検査結果を送信する方法としては、スピーカ4に付けられた番号の小さい順に消防本部に検査結果を送信するように制御している。
【0029】
全てのスピーカで検査用音声信号による検査が終わったら、送受信部14は音声検出部7とインピーダンス検出部8での検査結果としての応答信号を消防本部装置15に送信する。また、署所端末装置3は、検査が終了したことを示す応答信号を消防本部に送信する。検査終了の応答信号を受け取った消防本部装置15は、署所端末装置3を検査モードから通常運用モードに戻すように、署所に状態切換え信号を送信する。その状態切換え信号を受信した署所端末装置3内にある制御部5はスイッチ6を制御して、送受信部14の出力先がスピーカ4に接続されるように切替える。また、スイッチ12を制御して、スピーカ4の接続先が音声増幅部11に接続されるように切替える。さらに、スイッチ13を制御して、スイッチを開く。これにより、署所端末装置3は検査モードから通常運用モードに切替わる。以上より、署所の検査が終了する。
【0030】
なお、検査対象指定信号は、予め検査用音声信号の一部として記憶手段に記憶させたものでも良いし、図示しない入力手段により検査時に外部より入力するようにしても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 指令出力部
2 メンテナンス部
3 署所端末装置
4 スピーカ
5 制御部
6 スイッチ
7 音声検出部
8 インピーダンス検出部
9 記憶部
10 DA変換部
11 音声増幅部
12 スイッチ
13 スイッチ
14 送受信部
15 消防本部装置
16 信号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本部装置と、同本部装置と通信回線で接続された署所端末装置からなる緊急通報システムにおいて、
前記本部装置は記憶手段と、指令出力手段とを備え、
前記署所端末装置は送受信手段と、スピーカと、インピーダンス検出手段とを備え、
前記本部装置は前記記憶手段にあらかじめ記憶させた前記署所端末装置のスピーカを検査するための検査用音声信号を、前記指令出力手段を介して前記署所端末装置に送信し、
前記署所端末装置は、前記送受信手段を介して受信した前記検査用音声信号に基づいて、前記インピーダンス検出手段により前記スピーカのインピーダンスを計測し、同インピーダンスが所定の値以下であるか否かを検出することで前記スピーカの検査を行うことを特徴とする緊急通報システム。
【請求項2】
前記署所端末装置は複数のスピーカを備え、
前記本部装置は前記複数のスピーカから少なくとも二台のスピーカを指定して同時に検査を行うことを特徴とする請求項1に記載の緊急通報システム。
【請求項3】
前記署所端末装置は音声検出手段を備え、
前記送受信手段を介して受信した前記検査用音声信号の信号レベルを計測し、同信号レベルが所定の値以上であるか否かを検出することで前記本部装置から前記スピーカまでの信号線の検査を行うことを特徴とする請求項1、2に記載の緊急通報システム。
【請求項4】
前記署所端末装置は第一切替え手段と、第二切替え手段と、制御手段を備え、
前記本部装置は前記検査用音声信号を送信する前に、前記署所端末装置を検査モードに切替える為の状態切替え信号を、前記指令出力手段を介して前記署所端末装置に送信し、
前記状態切替え信号を受信した前記署所端末装置は前記制御手段を介して、
前記送受信手段と前記音声検出手段を接続させるように前記第一切替え手段を制御し、
また、前記スピーカと前記インピーダンス計測手段を接続させるように前記第二切替え手段を制御することで、前記署所端末装置を検査モードに切替えることを特徴とする請求項3に記載の緊急通報システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−146842(P2011−146842A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4683(P2010−4683)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】